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10月26日 

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/47105.html
公立病院の民間的経営手法、総務省が調査へ- 新改革プランの実施状況で
2015年10月26日 16時00分 キャリアブレイン

 新公立病院改革ガイドランで策定が求められている「新公立病院改革プラン」(新プラン)について、総務省が来年度以降に予定している実施状況の調査概要が26日までに分かった。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年における具体的な将来像に加え、民間的な経営手法を導入しているかどうかも調査項目に挙がっている。【新井哉】


■地方議会から「不採算部門」の指摘も

 公立病院をめぐっては、医師不足で小児や周産期医療などの提供体制を維持できず、診療科を休止・閉鎖するケースも少なくない。また、地方議会から「不採算部門」として公立病院の関連予算の縮小を求められ、一般会計負担の見直しに着手している自治体もある。

 ただ、県庁所在地から車で1-2時間ほどかかる地域では、公立病院だけが外来機能を持ち、病床を含め地域医療の“唯一の砦”になっているケースもあり、一般会計負担の見直しは、地域医療の提供体制の縮小につながりかねない。

 こうした状況などを踏まえ、総務省は今年3月に新公立病院改革ガイドラインを策定。病院事業を行っている地方自治体に対し、新プランを策定して病院機能の見直しや病院事業経営の改革に取り組むよう求めている。

■民間への譲渡や診療所化も選択肢に

 総務省は、新プランの実施状況を調査する際、地域医療構想を踏まえた役割を明確にしたい考えで、調査票に、▽地域医療構想を踏まえた病院の役割▽2025年における病院の具体的な将来像▽地域包括ケアシステムの構築に向けて果たすべき役割▽一般会計負担の考え方(繰出基準の概要)―といった項目を盛り込む見通しだ。

 また、調査票には経営の効率化や黒字化を目指す時期、民間的な経営手法の導入や収入増加・確保対策といった目標達成に向けた具体的な取り組みも記載する予定。経営形態の見直しについての項目も設け、地方独立行政法人や指定管理者制度に加え、民間への譲渡や診療所化も選択肢に挙げている。

 調査項目の概要について総務省は、地方自治体が新プランを策定する際の参考にすることを要望。また、都道府県に対しても、市町村が策定する新プランにどのような助言を行っているかも調査する方針だ。



https://www.m3.com/news/iryoishin/367492
シリーズ: m3.com×NewsPicks共同企画「医療の未来、医師のリアル」
「近藤理論」を巡り医師とNP読者の意見の違い◆Vol.4
医師でも31.5%は「聞くべき点もある」

2015年10月26日 (月)配信 佐藤留美(NewsPicks編集部)

 がんは放置すべき、抗がん剤は毒だ、検診による早期発見のメリットはない――。元・慶應義塾大学医学部専任講師の近藤誠氏は、日本のがん治療を真っ向から否定する。氏が提唱する「がん放置療法」のあらましは簡単に言うとこんなことだ。がんには「本物のがん」と「がんもどき」の2種類があり、本物のがんは発見時には転移しており治療は無駄、一方、がんもどきは転移しないので放置しても良い。つまり、いずれの場合でも、積極的な治療は不要だと言う。

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NewsPicks読者の58%が「近藤理論」に「聞くべき点ある」

 この「近藤理論」は、センセーショナルなタイトルの数多くの著書に加え、国民の2人に1人ががんに罹患し、がんが身近な問題と捉えられる時代になり、著書『医者に殺されない47の心得』は100万部を超えるヒットを記録した。 実際、今回のアンケートに答えてくれたNewsPicks(以下、NP)読者の6.2%が近藤理論に賛成し、51.8%もが聞くべき点もあると回答している。

著者の売名行為、エビデンス不足など医師は否定的

 だが、医師の間では近藤理論は長らく疑問視されてきた。実際、今回のアンケート結果を見ても、賛成と答えた医師は2.7%にすぎず、53.4%が反対と回答している。自由回答を見ると、実に辛辣な意見が寄せられる。

 反対意見の中でもとりわけ目立つのが、著者の売名行為なのではないかと訝しむ声だ。具体的には、「著者自身の「売名行為」。医療職者は読む価値なし」「こういう人をマスコミが取り上げるから日本の医療は崩壊するのです」「マスコミでなく学会でも発表してほしい」などの意見が挙げられる。また、「エビデンスレベルが不明」「エビデンスがなく突飛な意見を、ただひたすら喧伝すれば、一般市民は飛びつきやすい。関係する学会、医師会などは反対声明を出すべき」「全くの「机上の空論」。宗教家だと思う」などエビデンス不足を指摘する声も散見された。

 同時に、 「がんの治療は必要」とする意見も多く、近藤理論により患者が悪影響を受けると同時に、他の臨床医がその弊害を受けている現実を問題視する医師もいた。「局所で見つかって治療を希望されずしばらくして転移が、という例も見ます」「最後はまともな医師が近藤先生に騙された患者のフォローをすることになっている」「悪性度の低いものやStage1で術後に何年も元気な方が多くいらっしゃるので、がん 放置療法については、賛成できないです」「がんは2種類だけではなく、治療が有効なものもある。しかし、放置がいいものまで治療している現状も否定できない」「全く信頼に値しない内容であり、このようなデマに踊らされた挙げ句に受診に至る患者を診たくありません」「放置してよいはずがない 」などの意見にそうした声が代表される。

 さらに、現在一般的に行われている治療について、「積極的治療で恩恵を得ている患者さんは実際にたくさんいます」「補助化学療法は一定の効果があるし、切除不能であっても治癒が望める場合がある」と評価する声が上がった。

医師でも31.5%は「聞くべき点もある」

 しかし、一方で、医師でも31.5%は「聞くべき点もある」と回答している。「助けられる状態の場合は、積極的に治療すべきだと思うが、若干の延命のみであれば、選択の余地があってもよいと考えます」「治療しないのも選択の一つ。そういう考え方を広めたのは素晴らしいことと思う。さらに、(治療をしない)対象患者を受け入れられる態勢づくりが必要と思う」という意見もあった。

 治療の全てが効果があるわけでないことを身を持って実感している医師だからこそ、治療一辺倒でない考え方にも意義を見いだしているかもしれない。

ビジュアル作成:櫻田潤(NewsPicks編集部)
※近藤理論に対するm3.com会員、NewsPicks読者のコメントはこちら⇒



https://www.m3.com/news/iryoishin/368403
シリーズ: m3.com×NewsPicks共同企画「医療の未来、医師のリアル」
近藤理論「99害あって1利あり」「査読論文出すべき」
m3.com×NewsPicks共同企画◆Vol.4 自由回答

スペシャル企画 2015年10月26日 (月)配信 高橋直純(m3.com編集部)

  『m3.com×NewsPicks共同企画「医療の未来、医師のリアル」』の第4回「「近藤理論」を巡り医師とNP読者の意見の違い」。で紹介した、近藤誠氏が提唱する癌放置療法についてのm3.com医師会員、NewsPicks読者の自由回答を紹介する。m3.com医師会員からは、「99害あって1利あり」「近藤氏はそのような理論を提唱するのであれば、一般書籍を出すのではなく、査読付雑誌への投稿をきちんと行うべきである」といった声が寄せられた。

Q  近藤誠氏が提唱する「がん放置療法」について、どう思われますか

■■NewsPicks読者

【肯定的】

・進行性の癌については、痛み緩和治療を除き、長期間の治療は止める。
・選択肢としてはありだと思います。
・切った張ったが、全てではないと思う。
・癌治療は医者や薬が治せるものではない。

