Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

12月20日 

http://www.socinnov.org/blog/p252
『地域包括ケアの課題と未来』編集雑感 (7):
高橋泰「首都圏の医療・介護の近未来」について

小松秀樹
2015.12.12   Blog  Socinnovブログ

高橋泰氏は、全国のほとんどの2次医療圏を訪問し、実情を自身の目で確認されている。学者なので、目で見るだけでなく、数字でも把握している。それどころか、誰もが2次医療圏について詳細な比較検討ができるよう、2次医療圏データベースを作成し、公開している。

高橋氏とは、2011年10月、仙台での講演で初めてお会いした。筆者は翌日、被災地支援のため南相馬市を訪問することになっていた。高橋氏は同行することを希望され、南相馬市で我々と行政との生のやり取りを観察された。好奇心旺盛な行動派学者である。

『地域包括ケアの課題と未来』で、高橋氏が提示された首都圏の介護の近未来予想図は衝撃的である。首都圏を含めて関東で入所介護施設が極端に不足する。現在でも東京は、後期高齢者人口当たりの要介護高齢者に対応した施設の収容能力が、日本最低レベルである。2025年には団塊の世代が後期高齢者になる。介護施設の不足している東京とその周辺のベッドタウンで、高齢者が急増することになる。

『地域包括ケアの課題と未来』の編集者の1人、小松俊平は、2012年1月『厚生の指標』に「医療計画における基準病床数の算定式と都道府県別将来推計人口を用いた入院需要の推移予測」と題する論文を発表した。「一般病床の需要は、2010年と比較して2030年には12%増加する。埼玉・千葉・東京・神奈川では20%以上増加する。」高齢化と人口減少の進んでいる地域では、「一般病床の大幅な供給過剰状態が継続する。」一方「療養病床・介護施設(入所施設)の需要は、2010年と比較して2030年には全国で65%増加する。東京では78%増加し、埼玉・千葉・神奈川では100%以上増加する。」

首都圏では独居高齢者が爆発的に増加する。独居高齢者が生活に支障をきたしても、地域での人々の結びつきが弱く、頼れる互助組織がない。このため、東京は、地方に比べて、施設介護の必要度が高い。東京で今、介護施設の新設が進んでいるというが、介護職の給与水準が他の職に比較して低いため、職員を集めるのが難しい。施設が整備されたとしても、年金だけに頼っている高齢者だと、特別養護老人ホーム以外の施設は費用が高いため入所できない。

首都圏では、孤立した高齢者が病院に運び込まれても、退院先がない状態になる。退院をめぐって、解決策のない不毛な争いが頻発するだろう。結果として、病院へのアクセスがさらに困難になり、孤独死が加速度的に増える。さまざまな対応策が講じられるだろうが、首都圏だけで解決するのは難しい。

筆者は、2012年3月、安房地域のまちづくりビジョン安房10万人計画を提唱し、安房地域への高齢者の移住を提案した。高橋氏は日本創成会議の一員として、2015年6月、首都圏の高齢者の地方への移住を提案した。筆者は安房地域の人口減少を課題とし、高橋氏は首都圏の高齢者の急増を課題とした。

安房10万人計画のミッションを以下に示す。安房10万人計画は消滅が危惧される過疎地の生き残りが目的なので、最大の顧客は若者である。

ミッション
 1 首都圏の高齢者に、安房で楽しく穏やかな人生を過ごし、死を迎えてもらう。
 2 高齢者を支える若者に、安房で結婚し、子どもを生み育ててもらう。
 3 安房を活性化することで、住民に職を提供する。

ミッションを実現するために、以下のような基本方針を掲げた。
1 大きな目標を設定し、それに向けて、地域のインフラを含めて、準備をしていく。莫大な投資を必要とする詳細な建設計画は策定しない。
2 地域の医療介護施設全体を必要に応じて利用する。施設の新たな建設は需要が確実に見込め、経営が成り立つ場合に限定する。
3 要介護者を直接ターゲットにしない。都会で仕事しながら安房にも生活拠点を持つ人、健康な高齢者、定期的な通院の必要のある高齢者を首都圏から迎え入れる。
4 安房に文化と魅力を創出する。これは、遊び心、創造力、発信力を持つ人材をどれだけ安房に住んでもらうかにかかっている。
5 官営の事業とはしない。官の役割は、一部のルールの法的根拠を提供すること、可能なものに資金を出すこと。
6 営利組織、非営利組織が参加できるようにする。産業として合理的なものにする。株式会社と非営利組織は異なる。それぞれの組織の原理に一致した機能を担当するようにする。それぞれの原理に従って動いて、活動量を最大にする。
7 金銭的にはフェアネスを貫く。高額の一時金は可能な限り避け、毎月の費用を納入する形にする。途中解約を正当な条件で行えるようにする。
8 富裕高齢者のための有料サービスを拡充する。これで収益を大きくして、給与を高くできるようにする。
9 亀田グループで利益と手柄を独占しない。参加した組織には、医療・介護提供で協力する。亀田グループのメリットは地域の人口が増加することである。

