Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

12月9日 

http://mamari.jp/13599
トレンド・イベント コラム 産科医不足が深刻。これで子供をたくさん産めと言われても困る
産科医不足が深刻。これで子供をたくさん産めと言われても困る

(2015年12月09日更新) Mamari

産科医不足がどんどん深刻化しているのを知っていますか?産科の現場は労働条件が過酷で産科医になりたいと希望する人、今産科医として働いている人もどんどん減り、産科医不足が深刻化しています。産科医不足を改善するためにはどうしたら良いのでしょうか?なぜこんなに産科医不足となっているのでしょうか。私なりに考えてみました。


産科医不足で出産難民増加

産科医不足している、という現実を皆さんは知っていますか?私は何となく知っていたという程度で産科医不足がここまで大きな問題となっていることは知りませんでした。

でも少子高齢化が進み、どんどん子供を産みにくい環境に変化しているという事は大きな社会問題として取り上げられていることは知っていました。

産科医不足は少子高齢化にも関わる重大な問題ということは皆さんご存知でしょうか。

私は今、妊娠5ヶ月で里帰り出産をする予定です。

今、健診に通っている産婦人科の先生に里帰り出産を希望する地域を伝えると、そこは産婦人科が少ない地域だから早めに里帰り出産先を決めたほうが良いと言われました。

それを言われたのは妊娠2ヶ月目。まだまだ期間はあると安心していた、むしろ妊娠が発覚して間もないしそんなに早くしなくても大丈夫でしょ!と思っていました。

でも言われてからだいぶ時間がたった最近、やっと里帰り出産の予約をしに行くとギリギリ予約できたという感じでした。

もう少し遅ければ私は出産先が決まらず、出産難民となってしまうところでした。

そして、里帰り出産先の病院では産科医2人の他に週3日のみ診察だけに来てくれる産科医もいると説明を受けた時には「産科医不足は深刻な問題なんだ」、と実感しました。


地域によって深刻差の違う産科医不足の現状

産科医は減少傾向にあり、2012年の時点で6年前と比べ約400人もの産科医が減りました。

新たに産科医になる人数も減少しており、2010年から4年連続減少中。2010年から2014年までに約350人も減ったそうです。

ですが東京都、沖縄県では人口10万人あたりに産科医が11.1人います。それとは反対に茨城県では4.8人しかいません。地方都市では都市部に比べてさらに産科医不足が深刻化しているのが目に見えて分かります。


なぜこんなに産科医不足となっているのか

新しい命が生まれてくる現場である産科、そこで働く産科医。素敵な瞬間に携わる仕事はとても誇りのある素晴らしい仕事だと思います。なのに産科医が不足しているのはなぜなのでしょうか?


過酷すぎる労働環境に耐えられず、働きたいと思えない

産科医不足の大きな原因と言われているのは過酷すぎる労働環境です。24時間体制は当たり前、当直後も診療を続けるのが日常になっています。

私は、それは仕方ないよ、だって出産はいつ始まるかわからない!と思いました。でもそれが月に1回ではないんです。

産科医不足が深刻化し最初は月に1回だったものが2回になり、週1になり…とどんどん増えてきているのが現状です。妊娠を望む人や、妊婦さんが増えても過酷な労働環境に産科医は増えないというのが現実です。

この労働環境を聞いて産科医になりたい、と思える人はどのくらいいるのでしょうか。私は少なくても、いつ何が起こるかわからない胎児相手なので仕方ないと思える労働環境だと感じています。


若手産科医や女性産科医はどんどん減少…

過酷な労働環境に耐えられなくなり、若手産科医はどんどん減少。産科医になろうと思う人も減ってきています。それにより産科医不足も進行しています。

また産科医の4割が女性ですが、女性の場合自分自身が妊娠、出産や子育てを抱える可能性がありますので、当直などはできなくなってしまいます。

その結果、他の産科医に負担がかかり、過労により体調を崩してしまったり…と、悪循環が続きます。


60歳になったら分娩をやめる産科医も多い

今は出産はできないけど妊婦健診はやっているという産婦人科や病院が多くみられます。これは60歳になると分娩をやめてしまう産科医が多いことが原因です。

産科医は体力と気力の必要な仕事。医師の高齢化により、体力的にも難しくなり出産をやめてしまう産科医が多くいます。そして若手産科医は不足し続ける…どんどん産科医不足が深刻化していく背景が見えて気がしますね…


産科医だからこその辛さや大変さがある

医療の現場はどこでも労働条件は厳しいと思いますが、産科医ならではの辛さもあります。お腹の赤ちゃんに万が一異常があったとしても発見する方法はほとんどエコーのみ。

何千枚もエコーを見ている産科医でも見落としてしまう事や早期発見できないことはもちろんあります。さらにエコーなどで赤ちゃんの異常が発見されても治療をすることはほとんど出来ません。

生まれてきてからの治療となることがほとんど。こんな状態で産むのであれば、とその場で産まない決断をする妊婦のことも受け入れなければなりません。

妊婦とお腹の赤ちゃんの2つ命を預かる。命の始まりだけではなく、命を終わらせることも経験する場合がある。産科医への精神的重荷は多大なるものだと私は感じています。


福島大野病院事件を知っていますか?

2006年夏、大きくメディアで取り上げられた事件です。前置胎盤の妊婦を救えなかったことが業務上過失致死だとして産科医が2006年に逮捕・拘留されました。

全国の医師は、医療ミスと判断されたことに対し医師に落ち度はなかったと、抗議の声明を発表し2008年には無罪が確定しました。

ですが全国の産科医だけではなく他の診療科の医師たちにも大きな衝撃を与え、この事件のあと産科を辞めてしまう病院が急増しました。

過酷な労働環境の上、1度のミスも許されない、それは医療の現場ではどこでも同じ条件かもしれませんが、私にはこの訴訟は同じ条件に当てはまらないと思わせるほどの衝撃を与えたように思えます。


産科医不足に対してできることはメディアでの呼びかけと教育、計画実行

今後産科医を増やすためには…これだけの過酷な労働条件と分かっていても産科医になりたいと思っている人は少なからずいるはずです。

でもその人たちがしっかりと産科医になる勇気を与えることが、今の産科医や周りの人にできることではないでしょうか?今テレビで話題になっている「コウノドリ」というドラマは知っていますか?