【否定的】
・癌は怖いので、放置はできない。
・寛解された患者も私の周りだけでも3人おられる。国全体で見ると大勢いるはずだ。
・医学的には間違っているけど、これなら医療費は極めて少なくて済みますね。(近藤氏のクリニックは自費だからお金がかからないとは言わないけど)。
・エビデンスに反する意見の規制は、国が実施すべき。その意見に染まった患者の対応に医師をはじめとする医療従事者の貴重な時間が取られ、他の患者にも悪影響。
・患者側に立った場合、やっぱりキチンと治療してほしいと思う。
・科学の進歩に背を向けている時点で、医療者以前に科学者として失格。こういう本が売れてしまうことが問題。人類は不可能に対する挑戦の歴史あってここまでの高みに来たことに対し、感謝するべきだ。そしてさらに高みを目指していく。より早期の癌を見つけたり、癌になる前に予防したり。その流れを医者であるはずの近藤先生が分かってないのが残念。雨上がり決死隊の宮迫氏が胃癌で手術して現在元気にテレビで活躍している事実に対して、近藤先生がどうコメントするのか聞いてみたいもんだ。
・無駄な治療かどうかは本人・家族が決めること。医師が「無駄」と提唱するのはおかしいと思う。
・エビデンスがないただの譫言。延命率が上がるなら本人が副作用等考えて決めるべき問題。

【その他】
・医師の意見は賛成、反対ともに経験に基づくもので、何が真実か判断できない。臨床試験を実施して検証してほしい。
・全ての癌に対して、高い抗癌剤を使うことには否定的。苦痛を伴うのであれば、それを取り除く緩和ケアを推進すべき。
・本物の癌に対しては進行度によって治療が必要な場合もあるのではないだろうか。まあ抗癌剤は無駄だと思う。
・「ありがとう」の言葉に治癒効果もある。家族など周りの本気のサポート必要。
・効果があれば治療法は問わないが、癌と癌もどきの違いなど科学的に説明して欲しい。
・極論を述べているので危なっかしいが、むやみに治療することが正しいわけでないという点は同意。医者も勉強している医者と不勉強な医者がおり、患者は賢くなければ騙される。しかし、中途半端な知識で近藤氏の受け売りをそのまま自身に当てはめるのは大間違い。
・発症年齢にもよる。治療するか否かは医療従事者の提案までで、患者および身内が決定するべきことであると思う。
・近藤医師の意見が充分ではないと思うので判断に迷うが、治療よりも患者のQOLを重視した方がよいケースもあると思う。特に叔父の癌治療をみていて、そう思った。ただ、一般的に癌は一律で治療しないというのは常識的に受け入れられない。回復の見込みがある癌まで放置するのは医師による不作為殺人ではないのか。
・一般の人は擬似医学と医学の区別が付けられない。
・抗癌剤は、高齢者ではほとんどで意味がない。高齢者の寿命を半年伸ばすのに、保険からなん百万円も使うのは馬鹿げている。抵抗力を弱め、死期を早めるだけ。若者に対してや、血液の癌など、一部の癌は効果があるので治療すべき。

■■医師(m3.com会員)

【肯定的】
・治療しないのも選択の一つ。そういう考え方を広めたのは素晴らしいことと思う。さらに、対象患者を受け入れられる態勢づくりが必要と思う。
・患者本人がどうするか決めれば良い。医療費削減のためには、内容の真偽はともかく、良いお考えだと思います。
・確かに「見つけた以上、何かしなければいけない」という現状は異常。患者の期待値が高すぎるのが問題。人間、いつか死にます。

【否定的】
・個別の案件をさも一般のごとく広めており、提唱者は科学者ではないと推察される。
・賛成であれば医療機関を受診すべきでない。
・著者自身の「売名行為」。医療職者は読む価値なし。一般人に読まれると混乱を招く恐れがある。著者に対しては「いい加減にしろ」と戒めたい。
・国民は騙されている。
・一般向けはするだろうが、極端すぎる。何よりもの問題は著者が本当に患者さんを想って書いたのではなく、自分の名をあげることが目的であること。
・大腸癌の肝転移を切除して治癒する人たちもいます。まったくもって理解に苦しみます。真に受ける国民がかわいそう。正確な情報を提供すべき。
・癌と癌もどきの区別ができる技術を構築してほしい。
・医師とは思えない。
・転移があっても完治するケースはあります。彼は無知なだけです。
・近藤氏には、ひどく残念に思う。勘違いさせられている患者がたくさんいる。
・臨床を知らなすぎる。実際には、きちんと癌の患者さんの診療にあたっていないのがすぐにわかる。
・他の治療も理解した上で放置を選ぶのであればいいが、放っていた方がいいというのは乱暴であるし犯罪的。
・全く信頼に値しない内容であり、このようなデマに踊らされた挙げ句に受診に至る患者を診たくありません。
・最後はまともな医師が近藤先生に騙された患者のフォローをすることになっている。
・責任を伴わない近藤氏の発言は、日常診療において非常に迷惑である。
・無責任な主張でデータのこじつけと誇張が激しすぎる。手術や抗癌剤などを一般の方はできるだけ避けたい心理を利用したいわゆる詐欺のようなものです。その上、放置させて悪くなっても責任を取らないので日本の医療の足を引っ張る老害だと思います。セカンドオピニオン外来で稼ぐ悪人といってもいいでしょう。
・最近の抗癌剤の進歩で、転移していても治療すると停滞してくれて、長く予後が得られる方々が増えていると実感がある。近藤氏の説明では,これが納得できない。
・全くの「机上の空論」。宗教家だと思う。
・極論であり、徐々に進行するが治癒可能な癌があることを無視している。早期発見早期治療の効果が検証されるのはこれから。

【その他】
・99害あって1利あり。
・近藤氏はそのような理論を提唱するのであれば、一般書籍を出すのではなく、査読付雑誌への投稿をきちんと行うべきである。
・確かに、最後の最後まで「戦う」必要はない。
・著者御自身が癌になられた時は、本当に治療されないのでしょうか。
・結果について責任が取れるならそれでもよい。
・近藤先生が癌になって、証明してみてください。
・終末期の治療に対し国民に考えさせる機会を与えたことは意味があると思うが、科学的根拠は乏しいと思います。
・反対する点がほとんどですが、長く経過を見ないと正しさの検証はできないと思います。問題となる年齢(若年発症ならどうするのか)や、自分の身内にそのような問題が発生したときに、果たしてそうできるのか?
・選択するのは患者の自由だが根拠の乏しい癌放置療法をことさらに取り上げて報道することは間違っている。
・治療すればよいのかという警鐘。
・医学会も近藤誠を放置してきた責任は重い。
・患者が癌を理解したうえで放置することには同意する。
・各学会が公式に見解を述べるべき。
・2種類だけではなく、治療が有効なものもある。しかし、放置がいいものまで治療している現状も否定できない。
・有効性がはっきりせず、患者や家族に経済的に負担の多い治療法がないことはない。
・癌についての説は判断を留保するが、彼の目的が医学への貢献ではなく、自身への利益誘導であることは判然としている。
・マスコミでなく学会でも発表してほしい。
・個人的には早期発見・早期治療が望ましいと思う。
・「癌放置療法」を政府が放置するのは医療費の削減の意図があると思います。
・「本物の癌」と「癌もどき」理論は、全ての結果に対応できる、まさに「後出しじゃんけん」の屁理屈。どのような経過でも癌死に至れば「本物の癌」でした。全うな医師が全力で治療した結果、再発なき寛解に至れば、「癌もどきで何もしなくても治ったのだ」と言える。これでは、議論すること自体が無意味。最初から「本物の癌」と「癌もどき」を100%鑑別してくれる理論なら絶賛します。ただし、『医者に殺されない47の心得』を含め、同氏の著書は1冊も読んでいない(同氏の収入を増やすだけでばかばかしい)、同理論の詳細を知らない1医師の意見です。
・対照群を作ることができず、結果論なので検証しようがない。科学的な証明ができるといいと思う。
・言論・表現の自由は誰にでもある。



http://jp.wsj.com/articles/JJ10467118934569024562817403357900144755440
社会(時事通信)
「発言しにくい風土」改善要求=群馬大病院の改革委が中間報告

2015 年 10 月 26 日 22:30 JST 更新 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 腹腔鏡手術を受けた患者が相次いで死亡した群馬大学医学部付属病院の管理体制を検証してきた外部有識者の改革委員会は26日、「先輩や恩師に対して発言しにくい風土ができあがっていた」などとする中間報告をまとめた。組織内の風通しの悪さを改めるため、病院長らの意識改革を図るよう提言した。