安房10万人計画として、2015年夏まで、インフラ整備に取り組んできた。安房地域医療センターでの無料・低額診療開始、民間公益活動へのふるさと納税利用の制度化、社会人に安定した雇用を提供するための看護学校創設、看護学生寮への高齢者向け住宅併設、高齢者の人生の重要な決定を支えるワンストップ相談サービスの事業化などである。こども園を中心とした複合組織による子育て支援(必要時夜間保育、病児保育、学童保育、母子家庭・父子家庭支援)の準備も進めつつあった。安房10万人計画のハブとして特定非営利活動法人ソシノフを設立した。

政府が提唱する「日本版CCRC構想」が、首都圏高齢者の地方への移住の目玉として注目されている。CCRCとはContinuing Care Retirement Communityの略で、高齢者が健康なうちに地方に移住し、ケアが必要になった場合にケアを受けながら終生過ごすことのできる生活共同体のことである。特徴として以下の3点が挙げられている。(1)健康な段階から入居する。(2)高齢者が、仕事や社会活動、生涯学習などの活動に積極的に参加する。(3)地域社会と交流し、地域に溶け込む。

このようなことが簡単に実現できるとは思えない。補助金の魔力が失敗の原因となる。有識者会議の素案には、「現行の補助金や税制優遇、関連制度のほかに、更なる支援策の在り方(地方創生特区、新型交付金、制度改正、移住・住み替え支援策等)についても、検討を進めることとしたい」と書かれている。従来同様、政府が補助金や交付金を出すための条件を事細かに決める。官僚の責任が問われないようにするための条件なので、事業の邪魔になる縛りが多くなり、事業の成功確率を下げる。天下り団体が設立される。箱ものに予算がでるとなれば、箱もの専門家が予算を求めて群がる。予算を獲得することが活動の中心になる。日本中に、同じような箱ものが誕生する。1987年のリゾート法や年金基金を使ったグリーンピアでは、需要を無視した開発を全国統一ルールで実行し無残に失敗した。

日本の高齢者は簡単には移住しない。筆者は、震災時、避難所で厳しい生活を送っていた高齢者を安房地域に迎え入れようとしたが、彼らは、頑として地元を離れようとしなかった。そもそも、CCRCは新しい事業であり、現時点で、社会に需要はない。東京の高齢者は地方に移住したいとは思っていない。現時点で社会に存在しない魅力を、新たに創りださなければならないのだから、簡単ではない。創り出した魅力を提示して、徐々に需要を拡大していくしかないが、いかに努力しても、実際に需要が生じないかもしれない。あらかじめ完成された事業を想定してはならない。高齢者の地方移住を成功させるには、全国一律の事業ではなく、新しい個別事業を積み重ねるしかない。個々の地域の状況を踏まえて、利用可能な資源と知恵を活用して、小さく始めて、新しい需要を地道に創りだすしかない。



https://www.m3.com/news/iryoishin/383399
シリーズ: 2015年の医療界:1000人アンケート
医療界の環境、「依然として厳しい」◆Vol.1
勤務医2割、職場環境の改善を実感

医師調査 2015年12月20日 (日)配信 成相通子(m3.com編集部)

 2015年を振り返れば、群馬大の腹腔鏡手術をめぐる問題や聖マリアンナ医科大学の精神保健指定医の不正取得問題など、大学にまつわる不祥事のニュースが相次いだほか、約40年ぶりの医学部新設が正式決定し、2017年度からの専門医制度に向け制度設計の具体化が進むなど、今後の医療界の制度改革 にまつわるニュースが相次いだ。

