Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

10月6日 

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17413
メディカルインサイト 31
千葉・成田市の医学部新設。
地域医療の本質が聞われる

上 昌広
東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム
社会連携研究部門 特任教授
メディカル朝日 2015.10

 千葉県成田市に医学部が新設される。2017年4月の開学を目指すという。なぜ、成田市に医学部なのか、今回はその背景を解説したい。
 最大の理由は、もちろん、この地域の医師が不足しているからだ。千葉県の人口1000人当たりの医師数は約1.8人。埼玉・茨城に次いでワースト3である。医師が足りなければ養成するしかない。この極めて簡単な理屈が、医療界ではなかなか通用しない。
 日本医師会や厚生労働省は、将来的に人口が減少すれば医師は余るという。厚労省は、22年には臨床医師数が必要医師数を上回ると発表している。
 では、彼らの議論の問題は何だろうか。それは医師と国民の年齢を考慮していないことだ。

●医師不足改善への政策

 社会が高齢化すると医療需要は増える。一方、医師は高齢化とともに働けなくなる。千葉県の場合、私たちの推計によれば、75歳以上の人口1000人当たりの60歳未満の医師数は、2010年の段階で14.0だが、2030年には8.0ヘと悪化する。団塊世代が亡くなる2040年にかけて8.7に改善するが、団塊ジュニアが高齢化する2050年には8.1へと悪化する。厚労省が主張する、22年に医師が充足するなどあり得ない。
 厚労省も無策ではない。07年から15年にかけ、全国で約1500人の医学部定員を増やした。しかしながら、これでは千葉県の医師不足は改善しない。理由は、人口約615万人の千葉県に医学部が一つしかないからだ。人口約380万人の四国に四つの医学部があるのとは対照的だ。この政策は、医師の多い西日本でさらに医師を増やし、千葉県に益するところは少なかった。
 我々が1994年から2012年までの医師の移動を調査したところ、千葉県は年間平均226人の医師を外部から受け入れていた。流入元は東北や東京だ。東北や東京で育成された医師の26%、17%が県外に流出し、千葉は主要な受け皿の一つだった。つまり、千葉は医師の養成不足を「周辺地域からの輸入」という形で対応してきた。
 実は、このことが東北の医師不足を悪化させる要因だった。千葉県に医学部を新設することは、東北の医師不足を改善する可能性が高い。

●「成田」が選ばれた理由

 なぜ、医学部を新設するのが成田市なのだろうか。それは、成田市が「金持ち」だからだ。人口約13万人の成田市の歳入総額は約633億円で、財政力指数は約1.25である(2013年度)。人口10万以上の都市に限定すれば、浦安市(千葉)、武蔵野市(東京)、東海市(愛知)に次ぎ、全国4位だ。
 成田市の特徴は固定資産税が多いこと。成田空港などからの税収で約187億円、市税の約6割を超える。固定資産税はリーマンショックなどの不景気でも減らない安定した財源だ。
 黒字自治体は投資できる。例えば13年に国際医療福祉大学(栃木県大田原市)看護学部の成田市への誘致が議論された際、総費用85億円のうち、50億円を補助した。宮城県が県内に新設される医学部のために支払う補助金が最大30億円(修学資金は別)。成田市の財政力の強さが分かる。
 医学部新設には金がかかる。成田市はその費用を約400億円と見積もっている。医学部新設を進めている国際医療福祉大も、成田市からの財政支援を期待している。今後の議論の焦点は、この費用を国際医療福祉大と成田市でどう分担するかだ。