 改革委は、患者の診療方針が合議ではなく、担当教授のみによって決定されるなど、「医療行為が閉鎖的、属人的になっていた」と指摘。患者の死亡が相次いだ原因に「体制的欠陥」を挙げた。

 こうした問題の背景には、医師の多くが同大出身者で占められることに由来する特異な風土があるとした。師弟関係の中で口が出しづらい状況が生まれ、「改革ができず、患者本位の医療など時代の流れに取り残される結果となった」という。

 改革委は「現場の声、特に若手の意見を取り入れる」形での意識改革などを進めるよう提言。改善策の進捗(しんちょく)状況を公表することも求めた。 

[時事通信社]



http://www.nikkei.com/article/DGXLZO93285460X21C15A0CR8000/
「現場と意思疎通強化を」 群馬大病院患者死亡で改革委
2015/10/27 1:28 日本経済新聞

 群馬大病院で同じ男性医師(退職)の手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、病院全体の体制を検証する外部有識者の「改革委員会」が26日、東京都内で記者会見し、「幹部と現場の意思疎通を強化すべきだ」などとする中間報告を公表した。

 木村孟委員長(元東京工業大学長)は問題の背景について「男性医師は死亡事故後も医療行為を続けており、適性を疑う。人間の尊厳を尊重していると思えない」と指摘。旧第1外科と旧第2外科が独立し、医師らの協力体制も整っていなかったと批判した。

 これらを踏まえ、病院長や診療科長ら幹部が現場の医師や看護師らと積極的に意思疎通し、問題を指摘しやすい体制を作るよう提言した。

 今後、取り組むべき改善策として、学生や若手医師らの安全教育、研修体制を整えていくことなどを挙げた。

 改革委は患者死亡が相次いだ組織の問題点を浮き彫りにするため設置され、5月に初会合を開いており、今回で7回目。

 群馬大病院では男性医師が旧第2外科で手術を担当していた2007~14年、肝臓や膵臓などの腹腔鏡や開腹の手術を受けた患者30人が術後一定期間内に死亡していたことが病院の調査で明らかになっている。〔共同〕



http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1027/ym_151027_9435420238.html
指導力不足・医療の質低下…郡大術後死で改革委
読売新聞10月27日(火)3時8分

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術後に患者の死亡が相次いだ問題で、病院の管理体制を検証する改革委員会(委員長=木村孟つとむ・大学評価・学位授与機構顧問)が26日、都内で記者会見し、問題点を厳しく批判するとともに、改善を求める提言の中間まとめを公表した。
 改革委は5月以降7回、会合を開催。同じ医師が行った手術で死亡例が短期間に続発した背景、防げなかった組織としての問題点を検討した。
 改革委は、問題が起きた最大の要因として、患者の死亡が相次いだ第二外科と、第一外科が同じような手術を行いながら互いに協力せず、非効率で十分な安全管理がしづらい体制だったことを挙げた。指導力のない診療科長の下で、資質に欠ける医師が過剰な数の手術を一手に引き受けた結果、医療の質が低下し、死亡例が続発したと批判した。



http://apital.asahi.com/article/news/2015102600005.html
「やせ薬」不正販売容疑で六本木の医師逮捕 麻薬取締部
2015年10月26日(朝日新聞 2015年10月26日掲載)

 東京・六本木の開業医が「やせ薬」として利用されている肥満の治療薬を不正に販売したとして、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部が、開業医の男を麻薬取締法違反(営利目的譲渡)の疑いで逮捕していたことが26日、捜査関係者への取材でわかった。

 同部によると、逮捕されたのは、港区六本木4丁目で「アーバンライフクリニック六本木」を開業していた渋谷雅彦容疑者(57)。7月13日、中国人と日本人の男女3人に向精神薬に指定されている「マジンドール」1万8千錠を約440万円で不正に販売した疑いがある。渋谷容疑者は「金もうけのためにやった」と容疑を認めているという。

 マジンドールは肥満症患者の治療に使われる向精神薬で、本来は医師の処方が必要だが、渋谷容疑者は診療行為をせず、薬を販売していたという。



http://blogos.com/article/141155/
日米両国に見る医療・介護政策のゆくえ ~責任を果たす制度をつくる~
冨田清行 / 東京財団研究員
2015年10月26日 17:50 BLOGOS

 米国では、ヘルスケア(医療・介護)分野において市場競争に委ねられている範囲が、日本と比べて大きく、また、その市場規模も巨額なものとなっている。米国の医療は、その費用がGDPの約1/5に匹敵する巨大な領域を形成しているが、政府による管理を極力避ける傾向にあることから、医療・介護市場の改革も主に民間側の努力によるところが大きい。2010年に成立したAffordable Care Act(以下、「オバマケア」と表記)は、政府主導で大きな改革を実施するという意味で、1965年に導入された公的保険であるメディケア、メディケイド以来の大きな転換期を構築している。しかし、医療・介護分野は、数多くの国民に対して(対象としては全国民)、数多くの医療・介護従事者と関連産業により、現実の医療・介護サービスが提供されるという巨大で複雑な仕組みである。そのため、実際の改革も難しさを極める。

 米国の改革は、これまでも医療費を抑制することや質を向上させることなど、数多くの取り組みがなされてきたが、オバマケアは医療保険の拡大、予防医療の充実、医療費の抑制など、医療・介護分野における包括的な改革を目指している。そのようなオバマケアの中で、注目される改革項目がある。

医療・介護分野における最大の改革の一つである、費用の抑制と質の向上の両立に挑戦しているAccountable Care Organization(アカウンタブル・ケア・オーガニゼーション)である。

1.二つの「A」

 米国の医療・介護分野におけるキーワードは、オバマケアの法律名称にも使われる“Affordable”(アフォーダブル:入手可能な、購入しやすい、等)が先ず思い浮かぶ。アフォーダブルという言葉は、現行の改革を巡る多くの政策議論や医療・介護サービス事業の説明、さらには、医療・介護産業によるテレビCM等でもよく見聞きする。オバマケアの象徴となる一つの言葉を、ここまで改革を社会に定着させたことは、自らの大統領選挙において、“Yes, we can.”で米国社会をまとめあげたオバマ大統領の訴求力の強さを認識する出来事でもある。

 一方、米国の医療・介護政策を眺めていると、もう一つの言葉が頻繁に登場してくることに気付く。“Accountable(アカウンタブル)”である。Accountable Care(アカウンタブル・ケア)は、現行の医療制度改革において、重要な概念として位置づけられており、アフォーダブルと同様、政策論議や現実の医療サービスの説明などの場面で目にすることが多い。この「アカウンタブル」という言葉は、日本語で「説明責任」と訳されることが多いが、医療・介護政策における説明責任とは何を示すのか、アカウンタブル・ケアを一言で表すことは難しい。しかし、後述するとおり、米国では、医療・介護分野におけるサービスの質を高めていく一つの概念として、定着している。

 “Affordable”と“Accountable”。医療保険に加入しやすくすることで医療へのアクセスを確保する一方、医療サービスの質の向上への責任も果たしていく。つまり、保険改革と提供体制改革の両方を見据えた、この二つの「A」こそが、現在の米国における医療・介護制度改革を表す基本概念と言える。

2.医療提供体制の改革

 アカウンタブル・ケアとは何なのか。現在進行している米国の医療提供体制の改革を見ることで、解きほぐしていきたいと思う。

 オバマケアは、アカウンタブル・ケア・オーガニゼーション(Accountable Care Organization (ACO) )と呼ばれる制度を創設している。以前の回で書いたとおり、オバマケアは文書にすると906ページに及ぶ。その中に医療保険改革をはじめ、数多くの改革項目が盛り込まれているが、米国の医療・介護分野における重要な概念である、アカウンタブル・ケアを名称に持つACOは、わずかに数ページしか記載されていない制度である。しかし、ACOは医療提供体制に関する改革として大きな注目を集めている。

 ACOの定義は、米国保健福祉省の傘下で、ACOを運営する行政機関であるCenters for Medicare and Medicaid Services (CMS)によれば、以下のとおりである[i]。

