Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月30日 

http://mainichi.jp/select/news/20151031k0000m010131000c.html
財務省:8年ぶり診療報酬マイナス改定の方針
毎日新聞 2015年10月30日 22時46分

 財務省は30日、2016年度の予算編成で医療サービスの公定価格である診療報酬の引き下げを求める方針を固めた。薬剤師に支払われる報酬の抜本的な見直しなどを求め、一般会計の3割超を占める社会保障費抑制に向けて8年ぶりのマイナス改定を目指す。ただ、厚生労働省は引き下げに慎重で、年末にかけての交渉は曲折が予想される。

 同日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)財政制度分科会に提案し、大筋で了承を得た。診療報酬は医師・薬剤師の技術料に当たる「本体」と、薬そのものの価格である「薬価」に分かれるが、両方の引き下げを求める。原則2年に1回行われる改定では近年、市場実勢に合わせて薬価が下がる一方、本体は増額が続いており、本体・薬価ともにマイナスになれば10年ぶり。要求する引き下げ幅は11月にも固める。

 財務省が本丸と位置づけるのが、薬剤師への調剤報酬だ。薬局を病院から独立させる「医薬分業」を進めた結果、薬局はコンビニエンスストアを上回る全国約5万7000店に増えた。ただ、医師の処方箋が必要な薬では、大病院と関係が深い「門前薬局」の存在が大きい。財務省は、病院から独立した薬剤師が過剰投薬などを防いで医療を効率化させるといった当初の目的を果たしていないと指摘。多くの薬を処方するほどもうかる仕組みを改め、患者の立場に立って調剤する薬局を優遇するよう「ゼロベースでの抜本的な見直しが必要」とした。

 薬価については、先発薬(新薬)でも特許が切れた後は薬価を引き下げるよう提案。将来的には、安価な後発薬(ジェネリック薬)の価格までしか保険適用を認めず、特許切れ先発薬との差額は自己負担とすることを求めた。また、処方箋なしでも買える市販品類似薬は保険の適用外にすべきだとした。

 ただ、日本医師会などの反発は必至で、医療の質の低下を警戒する厚労省との調整は難航が必至だ。

 雇用保険や子育て、地方財政についても議論。失業者減で雇用保険積立金が過去最高水準の6兆円台に積み上がったことを踏まえ、企業と従業員の保険料負担を一時的に減らすべきだと指摘した。企業には保険料負担が減った分の範囲内で政府の子育て支援充実策への企業負担増を求める。【宮島寛】



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/47173.html
マイナス改定に大多数が賛成、財政審分科会- 「もぐらたたき」と反対の委員も
2015年10月30日 18時00分 キャリアブレイン

 財政制度等審議会(財政審)の財政制度分科会は30日、会合を開き、2016年度の予算編成に向けた議論をした。会合後に開いた記者会見で吉川洋・分科会長(東大大学院教授)は、診療報酬の引き下げには「一人の委員を除き、圧倒的多数が賛成だった」ことを明らかにした。反対した委員は「診療報酬の引き下げは、もぐらたたきのようなもので限界がある」と主張したという。【坂本朝子】

 この日の会合では、財務省が16年度の診療報酬改定に向けた論点として、「経済・財政再生計画」に示された考え方に沿って、医療保険制度の持続可能性を確保するため、▽市場価格を反映した薬価改定▽診療報酬本体のマイナス改定▽「経済・財政再生計画」に示された診療報酬の改革検討項目(後発医薬品の使用促進、調剤報酬の見直しなど)の実現-などを提示。

 吉川分科会長は、委員から「これまでも賃金・物価の推移を勘案して診療報酬を引き下げることをやったわけだが、効果的だし、当然やるべき」「医療の高度化により生産性が向上した分は医療費の抑制に反映させるべき」など、診療報酬の引き下げが妥当との意見が多く見られたとした上で、「基本的には下げていくことに対して、一人を除いてコンセンサスがあると考えている」と述べた。また、薬価や調剤報酬の見直しについても多数が賛意を示したという。

 その一方で、ただ一人、診療報酬の引き下げに難色を示した委員は、「医療制度の改革のためには、かかりつけ医の推進や電子カルテの普及をすべきであり、イギリスに学ぶべき」と主張したという。