●地元への配慮が重要

 その際に重要なのは市民の理解である。補助金は、税金である。市民の理解がなければ、成田市役所がいかに前向きでも、議会を通らない。特に成田市は市民感情に敏感だ。1966年から約30年にわたる三里塚闘争を戦いながら、国際空港を地元に受け入れてきたからだ。我々は、このことを忘れてはならない。ところが、医学部新設の議論では、地元への配慮を感じることが少ない。私は、成田市や国際医療福祉大が「国際性豊かな医学教育」や「国際協力」を強調するのは不適切だと思っている。
 成田市に医学部を作るなら、地元にも密着すべきだ。その際に議論すべきは「英語で教育」などの「お題目」ではない。多くの市民は、地域医療がどうなるか、また、巨額の補助金を出すなら使途に関心があるだろう。市立大にするか、複数の理事のポジシヨンを確保すべきという声が出てもおかしくない。地に足の着いた議論を期待したい。

Medical ASAH1 2015 October 77

G3註:参考資料 http://www.huffingtonpost.jp/masahiro-kami/establishment-of-medical-department_b_6836396.html


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http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46895.html
医師の面接指導、電話はNG- ストレスチェック開始に向け、厚労省が通知
2015年10月06日 14時00分 キャリアブレイン

 労働安全衛生法の改正に伴い、12月から「ストレスチェック制度」が始まるのを受け、厚生労働省は情報通信機器を用いて医師の面接指導を実施する場合の留意点について各都道府県や関係団体などに通知した。原則としては対面が望ましいとしながらも情報通信機器を用いた面接指導を「直ちに法違反となるものではない」とし、条件付きで認める方針を示した。その上で、「映像を伴わない電話による面接指導の実施は認められない」など、一定のルールに基づいて実施するよう求めた。【坂本朝子】

 従業員50人以上の事業場に対しては、ストレスチェック制度の開始に伴い、検査でストレスが高いと判定された場合、労働者本人が希望すれば医師による面接指導が義務付けられる。しかし、産業医が不足する中、遠隔地からの面接指導も想定されることから、その実施ルールの整備が求められていた。今回示されたルールは、ストレスチェック制度だけでなく、長時間労働者に対する面接指導にも適用される。

 通知によると、面接指導を実施する医師は、「労働者が所属する事業場の産業医である」もしくは「少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している」など一定の要件を満たす必要があるとした。

 また、医師と労働者が表情や顔色、声やしぐさなどを互いに確認できるように、映像と音声の送受信が常時安定した状態で、円滑に実施できる体制が必要とし、プライバシーには十分配慮するよう注意を促した。

 さらに、面接指導で医師が緊急に対応すべきと判断した場合には、その事業場にいる産業保健スタッフや近隣の医師などと連携し、すぐに対応できる体制を整えておく必要があるとした。



http://news.mynavi.jp/news/2015/10/06/514/
看護師が思うモンスターペイシェントの特徴ランキング
  [2015/10/06] マイナビニュース

 看護師にとって患者は、心を込めてお世話をする存在。しかし患者の中には、残念ながら医師や看護師などの医療関係者に対して理不尽な行動や暴言を浴びせる人も…。そんな自己中心的な患者を総称して「モンスターペイシェント」と呼ばれているのをご存じでしょうか。そこで今回は、モンスターペイシェントの特徴だと思うことを看護師の皆さんに聞いてみました。

■看護師が思うモンスターペイシェントの特徴ランキング
1位:誹謗中傷の言葉を浴びせてくる
2位:何度も救急車をタクシー代わりにつかう
3位:土下座など度を越した謝罪を要求してくる
⇒4位以降のランキング結果はこちら! http://ranking.goo.ne.jp/ranking/category/099/BReoZbK0Mv7A/

 1位は《誹謗中傷の言葉を浴びせてくる》が選ばれました。
思ったような治療効果が得られないときや、病気の症状がなかなか改善しないときなどに、患者から浴びせられる暴言や中傷の数々…。一番辛いのは患者本人とはわかっているものの、それでも行き過ぎた患者からの言葉の暴力に耐えられないと、密かに思っている看護師が多いようです。

 2位には《何度も救急車をタクシー代わりにつかう》がランク・イン。
東京都によると、2013年に救急隊が出動したもののうち、緊急性を要しないと判断されたのはなんと全体の半数に上ったとか。救急車は、緊急を要する患者に対して要請されるもの。しかし、ささいなことで《何度も救急車をタクシー代わりにつかう》あきれた患者もいるようです。

