Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月14日 

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20151014_7
お産の取り扱い中止、地域に危機 久慈の竹下医院
(2015/10/14) 岩手日報

 久慈市中の橋の竹下産婦人科医院(竹下敏光院長)は、来年3月末でお産の取り扱いをやめる。深刻な医師不足の中で周産期医療を守ってきた竹下院長(63)だが、「体力の限界」と苦渋の決断をした。久慈地域でお産に対応できるのは同市の県立久慈病院のみとなり、同病院は産科医療の中核を担う二戸市の県立二戸病院と連携して体制の見直しを図る。市は県医療局などに体制維持を求める。

 竹下院長は県立久慈病院勤務を経て1991年3月に同医院を開業。近年は昼夜を問わず年間300件ほどのお産に対応してきたが、「以前のようにお産を扱う先生が少なくなった。体力的につらいものがある」と語る。

 一方で「医師をやめるわけではない。産科医は守っていかなければならない」とし、来年4月以降も県立久慈病院の負担を減らすため、妊娠34週までの妊婦健康診査や内科、小児科診療を継続する。



http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/administration/20151014000123
県立病院の医業収益9.5%増/14年度
2015/10/14 09:24 四国新聞(香川)

 香川県は13日、県立病院の経営改革に向けた基本指針となる中期経営目標(2012~16年度)で、14年度の達成状況を公表した。医業収益は昨年3月に新築移転した新中央病院で入院、外来患者が増えたことなどにより、前年度比9・5%増の197億5200万円、医業収益における人件費比率(退職給与金を除く)は51・3%と、前年度から1・6ポイント改善した。

 同日、県庁であった県立病院経営評価委員会(会長・久米川啓県医師会長)の会合で報告した。

 目標では最終年度の16年度までに人件費比率を54・0%、医業収益を202億5100万円にするなどと設定している。

 病院別の医業収益は、中央が最新の高度医療機器を導入し、急性期医療に特化したことなどで162億3200万円(前年度比16・9%増)。丸亀9億8900万円(同11・3%減)、白鳥25億3100万円(同0・3%減)。人件費比率は中央48・6%(同1・8ポイント減)、丸亀93・2%(同2・1ポイント増)、白鳥51・6%(同3・1ポイント増)だった。

 会合ではこのほか、今後の病院経営で厳しい状況が見込まれることなどを踏まえ、県担当者が次期目標の策定を1年前倒しすると説明。期間は16年度から5年間で、この日に示した素案では20年度の目標に▽新卒看護師の離職率を8・5%(14年度実績14・1%)▽災害派遣医療チームを1増の4チーム▽20年度までの単年度資金収支を黒字化―などを盛り込んだ。



http://apital.asahi.com/article/innovator/2015101300009.html
医療計画に実効性を
日本の医療・介護制度分析

武藤真祐 (むとう・しんすけ)
2015年10月14日 朝日新聞

 日本とシンガポールで在宅医療を提供するからこそ、見えてくるものがあります。日本の医療・介護制度の「弱み」について、武藤真祐さんはどう見ているのでしょうか。(編集部)

 シンガポールに対比して日本の弱みは、大きく3つあると考えている。マクロにおける医療資源の均てん化、健康に対する国民の意識、医療費の給付の仕組みに関わる弱みである。

 まず1点目は、マクロにおける医療資源の均てん化の課題である。日本は、民間病院の割合が多く、シンガポールのように行政による医療機関の計画的配置が難しい。このため、「この医療圏にこれだけの公的医療施設が整備されているので、公的医療を受ける人はこの医療圏で完結してください」というようなことができない。これにより、日本は医療の供給・質にむらがでてしまう。これは、前回の記事と矛盾するように聞こえるが、つまりは医療機関の1施設あたりの質は比較的同じ水準であるが、地域ごとで医療資源が偏在してしまうため、マクロでみると質・量にむらがあるということだ。

 もちろん、日本の行政は、地域医療計画などにより急性期病院や回復期リハビリテーション病床数の目標などは計画できる。しかし、実際には計画通りにうまくいく例は少ない。民間の病院は経営状態の安定化が命題となるため、行政が定めた通りにはなかなかならない。民間病院ももちろん生き残りに必死なのである。また、一つの市に県立病院、私立病院、大きな民間病院が林立していることもあるが運営母体が異なるためにコントロールは極めて困難である。

