Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

12月12日 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201512/20151212_13023.html
<震災>精神科病院 3日間闇に孤立
2015年12月12日土曜日 河北新報

 4年9カ月前。東日本大震災では、救援を待つ人たちに公的支援が届かなかった。患者24人が津波で亡くなった宮城県石巻市の民間精神科病院。生き残った患者や職員は3日間、気付かれないまま孤立した。医療と福祉の挟間に置かれた精神科のもろさが浮き彫りになる。(報道部・伊東由紀子)

 最も弱い人たちが、闇に取り残されていた。
 石巻漁港から北へ約1キロ、石巻市伊原津地区に精神科の恵愛病院(120床)はあった。
 震災が発生した2011年3月11日、115人の患者を2階に避難させる途中、津波が1階の窓を突き破った。逃げ遅れて命を落とした24人は寝たきりや車いすだった。
 水の中から患者を押し上げていた看護部長(当時)の藤中好子さん(67)も一時、意識を失った。
 患者と職員、避難してきた住民、約140人が取り残された。備蓄庫は水没。わずかな薬やゼリーを拾い集めて分け合った。
 「これ以上、誰も死なせない」。職員は家族の安否も分からないまま、一睡もせず看護に当たった。
 救援を信じ、屋根にシーツでSOSと書いた。ヘリの音が聞こえると身を乗り出して手を振った。
 二晩待っても、誰も来ない。「困窮しているところほど自ら発信できない。気付かれないまま、見捨てられた」。院長だった木村勤さん(66)は唇をかむ。
 患者の多くは重い統合失調症や認知症。環境の変化に弱い。興奮して大声を出したり暴れたりする人が出始めた。
 そのころ、民間の精神科病院でつくる宮城県精神科病院協会事務局長の沼田周一さん(61)は嫌なうわさを耳にした。
 「恵愛病院は壊滅した」
 「もう誰もいない」
 被害を直接確認しようと、沼田さんは仙台市から足を運んだ。14日夕、泥だらけになって恵愛病院にたどり着く。廃墟のような病院に大勢が取り残されていた。
 藤中さんは沼田さんに泣きながら訴えた。「患者さんを死なせてしまった」
 生存者の転院が急務だった。沼田さんと木村さんは関係先を回り、受け入れ先を見つけ、移動のバス、燃料などを自力で調達した。
 木村さんは「民間病院は支援の蚊帳の外だった。沼田さんが来てくれなかったらどうなっていたか」と感謝する。
 沼田さんは「精神疾患は治療の必要がないとの誤解から緊急性が理解されず、災害時などの対応は優先順位が下がりがちだ」と福祉に近い精神科の難しさを指摘する。
 避難した患者全員の転院が完了したのは4月1日。恵愛病院はその後閉院となり、木村さんは石巻市内の精神科病院に移った。
 24人を助ける方法はなかったか。藤中さんの自責の念は消えない。ただ、孤立した現場で職員たちは必死に頑張った。「二次災害を防いだ誇りを持ってほしい」と当時の仲間への思いも強い。
 藤中さんは現在、福祉施設に勤務する。職場からは恵愛病院の跡地が見える。
 亡くなった人の分もちゃんと生きなきゃいけない。今はそう感じている。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201512/20151212_11017.html
<震災>精神科、災害医療の盲点
2015年12月12日土曜日 河北新報

 東日本大震災では通信の乱れや交通網の寸断などから被害状況が伝わりにくく、孤立した精神科病院が食料や医薬品の確保、入院患者の転院調整などで自助努力を迫られた例があった。
 「震災直後、民間の精神科は自力で何とかしてほしいというのが行政の対応だった。公的病院との支援面での格差を痛感した」。宮城県精神科病院協会の沼田周一事務局長が漏らすように、精神科病院への公的支援の薄さを感じた関係者は少なくない。
 東北大大学院医学系研究科の松本和紀准教授(精神医学)は「精神医療が行政の災害医療体制から漏れていたことと、公立病院が民間よりも優先されたこと。二重の問題があった」と指摘する。
 行政で精神医療を所管するのは障害福祉関連の部署だ。厚生労働省では一般医療を医政局、精神科医療を社会・援護局障害保健福祉部が担当する。
 精神疾患と身体疾患の合併症などがある患者は特別な管理が必要な場合もあり、移送の調整には一般医療との連携が欠かせない。
 厚労省は10月、精神医療と一般医療との連携や、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の体制整備を進めようと、医政局に「精神科医療等対策室」を新設した。
 宮城県は、震災時に精神医療を十分に調整できなかった教訓を踏まえ、災害医療本部で活動する災害医療コーディネーターの業務に精神科入院患者の移送先の調整を加えた。精神科医師への初のコーディネーター委嘱も検討している。
 松本准教授は「災害時の精神科救急体制を確立するため、災害拠点病院を含めた一般医療との連携や、平時からの情報網の整備が重要だ」と話す。



http://medg.jp/mt/?p=6347
Vol.256 卒後教育における医師・病院連携
医療ガバナンス学会 (2015年12月12日 06:00)
小松秀樹
2015年12月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●亀田総合病院事件