 3位は《土下座など度を越した謝罪を要求してくる》でした。
患者やその親族のつらい気持ちもわかりますが、時には医療関係者の対応を面白がって土下座を要求するという、困ったモンスターペイシェントもいるようです。
モンスターペイシェントは年々増加の傾向にあり、社会問題にもなっているとのこと。患者に対して診療拒否権を持たない医療機関は、対応に苦慮してるそうです。看護師の中には、精神的に疲れ果ててしまうケースも…。そんな時は、思い切って環境を変えて新しい職場に転職することもひとつの選択ではないでしょうか。

調査方法:gooランキング編集部が「NTTコムリサーチ」モニターに対してアンケートを行い、その結果を集計したものです。
調査期間:2015年3月13日~2015年3月17日
有効回答者数:現役看護師:164名



http://medg.jp/mt/?p=6161
Vol.198 福島県いわき市の医療問題の原因と一般市民が果たすべき役割
医療ガバナンス学会 (2015年10月6日 06:00)
小柳 正和 スイスMidokura社
2015年10月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 東日本大震災以降、福島県いわき市の医療環境は厳しい状態が続いていると言われている。総合商社やベンチャー企業にてITや通信ビジネスを手がけてきた私がいわき市の医療環境を意識することになったきっかけは、震災より前の2009年に思いがけず末期癌になった私の父をいわきの自宅で看取った経験に遡る。

 2008年秋、父はステージIII Bの肺がん宣告を突然受けた。間もなく父はいわき市内の大きな病院で抗がん剤治療を開始した。父の闘病生活を受け、当時私は東京都内の総合商社社員であったが毎週末に高速バスで東京いわき間を往復した。ある日、主治医から私たち家族に話があった。父にこれ以上の治療を施しようがなく、またこの大きな病院は治療するための施設であるということだった。つまり終末期に突入したため転院を奨められたのだ。喜怒哀楽が豊かだった父はがん宣告後は家族が驚くほど冷静で感情を剥き出すことはなかった。だが転院の話に父の落胆は大きかった。信頼していた医師から見放されてしまったという感情からだった。あらゆる選択肢を家族で話し合った。Quality of Lifeを考慮した結果、母が介護休職を取得して父を自宅で看取ることとした。

 誤解を生む表現かもしれないが、2009年5月にこの世を去った父から人が死にゆく姿を見せてもらえたことで学ぶことは多かった。地方においては高度治療を受けるための選択肢が少ないということは覚悟していた。だが私にとって衝撃的だったのは「安らかに人生を終える場所を得る」ということが現実的に難しい問題だということだった。自宅で昼夜看護する母と姉の肉体的、精神的及び経済的な負担は小さくはなかった。当時は本格的な高齢化社会の到来前であったが現実を目の当たりにして私は危機感を覚えた。高齢化が進んだ近い将来にはいわきの医療環境がさらに悪化し、市内で十分な医療サービスを得ることが難しくなるのではないかと考えたのだ。2011年の東日本大震災、原発事故を経て私の危機感は顕在化し、大きな社会問題となった。

 震災から既に4年半が経過し、いわき市内の一部の民間医療機関では経営努力で状況改善が図られている。しかしながら市全体を階層化された一つの医療提供システムとして捉えたとき、状況がほとんど改善していないのに気づく。私は外から見ていて苦々しく思っていた。実は父の死後、仕事とは全く別で、週末を使って医療関連の勉強会に参加するようになっていた。出会った友人たちと議論し、酒を酌み交わし、Skypeで語り合いながら地域医療問題を自分の中で整理し続けていた。もはや私の知的好奇心を満たす趣味の一つであった。いわき市の行政や医療機関で現場を担う人たちと議論する機会ももった。私はこれらの議論に加え、厚生労働省やいわき市が公表しているデータを分析することによっていわき市の医療環境について客観的な裏づけも探った。民間企業が通常行うマーケット分析手順を個人として草の根的に進めていったのだった。