 このように医療資源の配分がコントロールできない状況は、他にも存在する。医師がどの専門医になるかを決定するのも、医師自身が決められるようになっている。例えば、産婦人科医のなり手がいないとなったときにも、行政がそれに歯止めを掛ける手段がない。日本は、医療の質はミクロでは高い水準で保たれているが、国全体を考えると、医療計画がコントロール出来ないので、医療の質・量に地域によってむらができてしまう。高齢化が進むにあたって、地域ごとの財政収支の差はさらに開いて来るので、ここは特に心配だ。

 2点目は、健康に対する国民の意識である。シンガポールは、朝に広場に集まって、太極拳のような体操をするのがメジャーになっている。そして、自分たちの力で健康を維持することに、大変熱心である。この背景には、いつまでも健康でいたいという願いと、「もし病気になった時、医療費が高いので病気にかからないために健康でいたい」という考えが両方あるのだそうである。日本は、公的保険が充実しているために医療費を大きな負担としてはみていないが、シンガポールは医療費の負担は重要な懸念材料である。こういったことから、シンガポールでは高齢者は健康管理をかなり徹底している。日本も、健康意識が高くなってきているが、日本人は医師などに任せきりになる場合もあり、自己健康管理を怠る人も多い。

 3点目は、医療費の給付の仕組みである。日本は窓口ではおおむね1~3割だけの負担だけで良いため、非常に自己負担が少ない。自分たちが享受しているものに対して、自分で払う額が少ないので、価値を感じにくい構造になってしまっている。また、基本的にはフリーアクセスであるため、シンガポールと比較すると医療機関に頻繁に通う人が多い。良いか悪いかは別にして、「医療をあまり使わない方が自分のためや国家のためにいい」という考えがあまりないと思う。例えば、「終末期の患者に延命治療をすることは、国の税金の無駄遣いだからやめよう」と言う人はほとんどいない。

 シンガポールは「国のお金をみだりに使ってはいけない。未来の子ども世代の資金を使ってはいけない」という発想がある。医療もマクロレベルでROI(費用投資対効果)の観点から考えている。つまり、医療や介護を限られた資源として考えることが徹底している。そういう面は、日本人は比較すると弱いと思う。

 民間医療機関が多い日本では、医療保険制度でしか誘導ができないので、国全体の最適な医療を構築しにくい。やはり医療資源の最適な配分に向けて、医療計画に実効性を持たせるための別のアプローチが行政に求められるであろう。また、民間開業医にも、自分の病院・診療所だけでなく地域全体の公衆衛生学的な成果を実現するポピュレーションアプローチを考える人がもっと増えるべきだと思う。なにより、「不必要な医療を受けることは、限られた資源・未来の子どもたちの資源を無駄に使っている」というように国民全体の医療に対する意識が変わらなければならない。


武藤真祐 (むとう・しんすけ)
1996年 東京大学医学部卒業
2002年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。2014年 INSEAD Executive MBA
東大病院、三井記念病院にて循環器内科、救急医療に従事後、宮内庁で侍医を務める。 その後マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年医療法人社団鉄祐会を設立。 2015年には、シンガポールで「Tetsuyu Home Care」を設立し、同年8月よりサービス開始した。
東京医科歯科大学医学部臨床教授
厚生労働省情報政策参与
内閣官房IT総合戦略本部 新戦略推進専門調査会 医療・健康分科会構成員
厚生労働省 緩和ケア推進検討会構成員
クラウド時代の医療ICTに関する懇談会構成員など



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46975.html
病院などの火災や放火、軽減策や管理徹底を- 消防庁が通知
2015年10月14日 18時00分 キャリアブレイン

 消防庁は日本病院会や都道府県などに対し、11月9日から1週間実施される「全国火災予防運動」の周知や協力を求める通知を出した。重点項目として、医療機関などの特定防火対象物の安全対策を徹底することを提示。放火火災についても被害軽減の対策を取るよう求めている。【新井哉】

 医療機関の防火対策をめぐっては、福岡市の有床診療所で患者らが死亡した2013年10月の火災や東日本大震災などを受け、スプリンクラーの設置に加え、災害発生時の医療拠点となる災害拠点病院や介護施設、障害者施設などの耐震化が進んでいる。

