Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

9月16日 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201509/20150916_33015.html
<検証命の現場>訪問体制壊滅 介護者も犠牲
◎震災4年半(4)在宅患者

2015年09月16日水曜日

 東日本大震災は訪問医療の機能を奪い、在宅患者の命と健康を揺さぶった。
 岩手県沿岸部の6市町と宮城県気仙沼市で訪問看護を展開する岩手県釜石市のウェルファーは、釜石と同県陸前高田市、同県山田町にあった事業所を津波で全て失った。
 「震災直後はほとんど動けなかった」。社長で看護師の斉藤裕基さん(55)は回顧する。
 道路はがれきに埋まり、電話は通じない。人工呼吸器やドレーン(排液管)を付けた医療依存度の高い患者は、状況確認が急務だったが、かなわなかった。

<自ら手で動かす>
 その一人、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患の阿部山義正さん(76)は岩手県大槌町の自宅を津波で失った。共に障害のある妻と2人暮らし。町内に住む娘夫婦の助けで辛くも逃げられたが、常時必要な人工呼吸装置は運び出せなかった。
 避難した県立大槌病院は浸水で機能を喪失。震災2日後の13日に移った県立釜石病院は、発電機が不調だった。14日に内陸部の病院に移送されるまで約3日間、阿部山さんはほとんど一人で手動式の人工呼吸器を自ら押し続けた。「うつらうつらとして、苦しくなると目が覚めて手を動かした」と話す。
 陸前高田市では、避難所で2日間過ごし、病院に運ばれ震災1週間後に亡くなった70代の利用者がいた。終末期で自宅でのみとりを希望していた。
 ウェルファーの斉藤さんは「避難状況は後で分かった。震災がなく訪問を続けられれば、もう少し延命できたかもしれない」と語る。

<要介護度と比例>
 震災は在宅患者が災害弱者だったことを如実に示した。
 釜石ファミリークリニックには当時、釜石市内に307人の在宅患者がいた。このうち津波の犠牲者は41人。犠牲者比率は13.3%に達し、市全体の2.6%を大きく上回った。
 介護する家族も21人が在宅患者と一緒に亡くなった。うち要介護度5の患者を介護していた人が48%を占め、要介護度が上がるにつれ、介護者の死亡率が高まる傾向が浮かび上がった。
 同クリニックは診療所が被災し、往診車も流された。「あの規模の災害で成り立つ訪問診療はあり得ない」と院長の寺田尚弘さん(52)。適切な避難情報を在宅患者とその家族にどう伝えるか、介護者の巻き添えをどう減らすかを、むしろ考えなくてはいけないと指摘する。
 「高齢の患者と介護者は判断力が低下しがち。隣人のひと言があれば、助かる人が増える可能性はある。介護者の安全は社会全体で尊重しなければいけない。避難優先の行動を肯定する倫理的背景がないと悲劇はなくならない」。極限下で活動した寺田さんは提言する。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201509/20150916_31017.html
<検証命の現場>訪問医療 マニュアル崩れる
2015年09月16日水曜日 河北新報

 東日本大震災という未曽有の災害を経験した訪問医療は、在宅患者の命を守るため、どんな教訓を得たのか。

 訪問看護を行うウェルファー(岩手県釜石市)社長の斉藤裕基さん(55)は「震災前のマニュアルは使い物にならなかった」と話す。車が使え、電話がつながり、カルテがある前提は全て崩れた。
 緊急通行車両章の必要性を強く感じたという。通行が制限される緊急交通路への乗り入れが可能となり、給油も受けやすい。
 斉藤さんらの車が緊急車両扱いになったのは震災の3日後。それまでは患者の安否確認をしようにも車を止められるケースが多かった。迅速に取得するため事前届け出制度の周知と理解も肝要となる。
 連絡手段としては全患者への衛星携帯電話配備が一つの答えになる。しかし経費的に難しい。非常時に出勤できる職員確保の問題もある。事業者の動ける態勢づくりには限界がある。
 「救急車や医師を呼べないのが大災害。自らと地域で支え合うコミュニティーケアの確保が生存につながる」。斉藤さんの施設は井戸や太陽光発電の導入、地元農家との食料供給協定の締結を進める。患者には病気や薬のデータを丈夫なペットボトルに入れる災害カプセルの自作を勧める。
 震災では訪問医療の担い手が災害時に果たせる役割も見えた。
 外での活動をいとわない。在宅でも可能な医療技術がある。地域の人と地理に詳しい。看護や介護、専門医、行政など多職種の連携が得意…。釜石ファミリークリニック院長の寺田尚弘さん(52)は在宅医の強みを挙げる。いずれも災害時に必要な能力といえる。
 寺田さんは震災当時、釜石医師会災害対策本部長として、市災害対策本部医療班を運営し、全国から集まった医療支援チームの配置調整を担った。
 各地に散らばる避難所に医師を割り振った。薬剤師には薬の配達、服薬指導を依頼した。情報に応じて専門医やリハビリ専門職、ヘルパー、ケアマネジャーらを派遣した。
 有事の医療を平時化する。寺田さんが掲げた方針だ。「避難所を患者宅に置き換えれば、在宅医の通常業務と変わらない」。医療過疎に悩む釜石では平時から連携に努めなければならない。積み重ねが生きた。
 がれきの下で高度な救命医療を展開する能力は在宅医には必要ないし、任でもないと考える。
 「有事の医療をコーディネートし、復興期の医療に円滑につなげる。地域包括ケアの在り方を示す」。在宅患者に密着する訪問医療の責任と役割は大きい。


- - - - - - - - - - 


http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=133060
県立北部病院で産科医増員 来月6年半ぶり4人に
2015年9月16日 10:40  沖縄タイムス

