Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

11月22日 

http://www.m3.com/clinical/news/376429
手術時のアドレナリン濃度誤認に警鐘
日本医療機能評価機構、医師と看護師で目立つ食い違い

2015年11月20日 (金)配信 m3.com

 日本医療機能評価機構は11月16日、手術時にアドレナリン濃度を間違えたまま患者に皮下注射する誤投与が報告されているとして、医療安全情報で警鐘を鳴らした。アドレナリンの希釈倍数が医師の意図と看護師で最大250倍の差があった事例も認められている。同機構では、指示した医師と準備する看護師の双方が濃度や用法を確認するなどした事故防止策の徹底を呼び掛けている。

 同機構に報告された事例によると、医師はアドレナリンの50万倍希釈液(0.0002%ボスミン)を皮下注するため、手術前に器械出し看護師へ「ボスミン生食をください」と指示した。看護師は、院内製剤の0.05%ボスミン液(アドレナリン2000倍希釈)と受け止め、医師に「0.05%ですか」と確認したところ、医師は詳細を確認せずにうなずいたという。看護師は、0.05%ボスミンが外用目的の製剤と思わず注射器にセット、医師が手術部位に計60mLを皮下注射したところ、患者に頻脈や高血圧が出現し、心室細動に至った。

 別の事例では、医師が手術中に外回り看護師へ「10万倍ボスミン」と指示したところ、その看護師は「3000倍ボスミンならあります」と答えたという。3000倍ボスミンが外用目的の院内製剤と知らなかった医師は、そのまま準備するよう伝えた。看護師は清潔野のビーカーに3000倍ボスミンを注ぎ、医師はビーカーから注射器に充填して7mLを局所注射した。患者の血圧は上昇、脈拍数が増加し、心室細動となった。

 日本医療機能評価機構へは、2012年1月-15年9月に同様の事例が6件報告されている。同機構は、事故を発生させた医療機関が術中にアドレナリン希釈液を使う場合は医師と看護師がそろって薬品名だけでなく濃度と用法を確認したり、外用目的の院内製剤に「禁注射」と記したラベルを貼り付けたりしている再発防止策を紹介し、注意を徹底するよう求めている。



http://blogos.com/article/146012/
新設医大開学と小児科、産婦人科減少、そして血液内科 この国は医療をどう考えている
中村ゆきつぐ
2015年11月22日 15:55  BLOGOS

お世話になっている先生の開業15周年祝賀会、そして以前自衛隊で仕事を一緒にした先生への理事長交代就任記念式典に参加してきました。

地域の患者さんのかかりつけ医としての信頼の構築の歴史、365日外来!そして在宅医療への拡大と地域社会への教育!中堅病院の成功例を確認できました。何せ若い事務、パラメディカル等のスタッフの動きがいい。これも働く人たちが組織として訓練されている証です。防衛医大の先生も多数お見えになっていましたが、以前の外科の先生が侍従医になられていたのは驚きました。

このように地域医療を含めていろいろな施策がなされ、各医院や病院が厚労省の指示で生き残りを図ろうとしている中、また新たな新設医大が認可内定のニュースが流れてきました。(成田市:医学部新設 医療福祉大に内定 国の特区分科会 /千葉)千葉地方版です。

国際医療福祉大という栃木を拠点にする大学が唯一開学に手を挙げ、成田市で国際的に活躍できる医師を育てる方針だそうです。まあ東北と違い出来レースなんですが、東北を含めて2校目の医学部新設です。医師会を含め私が今まで言ってきたことは全く考慮されません。

医学部を医療過疎の千葉に作り医療状況を改善させるということは今すぐに医師が排出されるなら悪い話ではありません。しかし2017年開学とすると、国家試験合格は2023年、2年の研修終了は2025年。あの団塊の世代が75歳になる時です。やっと医師をコンスタントに排出できるようになったと思ったら、今の少子化が解消されない限り医療ニーズ、いや医師の必要性は減っていきます。それこそ歯科や弁護士、シャープの液晶のように在庫がたまっていくでしょう。(まあ医師を過剰にして人件費を下げることを狙っているのかもしれませんが)

また開学にあたり医師の確保は国際医療福祉大で賄うことが可能であろうと書かれていますが、全ての国際医療福祉大関連病院に白血病治療、幹細胞移植などの高度な血液内科臨床はおこなわれていません。(那須、塩屋に医師はおり、リンパ腫などの治療や外来は実施されています。)

私が4年前獨協に来たのは栃木に勤務してくれる血液内科医がいなかったからで、その状況はまだ大きく変わっていません。また若い先生が血液内科医になろうとする方は今まで述べてきたようにやはりまだ少なく、まして田舎に勤務してくれる方は少ないままです。獨協越谷なんて血液医師はわずか2人で毎日朝から夜8時以降まで外来です。

何度も書いていますが、医師が少ないのは本当に勤務医の一部の専門性の強い領域です。そして仕事は忙しく、ミスの危険性は高まり、訴訟の危険性は高く、なり手がさらにどんどん減っていきます。(「しんどい医療」とは ではどうすれば)

そして今回小児科、産科はどんどん減り続けていることが厚労省から報告されています。(小児科21年連続、産婦人科24年連続で減少 厚労省)21年と24年!まさに無策です!一部病院が儲からないということも原因の一つです。別の記事(産婦人科設置の病院 過去最少に)からの引用です。

>一方、人口10万人当たりの病院の常勤医師の数は全国の平均で165.3人と前の年より3人増えていました。医師の数が最も多かったのは高知県で234.8人、次いで、徳島県が215.9人、福岡県が208.7人でした。最も少なかったのは埼玉県で114.8人、次いで、新潟県が129.7人、福島県が131.3人でした。

医師全体として増えているんですよ!すでに今!つまり医師数を増やすのではなく偏在を変える手段が必要なのです。なのになぜ新設医大!でも埼玉の医師数本当に酷いな!この記事から少し変わったのだろうけど(埼玉の救急問題;週間ダイアモンドより 上原先生は長島やイチローみたいなもの)

