Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月25日 

http://www.m3.com/news/iryoishin/348177
シリーズ: 私の医歴書◆高久史麿・日本医学会会長
医学部、新設するなら第二の自治医大◆Vol.25

2015年8月25日(火)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

――長年、医学研究だけでなく、医学教育、医療政策にかかわってきた立場として、今の日本の医療をどう見ているのだろうか。
 今、医学部新設については、ある国会議員の方が、「新しく作るなら、第二の自治医大を作るべき」と言われたことを聞いたことがあります。その考えは私も同じです。どんな医師を養成するのか、それからどんな配置にするのかなどを全然考えないで、ただ増やしてもあまり意味がないでしょう。東北の方(東北薬科大学の医学部新設)は復興支援の意味もあるもかもしれませんが、成田市(国家戦略特区に指定された千葉県成田市と国際医療福祉大学が新設を検討)方はちょっと問題ですね。

 その関連で言えば、「特定看護師」も以前検討されていましたが、看護師さんができることはやってもらえばいい。ナースプラクティショナーみたいな人も養成せざるを得ないでしょう。私が医師になった1954年当時と今とでは、医療の中身も随分違う。うまく役割分担をしていかないといけない。それから、フリーアクセス、「標榜の自由」も問題でしょうね。こうしたシステムを変えない限り、幾ら医師を増やしても、あまり意味がないと思います。

 医学教育については、CBTとOSCEに加えて、今度は(臨床実習の成果を試す)advanced OSCEも行われるようになっています。国家試験も3日間500題というのは多過ぎるので、今後は減らす方向に行くのでは。CBT後の問題に限り、2日間で400題とか。

 さらに医学教育については、国際標準に合わせた医学教育を行うための準備も必要(『「JACME」、全80大学が参加し今秋発足』を参照)。

 医学研究はどうでしょうか。AMEDがうまく運営してくださることを期待しています(2015年4月に発足した日本医療研究開発機構。『志ある臨床医の協力、研究開発のカギ - 末松誠・AMED理事長に聞く◆Vol.1』などを参照)。あとは製薬企業の奨学寄付金が厳しくなっているので、大学では、研究費の確保に困っているのでは。そもそも、基礎も臨床も研究に従事する人手が少ない。生物統計学が得意な医師も少ない。パブリックヘルスを修了しても、生物統計学に詳しい人は皆、製薬会社に行ってしまう。大学にポジションがないからです。治験は企業がやるからいいけれど、それ以外の臨床研究をいかに進めるかは難しい問題です。


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http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1508/1508068.html
ABC分類導入による胃検診の在り方を探る
[2015年8月25日] MT Pro / Medical Tribune

 ABC分類では,Helicobacter pylori(HP)血清抗体検査とペプシノゲン(PG)法を組み合わせて胃がんリスクを判定する(表)。簡便なスクリーニング法として,対策型検診や任意型(人間ドック)検診に導入が進んでいる。第56回日本人間ドック学会学術大会(7月30~31日,会長=医療法人社団相和会理事長・土屋敦氏)のパネルディスカッション「ABC分類によって,今後の任意型(人間ドック健診)胃検診は変わっていくのか」では,各施設における実施状況や課題が示され,それぞれの立場からの見解が報告された。
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リスク判定と年齢を考慮した個別の対応を

 四谷メディカルキューブ(東京都)消化器内科部長の伊藤慎芳氏は,2005年5月~15年4月に同院でHP抗体検査,PG検査,上部消化管内視鏡を行った受検者6,201人(男性3,805人,女性2,396人,平均年齢53.7歳)を対象に,ABC分類の有用性と問題点について検討した。平均観察期間は2.0年であった。プロトンポンプ阻害薬使用例,胃術後例,腎不全例は除外した。

 最も多かったのはA群の3,092人(50%)で,B群が1,280人(20%),C群が546人(9%),D群が110人(2%),E群(除菌後)が1,173人(19%)であった。

 胃がん発見率は,多い順にC(C+D)群で2.9%,E群(除菌後)が1.3%,A群が0.032%であった。胃がんが発見されたときの平均年齢は65.3歳で受検者平均よりも12歳高く,男女比は34:11であった。早期がんと進行がんの比は41:4であった。小病変や平坦な色調変化の病変が多いため,内視鏡の有用性が高いことが示唆された。

 A群には若年者が多いが,高齢者では除菌歴がなく,感染が自然に終息したとみられる感染既往例が混在しているため,画像所見を活用することでリスク判定の精度が高まる。D群は未感染,現感染,感染既往,自己免疫性胃炎が混在しているため,未感染以外は個別に精査が必要である。同氏は「ABC分類は胃がんリスク評価に有用であるが,人間ドックにおいては,E群(除菌後)の設定や丁寧な内視鏡検査,HP抗体濃度やPG値を考慮した個別対応が重要になる」と述べた。

 ABC各群の割合は,2000年以前は多い方からB群,C群,A群の順であったが,2000年以降は同A群,B群,C群,E群,今後は同A群,E群,B群,C群の割合になると予測されている(図1)。地域,年齢など対象の特性によって異なるが,大半が超低リスクになるとみられており,変化に対応した検査や指導体制が望まれる。
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胃がんリスクを自覚し,検診受診や除菌治療の動機付けとする