 また、吉川分科会長は、複数の委員から診療報酬の中身にめりはりを付けるよう求める意見があったことに触れ、「(薬価を)下げた分を本体に回すのは論外」と強調した上で、苦しい財政状況の中では診療報酬全体を見直し、点数の付け方を変えるべきだと主張した。

 そのほか、個別の項目では、湿布などの市販品類似薬を保険収載から除外すべきとの意見や、お薬手帳が有効に機能していないため、マイナンバーとひも付けて薬の一元管理の効率化を図るべきなどの意見が見られたという。

 財政審は、今後発表される医療経済実態調査の結果なども踏まえ、来年度予算の編成などに関する建議を取りまとめる予定。



http://www.sankei.com/economy/news/151030/ecn1510300054-n1.html
診療報酬マイナス改定を提案 調剤薬局報酬見直しも 財政審
2015.10.30 20:08 産経ニュース

 財務省は30日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)を開き、医療サービスの公定価格である「診療報酬」を平成28年度改定で引き下げるよう求める方針を示した。「本体」と呼ばれる医師と薬剤師の技術料で10年ぶりのマイナス改定を目指し、調剤薬局の報酬でも抜本的な見直しを提案。厳しい財政事情を踏まえ、歳出抑制につなげる。

 診療報酬は医薬品の価格と技術料から構成され、改定は2年に1回。薬価は市場の実勢価格に沿って下がってきたが、技術料は平成20年度以降プラスが続いている。財務省は物価や賃金の動向を考慮しても技術料は高止まりしているとして、マイナス改定の必要性を訴えた。診療報酬を1%下げると医療費が年間4300億円減らせるという。 会合では、処方する薬の投与日数などに応じて報酬が上がる仕組みの見直しのほか、薬の過剰投与が指摘される大病院周辺の「門前薬局」の報酬引き下げなども提案した。

 この日は地方財政についても議論。財務省は、リーマン・ショックを機に始めた地方交付税に上乗せする「別枠加算」について、自治体の税収回復などを理由に廃止を提言した。



http://mainichi.jp/premier/health/entry/index.html?id=20151027med00m010009000c
「抗がん剤は効かない」は本当か
今解きたいがん治療の誤解【前編】

中村好見 / 毎日新聞 医療プレミア編集部
2015年10月28日

 川島なお美さんが胆管がんで急逝、また北斗晶さんが乳がんを告白と、著名人のがんのニュースが相次ぎ、改めてがんの予防や治療への関心が高まっています。日本人の2人に1人が一生のうち一度はがんになる時代。しかし、がん治療や予防についての誤解や、科学的根拠のない代替療法の誇大な宣伝などが、インターネットを通して無限に拡散されているのが現状です。「患者さんに害を及ぼす情報を放置してはいけない」と発信を続けている日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師に、がん治療の誤解や、正しい情報をどのように見分けたらよいかを聞きました。3回に分けてお届けします。【聞き手=編集部・中村好見】

 −−川島なお美さんの訃報の後、「『抗がん剤の副作用でステージに立てなくなる可能性があるなら、私は最後まで女優として舞台に立ち続けたい』というのは、抗がん剤に対する誤解ですので残念です」という先生のツイッターやフェイスブックでの投稿は、大きな反響がありました。一歩踏み込んだ発言だと感じましたが、どのような思いで発信されたのでしょうか。

 抗がん剤に対する誤解が、さらに広まってしまうのではと危惧しました。この10年ほどの医学の急速な進歩で、抗がん剤の副作用対策はかなり進みました。僕の患者さんには、きちんと副作用管理をして、抗がん剤治療を受けながら仕事を続けている人が大勢います。それなのに「誰もが吐いて、髪の毛が抜けて、体がぼろぼろになって、寝たきり状態で仕事ができなくなってしまう」という世間の抗がん剤のイメージは、ほとんど変わっていません。もちろん、すべての副作用が無くなったわけではなく、不快な症状を伴うことはありますが、旧来の副作用のイメージとは大きく異なるのが事実です。そして患者さんの選択は尊重しなければなりません。ただ、著名人の影響力は大きく、正しい情報を受けられていたのかが気になりました。また、抗がん剤治療への誤解をあおるようなメディアの報道の仕方にも大きな問題があると感じました。