 この8月22日(土)にいわき市で開催されたNPO法人タタキアゲジャパン主催の「第一回 『ハマコン(浜魂)』:浜通りを変えるアクションを参加者全員で応援するプレゼンイベント」に私が登壇する機会があった。ちなみに「浜通り」とは福島県の東部、太平洋沿岸の地域の総称である。聴衆は10代の高校生から20代/30代の若い世代を中心とした一般市民だ。そこで私は若い市民に対していわきの医療問題に当事者として関心を持つべきだと語りかけた。同時に東北で3番目の大都市圏であるいわき市の医療環境の課題と原因を示した。

 リサーチから結論付けた私の課題設定は「市民に対して夜間休日救急を含めた適切な医療の提供を継続するため、医師や看護師を始めとする医療従事者が疲弊している」ということとした。現場の医療従事者は一生懸命取り組んでいる。しかし需要に供給が追いつかない。だからこそ疲弊しているのだ。その原因は単に医療従事者が不足しているからではない。いわき市では「圧倒的に」医療従事者が足りないのである。2012年のデータによるといわき市の単位人口あたりの医師数は全国平均よりも30%も低く、単純計算で200人程度医師が不足している。しかも医師の高齢化が進んでいるのだ。2012年のいわき市の医師の平均年齢は全国平均よりも12%も高い55.4歳で、40歳未満の医師の割合もわずか14.29%(全国平均は30.78%)であった。疲弊するのも当然だ。

 さらに注目すべき点は、現在のいわき市の医療環境の悪化は東日本大震災や原発事故による影響が原因ではないということである。2012年のデータを震災前年の2010年のデータと比べても全国の自治体との相対比較にほぼ変化はなく、いわき市の医療環境はデータが存在する2000年以降徐々に悪化の一途を辿っていた。単年ごとの変化は小さいが10年単位でみると大きな変化(悪化)となっていく。民間企業がこのような経営をすればいずれ破綻し、経営者は株主から訴えられかねない。ここが若い一般市民が行政や医療機関の判断に依存するのではなく当事者意識を持って欲しいポイントである。いわゆるガバナンスであり、且つ民間企業や一般市民が積極的に行政や医療機関をサポートすべきと私が考える所以である。観察されている現象に対する原因はそこにあるのだ。なおいわき市や公立病院が公表している予決算についての私の見解はここでは省略する。

 門外漢の私がこのような行動をしていることについて疑問を抱く人も多いかも知れない。私は都内在住の身でいわき市の納税者でもない。ただ私はいわき市出身者であり、家族が暮らす街の医療を含めたライフラインの確保は当事者として気になるのだ。正直言って私がこんな面倒そうなことを言い出す必要はない。他の誰かがやってくれればいい。しかも私は医療従事者ではなくビジネスの視点しか持ち合わせていない。だが市民一人ひとりは破綻の許されない自治体の経営当事者である。50年後の未来を今この瞬間に少しずつ創り上げているのは他でもない若い一般市民である。私がいわきでの医療体験やビジネスで用いる手法を伝え、データを用いて状況を客観的に説明する。そのことでいわきの若い市民が行政や医療機関に頼り切るのではなく当事者として何らかの行動を始めるきっかけになれば私は嬉しいのだ。賛同する若い仲間がいわきで集まっているのは喜ばしい限りである。

小柳 正和
スイスMidokura社 Vice President of Corporate Development
福島県いわき市出身。福島県立磐城高校、慶應義塾大学理工学部電気工学科、フランスHEC Paris School of Management (MBA) 卒業。伊藤忠商事を経て現職。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46899.html
日本初、診療所などの“おもてなし”を評価- 「医療機関アワード」が始動
2015年10月06日 16時54分 キャリアブレイン