* ACOは、メディケアの患者に対して、連携の取れた良い質のケア・サービスを提供するために、自発的に形成された医師、病院、その他のケア提供者のグループである。
* 連携の取れたケアの目標は、不必要な重複サービスや医療過誤を回避する一方で、特に慢性疾患について、患者が必要な時に適切なケアを受けることを保障することである。
* ACOが、高い質のケアを提供すること、そして、医療費をより賢明に使うことを両立した時は、節約した費用をACOとCMSが分けることとなる。
* ACOはオバマケアの中に位置付けられ、政府が促進している取り組みであるが、ACOにはいくつかのタイプがある。大別すると、上記のとおり、高齢者向け公的医療保険であるメディケアの中のプログラムに基づき設立されるもの、また、州レベルで運営される公的医療保障であるメディケイドのプログラムに基づき設立されるもの、そして、公的制度とは別に独自に民間ベースで設立されるもの、の3つのタイプに分かれる。さらに、ACOの中心が医師(開業医、診療所)であったり、病院であったりといった特徴も分かれてくる。

 2011年には全米で64だったACOの数は、メディケアACO・プログラムが始まった2012年に336へ推移し、2015年1月には744にまで増加している[ii]。医師(開業医、診療所)が中心のACOは全体の37%、病院が中心のACOは28%、その両者が中心となっているACOは35%となっており、病院よりも小さい規模の医療提供者が中心となるものが多い[iii]。そして、ACOが診ている患者も徐々に増え、現在、全米で2350万人に達している[iv]。

 上記のとおり、ACOには公的プログラムに拠るものか、民間ベースか、また、ACOの中心が誰なのか等、多様な形が存在するが、共通している構造が、CMSの定義にあるとおり、医師、病院等のケア提供者のグループ化、連携(統合)ケア、質向上と費用節約の両立の3点である。

 アカウンタブル・ケアの概念は、ACOの創設時で初めて現れたものではなく、クリントン政権時の医療改革議論における「管理された競争」の背景となる概念であり[v]、さらには、1932年の医療コスト委員会 (CCMC) における、医療サービスの組織と費用に関する調査研究にまで遡って見ることができるとされる[vi]。

 したがって、アカウンタブル・ケア自体は何ら新しい概念ではなく、現在のオバマケアにおける提供体制改革の中心であるACOも、その考え方自体は目新しいものとはいえない。アカウンタブル・ケアの概念は、ACOの定義にあるとおり、単に費用を節約するのではなく、質の向上も同時に達成することである。

 米国においては、これまで数多くの改革が実行されてきたが、アカウンタブル・ケアの概念自体は一貫しており、それを実現する政策の手法、具体的な施策が、それぞれ生み出される時点で異なる形態を持って実施されてきたと考えられる。例えば、費用の節約を行い、医療サービスのネットワーク化を進めるという点を見れば、ACOとHMO (Health Maintenance Organization) は似た制度、組織である。しかし、これまでの米国の主要な医療提供組織の一形態であったHMOも膨張する医療費に対して導入が進められ、一時的には費用の抑制に繋がったものの、保険会社主導の抑制策の効果は長続きせず、むしろ医療サービスの利用における制約が患者にとって問題視されるようになっていった。

 ACOは、HMOとは違い、医師や病院といった医療サービスの提供者が中心となってネットワークを形成し、提供者側に質の向上と費用節約を両立するためのインセンティブを導入することが新たな施策である。

 さらに、提供者側と患者側の双方にとって、ACOへの参加は義務ではなく、ともに「自発的に」参加することが大きな特徴である。

 オバマケアは、医療保険の拡大を巡って国論を分ける大論争を繰り広げたが、ACOに関しては政治的な対立はほとんど見られない。当初、ACOがオバマケアの施行前で学術的な理論の段階にあった時点では、机上の空論であり効果が期待できない旨の批判が見られたものの、ACOに反対する政治的運動が見られないことは興味深い。

3.ACOが目指すもの

 ACOは、現在の米国の医療提供体制改革における大きな動きの一つである。

 ACOは、公的プログラムのみならず、民間独自により設立されるものがあり、また、ACOを形成する提供者の多様性によって、多様なACOの形成に結びつく。当然ながら、地域特性などを考慮すれば、ケアの提供には多様性が出てくるのであり、ACOも多様な形を持つのも自然である。

 また、ACOは、プライマリー・ケア、統合ケア、患者中心ケアなど、現行の医療提供体制における多くの改革と連動している。ACOと書くと、まず、組織(Organization)なので、何らかの物理的な組織体(entity)を思い浮かべるが、むしろ、システムと捉えた方が理解しやすい[vii]。この考え方に立てば、ACOとは、「質の向上と効率性のために、出来高払いや包括支払、人頭払いなど、様々な支払方法を駆使した、包括的な費用上及び医療サービス提供上の再構築戦略」となる[viii]。

 最近では、アカウンタブル・ケア・コミュニティ(Accountable Care Community(ACC))、アカウンタブル・ケア・ステイト(Accountable Care State(ACS))といった言葉まで登場している。このように、アカウンタブル・ケアを、医療・介護サービスを提供するケア提供グループとしてのACOが対象とする範囲を超え、コミュニティ全体、州全体に適用しようという考え方も出てきている[ix]。米国においては、メディケイドや州が運営する医療保険市場Exchange、医療提供者への規制、医療設備の供給規制、医師免許等の施策、つまり、医療費の管理に関係する権限の多くを州政府が有しており、その意味で州政府自身が州民の健康に対するアカウンタビリティを十分に発揮すべきであるという考え方も出ている[x]。そうなると、アカウンタブル・ケアは単なるケア提供体制の改革のみならず、地域社会全体を巻き込んだ改革ともいえる。

 ACOが、プライマリー・ケア促進、統合ケア、患者中心ケアなど、多くの医療提供体制改革と連動していることは、それだけ多くの医療・介護サービスのプロフェッショナルや関連産業、そして患者・家族と関わりを持つことを意味する。

 そして、プライマリー・ケア、統合ケアを目指すということは、これまで分散的で細分化された提供体制から転換して、医師、看護師、病院、専門医、歯科医、介護サービスなどの数多くの専門職種の人々が連携するような形を志向することとなる。そして、ACOの定義に「自発性」が含まれているとおり、規制ではなく、ケア提供者が自らの判断で積極的にACOに関与していくことのインセンティブを作り出さねばならない。それが、ACOの政策立案上の最大の挑戦である。

4.支払制度の改革

 質の向上と費用節約の両立をどうやって達成するのか、長年、多くの政策関係者が悩んできた課題であるが、それこそがACOのゴールそのものである。ACOは、その目標を達成するための仕組みとして、支払制度の改革を実施している。

 この支払制度改革がどのようなものなのか、公的制度であるメディケアACOについて具体的な状況を見てみる。

メディケアACOにおいては、現在、「メディケア・シェアード・セイビング・プログラム(Medicare Shared Saving Program(MSSP))」(2012年4月施行)と「パイオニアACO・プログラム(Pioneer ACO Program)」(2012年1月施行)の二つの主要なプログラムが進行中である。ともに、CMSへの申請に基づきプログラムが実施されるもので、MSSPは費用を節約した場合にその節約分をACOとCMSが折半し、パイオニアACOの方は、費用を節約した場合にその節約分を、逆に費用が過大になり当初の見積もりから超過して損失が発生した場合には、その損失をCMSと分けることとなっている。そのため、パイオニアACOの方がACO側にとってリスクが大きくなるが、節約した場合の分配基準がACO側に多くなるため、ベネフィットも大きくなっている。政府として、既にアカウンタブル・ケアの実績が認められる医療提供グループに対してはパイオニアACOへの参加を、そして、これからアカウンタブル・ケアを実践しようと試みるグループに対しては、リスクの小さいMSSPへの参加を促している構図となっている。

