Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

9月1日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/353326

米団体、薬剤費削減に懸念も、費用対効果導入で
「イノベーションを継続できない」

2015年9月1日(火)配信 池田宏之(m3.com編集部)

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)の役員が来日に合わせて8月31日、医療技術評価(HTA)の諸外国の動向について講演し、薬剤へのアクセスの遅延や制限が起きていることを指摘した上で、生産性なども含めた評価や、企業のイノベーションへのインセンティブを与えるように求めた提言を公表した。一方で、1日薬価、(1錠)が約8万円となるC型肝炎の新薬を念頭に、その有効性を強調し、「インセンティブがないとイノベーションを継続できない」と述べ、薬剤費が急速に削られることへの懸念も示した。日本においては、既に中央社会保険医療協議会などの評価で、「(実質的に費用対効果を)内包している」と指摘する場面もあった。

薬の価格だけの考え方「変えないといけない」

 PhRMAが示した提言では、(1)治療オプションへのアクセスの現行と同等水準の確保、(2)治療評価において、直接的な費用便益だけでなく、介護や生産性損失への影響なども含めた包括的評価、(3)官民負担の最小化、(4)イノベーションの適切な評価――が含まれている。

 PhRMAの役員が強調したのは、イノベーションの評価。PhRMAの在日執行委員会委員長のトニー・アルバレズ氏は、質疑の中で「イノベーションの評価が高められるべき。後発医薬品が増える中で、金銭的なリターンがないと、イノベーションの継続は難しい」と指摘し、HTAにおいて十分なイノベーション評価の導入が必要だとし、直接的な薬剤費とその効果以外に、介護や生産性を含めて医療技術を評価するように求めた。

 1錠8万円とされるC型肝炎の新治療薬が登場する中、高価な薬が保険財政に与えるインパクトについては、アルバレズ氏は治療期間や通院頻度が少なくなる可能性に言及した上で、「全体像を把握しないといけない。1錠当たりの薬価だけの考え方は変えないといけない」と述べた。

「小さく始めて、拡張を」

 HTAについて講演したのはPhRMAで、インターナショナルHTAタスクフォース委員長を務めるディヴィッド・L・グレンジャー氏。グレンジャー氏は、HTAを導入している各国が自由価格でGDPを上回る医療費の伸びを示してきたのに対し、「日本では(公定価格のコントロールなどで、医療費が)非常に抑制されてきた」との認識を示した。その上で、医療技術等の評価の副作用として、英国やドイツ、韓国などで「画期的な治療オプションへのアクセスが制限、または遅延されている」と述べたほか、評価基準の問題などから「イノベーションを適切に評価できない」「評価自体に長期間を有する」などの欠点を挙げた。

 薬事承認から上市までの期間でも、英国では60週間、オーストラリアで47週間かかるのに対し、日本は9週間である点を紹介し、「とても迅速に認められている良い状況」とした。さらに、評価する際の費用や便益について、医療費だけでなく「生産費用」「交通費、待機時間」などを含めるように求めた。ただ、「(間接的な効果も考慮した)評価は大変で、方法論がはっきりしておらず、合意されたものはない」と述べ、総合的に効果を評価する難しさも吐露した。

 HTAを先んじて導入した英国では、費用に対して治療により延長した生存した期間を見る質調整生存率(QALY)を指標として用いている。これに対して、各国で、一部薬剤においてQALYの閾値の緩和や、疾病の重症度や希少度を評価する取り組みが始まっている点を紹介した。定性的な評価によって、本来的な意義が失われる可能性については、あくまで費用対効果を見た上で、各種指標を加味する取り組みである点を指摘して「透明性が担保できる」と述べた。

グレンジャー氏は、日本における薬剤、材料、医療技術について、中医協やPMDAの評価を経ている点について「(実質的に)医療技術等の評価は保険償還や価格等に内包化している」との認識。その上で、日本でも検討が進む費用対効果評価について、「各国は苦労している。日本では、小さく始めて拡張していくアプローチが良いのでは」と述べ、医療費抑制につながる懸念を感じさせた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/353275