 亀田総合病院事件がオンラインメディアにとどまらず、新聞や週刊誌など紙ベースの媒体でも大きくとり扱われている。ツイッター、facebookなどSNSでも情報が飛び交っている。2015年12月段階で、議論が拡大しつつある。沈黙している大手メディアも情報収集に熱心に動いている。若い医師は情報をネットメディアに依存している。亀田総合病院に対する評価が変化することになる。このままでは、亀田総合病院の医師集めが難しくなる。研修医の応募が減少すると亀田総合病院を維持できなくなる。
筆者は、行政の違法行為を批判したことを理由に懲戒解雇されたが、解雇されるまで、言論活動と行動実績により、亀田総合病院に一つの色彩を加えてきた。行政からの自立の主張には、経営者たちも同調してきた。彼らも独立自尊の印象を社会に発信することに熱心だった。

 東日本大震災では、いわき市の透析患者の避難、老健疎開作戦、知的障害者施設利用者約300名の鴨川への受け入れ、磐城共立病院の人工呼吸器装着患者8名の受け入れなどを主導した。安房10万人計画を提唱し、無料低額診療、ふるさと納税の民間公益活動への利用制度、安房医療福祉専門学校創設、看護学生寮への高齢者向け住宅併設、ソーシャルワーカーによるワンストップ相談サービスの事業化などに起点として関わった。複合組織による子育て支援の理念を提案。これは現在実現しつつある。すべて経営者の同意を得て実施した。

 亀田総合病院地域医療学講座では、多くの専門家と共に地域包括ケアの問題を議論した。映像シリーズを作成し、書籍を出版した。これは経営者の要請で開始したことであるが、行政による違法な妨害に経営者が同調した。

 今回の事件で、亀田総合病院は、違法な医師派遣で利益を得ていることが判明した。複数の自治体病院が、この違法派遣に頼っている。亀田総合病院が医師を集められなくなる、あるいは、違法派遣が停止されると、自治体病院が困ることになる。自治体病院への医師の供給を維持するためには、亀田総合病院が経営を刷新して評価を回復し、さらに、違法派遣を合法的な連携事業に転換する必要がある。

●南相馬市立総合病院の医師確保

 全国で医師確保対策が問題になっている。医師を確保するためには、その病院が医師にとって魅力的でなければならない。魅力とは、優れた卒後教育を提供していること、社会の要請に応えようとしていること、医師のやりがいと誇りを演出することである。特定の大学に支配されていないことも、全国から医師を集めるための必須条件である。魅力を提示できない場合、大学に多額の費用を支払って、寄付講座を設置し、そこから医師を派遣してもらうという方法がとられている。少数の医師を確保できるかもしれないが、他大学の卒業生の参入を減らす。大規模病院では必要医師数が多いため、特定大学だけに頼るのは自殺行為である。

 南相馬市立総合病院(180床)は、東日本大震災後、12人いた常勤医師が4人にまで減少した。筆者は、桜井勝延南相馬市長、金澤幸夫院長に依頼され、東京大学医科学研究所の上昌広教授と共に、医師確保策を立案、実行した。筆者は、公立相馬病院と南相馬市立総合病院を統合させて臨床研修病院にすることを提案した。統合は実現できなかったが、亀田総合病院が研修の足りない部分を補完するという条件で、南相馬市立総合病院は臨床研修病院に指定された。

 医師確保の基本戦略は、全国の医師に呼びかける、価値観に訴える、心意気に訴えることである。観客がいる、あなたはいいことをやるんだよ、というのを見える形にする。具体的には、坪倉正治医師が、内部被ばくについて科学的に調査し、世界に向かって発信し続けた。亀田総合病院から出向した原澤慶太郎医師が仮設住宅で診療を開始し、医学雑誌ランセットに実情を報告した。根本剛医師が在宅診療部を創設した。東大の国際保健学チームが震災関連の情報を科学的に分析し、世界の学術雑誌に発信した。2015年4月に入職した4人の初期研修医の1人は、若い医師が活躍していること、価値がありいきがいの感じられる活動が行われていることをインターネットで知って応募した。2015年4月段階で、常勤医師数は29人になった。