 一般社団法人「日本医療ホスピタリティ協会」は、クリニックや治療院の患者サービスの質を評価する「医療機関アワード」を創設した。医師の説明やスタッフの対応など、医療技術以外の満足度を患者が評価した上で、医療関係者らによる選考委員会が内容を審査する。現在、参加登録を受け付けており、初回の結果は来年5月に発表される予定。同協会によると、こうした表彰制度は日本初という。【敦賀陽平】

 対象となるのは、19床以下のクリニック(医科または歯科)と整骨院などの治療院。満足度調査は、▽医師の診察の対応▽医師の診察に関する説明▽看護師・スタッフの対応▽医院全体の清潔度▽プライバシーへの配慮―など14項目について、同協会が作成したアンケート票に患者が記入、またはインターネット上で回答する。

 患者アンケートは来年3月まで。その後、医療関係者や有識者らによる選考委員が内容を審査した上で、「子どもに優しい」「女性に配慮している」など、幾つかの視点で評価する。受賞した医療機関などは、専用のロゴを院内などに掲示できる。

 参加申し込みは、同協会の専用サイトで資料を請求後、所定の申込書に記入して行う。登録は来年3月まで。参加無料だが、紙のアンケート票を使用する場合は、一律8万5000円の手数料と登録料(患者1人につき50円)が発生する。問い合わせは、同協会03(5768)1711まで。



http://mainichi.jp/area/tokushima/news/20151006ddlk36040592000c.html
患者窒息死:吉野川医療センター医師ら書類送検 容疑で県警 /徳島
毎日新聞 2015年10月06日 地方版

 県警捜査1課と阿波吉野川署は5日、患者の胃に流動食を注入するチューブを入れる箇所を誤り、窒息死させたとして、吉野川医療センター(吉野川市)に勤務する医師1人と看護師3人を業務上過失致死容疑で書類送検した。同署によると4人とも容疑を認めている。

 送検容疑は昨年10月31日、前身の麻植協同病院に入院していた90歳代女性の胃にチューブを挿入する際、担当医師はその場におらず、事故を防ぐための具体的な指示をしなかったとしている。看護師3人は患者の鼻から挿入したチューブが確実に胃に入ったか確認を怠り、窒息死させたとしている。

 発生した日に病院が警察に通報した。吉野川医療センターの橋本寛文院長は「真摯(しんし)に受け止めている。今後このようなことが起こらないように、再発防止に努めている」と談話を出した。【河村諒】



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201510/544084.html
コラム: 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
医療事故裁判の「第三の犠牲者」

池田 正行(高松少年鑑別所法務技官・矯正医官)
2015/10/7 日経メディカル

 「私が名古屋高裁に勤務していたころの話です。友人のN検事から、こういうことを言われました。『裁判官は、検事の主張とあまり違ったことをしないほうがいいぞ。何故かというと我々はむずかしい問題については、庁全体あるいは高検、最高検まで巻き込んで徹底的に協議してやっているんだ。それに比べてあんたたちはいったい何だ。一人かせいぜい三人じゃないか。そんな体制で俺たちに勝てるはずがないんだ。仮に一審で俺たちの主張を排斥して無罪判決をしたって、俺たちが控訴すれば、たちまちそんな判決は吹っ飛んじゃうんだ』」(木谷明『刑事裁判のいのち』法律文化社)

裁判官を恫喝するのは?

 木谷氏と同じく刑事裁判官出身の弁護士である森炎氏が「刑事裁判は全て冤罪である」(『教養としての冤罪論』岩波書店)と明言する一方で、有罪率99.9%という事実は一体どうやったら説明できるのか?そんな素朴な疑問も、上記の種明かしで瞬時に氷解します。

 刑事裁判官は検察官よりもはるかに勇気の要る職業です。なぜなら、検察官は求刑すればいいだけなのに対し、最終的に決断するのは裁判官だからです。反社会的勢力の報復なんぞ恐れていたら、刑事裁判官なんてできやしません。刑事裁判官は検察官以上に毎日が命がけなのです。一方で、裁判を勝ち負けのゲーム感覚で捉える検察官が、自分よりも勇気のある裁判官に対し、友人としての「親切な助言」ではなく、自分の思い通りの判決文を書かせようとする時、どんな態度に出るのでしょうか。