 消防庁は、医療機関などの特定防火対象物の施設について、▽防火管理体制の充実▽避難施設や消防用設備の維持・管理▽防災管理点検制度の周知―などを徹底する必要性を提示している。

 東京都内で昨年11月、私立大医学部の附属病院の病棟に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生したが、通知では、こうした放火についても言及し、効果的な被害の軽減策を実施することも求めている。



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=124966
Dr.徳田の「総合診療の出番です」
週末も実習、徹底討論

(2015年10月15日 読売新聞)

 私は、患者さんの全身を診る「総合診療」を専門にしています。訴えや症状からあらゆる病気の診断を行い、がんや心筋梗塞など高度な治療が必要なら、臓器別の専門医にまわします。肺炎や感染症など一般病院で診られる多くの病気は、引き続き入院や外来で私たちが治療を行います。

 医学生を対象に、5年前に始めた「闘魂外来」は、こうした全身を診る技術を体得する実践的な実習です。大学が休みの週末、救急外来に来る患者さんを一日中、私たちの監督の下で診察します。医学生はなぜ休みを削って全国から集まってくるのでしょうか。

 理由の一つは、私が闘魂外来を始めたきっかけにあります。当時いた筑波大で、海外に短期留学した医学生たちから「実践的な教育を受けたい」という声が上がりました。世界の多くの国の医学実習は「診療参加型」。医師の監督の下、医学生が患者さんに問診や簡単な検査、採血、点滴などを行い、実践力を養います。ところが、日本の多くの医学部実習は「診療観察型」。医師がすることを医学生が横で見ているスタイルです。

 「診療参加型」の実習をするためには、指導する医師は最先端の医学を勉強しなければいけません。一般病院で多くの研修医や医学生を受け入れる病院を「市中教育病院」と言います。市中教育病院の総合診療科を受診した患者さんは最新の科学的根拠に基づく診察や治療を受けることができます。

 夜までみっちり診察にあたった後、「闘魂祭り」に入ります。リハビリ室をプロレスのリングに見立てて、ゴングでスタート。患者さんの診察が適切だったかを徹底的に討論します。厳しい実習で疲れていても、医療の最前線に登場した医学生の表情はいつも明るくて目は輝いています。(徳田安春・地域医療機能推進機構顧問)



http://www.carenet.com/news/journal/carenet/40801?linkfrom=pid5
米国医薬関連企業の4割で、学術機関関係者を管理職に採用/BMJ
2015/10/15 ケアネット

 株式を上場する米国医療関連企業のうち、役員に医学部長や非営利病院の最高経営責任者(CEO)など、学術機関に関与する人を含んでいるのは、4割余りであることが判明した。また、そうした企業からの年間報酬額の中央値は、約20万ドル弱、供与された株式の中央値は5万株であるという。米国・ピッツバーグ大学医療センターのTimothy S. Anderson氏らが横断研究を行い、明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年9月29日号掲載の報告。

米国医療関連企業の管理職、3,434人を対象に調査

 Anderson氏らは、2013年にNASDAQまたはニューヨーク証券取引所に上場していた米国医療関連企業を対象に、学術的指導者や大学教授、理事などが役員メンバーである企業の割合や特徴、報酬額などについて調査を行った。

 調査の対象となったのは、製薬企業、バイオテクノロジー企業、医療機器・用品企業、医療ケアプロバイダーの管理職3,434人だった。

NIH助成を受ける医学部19校の学長なども

 対象企業のうち、同研究の条件に合ったのは446社で、うち442社(99%)が役員情報を公開していた。そのうち180社(41%)が、学術機関に関与する279人を管理職としていた。

 それら管理職の関与する非営利学術機関は85ヵ所で、地理的に広範囲にわたっていた。また、米国立衛生研究所(NIH)の助成する上位20の医学部のうちの19校や、US News誌が優れた病院だと認めた17ヵ所の病院すべてが含まれていた。

 279人のうち、教授は121人、医療システムのCEOは17人、副会長または執行役員は11人、大学の学長、総長、副総長は15人、医学部長(medical school deans or presidents)は8人だった。