●ケアシステムのパラダイムシフト

 現在、ケアについての考え方が大きく変化しつつある。病気の治癒を目指す医学モデルから、病者や障害者の生活の質の改善を目指す生活モデルに社会の要請が転換しつつある。厚労省の目指す地域包括ケアは、医学モデルから生活モデルへの転換に他ならない。

 従来、医師は、生物学的医学研究、新しい治療方法の開発、新しい手術などに大きな価値を見出してきた。ケアについての考え方の変化とともに、在宅医療、総合内科、家庭医を目指す医師が増えてきた。WHOも健康格差を解消するのに、人々の日常生活条件の改善と不平等の解消が重要であると主張するようになった。医学の中心が生物学から社会科学に移行しつつある。

 医学モデルでは病気の定義、治癒などケアの目的を医師が決める。これに対し、生活モデルではニーズすなわちケアの目的を、当人を含めて、現場に近い人たちがそれぞれ認識する。地域包括ケアを発展させるには、現場に関わる複数のサービス提供主体が、地域固有の状況を踏まえた上で連携しなければならない。国は、国を頂点とするピラミッド型の階層構造によって、国→都道府県→市町村→サービス提供主体へと同じ情報を流すことで、医療、介護、福祉サービスの統合を図ろうとしている。これに強制力が伴うと、各サービス主体は行政しか見なくなり、現場のニーズに対応できなくなる。地域の状況を踏まえた横方向の連携が阻害される。地域包括ケアが目指すべきは、階層構造ではなく、ネットワーク構造による多元的アプローチである。

●病院連携

 筆者は、千葉県以北の太平洋沿岸に広がる医療過疎を解消するのに、価値観を共有する医師と病院が参加する卒後教育のための連携組織を作ることを模索してきた。地域の代表的な病院を訪問して議論し、一部から強い賛同を得てきた。大きな理念の下に、大学医局より緩やかな形で人事を動かしたい。このネットワークに多数の医師が結集して、医師の卒後教育に取り組めば、千葉県、茨城県、福島県の浜通りの医療過疎の現状を改善できる。卒後教育のための非営利法人を設立すれば、補助金の受け手になりやすい。必ずしも、多くの診療科が参加する必要はない。総合内科のような診療科は、研究重視の大学と相性が悪く、どうしても冷遇される。連携して自分たちの卒後教育の主導権をとればよい。総合内科はその存在感と発言力を高めることができるし、社会にとっても有用である。

 このような連携組織を実現するには、誰もが納得する大きなビジョンを提示しなければならない。具体的場面では多様性を許容しなければならない。これは、ドラッカーが『非営利組織の経営』で述べた、「本質における一致、行動における自由」である。そのためには、視野と心の広い、そして何より個別利害から自由なリーダーが必要である。

 筆者は、2014年12月、病院連携の具体案として、亀田総合病院と成田赤十字病院における感染症科医師の共同育成を提案したが、亀田隆明理事長と厚労省の井上肇結核感染症課長の介入で、人事の議論から遠ざけられた。最終的に、金銭による派遣になった。成田側は苦い思いを持ったと伝え聞いた。

 筆者は、この経験で、亀田総合病院が病院連携のハブになることは不可能だと痛感した。

 2015年10月2日、筆者は、成田赤十字病院の院長に成田赤十字病院への派遣が刑事事件に発展する可能性があることを伝えた。院長は、派遣された医師の活動を高く評価し、感染症科医師を引き揚げられると困るという懸念を口にした。筆者は、もし事件が立件化された場合、現状の違法派遣ではなく、当初の構想を生かして、病院連携として発展させていくべきだと話した。

 病院連携は、医師の卒後教育以外にもさまざまな分野で必要とされている。地域包括ケアでは、行政の命令ではなく、可能なことから、現場に近いところで直接連携する必要がある。地域医療連携推進法人のような重い組織は必要ない(1)。たいていの連携は単なるプラットフォームでも可能である。以下、連携プラットフォーム私案を示して稿を終える。

●連携プラットフォーム私案

1.目的
 参加法人が、連携活動を行うことによって、ケアを必要とする人たち対する医療、介護、福祉サービスを向上させることを目的とする。

2.参加法人
 参加法人は、地域の医療、介護、福祉サービスを提供している非営利、あるいは営利法人で、参加を希望するものとする。

3.地域の範囲
 医療は必ずしも二次医療圏で完結していない。例えば、亀田総合病院の入院患者の60%弱は二次医療圏外の患者である。地域の範囲は、連携の内容によって異なる。範囲を固定せず、問題によって広くあるいは狭くする。