このドラマでは産科医の思いや妊婦さんの思い、産科の現状や素晴らしさ、子供を育てるということなどが伝わるとても良いドラマだと思います。

産科医を取り上げたドキュメント番組や講演が増えるのは、少なからず社会の皆さんが産科医不足に対する危機感を持つことの第一歩になると私は思います。


教育の現場で産科医の素晴らしさを伝える

産科医は辛い事ばかり、と思われる反面素晴らしい職業です。ほとんどの人が産科医の手とママの頑張りでこの世に誕生しました。

教育の場で産科医の素晴らしさを鮮明に伝える事で、産科医不足は改善されるのではないかと私は思います。産科医の仕事は難しい、大変という考えを植えつけずに良いこともたくさんあるという事を伝え続けられると良いと思います。

どの仕事も、お金を稼ぐということは辛く大変なことです。それを教育の現場で教えてあげることは少なからず出来ると思います。実際に小学校や中学校では社会科見学の場が設けられていますよね。

その社会科見学の場に産科医をとは言いませんが、せめて子供たちと触れ合えることが出来ると良いのではないかと思いました。実際に最近ニュースで見たのですが、沖縄の高校が学校で乳幼児たちとの触れ合い授業で、子育ての大変さや子供と触れ合うことの楽しさを学べるというもの。

写真で見る限りでしたが、子供たちも高校生たちもみんなイキイキしていた気がします。

子供と触れ合うことの楽しさが分かるとそこから、保育士になりたいな、助産師にさりたいな、産科医になれるかな・・・と夢を繋げられるようになれば素敵な取り組みではないかと思いました。


産科医を増やすために日本産科婦人科学会が掲げた行動計画、目標


目標

総合周産期母子医療センターに常勤医を20人以上集める
地域周産期母子医療センターに常勤医を10人以上集める
主治医制を廃止し交代勤務をしやすくする
院内に保育園を設置する
男女問わず産科医が働きやすい環境を作り、今までの過酷な労働環境を改善する為に日本産科婦人科学会から発表された、行動計画目標です。

人数も増え、当直勤務も減り、女性も長く働ける環境が整います。これを目標や計画で止めずに実行すれば産科医不足に歯止めがかかるはずです。

ですが実際にはまだ目標、計画の時点で実行に移されている項目は少ないです。この計画をただの計画にせず、実行すれば良い。それだけで産科医療の現場は大きく変わるはずです。


産科医不足に歯止めがかかるなら…

産科医不足は深刻な問題です。でも産科医不足が深刻になっている原因が明確になっていることに私は少し安心しました。この明確にわかっている原因が改善されれば産科医不足も解決できるはずです。

医師になろうと考えていた友人が学生時代に産科医は今後少子高齢化が進み産科医は必要なくなると言われたことがあると聞きました。ですが、そんなことはあり得ません。

自分で出産できるような画期的な機械が出来ない限り、産科医が必要なくなる時代は来ないと思います。

もし、そんな機械が出来たとしてもやはり人の手を人の心は必要です。自分の子供がどうなっているのか毎日毎日心配な妊婦さんの不安を拭ってくれるのは旦那さん以外に産科医などお産の知識がある人たちだと私は思っています。

そんな産科医は、命の誕生をお手伝いすることのできる素晴らしい職業です。



http://www.miyakomainichi.com/2015/12/83437/
産科医開業費を助成へ/宮古島市
2015年12月9日(水) 9:03 宮古毎日新聞

限度額1億円/条例案を議会に提出

 宮古島市は県と連携して、市内に産婦人科医療施設を開設する際の費用の一部を助成する。出産施設の充実を図り、市民が安心して子供を産み育てられる環境を整備することが目的。助成限度額は1申請者につき1億円。8日に開会した市議会(棚原芳樹議長)12月定例会に条例案を提出した。原案通り可決されれば、来年2月から申請の受け付けを開始する予定だ。

 県は、宮古地区を含む離島や沖縄本島北部などの医師不足を解消するための基金20億円を創設した。

 この基金を基に、市は産科医を開業したい医師に対し、開設に要する経費の一部(県8割、市2割)を助成する。

 今議会に提出された条例案には、該当者として①市内の分べんを取り扱う病院に1年以上勤務し、産科の臨床経験のある医師②市内において分べんを取り扱う産婦人科医療施設を開設し、継続して10年以上、産科医療を実施する見込みがある人-。

 一般的に産科医は、昼夜問わずの対応や訴訟を起こされるリスクが高く、若い医師らには敬遠されがち。

 加えて離島地域では、先進的な医療を学べる機会や指導員の数が少ないことなどもあり、慢性的な医師不足となっているのが現状だ。

 市健康増進課によると、現在、宮古島市には宮古病院と民間1件が開設されており、産科医師は計4人。出生数は年間ほぼ600人で、産科医1人当たりの出生件数は155人と、県全体の112人、全国の95人に対し高くなっている。

 同課では、産科医師が独立して開業しようとしても、資金調達が難しい場合があることを指摘。「市と県が連携して助成することで、開業する際の負担を減らし、安定的な医師の確保と定着に結び付けられる」と同条例の意義を強調している。



http://www.nikkei.com/article/DGXKZO94814200V01C15A2TZT001/
進むか医師の地方定着 医学部の「地域枠」全国に拡大
専門性の確保、課題に