 −−抗がん剤治療は、入院して受けるというイメージがありました。

 がんは、白血病などの血液がんと、それ以外の固形がんに分かれます。血液がんは抗がん剤だけで治る可能性があるので、連日強力な抗がん剤を投与するため、入院する必要があります。一方、固形がんの抗がん剤は、一部の治療を除いて、ほとんどが通院で受けることができます。通院治療が可能であれば、患者さんの生活の質(QOL)を保つことを考えて、通院で行うことが原則と思います。欧米では通院治療が主流です。しかし、日本では慣習で初回の抗がん剤治療は入院としたり、基本的にすべて入院でやっていたりと、9割以上の病院で一度以上は入院させています。もちろん、がんが進行し、症状が出て体力が弱って通院治療が困難な場合など、入院が必要な場合もありますが、まだまだ通院治療が遅れているという現実があります。


 −−インターネット上や書籍では「抗がん剤は効かない、逆に命を縮める」という言説が多く見られます。そもそも、抗がん剤でがんは治るのでしょうか。

 まずは、「抗がん剤が効く」とはどういうことか説明しましょう。先ほど、血液がんは抗がん剤だけで治る可能性があるとお話ししましたので、ここでは固形がんについてお話しします。抗がん剤を使う目的は、大きく分けて二つです。一つは手術や放射線治療後の再発を予防する(完治率を高める)治療、もう一つは進行再発がんに対する延命(がんが大きくなるのを一定期間防いで共存する)治療です。いずれも、効果があることが科学的なデータで示されています。また、分子標的薬(※注)などの新薬が毎月のように登場し、これまで治療が難しかった患者さんにも可能性は広がっています。

 しかし、抗がん剤に限界があることも正しく理解しなければなりません。特に進行再発がんについては、現状では完治は極めて難しい。抗がん剤には副作用がありますし、ほとんどの固形がんは、次第に抗がん剤への耐性を持ちます。どのような患者さんに抗がん剤が適応するかは、がんの種類、ステージ、年齢、全身状態や臓器機能によって一人一人異なります。また、最も重要なのは患者さんの価値観です。医療者は正しい情報提供をした上で、患者さんが大切にしたいこと、QOLを考慮し、抗がん剤治療を続けるか続けないか、最善の方法は何なのか一緒に考えていくことが大切です。そういった治療のコーディネートを担うのが抗がん剤治療を専門に行う腫瘍内科医のはずなのですが、日本では欧米に比べてまだまだ少ないのが現状です。

 −−緩和ケアについても、大きな誤解があると指摘されていますね。

 緩和ケアは、がん末期になってから、痛みや苦しみを和らげるための治療と思っていませんか。2010年、「緩和ケアに延命効果が認められた」という、世界中のがん治療医にとって衝撃的な論文が米科学誌に発表されました。早期に緩和ケアを導入すれば、無駄な抗がん剤を減らしてQOLを向上させ、延命効果をもたらすというのです。この結果を受けて、米国では外来での緩和ケアが広がりましたが、日本での取り組みは、こちらもまだまだというのが実情です。

 延命効果がはっきりと認められているのですから、緩和ケアは進行再発がんと診断された時から導入すべきです。抗がん剤治療と併用が可能です。痛みを和らげるための治療はもちろんですが、最も大切なのは病状をきちんと理解してもらい、患者さんが大切にしたいことを聞いてその生活をサポートすることです。「趣味を続けたい」「おいしいものをおなかいっぱい食べたい」「仕事を続けたい」…一番多いのは「家族とできるだけ長く普通の生活がしたい」という答えです。僕の患者さんの中には、抗がん剤治療を受けながら、「世界一周をしたい」「結婚式を挙げたい」という夢を実現した人もいます。進行再発がんは、生活の質を保ち、よりよい共存を目指すことが目標です。がんと上手に付き合うこと、治療ともうまく付き合っていくことが大切と思います。

※注 分子標的薬:がん細胞だけが持つ特徴を分子レベルでとらえ、それを狙い撃ちにする薬。



http://mainichi.jp/premier/health/entry/index.html?id=20151028med00m010005000c
「若いうちから乳がん検診」は有効か
今解きたいがん治療の誤解【中編】