 県立北部病院(仲間司院長)の産婦人科医が10月中旬から、現在の2人から指導医クラスが新たに2人増え、4人体制となることが15日、分かった。定数である4人体制は2009年4月以来で6年6カ月ぶり。05年4月に休止して以降、医師不足のため再開と縮小、救急受け入れ制限など不安定な状態が続く産婦人科だが、北部地域で安心して子どもを産める体制整備に向け、大きな一歩となる。

 新たに赴任する2人は県外出身のベテラン医師。県病院事業局の伊江朝次局長は「2人とも離島や過疎地域も経験している。大学病院からの派遣でもなく、移住してくれるので、恒常的な体制づくりが期待できる」と話した。

 4人体制によって、名護市内の2診療所と連携しながら正常分娩(ぶんべん)受け入れ拡大も検討する。現在は「極めて緊急性が高い」場合を除いて原則として中部病院に搬送する救急制限も徐々に解除したいという。

 北部病院はNICU(新生児集中治療室)の来春開設を検討。産科と小児が一体となって比較的高度な医療を提供する地域周産期母子医療センターの県認定を目指している。

 こうした体制をつくるには看護師拡充や施設整備が必要で、夜間の当直体制を全面再開するには医師5人が必要と病院側は指摘する。4人体制になっても救急の制限がすぐに解除されるわけではなく、赴任する医師と調整した上で判断するという。

 仲間院長は「北部の“失われた10年”が解決するめどはついたが、周産期医療は県立病院だけでなく地域社会全体で協力する態勢がないと、また失われた10年が来てしまう」と慎重姿勢を崩さず、地域の理解を今後も得たいと述べた。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H3I_W5A910C1PP8000/
病院の再編後押し、ベッド枠の融通しやすく 改正医療法成立
2015/9/16 21:19 日本経済新聞

 複数の病院や介護施設を一体で運営する「持ち株」法人の新設を認める改正医療法が16日の参院本会議で可決、成立した。薬・機器の購入や医師の研修をグループ単位でできるほか、ベッドの枠もグループ内で融通できるようになり、医療機関はコストを圧縮しやすくなる。病院ごとの役割分担も進めて設備投資の負担を減らし、医療費の抑制につなげる。

 これまで病院や診療所を運営する複数の医療法人が連携する場合、合併して1つの法人になっていた。ただ1つの法人になるにはポストの調整や給与制度、組織風土の擦り合わせが必要なため、ハードルが高い。

 「持ち株」法人は傘下に複数の医療法人や社会福祉法人をぶら下げることが認められる。民間企業の持ち株会社型の経営統合を医療・介護の事業者にも認める格好だ。将来的に合併につながる可能性もある。

 病院ごとに決まっているベッド(病床)の枠も総数が変わらなければ、グループ内の病院で調整できるようになる。病院ごとに役割を分担することで、医療機器などの投資負担も減らせる。

 医療法人の透明性も高める。一定規模以上の病院は公認会計士による監査を受けることを義務づける。外部の専門家の目線を入れることで、不透明な会計操作を防ぐ。親族会社との取引は都道府県に報告させる。合議制の理事会を置くことも法律で明記する。



http://apital.asahi.com/article/news/2015091600024.html
大量の診療記録、処理せずに投棄 静岡で見つかる
2015年9月16日 朝日新聞

 静岡市清水区大内の古紙回収所に大量の診療記録が捨てられていたことが、静岡市保健所への取材でわかった。14日夕に保健所に情報提供があり、職員が確認したところ、診療記録が段ボールに入れられ捨てられていたという。

 保健所によると、捨てられていたのはカルテや検査記録で、閉鎖した市内の診療所から捨てられたとみている。中には段ボールに入りきらず、むき出しで捨てられていたものもあったという。軽トラックの荷台がいっぱいになる量で、市は診療記録はすべて5年以上過ぎていたものとみている。保健所は14日に診療記録をすべてを回収し、保管している。

 市によると、医師には診療記録を5年間保管するよう医師法で義務づけられている。5年以上過ぎた診療記録を廃棄する場合、厚生労働省のガイドラインで、溶解などにより回収不可能な形で捨てるよう定められているという。



http://getnews.jp/archives/1149810
レセプト指導、全国4カ所で未実施=厚労省に改善要望―検査院 [時事]
DATE:2015.09.16 17:12 時事通信社

 診療報酬の不正請求を防ぐため、厚生労働省が医療機関や薬局に行う「集団的個別指導」が、全国4カ所の地方厚生局・事務所で未実施だったことが16日、会計検査院の調査で分かった。検査院は「指導のばらつきは不適切」と指摘し、厚労省に改善を要望した。

 同省は、年々膨らむ医療費適正化のため、患者1人当たりの請求額が高額な病院や歯科、薬局に対し、レセプト(診療報酬請求明細書)に基づき、各上位8%の医療機関の担当者を集めて面談や講習をする集団指導を行っている。

 検査院は全国24の厚生局・事務所について、2009〜13年の実施状況を抽出調査。中国四国厚生局(広島)と、北海道、岡山の各事務所は全期間、山口事務所は09〜10年、病院の集団指導を一度も実施しておらず、北海道は薬局向け、岡山は歯科向けでも未実施の年があった。集団指導には地元医師会などの協力が必要で、実質的に医療機関側の同意なしに実施できない仕組みだったという。

 厚労省は1995年の制度導入以来、集団指導の未実施があったことを認め、「北海道の医科と岡山の歯科以外は解消した」と釈明している。 

[時事通信社]



http://www.agingstyle.com/2015/09/16000600.html
「君は本当に医者になりたいのか?」
塩谷信幸 Aging Style コラム 健康長寿で行こう!
2015.9.16 aging style