 「下手なことをしたって、てめえの判決なんか上級審でいくらでもひっくり返してやる。俺たちに逆らえば一生ドサ周りってことぐらい、わからねえほど呆けちまったのか!」。この台詞は単なる私の想像に過ぎませんが、最強国家権力者達が裁判官をどう恫喝しようと、今の世の中、誰も驚きません。「生意気な被疑者の向こう脛を録画に写らないように机の下で蹴り上げ、外国人被疑者には目の前に千枚通しをつきつけて日本語で思いっきり罵倒する」(市川寛『検事失格』毎日新聞社)。そんな特別公務員暴行陵虐罪も厭わない人々のやることなのですから。

 マスメディア・警察・検察といった、真実を発見し不正を暴くはずの人々が、白昼、東京のど真ん中でせっせと事故原因を隠して事故再生産構造を守ったのが、ウログラフィン誤使用事故裁判でした。被告人をかばおうとした奇特な医師もいたかもしれませんが、そこは、これまた「チンピラ矯正医官の戯言なんぞ物の数ではない」とばかりに、私の診断を全面的に否定して神経難病患者が適切な治療を受ける権利を15年間も踏みにじり続けてきた百戦錬磨の人々のことです。「ご希望ならば先生も業過罪の共犯にしましょうか?」との殺し文句一発で、刑事免責の自動発券と引き替えに口封じです。何せ相手は、医師を業過罪で刑事訴追する実績では世界一を誇る警察・検察です。そこまで証拠を隠されたら、裁判官とて情状主張を認めて執行猶予をつけるのが精一杯だったに違いありません。

裁判官もまた“犠牲者”

 「(医療事故裁判では)医療者側が加害者扱いされます。しかしそれは、違うと思う。不幸な結果を招いた医療者は、亡くなられた患者さんやそのご遺族以上に心の中は深く傷ついている。これを加害者と言うのはおかしい。私はいつも亡くなられた方は犠牲者だが、それに関わった医療者もまた犠牲者だ、と思うのです」(安福謙二『医療事故と刑事裁判―県立大野病院事件の法廷で考えたこと』)

 袴田事件で無実の心証を抱きながら死刑判決文を書いたことを公言した元裁判官の熊本典道氏は、刑事裁判の典型的な犠牲者です。その熊本氏を描いた『美談の男』(尾形誠規、鉄人社)の中で、袴田事件で石見勝四裁判長が無罪判決を下せなかったのは、警察・検察・マスメディアによって操作された世論を恐れたからだと熊本氏は述べています。その袴田事件の再審請求審で再審開始決定が出る2日前の2014年3月25日、仙台地裁は袴田事件とは全く逆に北陵クリニック事件の再審請求棄却決定を出しました。

 「一審の無罪判決直後に、親しいある検察官から夜に電話がかかってきて、『事件の記録は、俺もよく見た。確かに証拠から言って無罪だ』と言われた。けれども、その次のセリフが凄かった。『でも、これは筋から言って有罪。高裁でひっくり返してやる』と言われた。『なんですか』と。『証拠は無罪って、言ったじゃないですか。筋って、何ですか』と僕は怒ってしまった。でも実際、本当にひっくり返された」(安福謙二『東京地検公判部東京高裁出張所」)

 北陵クリニック事件再審請求から棄却決定までの2年間、筋弛緩剤中毒を主張する御用学者は一人も現れませんでした。その結果、再審請求審では、私のミトコンドリア病と、検察官が単独で創作した筋弛緩剤中毒の「一騎打ち」となりました。結果は脈の取り方一つ知らない検察官の全面的勝利でした。しかし私は裁判官を恨む気にはなれませんでした。そこには、最強国家権力とその番犬の両者から恫喝を受ける哀れな犠牲者の姿しかなかったからです。