2015/12/6付 [日本経済新聞朝刊]

 都道府県とそれぞれにある大学が協力して医学部に「地域枠」を設け、卒業生に一定期間、地元勤務を義務付ける取り組みが本格化して10年。深刻な医師不足を解消する切り札として、導入した医学部は全体の約9割にまで広がった。ただ地方では指導を受けたり、経験を積んだりする環境が十分ではない。制度が定着しつつあるなか、専門性をいかに磨かせるかという課題は残る。

 「お体の具合はいかがですか」。11月中旬、秋田市立秋田総合病院。入院患者に声を掛けながら巡回する大高葵医師(25)は秋田大医学部地域枠の卒業生だ。

 大高医師は県北部の大館市出身。2008年春に地域枠で入学し、卒業した昨春から2年間の初期臨床研修で同病院に勤める。

 医師を志したきっかけは高校時代に地元で見守った祖父の闘病生活。がんで亡くなるまで担当医が治療を尽くす姿を見た。報道で地方の医師不足を知り、生まれ育った地で医療を担おうと考えた。「将来は県内では少ない放射線科の専門医になりたい」と意気込む。

■修学資金免除も
 医学部定員の一部を割り当て、修学資金を負担する代わりにへき地の診療所などでの勤務を一定期間義務付けるのが地域枠だ。地元だけでなく、他県出身者を対象とする大学もある。

 秋田大医学部は県と連携して06年度に導入した。県が貸与する月約15万円、6年間の修学資金の返還を免除し、卒業後は9年間、県内で勤務。うち半分は県指定の医療機関で働く。15年度春の入学定員のうち、約3割の30人超が地域枠だ。
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 地域枠は1990年代後半から一部で導入されていたが、急速に広がり始めたのは06年度から。背景には04年度に導入された新たな臨床研修制度がある。

 それ以前の卒業生は大学付属病院の医局に所属し研修するのが一般的だった。医局トップの教授が人事権を掌握することに批判はあったが、医局員を関係の深い病院に派遣、へき地を含め配置を調整してきた。

 新制度では卒業後、自らの希望で研修先を選べるように。このため先進的な医療機器を備え、経験も積める東京など大都市の病院を選ぶ傾向が強まった。

 結果、医師の偏在が深刻化。これを緩和しようと都道府県は地域枠に着目した。06年度に導入が前年度の2倍の18大学となり、15年度に全国の約9割に当たる70大学に広がった。定員は計1500人を超えた。

 約17万人(10年時点)が離島で暮らす鹿児島県。今年4月、鹿児島大医学部の地域枠第1期生の2人が臨床研修を終え、奄美大島の県立大島病院などに配属された。トカラ列島などの離島の巡回診療も担当する。

■定着率8割超に

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 「地域的なハンディがある自治体にとって、地域枠は地元に残るきっかけ作りになる」(秋田総合病院の中川正康・卒後臨床研修センター長)。秋田県では初期研修後も地元で働く「定着率」はかつて6~7割だったが、ここ1~2年は8割を超えたという。まだ全国的に地域枠を経て地元に勤務する医師は少ないが、今後は卒業生が急増し、地域医療で一定の役割を果たすことになりそうだ。

 一方で課題もある。地域枠に詳しい奈義ファミリークリニック(岡山県奈義町)の賀来敦医師は「地方は専門医の資格を取得できる環境が保障されていない」と指摘する。

 17年度には診療科ごとに学会が行う専門医の認定を、第三者機関が担うことになり、より資格の取得が進むとみられる。その中でへき地では指導医がいなかったり、特定の臓器について症例の経験が不足したりする懸念がある。

 若いうちに専門性を身につけたいという医師は多い。賀来医師は「資格取得後にへき地勤務の義務を果たせるようにするなど、自治体は柔軟に対応すべきだ。そうすれば人生設計も描きやすい」と話している。

◇            ◇

■「大病院志向」根強く 石川など7県、半数が県外に

 石川など全国7県で、地元大学を卒業した医師の半数以上が地域に残らず、「流出」していることが慶応大医学部5年の岡田直己さんらの研究チームの調査で分かった。千葉や埼玉、兵庫の各県では逆に「流入」が目立った。

 調査は1994年から2012年までが対象。期間内に医学部を卒業し、国家試験に合格した人数と実際に増えた医師数を都道府県ごとに比較した。

 合格者数に比べ、医師の増加数の割合が最も低かったのは石川県。流出率は68%で、このほか島根、鳥取、高知など6県が50%を超えた。

 一方、医師の増加数が合格者数の2倍を超えたのは千葉県と埼玉県。兵庫が1.7倍で続いた。いずれも人口が多い割に医学部のある大学が少ないのが特徴だ。キャリアアップを図るため、大病院勤務などを志向する医師が流入しているとみられる。医学部が多い東京では、16%が他に流出していた。

(平野慎太郎、大西康平)



http://mainichi.jp/articles/20151210/k00/00m/010/055000c
診療報酬改定
本体増へ攻防本格化 高額療養費見直し浮上

毎日新聞2015年12月9日 21時25分(最終更新 12月9日 21時30分)

 医療の公定価格である診療報酬の2016年度改定率決定に向けた攻防が本格化してきた。厚生労働省や日本医師会などは薬価を除いた医師らの技術料など「本体」のプラス改定を求めており、9日は医療団体などの集会が開かれた。一方、財務省は本体のマイナスを求めていたが、代替案として、患者の自己負担に上限を定める高額療養費見直しを「本体微増」の財源とする案が政府内で浮上している。【堀井恵里子、阿部亮介】

 「診療報酬改定が厳しい内容となれば、医療現場は疲弊し、国民に必要かつ十分な医療を続けられなくなる」

 9日午後、東京都千代田区の日比谷公会堂で開かれた「国民医療を守るための総決起大会」で日本医師会の横倉義武会長が診療報酬引き上げを訴えると、約2000人の医療団体関係者から大きな拍手が起こった。