 宮城県対がん協会がん検診センター(仙台市)では, 2011年4月にABC検診をオプション検査として導入し,検診受診の動機付けと除菌治療の情報提供に活用してきた。同センター副所長の加藤勝章氏は2011,12年度のABC検診受診者にアンケートを行い,40歳以上の回答者365人(胃リスク判定A:184人,B:99人,C+D:82人)について集計した。 

 リスク評価後の胃がん検診に対する意識の変化について,「胃がん検診を受ける必要性を強く感じた」と回答したのはA群 42.0%,B群57.6%,C+D群82.7%と高リスク群で高かった(図2)。リスク評価は,胃がん検診の重要性を啓発する良い機会であることがうかがえた。また「今後,どのような方法で胃がん検診を受けたらよいと思うか」との問いに対して,「毎年,胃X線検査を受ける」と回答したのは,A群 53.2%,B群48.5%,C+D群32.0%で,低リスク群においても,リスク評価は検診自体の動機付けとなる可能性が示された。
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 リスク評価後の検診受診,治療の状況が把握できた293人を調査したところ,胃X線の後に上部消化管内視鏡検査(EGD)を受けたのは,C+D群で30.0%,B群で27.1%と約3割に及んだ。また,ABC検診受診前に除菌治療を受けていたのは2%(E群と分類)であったが,リスク評価を契機に新たに除菌治療を受けたのはB群の18.1%,C+D群の47.6%と増加しており,ABC検診を契機としてその後の動向に変化が見られたことが分かった。

 同氏は「任意型検診は健康意識の高い受診者が多いため,HP感染や胃がんリスクなどに関する情報提供を積極的に行い,個人の疾病リスク低減に努めることが肝要である」と提言した。

(鈴木 志織)



http://kenko100.jp/articles/150825003572/
医学部の女性教授になるには○○が必要!? 東京医大調べ
女性教授・准教授に共通する要素あり

2015年08月25日 06:00 公開  健康百科

 大学の女性教授は1割程度。狭き門だが、医学部で教授や准教授を務める女性には、同じ要素があることが、同大学医学研究科の泉美貴教授(医学教育学)らの調査で分かった。医師に不可欠なプロ意識のほかに、性格や生き方など複数の要素が共通していたという。この結果は、7月24~25日に新潟市内で開かれた日本医学教育学会の会合で報告された。

20人の女性教授・准教授を調査

 女性の社会進出に伴って、大学で教授や准教授を務める女性も増えてきた。とはいえ、もともと大学教員に占める女性の割合は少なく、2007年度の学校教員統計調査によると、准教授で18.2%、教授では11.1%にとどまっている。

 教授・准教授になるのはどんな女性なのか―。泉教授らは、女性医師20人(教授12人、准教授8人、平均年齢52.8歳)を対象に、(1)教授・准教授になるまでに味わった困難、(2)その対処法、(3)仕事を続けられた理由、(4)共通する要素―について質問した。なお、20人のうち既婚者16人、子供あり13人、介護経験あり6人、留学経験あり18人だった。

困難にめげない楽天的性格が必要
 その結果、困難は「子育てで離職」「妊娠時の職場の嫌がらせ」などのエピソードが挙げられ、その対処法として「可能な仕事から始めて復職した」「同僚に助けを求めた」などが紹介された。
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 仕事を続けられた理由は、「仕事が楽しかった」「やりたいことを求めることで先が開けた」「良い指導者から指導を受けた」「困難なときは考えて選び、結果を肯定的に捉えた」など、前向きに取り組めたことを挙げる人が多かった。

 共通する要素では、「楽観的でおおらかな考え方」「仕事は好きなことを探求する」「その時点での最善を尽くす」「社会的責任を果たす」などが挙げられたという。

重要なのは"キャリア優先の選択"

 泉教授らは以上の結果を踏まえ、大学で女性医師がキャリアを積み上げていく上で必要な条件となるモデルを作成した。

 そこでは、「キャリアを優先して選択することの重要性」が挙げられている。とはいえ、それは「キャリアのために結婚・出産をしない」などというのではなく、そうしたライフイベントの時期を慎重に選ぶこと、自分を鍛えてくれる上司や同僚を選ぶことなど、キャリアに向けて適切に、計画的に行動することを勧めているのだ。

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 また、能力の向上を怠らない、受けた教育を社会に還元するなどの「プロフェッショナリズム(プロ意識)」を貫くこと、困難に対しては「楽天的に臨み、結果にとらわれない」などを心がけるよう助言している。

 今回は医学部教授・准教授が対象の調査だが、結果についてはそれ以外の女性のキャリア形成にも通じるといえるだろう。

(あなたの健康百科編集部)



http://www.m3.com/news/iryoishin/351455?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150825&dcf_doctor=true&mc.l=118670087
「無法な捜査許しがたい」、岐阜県警捜査に反論
「徳雲会」への医療法違反容疑での差し押さえ、取消決定