 このMSSPとパイオニアACOは、全体で年間どれだけの費用を要するのか、事前に見積もりを立てて、その見積もりに対して実際の費用を比較して節約分、又はと超過分を算出する。そして、医療費の支払いは、従前の出来高払い(診療を行った分だけ医療費が支払われる制度)でなく、包括支払の形式となっている。この支払方法の改革こそが、ACOのインセンティブ設計そのものであり、ACOが成功するか否かの鍵となっている。そして、包括支払の場合、ケアの質への影響が懸念されるが、CMSのプログラムは33の質の評価指標を設定し、質の向上を促す措置を担保している。

 米国では出来高払いに対する議論が長年続いてきた。出来高払いは、過剰診療へのインセンティブに繋がっており、また、医療提供者同士の連携させることに繋がっていない、との指摘がなされてきた[xi]。その流れを受けて、米国においては包括支払の導入が進んでいるが、ACOはアカウンタブル・ケアの実現と支払制度改革を明確に繋げた制度である。

 医療サービスに対する報酬の支払われ方には様々な方法がある。項目別予算制、総額予算制、人頭制、出来高払い制、1件ごとの包括支払制[xii]など、それぞれ長所短所を抱えながら、各国の事情を反映しつつ、適用されている。日本、米国双方において、出来高払いを基本としつつ、包括支払制度が徐々に導入されている状況にある。そのような中、ACOは出来高払いの欠点を一掃すべく、包括支払いを進めているが、プライマリー・ケア、統合ケアへの改革と連動していることから、より包括度の高い支払制度も視野に入ってくる。

 ACOは、アカウンタブル・ケアを具現化するシステムである。ACOは、誰に対して何の「責任」を果たすのか、そして、その「責任」を果たすために相応しい支払制度とはどういうものなのか。それを考える上で、多くのケア関係者、患者・家族、そして住民を巻き込んで、合意を形成していく過程として、ACOが果たす役割は大きいと思われる。

5.ACOの成果
 オバマケアの主要な柱の一つであるACOは、制度としての導入から3年が経過したところであるが、まだその成果を評価する材料が十分に出揃っているとは言い難い。特に、支払制度を巡っては、長年に亘り議論されてきたこともあり、改革の成果を評価するには、もう少し時間を要するのかもしれない。しかし、現時点で公表されている成果を見ることで、現状を知り、将来の見通しを描く際の参考となるであろう。

 CMSは、パイオニアACOおよびMSSPの成果を公表している。特に、パイオニアACOは強いインセンティブ設計が施されているので、パイオニアACOの状況を見ると、その成果が分かりやすいと思われる。

 米国には、政策評価を実施する機関としてGAO(Government Accountability Office)が存在しているが、GAOがCMSの公表したパイオニアACOの2012年と2013年の成果について評価しているので、これを参照して、成果を眺めてみる[xiii]。

 パイオニアACOは、2012年に32のACOが参加している。その内、ケアの質の基準を満たした上で費用節約に成功したのは13のACO(約41%)で、総額で1億3880万ドル(平均1070万ドル)の節約額となった。一方、医療費が超過したのは1つのACO(約3%)であり、超過額は510万ドルである。翌年の2013年は、パイオニアACOに参加したACOは23(9のACOはプログラムから離脱)となり、その内、11のACO(48%)が費用節約を実現し、その総額は1億2130万ドル(平均1100万ドル)であった。医療費が超過したACOは6つ(26%)となり、その総額は2270万ドル(平均380万ドル)となった。

 このように、費用節約に成功したACOは多く存在しているが、一方で費用節約を達成出来なかったACOも少なくなく、プログラムから離脱するACOの存在も含め、効果の有無がはっきりと分かれている(費用節約も超過もなかったACOは、2012年に18、2013年に6存在している。)。

 なお、ACOは費用節約のみならず、ケアの質の向上との両立が肝心である。メディケアにおけるACOプログラムは、質の評価指標として、33の指標を設定している。この33の指標は、①患者経験(Patient experiences of care)、②ケアの連携と患者の安全、③予防医療、④健康リスク集団の疾病管理に大別される。

 このケアの質に関しては、2012年から2013年にかけて向上したことが確認されている。2013年にパイオニアACOに参加した23のACOは、前年2012年と比べて、33の指標の内、22の項目(67%)について高いクオリティを記録している。

 また、GAOの評価は出ていないが、CMSが公表するデータによれば、2014年のパイオニアACOは、費用節約、質向上ともに2013年より成果が発揮されているようである[xiv]。

 これだけを見て、ACOが成功していると評価することは難しいであろうが、何らかの変化をもたらしていることは確かであろう。長年に亘る議論を経て変革していることについては、もう少し長い目で見た評価も必要となる。そして、ACOは現在進行形の改革であり、制度設計上の議論は継続して存在する。例えば、個々のACOの費用の基準額は過去の履歴から設定されるが、その設定額が過大になれば、節約の達成や容易であり、過少になれば、費用節約は困難となる。

 CMSはプログラムに柔軟に対応し、離脱を含め、ACOの広がりを促進する動きを止めていない。また、ケア提供者側もそれぞれが創意工夫をして、様々な努力を繰り広げている。こうした画一的でない躍動感がACOの特徴なのかもしれない。

最後に

 米国の医療・介護政策は大きな変革の最中にある。目立った議論としての医療保険の問題だけでなく、ケアの提供体制改革という膨大、かつ地道な努力も並行して行われている。

 医療・介護は、国の経済や財政に大きく影響するとともに、地域社会において基盤としても位置付けられる。米国の医療・介護政策に関する議論の場に赴くと、医療・介護は地域社会の中でどのような役割を担うべきなのか、また、市民がどのように医療・介護と接していくべきなのか、を問う場面に遭遇する。

 市場主義の医療が跋扈しているとの印象が強い米国にあっても、プライマリー・ケアの促進や統合ケア、患者中心ケアは、多くの人に共有されつつある言葉になっている。分散され細分化された医療・介護を繋げ、それが結果として、住民の安心に繋がり、費用の節約にも貢献するのであれば、医療・介護政策が目指す目標ははっきりする。

 巨大で複雑化した制度である医療・介護分野において、単一の目的だけでは全体の整合の取れた改革は難しい状況となっている。ACOは、複数の目標を同時に立てて、かつ、他の改革とも融合し、さらに数多くの関係者を巻き込もうとする改革であるが、その仕組みはシンプルであり、また、柔軟である。

 政府による規制でなく、ケア提供者の自発性と裁量による費用節約と質の向上を目指すという取り組みは米国ならでは、と見ることもできるが、医療・介護の提供体制を構築する責任を誰がどのようにして果たしていくのか、を考える上での重要な視点を示している。

 医療・介護政策は、「社会保障制度」として、どのような姿が望ましいのか、社会全体を巻き込んで合意形成して決めなければならない。その意味で、ACOは、地域社会が一体となってケア提供者や様々な専門家、産業、住民、行政をつなげていく、一つの仕組みとして、今後も注目に値する動きとなるであろう。


[i] Centers for Medicare and Medicaid Services, “What’s an ACO?”