中村好見 / 毎日新聞 医療プレミア編集部
2015年10月29日

 北斗晶さんが乳がんを告白し、「若かろうが年を取っていようが乳がん検診に行ってください」と呼びかけ、乳がん検診を実施している病院への問い合わせが増えているといいます。ただ、日本の自治体などの乳がん検診の対象は40代以上。20〜30代の若い世代の検診は有効なのでしょうか。そして日本のピンクリボン運動の問題とは。誤解の多いがん予防や治療について、前回に引き続き日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師に聞きました。【聞き手=編集部・中村好見】

がん検診のメリット、デメリットを正しく知る

 −−北斗さんについては、乳がん検診を受けた後にがんが見つかったことも話題になりました。乳がん検診は結局、有効なのでしょうか。

 北斗さんの件に関して、私たちが学ぶべき重要なことがあります。それは「検診には限界があることを知る」ということです。まず、がん検診が有効ながんと、そうでないがんがあります。現在、検診の有効性がある程度科学的に示されているのは「大腸がん」「子宮がん」「乳がん」「肺がん」「胃がん」−−の五つです。さらに有効性が示されているがんでも、北斗さんのように、検診によって100%がんを見つけられるわけではありません。毎年検診を受けていても、数ヶ月で大きくなるがんもあります。それなのに「検診さえしておけば、がんは早期発見、早期治療できる」というような誤解を与えるキャンペーンや報道が多いと感じています。

 また検診の有効性は、年齢によっても議論があります。日本の乳がん検診は40代以上が対象です。一方、米国予防医療作業部会は2009年、それまで推奨していた40代のマンモグラフィー(乳房X線撮影)は、大規模追跡調査の結果、ほとんど効果がないので推奨しないという勧告を出しました。閉経前で乳腺密度が高い40代は、健診の精度が下がります。不必要な放射線照射や組織検査、過剰診断(※注)、過剰治療を受けて、無用な不安をかきたてられるデメリットの方が大きいという判断でした。アジアでは欧米より、閉経前乳がんのリスクが高いなど人種による違いもあり、お隣の韓国は日本と同じく40代から、カナダや英国では50代からと、国によって対応は分かれています。大切なのは検診のメリットとデメリットを正しく知った上で、選択することです。一方、20〜30代の検診の有効性は科学的に示されていません。デメリットをきちんと伝えることなく「若いうちからがん検診を受けよう」と呼びかけることは、控えるべきでしょう。ただ、家族歴や気になる症状がある人は乳腺専門医に相談し、検査を受けるべきかどうか検討してください。

日本のピンクリボン運動の問題とは

 −−今月は乳がん月間で、ピンクリボン運動などが展開され、盛んに検診が呼びかけられています。

 この時期が近づくと、正直憂うつになります。それは日本のピンクリボン運動が、「早期発見、早期治療」、つまり検診の啓発しかほとんどしないからです。ピンクリボン運動は米国で始まりましたが、検診については実はあまり強調されていません。「乳がんに対して理解を深める」というキャンペーンです。寄付金は、検診の啓発ではなく乳がんの治療研究に主に使われます。2013年の国民生活基礎調査によると、2012〜13年の2年間で日本の40〜60代の乳がん検診率は43.4%。70%以上が並ぶ欧米に比べるととても低い。だから検診率を上げるのは重要ですが、啓発だけでは効果が十分でないのは明らかでしょう。行政が検診台帳を整備して、乳がん検診を受けていない人への呼びかけを徹底するべきです。

 日本ではあまりに検診についてばかり言うので、検診せずにがんにかかった患者さんは「検診しなかった私が悪い」と思うようになりますし、周りの人も「検診しなかったから悪い」というレッテルを貼るようになります。若年性乳がんの患者さんもいます。がんになったことが悪いことをしたかのように扱われるのはどうか、と思います。

 −−レッテル貼りについては、がんに関する報道が増えた後、「がんになるような食生活や生活習慣だったのでは」「体を温めていたらがんにならなかったのに」「無用なマンモグラフィーを受けて被爆したせい」などの言説がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上などにあふれました。