2015年8月25日(火)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 岐阜県警が医療法違反の疑いがあるとして社会福祉法人「徳雲会」の関連診療所などを8月6日に家宅捜索した件について、法人側は8月24日、岐阜市内で記者会見を開き、「このような無法な捜査が行われたのは全く許しがたい」と訴えた。岐阜地裁は21日に、容疑に関連のない資料まで違法に押収したとして、処方せんなど、約1000点のうち235点の 資料の差し押さえ取り消しを決定した。しかし、カルテなど診療に必要な資料の返還は認められなかったので、法人側は25日に最高裁に特別抗告した。法人側弁護士の郷原信郎氏は、不自然な捜査の背景には「同法人のクリニック開設を妨害しようという意図があるのでは」と指摘した。

被疑事実は医師2人の共謀による「管理者の兼職」

 裁判所の決定書によると被疑事実は、2013年12月27日から2014年1月21日の間、徳雲会が運営する「笠松クリニック」(岐阜県笠松町)の院長だった大矢隆晶氏が、同法人が運営する「心療内科オークヒルズクリニック」(岐阜県各務原市)で、同クリニックにも院長がいたものの、実質的な管理を行っていたとしている。両クリニックとも、当時も現在も、医師が複数名いる体制になっている。大矢氏とオークヒルズクニックの院長の医師が共謀したとして、2人を被疑者としている。

 医療法12条は、診療所を管理する医師は都道府県知事の許可なく、他の診療所の管理者を兼任できないと規定。違反に対する法定刑は最大でも罰金20万円(同法74条)と定めている。

 岐阜県警は2015年8月6-11日の間に、徳雲会が運営する両診療所や介護施設、関連する調剤薬局、理事長、院長や従業員の自宅などを捜索し、カルテや診療記録、処方せんなど1000点以上を押収。法人側は容疑と関係のない資料も押収されたとして、岐阜地裁に処分を取り消す準抗告を申し立てたところ、21日付けで処方せんなど235点の差し押さえ取り消しが決まった。法人側はカルテなどが返還されないことなどを不服として、25日に最高裁に特別抗告した。

「被疑者が医師である必要ない」

 会見を開いたのは郷原氏と大矢氏。郷原氏は「違反があったとしても兼任は実質的には1週間程度。これほど大規模な捜査をすべき事件ではないことは明らか」と主張し、捜査全体への疑いを示した。その上で、そもそも医療法12条は病院の開設者に対する規定であって、本来被疑者になるべきは管理者の医師ではなく、法人、および法人の理事長であるべきとし、「なぜ被疑者が医師になるのかまったく理解できない」と主張した。

 大矢氏は違反の有無について「理事の指示に従って届出などは行っていた。現場の医師としてやっていたので、分からないというのが事実」と話した。

ずさんな押収資料の取り扱い

郷原氏は資料押収のやり方についても「今時、考えられないほどずさん」と指摘した。両クリニックが使っているのは紙のカルテ。郷原氏によると、県警は数十通のカルテが入った段ボール箱を「1点」として扱うなど、中身を確認することなく根こそぎ押収したという。郷原氏は検察官としての経験を基に、カルテなど重要な個人情報が含まれた書類などでは、患者氏名を1人ずつ特定・記録した上で押収する必要があると指摘する。 押収した資料の管理もずさんな可能性があると指摘しており、診療に必要なカルテなどの一部は、診療所側の求めに応じて返却されたが、少なくとも1件で資料の欠損が確認されており、他にも抜けの可能性があるものが相当数見付かっているという。

 裁判所が差し押さえ取り消しを決定した235点の資料については、県警が段ボールに詰めて返還しようとしたが、「欠損がないかなど、きちんと整理してから返還してほしい」として受け取りを拒否している。

 両クリニックは押収後も診療を続けている。大矢氏は「丁寧に聞き取りをするなどして、今のところ問題は生じていないが、待ち時間が延びて患者には迷惑をかけている。老人ホームの入居者のカルテも持っていかれており、急変があっても適切な紹介状を書くことが難しい」と話す。

背景に診療所開設妨害の意図?

 郷原氏は、不自然な捜査の背景には、同法人が岐阜県各務原市内に9月に開設する内科クリニックへの妨害しようという意図があるのでは、と推測している。家宅捜索の数日後に、岐阜県健康福祉部医療整備課から法人理事長に対して、「おたくは、9月に各務原に内科診療所を開業する届出を出しているが、法人の理事らは本当に賛成しているのか」との電話があったという。理事長が賛成していると回答すると、県は「意思確認をするため」として連絡先名簿を要求した。郷原氏は「これらの経緯からすると、警察の捜索は、診療所開設を妨害することを目的に行われたとしか考えられない」と主張。

 郷原氏は本件について、県職員から、「県が県警に事件を持ち込んだ」と説明を受けたとも話す(m3.comの取材に対して、県医療整備課は「捜査中で、肯定も否定もできない」と回答)。各務原市の捜索に関しては、すぐ隣の施設にいた理事長が「捜索に立ち会いたい」と求めたが認められなかったにも関わらず、県警の要請で県の保健所職員が立ち会っていた。

 また、大矢氏は各務原市医師会に入会を申し込んだが、「クリニックを建築する前に医師会に話がなかったので、入会させられない」として、断られていると証言。「内科で医師会に入れないのは診療に支障を来す」と訴える。

 法人側は東海北陸厚生局による執拗な「監査」も行われているとも主張する。約3年前から、診療所の管理者の医師が呼び出され、長時間聴取されるということが続いているという。大矢氏は監査には「求められたものは、全て提出している」と話す。