 安倍政権下の経済・財政再生改革では社会保障費抑制の方針が打ち出され、年末には、2016年度の診療報酬改定や税制改正のニュースが連日、テレビニュースや新聞紙面を賑わせている。海外では、エボラ出血熱やMERSの流行など国境を超えた感染症の拡大や、深刻化する環境問題、テロや戦争、災害と医療の問題もクローズアップされた。

 m3.comでは、年末恒例の医療界1000人アンケートを実施し、2015年の所感と2016年の展望を尋ねた(実施日2015年12月1日~6日、開業医500人と勤務医505人の医師会員計1005人)。調査結果を年末から年始にかけて連載する。

 まず、今年(2015年)の医療界ならびに先生ご自身の仕事環境について、昨年と比較した所感を尋ねた。

Q.1-1 医療政策、メディアでの報道、世間一般の医療に対する見方などを総合的に見た医療界を取り巻く環境は、今年(2015年)と昨年(2014年)を比較してどうでしたか。
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 Q.1-1で2014年と2015年を比較した医療界の総合的な環境について聞いたところ、「変わらない」が55.3%で過半数を占めた。一方で、「悪くなった」「とても悪くなった」が計37.1%を占め、2014年度と比較すると4ポイント減。「良くなった」「とても良くなった」は計7.5%で、2014年度から横ばい。前年と比べると悪くはなっていないが、良くなったという要素もなく、まさに「変わらない」という実感がこもった結果になった(2014年度の調査は『「医療界の環境悪化」が増加、4割超◆Vol.1』を参照)。

 2014年は消費税率8%への引き上げと診療報酬のマイナス改定があり、2013年の調査と比べ、医療界の環境について「悪くなった」とする回答割合が大幅に増えた年だった。2015年に実施された大きな制度改革はなく、2014年の「悪化した環境」から変わらないが過半数、さらに悪化していると感じている人も4割弱いることになり、依然として厳しい環境にあることが伺える。政府は、2016年度からさらに厳しい社会保障費抑制 の方向性を打ち出しており、今後良くなる要素が少ないことも、実感に影響しているかもしれない。

Q.2 仕事のやりがい、勤務時間や給与などの勤務条件、医師・患者関係、職場の人間関係など総合的に見た先生ご自身の仕事環境は、今年(2015年)と昨年(2014年)を比較してどうでしたか。
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 続けて、Q1-2では、回答者自身の職場環境について尋ねた。同じく「変わらない」が56.7%を占めたが、「悪くなった」「とても悪くなった」を合わせて27.2%で、Q1-1の医療界の総合的な環境についての質問よりも10ポイント近く少なく、2014年調査の50.5%から23.3ポイントも下がっていた。「良くなった」「とても良くなった」は16.0%で、前年調査から11.1ポイント増加。全体的に2014年よりも大幅に改善した数字となった。特に勤務医では合わせて19.2%が改善傾向にあると回答した。

回答者の属性は以下の通り(勤務医505人、開業医500人)。
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http://mainichi.jp/articles/20151220/ddl/k10/040/121000c
群馬大病院
「手術で過大侵襲」 遺族側弁護団が独自調査 /群馬

毎日新聞2015年12月20日 地方版 群馬県

 群馬大医学部付属病院(前橋市)で同一の執刀医による手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、遺族側の弁護団は19日夜、高崎市内で記者会見し、開腹手術5例の独自調査を発表した。弁護団は消化器外科医2人に検証作業を依頼。「手術による過大侵襲などがなければ、死亡しなかった」「記録の記載に誤りや不整合が多い」などと病院側の対応を批判した。

 記者会見には開腹手術の遺族4人も同席し、当時の執刀医の対応について「合併症のリスクの説明もなく、手術以外の選択肢はなかった」「事故調査委員会は真相究明してほしい」と語った。3月末に退職した執刀医や元上司の診療科長に対し、直接、遺族に説明するよう改めて求めた。

 病院では5年間で、同じ男性医師による腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた8人と開腹手術を受けた10人が死亡。大学が設けた事故調は計18例の遺族や病院関係者へのヒアリングを進めている。ただ、大学側が8月に新たに示した膵臓(すいぞう)手術を含む死亡事例12例に関し、調査対象に加えるか未定で、20代の妹を亡くした男性は「調査するかの基準が不明。今後、公平に調査してほしい」と訴えた。【尾崎修二】




http://www.minyu-net.com/news/news/FM20151220-036890.php
「避難の健康影響」究明 医療最前線、レポード・クレアさん
2015年12月20日 09時51分  福島民友新聞

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の発生から4年9カ月。南相馬市は地震、津波、原発事故といった複合災害と向き合い続けてきた。復興の志を抱き、自ら望んで被災地で懸命に働く医師や研究者の姿が、復興途上の地域に新たな活力をもたらしている。同市の医療機関で、地域の医療再生や放射線不安の解消などに心血を注ぐ医療関係者3人の姿を追った。