落第や退学の取り決めは大学によって異なりますが、私が教授をしていた頃の北里大学は、同じ学年を2度繰り返すと、その先は退学でした。

だが、本人の希望の芽を摘みたくはない。また入学金やそれまでの授業料も馬鹿にはならない。従って退学を本人に通告するのは、学部長のつらい務めです。

ある時、学部長が僕にこうこぼしました。
「塩谷君よ、なぁ、君の知り合いのA君だが、さっき本人に退学を言い渡したんだ」
「うむ、あの成績ではねぇ」
「A君の親は、僕の友人の開業医で、地方の名士です」
「で、本人がなんと言ったと思う? "これで親も納得するでしょう"だって」

お分かりですか? 学部長の落胆の原因が。

医学部の場合、相当数の学生は開業医の子弟というケースが多い。したがって家業を継がせるのが目的で、しばしば本人の意思に反しても......ということが生じます。

また、昨今は、高校や予備校で偏差値の高い生徒を医学部に進学指導するそうです。これほど無茶なことはありません。

医師の適性はまず、患者のために尽くしたいという気持ちです。偏差値は二の次です。もちろん高校生の時点で「はっきりした目的意識を持て」といっても無理な場合が多いでしょう。漫然と医学生になっても、患者に接することで医師としての自覚が生まれることも多々あります。それでも医師という職業には向き不向きがあることは確かです。

無理強いはよくありません。よく、無理に牛を水場まで引きずって行っても、無理やり水を飲ますことはできないと言うでしょう。

この議論はあくまで医師の適性であって、研究者である医学者の適性とは区別して考える必要があります。

ある高名なアメリカの医学部教授が教科書の序文に記していたのを思い出します。

医学研究者は「人嫌い」であってもかまわない。しかし臨床医師に絶対必要な資質は「人が好き」ということだ。
と。



http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-09-16/2015091602_05_1.html
地域医療崩壊が加速
医療法改悪案可決 小池氏が反対討論
参院厚労委

2015年9月16日(水) しんぶん赤旗

 病院や介護施設などを運営する各法人を束ねて運営する「地域医療連携法人」をつくる医療法改悪案が15日の参院厚生労働委員会で自民、公明各党などの賛成で可決されました。日本共産党や民主、維新、社民が反対しました。

 全会一致で可決された付帯決議では、新法人の代表理事には「医師・歯科医師の選任を原則とする」とし、医師以外の者が就く場合も、「営利法人等との利害関係、利益相反を厳重にチェックし、医療の非営利性を損なわないようにする」などが明示されました。

 反対討論に立った日本共産党の小池晃議員は、「(病床削減の)地域医療構想実現のため、病床数や診療科の再編・縮小、医師・看護師の人材移動を進め、地域医療、とりわけ医療過疎地域の医療崩壊状態をいっそう加速する危険性がある」と批判しました。

 新法人に社会福祉法人も参加できることについて「意思決定の独立性や非営利性の担保について疑念がある」と指摘しました。

 新法人の理事長が医師・歯科医師でなくてもよく、関連事業の株式会社に出資でき、参加法人の議決権に差をつけることが可能で一部大規模法人による実効支配が排除されないことを示し、「医療の営利産業化への今後の火種となる」とのべました。



http://www.m3.com/news/general/358264
手術乳児死亡で賠償命令 「名大病院は説明怠る」
2015年9月16日 (水)配信 共同通信社

 名古屋大病院で2009年に胃を手術した長男=当時(1)=が死亡したのは術後の管理が不適切だったためだとして、中国籍の40代の両親が名古屋大に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は16日、手術の危険性を事前に説明しなかったと説明義務違反を認め、計約490万円の支払いを命じた。

 朝日貴浩(あさひ・たかひろ)裁判長は判決理由で「男児は肺高血圧症に罹患(りかん)しているため、手術の影響で死亡する危険性があると説明すべきだったが怠った」と指摘。男児の死亡後、他の病院での病理解剖を望んだ両親に対し「名古屋大病院でしか実施できない」と誤った内容を伝えた対応に関しても精神的苦痛を認定した。原告が、担当医師らに術後管理の注意義務違反があったとした主張は退けた。

 名古屋大病院は「主張が認められず誠に遺憾。判決内容を精査し、対応を決める」としている。



http://www.m3.com/news/general/358265
治療怠った過失を認定 名古屋の病院に賠償命令
2015年9月16日 (水)配信 共同通信社

 名古屋市千種区の医療法人「吉田病院」が適切な骨折の治療を怠った結果、右足首に細菌性の骨髄炎を発症し、障害が残ったとして、トルコ国籍の男性(50)が病院に約7100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は16日、病院の過失を一部認め、約2610万円の支払いを命じた。

 朝日貴浩(あさひ・たかひろ)裁判長は「担当した医師は皮膚の水ぶくれに気付いた時点で、ギプスを外すなど感染症を予防する措置を取るべきだった」と指摘したが、原告側が約5千万円と主張した逸失利益は、男性のトルコ料理店の経営状況などと照らし合わせ減額した。

 判決によると、男性は2008年9月に自転車の転倒事故で右足を骨折して吉田病院に搬送された。手術後はギプスを装着したが、右足首に骨髄炎を発症。動きにくくなる障害が残った。

 吉田病院の二宮恒夫(にのみや・つねお)事務長は「判決文を読んでいないのでコメントは差し控える」と話している。



http://www.m3.com/news/iryoishin/357825
「経営悪化」の可能性、大学も例外にあらず
全日病学会、「報酬と政策、リバウンドとパラダイムシフト」