 そういった情報は誤解を広げ、がん患者さんを助けるどころか傷付けるだけですね。がんは、家族歴も関係します。また、マンモグラフィーのデメリットは述べた通りですが、50〜60代は受けた方が、死亡率が下がることが科学的に示されています。また1回の撮影で乳房が受ける放射線の量(0.05ミリシーベルト)は、一般の人が1年間に受ける自然放射線量(2.4ミリシーベルト)の50分の1程度です。不必要な放射線は受けるべきではありませんが、健康影響はほとんどないと考えてよいと思います。今、大切なのは「がんは誰でもなる病気。がん患者さんを応援しよう。がん患者さんが安心して暮らせる社会を目指しましょう」という運動で、それが本来、ピンクリボン運動が目指すべき姿ではないでしょうか。

※注 過剰診断:検診では、健康に影響はなく、微小でその後も進行がんにはならないがんを見つける場合があります。これを「過剰診断」といいます。ただ今のところ、このようながんと普通のがんを区別することはできません。



http://mainichi.jp/premier/health/entry/index.html?id=20151029med00m010002000c
「医療否定本」を信じる前に
今解きたいがん治療の誤解【後編】

中村好見 / 毎日新聞 医療プレミア編集部
2015年10月30日 毎日新聞

 川島なお美さんが手術後に抗がん剤治療を拒否し、食事療法や邪気を取り除くという民間療法を受けていたと報道されると、その選択を巡ってインターネット上では議論が起こりました。「がんは放置してもいい」「がんが消えていく食事」「奇跡のがん免疫細胞療法」−−。インターネット上や書店に並ぶ書籍には、がん患者を惑わせるような情報にあふれています。私たちはどのように正しいがん情報を見分けたらよいのでしょうか。3回にわたる日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師へのインタビュー最終回です。【聞き手=編集部・中村好見】

 −−がんについての情報があふれ、医学的に最善とされている標準治療を否定する患者さんが増えていると聞きます。

 がん情報について、特に問題なのはインターネットです。もしもがんと言われたら、まず、インターネットで自分のがんについて情報を入手する人が多いと思います。ただ日本のインターネットのがん情報がどのくらい正確かというと、正しい情報にヒットする確率は50%以下だったという研究の報告があります(2009年、国立がん研究センター・後藤悌医師の論文より)。現在はさらに、医療関係者や影響力のある著名人らがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で発言し、科学的根拠のない情報がもっともらしい「事実」として拡散されていく問題もあります。

 医療機関は、比較広告、誇大広告などが禁止されています。また、医薬品以外の健康食品や、医薬品でも承認されていないものについては、病気の治療や予防に効果があることを示すことが禁じられています。しかしインターネット上のこうした広告については、野放しの状態でした。昨年末の医薬品医療機器法(旧薬事法)の施行に伴う通達などで、今後は取り締まりが強化されることを期待します。

 一方、よく見かける「食べ物で末期がんが消えた」などという民間療法や代替療法に関する本や情報は、特定の商品と結び付けていなければセーフとされています。しかし、科学的根拠のない治療法で治ったという極端な事例について、万人に適応するかのような誤解を与えているので注意が必要です。生活習慣の見直しや食事はがんの予防につながる可能性はありますが、一度なってしまったがんが「治る」という科学的根拠はありません。

 何が正しい情報なのか迷ったら、国立がん研究センターのホームページに開設されている「がん情報サービス(http://ganjoho.jp/public/index.html)」を見てください。各種がんについて比較的偏りのない情報が書かれており、代替療法についても解説されています。また、現時点での最善の治療法である「標準治療」について書いてある診療ガイドラインは、「がん診療ガイドラインなどのエビデンスデータベース(http://ganjoho.jp/professional/med_info/evidence/index.html)」で調べることができます。

 −−そもそも、がんの「標準治療」とはどういったものなのでしょうか。

 言葉のイメージから誤解されがちですが、「標準治療」は、“並の治療”という意味ではありません。大規模臨床試験の結果から、現時点で最も効果が高く安全と認められた、最善の治療法です。しかも日本は皆保険の国で、「標準治療」はきちんと保険承認されています。これに対して「最新治療」は、期待されてはいるものの、まだ最良かどうか分かっていない“研究段階の治療”です。例として重粒子線や陽子線治療が挙げられます。中には厚生労働省の「先進医療」に指定され、一部の大学病院やがんセンターなどで保険診療との併用が認められているものがありますが、先進医療にかかわる費用は自己負担です。