出生率を上げようということが今回安倍内閣から言われていますが、安心に産んでくれる産科(コウノドリいいですね!)、病気になった時見てくれる小児科、それがなきゃ安心して働けない、つまり子どもを産めないと思うのですが。保育所をいくら作ったって、いくら新設の病院作っても、一番最初と最後の足りないものを作らなければ、それは税金の無駄遣い、非効率だと思うのですが本当にわかっていないのでしょうか。それとは別ですが、血液内科も含めて悪性新生物を扱う医師もまさに今増やさないと今後難民が増えるだけなのですが。

前回の診療報酬も含めて、安倍内閣、いや自民党の医療政策、本当にダメだと思っています。



http://getnews.jp/archives/1264462
何色のお薬なら飲みたいですか?(効果がなくても)
DATE:2015.11.22 12:00 imedi(アイメディ)/ ガジェット通信

薬の色の心理的効果は結構重要です

大事なプレゼンの数時間前。昨晩遅くまでかかってリハーサルまでやったのに、今になって緊張してお腹が痛くなり、脂汗まで出てきたあなた。

すると、後ろで同僚の声がしました「これ、めっちゃ効くから飲んでみー」。
お腹が痛すぎて藁にもすがりたいあなたは、すごい勢いで振り返りました。さて、友人が手にしていた薬が何色だったら、あなたはそれをもぎ取るでしょうか?

■■赤い薬 ・・・与える印象:覚醒、活発。
   実際に、青とか白、あるいは緑色よりも圧倒的に痛み止めによく使われる色です。
■■青い薬 ・・・与える印象:精神の安定性。
   青と聞いてサッカーをイメージするのはイタリア人だけです(どうでもいいですがね)。
   赤と比べると頻繁に安定剤に使われる色です。
■■緑の薬 ・・・与える印象:恐怖感がなくなる。
   ある研究によると、緑の薬は赤や黄色の薬と比べ、恐怖症からくる不安障害の患者に2倍以上の効果があります。
□□白い薬 ・・・与える印象:胃腸や潰瘍に良さそう。
   実際、糖以外はほとんど何も含まない錠剤でも、飲むと効果がホントに現れるらしいです。

ということで、この場合友人が持ってる薬は「白」である可能性が高いと思われます。治るといいですね。でもそれ、ただの飴ちゃんかもしれませんよ…?

”効果がないのに効果がある薬”の効果

イギリス人のKevin Fong(ケビン・フォン)医師によると、イギリス国内の開業医のほとんどは、少なくとも1回以上「特に有効成分が含まれていないただのタブレット」を患者に処方したことがあり、もちろん場合によりけりですが、症状にものすごい効果を示す場合があるとのこと。

慢性痛の患者には特に効果的らしいです。これは俗にプラセボ(偽薬)効果と言われていて、鍼治療が人によっては偏頭痛に劇的に効果があるのもこの効果のひとつだそうです。

また、「手術するよ〜」と言って、特に何の処置も施さない”手術の真似事”のようなものでも効果がある場合があるそうです。

これが何故なのかは多くの研究がなされてきました。
そして最近の研究で、この無意味なただのタブレットを体内に摂取すると、実際に私たちの身体で本当に何らかの変化が起きることがわかってきています。

パーキンソン病で効果が

ニセ薬をパーキンソン病の患者に与える実験が行われました。

パーキンソン病とは、脳内の黒質という場所にある神経細胞が変性したり無くなったりして、黒質で作られる「ドパミン」という神経伝達物質が減少してしまうことにより、脳から全身に出される運動の指令がうまく伝わらなくなり、体の動きが不自由になる病気です。

(パーキンソン病のメカニズムより)

非常に簡単に言ってしまうと、「パーキンソン病」は「ドパミンの量」が増えれば改善が見込めます。

実験では、軽度〜中程度の35人を対象に、無意味なただのタブレットを与えると、ドパミンレベルが通常にまで改善されたそうです。

ドパミンを出すパーキンソン病治療薬である”L-dopa”の服用なども並行させながら行われた実験ですが、実際に得られた効果のほとんどはただのタブレットによるものだったそうです。

出典:Placebo effect of medication cost in Parkinson disease-neurology.org(PDF形式。閲覧には登録が必要)
http://www.neurology.org/content/early/2015/01/28/WNL.0000000000001282

「ただのタブレットだ」って患者に教えたらどうなるの?

やはり気になるのは上記のことではないでしょうか。
ある実験では、過敏性腸症候群(IBS)の患者に教えたところ、それでも60%の患者には効果があったそうです。

「ただのタブレットだから」と言って、何も飲まなかった人たちの改善率は35%だったので、それと比較するとかなり効果があると言えますね。
ちなみにこの記事では、「医者に行き、処方箋をもらう」という一連の儀式にこそ、心理的な効果があるのかもしれないと締めくくっています。

薬を勧めない流れは確実にあります

近年、『薬をやめれば病気は治る(岡本 裕著,幻冬舎新書,2013年)』とか『薬剤師は薬を飲まない(宇多川 久美子著,廣済堂新書,2013年)』といった本が話題を攫っていますが、もしかしたら、”病は気から”という昔からの諺はかなり本質を突いていたのかもしれません…。

【参照】

How can a dummy pill have a real effect on your body? - bbc.co.uk
  http://www.bbc.co.uk/guides/zq8mhv4
パーキンソン病のメカニズム
  http://www.parkinson.jp/about/mechanism.html
6 ‘Placebo Effect’ Mysteries: Why Americans Respond More Strongly To Fake Pain Pills And Other Oddities- medicaldaily.com
  http://www.medicaldaily.com/6-placebo-effect-mysteries-why-americans-respond-more-strongly-fake-pain-pills-and-360472


http://mainichi.jp/select/news/20151122k0000m010112000c.html
診療報酬:マイナス改定へ 本体の引き下げ焦点
毎日新聞 2015年11月22日 09時00分

 政府・自民党は、医療の値段である診療報酬を2016年度の改定で引き下げる調整に入った。マイナス改定は8年ぶり、前回(14年度)は消費増税分が加算されており、実質では2回連続マイナスになる。診療報酬のうち、「薬価」部分は1%超の引き下げとした上で、医師や薬剤師の技術料など「本体」部分も横ばい程度で調整しており、10年ぶりの本体マイナスに踏み込むかが焦点になる。【宮島寛、阿部亮介】