 裁判官を恫喝して私を嘘つき呼ばわりさせることも厭わない検察は、今月から発足した医療事故調査制度(事故調)を絶好の下請け先として利用しようとしています。ウログラフィン誤使用事故裁判に対する批判の中には、検察官による証拠隠しには触れずに裁判官の方を非難する向きがありますが、そのような見方は刑事裁判の「本質」を見誤っています。真に糾弾されるべきは、自らに不利な証拠を隠し、裁判官に対する恫喝を自慢するような、驕り高ぶった検察と、その検察の忠実な走狗として患者・家族や市民に対して真相を隠し、医療事故を食い物にして莫大な収益を上げてきたマスメディアなのです。



http://toyokeizai.net/articles/-/86822
「ドクター新幹線」が人の命を救う日が来る
新幹線は日本の地域医療を変えられるか

當瀬 規嗣 :札幌医科大学教授
2015年10月06日 東洋経済

北海道新幹線の新青森・新函館北斗間の開通が2016年3月26日に決定した。ついに新幹線は北海道に上陸する。東海道新幹線が開通したのが1964年のことであるから、実に半世紀の時間をかけてようやく北海道に到達するのである。

この時間の長さは、東京からの距離に基づくものではあるが、それだけではない。率直に言って、需要が見込めないことが大きな原因である。すでに世界有数の輸送量を誇る札幌(新千歳)-羽田間の航空路は充実の一途をたどっており、鉄道は北海道と首都圏を結ぶ輸送機関としての首座を降りて久しい。

そうした不利な状況を乗り越えて、北海道に新幹線が来る。北海道民の新幹線への思い入れがいかに強いものであったかの証拠でもある。

新幹線は東海道開業の当初から、旅客輸送に特化してきた。鉄道はもともと貨物輸送のために発達した交通手段であったが、旅客輸送に特化することで、ダイヤが整理され高速輸送が可能になった。世界に冠たる新幹線システムは旅客特化を突き進んだことの賜物であった。

北海道新幹線は札幌までの全線開通を見据えると、旅客数の確保が最重要課題である。しかし、せっかくの新幹線であるが、旅客利用が低迷する可能性は十分ある。それが続けば、採算性が問題化するかもしれないし、巨額の投資を行った施設を有効に利用していないことにもなり、社会的な損失も大きくなる。

すでに関係各機関での旅客増に向けた取り組みが本格化している。しかし、その見通しは決して明るいものではない。

地方では通院に要する時間が長くなる

医療において交通手段の確保は、極めて重要なテーマとなっている。日本は国民の衛生状況の向上に伴い、感染症などの急性病が減少し、がん、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が広まった。これを疾病構造の転換という。

生活習慣病は罹患期間が長期となり、また、完治することが少ない疾患である。その間、入院を要するような状態になることは少なく、長期にわたって通院を続ける必要がある。従って、自宅と病院との間の通院手段を確保しなければならない。

大都市であれば、病院は自宅の近隣にあり、公共交通機関も充実しており、問題は少ない。しかし、地方では病院は地域の拠点都市のみにあり、通院時間は飛躍的に長くなる。とくに、病を抱えた人が自ら自家用車を運転することは、現実的ではない。バス、鉄道を使って、長期にわたって通院しているのが現実である。

国の医療政策では、天井知らずの医療費の伸びを抑えるために、入院治療を制限する方向性を打ち出し、実施している。つまり、今後も通院による治療を受ける患者の数は減ることはなく、むしろ増加しているといえるのである。
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医療と交通の関係をより強くする、もう一つの要因は、地方で進む、医療の集約化である。日本では医師が地域的に偏在化しており、地方においては医師不足が進行している。そのため、すべての市町村が総合病院を保有することは現実的でなく、少ない数の医師で、効率的に診療を行うために、病院を集約し、地域の拠点都市にのみ総合病院を置こうとする取り組みが進められている。これも、当然のことながら、通院時間、距離が延び、公共交通の重要性が増しているのである。