2015年9月15日 (火)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

石井公認会計事務所所長の石井孝宜氏
 札幌市で開催された第57回全日本病院学会で9月12日、石井公認会計事務所所長の石井孝宜氏は、「診療報酬のリバウンドと医療政策のパラダイムシフト~財務の視点からふたつの変化を考える~」と題して、過去数年間の診療報酬改定と地域医療構想をめぐる動向について、ショッキングなデータを提示しながら特別講演した、

 「リバウンド」とは、民主党政権下で行われた2010年度と2012年度の2回のプラス改定では、急性期病院に手厚い評価がなされた結果、「日本経済が破たんしかねないデフレ下において、大インフレが起きた」(石井氏)ものの、消費増税対応分を除けば実質マイナスとなった2014年度改定により、一転して経営が悪化したこと。

 同改定の最大の特徴は、7対1入院基本料の病床抑制を目指し、長期入院の是正と急性期病床の位置付けが明確化されたことだ。「診療報酬が、価格統制機能だけでなく、極めて強く量的抑制機能を果たしたことが、2014年度改定の特徴であり、2016年度改定でもこの機能を発揮することが予想される」(石井氏)。

 急性期病院の経営の厳しさは、大学病院も例外ではなく、DPC導入前の2002年度から2014年度までの間で、平均在院日数は3割前後減少したケースも見られ、それをカバーできる入院件数の増加はなく、病床稼働率は総じて低下している。その結果、経営は厳しさを増していることが伺えるという。石井氏は、日本の急性期医療を担う病院の動きについて、「とてつもない大変動が起きている」と形容した。

 石井氏は、「パラダイムシフト」にはさまざまな意味を込めたが、その一つが、2025年に向けた急性期医療の方向性は見えたことから、今後は療養病床と外来医療の地域差の是正に論点が移るという点だ。今年6月に公表された2025年の必要病床数の推計値では、東京都の「高度急性期」病床は現状よりも47%少ないというデータも提示しつつ、石井氏は医療経営環境の厳しさを解説した。

 国立病院機構、済生会、日赤、最も厳しいのは?

 石井氏が提示した「ショッキングなデータ」の一つは、国立病院機構、済生会、日赤という公的な3つの組織の決算データ。石井氏は、「中でも最も厳しいのが、日赤。過去の決算で、最も悪いのが2014年度決算ではないか」との見方を示した。

 石井氏は、全国に90病院ある日赤の「医療施設特別会計」について、2008年度、2010年度、2013年度、2014年度のデータを分析。90病院の平均病床は400床を超える。

 「医業収益」の年次推移を見ると、一貫して増加しているものの、「医業損益」「経常損益」「当期純損益」はいずれも2010年度が最高で、2014年度の利益率はいずれも2010年度より低下。「医業収益」は、2010年度の8730億円から、2014年度は9508億円に増加したが、「当期純利益」は、2010年度は270億円と大幅なプラスだったものの、2014年度はマイナス169億円に陥った。90病院のうち、60病院が赤字だという。

 経営悪化については、次のような図式が想定されるという。各病院は、2010年度と2012年度のプラス改定で、長年続いたマイナス改定下、いわば「医療費の冬の時代」に抑えていた、ヒト、モノへの投資を増やした。ところが、2014年度改定で、7対1入院基本料の平均在院日数の算定方法が変わるなど要件も厳しくなった。入院件数を増やさなければ、病床利用率は低下するが、それが現実となり、一方で人件費などは容易には削減できず、結果的にコスト増になり、経営は相対的に悪化した。

 さらに2003年4月のDPC導入以降のスパンで見れば、急性期病院においては、平均在院日数は短縮したものの、入院件数はそれに呼応した数ほどは伸びず、結果的に病床稼働率は低下というトレンドもある。

 石井氏が提示したのは、幾つかの大学病院のデータ。例えば、ある1000床クラスの大学病院の場合、2002年度の病床稼働率は88.0%、平均在院日数は15.78日、2014年度の病床稼働率は76.5%、平均在院日数11.1日。この12年間で約3割も平均在院日数は短縮した一方、年間入院件数は約14%の増加にとどまるため、稼働率は12.5ポイントも減少している。

 そのほか、自治体病院の財務状況など、さまざまなデータを提示した上で、石井氏は2014年度改定を次のように総括。「2002年度以降、とてつもない大変動が起きているが、それでもいまだに7対1入院基本料が多すぎるのが現状。2014年度改定では、急性期病院は甚大な経営悪化に見舞われた半面、一部の特定領域に特化した計画入院型外科病院や、病床区分を機能実態に適合させた病院、さらに本改定の中心的なテーマから外れた100床未満、急性期以外の病院、精神科病院などは、前期との対比では安定的に経営できた。診療報酬改定は大きくぶれるため、非常に大きなリバウンドを繰り返している。その意味で病院経営をしていくのは非常に厳しい」。

 「地域差の是正」がキーワード

 「医療政策のパラダイムシフト」を説明するため、石井氏が紹介したのは、政府の社会保障制度改革推進本部の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」が今年6月15日にまとめた、第1次報告「医療機能別病床数の推計及び地域医療構想の策定に当たって」のデータだ。地域医療構想が定める4つの医療機能について、全国、東京、北海道、三重県、鹿児島を例に挙げながら、現状と2025年の必要病床数の推計値を対比した。

 石井氏はここでも「ショッキングなデータ」を提示。例えば、東京都の場合、現状(2014年の病床機能報告制度に基づくデータ)と2025年(パターンB:構想区域ごとの療養病床の県単位の入院受療率の全国最大値を全国中央値まで低下)の必要病床数は、現状と比べて全体では11.8%増加するが、「高度急性期」は47.0%減少(現状は3万床、2025年の必要病床数の推計は1.59万床)。一方、「回復期」は、400%以上増加(現状は6.9万床、2025年は約34.7万床)。

