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9月24日 

http://www.m3.com/news/iryoishin/360416
神戸・生体肝移植、「標準体制から逸脱せず」
KFMICが第三者委の検証結果公表、移植継続

2015年9月24日 (木)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMIC、神戸市中央区)は9月24日、生体肝移植で術後短期間での死亡が相次いだ問題で記者会見を開き、第三者による体制評価委員会の検証結果を受け、「4つの条件」を満たした上で、生体肝移植を今後も継続する方針を表明した。

 会見で、KIFMIC理事長の田中紘一氏は、「大変責任を重く受け止めている。5人の死を無駄にしない」と述べた上で、「今すぐやるべきこと、中期的、長期的に実施すべきことなど、数多くの提言をもらった。その意味を一つ一つ確認しつつ、患者のニーズを踏まえて進めていく」と生体肝移植への決意を新たにした。KIFMICは2014年11月に神戸医療産業都市構想の一環としてオープン、同12月から今年6月までに生体肝移植を9例実施、うち5例が術後1カ月以内に死亡した。10例目の実施時期はまだ決まっていないという。


 KIFMICの生体肝移植については、日本移植学会と日本肝移植研究会が5月22日、生体肝移植の実施体制と施設整備について、計13項目の「緊急注意喚起」を公表。田中氏とともに会見に臨んだ、体制評価委員会委員長を務める上尾中央総合病院院長補佐の長谷川剛氏は、13項目への対応状況について、「現在の体制で、100点満点とは思っていないので、『絶対的なお墨付きを与えた』と捉えられると困る。しかし、標準的な体制からは逸脱しておらず、合格点に達していないわけではない」と述べ、生体肝移植実施に当たり、「これだけはやってもらいたい」との考えから、「4つの条件」を挙げたと説明。

 「4つの条件」とは、(1)術前の評価検討において、体制評価委員会が指名するメンバーを加える、(2)術中の判断の柔軟性を増すために、他施設から移植医療の十分な経験を持つ医師を移植手術に加える、(3)術後管理において、体制評価委員会が指名するメンバーに適宜相談するなどの体制を採る、(4)今後の実施症例は、実施前から実施後に至るまで、その経過を長谷川氏に報告、長谷川氏が評価体制委員会委員と情報共有――だ。これらの体制、特に(2)について、長谷川氏は、「メディアは、(死亡など、結果が悪かった場合に)何か一つの悪い原因があったから、と捉えがち。しかし、生体肝移植は、複雑かつ高度であり、原因を一概には言えない。より適切な生体肝移植を行うために、もう少し人を加えて実施できないか、という要望だ」と説明。

 なお、体制評価委員会は、患者や遺族の意向から、個別症例の検証結果は公表していない。院長の木内哲也氏は、その背景事情として、KIFMICをめぐる学術団体の対応やメディア報道などについて、「不正確な事実や一方的な推測に基づく伝聞が少なくない。患者や家族の了解も得ないまま流された情報もあり、患者や職員の間に戸惑いがある」と説明した。

 「守秘義務を厳守」も委員の選定条件

 KIFMICと日本肝移植研究会は今年4月5日に、7例についての話し合いの機会を設け、それを受け、同研究会は「4月5日現在、うち4例(57%)が死亡している。これは現在の日本の生体肝移植の1年生存率 83%よりはるかに劣る成績で、しかも術後短期間に死亡している事例が続いている。生体肝移植を行う総合力が、標準からするとかなり不足している」などと指摘、「組織の抜本的な改変が整うまで、移植医療は中断すべきである」という報告書をまとめた。

 その後、日本移植学会と日本肝移植研究会は共同で5月22日、肝移植の実施体制について13項目の「緊急注意喚起」、6月9日には両会から生体肝移植の自粛要請がそれぞれ出ていた。6月29日には、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本肝胆膵臓外科学会の3学会が、第三者による検証を受けるようKIFMICに要望書を提出。神戸市も6月8日に医療法に基づく立ち入り検査を実施、術後の管理体制などについて改善指導を行った。

 一方で、患者団体であるNPO法人メディカルツールからは7月2日、生体肝移植の継続を求める声明が出されるなど、生体肝移植の自粛を求める学術団体と、継続を求める患者団体の意見は食い違っていた。この間、KIFMIC は4月8日に8例目、6月3日、9例目の生体肝移植をそれぞれ実施したが、9例目の患者は翌々日の6月5日に死亡。