「かかりつけ医」推進に4.5億円、厚労省概算要求
2016年度、実質的に過去最大の30兆6675億円

2015年8月31日(月)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 厚生労働省は8月25日、2016年度予算の概算要求を発表した(資料は、厚労省のホームページ)。予算規模は30兆6675億円で、2015年度に内閣府へ移管された保育所運営費等(2015年度予算1兆8126億円)の影響を除くと2015年度より約8000億円が増加したことになり、実質的に過去最大規模となる。そのうち6700億円は高齢化による自然増。

 新規の重点施策では「かかりつけ医」による医療提供体制の構築に4.5億円 、かかりつけ薬局を推進する「患者のための薬局ビジョン」に2.3億円を要求している。研究開発関連では、医療分野の研究開発促進には599億円、ゲノム医療推進に44億円となっている。

 なお、2016年度には診療報酬改定が予定されているが、その額は「未定」。病床の機能分化・連携、在宅医療の推進する「地域医療介護総合確保基金」の(医療分は2015年度予算904億円)も「未定」で、いずれも年末に決まる予算編成の中で、金額が決定する。

重点施策は8項目
 厚労省は2016年度の重点施策を8項目挙げており、そのうち医療関連が主となるのは「予防・健康づくりの推進等」「総合的ながん対策の推進」「医療分野の研究開発の推進等」の3項目。

 予防・健康づくりの推進関連では、「かかりつけ医」が予防・健康づくり、病診連携、在宅医療の推進、看取りの対応等を幅広く担っていくためのモデル事業に4.5億円を要求した。保険者がデータを生かした効率的な保健事業を進めるための「データヘルス計画」を立てて、事業を実施する取り組み評価などに50億円、糖尿病性腎症患者の重症化予防に3.4億円、重複頻回受診者等への訪問指導等の支援に14億円となっている。現在検討が進む健康づくり支援薬局(仮称)に関連して、24時間対応や在宅支援などかかりつけ薬局機能強化のためのモデル事業には2.3億円となっている。
項は以下の通り。
 総合的ながん対策の推進は250億円を要求しており、希少がん対策や、臨床試験やゲノム治療などを支援する臨床研究コーディネーター(CRC)や遺伝カウンセラーの配置、がん患者に対する就職支援事業などが盛り込まれている。

 医療分野の研究開発の推進では、医薬品や医療機器の開発に向けた研究体制の整備などに599億円、クリニカル・イノベーション・ネットワークの構築(疾患登録情報を活用した臨床開発インフラの整備等)に71億円となっている。

 2016年1月から始まるマイナンバー関連では、医療保険者との意見交換やNDBにおけるマイナンバー制度基盤の活用のあり方について検討するため、4.6億円を要求している。

 国全体での一般会計の概算要求総額は102兆円で、過去最大規模となる見通し。

 その他の主な予算事項は以下の通り。
* 認知症高齢者等にやさしい地域づくりのための施策の推進 57億円
* 「かかりつけ医」による医療提供体制の構築  4.5億円
* 専門医に関する新たな仕組みの構築に向けた取組 2.2億円
* 特定行為に係る看護師の研修制度の推進 5.2億円
* 医療事故調査制度の適切な運用 9.3億円 
* 救急医療体制の整備 4.2億円及び医療提供体制推進事業費補助金85億円の内数
* ドクターヘリの導入促進 76億円
* 周産期医療体制の整備 0.9億円及び医療提供体制推進事業費補助金85億円の内数
* 災害医療体制の充実 104億円、医療提供体制推進事業費 補助金85億円の内数、医療提供体制施設整備交付金25億円及び国立病院機構運営費交付金149億円の内数
* 臨床効果データベース整備 2.2億円
* クラウドを活用した医療情報の IT 化の推進 4億円
* 国立病院機構における電子カルテデータ標準化等のためのIT基盤構築 3.5億円
* 先駆け審査指定制度等の本格実施 1.5億円
* 後発医薬品の品質確保対策の促進 4.9億円
* クリニカル・イノベーション・ネットワークの構築 71億円
* ゲノム医療の実用化に向けた取組の推進  44億円
* 革新的な医薬品等の実用化に向けた質の高い臨床研究の推進等 66億円
* データヘルス(医療保険者によるデータ分析に基づく保健事業)の効果的な実施の推進 48億円
* 糖尿病性腎症患者の重症化予防の取組への支援 3.4億円
* 患者のための薬局ビジョンの推進 2.3億円
* 予防・健康インセンティブの取組への支援 1.4億円
* NDBデータの利活用及び医療保険分野における番号制度の利活用推進 7.3億円
* DPCデータの活用の促進等 4.7億円
* 保険者によるレセプト事前点検の実施 12億円



https://www.m3.com/news/iryoishin/349581
シリーズ: 私の医歴書◆高久史麿・日本医学会会長
今後の課題は「フリーアクセス」「自由標榜」◆Vol.31