[ii] Tiaana Tu, David Munhlestein, S.Laurence Kocot and Ross White, “The Impact of Accountable Care, Origins and Future of Accountable Care Organizations”, Leavitt partners. Robert Wood Johnson foundation, May 2015

[iii] 同上

[iv] 同上

[v] Kelly Devers and Robert Berenson, “Can Accountable Care Organizations Improve the Value of Health Care by Solving the Cost and Quality Quandaries?”, Timely Analysis of Immediate Health Policy Issues, Robert Wood Johnson Foundation and Urban Institute, October 2009

[vi] Robert James Cimasi, “Accountable Care Organizations Value Metrics and Capital Formation”, CRC Press, 2013

[vii] Mark Bard and Mike Nugent, “Accountable Care Organizations Your Guide to Strategy, Design, and Implementation”, Health Administration Press, 2010

[viii] 同上

[ix] Rob Waters, “Health Innovators In Akron Bring Accountable Care To The Community”, Forbes(Online), 12/18/2013

[x] Center for American Progress, “Accountable Care States The Future of Health Care Cost Control”, September 2014

[xi] Topher Spiro, Maura Calsyn, and Meghan O’Toole, “A Strategy for Medicare Payment Reform Improving Accountable Care Organizations While Expanding Bundled Payments”, Center for American Progress, May 2015

[xii] 遠藤久夫・池上直己編著「医療保険・診療報酬制度」、講座 医療経済・政策学 第2巻、勁草書房、2005年

[xiii] United States Government Accountability Office, “Medicare Results from the First Two Years of the Pioneer Accountable Care Organization Model”, April 2015

[xiv] Centers for Medicare and Medicaid, “Medicare ACOs Provide Improved Care While Slowing Cost Growth in 2014”, 8/25/2015



http://blogos.com/article/141093/
主張/診療報酬の改定/医療の安心・安全を脅かすな
しんぶん赤旗
2015年10月26日 09:42 BLOGOS

 公的医療保険で受ける医療サービスの価格である診療報酬の2016年度改定に向けた議論が本格的に始まりました。安倍晋三政権の社会保障費削減路線のもとで、財務省や財界などは、診療報酬総額の大幅な「マイナス改定」を要求しています。外来、入院、検査、手術、投薬などさまざまな医療行為の財源となる診療報酬の改定結果は、国民が受ける医療水準に直結する問題です。安心・安全の医療を国民に安定して提供できるようにするためには、医療の質を損なう「マイナス改定」ではなく抜本的な増額こそが求められます。

現場をさらに疲弊させる

 診療報酬改定は原則2年に1度行われ、診療報酬総額の改定率は、予算編成作業のなかで内閣が12月中に決定します。医療機関などに支払われる、診療行為や薬ごとの具体的な報酬額(患者は1~3割の窓口負担)については、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を経て、来年2月ごろ決められる予定です。

 自民・公明両党が推進した「構造改革」路線のもとで行われた02~08年度の改定は、大幅引き下げが毎回強行され、多くの医療機関は経営危機にさらされました。それによって、国民に必要な医療が十分提供されない「医療崩壊」などの事態が引き起こされました。

 その後の改定も大幅マイナスではないものの、医療危機を打開する増額は行われていません。むしろ医療費削減路線のもと、地域に密着した中小医療機関の経営が困難になるような改定や、患者を「入院から在宅へ」強引に誘導する改定などが繰り返されました。

 安倍首相の政権復帰後初の診療報酬改定となった前回14年度は、財界や財務省から「医療費大幅抑制」要求が強まり、実質マイナスとなりました。その結果、看護師配置が他の病床より手厚い「患者7人に看護職員1人」病床の削減を促進することや、「同じ建物」に住む複数の患者を「同じ日」に診察すると医療機関の報酬が減額されることなどが盛り込まれ、患者・家族にも医療従事者にも大きな苦難をもたらしています。

 安倍政権は、この深刻な実態をますます悪化させようとしています。16年度予算で社会保障費の伸びを、概算要求段階からさらに1700億円程度削減することを掲げ、削減分の大部分を診療報酬のマイナス改定によって、ねん出することを露骨に狙っています。

 財務省は「全体としてマイナスとする必要がある」「サービス単価の大幅抑制」などとさかんに強調し、厚労省も今月示した診療報酬改定の基本方針案のなかで、「患者7人に看護職員1人」の病床の削減を加速させることなどを打ち出しています。「手厚い看護体制」づくりに完全に逆行する改悪は、医療現場をいっそう疲弊させ、患者・家族の安全を脅かすものでしかありません。

暮らし最優先の政治こそ

 医療を立て直すには、診療報酬の増額がどうしても必要です。患者負担に跳ね返らないよう窓口負担軽減なども求められます。

 財政が大変だといって社会保障費を削り込む一方で、軍事費は増額し大企業向けの法人税減税は気前よく実行する安倍政権のやり方には、なんの道理もありません。国民の健康と命、暮らしを最優先にする政治の実現が急務です。



http://mainichi.jp/shimen/news/20151027ddm005070013000c.html
記者の目:医療事故調査制度=古関俊樹(東京社会部)
毎日新聞 2015年10月27日 東京朝刊

 ◇遺族と信頼結ぶ検証を

 予期しない死亡事故を起こした医療機関が院内調査をして遺族や第三者機関に報告する「医療事故調査制度」が今月1日から始まった。私が医療事故の取材をして感じるのは、医療機関が遺族と情報を共有しないままに調査を進め、その結果、遺族の不信を招くケースが多いことだ。新しい制度を成功させるには、医療機関が院内調査を適切に実施するだけでなく、遺族と対話を重ねて調査への理解を得ることが必要だ。対話を怠れば信頼関係が崩れることを忘れてはならないと思う。

 18日夕、東京のJR四ツ谷駅前で、医療事故の遺族ら約10人が新制度の公正な運用を求める署名活動をした。2008年11月から月に1回行い、73回を数える。活動に参加して約3年という都内の40代の男性は10年12月、山梨県の病院にリハビリのため入院していた母親を医療事故で亡くした。吐いた物がのどに詰まる窒息死だった。弁護士からアドバイスを受けて事故の3日後にカルテの開示請求をしたところ、死亡の1週間前、母親に同様の事故が起きていたことが分かった。「なぜこんな大事なことを言わないんだ」と怒りがこみ上げた。男性は11年に民事裁判を起こし、病院側が管理のミスを認めて和解したが、それでも不信感が残ったという。

 ◇医療機関の姿勢、情報共有に課題

 新制度では、医療機関は予期しない死亡事故を起こした場合に第三者機関に届け出たうえで、院内調査を始める。調査開始の判断は医療機関に委ねられ、調査するのもその医療機関が主体だ。遺族に不服があれば第三者機関に再調査を申請できるものの、医療機関がしっかりと調査する前提で制度が作られている。

 医療機関が遺族に情報をどう伝えるのかは、これまでも新制度を巡る議論の要点だった。今年3月まで続いた新制度の運用指針を決める厚生労働省の有識者検討会では、調査結果をまとめた報告書を遺族に渡すかどうかで出席者の意見が割れた。一部の医療関係者が「報告書に必要な情報が書かれなくなる」などと抵抗し、医療機関の努力義務にとどまった。

 これまで全ての医療機関が遺族に情報を開示し、誠実に向き合ってきたとは言いがたい。私が取材した遺族は、「院内調査の過程で自分の意見も聞いてほしい」と訴えたのに、一切聞き入れられなかった。ある医師は「遺族は医学的には素人なので話を聞く必要がない、と考える医師もいる」と打ち明ける。

 医療事故の被害者や遺族を支援してきた市民団体「医療過誤原告の会」の宮脇正和会長(65)は「病院が遺族に真摯(しんし)に対応せず、関係が悪化するケースは多い」と話す。

 医療機関は事故原因の解明につながる情報の大部分を持っている。このため、遺族に十分な説明をせず、重要な事実を隠したままでも、調査を進めることは可能だ。新制度の運用指針は遺族のヒアリングについて「必要な場合があることも考慮する」とするだけだ。

 ただ、これでは医療機関からの視点に偏った調査にならざるを得ない。遺族は自分の知る事実と異なる調査結果が出れば、「医療機関が事実をねじ曲げたのではないか」と怒りを感じ、裁判を考えるようになる。宮脇さんは「裁判は遺族にとって経済的、精神的な負担が大きい。医療機関の対応は遺族の将来に大きく影響する」と指摘する。

 ◇事実経緯を重視、名大病院の例も

 こうした中で、遺族に説明を尽くす姿勢を貫いている医療機関もある。02年に腹腔(ふくくう)鏡手術で患者が死亡する事故があった名古屋大病院は「逃げない、隠さない、ごまかさない」という原則を掲げ、遺族と向き合ってきた。

 名大病院は重大な医療事故が起きれば、調査委員会を設置して外部から招いた弁護士が中心になって遺族からヒアリングをする。生前に患者が家族に送ったメールなどがあれば示してもらい、送信時刻を客観的な証拠にすることもある。担当医が「遺族は納得している」と思っても、実際には遺族が疑問を感じていることもあるという。