 また、インターネットの広告でよく見かけるクリニックが自由診療で実施している「免疫細胞療法」は、全額自己負担です。科学的に有効性が示されていないから「標準治療」にならず、もちろん保険承認もされていないのです。数百万円の治療費をつぎ込んだにもかかわらず、効果がないまま、十分な緩和ケアを受けられずに亡くなった患者さんの話をよく聞きます。進行がんの患者さんの不安を利用して、ビジネスにしてよいのでしょうか。欧米では効果が実証されていない治療をするには届け出が必要で、「日本の状況はあり得ない」と言われます。免疫細胞療法は少なくとも臨床研究として実施し、治験と同じように無報酬で行うべきだと思います。

 最近、「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる画期的ながん新薬が、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として保険承認され、他のがんへの治験もすすんでいます。メディアは「新しい免疫療法」などと報じていますが、従来の免疫細胞療法との混同を避けるため、呼称には注意すべきでしょう。

 −−いわゆる「がん放置療法」や「がんもどき理論」を唱えて著書がベストセラーになっている医師の近藤誠さんに対して、『「抗がん剤は効かない」の罪』、『医療否定本の嘘』を出版して反論されていますね。

 近藤医師の本は分かりやすく、おもしろい。また医学的な誤りは非常に多いのですが、過剰診断や過剰治療など、日本の現代医療の問題点を一部突いているのが、逆にやっかいと言えます。読者はどこまでが本当で、どこからが仮説、またはうそに過ぎないかが判断しにくいのです。

 近藤医師は、がんは「すでに転移が潜んでいて治療しても治らない“本物のがん”」と「放置しても進行しない“がんもどき”」に二分されると主張しています。そしてがん検診や早期治療を否定しています。ただ、がんはそんなに単純ではありません。「放置すると進行していずれ死に至るが、積極的治療で治るがん」と「積極的治療で治すことは難しいが、延命、共存できるがん」も存在します。また、進行しない“がんもどき”があるのは事実ですが、初期の段階で“本物のがん”と見分けることは現状できません。患者さんに放置をすすめて、がんが進行して最悪亡くなったら“本物のがん”、進行しなかったら“がんもどき”というのは後出しじゃんけんに過ぎません。医師としての姿勢に欠けているのではないでしょうか。

 近藤さんを信じてがんを放置したものの、進行して私を訪ねてくる患者さんもいます。がんについての情報は、人の人生や命を左右します。売れるからといって患者さんに誤解や混乱を与えるような本を出版するメディアも罪深いのではないでしょうか。学会や公的機関も放置すべきではないと思います。

 −−現代医療への誤解が広がっているのには、患者に寄り添うような医療がされていない、医療不信が背景にあるとも指摘されています。

 その通りだと思います。ある意味、医師と患者のコミュニケーション不足から生じた医療不信が“医療否定本”を生んだとも言えるでしょう。医師不足は深刻化し、毎日百人近くのがん患者さんを外来で診ている医師がざらにいます。現場は疲弊し、患者さんへの説明が十分でなかったり、心ない言葉を言ったりする医師がいるのは現実です。また、日本の大学病院やがんセンターでは、積極的治療ができなくなった患者を放り出すような傾向もありました。

 がん患者さんが言われて最も傷つくのは「もう何も治療法がない」という言葉と、「断定的な余命告知」だという報告があります。余命告知は医師の経験値やあくまで中央値で、一人一人異なる患者さんの余命を正確に予測することはできません。また、がん専門医による治療は、積極的治療ができなくなり、緩和ケア医やホスピスに紹介した時点で“終わり”ではありません。「最期まであなたの主治医です、いつでも相談してください」というメッセージを伝え、患者さんのQOL(生活の質)を支えることが大切だと思っています。(おわり)