 また、企業がそうした管理職に支払った報酬額総額は、5,499万5,786ドルで、1人当たり報酬額の中央値は19万3,000ドルだった。さらに、企業から与えられた株式は、合わせて5,983万1,477株で、1人あたり中央値は5万699株だった。
(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

原著論文はこちら
Anderson TS, et al. BMJ. 2015;351:h4826. http://pmc.carenet.com/?pmid=26420786&keiro=journal



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/52209/Default.aspx
スイッチ化した医療用薬 処方「減らす」19% 30~40代は3割強に 医師意識調査
公開日時 2015/10/15 03:52 ,ミクスOnline

病院検索サイトなどを運営するQLifeはこのほど、診療所医師を対象にした意識調査で、スイッチOTC薬が発売された場合に当該医療用薬の処方が「増える」または「減る」と答えた医師がそれぞれ2割弱だったとの調査結果をまとめた。年代別にみると、年代が上がるほど「増える」の割合が高くなり、逆に年代が下がるほど「減る」の割合が高くなる傾向がみられた。医師の6割以上はスイッチOTC薬が登場しても処方方針は「変わらない」と答え、「良好な結果が出ていれば、そのままでいい」「OTCを選ぶかどうかは患者が判断すること」といったコメントがみられた。

文末の関連ファイルに、スイッチOTC薬が発売された場合の当該処方薬の処方方針に関する資料を掲載しました(10月19日まで無料配信、その後はプレミア会員限定コンテンツになります)。

調査は同社サイトに登録している診療所の理事長・院長・副院長・勤務医を対象に実施した。有効回答数は250人。調査時期は8月11日~18日。方法はインターネット調査。スイッチOTC薬が発売された場合の当該医療用薬の処方方針についての質問には98人が答えた。

当該医療用薬の処方が「増える」は17.3%、「減る」は19.4%、「変わらない」は63.3%。年代別にみると、「増える」との医師は30~40代が8.7%、50代が16.7%、60代以上が28.6%、「減る」との医師は同34.8%、18.5%、4.8%だった。

医師の自由コメントをみると、「増える」との医師からは、患者の希望が多くなることに加え、「(医療保険によって)市販薬よりも安価に手に入るから」との内容がみられた。「減る」との医師からは、受診患者がそもそも減るとの内容が散見されたほか、「市販薬より良く効くものを処方したい」「市販薬と同じものならば、医療機関で処方する意味がない」「OTCで買える薬に医師がリスクを負いながら処方する必要はない」「処方箋がなければ出せない薬のみ、処方する」などスイッチ化されていない医療用薬を選択するとの内容が多く寄せられた。

関連ファイル スイッチOTC薬発売後の処方薬の処方方針 医師調査
http://www.mixonline.jp/download/detail/tabid/259/downid/8454/Default.aspx
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http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201510/544209.html?bpnet
「世界のトヨタ」が医師養成で名大病院とコラボ
2015/10/14 大滝 隆行=日経メディカル

 名古屋大学医学部はトヨタ自動車、中部品質管理協会と連携し、「明日の医療の質向上をリードする医師養成プログラム」(ASUISHI =あすいし)を立ち上げ、10月5日にその第1期を開講した。

 臨床を熟知し課題解決能力に長けた中堅医師を対象に、患者安全(医療安全)と感染制御、医療の質管理の専門性を持つリーダー医師を養成するのが狙い。メインコース、患者安全インテンシブ、感染制御インテンシブの3コースからなり、メインコースの受講者は約140時間のカリキュラムを約6カ月かけて履修する(他の2コースは約40時間)。
 
 患者安全や感染制御のカリキュラムに関しては、名古屋大学医学部附属病院の医療基盤部門(医療の質・安全管理部、中央感染制御部、メディカルITセンター、先端医療・臨床研究支援センターなど)が中心となってサポートする体制で実施する。質の管理、例えば患者誤認や投薬インシデントなど業務プロセスの不具合による患者安全上の問題解決・改善に関しては、トヨタ自動車などの製造業で確立された問題解決の標準手法に基づくテーマ学習カリキュラムとなっている。実際の施設の課題を用いてアドバイスを受けながら半年かけて組織の改善を経験する。また受講者はトヨタ自動車などの工場に出向き、品質管理の研修を受ける。