4.連携プラットフォーム
 単なるプラットフォームであり、複数の参加法人の合意で成立する。同一地域に複数のプラットフォームが存在してもよい。

5.連携は各参加法人の自由意思に基づく
 参加法人が、地域のケア向上に意義があり自らのメリットにもなると判断した上で、連携を成功させるために自発的に努力するのでなければ、連携によって成果を上げることはできない。

6.参加法人の独立性
 参加法人は法的主体であり、権利義務を有する。公共の福祉に反しない限り、参加法人の権利を侵害することは憲法上許されることではない。

7.連携活動
 知識の収集、議論による意見の集約、意見の公表、提案、異議申し立て、参加法人同士の合意、契約あるいは協定がありうる。個々の連携活動に、すべての参加法人が加わる必要はない。

8.具体的課題
 (1)地域での医療の役割分担
 (2)外部への情報の発信
 (3)規格の共有
 (4)機器の共同利用
 (5)ソフトの共同利用
 (6)人事交流
 (7)職員の教育・訓練
 (8)職員のキャリア支援、転職支援
 (9)病院同士が許可病床のやり取りを直接行うこと

9.チェック・アンド・バランス
 現場を知る活動主体による行政の監視は、社会の発展に不可欠である。例えば、米国を代    表する環境保護NPOであるエンバイロンメンタル・ディフェンスは、専門家集団として、現在は各州の環境政策策定に関与して大きな成果を上げているが、かつては、各州の環境政策を批判し、訴訟作戦を展開していた。

10.プラットフォームは連携活動の当事者ではない
 連携プラットフォームは、連携の場でしかない。連携活動の責任は、当該連携活動に参加した法人が負う。原則として、契約や協定などの違反は、参加法人間の紛争として扱う。行政を含めて外部との交渉が必要な場合は、個々の連携活動ごとに当事者が担当する。

11.合理性のない非法的強制力を排する
 契約や協定による行動の制限については、医療、介護、福祉サービスの向上に資するのに合理的であることを要する。連携プラットフォームにおける、合意、契約、協定は強者が弱者を支配するもの、あるいは、多数が少数の権利を奪うものであってはならない。

12.連携活動の公開
 複数の参加法人が連携活動として合意し、報告・公開すれば連携活動として認知される。必ずしも、全参加法人が合意する必要はない。

13.信頼性の担保としての規格
 筆者らは、地域の契約や協定が参照するための地域包括ケアの規格の作成を計画している。これは、改変可能なものとしてCCライセンスhttp://creativecommons.jp/licenses/で公開予定である。規格は、合理性に基づく行為の標準化であり、地域包括ケアを検証、再現、共有可能な形で提示することで、質の保障と向上に寄与する。非権力的枠組みで社会課題の解決を図ろうとするものである。

14.信頼性の担保としての地域の優位性
 少子化により自治体の消滅が危惧されるようになった。連携による医療、介護、福祉サービスの向上は地域の優位性を高める。地域の優位性が高まれば参加法人の生存確率が高まる。これが連携活動の質を高く保つのに役立つ。参加法人には、政治や行政よりよほど信頼するに足るインセンティブが共有される。政治や行政は、しばしば私益や共益で動くので、必ずしも信頼性は高くない。

15.矛盾を許容
 強制力を持たず、言論を活動に含めるので、内部での意見の相違が生じうる。少数の権利を保護するためにも、連携プラットフォーム内部での意見の相違を排除しない。

16.法人の設立
 財政上、あるいは、組織上の必要があれば、その目的に特化した法人を設立する。

引用
(1)小松秀樹:地域医療連携推進法人を構想するセンス. 厚生福祉, 第6153号, 10-14, 2015年4月17日. (MRIC転載http://medg.jp/mt/?p=3591)



https://www.m3.com/news/iryoishin/382737?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD151212&dcf_doctor=true&mc.l=134949272
シリーズ: 始動する“医療事故調”スペシャル座談会
医療安全の“ボール”は医療界に◆Vol.1
「ヒト、モノ、カネ」の手当の遅れも

スペシャル企画 2015年12月12日 (土)配信 司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 この10月から、医療事故調査制度がスタートしたが、いまだその制度の解釈をめぐって、混乱が生じている。正しい理解と運用がなければ、「医療安全」という本制度の目的を達することは難しい。