 各種のデータ比較から分かるのは、都道府県による差が大きく、また同一の県でも2次医療圏によって、現状と2025年の比較で、病床の過不足が大きく異なる点だ。これは、現状の病床数と、今後の人口高齢化の相違による。2025年に過剰になるのは都市部が多く、一方不足は地方が多い。

 石井氏はこれらのデータを紹介した上で、今年6月に閣議決定された、「骨太の方針2015」で、「歳出改革」が柱に掲げられ、その中で医療については、「地域差の是正」がキーワードになっていると指摘。今年3月に地域医療構想策定のためのガイドラインが出され、2025年に向けた方向性が見えたことから、「急性期医療にかかわる議論は、もうほとんど終わった。今後の課題は、療養病床であり、その入院受療率の地域差の是正だ。外来医療費についても、地域差の是正が課題となる。これらの取り組みを通じて、都道府県別の1人当たりの医療費の差を半減するとしている。この辺りが2016年度と2018年度改定の課題になる」と述べ、講演を締めくくった。

区分     全国    東京     北海道     三重    鹿児島
高度急性期  ▲31.8   ▲47.0     0.1    ▲42.0     7.1
急性期    ▲31.1      1.8   ▲40.5    ▲46.6    ▲58.1
回復期     242.3    402.9    283.5    226.9     99.4
慢性期    ▲21.7   ▲10.2   ▲14.4    ▲21.5    ▲50.0
合計     ▲4.2     11.8    ▲4.8    ▲16.4    ▲31.9
2025年の必要病床数の推計
(2014年と2025年の増減率。政府「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」の第1次報告と、2014年の病床機能報告制度のデータによる)



http://www.m3.com/news/general/358008
(声 どう思いますか)8月30日付掲載の投稿「長生きはめでたいことなのか」
2015年9月16日 (水)配信 朝日新聞

 ■長生きはめでたいことなのか

 無職 竹田清夫(神奈川県 83)

 日本人の平均寿命は男女とも過去最高を更新しましたが、これは単にめでたいことなのでしょうか。

 日本の少子高齢化は深刻です。少子化対策はいろいろと検討されています。けれども、高齢化対策はもっぱら、いかに支えて長生きさせるかという観点からの対策です。これでいいのでしょうか。

 社会の活力の維持には、構成員の適切な新陳代謝が必要です。それより何より、当の高齢者がどんな状態でも長生きしたいと考えているでしょうか。

 私も介護を受けて寝たきりになり、排泄(はいせつ)もままならない日が来るかもしれません。その時、そんな状態で生きながらえたくはありません。介護を拒否し、安楽になることを願います。

 しかし、自分で安楽になることはできません。社会が措置してくれることを願います。これは多くの高齢者の願いではないでしょうか。みなさんは、どうお考えでしょうか。

 (8月30日付掲載の投稿)

     ◇

 ■自ら終末を選べる法律を望む

 無職 小島光夫(新潟県 71)

 投稿者の方に共感します。介護を受ける状態になってまで生き続けたいとは思いません。私はエンディングノートに、延命措置をして欲しくない旨を記しました。自然界で生命あるものは、その摂理によって世代交代をしています。人間だけが、医療技術の発達によって、その摂理に逆らって寿命を延ばしているように思われます。

 私は自らの意思で死の時期を選択し、安楽に旅立つことを支援する法整備を望みます。安らかな眠りにつくための薬の開発を医薬業界に認め、それを処方した医師が自殺関与罪や同意殺人罪に問われないようにする法律です。このような法律も受け入れる社会であって欲しいと思っています。

 自らの尊厳を保った状態で終末を迎える。これこそ、人間のみが果たせる生命の全うの仕方ではないでしょうか。

 ■子供に迷惑かけて生きたくない

 パート 末森和枝(東京都 69)

 健康で、子供たちに迷惑をかけずに生きられるのなら、長生きはめでたいことかも知れません。でも、多くの人は介護が必要になり、子供たちに迷惑をかけ、子供たちの人生まで壊してしまうことになりかねません。

 子が、親の介護中に手をかけるという悲惨な事件があります。亡くなられた親より、手をかけてしまった子どもの方が不憫(ふびん)でなりません。親は、子供を犠牲にしてまで生きたくはないはずです。

 私も、社会での措置を切に望みます。介護が必要になったら拒否して安楽を希望する旨を、健康なうちに一筆したためておき、実際にそのようにしてもらえるような社会にしていただきたい。そうなれば親として安心できます。

 高齢化対策のための多額の予算の改善にもつながっていくと考えるのは、私だけでしょうか。

 ■介護を受けて笑顔で生きて

 介護支援専門員 浜村美和子(山口県 54)

 「今日はしっかり目が開いてるね」「笑ってくれてる」。在宅で介護を続ける方のために働く私の、うれしい瞬間です。いつも、介護が必要な方の気持ちに寄り添いたいと思っています。

 ご投稿者の「介護を拒否し、安楽になることを願います」の言葉に、胸が詰まりました。できることなら、ご投稿者に介護が必要になったときに、どう生きていくのがいいのかを一緒に考えたいと思いました。

 介護が必要になった方を支える仕組みは、どなたのそばにもあります。お元気なうちに、相談窓口へ行ってみてはいかがですか。あなたの「生」を支え、あなたが生きることを喜んでくれる専門家がいるはずです。介護が必要になったあなたも、あなた自身です。介護を拒否しないで。介護現場ではみんな、あなたの笑顔が見たくて頑張っています。