2015年8月31日(月)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

――最後に、日本の今後の医療を担う若手医師、医学生へのメッセージをお聞きした。

 やはり今一番重要なのはコミュニケーションの問題ですね。医師と患者、医師同士を見ても、日本人はやはりコミュニケーションが下手。アメリカ人では、小学校からコミュニケーションに関する教育を行っているけれど、日本では小中学校などでは教えていない。本来、幼い頃から身に付けるべきもので、大人になってからノウハウを伝授されるものではない。大学医学部に入ってコミュニケーションを教えても、もう遅すぎるのです。医学部受験の際、アメリカみたいに時間をかければ分かるのかもしれませんが、日本のように短時間の面接試験では、コミュニケーションの上手下手はなかなか分からない。難しい問題です。

 それから患者さんに親切にすること。確かにわがままな人もいるけれども、やはり患者さんや家族の立場に立って考えることが基本。それが重要でしょう。

 フランクに、気さくに、というか、自然体で患者さんと話をするのが一番いい。私がよく覚えているのは、若い時ですが、急性骨髄性白血病の新薬が出た時のこと。ある患者さんに投与したものの、副作用もかなり強くて、お気の毒で、結局はお亡くなりになりました。その時に、そのお兄さんがご家族と来られて、「弟が薬の副作用で苦しんだ後に死んだので、本当は裁判で訴えようかと思ったけれども、弟が先生を慕っていたからね、やめた」と言われたことがあります。やはり患者さんに慕われることは、重要なことですね。

――超高齢社会になり、「2025年問題」なども指摘され、さまざまな意味で厳しい状況が続く医療界。今後の見通しや在るべき姿について、最後にお聞きした。
 将来的には、フリーアクセスは、無くす必要があるでしょうね。「いつでも、どこでも、誰でも」と言われますが、「どこでも」はやはり見直さないと。家庭医、かかりつけ医、総合診療医、呼び方はいろいろですが、そうした医師を介して、病院を受診するルートを作ることが必要でしょう。先進国のことしか知りませんが、患者さんが直接病院に行くというシステムは、あまり海外にはなく、日本くらいです。

 ドイツでもフランスでもアメリカでも、ファミリーフィジシャンを介して、病院を受診する。日本でも、そうした制度を30年以上前に作ろうとしたけれど、つぶれてしまったのです。高齢者が増える中で、1人の患者さんが勝手に病院に行って、複数の診療科を回るのは、やはり無駄。医療費の増加を止めるのはなかなか難しいけれども、日本流の制度を作っていき、無駄をなるべくなくすようにしないといけないですね。

 昔のことですが、ある会議で、医師会関係の委員の方が、「フリーアクセスは重要」と言われたら、その座長は医師ではなかったのですが、「患者さんがフリーアクセスを主張するのは分かる。けれども、先生方がなぜ主張されるんですか?」って不思議な顔をしていた。フリーアクセスは患者さんにとっては、一見いいですね、自分の好きなところに行けるから。けれども、やはり無駄が多い上、例えば、心臓の病気だと思っていても、本当は別の病気だったりすることもあります。厚労省が診療報酬などで制度を誘導しようとすると、またいろいろな反発が起きるでしょう。本来なら、日本医師会が主張すべき問題ではないかと思います。

 それからもう一つ。自由標榜制の問題。先ほども言いましたが、将来的には日本でも、基本領域については、専門医を取得した分野しか、看板を出せないようになる可能性があります。自由標榜制の場合、患者さんにとっては、標榜はしていても、その医師が本当にその実力を持っているかが分からない。専門医の取得を前提に標榜するようにすれば、患者さんにとっては「この医師は、そのトレーニングを受けている」と分かる。「患者さんの評判で分かる」と言う方もいますが、評判がその医師の質を保証するとは限りません。