 診療報酬改定は国家財政に与える影響が大きく、16年度予算編成の最大の焦点の一つ。厚生労働省は8月末の概算要求で、高齢化に伴う年金・医療費などの自然増を6700億円と見積もっているが、政府の財政健全化計画に基づき、1700億円程度の圧縮を求められている。同省は来年度に大きな制度改正などがなく、主に診療報酬改定で解消しなければならない。1%下げで約1100億円の国費抑制効果が見込まれ、全体の下げ幅は最大1.5%程度を軸に検討している。

 診療報酬のうち、薬価については毎回、実勢価格下落に合わせ1〜2%程度下げてきた。来年度も同水準の引き下げをする。一方、本体でも、大病院に隣接して多くの処方箋を受け付けるだけで、服薬指導などをしていない「門前薬局」の報酬引き下げなど薬剤師の技術料にも切り込む。

 ただ、日本医師会は来春に会長選を控えており、大幅なマイナス改定には自民党内に来夏の参院選への影響を懸念する声がある。このため、本体のうち医師の技術料などへの切り込みは抑え、「政治的に許容できる範囲」(自民政調幹部)で調整する方針だ。



http://mainichi.jp/edu/news/20151122ddlk22100018000c.html
医学部定員:16年度「地域枠」新たに6人 東海、帝京、日医大 /静岡
毎日新聞 2015年11月22日 地方版

 2016年度医学部入試で、卒業後に県内の地域医療に従事する条件で入学定員を増やす「地域枠」が、東海大(神奈川県)と帝京大(東京都)、日本医科大(同)で計6人設定された。今年度入試で近畿大(大阪府)と川崎医大(岡山県)に各5人初設定されており、これで地域枠は5大学計16人となる。【荒木涼子】

 近畿、川崎医大には今春、地域枠で計7人が入学した。県は医学部志望の学生の出身地を問わず“静岡枠”として奨学金を負担し、将来の県内の医師確保につなげる。

 地域枠で合格した場合、月20万円の奨学金を6年間で計1440万円借りられる。卒業後は臨床研修を終え、県が指定する地域医療の中核を担う公的病院などで9年間勤めると、返還免除となる。

 県地域医療課によると、奨学金を地方公共団体が負担する地域枠は10年度に本格化。医学部の定員増は文部科学省の認可が必要で、16年度入試について同省は10月末、新たに国私立9大学28人の定員増となる静岡など6県の地域枠を認可した。

 12年末現在の県内の人口10万人当たりの医師数は186・5人。全国平均226・5人を大きく下回り41位となっている。

 県には別に、120人分の奨学金制度「医学修学研修資金」もあるが、地域枠は「早い段階で県内で働きたいという明確な目標を持った学生を応援できる」と利点を挙げる。同課担当者は「少しでも多くの医師に県内で働いていただき、地域医療を充実させていきたい。奨学金の返還免除後も残ってもらえれば」と話している。



http://mainichi.jp/select/news/20151122k0000m010112000c.html
診療報酬:マイナス改定へ 本体の引き下げ焦点
毎日新聞 2015年11月22日 09時00分

 政府・自民党は、医療の値段である診療報酬を2016年度の改定で引き下げる調整に入った。マイナス改定は8年ぶり、前回(14年度)は消費増税分が加算されており、実質では2回連続マイナスになる。診療報酬のうち、「薬価」部分は1%超の引き下げとした上で、医師や薬剤師の技術料など「本体」部分も横ばい程度で調整しており、10年ぶりの本体マイナスに踏み込むかが焦点になる。【宮島寛、阿部亮介】

 診療報酬改定は国家財政に与える影響が大きく、16年度予算編成の最大の焦点の一つ。厚生労働省は8月末の概算要求で、高齢化に伴う年金・医療費などの自然増を6700億円と見積もっているが、政府の財政健全化計画に基づき、1700億円程度の圧縮を求められている。同省は来年度に大きな制度改正などがなく、主に診療報酬改定で解消しなければならない。1%下げで約1100億円の国費抑制効果が見込まれ、全体の下げ幅は最大1.5%程度を軸に検討している。

 診療報酬のうち、薬価については毎回、実勢価格下落に合わせ1〜2%程度下げてきた。来年度も同水準の引き下げをする。一方、本体でも、大病院に隣接して多くの処方箋を受け付けるだけで、服薬指導などをしていない「門前薬局」の報酬引き下げなど薬剤師の技術料にも切り込む。
 ただ、日本医師会は来春に会長選を控えており、大幅なマイナス改定には自民党内に来夏の参院選への影響を懸念する声がある。このため、本体のうち医師の技術料などへの切り込みは抑え、「政治的に許容できる範囲」(自民政調幹部)で調整する方針だ。



http://www.m3.com/news/iryoishin/377185
筋弛緩薬の誤投与死亡事故、「10の疑問」
医療の質・安全学会、要因と再発防止策を解説

2015年11月22日 (日)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 11月22日、千葉県で開催された第10回医療の質・安全学会学術集会のシンポジウム「最近の医療事故から薬剤に関する医療安全を考える」で、上尾中央総合病院(埼玉県上尾市)医療安全管理課の渡邊幸子氏は、2014年12月末、抗菌薬マキシピームの代わりに、筋弛緩薬マスキュレートの誤投与で患者が死亡した事故について、外部委員として携わった経験を踏まえ、報告した。


 渡邊氏は薬剤師で、当時は大阪府内の病院に勤務。同じ大阪にあるこの病院で発生したこの事故の報道を聞いた際、「10の疑問」がわいたと言う。その視点から、既に当該病院のホームページで公開された事故調査報告書を分析するとともに、再発防止策を解説した。事故調査は、2015年1月から5月にかけ、4人の外部委員を含む12人で実施。

 事故が発生したのは12月29日で、年末のため通常休日の1.4倍もの処方オーダーがあるという多忙な時期。通常使用していた後発医薬品セフェピムが供給不全で、一時的な代替薬としてマキシピームを使用していたため、注射薬自動払い機に装填しておらず、人手で取り出す対応をせざるを得なかったなど、ヒューマンエラーを招きやすい要因がさまざま重なり、生じた事故だった。投与を担当した看護師のダブルチェックも、マスキュレートとマキシピームのバイアルが類似していることなどから、機能しなかった。「ヒューマンエラーは結果であり、原因ではない。事故調査では、背景要因を漏れなく洗い出すことが必要」(渡邊氏)。