 これに先立つ午前8時半には、自民党の「国民医療を守る議員の会」が国会内で総会を開き、薬価を引き下げた分の財源は本体引き上げに充てることなどを求める決議をした。

 政府は来年度予算の概算要求で6700億円だった社会保障費の自然増を約1700億円圧縮する方針を決めている。市場価格に合わせた「薬価」の引き下げは来年度は1500億円台になる見通し。さらに約200億円の削減を本体で賄うか、他に財源を求めて本体を増やすかが最大の焦点になっている。

 厚労省は来年度に関し、景気改善で保険料収入が増えている全国健康保険協会(協会けんぽ)への国庫補助削減分(数百億円程度)を充てる意向だ。ただ、17年度以降も同様の財源が出る保証はない。そこで浮上しているのが高齢者の高額療養費見直しで、現役世代より優遇されている高齢者の負担上限額を引き上げる案だ。

 ただ、国民負担につながるため具体策は来夏の参院選後とする一方、16年末までに決め、確実な実施を担保することが条件だ。それでも負担増方針が参院選前に決定することになり、8日の自民党の部会では「野党に攻撃材料を与える」など反発する意見が目立った。

 この他、ジェネリック(後発医薬品)の見直しでも財源の積み上げを図る。新たに発売される後発医薬品の価格を現行の「先発品の原則6割」から「5割」に引き下げる方向は決まっている。厚労省は他に、メーカーの想定以上に売れ、販売額が巨額な医薬品の価格を特別に引き下げる仕組みの導入なども検討している。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H5X_Z01C15A2PP8000/
自民議連、診療報酬プラス改定を決議
2015/12/9 19:54 日本経済新聞

 医療分野の政府予算の獲得をめざす自民党の議員連盟「国民医療を守る議員の会」(会長・高村正彦副総裁)は9日、都内で総会を開いた。年末の2016年度予算編成の中で決める診療報酬を「全体でプラス改定とする」との決議を議員127人の全会一致で採択した。「良質な医療を守るためには相応の財源が必要」(高村副総裁)としている。

 診療報酬は医療サービスの公定価格で、16年度が2年に1度の改定年。日本医師会など医師や歯科医師、薬剤師、看護師の団体も同日に集会を開き、同じく全体のプラス改定を求める決議を行った。

 診療報酬は薬の公定価格「薬価」と診察料などの「本体」からなる。全体のプラス改定には診察料などの大幅引き上げが必要だ。



http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00310754.html
医療費増大の中、赤字病院深刻化 1病院あたり約6億円の赤字
12/09 17:37 FNN

「国民と医療を守るために、頑張ろう!」と声を上げているのは、医師たち。
今、ヤマ場を迎えている診療報酬の改定について、「下げるな」と訴えた。
診療報酬とは、わたしたちが病院で受ける手術や検査、薬など、国が内容ごとに決めた価格が、国から支払われる報酬。
つまり、この報酬は、医師や薬剤師の収入に影響してくる。
2015年は、2年に一度の診療報酬改定の年だが、引き上げを求める医師や薬剤師側に対して、財務省は、診療報酬を引き下げるべきだと主張している。
その理由は、厳しい財政状況の中で、毎年、医療費が増え続けているため。
こうした中、もう1つ財政に関わる問題として、赤字病院の存在が特に深刻化している。

静まり返った廊下。
誰もいない談話室。
ベッドに布団すら敷かれていない病室もあった。
北海道の南部に位置する人口およそ4,000人の町、厚沢部町(あっさぶちょう)。
厚沢部町国民健康保険病院は、この町で唯一の病院。
待合室は、診察を待つ地元の人たちで混み合っているが、2階の病室フロアをのぞいてみると、廊下は閑散とし、誰もいない病室が目立っている。
看護師は「69床が、うちのベッド数です。(そのうち今、入院しているのは?)けさで29人ですね」と語った。
この日のベッド稼働率は、およそ4割。
この状態が6年ほど続いているという。
看護師は「こっちは空き部屋です。空き部屋ですが、物を置かせてもらっています」と語った。
空いている病室には、使用しないベッドや、使わない医療器具が置かれていた。
町唯一の病院であるにもかかわらず、内科・外科・眼科の3つの診療科しかないため、利用する町民は全体の3割程度にとどまっているという。
厚沢部町の住民は、「ちょっとしたことは、厚沢部の病院来ますけど、検査の時は、道立病院に行ったり」、「函館(の病院)ですね。専門医ってなると、函館にある方が多いので」などと語った。
この病院の近くには、車でわずか15分ほどの場所に、別の総合病院が2つ。
また、小児科や産婦人科などの専門医にかかるため、車で1時間以上かけて函館まで通院する人もいる。
利用者不足により、この病院は毎年、2億円を超える赤字に見舞われている。
この赤字を補てんするために、国は、病院に毎年およそ1億4,000万円の交付金を投入している。
こうした赤字病院は、日本各地にあり、厚生労働省が、全国155の公立病院をサンプル調査した結果、1病院あたり、およそ6億円の赤字となっていることがわかった。
その実態をふまえ、国は、地域医療施設の再編を促している。
しかし、この病院をあてにする入院患者からは、「近くにこの病院があることは、最高のことだと思っています。ほかの病院、行きたくないもの」、「(病院は)あった方がいい。今度、どこに行ったらいいかわからん」などと話している。
厚沢部町では、病院存続のため、民間企業と連携し経営の改善を図るほか、入院施設を持たない診療所へ移行し、必要な患者には、近くの病院に入院させることなどを検討している。
社会の高齢化も進む中で、地域医療の充実と経営の効率化を、どう両立させるのか。
大きな課題が残されたままとなっている。



http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_all&k=20151209033579a
研修医の3割が「うつ」、米研究
〔AFP=時事〕(2015/12/09-14:13)