 副院長で「医療の質・安全管理部」の長尾能雅教授(46)は「調査では事実経緯を明らかにすることが何より大切。そのためには、患者のそばにいた家族に話を聞くことが必要だ。同じ事実認識の下で分析しなければ、遺族の納得は得られない」と語る。

 新制度創設の機運が高まったのは、かつて刑事事件に発展する医療事故が相次ぎ、国民の医療に対する信頼が地に落ちたことが背景にある。遺族の声に丁寧に耳を傾けなければ、医療への信頼は再び大きく損なわれるだろう。情報を遺族と共有しつつ事故の再発防止につながる調査ができるか。取材を続けたい。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/47099.html
医療事故調センター報告、東京で第1号事例- 機構、支援団体研修開催へ
2015年10月26日 11時00分 キャリアブレイン

 10月にスタートした医療事故調査制度(事故調)で、医療事故として医療機関から第三者機関である医療事故調査・支援センター(センター)に報告があった事例が、先週末までに東京で1件あったことがCBニュースの独自取材で分かった。この事例に関する詳細な情報は匿名化されており、医療機関名や診療科名などは明らかになっていない。【君塚靖】

 事故調では、医療事故の起きた医療機関は、センターに報告した上で院内事故調査に着手することになっている。また、その医療機関は、医療機関に技術的支援をしたり、専門家の派遣などをしたりする医療事故調査等支援団体(支援団体)に、センターに対して報告すべき事例かどうかを相談することができるが、センターに報告するかどうかは最終的に管理者が判断する。

 センターに報告する対象は、制度施行後に起きた医療事故であるため、今回、東京でセンターに報告された事例は、10月1日以降に起きた医療事故だ。センター業務を担う日本医療安全調査機構(理事長=高久史麿・日本医学会長)では、報告を受けた事例の情報は厳重に管理し、匿名化することで、医療機関名などが分からない仕組みにしている。

■支援団体向け研修では事例検証

 日本医療安全調査機構の木村壮介常務理事は、25日に東京都内で開かれた日経メディカルなどの主催による事故調に関する講演会で、支援団体向けに研修を実施する方針を明らかにした。研修の開催日程や内容などは今後詰めることになるが、センターへの報告事例などを検証する見通しだ。

 支援団体への研修の必要性は、制度施行前から指摘されていた。都道府県ごとの支援団体の取りまとめ役については、都道府県医師会がすでに名乗りを上げているが、支援団体の決定から制度施行までに時間が限られていたことから、支援団体同士の連携体制は現在構築中で、情報共有も十分ではない。

 支援団体ごとに制度への周知の程度が違うと、例えばある医療事故について医療機関が2つの支援団体に、センターに報告すべきかどうかを相談した場合、一方は報告の必要があるとアドバイスし、一方は報告の必要はないとアドバイスするなどして医療機関がかえって判断に迷い、結果的に現場が混乱する可能性もある。

 事故調を規定する改正医療法の参院厚生労働委員会の附帯決議に、「支援団体については、地域間における事故調査の内容及び質の格差が生じないようにする観点からも、中立性・専門性が確保される仕組みの検討を行う」ことなどが盛り込まれているため、同機構は支援団体向けの研修を実施する準備を急いでいる。



http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/102500005/102500003/?ST=ndh
どうなる?遠隔診療
厚労省の“解禁通達”で、ざわつき始めた現場

大下 淳一=日経デジタルヘルス
2015/10/27 00:00

離れた場所にいる医師と患者を情報通信機器でつないで行う「遠隔診療」。これまでは「原則禁止」と認識され、活用が進んでこなかったが、その状況が変わりそうだ。きっかけは2015年8月に厚生労働省が出した1本の通達だ――。

 東京都心で働くビジネスパースンなどを対象に内科診療を行っているお茶の水内科 院長の五十嵐健祐氏は2015年夏のある日、医療関係の知人や法律の専門家と熱のこもった議論を交わしていた。

 テーマは、同年8月10日に厚生労働省(厚労省)が各都道府県知事宛てに出した1本の通達である。「臨床医の立場から、この通達をどう解釈したらよいか」─―。議論は長時間、尽きなかった。

事実上の「解禁」

 議論の対象となった通達は、互いに離れた場所にいる医師と患者を情報通信機器でつないで行う診療、いわゆる「遠隔診療」に関するもの。同省が過去の通知で示した遠隔診療の適用範囲を、必要以上に狭く解釈しなくてよいことを強調する内容だった。

 これまで遠隔診療は、離島や僻(へき)地の患者を診察する場合など、対面診療が物理的に難しいケースを除いて「原則禁止」と捉える医療従事者が多かった。患者との対面診療を原則とする医師法第20条への抵触などを恐れてきたためだ。

 遠隔画像診断のように、医師同士をつなぐ「Doctor to Doctor(DtoD)」の領域では遠隔医療の活用が比較的進んでいるのに対し、「Doctor to Patient(Dt oP)」の領域での活用が遅れてきた理由がここにある。

 今回の通達では、厚労省が遠隔診療を事実上解禁─―。関係者の多くがそう受け取った(図1)。心電や呼吸状態などを計測できるウエアラブルセンサーを手掛ける米Vital Connect社の大川雅之氏(Vice President and General Manager, Japan)は、今回の通達は「遠隔診療に関心を持つ者にとっては大きなインパクトがあった」と話す。

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図1 潮目が変わる
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 社会や医療現場からの要請(ニーズ)、それに応える技術(シーズ)の両面からも、遠隔診療の活用が期待される場面は確実に増えている。変わり始めた遠隔診療の潮目。それを読み解く上で、まずは今回の通達の中身を見ていこう。

事前の対面診療は前提にあらず

 厚労省が2015年8月10日に出した通達は、同省が1997(平成9)年に出し、2003年と2011年にその一部を改正した「平成9年遠隔診療通知」をベースとするものである。

 平成9年の通知で厚労省は、遠隔診療に対する「基本的考え方」を示した。診療は医師と患者が「直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療はあくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべき」というものだ。医師法第20条を踏まえた内容である。

 ただし、直接の対面診療と「同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない」と注釈をつけた。そしていくつかの「留意事項」を示し、遠隔診療の適用が認められる場面を具体的に挙げた。

 例えば、「在宅糖尿病患者」を対象に、「テレビ電話等情報通信機器を通して、血糖値等の観察を行い、糖尿病の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと」といった内容である。

 この通知を多くの医療従事者は、遠隔診療はあくまでも「原則禁止」であり、厚労省が挙げた事例でのみ例外的に許されると解釈してきた。厚労省の事例をいわば“ホワイトリスト”と見なしてきた。

 これに対し今回の通達では、平成9年遠隔診療通知の「基本的考え方」や「留意事項」で挙げた事例を必要以上に狭く解釈しなくても良いことを強調した。明確化したのは次の3点だ(図2)。

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図2 事実上の「解禁」
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 第1に、平成9年遠隔診療通知の留意事項において、「直接の対面診療を行うことが困難である場合」として「離島、へき地の患者」を挙げたが、これは「例示」だとした。すなわち、遠隔診療の対象を離島やへき地の患者に限る必要がないことを明確にした。

 第2に、平成9年遠隔診療通知の留意事項において、遠隔診療の対象と内容を「別表」で示したが、これは「例示」だとした。すなわち、別表に示した対象(在宅糖尿病患者など9種類)以外の疾患も遠隔診療の対象になること、および別表に示した「内容」以外の診療内容も許されることを明確にした。

 第3に、平成9年遠隔診療通知では「診療は医師または歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本」としていたが、今回は「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えないこととされており、直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない」とした。すなわち、直接の対面診療を事前に行うことが必ずしも遠隔診療の前提条件ではないことを明確にした。


積極推進に転じた政府

 今回の通達の背景には、遠隔診療をめぐる方針を政府がここにきて大きく転換したことがある。参議院議員の秋野公造氏(長崎大学 客員教授)は2015年10月9~10日に仙台市で開催された「第19回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2015)」(主催:日本遠隔医療学会)で講演し、その経緯に触れた。同氏は医学博士でもあり、遠隔診療を含む医療政策に関して積極的な提言を行っている。