 渡邊氏は、病棟業務も始めるなど、10年前と比べても、薬剤師の業務は各段に増加している点も踏まえ、再発防止策を検討することが必要だとした。その一つが、ハイリスク薬の細分化と安全対策の強化。当該病院では、筋弛緩薬は、抗がん剤や抗ウイルス薬など他の薬とは別の保管庫に保管し、「毒薬」と注意喚起する表示を薬剤に張り、払い出し先として所定の部署以外を選べないようにした。さらに、「ハイリスク薬管理システム」(筋弛緩薬に限らず、保管庫に入れた薬については、処方情報と連動した薬剤が収納された扉だけが解錠され、薬剤取り出し後は自動洗浄される)も導入。

 そのほか、注射薬全般については「薬剤照合システム」(処方せんと薬剤本体のそれぞれのバーコードを照合して取り違えを防ぐ)を導入するなど、ヒューマンエラーを起こさないためのシステムの構築のほか、投薬前の「ダブルチェック」は、「正しい」という前提ではなく、「間違いがないか」という視点で確認するようにするなどの再発防止策を当該病院では講じたという。

 渡邊氏が発表した「10の疑問」と、事故調査報告書から分かるその答えは以下の通り(発表内容を編集部で抜粋)。

【疑問1】年末年始の繁忙度に見合う勤務体制が取れていたか?
・通常休日の約1.4倍の処方オーダー。日勤開始時点で、12月29日当日の緊急処方と翌30日分の定時注射薬の薬剤トレイが、約200ケースあり、薬剤師2人で担当。緊急内服処方の約44%は正午までの3時間に集中し、内服薬担当薬剤師は注射調剤まで手が回らない状況。
・29日は、医薬品卸業者からの麻薬の納品があり、病棟からの麻薬空アンプルの納品処理も通常より多かったため、深夜勤務明けの薬剤師が手伝うことはできなかった。
・医師・看護師からの薬剤に関する問い合わせ電話が頻繁にあり、業務がしばしば中断される状態。

【疑問2】注射薬のオーダーは入力だったのか、それとも読み取りエラーを招きやすい手書き処方だったのか?
・主治医は、他剤とともに、「マキシピーム1gを2バイアル、生食注2ポート100mL/キット1本を朝夕3日間点滴」をオーダー入力。薬局からの定時配送が14時だったため、主治医は薬局に電話、「薬を急いで上げてほしい」と依頼。

【疑問3】調剤者(薬剤師)はマスキュレートが筋弛緩薬だと認識していたのか?
・マキシピームは、注射薬自動払い出し機に装填されていない薬剤だった。当該薬剤師はマキシピームを含め、抗生剤の知識は十分にあり、マキシピームを取り出そうと考えながら、毒薬保管庫からマスキュレートを取り出した。

【疑問4】特別な管理を要する毒薬が、なぜ普通薬と間違えられて払い出されたのか?
・毒薬保管庫には、マスキュレートのほか、抗ウイルス薬であるデノシンなども保管。当該事故の30~60分前にデノシンが取り出され、マスキュレートを取り出す際には施錠されておらず。
・マスキュレートの管理簿では、集中治療室/救急病棟/手術室の3部署に払い出しが限定されていたが、払い出し先の記載欄は、チェック形式ではなく自由記載で、通常は払い出さない病棟名を記載しても異常と感じさせない様式だった。

【疑問5】抗菌薬は通常、アンプルピッカーなどで自動的に調剤されるのではないか?
・注射薬は通常、医師が注射処方オーダーを行えば、自動払い出し機で、注射処方せん、注射ラベルと一緒に、薬が払い出される。従来採用していた後発医薬品セフェピムは、自動払い出し機に装填していたが、供給不全のため、一時的な購入薬であるマキシピームは装填していなかった。

【疑問6】調剤後の監査は行われなかったのか?
・休日の日勤帯は薬剤師2人体制。14時の定時配送時間までに定時注射薬の調剤業務を遂行するためには、相互監査は現実的に困難であることから、化学療法薬、退院処方、外来処方を除いては、「自己監査」することになっていた。

【疑問7】毒薬の受け渡し手順はどうだったのか?
・休日の定時配送は14時。医師から急ぐよう連絡があったため、薬剤師は配送員に連絡。薬剤師は薬剤配送管理ステムのバーコードリーダーで、時刻と配送手段を示すバーコードの読み取りを行った。薬剤を受け取った配送員は、配送記録簿に署名、ナースステーションには主治医と看護師がいなかったため、他の医師に渡した。その医師は配送記録簿に受領の署名をし、テーブルに薬剤を置いた。

【疑問8】筋弛緩薬払い出し時、薬剤部からのリマインダーはあったのか?
・マスキュレートのバイアルのラベルの「毒」マークは小さく、「筋弛緩薬」の文字もピンク地に白抜きで小さく、気づきにくい。
・病棟に配送される薬剤トレイに注意喚起の用紙を入れるなど、医療従事者の注意喚起を促す対策は取られていなかった。

【疑問9】病棟での看護師のダブルチェックはなぜ機能しなかったのか?
・看護師A は、薬局作成の薬剤ラベルに印字されている患者氏名、マキシピームが正しいことを確認して、そのラベルを生食注2ポート100mL/キットに貼付。
・看護師Aは、届けられたマスキュレートのバイアルの形状とピンクのキャップ、「マ」で始まる文字を見て、マキシピームであると思った。
・ダブルチェックの依頼を受けた看護師Dは、看護師Aが読み上げた注射指示・実施簿の内容が、生食注2ポート100mL/キットに張られた薬剤ラベルの情報と一致していることを確認、続いて看護師Aが手に持っているバイアルを確認したが、看護師Aと同様に、バイアルの形状やキャップ、「マ」の文字で、マキシピームであると思った。
・2人の看護師とも、マキシピームは何度も使っており、バイアルの形状等の特徴を知っていたが、マスキュレートは一度も見たことがなかった。
・マスキュレートは、通常、注射用水で溶解し、シリンジで投与。生食注2ポート100mL/キットで溶解することはないが、同キットの口径にもぴったりフィットした。