【ワシントンAFP=時事】研修中の若手医師のうち、3分の1近くがうつ病や抑うつ症状を患っているとの調査研究が8日、米国で発表された。治療行為に悪影響を与える恐れもあると警鐘を鳴らしている。(写真は手術中にモニターを見る医学生)
 調査は1963年までさかのぼって研修医1万7000人余りを対象に実施したもので、米国医師会雑誌に発表された。
 米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院と米ハーバード大学医学部のダグラス・マタ医師が率いたこの調査は、医師計1万7560人のデータが含まれる研究54本の系統的レビューやメタ分析を行った。
 うつ病や抑うつ症状を患う研修医の比率に関する情報が含まれる先行研究を分析したところ、こうした病気や症状にかかっていた医師は1万7560人中5000人近くと、全体の29%に達することが分かった。
 多くの若手医師にとって研修期間中はストレスが大きく、睡眠もあまり取れないことが多い。これまでの調査で研修医は一般の人よりもうつ病にかかる比率が高いことは知られていたが、その具体的な比率が明らかにされたのは今回が初めて。
 過去の調査では、研修医の抑うつ症状が患者ケアの質の低下や医療ミスの増加につながる恐れも指摘されていた。
 今回の調査に当たった研究者らは、卒後医学教育(医学士の学位取得後の教育)を受けている人のうつの予防・治療方法を見いだすには、研究をさらに重ねる必要があると指摘している。【翻訳編集AFPBBNews】



http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/index.html
【京都新聞】<社説>
医療費の抑制  問題多い政治的先送り

[京都新聞 2015年12月09日掲載]

 医療サービスの公定価格となる診療報酬の2016年度改定で、政府は全体を1%前後引き下げる方向で検討を進めている。
 引き下げは、診療報酬のうち医薬品や医療材料などの薬価部分が主体で、日本医師会の反発が強い医療技術料など本体部分には切り込まない。来夏の参院選への配慮とみられ、抑制目標に足りない分の対応も先送りする見通しという。
 日本は、団塊の世代が65歳を超え、今後さらなる高齢化と現役世代の減少が進む。年間医療費は40兆円を超えて伸び続けており、いかに膨張に歯止めをかけ、持続可能な医療保険制度を築いていくか議論を後回しにすべきでない。
 医療費は税金と保険料、1~3割の患者窓口負担で賄っており、診療報酬が1%下がると計4300億円ほどの負担軽減になる。
 薬価部分では、公定価格を下回っている薬の市場価格に合わせ1・4%程度引き下げることが固まっている。新たに販売するジェネリック医薬品(後発薬)価格も新薬の原則5割に下げ、普及を促す。
 一方、医師らの技術料など診療報酬の4分の3を占める本体部分は微増を認め、全体の引き下げ幅は縮まる。アベノミクスが目指す物価・賃金の上昇に見合う上乗せが必要との理由に加え、参院選に向けて医師会の支援を強固にしたいという与党の思惑が透ける。
 政府は今年6月、今後3年間の医療費の伸びを1兆5千億円程度に抑える目標を定めたが、今回の1%前後の抑制では追い付かない。このため医療費の患者負担に上限を設けている「高額療養費制度」で、現役世代より負担が軽い70歳以上を念頭にした見直しを16年末までに決める方針だ。高齢者の反発を避けて具体化は選挙後に回す見込みだが、これでは国民への「負担隠し」ではないか。
 医療保険財政のひっ迫から現役世代の負担感が強まる中、世代間、負担能力に応じた公平化をどう図っていくかは重要だろう。だが高齢者らの負担増に伴って治療選択の幅が狭まり、経済力による医療格差が広がらないかなど慎重な検討が必要だ。安易に穴埋めの条件とするような話ではない。
 医療費が伸び続ける一方、地方の医師不足や在宅医療の整備などの課題は山積している。特定の政治的思惑ではなく、全体的視野でより効果的に費用を医療の質の維持、向上に役立て、いかに国民それぞれが負担していくか。政府には丁寧な説明と、開かれた議論で合意を得ていく姿勢を求めたい。



http://www.jiji.com/jc/zc?k=201512/2015120900245&g=eco
診療報酬のプラス改定要望=自民議連
(2015/12/09-10:51)時事通信

 自民党の議員連盟「国民医療を守る議員の会」(会長・高村正彦自民党副総裁)は9日、国会内で会合を開き、2016年度診療報酬改定で、医師の技術料に当たる「本体」部分と「薬価」を合わせた全体の改定率の引き上げを求める決議をまとめた。
 会合には、代理を含め約260人の議員が出席。高村会長は「医療機関をめぐる状況は依然として厳しい。良質な医療提供体制を守るためには相応の財源が確保される必要がある」と訴えた。 
 決議では、薬価引き下げで生じる財源を診療報酬改定に活用することや、地域医療を支える「かかりつけ医」を適切に評価することなどを求めた。



http://mainichi.jp/articles/20151210/k00/00m/040/043000c
医療事故
報告は26件…11月 医療機関が慎重姿勢か

毎日新聞2015年12月9日 20時51分

 10月に始まった医療事故調査制度で、医療機関から死亡事故の報告を受ける「日本医療安全調査機構」(東京都港区)は9日、11月に全国から26件の報告があったと発表した。20件(後に1件取り下げ)だった10月からは増加したが、年間で1300〜2000件という事前予想より少ない状況が続いている。

 事故を報告するかの判断は医療機関に任されており、医療機関が慎重になっている可能性がある。10月に関東地方の病院で姉(71)を亡くした埼玉県の男性(67)は、医療機関が事故の疑いのある死亡を全て報告することや、遺族側にも調査を求める権限を与えることなどを提案している。男性の姉の死亡について病院は遺族と話し合いながら調査しており、男性は「病院が遺族と情報を共有することが大事」と指摘する。【古関俊樹】