 KIFMICの「生体肝移植体制評価委員会」は、生体肝移植、医療倫理、医療安全などを専門とする医師、看護師、患者らで、計10人で構成(文末を参照)。委員長の長谷川氏は消化器外科医で、医療安全にも詳しく、医療の質・安全管理学会が推薦した。木内氏は、体制評価委員会について、「主に医療安全の視点から客観的、公正かつ中立な視点で、過去、現在、将来にわたって継続的にモニターしていく委員会」と説明、同委員会の役割は過去の事例の評価に限らないとした。

 体制評価委員会の委員の選任基準は三つ。(1)各分野で高い専門性を有する、(2)事実に基づいて、公正中立な意見を述べる資質がある、(3)患者の個人情報を含めた守秘義務を遵守できる――だ。(3)を加わったのは、4月5日の日本肝移植研究会との話し合いが関係している。結果的に「症例調査検討委員会」という体裁になり、「患者情報の取り扱いに慎重な配慮をお願いしたが」(木内氏)、その報告書が4月24日にKIFMICの手元に届く前に、4月14日からメディア報道が始まった。

 体制評価委員会は、8月2日からこれまで計6回開催。日本移植学会らが指摘した13項目も含め、幅広い視点について、実地検証、医師や看護師らへのインタビュー、手術ビデオの検証などを重ねた。9月15日に、中間報告書をKIFMICに渡した。

 短期、中長期的課題に分け提言

 長谷川氏は、日本肝移植研究会による個別症例の検討について、「よく考えられて出されたものだが、言い過ぎの点、あるいは逆に指摘されておらず、今回、明らかになった点もある」と説明。KIFMICが実施した9例の生体肝移植のうち、一部には、移植の適用がオーバーインディケーション、つまり本来移植の対象とすべきではなかったと考えられる症例も含まれているという。悪性腫瘍の症例であり、「悪性腫瘍の場合、どこまで根治的な手術を実施するかという難しい問題はある」(長谷川氏)。

 体制評価委員会は、過去の個別症例を検討した上で、今後、生体肝移植を実施するに当たっての短期的、および中長期的な課題を中間報告として整理した。短期的な課題は、前述の「4つの条件」だ。

 委員の間でも、意見が完全に一致したわけではないという。「9例中、5例が死亡している事実の重みを考え、(移植を)止めさせるべきという意見もあった。一方、移植を中止する期間が長くなると、その分、手術レベルが落ちることが考えられ、安全に再開できるよう、より良い提言を積極的に行うべきという意見があった」(長谷川氏)。ただし、田中氏らの移植技術を問題視する意見はなく、生体肝移植の実施に向けて4条件を挙げたと説明。

 「4つの条件」のうち、一つが、「術中に応援医師が必要」だ。ただし、KIFMIC の移植レベルが低いわけではなく、「(日本肝移植研究会が検証した)7例中4例が死亡したことが取り上げられているが、3例は生存している。(KIFMICが手掛けた移植の大半は)他の施設で断られた症例であり、これらを救えたのはすごいこと。(技術などが)『足りない』という意味ではなく、より良い移植を目指すとしたら、という条件だ」(長谷川氏)。

 さらに、中間報告では、中長期的な課題としては、移植に関わる医師の増員や移植医療に従事する若手医師の育成、KIFMICは消化器に特化しているため、隣接する神戸市立医療センター中央市民病院との連携強化、移植コーディネーターの養成などを提言した。

 日本、「肝移植では特異な国」

 会見では、生体肝移植の実施やその検証をめぐる諸問題も浮き彫りになった。

 田中氏は、「日本は肝移植において、世界的に非常に特異な国」と説明。脳死肝移植の経験を基に、生体肝移植が発展するが、日本では生体肝移植からスタートし、いまだに肝移植の90%が生体肝移植だという。生体肝移植の場合、ドナーは健常者。ドナーの安全性を考えつつ、レシピエントの患者希望に応える難しさがあり、田中氏は、「ドナーのリスクをどう考えるかは、医師のフィロソフィーも含めて、いろいろな捉え方がある」と述べた。日本肝移植研究会が報告書で指摘した、6000例を超すデータに基づく成績と7例の成績については、「一概に比較できるのか」とコメント。状態が悪い患者を数多く手掛ければ、おのずから成績は悪くなる。術後1カ月以内の死亡率は、手術適応の在り方とも関係する問題であり、生体肝移植を客観的指標で評価する難しさもある。