【疑問10】投与後の観察段階で患者の容態変化は把握できなかったのか?
・看護師Aは、投与開始時に患者に異変がないことなどを確認、30分後に点滴の滴下状況と呼吸を確認。看護師Dは、終了予定の1時間後に患者の顔色と皮膚温を確認。両看護師とも患者が前日から眠れず倦怠感が強いとの情報を得ていたため、眠っていると思い、患者に声かけはしなかった。
・マスキュレートは、調剤後、約1時間かけて投与されており、異変がどの時点で起きたかは明らかではない。



http://www.m3.com/news/iryoishin/377006
シリーズ: 中央社会保険医療協議会
費用対効果評価、新規収載品は対象外
2016年度試行的導入に向け、骨子固まる

2015年11月21日 (土)配信 成相通子(m3.com編集部)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)が11月20日に開かれ、2016年度から試行的導入が始まる費用対効果評価のガイドラインと具体的要件の案が提示され、新規収載品は試行的導入での費用対効果評価の再算定の対象外とされた(資料は、厚生労働省のホームページ)。制度開始に向け、制度の骨子が固まった。

 厚労省が示した案では、(1)費用対効果評価の判断基準となる「閾値」を設定、(2)効果の指標として質調整生存年(QALY)を基本に用いて、他の指標も協議の上で使用可とする、(3)一連の費用対効果評価の工程には2年ほどかかるため、評価結果を保険償還価格の再算定に用いるのは改定1回か2回後の保険収載品とし、2018年度診療報酬改定時に再算定する、(4)新規収載品は再算定の対象外とする――などの方針が掲げられた。

 委員からは、「閾値」の設定について懐疑的な意見や質問が出たほか、効果指標がQALYに偏重しないよう求める声や、新薬等を早く費用対効果評価の対象にできる取り組みを求める意見が出た。大まかな方向性は概ね了承され、2016年度からの費用対効果評価の試行的導入に向けて、2015年内に議論がまとまる見通し。

ガイドラインを公表

 厚労省が示した試行的導入のガイドラインでは、費用対効果評価の総合的分析は、「公的医療の立場」を基本とし、必要に応じて介護や生産性損失の費用など、他の立場からの分析も考慮すると位置づけた。その上で、(1)評価の比較対象は、原則として保険償還され幅広く使用されている既存の類似したもの、それが無い場合は無治療・経過観察を用いる、(2)分析手法は費用効果分析が原則で、有用な場合は増分費用効果費(ICER)を使用、(3)効果指標は質調整生存年(QALY)を基本に、事前協議で別の指標も使用、(4)生産性損失の計算に当たっては、将来の費用と効果を長期国債の利回り等を参考に、年率2%の割引を実施――などと定めた。

 さらに、具体的な方法やスケジュール案も提示。費用対効果評価は、「企業のデータ提出」「公的立場からの再算定」「総合的評価」の一連の工程があり、「2年程度が必要」とされる。そのため、2018年度の改定から再算定結果を反映するスケジュールだ。厚労省が示した選定基準、再算定の方法、新規収載品の取り扱いは以下の通り。

 選定基準の要件は、(1)3つの要素(「原価計算方式で算定されたもの」「類似薬効あるいは苦悩区分比較方式で算定され、一定の補正加算が認められたもの」「ピーク時売上高の高いもの」)を検討する、(2)除外する要件は2つの要素(「希少な疾患に対する治療」「未承認薬等検討会議、ニーズ検討会からの開発要請品と公募品目」)を検討する、(3)再算定の評価対象は、保険収載後1~2回の改定を経て上記条件を満たすものであり、新規収載品も同様とする――だ。

 再算定の方法は、(1)分析結果の解釈では、費用対効果が良い、または悪いの判断の基準(=「閾値」)として一定幅を設け、個別製品ごとの判断する、(2)閾値の設定では、試行的導入では3つの方法(「一般的に広く受け入れられている既存の医療の費用を目安にする」「国民の支払意志額」「1人当たりGDP等の経済指標」)を参考にしつつ検討を続ける、(3)一連の流れは、現行の薬価算定組織や保健医療材料専門組織における価格算定の後、費用対効果評価による再算定を実施、最終的に中医協総会で了承する――という流れ。

 新規収載品については、(1)保険適用希望書の提出に合わせて、可能な範囲でガイドラインに則った分析結果の提出を求める、(2)試行的導入では、新規収載品の評価結果は価格算定に用いない――とした。

「いくらなら支払ってもよいか」

 費用対効果の判断基準となる「閾値」の設定方法について、「非常に奇妙」と述べ、慎重な議論を求めたのは日本医師会副会長の松原謙二氏。特に問題視したのは「国民がいくらまでなら支払ってもよいと考えるか」(=「支払意志額」)と「1人当たりGDP等の経済指標」を参考にするとした点だ。

 厚労省は、日本では1QALY当たり500万~600万円程度の支払意思額があるとする先行研究(2006、2010)のほか、WHOが1人当たりGDP(日本は2013年で380万円)の1~3倍との目安を提示していることを資料で提示した。

 松原氏は「自分の命がかかっていたら、いくらかかってもいいと考えるし、自分と関係がなければ意味がない。そういうものを数字で出すこと自体、意味がないのではないか」と述べ、閾値は中医協総会で判断すべきと主張。参考人として出席した国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部部長の福田敬氏は、支払意志額は疾患ごとではなく、1QALYごとであることを強調し、理解を求めた。

 企業側の専門委員からは、「評価対象の選定は、償還価格以外で財政影響への大きい要素も考慮してほしい」「新規収載品のデータは物理的に提出できないものがあるので理解して」「原価計算方式の新薬を費用対効果評価で再算定して薬価が下がる、というのは現行方式を否定するもので、不整合を生じる」といった意見が出た。



http://www.m3.com/news/general/376979
紹介状の治療情報見逃し、患者遺族と和解、新潟県立吉田病院
2015年11月21日 (土)配信 毎日新聞社

県立吉田病院:治療情報見逃し 患者遺族と和解 /新潟

 県立吉田病院(燕市)は20日、別の病院から移ってきた患者の紹介状に記された治療依頼を見逃し、患者が死亡したとして、遺族との和解に同意したと発表した。賠償額は1000万円で、県議会12月定例会に提案する。