 トヨタ自動車といえば、言わずと知れた、新車販売台数世界一の座を維持し続ける、日本が世界に誇るエクセレントカンパニー。製造工程で不具合が生じたときに機械を止めて原因を分析し工程を改善することで品質を確保する「自工程完結」(品質は工程で造り込む)や、徹底的に無駄を省いて生産管理する、「かんばん方式」とも呼ばれるトヨタ生産方式[TPS](品質の良いモノを安くタイムリーに顧客に届ける)でも知られる。そんな「世界のトヨタ」の哲学を医療現場に応用しようというのだ。 

 「医療の弱点は『業務工程』がばらばらなこと。専門家の集まりでそれぞれやっていることが違っていて、同じ病院でも病棟によってルールが違っていたりする。そのばらつきを抑えることで初めて成果が均一になるというのが品質管理の基本原則なのだが、医療界はそうしたばらつきの測り方、抑え方を学んでこなかった。それを、同じ中部を拠点とする品質管理の本家から直接習おうと考えた」と、名古屋大病院医療の質・安全管理部教授の長尾能雅氏は、トヨタとタイアップした理由を説明する。

 そして、文部科学省大学改革推進等補助金 「課題解決型高度医療人材育成プログラム」に応募したところ採択され、産業界との異色のコラボによるプロジェクトが実施の運びとなった。第1期は各地の病院に勤務する医師16人(うちメインコース12人)の受講者でスタートする。

願いは医療界全体の患者安全・質管理の改善

 実施主体の名古屋大病院も、「医療の質・安全管理部」という部門横断的な基盤部門を創設し、部長が医療安全担当の副病院長を兼務するなど、組織を挙げて医療安全に力を入れている大学病院として知られる。

 医療の質・安全管理部は専従教授の長尾氏のほか、専従の医師や看護師、弁護士など13人を擁し、医療安全マネジメントに関する先進的な活動を続けている。主な業務は、(1)治療中の不測のトラブルなどに病院組織全体で対応できる治療体制の構築、(2)全部門からのインシデント情報の集積と分析、事故予防策の検討、(3)医療事故に対する組織を挙げての客観的事例調査、原因究明と再発防止策の検討、(4)院内の各種安全マニュアルの策定、各部門との連携、院内研修──などだ。プログラム受講者は、こうした名古屋大病院の医療安全に関するノウハウも、それを日々実践するスタッフからじかに学ぶことができる。

 「今回のプログラムでは、当院の医療基盤部門の業務ノウハウを多くの医療機関にお伝えするのも1つの目的だが、それだけでは患者安全第一の医療は実践できない。問題を根本から追究して組織全体として医療の質をプロセスでつくり込む質管理の手法導入が必須。それを実践するための手本が実は身近にあった。『ものづくりは人づくり』『不良を後工程に回さない』などのトヨタ哲学に基づいた質管理マネジメントは、日本の医療現場にとっても理解しやすく、現実的に導入できるもの」と、名古屋大病院医療の質・安全管理部副部長でASUISHIプロジェクト実行委員長を務める安田あゆ子氏は話す。

 長尾氏や安田氏らの願いは、トヨタという世界をリードする企業の質管理手法と、感染制御を含む患者安全のノウハウを身に付け、院内で部門横断的に医療安全マネジメントを担うリーダー医師が全国に散らばることだ。

 ASUISHIプロジェクトには、「人財ハブセンター事業」というもう1つの柱がある。全国の医療機関の安全管理・感染制御部門同士のネットワークを構築し、ウェブ会議システムなどを用いて履修認定取得以降の施設内での事例対応支援やデータ共有・分析、キャリア相談などを行う。これによって、医療界全体の患者安全・質管理の改善サイクルが永続的に回っていくことになる。

 全国で医療事故による死亡者は年間約4万人と推計されている。医療行為にリスクがある以上、院内の全部門からインシデント情報を収集・分析し事故予防策を検討することや、事故発生時にも速やかに情報を共有し病院組織全体で対応する体制づくりが不可欠だ。そして、これらを統括する医師のリーダーシップが医療事故を未然に防ぎ、事故が起きた場合も被害を最小化する。ASUISHIプロジェクトの今後に期待したい。

 名古屋大病院ASUISHIプロジェクト推進室では、2016年4月に開講する第2期受講申し込みを2015年11月1日~30日に受け付ける。


  1. 2015/10/15(木) 06:21:26|
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