【プロフィル】

勝俣範之(かつまた・のりゆき):日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

1963年生まれ。88年、富山医科薬科大学卒業。国立がんセンター中央病院内科、同薬物療法部薬物療法室医長を経て、ハーバード大学公衆衛生院留学。その後、国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科外来医長、11年より現職。専門は、内科腫瘍学全般、抗がん剤の支持療法、臨床試験、EBM(根拠に基づく医療)、がん患者とのコミュニケーション、がんサバイバー支援など。著書に『「抗がん剤は効かない」の罪』(毎日新聞社)『医療否定本の嘘』(扶桑社)がある。



http://apital.asahi.com/article/story/2015103000004.html
(教えて!医療事故調査制度:3) 遺体の解剖、何が分かる?
教えて!医療事故調査制度

2015年10月30日 朝日新聞

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事故の原因究明のポイント/国の死亡事故調査モデル事業で死因は…

 死亡原因は医療行為によるのか、持病や合併症によるのか。医療事故調査では、カルテや看護記録のチェック、担当医や遺族からの聞き取りのほか、解剖が死因究明のカギを握る。

 医療裁判に詳しい石川寛俊弁護士は「事故が起きるときは、どのように容体が悪くなったかという記録が丁寧に書かれておらず、解剖して死因が初めてわかることも多い」と話す。

 解剖では、専門の臨床医も立ち会って、手術でどの部分を切り、縫合したかなどを丁寧に調べる。手術がうまくいっているとなれば、麻酔方法や手術後の点滴、呼吸管理などに問題があった可能性が出てくる。

 大阪大の松本博志教授(死因究明学)は「解剖でわかったことと、担当医らへのヒアリングで確認したいきさつとを照らしあわせれば、診療行為との関係を明らかにできる」と話す。

 国の医療事故調査のモデル事業では、2010~12年度に解剖を実施した73例中、88%が死因が判明もしくは確認できたという。

 脳卒中でリハビリ中に突然死した患者の原因が事故でなく、足の静脈にできた血栓で肺の血管を詰まらせたと解剖で判明したケースもあった。異状がないという確認も調査にプラスだ。

 ただ解剖できる施設は限られ、地域差も大きい。

 松本さんは「医療事故の解剖は、医療行為がどうされたかと死因を調べるため、通常の病理解剖とは視点が違う。正確な評価には解剖医と臨床医いずれもかなりの経験が必要」。人材育成や、実施・協力体制づくりが欠かせない。

 もう一つの大きな課題が、遺族の心情への配慮だ。事故で失った家族の体にメスを入れる解剖への拒否感情が働きやすい。

 事故遺族で、現在は病院で患者と医師の意思疎通を支援する豊田郁子さんによると、「今後の医療のために」「原因はわからないと思うけれど、どうしますか」と病院側から言われ、傷つく遺族も少なくない。

 ただ、解剖をした遺族を対象にしたアンケートでは約8割が評価。頭部は遺体を傷つけずにCTやMRIで出血や骨折を調べる「死亡時画像診断(Ai)」を利用できる場合もある。

 豊田さんは「病院側は、解剖でどのようなことがわかるか丁寧に説明するとともに、遺族の心情をくんで、何ができるか考えることが大切」と話している。

(富田洸平、桜井林太郎)
(朝日新聞 2015年10月30日掲載)



http://dot.asahi.com/aera/2015102800077.html
介護する側・される側の負担軽減「ユマニチュード」とは
(更新 2015/10/30 07:00) Dot朝日/AERA

 認知症の治療は薬物療法が中心だが、根本的な治療(キュア)は期待できない。「不治の病」に対処するため、医療現場もケア重視に傾いている。

 アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型という4タイプの認知症のうち、薬の効果が期待できるのは主にアルツハイマー型だ。1999年に抗認知症薬「アリセプト」が発売され、2011年には3剤が加わった。アリセプトはレビー小体型にも効果があり、14年から健康保険適用になっている。

 いずれの薬も症状の悪化を遅らせることはできるが、認知症を根治する効果はない。しかし、順天堂大学精神科の新井平伊(へいい)教授は「認知症の治療は薬だけではない」と話す。

「むしろ患者さんと介護する家族が適切な環境のもとで精神的に落ち着いて生活できることが重要で、それを支援する医療や介護の役割は大きい。認知機能が低下しても、穏やかに過ごせればいい人生を送れる。新薬の開発も大事ですが、それ以上にいま認知症と闘っている目の前の人を救う医療や介護が求められているのです」