 一方、長谷川氏は、KIFMICの生体肝移植を検証する難しさを、当初感じたと吐露した。その理由は、生体肝移植は専門性が高い分野である上、京都大学名誉教授でもある田中氏は同移植の第一人者であり、これまで数多くの移植医を養成してきた立場にあること、同時にメディアの報道などが先行する中、公平中立な立場で検証するのは容易ではないと思われたことなどが理由だ。しかし、実際に委員会を立ち上げてみると、「厳しい意見もたくさん出てきたため、客観的な議論ができると判断した」(長谷川氏)。

 ◆生体肝移植体制評価委員会委員(KIFMIC発表資料による)

(1)外科学を先導する医師:北島政樹(国際医療福祉大学学長、日本肝移植研究会名誉会員)
(2)生体肝移植の知識および経験を豊富に有する医師:八木孝仁(岡山大学病院肝・胆・膵外科教授、日本肝移植研究会世話人)
(3)肝臓内科の知識および経験を豊富有する医師:藤澤知雄(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器外科、日本肝移植研究会特別会員)、市田隆文(湘南東部総合病院院長、日本肝移植研究会名誉会員)
(4)医療倫理に関する専門家:丸山英二(神戸大学法学研究科教授)
(5)周術期管理に関する知識および経験を豊富に有する医師:福家伸夫(帝京大学ちば総合医療センター救急集中治療センター教授)
(6)医療安全に関する知識および経験を豊富に有する専門家:長谷川剛(上尾中央総合病院院長補佐・情報管理部長、医療の質・安全学会推薦)
(7)肝移植経験者等、肝移植を受ける患者の立場を代表する者:蛭田位行(NPO法人メディカルルーツ代表・レシピエント経験者)、井戸雅浩(ドナー経験者)
(8)肝移植周術期管理に関する学識経験を有する看護師:林優子(大阪医科大学看護部学部長)



http://www.sankei.com/west/news/150924/wst1509240043-n1.html
生体肝移植継続へ、神戸国際フロンティアメディカルセンター 「体制備わっている」外部委員会の評価受け
2015.9.24 12:24 産經新聞

 神戸市の民間病院「神戸国際フロンティアメディカルセンター」で生体肝移植を受けた患者9人中5人が死亡した問題で、センターは24日、専門家で構成する外部委員会から「実施体制が備わっている」と評価を受けたとして、生体肝移植手術を継続する方針を明らかにした。

 移植医や看護師、医療倫理研究者、臓器提供経験者ら10人が委員を務める「生体肝移植体制評価委員会」が8月から、実施体制や施設の設備などをチェック。その結果、術中術後の経過について専門家のサポートを受ける▽手術再開後は経過などについて委員会に報告する-など4つの条件をクリアすることを前提に、肝移植の再開を「おおむね問題ない」と評価した。

 会見したセンターの田中紘一理事長は「提言を踏まえ、患者のニーズに応えていきたい」と話した。

 センターは4月の問題浮上後、専門医で作る日本肝移植研究会などから体制の不備を指摘された。その上で、安全な手術が行えるかどうかについて、第三者からの評価や確認を受けることを求められていた。



http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/196980
子どもの医療費 地域格差は放置できない
2015年09月24日 10時34分 西日本新聞 社説