 郷原氏は本件について記した自身のブログで「徳雲会の診療所を、そして、各務原市内での内科診療所の開業を潰そうとする岐阜県、岐阜県警、そして、厚労省の出先の東海北陸厚生局の動きの背後に何があるのか。岐阜県、県警、医師会の幹部がどのようにつながっているのか、或いは、県や国の政治家がそこに関わっているのかいないのか。(中略)19世紀の世の中に戻ったかのような錯覚を覚える今回の事件、到底、現代の法治国家において起きていることとは思えない」と記している。



http://www.m3.com/news/general/351437?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150825&dcf_doctor=true&mc.l=118670088
[医学研究] 日本の臨床医学の論文数は1万6,646件、世界5位 内閣府会合
2015年8月25日(火)配信 厚生政策情報センター

科学技術指標と科学研究のベンチマーキング2015(8/20)《内閣府》

 内閣府は8月20日、科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員との会合を開催し、「科学技術指標と科学研究のベンチマーキング2015」の報告を受けた(p1~p9参照)。「科学技術指標と科学研究のベンチマーキング」は科学技術・学術政策研究所が、日本と主要国の科学技術活動に関する状況をまとめたもの。論文数や注目度の高い論文数などから分野ごとに分析している。

 研究開発のアウトプットの量的指標である「論文数(2011年~2013年)」は、日本が全分野合わせて7万7,094件で世界第5位。世界の全論文の6.2%を占めた(p312~p313参照)。

 臨床医学分野では、論文数は世界5位の1万6,646件で、全世界の6.2%を占めている。1位はアメリカ8万5,371件(シェア31.9%)、2位はイギリス2万3,392件(同8.7%)、3位は中国2万941件(同7.8%)、4位はドイツ2万268件(同7.6%)(p326~p327参照)(p368~p369参照)。

 他方、質的指標の「被引用件数の多い論文数(Top10%補正論文数、2011年~2013年)」(p271参照)では、日本は全分野合わせて6,546件で第8位。全世界の5.2%の割合を占めている(p312~p313参照)。

 臨床医学分野では、日本は1,337件で第10位で、全世界の5.0%の割合。なお、1位はアメリカ1万3,253件(同49.5%)、2位はイギリス3,970件(同14.8%)、3位はドイツ3,072件(同11.5%)だった(p326~p327参照)(p368~p369参照)。



http://www.m3.com/news/iryoishin/351201?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150825&dcf_doctor=true&mc.l=118670091
シリーズ: 始動する“医療事故調”
“事故調”のパラダイムシフト、認識せよ!
鹿児島でシンポ、「医療事故調査制度まったなし」◆Vol.1

2015年8月24日(月)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 鹿児島県病院厚生年金基金は8月22日、厚生労働大臣政務官の橋本岳氏を基調講演の演者として招き、シンポジウム「医療事故調査制度まったなし―秒読みになった医療事故調査制度―」を鹿児島市内で開催した。


 橋本政務官は、「個々の医療事故について、遺族に説明し、納得してもらうことは必要」と断りつつ、この10月からスタートする医療事故調査制度において、各医療機関に院内調査を求めている理由は、「事故事例を集めて、医療界全体の安全を向上させていくことにある。この目的をしっかり踏まえた上で、適切に対応してもらえるとありがたい」と説明、制度の目的はあくまで医療安全向上にあることを強調した(シンポジウムのVol.2は、『“事故調”、「非識別化」に要注意』を参照)。

 冒頭にあいさつした、基金理事長の小田原良治氏は、「頭がパラダイムシフトした人の講演会を聞かないと意味がない」と、注意を促した。従来の医療事故調査では、「再発防止」「説明責任」「責任追及」が混然一体として扱われることが往々にしてあったが、今回の医療事故調査制度は、「再発防止」、つまり医療安全に特化している。これが「パラダイムシフト」の意味であり、橋本政務官の発言とも呼応する。

 シンポジウムは約3時間近くわたり開催された。橋本政務官も含め、医師や弁護士ら、計5人の演者が講演、4人が指定発言をし、その後、質疑応答が行われた。複数の演者が強調していたのは、医療事故調査制度を定めた法律、つまり医療法を正しく理解する必要性だ。さもなければ、「パラダイムシフト」の意味や内容を理解できないからだ。浜松医科大学医療法学教授の大磯義一郎氏は、「医療事故調査制度は、使い方によっては、“毒”にも“薬”にもなる難しい制度。医療安全の“薬”となる制度にする以前に、まずは“毒”にしないことが必要」と述べ、「正しく条文を読んで、正しく対応することが必要」と注意を促した。

 質疑応答で出た質問の一つが、第三者機関である医療事故調査・支援センターに対し、医療事故を報告しなかった場合の罰則規定の有無について。橋本政務官は、「医療法では、罰則などの規定はない」と説明。センターに報告するか否か、つまり医療事故調査をスタートさせるという「スイッチ」を押すか否かを最終的に判断するのは、医療機関の管理者であり、適切な判断が求められるとした。