 その潮流を象徴するケアとして注目を集めるのが「ユマニチュード」。フランス語で、人間らしさを取り戻すという意味だ。

 東京医療センター(東京都目黒区)では、認知症の症状がある入院患者に、11年から実践している。ユマニチュードを日本に導入した同センター・総合内科医長の本田美和子医師は「このケアの柱は『あなたを大事に思っていますよ』と、相手にわかる形で伝えること」と話す。

「たとえば時間を知りたいと思ったとき、いきなりすれ違う人の腕をつかんで、時計をのぞきこんだりしませんよね。でもケアの現場では、突然病室を訪ねて『おむつを交換しますね』とズボンに手をかけることは珍しくありません。状況がわかっていない患者さんはびっくりするし、怖いので、思わず『やめて』と意思表示する。ケアする側は拒否されたとか攻撃的になっていると感じますが、実はごく当たり前の反応で、自分を守ろうとしているだけなんです」

 おむつ交換のときはまず、これから行きますよという合図のノックをし、反応を待ってから近づく。そして目を見て穏やかに「調子はどうかなと思って会いに来ました」と伝える。おむつ交換が目的でも、おむつの話から始めないようにするのだ。

「ケアの間は、目を見てポジティブな話をし、優しく触れながら『あなたが大事』という思いを伝え続けます。相手はメッセージを感じ取り、穏やかにケアを受け入れるようになります」

 ユマニチュードの導入後、患者の行動・心理症状(BPSD)だけでなく、職員の疲弊度も明らかに改善したという。病院や施設が導入するのに加え、家族に学んでもらい、在宅介護に生かす取り組みも始まっている。

※AERA  2015年11月2日号より抜粋



http://www.news24.jp/nnn/news8659565.html
誤った発表で信用を失墜 県が謝罪文を掲載(福島県)
[ 10/30 12:11 福島中央テレビ]

 事実に反する発表をして、大熊町の病院の信用を失墜させたとして、県は、きょうからホームページに謝罪文を掲載している。
 大熊町で双葉病院を経営していた医療法人は、原発事故の直後に、県が誤った発表をしたため、信頼が失墜した、などと県を訴えていた。
 この裁判は、先週、県がホームページに謝罪文を掲載することで和解した。
*記者リポート
 「県のホームページを見ますとトップページの項目に、双葉病院に関する記載があります。ここをクリックすると、謝罪文が掲載されます」
 『十分な情報共有ができないまま、事実に反する記者発表を行った』などと、知事の名で謝罪している。
謝罪文は、きょうから1年間掲載される。
  http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/library/futabaowabi.pdf
futabaowabi.jpg
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http://apital.asahi.com/article/news/2015103000002.html
病院の赤字拡大、診療所は利益安定 厚労省調査
2015年10月30日 朝日新聞

 医療機関や薬局の経営状況を調べた2014年度の「医療経済実態調査」の概要が29日、分かった。病院の赤字幅は前年度より拡大したが、診療所や保険薬局の利益率(収入に対する利益の割合)は7~10%の黒字だった。診療行為や薬代の公定価格となる診療報酬の来年度の見直しで、マイナス改定の圧力が強まる可能性がある。

 調査は厚生労働省が実施。来週の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に示され、診療報酬改定の基礎データとなる。

 14年度の病院(精神科以外)の利益率はマイナス3・1%で、前年度より赤字幅が1・4ポイント拡大した。公立病院がマイナス11・3%(前年度比3・0ポイント減)、国立病院がマイナス0・3%(同3・6ポイント減)。民間病院は0・1ポイント減でも2・0%の黒字を維持した。

 一方、病床がある診療所は10・7%(同0・7ポイント減)、病床がない診療所は8・8%(同0・4ポイント減)と安定的な利益率を確保。保険薬局は7・0%(同2・1ポイント減)だった。

 前回の14年度診療報酬改定は、消費増税対応分を除くと実質的にマイナス1・26%だった。このため設備投資額が大きく、増税による仕入れコストが上がった大規模な病院ほど経営が悪化した可能性がある。

 医師の年間の給与・賞与額をみると、国立病院の院長が1934万円で、前年度より8・4%増加。13年度で東日本大震災に関連する減額措置が終わったためとみられるという。最も高いのは民間病院の院長で、0・1%増の2930万円だった。

(朝日新聞 2015年10月30日掲載)


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