 「将来的に」と言っても、それが10年後か20年後になるかなどは分かりません。さまざまな制度を変えることは簡単ではありませんが、だんだん変わっていかざるを得ないでしょう。



http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015090100915
ファイザーに業務改善命令=212人分の副作用報告遅れ-厚労省
(2015/09/01-20:39)時事通信

 製薬大手ファイザー(東京都渋谷区)が抗がん剤などの副作用情報212人分を期限内に国へ報告しなかったとして、厚生労働省は1日、医薬品医療機器法に基づき、同社に再発防止を図るよう業務改善命令を出した。
 同省によると、報告遅れがあった医薬品は抗がん剤やリウマチ薬など11種類。医師から副作用情報を入手した一部社員が、副作用報告用ではなく営業用の別システムに書き込んでいたといい、安全管理の責任者も記載を見落としていた。
 同法は副作用の重さに応じて15~30日以内の報告を義務付けているが、最長で6年5カ月遅れたケースがあった。死亡例も9件あったが、同省は「副作用との因果関係は不明」と説明している。
 同社は「事態を重く受け止め、心よりおわび申し上げる」などとするコメントを出した。 



http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2015090102000170.html
延命中止 独自指針で判断 北大病院 終末期医療の取り組み
2015年9月1日 東京新聞

 手を尽くしても助かる見込みがない患者の延命治療をどこまで続けるべきか。北海道大病院の先進急性期医療センターは、治療中止や差し控えに関する手続きを明確にした独自指針を二〇一一年から運用、病院倫理委員会も含めて重層的に判断する仕組みを構築してきた。 (小田智博)
 容体急変のため本人の意思が不明のケースも多い救急・集中治療の現場で、患者や家族とどう向き合うか模索が続く。日本救急医学会など三学会は昨年十一月、共同で終末期医療の指針を公表。主治医だけでなく、医療チームで対応することが鍵としている。
 北大病院ではこれに先駆けて一一年五月、先進急性期医療センターで倫理委員会の承認を得て独自指針の運用を開始。今年七月までの約四年間に、終末期の十~九十代の患者百十五人の延命治療を中止したり差し控えたりしてきた。
 センター部長の丸藤哲(がんどうさとし)医師は「患者に苦痛を与えるだけの治療は見直すが、必要な治療は迷わずにできる」と指針の意義を強調。指針は医師と看護師それぞれ二人以上を含む医療チームでの判断を求め、チームだけで判断が難しい場合は上司や他診療科の医師らを交えて協議するとしている。必要に応じて病院の倫理委員会でも審議する。方針決定のプロセスを重層的にし、判断の誤りや独善性を排除する狙いがある。
 患者の家族には繰り返し病状などを説明、治療方針について理解と同意を得るとしている。
 実際に中止や差し控えの対象となった医療行為の内容は、薬剤投与や輸血、人工透析、栄養補給など多岐にわたる。無呼吸テストを含む厳格な方法で患者が脳死と診断された場合は、人工呼吸器の取り外しも選択肢に含まれ、百十五人の中には呼吸器を取り外した患者も一人いるという。
 一方、医療チームなどの判断と倫理委員会の意見が異なり、呼吸器の取り外しを見送ったケースもある。指針の導入当初、事故で脳死とみられる状態となった患者について丸藤医師らは家族と相談、患者が延命治療を望む様子がなかったことを確認し呼吸器の取り外しを検討した。
 これに対し病院倫理委は数カ月の審議の末、昇圧剤などの投与中止を認める一方、呼吸器の取り外しは許可しなかった。患者の目に損傷があり、光に対する反射の有無を確かめる検査を行えず、厳密な脳死診断ができないことが理由だ。
 患者の心臓が停止し亡くなったのは事故から約半年後。丸藤医師は「早く家に連れ帰りたいという家族の願いをかなえられなかったが、倫理委の指摘ももっともだった」と振り返る。
 同センターの指針は終末期医療とは別に、救急患者の家族が治療開始を希望しない場合でも医学的に救命の可能性があれば治療を行うと規定。こうしたケースでは医師の倫理的判断を優先する姿勢を明確にした。同時に、家族との信頼関係を築く努力も求める。
 丸藤医師は「無理な延命治療で個人の尊厳を無視してはならないし、一方で助かる命が失われてはならない」と強調した。



http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20150901/201509010957_25632.shtml
検査でがん…1年半放置 患者は昨年死亡 大垣市民病院
2015年09月01日09:57 岐阜新聞