 就学前の子どもの医療費は、2割の自己負担が基本だ。ところが実際は著しい地域格差がある。市区町村で援助が異なるためだ。
 厚生労働省が子どもの医療制度の在り方を議論する有識者検討会を設置した。
 自治体は「お隣」を意識し、競って援助を拡充してきた。その結果、格差が広がり、財政を圧迫しかねない状況が生じている。抜本的な見直しは避けられない。
 厚労省によると、昨年4月現在で全国1742市区町村のすべてが都道府県の補助を受け、単独事業として援助を実施している。約8割は所得制限がなく、自己負担ゼロは5割を超す。
 対象年齢の上限は4歳未満~22歳の年度末までと幅広い。負担が大きい入院で見ると、6割以上が15歳の年度末(中学生)まで援助している。九州では大分、佐賀、熊本各県で中学生まで援助する市町村が多いのに、長崎県の自治体は8割以上が就学前までだ。
 子育て支援は「未来への投資」とされる。少子化対策の目玉とも位置付けられるが、市町村による現状のばらつきは目に余る。
 自己負担が減ると受診が増えがちなので医療費の増加分は自治体が負うべきだ-。そんな考えに基づいて自治体の援助が拡大するほど国民健康保険の国庫助成金を減額するルールがある。これが検討会では大きな議題となる。
 2013年度の減額調整は総額約115億円に及ぶ。自治体側は援助制度普及の壁になっているとしてルールの撤廃を求めている。
 だが、国庫の公平な分配という観点から撤廃を疑問視する声もある。ルールを見直す場合は、地域格差を是正する方向に誘導する条件付けが不可欠だろう。
 そもそも、所得が高い人と低所得の人が一律で同じ恩恵を受ける制度が妥当なのかどうか。援助を自治体任せにするのではなく、国がもっと積極的に関わり、全国どこでも公平な自己負担で受診できる体制を目指すべきではないか。
 所得制限や財政負担の在り方も含め、徹底的に議論してほしい。

=2015/09/24付 西日本新聞朝刊=



http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201509/0008425898.shtml
「STAPはES細胞混入したもの」理研が論文発表
2015/9/24 18:53 神戸新聞

 STAP細胞の論文不正問題で、理化学研究所は23日付の英科学誌ネイチャー誌に「STAP細胞は胚性幹細胞(ES細胞)が混入したものだ」とする論文を発表した。

 論文の共著者チャールズ・バカンティ教授が所属する米ハーバード大など七つの研究チームも同様の研究報告をまとめ、同日の同誌に発表している。

 論文著者の小保方晴子氏やバカンティ教授が主張する手法に沿って細胞の変化を観察。細胞は、さまざまな組織に分化できる万能性を持つような変化があった場合、緑色に光るように遺伝子操作した。だが光る細胞はあったものの、ほとんどは死ぬ間際に光る「自家蛍光」という現象によるものだった



http://www.m3.com/news/general/360204?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150924&dcf_doctor=true&mc.l=123779515&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
ハーバード大も「作れず」 STAP細胞を否定 7チームが133回実験
2015年9月24日 (木)配信 共同通信社

 【ワシントン共同】STAP細胞論文の共著者チャールズ・バカンティ教授が所属する米ハーバード大など七つの研究チームが「細胞作製を試みたが、できなかった」とする研究報告をまとめ、英科学誌ネイチャーに23日発表した。合計で133回試みたが全て失敗に終わったという。

 ネイチャー誌は論説記事の中で「多くの研究者が参加した結果、STAP細胞は再現できないことが分かった」とコメントした。STAP細胞の存在があらためて否定された形だ。

 研究に参加したのは、ハーバード大のチームや中国・北京大、イスラエル・ワイツマン科学研究所など。バカンティ教授の研究室や共著者の一部も協力した。報告の著者の一人、ハーバード大ボストン小児病院のジョージ・デイリー教授は共同通信の取材に対し「この研究は大学当局による公式な調査ではない」と答えており、バカンティ氏の今後の処遇とは無関係とみられる。

 バカンティ氏の勤務先病院は同氏のコメントを出していない。

 理化学研究所も同じ日付のネイチャー誌に「STAP細胞は胚性幹細胞(ES細胞)が混入したものだ」とする論文を発表した。同内容の報告は、STAP論文問題を調べた調査委員会が昨年12月にまとめている。

 ハーバード大などの報告では、論文著者の小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏や共著者のバカンティ教授が主張する手法に沿って、マウスの脾臓(ひぞう)や肺の細胞に、酸や物理的圧力などのストレスをかけ、どのように変化するかを観察した。

 細胞は、さまざまな組織に分化できる万能性を持つような変化があった場合、緑色に光るように遺伝子操作した。だが光る細胞はあったものの、ほとんどは死ぬ間際に光る「自家蛍光」という現象によるものだった。死なずに光っているわずかな細胞を調べても、万能性を証明できるような結果は得られなかった。