 この点に関連して発言したのが、山形県・酒田市病院機構の日本海病院(山形県酒田市)の1年目の初期研修医、岡崎幸治氏。「研修においてミスをしたことはあるが、そのフォローもされたため、事故には至ってはいない。けれども、またいつミスするかは分からない。今回の制度を誤認して運用されると、とても怖い。仮にミスをしても、安心して研修できる体制を作ってもらいたい」とコメント。現状では、全ての医療機関の管理者が制度の目的を正しく理解しているとは言えず、医療安全ではなく、個人の責任追及に発展する懸念を払しょくできない研修医が多いことを示唆する発言だ。

 橋本政務官が挙げた「注意点」

 小田原氏は冒頭のあいさつで、10月からスタートする医療事故調査制度は、日本医療安全調査機構が実施してきた「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」とは目的が異なっていると強調。現在、全国各地でさまざまな団体による制度説明会が開催されているが、誤った説明がなされている場合があると問題視した。(1)制度の目的は、「原因究明と再発防止」ではなく、「再発防止」が目的、(2)医療事故調査・支援センターへの報告は「医療過誤の有無は問わない」、(3)調査や報告においては、事故に関わった医療者等の「非識別化」が求められる、(4)事故に関わる医療行為の医学的評価は制度上、求められていない――などの点を正しく理解することが必須であるとした。

 橋本政務官は、医療事故調査制度の全体像を、医療法や省令、通知を基に説明。(1)センターに報告する医療事故の範囲、(2)報告書作成の際の匿名化、非識別化、(3)院内調査における外部委員の活用、(4)再発防止策――について言及した。

 (1)について、橋本政務官は、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」かつ「管理者が予期しなかったもの」が報告対象になり、その際、「過誤の有無は、調査の結果、分かるかしもれないが、報告の際は問わない」と説明。

 (2)に関しては、省令で、「事故に係る医療従事者等の識別(他の情報との照合による識別も含む)ができないように加工」と求めている。「単に名前を伏せればいいわけではなく、伏せても、『この医師だ』と分かってしまえば、問題。他の情報と合わせても分からないようにしてもらいたい」と注意を促した。

 (3)の外部委員の活用については、医療法上では、「必要な支援を求める」と規定。ただし、厚労省の医療事故調査制度に関するQ&Aは、「外部からの委員を参画させ、公平、中立な調査に努める」と記載している。橋本政務官は、このQ&Aは、改正医療法案の審議で、参議院の附帯意見で、事故調査の「中立性、透明性、公正性」の確保が求められたことを受けたものであると説明。ただし、「Q&Aは法律ではない」と述べ、外部委員の参画は義務ではないとした。

 さらに(4)の再発防止策について、橋本政務官は、次のように解説した。「院内調査の結果、何らかの改善が必要であれば、それを実施してもらう。ただし、この制度においては、義務として求めているわけではない。一方、センターは収集した事故事例を整理、分析し、再発防止策を検討する。ただし、個々の事例に対し、(再発防止策について)返事を返すわけではない」。

 センター調査こそパラダイムシフトを

 「パラダイムシフト」の観点から、発言した一人が、長崎県の諫早医師会副会長を務める満岡渉氏。「医療安全のための事故調査と、紛争解決、つまり説明責任を果たしたり、責任追及のための事故調査は違う。両者を混同すると、医療安全だけでなく、医療者の人権も損なわれる」と強調した。

 満岡氏が提示した中で、フロアの関心を呼んだのが、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」に関する資料。これまで日本医療安全調査機構が実施してきた同事業は、対象となった事例について100点満点で評価する仕組みで、「合格」「ほぼ合格」「過失(改善・研修)」、「重過失(刑事・民事責任)」、「採点対象外」との採点基準を持ち、運営されてきたという。「個人の医療行為の評価を行うのが、モデル事業の本質であり、システムエラーを分析するものではない」(満岡氏)。同機構は、医療事故調査・支援センターに指定された。満岡氏は、新制度において同機構が事故調査を実施した場合、モデル事業と同様に医療行為の評価、ひいては責任追及につながる可能性を強く懸念した。

 長崎県医師会では、医療安全に資する制度として運営するため、新制度の支援団体として活動する「院内事故調査支援委員会」と、医賠責を担当する「医療紛争処理委員会」を別個に設置した。「どちらの組織に相談すべきかを迷った場合、まず紛争として処理すべき。その後に、医療安全のための対応をすればいい」(満岡氏)。

 センターと院内の調査結果、整合性が取れるのか?

 シンポジストの講演の後、質疑応答が行われたが、質問の一つは、「医療事故調査・支援センターの報告書が、医療機関が遺族に説明した内容と整合性が取れない場合にどうするのか。整合性が取れない場合に、訴訟に報告書を利用することができる」との懸念だ。

 橋本政務官は、センター調査について、(1)各医療機関が院内調査を実施していれば、センターはそれを待つ、(2)各医療機関の院内調査の報告書が出ていれば、それを確認する形で、センター調査を行う――という前提を説明。「医療機関がきちんとした調査を行っていれば、センターはそのままそれを認める形になるのだろう」と述べるとともに、センターが確認をして、「間違っていた」となれば、センターと医療機関の調査結果は異なるとした。その場合には、医療機関が相応の対応が求められると見られる。

 弁護士の井上清成氏は、「ほとんどの場合、(センター調査は)院内調査プラスアルファという形になるだろう。ただ、時には院内調査の結果が覆される場合もあり得る」と指摘。院内調査とセンター調査については、「法律的には優劣はない」と説明、センターが問題のある調査結果をまとめた場合には、センターや調査を行った委員を訴えることも選択肢としてあるとした。