 大垣市民病院(岐阜県大垣市南頬町)は31日、検査でがんが見つかっていたにもかかわらず、担当した60代の男性医師が検査結果の確認を忘れたため、発見と治療が遅れ、昨年9月に市内の男性=当時(75)=が死亡する医療過誤があったと発表した。市は男性の遺族に1500万円の賠償金を支払うことで和解した。

 病院によると、男性は2012年12月6日、かかりつけ医の紹介で消化器内科を受診。検査を受け、同月21日、がんの結果が出ていたが、医師は結果を確認していなかった。医師は男性に結果が出たら、かかりつけ医に連絡すると伝えていたが、連絡も忘れ、約1年半放置していた。

 男性は14年4月28日、重い貧血と足のむくみで再度受診。検査で、胃がんと肝臓へのがんの転移が見つかった。手術は不可能と判断され、化学療法を続けたが、同年9月に亡くなった。最初の検査で治療を始めていれば、根治できた可能性があったという。

 藤本佳則副院長が31日会見し、「医師が検査結果を患者に伝えるため受診の予約をしていれば、結果を確認する機会はあった。患者、遺族に大変申し訳なく思っている」と謝罪した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/353573
シリーズ: 医師不足への処方せん
周産期医療、地域格差解消が課題
厚労省、体制整備の指針改定に向けて議論開始

2015年9月1日(火)配信 成相通子(m3.com編集部)

 厚生労働省の周産期医療体制のあり方に関する検討会(座長:五十嵐隆・国立成育医療研究センター理事長)の初会合が8月31日、開かれた。分娩取扱施設の機能集約が進む一方、分娩件数や分娩取扱施設数が減少している現状を踏まえ、2010年に改定した「周産期医療体制整備指針」の5年毎の見直しに向けた検討を行う。今年度内に議論を取りまとめる予定(資料は、厚労省のホームページ)。
 初回は厚労省から周産期医療の現状報告を受けた上で、構成員が産婦人科や小児科、助産師の立場からそれぞれ意見や要望を述べたほか、2014年度の事業で「持続可能な周産期医療体制の構築のための研究班」が行った医療圏のアクセス確保や将来推計に関する研究結果について、参考人として出席した国際医療福祉大学大学院准教授の石川雅俊氏が報告した。現状では産婦人科医ゼロの二次医療圏が、全国で5カ所存在するなど、周産期医療体制の格差が大きく、解決すべき課題が多々あることが示された。

対人口の「医師数増加」に違和感
 厚労省は、対10万人口の医師数の年次推移から、15~49歳の女性人口に対する産婦人科医師数と15歳未満人口に対する小児科医師数は、ともに増加傾向にあると説明。特に小児科や産婦人科では若手の女性医師の割合が高くなってきていると紹介した。

 これに対して、埼玉医科大学総合医療センター小児科学教授の田村正徳氏は、「小児科医の中でも新生児医療を選ぶ人はほとんど増えていない」と指摘。さらに、NICUの病床数が増加したことから、「人が増えないまま病床が増えて過重労働になっており、(新生児医療ではないところに)医師が流れている」と窮状を訴え、将来の見通しについても、「後期研修医の数が減っており、ますます厳しくなる」と懸念を示した。

 北里大学病院病院長で産婦人科(産科)主任教授の海野信也氏も、日本産婦人科医会のデータを紹介しながら、「現場の産婦人科を支えているのは若手の女性医師。妊娠、育児中の医師も増えている」として、必ずしも現場で働く医師数は増えていないと強調。「(若手女性医師が)中堅、指導層になり、持続的に指導的な地位で勤務を続けられるかが、今後の周産期医療体制を続けられるかを決める」として、若手の女性医師が周産期医療で働き続けられるような支援体制の重要性を示した。

 日本看護協会常任理事の福井トシ子氏は、「病院勤務の助産師は増えているが、診療所は追い付いていない。助産師の資格があっても助産の業務に携わっていない助産師が増えており、そうした人の活用が必要だ」と指摘した。