 同制度の省令等の検討を進めた、厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の座長を務めた、一橋大学大学院法学研究科教授の山本和彦氏、大阪大学で長年、医療安全に取り組んできた武田裕氏(滋慶医療科学大学院大学学長)のほか、現場で実務を担当する、がん研有明病院(東京都江東区)医療安全管理部長を務める長田理氏の3氏に、医療事故調査制度の解釈や現場での対応の在り方などを語ってもらった(座談会は、2015年11月25日に実施。計7回の連載)。

――まず山本先生に、お伺いします。先生が座長を務められた厚労省医政局長の私的諮問機関である「医療事故調査制度の施行に係る検討会」は、議論の終盤の第6回会議でも議論が紛糾、その後、第7回会議を開催する予定もありましたが、結局、持ち回りで取りまとめを行い、3月20日、報告書を公表しています。同日の記者会見では、「取りまとめが本当にできるのかと思ったこともある」と回想されました(『医療界の自発的な取り組みへの信頼が基本』を参照)。


 山本 私は、医療事故調査制度に関する法律(医療法)を作る際の厚労省の「医療事故に係る調査の仕組み等に関する検討部会」の座長も務めさせていただきました。その際も、いろいろな議論があって、意見が分かれている部分がかなりあったのですが、最終的にはほぼ全員一致の形で取りまとめができ、それが法案になりました(『院内調査、「外部の医療者の支援」が原則』を参照)。国会の審議では、医療法改正は、計19本の一括改正法案だったため、介護保険法改正などについては異論が出ていましたが、医療事故調査制度については、全ての政党が基本的には一致して支持したと理解しています。

 その後、省令やガイドラインを作る話があった時に、法律は成立していたので、「テクニカルな話が中心で、それほど議論がなく、まとまるのではないか」と思い、座長をお引き受けしたのです。しかし、蓋を開けてみると、最初はかなり意見の幅があったため、「果たして取りまとめができるのか」と、不安を覚えたのは事実です。

 ただ「この制度を、より良いものにしよう」という点では一致していて、「より良いもの」にする方法、山の登り方に意見の食い違いがあったわけですが、議論を重ね、最後には、おおむね意見の一致を見て、この制度をスタートさせることができたのは、私としては非常に良かったと思っています。

――2008年のいわゆる「大綱案」と、今回の医療事故調査制度との相違を、どう捉えておられますか。

山本 私は「大綱案」作成の際も、厚労省の検討会の委員でした。「大綱案」の時代から、制度の目的そのものは一貫していると思います。つまり「個人の責任追及ではなく、医療事故の原因を究明して、再発防止、さらには医療の安全・安心につなげる」のが目的です。

 ただ手法に相違があります。大綱案は、行政的な機関を作り、ある程度、強制的な仕組みにする。それと引き換えに、と言いますか、その代わりに(異状死体の警察への届出を定めた)医師法21条を改正するスキームで議論していました。「第三者調査中心型」の仕組みです(『厚労省の「大綱案」の骨格はもはや変わらず』などを参照)。結局、それは法案にならずに終わりました。

 医療界には、「医療事故が起きた場合に、その原因を解明して、医療の安全につなげることが、プロフェッションの責任」という認識が、以前からあったとは思いますが、それ以降、強く表に出るようになってきたという印象があります。

 それを受ける形で、今回の制度を検討する過程では、医療界のプロフェッションとしての自己規律を尊重するようになっています。その結果、第三者調査よりも、院内調査を中核として置き、また第三者調査も、行政が行うのではなく、民間機関に委ねる制度になりました。

 ただ、事故調査を強制的な仕組みにしなければ、医師法21条の改正はできません。そこで、21条の問題とは切り離す形で、純粋に医療安全のための制度を作る方向に、議論の舵が切られたというのが、私の認識です。

――その辺り、ここ数年来の議論の変遷、制度創設に向けた動きや制度の評価について、武田先生はどのようなご認識でしょうか。「大綱案」の目的を、責任追及と受け止める向きもあります。


 武田 私はこの間に行われたモデル事業(「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」)が、若干、中途半端だったと思っています。この事業の評価をあまりきちんとせずに、新しい制度をスタートさせた印象が強いのです。

 モデル事業を引き受けていた中央組織(編集部注:日本医療安全調査機構。医療事故調査制度では、第三者機関である「医療事故調査支援センター」の役割を担う)が同じようにやるのか、という矛盾が若干あるわけです。率直に言いますと、「かつてやれなかった人たちがやれるのか。できるはずはない」というのが正直な感想です。