 ※STAP細胞問題

 理化学研究所の小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏らが2014年1月、新しい万能細胞のSTAP細胞を作ったと英科学誌ネイチャーに発表。理研の調査委員会は論文の図表に捏造(ねつぞう)と改ざんがあったと認定し、論文は撤回された。小保方氏も加わった検証実験でSTAP細胞は作製できず、理研は12月の調査報告書でSTAP細胞の存在を否定し、胚性幹細胞(ES細胞)の混入と結論付けた。小保方氏は退職し、論文掲載料約60万円を理研に返還した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/356957?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150924&dcf_doctor=true&mc.l=123779516&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
シリーズ: 始動する“医療事故調”
センター事故報告、「義務」ではなく「権利」-上野道雄・福岡県医師会副会長に聞く◆Vol.3
報告書、「病院としては遺族に渡したい」

2015年9月24日 (木)配信 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――改めてお聞きしますが、10月から始まる医療事故調査制度の目的は何だとお考えですか。医療法には、医療安全が目的であると明記されています。

 先ほども言いましたが、遺族と当該医療者の疑問に答えることです。「想定外」の事態が起きた時、皆が傷つく。遺族は、「誤診されたのではないか」「間違った治療をされたのではないか」と思う。不信を持つ人は、実際に訴訟等に至る何倍もあるでしょう。医療不信を抱くと、将来病気をした時、安心して医療機関を受診できない。医療に不信を持っていたら、病の痛みは増強する。医療不信をなくしたいと思うのです。

 日医医療安全対策委員会の第2次中間答申、「医療事故調査制度における医師会の役割についてII」では、院内事故調査の基本的な視点として、(1)当該医療機関と外部の委員が協力して客観的に原因を明らかにするように努める、(2)原因と結果が一見、明らかな事例においても、即断することなく、事例の背景を幅広く収集し、審議を尽くすことが、遺族や関係者の疑問に答え、事故防止策を導く――と記載しています。この基本的な部分の認識がまだ浸透していないように思います。

――「福岡県医師会方式」の場合、これまでは希望医療機関への対応でしたが、10月以降、福岡県内で対応すべき件数はどのくらいになると見込んでおられますか。

 センターへの報告を「権利」と「義務」、そのどちらとして捉えるかにより、報告件数は変わってくると思います。今、多くの病院は「義務」と考えているでしょう。しかし、私は想定外の事態が発生した際に院外の専門医も加わって病態を究明して、当事者の疑問に答えていただく。これはまさに「権利」と捉えています。病院が「権利」と考えるようになると増加するのでは、と思います。

――センターに対して、報告するか否かは、遺族の意向とは関係がありません。

 報告の多くは、遺族側のクレームもきっかけになるかもしれません。

――今回の制度は、警察の取り調べ等とは関係がありませんが、警察は謙抑的になるとお考えなのでしょうか。

 そうです。例えば、遺族が警察に行っても、医療事故調査制度を勧めていただきたいと思います。

 今後、この制度が信頼されれば、警察も変わってくるのではないでしょうか。

――院内事故調査の報告書の取り扱いについては、どうお考えですか。

 「遺族の希望に応じて」ですが、「福岡県医師会方式」の経験では、医療機関としては、報告書を渡したいと考えるようです。医療事故調査制度でも、医療機関は、支援団体と協同でまとめた報告書を渡したいと思うのではないでしょうか。遺族側も「これだけの人が関与しているなら」と納得する確率が高い。

――医療事故調査制度では、報告書の医療従事者の記載は「匿名化」「非識別化」を求めています。「事実上、難しいので、報告書は渡すことはできないのでは」との見方もあります。

 匿名化については、ルールを作ればいいと思います。完全な実施には問題も多い。私は、遺族や医療者の疑問に答えるという、制度の本来の目的の遂行が大事と思います。

――医療事故調査・支援センターが、事故事例を収集して、分析することの意味をどうお考えでしょうか。

 実際、動くのは支援団体だと思います。当該医療機関が行う事故の分析や再発防止策が最も大切と思います。個別の事例の分析を積み上げる、そして、統計的な分析結果をフィードバックして、全体的な医療安全を実現したいと思います。