 センターへの未報告、罰則規定なし

 医療事故調査・支援センターへの報告について、報告しなかった場合の罰則規定についても質問が出た。

 橋本政務官は、医療法では、センターへの報告という「スイッチ」を押すか否かの最終的な判断は、管理者であると定められているものの、「罰則規定はない」と説明。質問者が「家族が、(事故について)了解、納得したのに、スイッチを押すと、紛争の懸念が高まるのではないか」との質問には、橋本政務官は、「今回の制度において、家族の了解の有無は一切関係ない」と答えた。

 医師・弁護士の田邉昇氏は、「医療事故だったのに、報告しなかった」と遺族から訴えられる可能性について、東京都立広尾病院事件の高裁判決を引用し、以下のようの説明。「医師法21条の届出は、公法上の義務であり、遺族に対する義務ではない。(今回の医療事故調査制度の報告も)公のシステムとして規定しているので、遺族側が『事故調に報告しなかったから、心が傷ついた』と訴えても、遺族への賠償対象にはならない」。

 大磯氏は、センターへの報告対象は、「医療起因性」と「予期可能性」で判断するので、管理者の裁量の幅があるとした。その上で、予期でき、報告しなかった場合にはその旨を記録に残すことは大事であるとしたほか、報告しなかった場合でも、「院内調査をしてはいけない」という規定はないとし、医療事故調査制度とは別に調査を行うのは自由であるとした。「この制度に乗るか否かと、事故調査を実施するか否かは別の議論(大磯氏)。

 そのほか、厚生労働省が2000年に当時の国立病院等に対して出した「リスクマネージメントマニュアル作成指針」についての質問も出た。同指針は、「医療過誤によって死亡または傷害が発生した場合、またはその疑いがある場合には、施設長は、速やかに所轄警察署に届出を行う」と定めており、この指針に基づいた対応をしている国立病院機構の病院がいまだあるという。橋本政務官は、国立病院から法人化し、国立病院機構に移行したのに伴い、同指針は失効したと説明(『「リスクマネージメントマニュアル作成指針」失効』を参照)。「今回の制度に合わせて、各法人、各病院でルールの見直しを行うべきだろう」(橋本政務官)。



https://www.m3.com/news/iryoishin/351202?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150825&dcf_doctor=true&mc.l=118670093
シリーズ: 始動する“医療事故調”
“事故調”、「非識別化」に要注意
鹿児島でシンポ、「医療事故調査制度まったなし」◆Vol.2

2015年8月24日(月)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 8月22日の鹿児島県病院厚生年金基金のシンポジウム「医療事故調査制度まったなし―秒読みになった医療事故調査制度―」で、「非識別化」について掘り下げて講演したのは、弁護士の井上清成氏。医療事故調査・支援センターへの報告、遺族への説明、センターへの事故調査に関する報告書の提出など、さまざまな場面で、「非識別化」が求められると注意を促した(シンポジウムのVol.1は、『“事故調”のパラダイムシフト、認識せよ!』を参照)。

 井上氏は「医療者の名前を墨塗りしても識別できるかどうかは、相手が持っている情報との兼ね合いで決まる。この相対性こそが非識別化の本質」であると説明。例えば、遺族は、医療事故当時やその前後の診療状況などについてセンターよりも情報を持っている上、カルテなどの開示請求も可能なため、遺族への説明時などにおける「非識別化」の程度は上がるとした。

 医療事故調査制度では、センターが調査を実施した場合、医療機関と遺族にその調査結果を報告する。井上氏は「法律と省令のいずれも、両者に同じ報告をすることは想定していない」と述べ、「非識別化」の点で両者への報告内容は異なるとした。さらに、医療事故に関する記者会見やホームページの掲載について、「全国民に知られることになる。その誰かが保有している情報とマッチングさせても、医療者を識別できないようにすることが必要」と述べ、「非識別化」のハードルは高いとし、「今後の医療事故において、本当に記者会見はできるのか」と疑問を呈した。

 なお、井上氏は、8月19日に開かれた茨城県医師会の「医療事故調査制度に関する説明会」に出席した際、厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長の大坪寛子氏に、例えば「今回、問題を起こした看護師は誰か、と聞かれた場合、非識別化を念頭に『お教えできない』と答えていいか」と質問。大坪氏は「名前は教えないということでいい」と回答したという。

 医療者の人権侵害にも要注意

 非識別化から派生して、事故調査における人権侵害と利益相反の観点から講演したのは、浜松医科大学医療法学教授の大磯義一郎氏。「将来の医療安全のための医療事故調査制度であり、個別事案のための紛争解決ではない。目的外として使用すると、法令違反、ひいては人権侵害になる」と警鐘を鳴らした。

 「事故調査は、使い方によっては“毒”になるか、“薬”になるかが難しい制度。医療安全のための“薬”となるための制度にする以前に、まずは“毒”にしないことが必要」。こう述べる大磯氏が、“毒”になる危険性として挙げたのが、憲法38条に定める「自己負罪拒否特権」を無視した事故調査だ。