 けれども、制度そのものは大変すばらしく、「学習志向型」で、医療者の専門性に基づくピアレビューを「是」として、独立して調査を行う制度をよく作ることができたと思っています。つまり、ボールは医療界に投げられた。逆に言うと、医療界がこの制度をきちんとやらなければ、次の2016年6月の見直しは、大きな“逆風”にさらされることになるでしょう。

 センターへの報告事例は、1カ月当たり100件程度あると想定されていたものの、10月は20件(『医療事故の報告、最初の1カ月間は20件』を参照)。これは何を意味するのか。制度が周知されていないのではなく、医療者の間に「戸惑い」があるのではないでしょうか。今回の制度では、報告対象は限定され、まず死亡例に限り、それも「医療行為に起因する、予期できない死亡等」とされているので、あまり議論せずに報告できると思うのですが、現場では戸惑っているようです。

 また別の視点から、医療事故をめぐる動きを考えてみると、(東京都立広尾病院事件や、杏林大学の“割り箸事件”が起きた)1999年の“医療事故”元年から、15年以上が経過した今、医療安全についてどれだけ進歩したのでしょうか。徐々には進歩していても、予想以上に遅く、国立大学病院の事故のように、「まだこんなことが起きているのか」という事例も見られるわけです。根源的な問題が解決されずに医療事故調査制度が動き出すところに、国の施策として対応が不十分だと思っています。

 関西で2014年末に起きた誤投与事故が典型ですが、医療提供側における「ヒト、モノ、カネ」の絶対的な不足があるのではないでしょうか。もう少し人がいれば、あるいは後発医薬品が欠品せず、通常通りピッキングマシーン(注射薬自動払い出し機)に入っていれば、今回の事故は恐らく生じなかったと考えられるからです(『筋弛緩薬の誤投与死亡事故、「10の疑問」』を参照)。

 医師をはじめとする医療者はかなり疲弊しています。効率化が求められ、一方で「2025年問題」への対応を求められ、業務がますます増えているけれど、人が増えない。「説明と同意」などについての文書ワークも増えてきて、疲弊している。

 このような状態で、医療事故調査制度に取り組もうとすると、貴重な時間は取られ、さらに負担は増える。外部に支援を求める場合も、費用はかかる。この辺りをどのように解決するかという問題も大きい。皆が医療事故調査制度に注目するため、医療安全をめぐる問題が、この制度のみに限定され、それ以前の医療安全の根本的問題への対応が遅れる懸念があります。



https://www.m3.com/news/iryoishin/382875?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD151212&dcf_doctor=true&mc.l=134949274
シリーズ: 中央社会保険医療協議会
DPC病院、「高度な内科系技術」も評価
「臨床研究中核病院」の評価は反対意見も

2015年12月11日 (金)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会(小委員長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は12月9日の会議で、診療報酬調査専門組織DPC評価分科会(分科会長:小山信彌・東邦大学医学部特任教授)の検討結果について議論した(資料は、厚生労働省のホームページ)。従来の「外保連試案(第8.2版)」に加えて、内保連(内科系学会社会保険連合)による「特定内科診療(2014年度版)」で定められた技術の実施も、DPCの中で評価する方針で合意を得た。

 内科系技術は、DPCのII群の「基礎係数」における「高度な医療技術の実績要件」に追加する。「特定内科診療(2014年度版)」が定める、重症脳卒中、髄膜炎・脳炎、急性心筋梗塞、劇症肝炎など計25疾患について、「症例割合(対象症例数を総入院症例数で除した割合)」「DPC算定病床当たりの症例件数」「対象症例件数」の実績を見ていくことになる。

 「機能評価係数II」も見直す。7つの係数のうち、「保険診療係数」については、(1)実績要件のうち、一定の項目が本院よりも機能が高い分院(DPC対象病院)を持つ大学病院本院、(2)精神病床を備えていない大学病院本院、II群病院――などの場合に減算する一方、「病院情報の公表」を行う場合は新たに評価する。「病院情報の公表」の対象としては、(1)年齢階級別退院患者数、(2)診療科別症例数の多いものから3つ、(3)初発の5大癌のUICC(国際対がん連合)病期分類、再発患者数――など7項目が案として出ている。「後発医薬品指数」は、政府の「2017年央に数量シェア70%以上」という目標を踏まえ、「70%」を評価の上限とする。

 これらの係数のほか、一定の入院期間を超えた場合に出来高算定に切り替えるルールをはじめ、運用の見直しも行う。議論になっていた「持参薬」については、「特別な理由がない限り、使用不可」という現行ルールを継続するが、「やむを得ない理由がある場合に限る」という旨を明確化、使用した場合には「使用量も含め、データ入力」を求め、次々回以降の改定でそのデータを基に議論する。