 「頑張っている人たちの姿を見てるから、自分も頑張ろうと思える」。南相馬市立総合病院で働く英国人女性は屈託のない笑顔を見せる。レポード・クレアさん(22)は現在、被災地の病院で働く医師の姿に刺激を受けながら、仕事の合間に避難住民の健康について研究を進める。

 英国・エディンバラ大の大学院生だった2月、同大学院で講演した坪倉正治医師の話に感動、南相馬市で研究することを決意した。「一緒に研究しよう」と誘った坪倉医師らの尽力により病院職員のビザを取得、5月から同病院の英語指導助手として活躍している。

 同病院には原発事故後、本県の医療支援に入った医師たちがいた。昼夜を問わず懸命に働く医師、震災前の日常生活を少しでも取り戻そうとする市民の姿から、福島の本当の姿を理解した。

 専門は、世界中で疫学調査などを行う「国際保健」。現在は災害の影響が被災者の健康にどのような影響を及ぼしているのかについて研究を進めている。

 同市小高区の市立小高病院に出張することもある。主に接するのは、避難生活を送りながら通院生活を送る住民だ。「被災後に多くの糖尿病患者が血糖コントロールを悪化させている」。避難生活の中で糖尿病を悪化させ、苦しむ住民の姿を目の当たりにしながら、災害発生時は「どんな人にどんな病気のリスクが高いのか」との疑問が頭に残った。

 勤務医の英語論文に対して助言するなどの仕事をこなしながら、医師からカルテの読み方などを教わり、避難生活と糖尿病との関係解明に没頭する。世界中の人々の健康を守ることに応用できるよう、論文にまとめる考えだ。「収入や地位などによる病気リスクの違いを研究することは将来の世界的な災害発生時に大いに貢献できる」。純粋な思いが被災地の復興を後押しする。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03155_03
The Genecialist Manifesto
ジェネシャリスト宣言
「ジェネラリストか,スペシャリストか」。二元論を乗り越え,“ジェネシャリスト”という新概念を提唱する。
【第30回】
ポリファーマシーという問題と,ジェネシャリスト

岩田 健太郎(神戸大学大学院教授・感染症治療学/神戸大学医学部附属病院感染症内科)
週刊医学界新聞 第3155号 2015年12月21日

(前回からつづく)

大学病院を受診するとき。まあ,全ての大学病院を網羅的に調べたわけではないのであくまでも雑ぱくな感想だけど,受付ではいろいろな主訴を持つ患者をフラグメンタルに複数科受診させることが多いように思う。

 総合診療科が機能していない大きな病院も同じだ。頭痛があり,鼻水が出て,目が充血していて,身体の節々が痛くて熱があれば,脳神経外科と耳鼻科と眼科と整形外科と膠原病科をたらい回し……というのはさすがに極端だけど,このように複数科受診をさせる大病院の受付は割と多いと思う。

 複数の問題を抱える患者であれば,総合的に診療できるジェネラリスト一人が見ればよいわけで,上記の風邪の患者さんも上手にマネジメントできるはずだ。というか,そもそもこの患者は大病院・大学病院に行かず,いつものかかりつけ医にかかるのが筋だと思うけれど,本稿の主題を外れるのでここでは深入りしない。

 大病院の専門家はルーチンで特定の検査をしたがることも多い。件の患者には,おそらく何ひとつ特別な検査を必要としないが,頭部CTや内視鏡検査やあちこちのX線撮影や各種抗原抗体検査がなされかねない(まじで)。そして,たくさんの薬剤処方も――。「ポリファーマシー」はこのようにして起きる。

  *

 ポリファーマシーは,医療者の怠慢から起きているのではない。逆である。各医師が自らの専門性に照らし合わせて良心的に,真摯に診療したが故に,ポリファーマシーなのだ。

 本連載でも過去に述べてきたように,各科専門家はまれな病気や珍しい合併症,非典型的なケースを熟知している。そういうピットフォールに陥らないように,どうしても検査過剰,治療過剰になる。しかし見ているのが自分の領域だけなので,他科の医師がどのような検査をオーダーし,どのような薬剤を処方しているのかについての配慮が足りないこともある。そして,似たような薬剤がカブってしまう。時にそれらが,患者にとって有害なものになる。