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201512/544972.html
記者の眼
病床機能再編でリハビリに劇的変化が訪れる

2015/12/9 満武 里奈=日経メディカル

 「今のリハビリは、患者の求めるリハビリとはかけ離れている」──。

 こう語るのは日本慢性期医療協会会長の武久洋三氏だ。武久氏が代表を務める平成医療福祉グループの回復期リハビリテーション病棟では、在宅復帰機能を強化するため、摂食嚥下機能と排泄機能の訓練に力を入れる、独自のリハビリ手法を取り入れるようになった。

 2015年5月20日の介護給付費分科会では「リハビリテーションにおける医療と介護の連携に関する調査研究事業(2014年度)」の研究結果が示されている。この研究は脳血管疾患等リハビリや運動器リハビリを実施する病院、通所リハビリ事業所、通所介護事業所、居宅介護支援事業所の各1000施設・事業所を対象に行われたもの。このうち、通所リハを継続する患者にリハビリ継続理由を尋ねたところ、「身体機能を治したい」(78.8%)、 「筋力や体力をつけたい」(75.4%)といった心身機能に関する希望だけでなく、「移動や食事、入浴や排泄などの動作ができるようになりたい」(55.9%)、「社会的活動をできるようになりたい」(42.3%)といった希望を持つ患者が高い割合で存在することが明らかになった。

 一方で、実際のリハビリで実施された内容を見ると、筋肉トレーニング(86.7%)、関節可動域訓練(74.6%)、屋内での歩行訓練(71.7%)が中心で、排泄・入浴などのADL訓練は8.2%、摂食・嚥下の訓練は2.5%にとどまっていた。

 この結果から武久氏は「おむつをして経管栄養している人がリハビリに熱心になれるはずがない。患者のニーズに応えるリハビリを行うことで、人間性の回復を目指す」と考え、摂食嚥下訓練や排泄訓練に力を入れるリハビリを同法人の回復期リハビリ病棟に取り入れた。

 平成医療福祉グループの4施設で30人の患者を対象に、保険算定のルールに縛られることなく、その患者に必要と考えられる十分量の摂食嚥下訓練を言語聴覚士が2カ月間行い、効果を検証した。介入前は63%の患者が経鼻栄養、14%が経口摂取という状況だったが、1日平均5.6単位(112分)のリハビリを行った結果、83%の患者が経口摂取できる状態にまで改善した。

 排泄訓練についても、同グループの22施設で111人を対象に、その患者に必要と考えられる十分量の排泄訓練を2カ月間行った。当初はおよそ半数の患者がおむつを使用していた状況だったが、1日平均5.1単位(102単位)のリハビリが行われた結果、介入後は69%の患者が布パンツに切り替えることができた。

 今後起こる病床機能再編は、このような「人間性の回復を目指す」リハビリを取り入れる動きに拍車を駆けそうだ。

 団塊世代が75歳以上になり、医療供給量の不足が想定される「2025年」を乗り切るため、2014年6月に可決・成立した改正医療法には「地域医療構想の策定」が盛り込まれた。地域医療構想は、病床機能報告によって全ての病院・有床診療所の医療資源を把握し、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の機能別に、2025年の医療需要や必要病床数を二次医療圏単位で決めるもの。各地域の実情に合わせて検討した地域医療構想を基に、大がかりな病床機能再編が起こる見通しとなっている。
 
 『日経メディカル』2016年1月号で予定している特集「病床機能再編で変わる『勤務医』」(仮題)の取材のために訪れた芳珠記念病院(石川県能美市)で話を伺っていると、病床機能再編をきっかけに新たなリハビリ手法が生み出されたことが分かった。

 同病院は、320床のうち140床で7対1一般病棟入院基本料を算定していたが、「重症度、医療・看護必要度」の要件を維持するのが難しかったことや、患者の軽症化、在院日数の短縮化をきっかけに、2014年9月に病床を再編。7対1病床を78床に減らし、代わりにハイケアユニット(HCU)を10床新設したほか、2014年度改定で誕生した地域包括ケア病棟80床(現在は82床)に転換した。

 地域包括ケア病棟は、高度急性期や急性期からの亜急性期に移行した予定入院患者や、自宅や介護施設から緊急入院した患者を対象に、多職種協働で在宅・生活復帰を支援する機能を持つ。入院時から退院支援・調整を行うほか、生活機能の回復を目的にした「生活回復リハビリ」などを行う。ただし入院期間の要件は60日以内だ。

疾患別リハビリの通則に縛られない

 同病院では、地域包括リハビリ病棟を開設する際、疾患別リハビリの通則に縛られない「ポイント・オブ・ケア(POC)・リハビリテーション」という手法を考案した。患者の要求に合わせて、20分未満で個別の生活回復リハビリをタイミング良く行うのが特徴だ。特に、同病棟の4割を占めている認知症患者に効果的だという。

 ほうじゅグループ代表で地域包括ケア病棟協会会長でもある仲井培雄氏は、「認知症患者の場合、リハビリの計画やシミュレーションが難しい。本人の意に反して行っても断られたり、その内容を忘れてしまったりする」と語り、認知症患者を対象にしたリハビリの難しさを指摘する。

 一方のPOCリハビリでは、例えば患者が排泄したいと訴えた際に、排泄訓練を行う。「要求した際にすぐにリハビリを受けると、患者は『助けてもらった』という快の刺激を得ることができ、効率良いリハビリが可能になる」と仲井氏はその効果を話す。この手法を取り入れたことで、結果的に在院日数も減った。同病院の整形外科医、リハビリテーション医、内科医などから好評を得ているという。