 ■高齢者は意見もっと述べよう

 医師 藤倉一郎(埼玉県 82)

 長寿はめでたいことです。しかし、長寿が必ずしも健康かというと、そうは言えません。報道などでは元気に活躍している人が注目されますが、多くの人は介護を受けたり、病院に入院したり、人のお世話になったりしているのです。

 統計では存命していれば長寿ということになります。しかし、実際は医療や介護に頼って生きています。だから医療費や介護費は増大します。日本の医療費の半分以上が高齢者に使われています。延命のために高額な手術が行われ、高度な医療技術も使われています。更に高度な介護を必要とする高齢者をつくっているとしか思えません。

 寿命の延長のためだけの医療は、制限すべきでしょう。医療者としてもそう思いますが、なかなかはっきり言えないのです。高齢者は、意見をもっと述べましょう。

 ◆最期の迎え方考えよう

 日本尊厳死協会副理事長の鈴木裕也医師 世界には十分な医療が受けられず、平均寿命の短い国がたくさんあります。有数の長寿国である日本は幸せな国です。ただ一方で、終末期の医療をめぐって、本当にこれでよいのかという疑問が出てきています。

 これまでは寿命が来て天寿を全うするのが普通でした。しかし医学の発達は過剰な延命治療を可能にし、自然で静かな最期を阻むようになりました。医学界は救命と延命を第一にして、望ましい看取(みと)りの実施と教育をおろそかにしてきました。

 どのような形で人生の幕を閉じるのかを国民一人一人が考え、医療者は患者の意思を尊重した終末期医療を行うべき時代になりました。人間本来の在り方とはどういうものなのか、終末期の看取りに関する法整備も含め、しっかり考える時期だと思います。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H4Z_Z00C15A9SHA000/
医師・歯科医、地域で偏り
「削りしろ」探せ(3)

2015/9/17 2:00日本経済新聞 電子版

 医師や歯科医に加え、リハビリテーションを担う理学療法士など、医療や介護に従事する職種は多岐にわたる。どのように養成されているのだろうか。

09161.jpg

 Q 医師や歯科医になるには。

 A 原則大学の医学部か歯学部で6年間の教育を受け、国家試験に合格することが必要。今年は医師8258人(合格率91.2%)、歯科医2003人(同63.8%)が合格した。

 Q 歯科医を養成する歯学部の体制は。

 A 高度成長期に食生活の変化などで虫歯が増え、医師と同様に歯科医の増員も求められた。ただ近年は歯科医の過剰が懸念されるようになり、国は国家試験の合格者を絞り込んでいるが、抜本的な削減にはつながっていない。東京など養成機関が複数立地する都道府県で特に人数が多く、医師とともに、地域ごとの偏りも指摘される。

 Q 歯科医の活動の場を広げる動きもあるようだ。

 A 徳島県歯科医師会は昨年4月、徳島市民病院に歯科医を派遣し、がん患者の口腔(こうくう)ケアの相談に応じる取り組みを始めた。同会の森秀司会長は「歯科医は積極的に外へ出て、治療中の患者や要介護者など歯科治療ニーズのあるところへ向かうべきだ」と話す。

 Q 他の医療従事者の養成はどうなっている。

 A 理学療法士についても国が設置規制を緩和し、高齢化などを背景に養成する専門学校や大学の設立が続く。日本理学療法士協会の半田一登会長は「高齢者が要介護状態になるのを防ぐ手助けや、手薄だった働く現役世代を支えることを重視していく」と話す。



http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG04H9E_Y5A900C1MM8000/
歯医者なぜ長引く 供給過剰、無駄な治療も
「削りしろ」探せ(3)

2015/9/17 2:00日本経済新聞 電子版

 東京都内の30代の男性会社員は歯科医の言葉に首をかしげた。「次はいつ来院できますか?」。虫歯の治療は終わったはずだが……。歯科医いわく「歯周病の疑いがあります」。結局、治療を続けることを決めた男性は「いったん歯医者にかかると、なかなか終わらない」と苦笑する。

09162.jpg

 こんな経験をした人は多いだろう。背景の一つと指摘されるのが、歯科医が置かれた環境の厳しさだ。

■「経営のために」

 神奈川県で開業する50代の歯科医は「経営のために一人でも多く患者を診なければならない。すぐ治療の必要がない虫歯や歯周病で通院を長引かせるケースはある」と打ち明けた。

 歯科医の数は全国で約10万人。厚生労働省によると、人口10万人当たりの歯科医数は1978年の40.7人から12年には80.4人に増えた。医師より開業する割合が高く、定年もない。この結果診療所は6万8701カ所(13年)と、コンビニエンスストア(約5万2千店、15年)を上回る。

 一方、フッ素うがいの普及などで子供の虫歯は減少している。12歳の平均虫歯数はこの20年で4分の1になった。需要と供給が反比例するいびつな市場だ。

 厚労省は国家試験の合格者を絞るが、15年は前年比1%減にとどまる。愛知学院大学の田中貴信・前歯学部長は「合格率が低い大学の定員削減や統廃合などに乗り出す時期」と危機感を募らす。日本歯科医師会も抑制を求める。ただ歯学部の定員削減は私立大の経営に直結し、「自主的な協力をお願いするしかない」(文部科学省)。

■採用に応募殺到

 歯科医に限らない。リハビリテーションを指導する理学療法士も競争激化が懸念される。高齢化を見越して養成する専門学校や大学の設置規制を緩和したところ、00年に年約3千人だった国家試験合格者は13年に1万人を突破した。

 現場ではすでに過剰感がにじむ。都内の総合病院は今春、若干名の募集に40人超の応募があった。リハビリに詳しい日下隆一仏教大教授は「このままのペースだと25~30年にも飽和状態になる可能性がある」。さほど日常生活に支障がない、老化に伴う骨の変形なのに長期間リハビリするような弊害も指摘される。