 同病院によると、2011年5月、立川綜合病院(長岡市)で心臓手術を受けた燕市の当時80代の男性が、術後の治療を受けるため、吉田病院に通院を始めた際、送られてきた紹介状に記載されていた胆のうがんの治療依頼を、担当医が見落としたという。

 男性は12年4月、立川綜合病院に救急搬送され、がんが放置されていたことが判明。6月に同病院で手術を受けたが、8月に急性心不全のため死亡した。

 吉田病院はミスを認め謝罪。遺族は13年7月、新潟地裁に提訴し、今年9月に和解案が示されていた。立川綜合病院も和解に応じ、200万円を支払うという。【米江貴史】



http://www.m3.com/news/general/377163
子どもの薬誤飲防止対策、消費者事故調、錠剤包装強化を提言へ
2015年11月22日 (日)配信 毎日新聞社

消費者事故調:子どもの薬誤飲防止対策 錠剤包装強化を提言へ

 子どもが医薬品を誤飲する事故の防止策を検討している消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は21日、包装を強化して錠剤を押し出しにくい製品を開発、普及することを検討するよう、厚生労働省と製薬業界に提言する方針を固めた。使い捨てライターに義務付けられている「チャイルドレジスタンス(CR)機能」を挙げ、抵抗を大きくして簡単に開けられない方式の採用を促す。12月の委員会でまとめる最終報告書に盛り込む見通し。【鳴海崇】

 事故調はサンプル実験で、形状や厚さなどが異なる医薬品用の包装シート14種類と、直径8ミリの錠剤を用意。子どもと大人100人ずつを対象に、開封できた比率をシート別で調べた。

 その結果、子どもは開けられないが、大人は開けにくい程度のシートがあることを確認。CR機能のある包装が、子どもの誤飲防止に効果があることが裏付けられた。このため厚労省と製薬業界団体に対して、具体的な基準作りも視野に、導入を積極的に検討するよう求めることにした。また、子どもは成長すると行動が変化するため、事故の特徴も違ってくることや、誤飲のリスクや対策などの周知を徹底するよう、厚労省と消費者庁に要請する。

 子どもは開けにくく大人には開けにくくないように工夫されたCR包装容器は、欧米では使用が義務化されているケースがある。しかし日本では、個々の企業の判断に任され、コスト負担の増加などが響いて普及が遅れている。消費者庁によると薬に導入済みなのは3社程度にとどまる。

 子どもが誤飲すると重い中毒症状を起こしやすいのは、向精神薬や気管支拡張剤、血圧降下剤、血糖降下剤など。公益財団法人「日本中毒情報センター」によると、5歳以下の子どもによる医薬品の誤飲に関する相談は2014年に8433件あり、うち849件に何らかの症状があった。誤飲の年齢は1~2歳が約7割を占めた。一般用医薬品(市販薬)に比べて主に医師の処方による医療用医薬品の誤飲が増加する傾向にあり、14年は05年に比べて約2200件増えた。



http://www.m3.com/news/iryoishin/376361
シリーズ: The Voice(医療)
ジェネリックを容認するか?
全否定は医者の悪しきパターナリズム

2015年11月21日 (土)配信 岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

 ジェネリックについて詳しくは「薬のデギュスタシオン」の金城紀与史先生の論説をご覧頂きたい。

 結論からいうと、ぼくはジェネリック(後発医薬品)容認派である。「容認」というのは積極的にジェネリックだけを使う、という意味ではないが、かといってジェネリックはだめだ、と否定はしないという立場である。

 ジェネリックは先発品(新薬)と同じ有効成分が同じ量入っている。生物学的同等性試験を行い、その血中濃度も同じであることが確認されねばならない。また、近年では先発品との前向き比較試験も多く、短期的には降圧薬、抗凝固薬や抗血小板薬などで短期的な臨床アウトカムには差がないことが分かっている。

 ジェネリックは高額な臨床試験をヘッジしているので安価に供給できるのが最大のメリットだ。確かに日本の国民皆保険制度のおかげで患者負担は大きくないから、ジェネリックの旨味は他国よりも小さい。しかし、生物学的製剤や分子標的薬など近年の医薬品は高額化が目立ち、3割負担であっても患者の支払い能力を超える場合が多くなっている(まあ、生物学的製剤のジェネリックは作りにくいらしいので、ここでの議論からはずれるが)。

 たとえ高額医療制度や難病支援で患者負担が小さくなっても、その費用を代替わりするのは医療保険であり、結局は我々のポケットから、となる。日本の医療費は年間40兆を超え、今後もますます高額化が進んでいくはずだ。昔のように「質の良い医療のためならお金はどんだけかけてもOK」という時代ではない。

 仮に百歩譲ってジェネリックの効果が既存の薬に劣るとしよう。たとえば、70点と90点というスコアの差にしよう。しかし、一般にユーザーがものを買うときは効果とコストのバランスを取って考える。コストはいくらかかってもよいから効果の高いものを、というユーザーもいるにはいるが、みんながそうではない。「安くて70点」を「高くて90点」より好む患者だって(本当は)多いはずだ。それを全否定するのは医者の悪しきパターナリズムである。なぜならば、「安くて70点」と「高くて90点」のどちらがベターかという問題は価値観の問題であり、純粋医学の命題ではないからだ。

 有効成分や血中濃度が予測できるのなら、短期的な感染症治療薬(=抗菌薬)の効果はほぼ期待できる。というか、そもそもバイオアベイラビリティーに劣り、有効な血中濃度を獲得できないフロモックスやメイアクトのようなセフェム、オラペネムなどを使用しているのにジェネリックは使えない、というのはダブルスタンダードだ。

 添加物によりアレルギー反応が起きたことがあるので、使いたくないというドクターもいた。しかし、アレルギー反応は新薬でも起きるのであり、ジェネリックだから使えないというのはこれもまたダブルスタンダードだ。こういう観点からはポリファーマシーを避けて「不要な薬、優先度の低い薬はなるたけ使わない」のが正しい戦略だ。しかし、日本のドクターは概ねポリファーマシーにも無頓着だ。複数の薬剤の相互作用も安全性や有効性に大きく影響する。ジェネリックの安全性、有効性を心配するなら、そちらも等しく心配すべきなのだが、なぜかポリファーマシーは看過される。

