Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月15日 

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150816/k10010191731000.html
産科医不足で医療機関再編検討へ
8月16日 4時38分 NHK

産科の医師が主に都市部に集中し地域によっては高齢出産などリスクの高いお産を扱う医療機関が不足していることから、厚生労働省は近く専門家による会議を立ち上げ、医療機関を再編するなど対策を検討することになりました。
厚生労働省によりますと、産科の医師が主に都市部に集中し地方では産科医の不足が深刻となっています。人口10万人当たりの産科の医師の数は去年3月の時点で、最も多い東京と沖縄で11.1人だったのに対し、最も少ない茨城では4.8人、福島では5人とその差は2倍以上開いています。
産科の医師が少ない地域では高齢出産などリスクの高いお産を扱う医療機関が不足していることから、厚生労働省は近く専門家による会議を立ち上げ、対策を検討することになりました。会議では、生まれる子どもの数の推計などから地域ごとに必要な医療体制を検討したうえで、高齢出産などリスクの高いお産にも対応できるよう産科の医師を特定の医療機関に集めるなど地域の医療機関の再編を目指すとしています。このほか、リスクの低いお産は助産師に担ってもらえるよう医師と助産師の連携についても検討を進める方針です。
厚生労働省は「地域で安心して出産ができるよう自治体や医療関係者に協力を求めて医療体制を整備していきたい」と話しています。



http://apital.asahi.com/article/news/2015081500007.html
地域医療教育協定を継続 三重県市町村振興協会と三重大
2015年8月15日 朝日新聞

 三重県市町村振興協会と三重大は、「地域医療教育に関する協定」を今年度から4年間、新たに締結した。2009年度から6年間続けてきた協定を引き継ぐ。12日の調印式で三重大の緒方正人・医学部長は「大学、地域、住民が『三位一体』となって地域医療の定着を図りたい」と述べた。

 新しい協定を結んだことで、協会は引き続き毎年1億円の交付金を三重大に出す。三重大はこれまで、交付金を活用して医学部生の入学定員を拡大したり、学内に10人の教員からなる「地域医療教育部門」を設置して、そのうち3人を紀南病院(御浜町)や尾鷲総合病院(尾鷲市)などに常駐させたりしてきた。今後はさらに、看護学生の地域定着に向けて看護教育も充実させるという。

 協会理事長の河上敢二・熊野市長は「伊賀、名張や県南部などは医師不足が続いている。学生のみなさんが地域に残ってもらい、各市町の医師不足解消につなげて欲しい」と話した。

 緒方医学部長によると、県内の医師数は増えているが、地域によって不足するなど偏りがあるという。また、専門医研修の制度が2年後に変更され、地域医療に影響が出る可能性もあるという。

 緒方医学部長は「県内での初期研修医の数は大幅に増えてきた。医師不足地域を研修医の教育の場としてさらに活用したい」と述べた。

(朝日新聞 2015年8月15日掲載)



http://www.m3.com/news/iryoishin/348729
地域に出ることで学生の視野が広がる◆筑波大学Vol.4
前野教授、鈴木准教授インタビュー

2015年8月16日(日)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 筑波大学地域医療教育学の前野哲博教授と医学教育企画評価室の鈴木英雄准教授に筑波大の医学教育の特徴をたずねた。

――地域医療のために大学教育はなにをすべきでしょうか。

前野教授 医療の原点は、地域にあることはいうまでもない。医療者には、医学的な治療だけではなく、患者さんの背景にある家庭や社会的状況に配慮する視点が必要。高齢社会を迎え、ますます多職種と連携しながら、それぞれの地域で活用可能な資源を最大限に活用していく姿勢も求められる。実際の現場で学ぶ実践的かつ体系的な教育プログラムの導入が欠かせない。私たちは、大学と地域をつなぎ、「地域で働く医療者は地域で育てる」環境の実現に向けて、中心的な役割を担っていきたいと考えている。

――筑波大の地域実習の特徴はどのようなものでしょうか。
前野教授 筑波大学の教員を市中病院に派遣しており、そこに学生を送るのが特徴。病院に派遣される教員の人件費と教育費は公的な資金や寄附金などの外部資金を充てている。教員は、大学が全国公募をして人事選考を行い、筑波大の教員にふさわしい医師を病院に派遣している。我々も、教員がいるので安心して学生の参加型実習をお願いできる。病院にとっても安定して医師が確保できるだけでなく、学生や若い医師が行くことで診療が活性化されるメリットがある。