 「真実解明の名の下に行われる自白の強要・拷問は許されない」とし、東京女子医科大学病院のプロポフォール投与事故(『「死因は禁忌薬の使用」、女子医大第三者委』を参照)など、最近の医療事故調査では、この原理が守られていない例が見受けられると問題視。群馬大学医学部附属病院の腹腔鏡事故、国立国際医療研究センター病院のウログラフイン投与事故などでも、医療者の人権が守られない事故調査が実施されたと、大磯氏は問題視する(『群大執刀医「『過失あり』に納得できず」』、『造影剤の誤投与「初歩的、重い過失」、禁錮1年』などを参照)。また事故調査に当たっては、調査を行う医療機関側と、事故当事者の医療者の間には利益相反が生じる点にも、十分な注意が必要だとした。

 「センターへの報告が目的にあらず」

 「報告体制よりも、重要なのは院内体制の整備」。こう警鐘を鳴らしたのは、「現場の医療を守る会代表」世話人で、坂根Mクリニック(茨城県つくば市)院長の坂根みち子氏。現在、日本医療機能評価機構が実施している「医療事故情報収集等事業」とは異なり、この10月からの医療事故調査制度では、無床診療所も、該当する医療事故があれば、医療事故調査・支援センターへの報告が求められるからだ。「報告することが目的化してはいけない」と指摘し、(1)全死亡のチェック体制の構築、(2)院内の医療安全管理指針と公表基準の見直し、(3)ピアレビュー、CPC、M&M、(4)事故が起きた時の初動体制の構築、(5)グリーフケア、(6)過重労働対策――などに関する院内での準備が求められるとした。そのほか、新制度の報告対象は、「医療事故情報収集等事業」に包含されるため、「屋上屋を重ねてはいけない」と述べ、重複する二つの制度の在り方も疑問視した。

 社会医療法人慈生会(東京都足立区)理事長の伊藤雅史氏も、管理者の立場から、制度開始まで1カ月強と迫っていることから、院内体制を整える重要性を強調。伊藤氏の病院では、全ての院内死亡例について、医療安全管理室でカルテ監査を行う体制になっている。必要に応じて主治医に話を聞き、詳しい調査が必要になった場合に事故調査委員会を開催するという。

 医療界に「二つの誤解」

 「二つの誤解」という観点から講演したのは、医師・弁護士の田邉昇氏。「二つの誤解」とは、(1)医師法21条に基づく異状死体の届出は、医療への警察介入のきっかけになるので、警察に届出をしなくて済む制度への期待、(2)医療事故は、きちんと調査して遺族に説明すれば、刑事、民事裁判に発展しないはずであり、そのための制度が必要――というもの。

 田邉氏は、東京都立広尾病院事件を例に挙げ、「二つの誤解」の理由を説明した。同事件の2004年の最高裁判決は、医師法21条について「外表異状説」を採用し、刑集(最高裁判所刑事判例集)に掲載されていることから、この判断は揺らぐことはないとした。「医療事故のうち、警察に届け出る義務があるものはほとんどない。また今回の制度に報告して、医師法21条の義務は免除されない」(田邉氏)。

 GL準拠の医療しかできなくなる懸念?

 医師・弁護士の山崎祥光氏は、具体例を挙げつつ、「医療に起因する死亡」の要件を説明。判断に迷うことも想定されるため、「医療事故調査・支援センターに報告する対象か否かを院内で相談する体制、仕組みを作っておくことが必要ではないか」とコメント。

 いつき会ハートクリニック(東京都葛飾区)院長の佐藤一樹氏は、厚生労働科学研究費補助金の「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」(研究代表者:西澤寛俊氏・全日本病院協会会長)の班員を務めた立場から、(1)WHOドラフトガイドラインこそ正規軍、(2)医師法21条「外表異状説」こそ正論、(3)モデル事業の無効性/有害性、(4)全国標準化はダメ!現場感覚と乖離、(5)院内報告書は遺族に交付しない、(6)RCA(根本原因分析)の危険性――を指摘し続けていると説明(『“事故調”西澤班、「自律的な院内調査が基本」』などを参照)。

 医療法人福寿会(岡山県倉敷市)理事長の秋山正史氏は、産科医療補償制度について言及した。同制度は、重度の脳性麻痺児に対する補償が目的。しかし、それだけにとどまらず分娩時の医師らの行為について、「優れている」から「劣っている」まで15段階で評価していることから、「分娩機関の反論する機会もないなど、医師にとって不利な私的裁判制度」などの批判があることを紹介。2009年に産科医療補償制度がスタートしてから、「ガイドラインに沿った医療しかできなくなった」との声がある一方、若手医師などの間では、「ガイドラインに沿っていれば、訴えられないから、楽」との安易な考えもあるという。なお、医療事故調査制度では、医療事故についての医学的評価は除外されている。



http://www.m3.com/news/iryoishin/351438?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150825&dcf_doctor=true&mc.l=118670095
20年後の保健医療政策、国民的議論を
保険医の定数配置や総合診療の推進の声も

2015年8月25日(火)配信 成相通子(m3.com編集部)

 20年後を見据えた保健医療政策のビジョンについて、塩崎恭久厚生労働大臣の私的懇談会「保健医療2035策定懇談会」(座長:渋谷健司東京大学大学院教授)が6月に策定した提言書を周知し、国民的な議論を深めるために、厚労省は8月24日、シンポジウムを開いた。策定懇談会のメンバーやアドバイザーの識者が、保険医の定数設定や総合診療医の推進などについてディスカッションした。