 医療資源必要量をより反映した評価にするため、患者の「重症度を考慮した評価手法」として、CCP(Comorbidity Complication Procedure)マトリックスという指標も、脳血管疾患、肺炎、糖尿病の3疾病で導入する。病院ごとの肺炎患者の病態・重症度の違いを評価するのが目的。

 これらは、DPC評価分科会の検討結果による方針通り、中医協総会で認められた。一方、検討結果に反対意見が出たのは、2015年4月から医療法上で位置付けられた、「臨床研究中核病院」を「高度・先進的な医療の提供」という観点から、「機能評価係数II」において評価する案。日本医師会副会長の中川俊男氏は、「臨床研究中核病院」は、高度・先進的な医療の提供に限らず、研究の不適正事案防止のための管理体制の充実など、さまざまな機能を備えていることから、「診療報酬ではなく、一般財源で政策医療として評価すべき」と反対した。

 DPCをめぐっては、さまざま改革案が挙がっていた(『DPCのアップコーディング防止、一定の成果』を参照)。前述は主要な見直し案だが、「現状維持」とされたものも多い。「臨床研究中核病院」の評価の在り方などは引き続き、2016年度診療報酬改定に向けて議論する。

 DPCの包括評価部分の点数は、「診断群分類別点数」×「医療機関別係数」で決まる。「医療機関別係数」は、(1)I群からIII群の医療機関群別の「基礎係数」、(2)各医療機関の機能に応じて変わる「機能評価係数I」(人員など医療機関の構造を評価する係数)と「機能評価係数II」(医療機関の実績などを評価する係数)、(3)「暫定調整係数」(前年度の実績を保証するための係数)――で決まる。「暫定調整係数」は、段階的に「基礎係数」と「機能評価係数II」に置き換え、2018年度に廃止予定。

 なお、前回の中医協基本問題小委では、DPCについて「複雑化し、分かりにくい」との指摘が出ていた。小山氏は、その理由として二つを挙げた。一つは、DPCは最初は特定機能病院(2004年の開始当初は、82)から導入されたが、その後、100床規模、あるいはケアミックスで1病棟のみDPCとするなど、さまざまな規模、運営形態の病院がDPC対象病院になったこと。多様な病院を、I群(大学病院本院)、II群(I群に準じる病院)、III群(それ以外の病院)に区分して評価する必要性が出ている。もう一つは、「暫定調整係数」の段階的廃止だ。「医療従事者からは、複雑化しているという指摘はそれほどない。DPCは、自院の実績が2年ごとの改定で評価される仕組み」(小山氏)。


 専門医制度をDPCで評価する布石?

 「臨床研究中核病院」の評価に反対する中川氏に対し、小山氏は、「地域医療指数」の1項目として評価するため、それほど財源はかからないとし、理解を求めた。「機能評価係数II」を構成する「地域医療指数」は、医療法の「5疾病・5事業」、在宅医療などへの取り組みなど、現在は計12項目で評価するが、「臨床研究中核病院」を加え、13項目とするのがDPC評価分科会の案。そもそも「臨床研究中核病院」に指定されたのは、今年10月現在で4病院と少なく、「シンボリックな意味合い」もあるとした。

 これに対し、中川氏は「そうした議論であれば、ますます必要はない」とし、「シンボリックな意味合い」と、診療報酬で評価することとは無縁であるとした。

 厚労省保険局企画官の眞鍋馨氏も、(1)病院長を中心に、強力な管理体制が構築され、革新的な医薬品・医療機器を安全に使用できる体制の整備、(2)医薬品・医療機器の最新知見を有した医療従事者の配置、(3)診療ガイドラインの根拠となるような質の高い臨床研究論文の発表、(4)患者相談窓口の設置――などが「臨床研究中核病院」の承認要件であることから、「保険診療の質が高いのではないか、と類推し、地域医療指数で評価するよう提案するに至った」と説明。

 眞鍋氏の説明に対し、日本病院会常任理事の万代恭嗣氏は、「臨床研究中核病院はまだ数が少なく、(地域医療指数に追加しても)影響が少ないのだろうが、医療の質が高いという類推に基づいて、診療報酬を付けるのはいかがか」と異議を唱え、アウトカムなどエビデンスを基に導入すべきとした。さらにDPC評価分科会での議論について、「専門医制度についても、DPCの中で評価するという意見が出ており、方向性としては問題だと思う」と指摘した。2017年度からの新専門医制度では、専門研修基幹施設が中心となり、複数の施設と連携し、「専門研修施設群」を形成するのが基本。専門研修基幹施設をDPCで評価すれば、診療報酬と専門医制度が関連づけられる布石にもなり得る。