 病院には、遠隔テレビ会議システムや電子ジャーナル、カンファレンスの設備など、大学の教育施設として成り立つための整備をお願いしている。教員の派遣は、教育環境の充実とセットでないと、ただの人件費の付け替えになってしまう。

――地域での「診療実習」に力を入れるのはなぜでしょうか。

前野教授 特定機能病院である大学病院では、いわゆるcommon diseaseや慢性疾患の管理はあまり経験できない。さらに、病気にならないための予防に関するアプローチや、病気を抱えて地域で生活する患者や家族を支援する介護サービス等との連携については、実際に人々が生活している地域でないと十分に学べない。

――60人以上が教員として病医院に派遣されています。

鈴木准教授 大学外にいても、教員には教育の義務を負っており、具体的にはチューターとして割り振っている。試験問題を作ることもある。FD(Faculty Development:教員の能力開発)講習会を開催しており、多くの地域医療教育センター・ステーションの先生方にも参加していただいている。大学内の教員にとっても、教員数が増えることで教育の負担の軽減が図られている。

――筑波大学病院は初期臨床研修のマッチングでも人気です。

前野教授 茨城という“片田舎”が全国3位のマッチ者を集めることができたのは、地域医療教育センター・ステーションの存在も大きな理由の一つであると考えている。本院の研修プログラムでは、センター・ステーションでの研修も多く組み込まれており、選択する研修医も多い。実際、研修修了後のアンケートでは、研修のよかった点として「院外研修を多く受けられる」という点が高く評価されていた。
――文科省の「グローバルな医学教育認証に対応した診療参加型臨床実習の充実(通称:GP)」にも採択されています。

鈴木准教授 採択された「高い実践力を育む大学―地域循環型臨床実習」では、臨床能力の向上、本格的な診療参加、教育能力の開発、地域医療実習の充実という4つの柱を立てている。多くはGP採択以前からやってきたことだが、採択されたことでテコ入れになっている。新たに導入した遠隔テレビ会議システムでは、県内どこでも一貫性のある教育環境を整備するが目的。教育だけでなく、病院間で難しい症例を相談するなど、臨床の現場でも役立っている。これらの取り組みは、昨年実施されたGPの中間評価において、本学はこのGPの採択大学の中でただ一つ、最高評価のS評価をいただいている。

――学生のうちから、地域で臨床実習を行う意義はどのようなものでしょうか。

鈴木准教授 僕らのころは、大学病院での初期研修が当たり前。地域に行くのは研修が終わってからだった。大学病院で「病気」を見ていたが、市中病院に出ると、患者、家族、地域を見てさらに社会的な保険制度に目が行く。医師になって10年くらいしてから分かることだった。学生のうちから地域に出ることで、視野が広がることは間違いない。昔は消去法で大学に残る学生もいたが、今の学生は、「こういう医者になりたい」と決めて進路を選んでいるようだ。



http://www.tonichi.net/news/index.php?id=46795
患者情報ネットで提供
豊川市民病院が来年4月運用予定/地域医療機関との連携強化

2015/08/16 東日新聞

 豊川市民病院は、本年度予算に盛り込まれている「地域医療連携システム」の概要をこのほど、発表した。同システムは地域の医療機関がインターネット上で同院の患者情報を閲覧できる仕組みで、2016年4月1日の運用開始に向けて準備を進めている。

 同院と地域医療機関との連携を強めることを目的とし、地域医療連携ネットワークサービス「ID―Link」(NEC製)のシステムを使用。同院の患者の電子カルテの中から、病名や処方、放射線画像、退院時記録などについて、連携病院の医師に限り参照できる仕組み。

 システムによって、同院を受診または入院している患者が連携病院に転院する場合など緊密な情報交換が期待でき、閲覧側の病院は事前に患者情報が得られ、より的確かつ効率的な治療ができる。個人情報の保護のため、連携病院では医師1人ひとりにIDとパスワードを付与する。

 同病院の担当者は「今年度中はまず、市内で入院施設のある病院から連携を進め、徐々に広めていきたい」と説明した。

 同システム導入の事業費は約2860万円で、すでに予算は計上済み。県が補助金を認めた場合、約1290万円は県が負担する。



http://www.sankeibiz.jp/econome/news/150816/ecb1508160701001-n1.htm
かかりつけ医の機能強化 慢性疾患患者に24時間対応
2015.8.16 07:01  産経ビズ