 秋野氏が触れたのは、2015年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」、いわゆる「骨太の方針2015」に、遠隔診療を含む「遠隔医療の推進」が盛り込まれたことだ。

 同方針には遠隔医療という言葉が2カ所に現れ、このうち「医療等分野のICT化の推進等」の項目ではその冒頭で「医療資源を効果的・効率的に活用するための遠隔医療の推進」がうたわれた。遠隔医療の推進が骨太の方針に明記されたのはこれが初めてだ。

 さらに、骨太の方針の具体的な実施策を示すものとして同じ日に閣議決定された「規制改革実施計画」でも、健康・医療分野に「遠隔モニタリングの推進」という項目が新たに設けられた。推進すべき事項として「有用な遠隔モニタリング技術の評価」「遠隔診療の取扱いの明確化」「遠隔診療推進のための仕組みの構築」を明記するなど、遠隔診療に関してこれまでになく「踏み込んだ表現がなされた」(秋野氏)。

 こうした政府方針にもかかわらず、過去の通知の“分かりにくさ”が遠隔診療の普及を妨げかねない─―。そう判断した厚労省が6月30日の閣議決定から間もなく出したのが、今回の通達というわけだ。遠隔診療を「止めて(禁じて)はいないのにうまくいかない」(日本遠隔医療学会 常務理事の長谷川高志氏)というこれまでの状況を打破する狙いがある。

 ただし、今回の通達だけで遠隔診療の活用が一挙に広がると見る向きは少ない。診療報酬(保険点数)制度が遠隔診療の利用を前提とした形では整備されておらず、医療機関にとっては遠隔診療を導入するメリットがまだ薄いからだ。今後、遠隔診療の推進という政府方針が診療報酬改定にどう反映されるか、多くの関係者が注目している。

「ソーシャルホスピタル」実現にも関わる

 病気になってからの診断・治療から、未病段階での健康管理や重症化予防へ。病院でのケアから、地域や街、家庭といった日常生活の中でのケアへ―─。政府が打ち出した遠隔診療の推進はこうした、社会全体が医療の担い手となる「ソーシャルホスピタル」の実現に向けた医療のパラダイムシフトと深く関わっている。「医療資源を効果的・効率的に活用」し、医療費を削減するための仕組みづくりに、遠隔診療が重要な役割を果たすと期待されているのだ。

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日経デジタルヘルスが提唱するソーシャルホスピタルの概念図(イラスト:楠本礼子)
クリックすると拡大した画像が開きます
 例えば、高齢者が要介護状態となっても住み慣れた地域で生活を続けられるようにする地域包括ケアシステム。その推進は遠隔診療の推進にも「大きく影響する」(日本遠隔医療学会の長谷川氏)。離れた場所にいる医師と患者をつなぐ遠隔診療のニーズは、在宅中心のケアにおいてより高まるからだ。

 医療情報の専門家で遠隔医療への造詣も深い京都大学 教授/医学部附属病院 医療情報企画部長の黒田知宏氏はより広い視点から、遠隔診療の必要性を説く。対面診療が必ずしも必要ないと判断される患者に通院を強いることは「社会全体の労働力、すなわち生産性を低下させる」(黒田氏)。同氏は医療側のリソース確保の面からも、遠隔診療は有効とみる。

 臨床の現場に立つ医師からも遠隔診療の活用を望む声は強い。お茶の水内科の五十嵐氏もそうした医師の1人。同氏が遠隔診療の活用を訴えるのは、高血圧症やメタボリックシンドロームなど、重大な疾患につながる生活習慣病はできる限り「上流(早期)で食い止めることが大切」(五十嵐氏)だからだ。

時間的制約からも解放される

 五十嵐氏のもとを訪れる患者には多忙なビジネスパースンも多く「通院する時間を持てないばかりに、治療を中断してしまう」(同氏)。結果として、薬の内服を続けさえすれば良好な状態を保てる症例でも、重症化してしまうケースがしばしばあるという。

 離島やへき地の患者のように物理的制約があるわけではないものの、こうして時間的な制約から孤立してしまう患者が都心部には多い。遠隔診療はそうした患者に手を差し伸べる手段ともなる。

新たなエビデンス生む

 診断のエビデンスの観点からも、遠隔診療には追い風が吹き始めている。例えば、日本高血圧学会(JSH)が2014年4月に発行した「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)。医療機関で測る「診療室血圧」と家庭で測る「家庭血圧」の診断が異なる場合、家庭血圧を優先するとの内容が初めて盛り込まれた。

 病院で測る値に比べて「遠隔でモニタリングした値は“精度が落ちる”のが常識だったが、むしろ(診断材料としての)精度は高い可能性がある」(五十嵐氏)。それにお墨付きを与えた事例の1つが、同ガイドラインというわけだ。

 このほか、政府による規制改革実施計画の「有用な遠隔モニタリング技術の評価」の項目でも、睡眠時無呼吸症候群に対する治療法(CPAP療法)の遠隔モニタリングの評価を検討するとの内容が盛り込まれた。社会問題化している睡眠時無呼吸症候群についても、診断や治療方針に関する新たなエビデンスを遠隔モニタリングが生みだす可能性がある。

 現在、日常のバイタルデータに基づく予防医療的な行為には基本的に保険点数が付かない。遠隔モニタリングが生む新たなエビデンスが、その状況を変える起爆剤になると期待されている。

遠隔診療をカジュアルに

 遠隔診療の実現手段(ツール)にも、ここ数年で劇的な変化が起こった。スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器が急速に普及し、ウエアラブル端末なども相次ぎ登場していることだ。

 これらのデバイスを使って、離れた場所にいる医師と患者が、患者の情報を手軽に共有できるようになった。クラウドコンピューティングや人工知能など、日常のデータを収集し解析するための情報基盤も飛躍的な進化を遂げている。

 大掛かりで高価な専用のテレビ会議システムで遠隔地をつなぐ従来の遠隔診療から、身近な機器を使った“カジュアル”な遠隔診療へ。ツールの進化は、遠隔診療の姿を大きく変えようとしている。既に保険適用外の領域では、モバイル機器を使った遠隔でのモニタリングツールや健康相談サービスが相次ぎ登場している。

 スマートフォンを使って、健康に関する心配ごとを遠隔地にいる医師に気軽に相談できる─―。「ポケットドクター」と呼ぶそんなサービスを2015年12月にも始めるのが、MRTとオプティムである。

 ポケットドクターでは、利用者がスマートフォンで相談内容を登録。あらかじめサービスにエントリーした複数の医師がそれを見て、自らが答えようと思った相談に対して休憩時間などに専用アプリから回答する仕組みだ。相談に当たっては、スマートフォンのカメラを使って患部の状況や顔色を伝え、より正確なアドバイスを受けられるようにする。

 「コンビニに行くような感覚で手軽に健康相談ができる環境を作りたい」。MRT 代表取締役社長の馬場稔正氏はサービスの狙いをこう話す。ゆくゆくは、患者側が医師を指定して行うセカンドオピニオンや、自治体向けのへき地医療など、ポケットドクターのインフラを使ったさまざまなサービスを検討していくという。

メンタルヘルスと高い親和性

 ウエアラブル端末も今後、遠隔診療において大きな役割を果たしそうだ。注目される領域の1つが、まだ「有効なバイオマーカーが存在しない」(VitalConnect社の大川氏)メンタルヘルスの領域である。

 Vital Connect社は同社のバイタルセンサーを使い、睡眠中の心拍やその変動、体動を測ることで「うつ病などの精神疾患に特有のパターンを抽出できるのではないか」(大川氏)とみる。今後、大学の研究者やアプリ開発者などと研究を進めていく。

 企業による従業員の「ストレスチェック」が2015年12月に義務化されるなどの動きもあり、メンタルヘルスに注目するプレーヤーは多い。例えば、ウェブ/テレビ会議向けクラウドサービス大手のブイキューブとエムスリーの合弁会社であるエムキューブも2016年度をめどに、メンタルヘルスの領域で医師と患者を直接つなぐコミュニケーションシステムを開発する狙いである。


  1. 2015/10/27(火) 06:08:15|
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