 病床機能再編というと経営の視点から語られがちだが、今回の取材を通し、リハビリの手法という臨床的な部分にも影響を与えることを知り、意外な思いがした。

 本誌1月号の特集では、リハビリにとどまらず、地域単位や病院単位の病床機能再編、教育・研修施設の再編などで勤務医のキャリアや勤務環境がどのように変わるのかもリポートする予定だ。目下、取材が進行中。ご期待いただきたい。
 


http://www.newsalt.jp/health/%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%9C%81%E3%80%81%E5%BE%8C%E7%99%BA%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%E3%81%AE%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E5%BC%95%E3%81%8D%E4%B8%8B%E3%81%92%E3%80%80%E5%85%88%E7%99%BA%E5%93%81%E3%81%AE%E5%8D%8A
厚労省、後発医薬品の価格引き下げ 先発品の半額へ
2015年12月9日 新城 元 医療 NewSalt

2日、厚生労働省の薬価専門部会が示した2016年度の薬価制度改革の方針によると、特許切れ成分で製造された後発医薬品(ジェネリック医薬品)の販売価格を先発医薬品の6割から5割(10品目を超える内用薬は4割)へ引き下げ、市場での後発医薬品の販売シェアを高める。

6月に行われた政府の行政改革審議会において後発医薬品の販売シェアを高め、患者の自己負担と国の医療費軽減を進めるため、後発医薬品の使用割合を2020年までに80%に高める方針が示されていた。同審議会で示された主要国の後発医薬品の市場シェア(2009年)は、米国13%、ドイツ19%、英国23%であるのに対し日本は7%と、諸外国に比べてシェアは低い。後発医薬品の使用割合80%の目標達成を早期にすべきだとしていた。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45477
時代錯誤の厚労省、医師養成に口出しはやめて
あまりにちぐはぐな政策に医療現場は大混乱

森田 麻里子
2015.12.10(木)JB Press

オバマケア、連邦政府の補助金支給は合法 米最高裁

米ワシントンD.C.の最高裁前で、連邦政府の補助金支給を合法とした判決後に集会を開いたオバマケアの支持者ら(2015年6月25日撮影)〔AFPBB News〕
 2020年度から、医学部の定員を減らすことが議論されている。2008年度から定員を増員し、医学部新設も進められている最中だというのに、なぜ急に定員を減らすことになったのだろう。


 さらに、医療界では、2017年から新専門医制度が始まる。この制度では、初期研修を終え、専門研修を始める医師(後期研修医)が市中病院から大学に集められることになりそうだ。

 これは2004年の初期研修制度制定によって大学勤務の医師が減少した反動と見なすことも可能だ。

 前者は厚生労働省の政策、後者は業界団体(学会)が主導し、厚労省が支援した。国は、業界団体と協力して、医師養成数や養成システムを通じて医療をコントロールしようとしていることになる。

国の統制による医師の育成と医局制度

 私にはこの政策が場当たり的に感じられる。そもそも医師養成システムを国や業界団体が管理することが可能で、それが長期的に国民のためになるのだろうか。

 実は、国が大学を通して医師育成を統制する基盤は、戦時中に完成した。戦争による医師不足への対策として、1940年からの数年間で43校もの医師養成機関が増設されたのである。

 さらに1973年には、国民皆保険制度導入後に増大してきた医療需要に対応するため、1県1医大構想が閣議決定された。

 この当時、ほとんどの医師は大学医局に所属して研修・研究を行い、専門分野を確立していった。感染症に代わって増加してきた脳血管疾患やがんを克服するため、医学研究にも多くの税金が投入された。

 医師は研修・研究をさせてもらう代わりに、医局が決定する人事に従い、地方の関連病院で勤務した。そして、適当な時期になれば、医局を辞めて、地方病院に就職したり、開業した。

 これはかつての製造業に酷似する。国は繊維産業に代わって鉄鋼業に資源を集中投資した。そこで働く人たちは会社の指示通りに転勤し、一定の年齢になれば関連会社に再就職した。

 確かに、このような国家総動員体制によって、GDP(国内総生産)で年間15%を超える高度経済成長を遂げたという面はある。


 しかし、様々な分野で日本の製造業が世界をリードするようになると、国が主導する「追いつけ追い越せ」の政策は効力を失った。独自のアイデアと工夫によってしか企業は成長できなくなったのだ。

 医療界でも、1970年代に10%にも満たなかった高齢化率は2014年に26%となり、1990年頃に約20兆円だった国民医療費も2014年には40兆円に膨らんだ。医療政策は医療費を抑制する方向へ舵が切られ、大学の運営交付金の減額により、研究費は横ばいかやや減少傾向となった。

 政府は、医師数を抑制するために幅広い領域をカバーする総合医の養成を打ち出し、医療資源の節約のため在宅医療を推進するようになった。

ニーズを無視した国の政策


 この結果、国民の医療ニーズは増えているのに、多くの病院の収支は急速に悪化するという皮肉な状況を招いた。

 さらにインターネットの発達により、大学が情報を独占することができなくなった。大学にいなくても最先端の論文が読めるようになり、自分で就職先を探すことも容易になった。

 一方、大学にいても研究費は減っているし、どの時期にどこで働くかも、他の医局員の事情に左右されて自由に選べない。大学の優位性は消えた。

 そこで、自分でキャリアを最適化したい医師は、医局を離れて生きていくようになった。2014年度には、56.3%の医学生が市中病院での初期研修に採用されており、その後も大学と関係なく臨床や研究を行う医師が出てきている。

 私もその1人だ。医師として成長するためには、経験できる症例数と、その中でいかに診療を任せてもらえるかが重要と考え、縁もゆかりもなかった仙台で昨年度から働き始めた。