 日頃は外来にかかっている患者が、いざというときに発するSOSには、誰が応えるのか-。糖尿病や高血圧症など、複数の慢性疾患を抱える患者を対象に、厚生労働省は昨年度、治療費の新しい算定方法として「地域包括診療料」を創設した。中小病院や診療所が「かかりつけ機能」を発揮し、健康管理や訪問に対応することが期待される。健やかなときも、病めるときも、死の間際も、継続して診てくれる医師は増えるだろうか。(佐藤好美)

■医療も介護も

 東京都世田谷区に住む坂口康さん(67)は13年前に脳梗塞を発症した。今も左側にまひがあり、介護保険の要介護度は1。だが、つえを使って外出もするし、旅行にも行く。医療も介護も、住まいから車で数分の「在宅総合ケアセンター成城」で受ける。

 週に1度は同センターの通所リハビリに通う。介護保険のサービスで、理学療法士から個別リハビリを受け、自主トレに励む。80分のプログラムを終えると汗だくだが、「仲間とおしゃべりをして、リハビリをするのが楽しい。リハビリは、残った機能で暮らしていくためのものだと思う」と前向きだ。

 坂口さんのかかりつけ医は同センター長の井上智貴医師。リハビリを行うのと同じフロアに診察室がある。受診はたいてい月1回だが、いざというときには24時間、電話対応もしてもらえる。費用は、医療費が3割負担の人で月に4510円の定額。薬代や急な往診費などは別だが、風邪をひいて受診回数が増えても費用は変わらない。坂口さんが「地域包括診療料」の対象になっているからだ。

 地域包括診療料は昨年度、厚労省が新設した。算定できる医療機関も対象患者も限られている。診療所なら「常勤医が3人以上」で、看取(みと)りも含む在宅医療を行うことなどが条件。患者は高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾患のうち、2疾患以上を持つ人だ。

 坂口さんは、高血圧症と脂質異常症があてはまる。いずれも、脳梗塞の危険因子だ。今年5月には、目まいと嘔吐(おうと)で起き上がれなくなり、妻が同センターに電話をした。井上医師は再発の危険性を考えて、急ぎ訪問。患者の治療履歴などを記した診療情報提供書を書いて大学病院に紹介した。

 坂口さんは「脳梗塞は、いつ再発するか分からない。まひもあるから転ぶかもしれない。いつでも対応してもらえて、何回通っても同じ額なのは安心感がある」と、信頼を寄せる。

■全人的な医療

 地域包括診療料は「全人的な医療」が旗印。かかりつけ医には、健診の受診勧奨などの健康管理も任される。服薬管理も重要な仕事で、患者が他の医療機関からもらった薬があれば、それもカルテに記載して一元管理する。

 井上医師は「専門外でも、患者さんのすべての診療科の情報を把握し、かかりつけ機能を高めることが大切。必要に応じて専門医療機関と連携しながら、主治医としてやっていく。その哲学が大事だと思っている」と話す。

 慢性疾患の患者は月に1回程度の受診が一般的で、月額4510円はむしろ割高。算定には患者の同意がいる。井上医師は「総合的に診て、情報を一元化できる。診療情報提供書もしっかり書ける。患者さんにすれば具合が悪いときにかかっても、検査をしても、紹介状をもらっても、新たな費用はかからない。一種の保険のように感じていただいていると思う」とする。

■「主治医意見書」

 この費用を算定する要件には、介護の視点も盛り込まれた。患者が介護認定を受けるときの「主治医意見書」の作成は最低条件。同センターのように介護保険でリハビリを提供するのも、必須ではないが要件の1つだ。

 井上医師は、同センターの特徴を「1つの『箱』に、在宅を支える医療と介護のさまざまな機能が詰まっていること」と言う。外来や訪問診療のほか、クリニックには18床の病床もある。家で暮らす患者の身体機能が急に落ちれば、医療保険で患者を入所させ、短期集中のリハビリを提供する。家族が介護に疲れていれば、要介護度の重い高齢者を介護保険で一時的に入所させて、家族に休息を取らせる。地域包括診療料を導入する前も後も、対応はさほど変わらないという。

■近所の診療所への期待は? 介護にも目配りしたサービス

 厚生労働省が、日本医師会の調査を基に作成した資料によると、国民が近所の診療所に期待するのは「夜間や休日を含めた時間外の医療への対応(51.8%)」がトップ。「あなたや家族の健康について気軽に相談にのる(44.6%)」が続く(複数回答)。