 厚労省医政局研究開発振興課長の神ノ田昌博氏も、眞鍋氏と同様に、「臨床研究中核病院」は、質の高い臨床研究や治験を推進する病院であり、高度・先進的な医療を提供する基盤を有しており、それを評価することは、保険診療を受ける患者にとってメリットがあると説明したものの、「臨床研究中核病院」の取り扱いについては結論が出なかった。



http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1212/san_151212_8888136430.html
兵庫県立病院で検査結果見落とし 患者2人治療遅れる
産経新聞12月12日(土)15時28分

 兵庫県県は11日、県立柏原病院(丹波市)と県立がんセンター(明石市)でCT(コンピューター断層撮影)検査の結果を見落とし、患者2人の治療が遅れるミスがあったと発表した。
 県によると、柏原病院では、丹波地域の50代の女性が今年2、6月の腹部のCT検査で、大腸の一部の粘膜が腫れているのを指摘されたが、担当医が電子カルテの添付文書を確認していなかった。女性は腫れがもとで7月、腸閉塞(へいそく)になり緊急入院。10月、女性は内科系の難病で死亡した。県は「腸閉塞と死亡の因果関係はない」と説明している。
 また、がんセンターでは、神崎郡の60代女性が受けたCT検査で、放射線医師が指摘していた膵臓(すいぞう)がんの結果を担当医が見落とし、治療が遅れた。女性は現在も他病院で治療を続けているという。



http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1212/ym_151212_6561384501.html
群馬大、外科学会に医学検証を委託…肝臓手術死
読売新聞12月12日(土)9時1分

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓の手術後に患者の死亡が相次いだ問題で、日本外科学会(理事長=國土典宏・東大教授)が、手術をはじめ診療が医学的に問題なかったかどうかの検証を群馬大から委託されたことがわかった。
 同学会は、近く学会内に委員会を発足させ、検証を始める。
 群馬大病院では、同一の男性医師が手がけた肝臓の腹腔鏡手術後に8人、開腹手術後に10人が、約3か月以内に死亡したことが昨年発覚した。今年8月に第三者からなる調査委員会が発足して改めて調査を開始。この18人のほか、膵臓も含め12人の術後死亡例があることも明らかにされた。
 第三者委員会は、遺族や関係者に聞き取りするなどして全体像を調査している。ただ、手術やその前後の診療の問題については専門家による検証が必要なため、専門学会に委託されることになっていた。同学会は今後、手術ビデオやカルテなどの記録から診療内容を検証する。今年度中のまとめを目指すが、新年度にずれ込む可能性が高い。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201512/CK2015121202000179.html
医療費大国ニッポン 月1000万円以上1700件
2015年12月12日 東京新聞

 医療費の超高額化が進んでいる。国民健康保険中央会(国保中央会)と健康保険組合連合会(健保連)がそれぞれ、二〇一四年度に医療機関からあった高額な請求の内容を調査したところ、月額の医療費が一千万円以上となるケースが、両者の合計で千七百件に迫った。件数は増加傾向にある。
 技術の進歩に伴って命に関わる病気への新たな治療法の開発が進み、高額な医療機器や医薬品が増えていることが影響しているようだ。
 国保中央会は、自営業者や無職の人たちが加入する国民健康保険と、七十五歳以上の後期高齢者医療制度について調査。
 その結果、一年間に受け付けたレセプト(診療報酬明細書)のうち一千万円以上のものは千三百八十六件だった。前年度比二百二十八件増で、一〇年度(八百九十八件)の一・五倍になった。
 大企業の従業員が加入者の中心である健保連では、一千万円以上は三百件。過去最多だった前年度の三百三十六件からは減ったが、一〇年度と比較すると一・七倍になっている。
 疾患別の内訳を見ると、国保中央会では「心臓」が八百二件で58%を占め、次いで「血液」(23%)、「消化器」(6%)の順。健保連は分類方法が異なるものの、心臓など「循環器系」が37%(百十一件)と最多で、「先天性疾患」(29%)、「血友病」(16%)、「がん」(6%)などが続いた。
 近年普及した高額医療機器の例としては、重い心臓病の治療用に一一年に保険適用された埋め込み型の補助人工心臓(約千八百万円)などがある。
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  1. 2015/12/13(日) 09:11:51|
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