 短期的な有効性はあっても、長期的なアウトカムや安全性は確約されていない、という意見もある。それはそのとおりである。しかし、であるならなぜ発売されたばかりの新薬にはなんのためらいもなく飛びつくのだろうか。糖尿病、高血圧、うつ病など、発売されたばかりの新薬が日本では1番よく売れる。長期的な安全性や有効性、というジェネリックを非難する論点はどこにいったのだろう。

 血圧などは、ジェネリックを使ってみて、それでだめなら新薬に切り替えるというステップアップなやり方も可能である。この戦略なら、患者の負担や医療費を圧迫せずに有効な医療を提供することができる。ぼくがエイズ治療で行なっているのがこれで、有効性が分かっているけど副作用が懸念される既存薬(安価)を使ってみて、大丈夫なら継続、だめなら高額な薬に切り替えている。ジェネリックでも同じ戦略はとれるはずだ。

 ジェネリックを懸念しているドクターの多くは患者に対する医療のアウトカムを真摯に心配している。もちろん、それは正しい。なのでポリファーマシーや新薬の問題も等しく真摯に心配すべきだ。あと、ごく少数ながら、製薬メーカー(新薬を出す大メーカー)の利益相反からジェネリックを否定する医者もいないではない。こちらは、もちろん正しくない。見るべきは企業の利益(とその先にある自分の利益)ではなく、患者と日本の医療の持続的な質の維持にあるべきだ。

 あと、ジェネリックを作ってる企業が信用出来ないという声も聞く。しかし、ブランド品を作る大企業が信用に値するとは限らないのはすでに常識の部類に属する。フォルクスワーゲン、旭化成グループ、東芝、そしてノヴァルティス。これもジェネリックを否定する根拠としては弱い。


※本記事は、2015年11月17日のブログ『楽園はこちら側』で発表した内容を、編集部でタイトルとレイアウトのみ変更したものです。



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t252/201511/544555.html
特集◎看護師特定行為で医療が変わる
特定行為研修で医師の仕事はどうなる?

2015/11/23 井田恭子=日経メディカル

 10月15日、指定研修機関の1つ、洛和会音羽病院(京都市山科区)で特定行為研修の講義が始まった(写真2)。この日のテーマは「診断のプロセス」。副院長で洛和会京都医学教育センター長の酒見英太氏が講師を務め、院内で選抜された5人の看護師が、診断推論法や感度・特異度といった臨床疫学の考え方などを学んだ。


110201.jpg

表4 洛和会音羽病院が特定行為研修を実施する5つの特定行為区分
(各特定行為区分に含まれる特定行為の詳細は
「10月スタート!看護師特定行為研修って何?」内表2を参照)

 「研修医向けの講義内容を基にして、英語の資料を極力日本語に訳すなど看護師が理解しやすいようにアレンジした」と酒見氏。同病院では、ICUやSCU、救急病棟などでの研修修了者の活躍を見込んで、急性期の現場で必要となる5区分12行為(表4)を盛り込んだ研修プログラムを、看護部が中心となって立ち上げた。看護部からの研修への協力要請に診療部として応じたという酒見氏は、「検査に走らずに身体所見を取ることの重要性を研修医や若手医師に指導してきたが、常時ベッドサイドにいる看護師こそ、そうしたスキルを使える機会がむしろ多く、知識と経験を積む意義はあるのではないか」と語る。

増える「指導医」としての関わり

 各医療機関において、38行為を今後どのように扱っていくのかについては、まずは組織での判断が必要になる。医師数や救急医療体制など、組織・地域の分析結果を踏まえ、患者にとって最も良い役割分担のあり方を診療部と看護部で再確認し、研修修了者の組織での活用について院内で共通認識を得る必要がある(図3)。その上で、手順書によって看護師に任せるというのであれば、特定行為研修への関わり方は、大きく2つある。

112202.jpg

図3 特定行為研修の運用に際して医療機関で検討すべきポイント(取材を基に編集部で作成)

 1つは、洛和会音羽病院のように自ら指定研修機関となる方法だ。臨床研修病院としての体制が整った病院であれば、決して難しくはない。ただしネックとなるのが、講義や演習をどうやって行うか。これについては解決策の一つとして、全日病が共通科目や区分別科目の講義・演習部分をカバーしたeラーニング教材の開発を進めている。国は、講義や演習のeラーニングによる受講を認めている。全日病は2016年4月にも教材の販売を開始する予定で、「病床数に応じて、1病院当たり月額3万~5万円で利用できるようにしたい」と副会長の神野正博氏は話す。うまく活用すれば、指定研修機関入りのハードルは低くなる。

 もう一つは、指定研修機関の「協力施設」になる方法だ。講義や演習は指定研修機関で行い、自施設では実習を中心に行うというスキーム。芳珠記念病院(石川県能美市)は、指定研修機関である日本慢性期医療協会の協力施設となり、10月から手術室の副看護師長が同協会のeラーニングの受講を始めた。理事長の仲井培雄氏は、「今年度の受講は指導者養成が目的。研修修了者は医師がそばにいない在宅や介護系施設でこそ役割を発揮できると考えており、当法人では今後、訪問看護ステーションや介護老人保健施設、グループホームなどで働く看護師を中心に、まずは受講してもらう計画だ」と方針を語る。

 現時点で全ての指定研修機関がこのような連携方式の研修を行っているわけではないが、例えば、2016年度に向けて指定研修機関の申請準備を進めている放送大学は、協力施設を募る形での研修の運用を計画している。こうした指定研修機関が増えれば、看護師は働きながら自施設で研修が受けられるようになる。研修に人を送り出す余裕のない小規模施設であっても、職員に受講の機会を提供できるようになりそうだ。

 いずれの方法にしても、日ごろ一緒に仕事をしている看護師が特定行為研修を受けることになった場合、今後は現場の医師が指導医となって実習などの指導に当たる機会が出てくるわけだ。なお、指導する医師の要件として国は、臨床研修指導医と同等以上の経験を有することや、特定行為研修に必要な指導方法などを学ぶ講習会への出席などを求めている。後者については、国から指導者育成事業の委託を受けた全日病が現在、各地で講習会を開催している。