さらに、地域の拠点病院がすべての専門家をそろえることも難しいという事態となっており、地域の拠点病院から大都市の専門病院への二次救急および患者転送ということも、日常化している。この転送には救急自動車が使われる。しかし、地方では救急自動車の配備数限られており、患者転送のために長距離長時間にわたって救急自動車が占有されると、その間に発生する救急搬送の要請にこたえられない事態も起こりうる。

新幹線のスペースを有効活用

しかし、救急自動車を増備することは、救急隊員の養成や車両が高価であることなど、財政赤字に悩む地方自治体にとって容易なことではない。また、救急自動車による長距離搬送は、交通事故を引き起こすリスクを高めることになる。実際、搬送中に交通事故が起こり、新たな救急自動車の出動を要請することになることは、決してまれではない。患者転送手段を救急自動車のみに頼る状況は、改善が必要なのである。

私は北海道の医科大学に在職し、医学部長なども経験しているところから、北海道における地域医療の現状や問題については、よく理解しているつもりだ。一方、青森県下での地域医療の現状については、明るくない。そこで、本稿では、札幌開業を視野に入れて、北海道内における新幹線の医療での利用法について考えてみたい。

開通する北海道新幹線は、旅客増を図る努力と平行して、スペースの有効活用についてもっと積極的に検討してもよいように思われる。そこで、地域の拠点病院から大都市の専門病院への二次救急搬送、および患者転送に、新幹線を利用することを提案する。

新幹線が毎時数本ずつ定時運行することを考えると、特別に列車を仕立てる必要はない。各列車に専用スペースを4ボックス(2区画)ほど確保すればよい。そこにストレッチャーが搬入できるようにすればよいのである。

救急装備は病院側からの持ち込みでよいと思われるので、JRはスペースと電源を確保するだけである。その改造費はわずかなものであろう。

患者の重症度、緊急性に応じて、患者の付き添いは、看護師、救急隊員、医師と柔軟に対応すればよい。大都市の駅で救急車が待機していれば、病院への搬送はスムーズに実現する。いわば「ドクターヘリ」ならぬ「ドクター新幹線」である。

北海道では新幹線と高速道路が並走しない

この方策のメリットは、地域の救急自動車を患者搬送に使わないで、他の救急対応に振り向けられることである。交通事故のリスクも大幅に軽減できる。さらに現在、広まっているドクターヘリは、夜間は使えないのに対して、ドクター新幹線なら少なくとも、深夜、明け方の時間以外は救急搬送が可能になり、選択の幅がひろがるわけである。

これまで、新幹線を患者搬送に利用しなかったのは、考えてみれば、不思議な気がする。制度的に無理があるという議論もあるが、すでに航空機で患者搬送している事実を考えると、無意味な議論であろう。

本州の新幹線網では、高速道路網や一般道路網が充実していたこと、北海道のように人口密度が低くなく、病院も限られたところにのみ存在しているというような状況になかったことも、新幹線を患者搬送に利用しようという機運が高まらなかったことと関係があるかもしれない。短距離の患者搬送なら救急自動車で事足りるのは明らかである。

だが、北海道はこの状況が当てはまらない。札幌開業の際の長万部―新小樽間は、併走する高速道路が未整備であり、また、将来的にも整備される可能性がきわめて低い。つまり全国の新幹線網で、唯一といっていいかもしれない高速道路が併走しない新幹線なのである。

通常、救急自動車で高速道路を走れば、その方がはるかに速い、ドア・ツー・ドアの救急搬送が可能なわけであるが、この新幹線区間では、救急自動車が一般道を走るために、新幹線の速度優位性が断然重要になるのである。さらに、この区間は北海道でも有数の豪雪地帯であるため、新幹線の定時性が実に効果的となる。

北海道新幹線函館開業では、「ドクター新幹線」のメリットは見えにくいが、札幌開業の暁には、北海道島内で札幌、函館への救急搬送に有効な手段になると思われる。札幌開業までにぜひとも検討を終えて、実現していただきたいと願っている。

  1. 2015/10/07(水) 06:09:26|
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