 医療界では「供給が需要を生む」との言葉がある。サービスの提供者が診療内容を決め、患者側はそれを受け入れざるを得ない。豊富な人材供給は手厚い医療体制に必要な半面、不要な治療を生み出したり、無駄な支出につながったりする土壌にもなる。

 埋もれたニーズを発掘する動きもある。茨城県結城市の歯科医、三木次郎さん(60)は寝たきりの在宅療養患者の口腔(こうくう)ケアに取り組む。ケアで健康状態が改善し、誤えん性肺炎などのリスクが低下する患者は多く、「結果として医療費全体を下げる効果も期待できる」。

 必要な人が、必要な治療を適切に受けられる。そのためにはどんな体制が求められるのか。医療界だけの論理ではなく、社会全体で探る時期にきている。



http://www.nikkei.com/article/DGXMZO91582740Q5A910C1I10000/
「合格率の低い歯科大は定員削減や統廃合を」 田中貴信・愛知学院大前歯学部長
「削りしろ」探せ(3)

2015/9/17 2:00日本経済新聞 電子版

 歯科医の供給過剰が指摘されている。愛知学院大学歯学部(名古屋市)の前部長で、同大付属病院長も務めた田中貴信氏に、今後の供給体制のあり方を聞いた。

――歯科医の供給過剰が指摘されています。

 「私が大学を卒業した1960年代の全国の歯科医数は3万数千人だった。日本の人口からすると、歯科医の数は7万~8万人程度が限界と考える。しかし、既に10万人を超え、適正人数をはるかに上回っている。技術の高い歯科医には患者が多く集まるが、経営が苦しく、開業資金を返済できない歯科医も出てきているなど二極化している」

――大学歯学部の供給体制は。

 「戦前から終戦後しばらくまで、歯科大学・歯学部は、国立は2校、公立1校、私立4校の7大学体制だった。高度成長期に食生活の変化などで国民の間に虫歯が増え、診療まで何時間も待たされるなどと歯科医不足がさけばれるようになった。そこで歯科大学、歯学部が続々と新設された。愛知学院大学歯学部は、そんな状況のもとで初めてできた歯学部で、8校目となる。その後次々に新設され、現在は計29校に上る。7校が29校になれば供給過剰になるのは必然だろう」

――いわゆる『団塊の世代』の歯科医が引退すれば適正水準になりませんか。

 「そういう見方もあったが、歯科医が急速に増えたのは団塊の世代の少し後で、毎年4千人近い歯科医が誕生する時代が続いた。しばらくは大きな減少カーブにはならないだろう」

 「また現在、歯科医は過剰で、医師は不足だといわれている。確かに医科でも、産婦人科・小児科などリスクの高い診療科の医師や、地方の病院では医師は不足していると懸念されている。一方で、都市部では一部の診療科の医師は既に過剰とも思える。現状の供給体制では、医科もいつかは歯科と同じような状況に直面するのではないか」

――今後の歯学教育、歯科医療界はどうあるべきでしょうか。

 「歯学教育、歯科医療界は大きな岐路に立っている。行政、歯科関係者が、現実をしっかり見つめて、根本的な改革に早急に手をつける時期に来ている。合格率の低い大学の定員削減や統廃合など、抜本的な対策が求められるのではないか」

 たなか・よしのぶ 1969年東京医科歯科大歯学部卒業。愛知学院大歯学部教授、同大歯学部付属病院長、同大歯学部長を経て、15年に退職。71歳。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/52102/Default.aspx
小児薬の調製ミス 換算間違いで10倍量も 日本医療機能評機構が注意喚起
公開日時 2015/09/17 03:51 ミクスOnline

日本医療機能評価機構は9月15日、小児薬の投与量の計算を誤って調製し、そのまま投与するなどの医療ミスが2012年1月~15年7月末までに5件報告されたことを踏まえ、医療安全情報No.106で医療従事者に注意を呼びかけた。中には抗生物質を10倍量を投与したケースもあった。

紹介したケースによると、零歳児に対し「バンコマイシン40mg+生食5mL 5mL/h 1日3回」の指示があり、本来であれば、バンコマイシン0.5gを生食5mLで溶解し、そのうち0.4mLが40mgになるはずだった。しかし、看護師は「1g=100mg」(正しくは1g=1000mg)と思い込み暗算し、0.4mLのところを4mLで調製し、投与。翌日に血中濃度が上昇したことで、調製ミスに気付いたというもの。

同機構が紹介したミスは以下のとおり(カッコ内は指示量→誤調製量)。

* 点滴静注用バンコマイシン0.5「MEEK」(40mg/回→400mg/回)
  - 背景:1g=100mgと思い込んだ

* 点滴静注用 バンコマイシン0.5「MEEK」(70mg/回→700mg/回)
  - 背景:100mg/mLの濃度に溶解後、0.7mLという液量に違和感があり、7mLだと思い込んだ

* プログラフ注射液2㎎(0.18mg/日→1.8mg/日)
  - 背景:・計算式の誤り。処方に正しい希釈方法が記載されていたが照合しなかった

* アミカマイシン注射液100mg(4.5mg/回→18mg/回)
  - 背景:計算間違い

* フルダラ静注用50m(15mg/日→30mg/日)
  - 背景:計算間違い



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201509/543843.html
コラム: 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
医療事故裁判が隠蔽する「不都合な真実」