 市中病院の中には、小さい組織ならではの意思決定の速さを利用していち早く変化に適応し、大学を超える利益、業績を上げる病院がでてきている。

 私が勤務している仙台厚生病院は、もともと結核患者の病院だったが、目黒泰一郎理事長のもと循環器・呼吸器・消化器に特化した病院として生まれ変わった。


 その結果、平成25(2013)年度には年間退院患者数が循環器疾患で全国第2位、消化器疾患で第2位、呼吸器疾患で第4位(東北ではいずれも第1位)となり、2013年度の利益率は16.5%と、全国の医療法人でトップになっている。かつてなら、考えられないことだ。

 なぜ、このようなことになってしまったのだろう。それは、医療界に時代に合わない規制が残っているのが原因だ。残念ながら、厚労省も医師会・医学会もこのことを認識していないように見える。

 例えば、総合医が必要となると、国家総動員と言わんばかりに、総合医ばかりを作る方向へ制度を急に作り変えてしまう。

大学で総合医療の不思議

 特に内科では、すべての医師に心臓も肺も腎臓もジェネラルに診療することを求めるカリキュラムに変更されてしまった。そこに多様性、競争、チェックアンドバランスという発想はない。

 その結果として国民につけが回る。国民のニーズが多様化した現在、臓器別専門医もまた求められているのに、新しいカリキュラムでは専門性を磨くのが遅れ、専門医が不足しかねないからだ。

 驚くことに大学でも総合医を養成しようとしている。時代の変化を読めなさすぎる政策は、ため息を通り越して滑稽ですらある。

 そもそも大学は最も総合的でない診療をする施設だろう。在宅医療についても同じで、限られた資源しか利用できない在宅の医療は、潤沢な医療資源を使って最先端の医療を目指す大学での医療とは対極に位置するものである。

 国が大学を通じて医療をコントロールすることはもはや困難だ。

 それぞれの地域、病院、医師が、国や大学を通じたトップダウンの司令系統だけではなく、独自の横のつながりを持って自律的に動き始めている。

 医療が多様化しているとき、その一つひとつに合わせたきめ細かな政策や、時代に合わせたスピード感ある対応をするには、国という単位は大きすぎる。

 日本の人口も経済も縮小していく中で、もっと効率よく人的・経済的資源を使わなくてはいけない。国に頼るのではなく、私たち医療者も一人ひとりが国民のニーズに耳を傾け、それに応えるよう努力すべきである。

参考:
『戦後経済史』野口悠紀雄
『平成27年版高齢社会白書』内閣府
『国民医療費の状況』厚生労働省



http://www.sankeibiz.jp/business/news/151210/bsg1512100500001-n1.htm
日医など関係団体、医療財源確保決議
2015.12.10 05:00

 日本医師会(日医)など医療関係40団体が参加する「国民医療推進協議会」(会長・横倉義武日医会長)は9日、東京都内で大会を開き、十分な医療・介護を提供するため2016年度予算編成で財源確保を求める決議を全会一致で採択した。

 出席した自民党の高村正彦副総裁は、予算編成の焦点である診療報酬改定に関し「財政的に難しい状況にある」とした一方で、医療提供体制の安定のため必要な財源投入を目指す考えを示した。診療報酬改定では、薬剤師が重複投薬や薬の飲み残しなどの管理を十分できていないと指摘されており、財務省は薬剤師の技術料である調剤報酬の引き下げを求めている。



http://mainichi.jp/articles/20151210/ddm/005/010/041000c
診療報酬
「本体」微増方針 財源に高額療養費見直し

毎日新聞2015年12月10日 東京朝刊

 医療の公定価格である診療報酬の2016年度改定に関し、政府は薬価を除いた医師らの技術料など「本体」を微増とする方針を固めた。財源は患者の自己負担に上限を定める高額療養費見直しで捻出する。国民負担につながるため、具体策作りは来年夏の参院選後とする方針だ。【堀井恵里子、阿部亮介】

 診療報酬はほぼ2年に1回改定する。来年度の診療報酬改定で、政府は、「薬価」と「本体」を合わせた全体をマイナスとする方針を決めている。最大の焦点は、10年ぶりの「本体マイナス」となるかどうかだった。

 政府は来年度予算の概算要求で6700億円だった社会保障費の自然増を約1700億円圧縮する方針を決めている。市場価格に合わせた「薬価」の引き下げは来年度は1500億円台になる見通し。さらに約200億円の削減について、当初、財務省は本体に切り込む意向だった。

 しかし、日本医師会の横倉義武会長は9日に東京都内で開かれた集会で「診療報酬改定が厳しい内容となれば、医療現場は疲弊し、国民に必要かつ十分な医療を続けられなくなる」と反発。自民党の厚生労働関係議員からも本体増を求める声が強い。

 このため、政府は本体微増もやむを得ないと判断した。

 本体微増の財源に関し厚労省は、来年度については景気改善で保険料収入が増えている全国健康保険協会(協会けんぽ)への国庫補助削減分(数百億円程度)を充てる意向だ。ただ、17年度以降も同様の財源が出る保証はない。そこで、高齢者の高額療養費について、現役世代より優遇されている高齢者の負担上限額を引き上げる方向だ。

 国民負担につながるため具体策は来夏の参院選後とする。ただし、確実な実施を担保するため、政府は年末までに、「16年末までの具体案取りまとめ」を決定する方針だ。

 それでも負担増方針が参院選前に決定することになり、自民党内には「野党に攻撃材料を与える」など反発する声もある。

 この他、ジェネリック(後発医薬品)の見直しでも財源の積み上げを図る。新発売される後発医薬品の価格を現行の「先発品の原則6割」から「5割」に引き下げる方向は決まっている。厚労省は他に、メーカーの想定以上に売れ、販売額が巨額な医薬品の価格を特別に引き下げる仕組みの導入も検討している。
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  1. 2015/12/10(木) 05:58:38|
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