 こういうときのスペシャリストの目は,「虫眼鏡の目」「ミクロの目」であり,細かいところ,小さいところを見る眼差しとなっている。しかし,複数の主訴を持つ患者のケアで大事なのは,「全体」を見ること。木を見つつ,森を見ることである。木を見つつ森を見るということは,問題の全体を相対的に見る,ということでもある。全体のパースペクティブから見る,ということでもある。自らの専門領域を相対化する(絶対化しない!)ということでもあるのだ。

  *

 そのとき,諸問題にはプライオリティーの高低が生じるだろう。緊急性の高低もある。諸臓器の症状が同じ病因から生じており,重なった検査や治療を省略できることもある。進行がん患者の尿酸値を薬剤治療で下げる必要はあるだろうか。そりゃ,腫瘍崩壊症候群のハイリスク患者とかは別だけど。あるいは,血糖値は? コレステロール値は?――。

 前回(第29回/第3150号),ファイナンシャル・プランナー(FP)との相違点を交えながら述べたが,全ての健康問題を最大限に治療する必要はない。少なくとも,「治療しない」という選択肢はあるはずだ。患者の中には,「Aという病気は治療したいけど,Bについては今は放っておきたい」と思う人もいるかもしれない。金銭的コストは下がるかもしれないし,薬剤の数が増えず面倒くさくないし,相互作用といった別のリスクをヘッジできるかもしれなくてもだ。

 しかしそうした中で,スペシャリストのほとんどは自領域のプライオリティーを「低い」と判断したくはないだろう。オレの担当する病気“だけ”は治療したい,という欲望はどうしてもあるものだからだ。それはぼくにもある。でもそこをぐっと抑え,「オレ様の専門領域」というオレ様目線をやめ,もっと総合的に全体的に患者を把握する必要がある。そのためには全てのスペシャリストがジェネ“シャ”リストになる必要がある。いや,それしかない。

  *

 大学病院の受付でも,どこの科が担当すべきか判然としない場合は,まずは総合診療科のようなジェネラリスト系の診療科“だけ”を受診させるべきだ。必要があれば,そして必要があるときだけ,ジェネラリスト・グループが各スペシャリストに相談する。その場合であっても,ポリファーマシーを回避するためには患者の全体像がきちんと把握できておいたほうがよい。

 “政治的”に,ジェネラリスト・グループが各スペシャリストに「そちらの治療はやめて」と促すことは難しい。それは可能かもしれないし,実際にやっているジェネラリストも知っているが,その場合に生じる感情的なしこりまで克服するのは困難で,また多くのジェネラリストがこのようなコンフリクトに苦しめられてきた。だから(たとえジェネラリスト・グループが大学病院にいたとしても),やはり各スペシャリストがジェネラリスト的エキスパティーズを身につけたほうがよい。そうすれば,不要なコンフリクトは回避でき,皆が「全体」を見ながら診療できるはずだ。

  *

 昔からそうだったのだが,大学病院においてジェネラリストが高いプレゼンスを保つことは難しく,またそれによって多くのジェネラリスト・グループは消滅した。または,各科が担当したくない患者の“ゴミ箱”のような役回り(言い方は悪いが)を押し付けられてきた。

 しかし,上述のように大学病院のようなタコツボ的,セクショナリズムが強い組織においては,本来,ジェネラリストの存在は貴重である。だからこそ,大学病院におけるジェネラリスト・グループはそのプレゼンスを高めるような突出した武器が必要だろう。例えば,神戸大学病院総合内科は,集中治療が強く,ICUケアのときにはしばしば諸科から相談されている。実際,ぼくら感染症内科も相談している。

 このように大学病院のジェネラリストは突出した武器を持っていたほうが生きやすい。日本の現状に合わせてもう少し世知辛い言い方をすれば,生き延びやすい。やはり,こちらもジェネ“シャ”リストになったほうがよいのである。

 ポリファーマシーの克服は難しく,こうやれば解決,という単一のソリューションは存在しない。たいていの難問がそうであるように。しかし,ジェネシャリストの普及はその克服に大きく寄与することだろう。必要条件,といってもよいと思う。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/53508/Default.aspx
16年度診療報酬改定 改定率本体0.49%引き上げ きょうの大臣折衝で600億円の「外枠改定」追加合意へ
2015/12/21 03:52 ミクスオンライン