産婦人科医ゼロの二次医療圏が5つ
 厚労省が提示した資料では、都市部と地方の格差が広がっていることも改めて明らかになった。特に格差が大きいのが、NICU専任扱いの新生児医療医師数と1人当たり病床数。全国平均は1人当たり2.3床だが、最多の島根県で9.0床に対し、最少の福井県では0.9床と10倍の格差。専門医1人当たりで見た病床数も約9倍の格差があった。北海道、福島県、高知県、福岡県内の計5つの二次医療圏で、産婦人科医はゼロだった。

 周産期医療体制は、分娩のリスクに合わせて、正常分娩を扱う一般の病院や診療所、助産師施設から、比較的高度な医療行為や24時間体制での周産期救急医療を担う「地域周産期母子医療センター」、さらにリスクの高い妊娠に対する医療や高度な新生児医療などを担う「総合周産期母子医療センター」の3段構造で行われている。「総合周産期医療母子医療センター」は三次医療圏に1カ所で、「地域周産期医療母子医療センター」がその下に数カ所整備されるのが原則だ。

 ところが、今回資料では二次医療圏で分娩取扱地域がない地域があったほか、24時間体制の「地域周産期医療母子医療センター」でも、常勤産婦人科医師数が3~4人が約2割、1~2人も1割弱あった。

 海野氏は、「2006年ごろに産科医数が増加したのは大都市だけで、地方では増えていない。しかも最近では都市部でも減っている」と説明。田村氏は、「都市部と言っても、その中心部と周辺で状況は異なる」と指摘し、「例えば、埼玉県では医師が東京都に引き抜かれ、妊婦が東京都でお産をしないといけない状況になっている」として、隣接する都道府県など広域の対策が必要だと訴えた。

出生数も大きな格差がある
 分娩取扱施設の減少と同時に、出生数も減少しているが、石川氏はさらに人口規模の小さい医療圏で出生率の減少率が高く、将来需要も大きく減ると説明。二次医療圏の中には分娩取扱施設がない医療圏や診療所しかない医療圏もあることから、「全ての医療圏に基幹病院を作るのは困難」だとして、分娩医療機関への適正アクセスの確保が重要だとした。

 国土交通省の地図を利用した石川氏の推計によると、分娩取扱施設まで運転して30分以上かかる地域は北海道で9.5%、周産期母子医療センターまで60分以上かかる地域は九州で7.5%が最大で、多くの地域がそれ以下の時間で運転していけるという。また、出生数が5000以上と比較的多い地域はそれぞれ100%以上となり、「アクセスの良さが改めて確認された」としている。

 これらを踏まえて、石川氏はアクセスを一定程度確保しながら基幹病院の計画的な整備をすることや、基幹病院と他の医療機関とのネットワーク化による地域格差の解消を提案。また、「二次医療圏の概念を出生数規模で分類してはどうか」と問題提起した。構成員からは、「興味深い」「都道府県の設定した二次医療圏は現実に則していない」と支持する声が挙がった。



https://www.m3.com/news/general/353583
患者塾 医療の疑問にやさしく答える 塾長のつぶやき いいところを褒めまくる
2015年9月1日(火)配信 毎日新聞社

患者塾:医療の疑問にやさしく答える 塾長のつぶやき いいところを褒めまくる /福岡

 文化勲章受章者で作家の瀬戸内寂聴さんが闘病から復帰し、またテレビや雑誌で元気な姿を見せてくれるようになりました。骨粗しょう症による圧迫骨折に対し「骨セメント療法」をして回復に向かったものの、検査の途中でたまたま胆のうがんが見つかり復帰に1年かかったそうです。「いよいよ腰の曲がった老人になったと老いを確認させられた」と言う割には、毒舌は若い時以上にさえ渡っていて、とても90歳を超えているとは思えないほどです。

 対談で、男性に関する話題になった時のことです。「男は褒めときゃいいのよ。探せばどこかいいとこがあるものよ」というのです。確かにこれは名言です。どこかで聞いたことがある言葉だな、と考え巡らしていて、しばらくして鮮明に30年前を思い出すことができました。