2015/9/17 池田 正行 日経BP

 国や事故の種別を問わず、責任追及の目的は批判をかわすことであって、事故原因究明でも事故防止でもありません。高濃度カリウム製剤誤投与事故に見られるような同種事故の反復は、業務上過失致死傷罪(業過罪)を問う医療事故裁判の底流に、「責任追及→批判をかわす→裁判→事故原因隠蔽→事故再発→責任追及」という事故再生産サイクルが存在することを示しています。

 今回は、2015年7月14日に一審判決(禁固1年、執行猶予3年)が言い渡されたウログラフィン誤使用事故裁判(以下、本裁判)による事故原因の隠蔽と事故再生産への貢献を検証します。

責任追及が事故原因を隠蔽する

 医療事故裁判は、そのシステム自体が必然的に事故原因を隠蔽する構造になっています。なぜなら、全ての診療が複数の医薬品、複数の医療機器、複数のシステムが関与してチームで行われる環境下で医療事故が発生するのに、裁判では、事故原因の究明を被告人一人の業過罪にすり替えてしまうからです。下記は、本裁判で隠蔽された膨大な数の事故原因の、ほんの一部に過ぎません。

(1)脊髄造影をやらなければ患者さんを失わずに済んだ
 MRI普及率がダントツの世界一である我が国はもちろん(関連記事)、海外でも、ペースメーカー装着のような特殊な場合を除き、腰部脊柱管狭窄症における脊髄造影を原則不要とする意見は多々あっても、MRI使用可能環境下で脊髄造影の適応を明確に示した研究は見当たりません。

(2)ウログラフィンを脊髄造影に使用不可能にするシステムは十分構築可能だった
 オーダリングの際に、脊髄造影という検査名を入れるとウログラフィンがオーダーできないようにしておけば、そもそもこの事故は起こりませんでした。今や衝突回避システムの開発に自動車メーカー各社がしのぎを削る時代です。この事故が起こったナショナルセンター病院よりも、はるかに予算も人員も少ない民間病院で、治療用医薬品の併用禁忌チェックシステム、さらには注射薬監査支援システムにより、ウログラフィンを脊髄造影に使用できない体制が既に構築・稼働されていたのです。

(3)救命可能性は十分あった
 ウログラフィンを始めとした高浸透圧性イオン性造影剤の脊髄造影への誤使用事故例をまとめた報告(Eur Radiol 12 Suppl 3:S86-93)によれば、32例中21例、実に3例に2例が救命されています。この32例の中には東北大学(Intensive Care Med 1988;15:55-57)と、三重大学(Intensive Care Med 19:232-234)から各2例ずつ合計4例の救命例も含まれています。いずれの論文でも、髄液より比重が重い造影剤を腰髄以下の髄腔内に留めることにより、それより上位の神経毒性を減弱する座位保持や、造影剤を除去するための髄腔内の潅流(intrathecal lavage)といった、造影剤事故特異的な治療法の重要性が強調されています。

 今回の事故で、病院長名で公開された報告書に記された通り、事故原因が判明したのが死亡後だったとすれば、造影剤事故特異的な治療は行われずに患者さんを失ったことになります。

裁判が隠蔽する「不都合な真実」と事故再生産

 事故の「責任」は全て被告人にあることを「立証」し、被告人の罪をなるべく重くする使命を負った検察官にとって、事故原因はどれも有罪立証に不利に働く邪魔物にほかなりません。「どうすれば事故を防げたか?」「どうすれば患者さんを失わずに済んだか」――。この最も本質的で素朴な疑問をすべて無視し、最良証拠主義に基づき事故原因を隠蔽(検察官用語では「非開示」)するのが検察官の使命です。

 上記の事故原因は、いずれも単独で検察官の大切な業過罪シナリオを一挙に崩壊させる「ちゃぶ台返し」になりますから、もしもそんな「不都合な真実」の一つでも言い立てるような「空気が読めない」医師がいたとしても、直ちに検察官によって天下のやぶ医者と誹謗中傷され、その意見書も全面的に否定されていたでしょう。

 業過罪を問う医療事故裁判では、弁護人も事故原因分析のために積極的に動くことはありません。特に本裁判のように事実認定に争いがない場合、もし弁護人が検察官に事故原因を含めた証拠開示を執拗に求めれば、「この期に及んでも他人に責任をなすりつけようとする往生際の悪い被告人」という印象を関係者に与え、情状主張に不利になるだけです。

 一方、事故に関係した医療者達が事故原因について完全黙秘を保っているのは、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」とある日本国憲法第38条を遵守するだけで、ありがたいことに検察官から刑事免責が自動発券されるからです。マスメディアによる「責任追及」が、末端医療者への「責任転嫁」・事故原因究明の刑事罰へのすり替えといった卑劣な責任回避行動を誘発した構図は、北陵クリニック事件や高濃度カリウム製剤誤投与事故と瓜二つでした。

 かくして本裁判でも、関係者一同が業過罪という名の予定調和に向けて粛々と公判を進めた結果、マスメディアと検察官が最良の事故防止策と主張するところの「厳罰」が被告人に言い渡されました。同様の事故がそれまでに6件も裁かれてきたウログラフィン誤使用事故の再生産サイクルは、こうしてまたもや温存されたのです。

 業過罪により末端の医療者だけを厳罰に処す裁判そのものが、事故原因を隠蔽するシステムエラーであり、事故防止どころか事故再生産サイクルを支えている。さらには上記の3つの事故原因のうち一つでも対処できていれば、患者さんは死なずに済み、被告人も医師としてのキャリアを継続できた。そんな「不都合な真実」の数々が、一般市民にはもちろん当事者である患者・家族にさえ隠されているとしたら、それは一体誰の「責任」でしょうか?

  1. 2015/09/17(木) 05:36:47|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<9月17日  | ホーム | 9月15日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する