安倍晋三首相と麻生太郎財務相は12月18日午後5時ごろ、首相官邸で2016年度診療報酬改定の改定率について会談し、本体を0.49%引き上げることを確認した。薬価は、市場実勢価格に基づく改定を行うこととし、1.22%引き下げる。材料は0.11%引き下げる。これにより診療報酬全体(ネット)の改定率はマイナス0.84%となる。ただ、特例再算定や大型門前薬局の適正化など改革項目による「外枠改定」で約600億円を追加財源とする考え。「外枠改定」は、きょう21日に塩崎恭久厚労相と麻生財務相による大臣折衝で合意される見通しだ。

16年度改定は、診療報酬全体(ネット)では、2008年度改定以来のマイナス改定となる。ただし、14年度改定は消費税増税分を上乗せしており、実質的には2回連続マイナス改定となる。医科、歯科、調剤の配分は1:1.1:0.3を堅持し、医科はプラス0.55%、歯科はプラス0.61%、調剤はプラス0.17%となる。

◎「外枠改定」特例再算定で280億円、大型門前適正化で40億円

「外枠改定」の項目は、C型肝炎治療薬や抗がん剤・アバスチンなど1000億円超の巨額医薬品に対する「特例再算定」で280億円、通常の市場拡大再算定で200億円、大型門前薬局の適正化で40億円を財源とした。“抜本的な改革”を求められた調剤報酬だが、これによりネットでも30億程度のプラス改定となる見通し。そのほか、後発医薬品の初収載時の0.5掛け(10品目を超える内用薬は0.4掛け)に加え、湿布薬や経腸栄養食品の適正化などで、約80億円の財源を確保した。

そのほか、協会けんぽへの補助金を抑制。財務省は社会保障費の伸びを当初の6700億円から1700億円圧縮し、年間約5000億円とすることを求めていた。厚労省側は5000億円まで圧縮した上でさらに、プラス改定の財源を確保したことになる。

◎「プラス改定」を実現させた政策プロセスの変更

厚労省は、2016年度、18年度、20年度の改定を通じて、2025年に到来する超高齢化社会に向けて「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。財務省もこの点には理解を示し、社会保障改革を単年度ベースとせず、今後3年間を重点改革期間とした改革工程表を作成し、それに基づいた政策を実施するようプロセスを変更している。このため今回の診療報酬改定に向けた財務・厚労の折衝では、社会保障費の伸びの圧縮が必要であるものの、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師の推進など、診療報酬本体プラスを容認する方向に傾いてきた。

2000年代前半の小泉政権時代には社会保障費の自然増に2200億円のキャップがはめられ、診療報酬本体に切り込むマイナス改定の連続から地域医療が崩壊した経緯がある。加えて日本医師会など医療団体も改定ごとに執行部が交代を繰り返し、政策の路線が定まらない時期もあった。今回の地域包括ケアシステムはまさに地域医療の再整備を目指すものであり、厚労省は、地域医療を担う医師会や薬剤師会との連携・協力が必要と判断した。なお、16年には参院選に加え、日本医師会、日本薬剤師会ともに会長選挙が控えている。

この間の財務省との折衝を通じても、厚労省はこの点を強く訴求し、2008年度改定のプラス0.38%を上回る改定率を目指した。さらに与党自民・公明の厚労関係議員とも連携し、最終的には日本医師会の横倉義武会長や日本薬剤師会の山本信夫会長が安倍首相に直談判するなど強い要請により、0.49%のプラス改定を実現させた。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/53505/Default.aspx
厚労省14年調査 在宅医療患者が過去最多 入院は減少傾向
2015/12/21 03:50 ミクスオンライン

厚労省が12月17日に発表した2014年患者調査によると、在宅医療を受けた患者数は2014年の1日当たり推計で15万6400人で、過去最多となった。3年前の11年調査は宮城県の石巻と気仙沼の両医療圏と福島県を除いているが、同年調査と比べると41.3%と急激に増えた。医師・歯科医師による訪問診療(往診除く)を受けた患者が約11万人を占め、在宅医療の増加を押し上げている。

患者調査は3年ごとに行われている。2005年調査以来、推計患者数は在宅医療では増加傾向にある一方、入院では減少傾向にあり、医療の在宅シフトが鮮明になっている。14年の入院患者数(1日当たり推計)は131万8800人で、11年調査と比べ1.7%減だった。平均在院日数は0.9日減の31.9日で、減少傾向にある。

その中にあって入院患者の約7割を占める65歳以上は増加傾向。都道府県別の入院受療率は、最も高い高知と最も低い神奈川とでは3.2倍の開きがある。


  1. 2015/12/21(月) 06:18:31|
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