 私たちが事故対策を考える場合、自院の設備、システム、職員の意識や資質など、どこに問題があるかを検討します。これら自ら検討して、自らで結論を出していきたいと思います。

――再発防止策は、医療機関による個別性が高いということですか。

 その通りだと思います。病態や死因、また診療の一般的な妥当性についての評価を管理者に伝える。管理者側は、院内の体制、職員の数やその性格などを踏まえて、総合的に事故の原因や再発防止策を検討する。

 「あの壁に注意書きを張っているけれど、見えにくい場所にある」「この古い器具を使っているから、問題があった」「職員が忙しすぎるから、確認を怠ってしまった」。こうした個別事情も考慮して再発防止策を立案する。その際、審議の内容、防止策立案に至った過程を全職員で共有することが根幹と思います。

 一番の再発防止策は、皆が仲間意識を持ち、お互いを信頼し、助け合うこと。何か判断に迷い、不安そうな職員がいても、信頼があれば、「何、困っているのか」と声をかけることが可能です。ところが、現場が忙しすぎて、それと反対に動くようになると、事故は起きる。

――職員間の信頼関係の構築には、医療機関の管理者への信頼も重要であり、そのため事故対応が責任追及の場になっては問題です。この点についてはどうお考えですか。

 当事者の責任追及はしない、させない。責任追及をしたら、困るのは院長です。責任追及をしたら、もはや医療安全は成り立ちません。

 私はこの医療事故調査制度に期待をしています。日本の医療を変えるきっかけになり得るからです。

 日医医療安全対策委員会の第2次中間答申に込めた一番の思いは、「外部委員が、事故調査委員会の委員長を務める」ということ。外部の目を入れて、ピアレビューを行う文化、お互いが助け合う文化が生まれれば、医療への信頼が増す。外部委員として他の調査委員会に加われば、非常に勉強になり、意識改革になり、自らを向上させることにもつながります。これは医療安全に対する心の改革であり、戦術論ではなく、戦略論から変わるのです。

 第二は、「看護師」という言葉が随所に出てくること。委員会にも看護師を入れるよう求めています。診断治療は医師が詳しいですが、それ以外のことについては、看護師の方が患者の経過も含めて詳しいことが多く、医療安全には看護師の目が不可欠だからです。

 もちろん、一気には変わりません。最初はいろいろな問題が起きることも予想されます。今の制度は、「仮免許」と言えます。徐々にこの制度が定着していけば、5年後、10年後には、信頼される制度になるでしょう。



http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20150924-OYT8T50050.html
【島根】専門医育成、島大に新組織 県委託、研修プログラム策定
2015年09月24日 10時25分 読売新聞

 新しい専門医制度が2017年度から実施されるのに向けて、島根県は、専門医の研修を支援する組織を島根大医学部付属病院(出雲市塩冶町)につくる。


 専門医の資格取得のための研修プログラム策定などを行い、県内での専門医育成と定着を目指す。

 専門医は、内科や外科など各診療科や分野で、高度な知識・技量を持つと認定された医師。これまでは各学会ごとに独自に基準を作り、認定してきたが、基準の乱立による質の低下が懸念されていた。

 新制度では、中立的第三者機関として、日本医師会などでつくる一般社団法人日本専門医機構が統一の基準を策定し、認定する。大学病院などの基幹となる施設が、19診療科ごとの統一基準に沿って研修プログラムを策定する。

 県内では、島根大医学部付属病院を基幹施設として、県が事業委託することとした。関連費用1700万円を、県議会9月定例会に提出した一般会計補正予算案に盛り込んでいる。

 県医療政策課によると、同病院の卒後臨床研修センターの医師らを、専門医研修支援のスタッフとして組織する。策定する研修プログラムでは、松江、出雲市以外の地域の医師確保にもつながるよう、同病院のほか、県内各地の医療機関を回って研修することを検討しており、研修先となる医療機関の調整なども行う。

 同課は「県内で専門医を育成する仕組みを作り、医師のキャリア形成に資するとともに、医師が少ない地域での定着に結びつけられれば」と話している。(土屋吾朗)


  1. 2015/09/25(金) 05:48:05|
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