実は手技より重要な「判断力」

 もっとも、看護師に業務を移譲できるようになるとはいえ、「研修医教育で手一杯で看護師教育まで手が回らない」という医師側の本音も聞かれる。「研修医業務とバッティングする」との理由で、看護師による特定行為の実施に静観の構えを見せる大学病院もある。また、この制度で研修が義務付けられているのは、手順書を使って38 行為を行う場合のみであり、手順書を使わず従来通り医師の直接指示下でこれらの行為を実施してもよいことから、研修制度の必要性そのものを疑問視する声もある。では、特定行為研修を行う意義はどこにあるのか。

 「特定行為研修」と聞くと、どうしても38ある特定行為に注目しがちだ。もちろんそれらを医師に代わって看護師が行う場面が今後は増えるだろうが、「手技ができる・できないよりも、研修を通じて、医学用語と看護用語の両方を理解し、医師と看護師、患者との間を取り持つような人材が育つことが、実は臨床現場において大きな意味を持つ」と北海道大学大学院医学教育推進センター教授の大滝純司氏は指摘する。

 看護師は投薬や処置などの指示を医師から日常的に受けており、指示の根拠となるような薬理学や病態生理の知識を当然持っていそうだが、実は基礎教育でそれらを医師のように体系的に学んでいるわけでは必ずしもない。「養成課程も准看護師養成所から大学までバラバラであり、目前の看護師に医学的知識がどれくらいあるのかは、一見しただけでは分からない」と大滝氏は説明する。だからこそ、「特定行為研修では厚みのある共通科目を学ぶ必要がある」(大滝氏)わけだが、それにより、医師と同じ思考過程でアセスメントできる看護師が現場に増えれば、共に働く医師にとっても良い変化が生まれる。看護師からの夜間の緊急コールの内容が、単に「患者の様子が何かおかしい」ではなく、緊急性をより的確に判断した上での報告となったり、看護側と治療方針を共有しやすくなるといった具合だ。前々回に紹介した日本医科大学武蔵小杉病院は、まさにその好例といえる。

 仲井氏も、「手技のスキル自体は、経験の豊富なエキスパートナースは既に持っているが、それらをどう使うかについてその都度、医師に判断を仰いでいるのが実情だ」と話し、「特定行為研修で臨床推論に基づく判断力を身に付け、手順書によりその技術が使えるようになれば、医師が手薄な在宅や夜勤帯の病棟などでよりタイムリーに必要な医療が提供できる。そのメリットは大きいはずだ」と続ける。

医師の「肩代わり」ではない

 「各職種間におけるタスクシフトなくして、『高齢化率3割時代』は乗りきれないのだと、この制度は教えてくれている」。在宅医療を手掛ける医療法人アスムス理事長の太田秀樹氏は、特定行為研修がスタートした意味をこう説く。ただし、「勘違いしてはいけないのが、医師が忙しくてできないから看護師に代わってやってもらうための制度ではないということだ」と続ける。

 医師不足地域においては、研修修了者にそうした役割を求める場面もあるかもしれないが、「重要なのはあくまで療養者の視点だ」と太田氏は念を押す。脱水を来した高齢の在宅患者に訪問看護師が手順書により速やかに点滴できれば、患者にとってメリットは大きく、そのことは、患者の在宅療養生活の質を高めるという訪問看護の役割にもフィットする。単に、医師側が自分たちの都合で研修を修了した看護師に業務を押し付けるだけでは、看護師は負担感を抱くだけで、権限移譲は進まないだろう。
 
 日本医科大学武蔵小杉病院内分泌・糖尿病・動脈硬化内科教授の南史朗氏も、「看護師にカニューレを抜いてもらうことが重要なのではなく、呼吸管理が行える看護師がいることに意味がある」と語る。そして、「特定行為研修を『ミニドクターの養成』と言って批判する声もあるが、医師と看護師の役割が異なることを踏まえて実践を積めば、そのような議論にはならないはずだ」と話している。


有賀 徹氏(昭和大学病院長)に聞く
「特定行為を行う危険性を判断できる能力が重要」

 元来、我々医療者は、「チーム医療」という言葉のない時代から、「患者さんにとって最もいいことをやろう」という職業規範の下、いわば自然発生的に職種を越えて仕事を相互乗り入れしてきた。

 そこへ来て近年、高齢化の進展に伴い、病気の治療だけでなく、患者を日常生活に戻すところまでの役割が医療者に求められるようになり、さらに医学そのものの進歩も加わって、多職種連携が一層叫ばれるようになった。

 そうした歴史的必然性の下、これまで一部の現場でやられてきたことを、医療界全体でより広く取り組めるように「社会の仕組み」を整備する必要性が出てきた。「グレーゾーン」といわれる医行為の明確化などの法整備がそれであり、その結果、特定行為研修制度が創設されたわけだ。

 「特定行為研修」といっても、試行事業修了者の活動を見ると、現実には皆が皆、特定行為を日々行っているわけではない。重要なのはむしろ、特定行為を行うことの危険性を正しく判断できる能力だ。研修を通じてそうした判断力を持った看護師が育つことは現場にとって有用であり、将来的には、彼らが研修医を指導する機会も出てくるだろう。「医師の責任が増大するのではないか」との懸念の声も聞かれるが、この制度は、医師が「任せられると判断した範囲」の業務を「任せられる看護師」のみに指示すればよいというもの。医師の責任は従来と変わらず、制度の運用責任はあくまで病院長はじめ管理者に課せられるものだ。

 ただし、研修を修了して現場に出た看護師は、ある意味で「新人」だ。その新人が場合によっては患者に侵襲を伴う行為をするのだから、医療安全の観点は欠かせない。特に、臨床研修病院以外の施設が特定行為研修の実習や修了後の実践を行う場合には、十分な安全体制を構築する必要がある。

 本来は、看護師だけでなく薬剤師など他のコメディカルへの職能移譲の検討もあっていい。医療者不足は自明であり、全医療者が“総力戦”で臨める仕組みを考えていくべきだろう。(談)

  1. 2015/11/23(月) 05:47:45|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<11月23日  | ホーム | 11月21日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する