 医者になって約5年たち、一人前になったと自信を持ち始めた頃に、尊敬する内科の教授から厳しく注意された時のことです。糖尿病の患者さんが「仕事の関係で接待が続き、どうしても食べ過ぎてしまう。アルコールも断れない」と言うので、それは絶対にだめだと説教したと話したら、その教授は「患者は褒めろ。褒めなきゃだめだ。説教したら来なくなる。来なくなったら病気がひどくなる。女も褒めろ。褒め過ぎるくらいに褒めとけば、女は機嫌がよくなる。そしたら、こっちも元気になるだろう」とレクチャーを始めたのです。

 褒め方の詳しいノウハウも教わりました。「いいかげんな褒め方はかえって相手を傷つける。相手も自分も十分に納得できるようないいとこを見つけて、そこを集中的に褒めまくるんだ。どんなつまらんように見えるやつでも、探せば必ずどこか褒めるとこがあるもんだ。それが生活指導のコツなんだよ」と力説してくれました。その教授も毒舌で有名な人でした。病院中に聞こえるような大声でつばを飛ばしながら患者さんを激しく怒鳴ることもあるのですが、肝心なところでは優しく褒めまくり励ますのが上手でした。叱る時にも褒める時にも、決して感情に走らず真摯(しんし)な態度で臨むので、それが自然と相手に伝わったのでしょう。

 テレビの仕事を10年ほどして医学部を受験し直した時、高校時代の恩師から言葉巧みに褒められて、諦めずに勉強を続け合格できたのを思い出します。夏が過ぎた頃「この成績だとちょっと無理かもしれない」と弱音を吐くと、恩師は「点数こそ悪いが、この答案はしっかり勉強したやつの書き方だ。今こんな答案が書けるのなら、来年の本番にはきっとすごい成績になっていると思う。オープン戦でこのくらいなら十分だろう」と淡々と話してくれました。実際、年が明けてから成績は一気に伸び、志望校に合格できました。今日があるのは、恩師のその時の思いやりいっぱいの褒め言葉があったからだと感謝しています。

 最近、生活習慣病の指導法が集学的に検討されるようになりました。「集学的に」とは、内科だけでなく脳科学や心療内科やいろんな分野の専門家が集まって総合的に検討することをいいます。糖尿病を医学的な側面だけから考えると、カロリーを厳守してバランスのいい食事を取るのが一番ということになります。こてこてした高カロリーの食事は禁止ですが、厳しく禁止されると食べたい欲望がさらに強くなることが脳科学の研究で分かっています。また、ストイックに制限された食事を続けていれば、精神的に追いつめられ「燃え尽き症候群」になる可能性があることは、心療内科の分野で多くの医師が経験しています。ある程度頑張ったら自身を褒め、たまには許される範囲で羽目を外すことも必要です。医師や栄養士や看護師はそのサポートを適切にしていく必要があります。

 仕事に疲れて帰った亭主が珍しく掃除をしていたら「疲れて帰ってるのにありがとう」と女房が言ってくれれば、うれしくなってもっと家事を手伝ってくれるようになる――で末永く夫婦円満にやっていけるというのが瀬戸内寂聴さんの考え方だと思います。一方、女房が体調が悪くても夕飯を作るのは当たり前だと思っちゃいけない。「今日は疲れてるみたいだな。どこかに食べに行こうか」とか言ったら、倦怠(けんたい)期の夫婦も少しはうまくやっていける、というのが先程の教授の実生活に基づく理論です。

 患者塾には、医者への不満の声がたくさん届きます。ちゃんと分かりやすく説明してくれないとか態度がでかいとか、無愛想だとか表現はいろいろですが、要は「満足できる医者ではない」ということでしょう。先日、大学の後輩が主治医だという70代後半の女性から電話がありました。何を言っても何を尋ねても「大丈夫。心配ないですよ」と面倒くさそうに言われる。それを繰り返し聞く度に不安が募るというのです。私が知っている彼の人柄を紹介し、心にもなく大丈夫などと言う男ではないと伝えました。そのうえで納得できたら「先生からその言葉を聞くと本当に安心します」と言ってみたら、と提案しました。1カ月後「ありがとうございました。なぜ大丈夫かを丁寧に分かりやすく説明してもらい、本当に安心できました」ということでした。

 全てがこんなふうにうまくいくとは思いませんが、家族も他人もあるいは自分自身も思い切って根拠に基づいて褒めてみると「思わぬご褒美」が返ってくるような気がします。(患者塾塾長・小野村健太郎)

〔福岡都市圏版〕


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