 冒頭のあいさつで塩崎大臣は、厚労省内に提言書の実現に向けた推進本部を設置したことを紹介。「実行するために、今日何をするのか大事」として、9月初めまでに省内の関係部局が提言書の120項目について、実現可能性を整理すると述べ、「必ず実行したい」と意気込みを語った(『「保健医療2035推進本部」を設置、厚労省』を参照)。

 策定懇談会の座長を務めた渋谷氏も登壇し、若手の識者や厚労省職員をメンバーにした策定懇談会で、充実した議論を行ったことをアピール。提言の実現に向けた動きについて「プロセスが始まったのはうれしい」とした上で、「提言書にはあえて議論を喚起する提案も盛り込んだ。国民的な議論の端緒にしてほしい」と期待を込めた。

  提言書では、高価値の保健医療サービスを低コストで提供する「リーンヘルスケア」、個人が必要なサービスを主体的に選択できる「ライフデザイン」、日本の優れた保険医療制度をモデルに世界をけん引する「グローバルヘルスリーダー」の3つのビジョンと、これらを実現するための具体的な施策120項目を挙げている(詳細は「保健医療2035」のホームページを参照)。

 パネルディスカッションでは、策定懇談会メンバーの日本医療政策機構理事の小野崎耕平氏がファシリテーターを務め、渋谷氏のほか、東海大学教養学部人間科学環境学科社会環境博士課程教授の堀真奈美氏、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授の宮田裕章氏、厚労省保険局総務課企画官の榊原毅氏、アドバイザーの地域医療機能推進機構理事長の尾身茂氏、内閣官房社会保障改革担当室長の宮島俊彦氏の6人のパネリストが参加。ツイッターで会場からの意見もリアルタイムで壇上のスクリーンに表示された。

地域間格差をどう乗り越えるか

  意見が相次いだのは、医師の地域や診療科の偏在の問題。地域ごとに人口の高齢化の速度や資源が異なり、地域医療に関して中央集権的な決定をするのは困難だとの見方に対し、尾身氏は「東北地方などでは、県を超えた医師の偏在の問題など、県内の資源だけでどうにかできる限界を超えている。地域連携を支えるオールジャパンでの意思決定が必要だ」と指摘。「この県のこの診療科の医師はこれぐらいでいいという議論は、これまではタブーだったが、プロフェショナルを尊重しつつ、地域のニーズに沿った配置をする意思決定が求められる」と主張した。

 これに対して渋谷氏は、地域の医療ニーズに合わせた病院機能を整備する地域医療構想に触れ、「成功したらいいと思うが、本当に成功するのか疑問。在宅医療もできれば理想的だが、経済的なコストが高いとの指摘もある。病床機能を再編して、在宅に任せれば全て解決するとは思えない。民間で人々が求めるサービスを提供することも重要だ」と意見を述べた。

 また、提言書の「医師の偏在が続く地域での保険医の配置、定数の設定」と「自由開業の標榜の見直し」の項目に触れ、「これは必ずしも強制的にやることではない」としたのは、宮島氏。「地域医療は医師単独でやるのではなく、地域ケアに携わる人材や地域の人がいて初めてできる。また、医師1人でやらなくてもいい。主治医と副主治医で地域を診るという形もあるだろう。強制的ではなく、ネットワークとしてだんだん形成されていく過程をたどる。強制してもできないのでは」と注文を付けた。

 小野崎氏は、策定懇談会の中で一般から意見を募った際に、「国である程度、医師や専門家の配置について、考えた方がいいのではないか」という意見が多かったことを紹介。「医学部教育に多額の国費をかけて、国を挙げて育てた医師が、地域や専門に(定数)配置されてもいいと思う人が割といることが分かった」と説明し、保険組合が配置定数を決めるドイツの例を挙げ、今後の議論が必要だとした。
  
総合診療医はなぜ大切なのか

 尾身氏は、日本ではこれまで縦型の専門医が中心になってきたが、専門医を増やすだけでなく、コモン・ディジーズを診るファーストコンタクトの医師の質を高め、増やすことが必要だと指摘。総合診療医が19番目の専門医になったことに触れ、「今回初めてポジションが明確に定義された。これまでは総合診療医を選んだ人は専門家になれないと思われていた。今後はキャリアディベロップメントが重要になる」と述べた。

 榊原氏は、個人的な意見と断った上で、「自己負担の議論はこれからだが、良かれと思って在宅は厚めに診療報酬が付くようにしていたが、患者はより多く払わないといけなくなる。提供者には厚く、受診者には負担を減らすようなインセンティブも議論していいのではないか」と提案した。

 宮田氏は、総合診療医は専門医よりも、医学知識の常時アップデートが難しいと指摘し、「IT化や専門医チームとの相談で支援できる」と指摘。渋谷氏は、「生活習慣病の指導や予防などの公衆衛生の視点も必要になる。重要なのは、患者にとっての価値をどう高めるか。マネジメント能力やコミュニケーション能力など基本的なコンピテンシーを持った人材の育成が必要だ」と話した。


  1. 2015/08/26(水) 07:27:39|
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