 身近な診療所を「いざというとき」も「健康なとき」も頼りにする様子が浮かぶ。実際、がん検診の受診率は、かかりつけの医師が「いる人」と「いない人」では、「いる人」が高く、かかりつけ医が予防にも配慮していることが分かる。

 だが、医師1人の診療所に時間外対応をどこまで求めるかは難しい。「地域包括診療料」とともに昨年度、医師1人の診療所には「地域包括診療加算」が新設された。算定する医療機関では、対象患者は服薬管理や健康管理、在宅医療を受けられる。24時間対応は限定的な場合もある。1回の診療に60円(3割負担の場合)が上乗せされる。

 どちらの算定でも、かかりつけ医には、介護への目配りがいる。介護保険の主治医意見書の作成が必須の要件になったのは、医療職の介護への理解が進んでいないからだ。

 主治医意見書は介護認定をするための必須の書類。だが、介護認定をする自治体が最も苦労するのは「主治医意見書の回収にあたっての督促」だとの調査結果もある。

 厚労省は「介護も医療も両方分かった上で、患者さんや家族にどういったサービスを提供するのが一番適切かということをちゃんと判断していただくのも、主治医の機能」とする。

 医療機関での一時預かりなどが増えると、家での暮らしも続けやすい。日本に多い中小病院や有床診療所が、時代にあったかかりつけ機能を果たしていくか注目される。



http://apital.asahi.com/article/2025/2015081500006.html?iref=comtop_btm
日本創成会議「地方移住」提言 神奈川県の医療・介護の将来は?
2015年8月15日

 民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が6月に発表した首都圏の高齢化問題への提言=キーワード=は、地方移住を盛りこみ大きな話題を呼んだ。移住先を考える「指標」として、全国の医療・介護の余力を調べる作業を担った高橋泰・国際医療福祉大大学院教授に神奈川の将来像や移住への考えを聞いた。

高橋泰・国際医療福祉大大学院教授=東京都港区

 ■高橋泰・国際医療福祉大大学院教授に聞く

 ――発表の狙いは何ですか。

 利用者目線に近い形で、自分が住む地域は将来、医療や介護が大丈夫かどうかを評価出来る指標を作りたかった。自分にとってどこが最適な土地か、移住を意識して、数値化して出した最初の例だと思います。このものさしが良い悪いの議論はありますが、ないと議論が進まない。

 ――神奈川をどう評価しますか。

 病院と診療所の医師数の合計では、人口10万に対し、全国平均は254人で、神奈川は239人。埼玉(179人)や千葉(197人)に比べ、医者は多い。ただ、高齢者の増え方が激しい。現在は介護は余力があるが、今後の高齢者の増え方は尋常じゃない。横浜北部は良い病院も多いし、川崎南部は昔から病院がある。今は充実しているが、人口が多いだけに老いていくと大変なことになる。

 今まで起きたことがないことが東京周辺で起きるわけで、その余波は考えている以上にきついんじゃないかと。

 ――危機回避策の一つに移住を挙げましたが、希望する人はいますか。

 これまで私から人口や医療に関するデータの提供を受け、分析した複数のメディアのスタッフが「退職後、地元に戻る」と言い始めました。今年の5月に私のおばが、相模原の家を売却して金沢に移住しました。自らデータを解析したり、東京圏の医療介護の状況を勉強したりすると、東京圏のリスクの大きさや医療介護の地方の格差が分かり、自発的に移住を考える人が少なくないようです。

 ――縁もない場所に住めないとの批判もあります。黒岩祐治知事は「違和感がある」と反論しています。

 強制移住じゃなく、移った方がより良い人生を送れると考える人が移ればよいということです。横浜の価値観が好きで、先祖代々という人はそれでいいわけです。

 黒岩知事と私の差は、神奈川の後期高齢者の増え方をどのように捉えられているかの差だと思います。埼玉や千葉に比べると、神奈川の現状はまだ恵まれています。だから、現状を見ている知事がそういうことを言うのは分かりますが、データを分析をすると、そう安泰じゃないと思います。

 ――今後、行政に必要な取り組みは何でしょうか。

 今回の発表は、魅力的な街を作り、人が寄って来るところは生き残るが、住みづらい地域は生き残りが難しくなるというメッセージなんです。

 石川県に川北町という町があります。そこは(昨年の日本創成会議の発表で)2040年の若年女性人口増加率が日本一です。子育てしやすく、あそこに行ったらいいと評判です。川北みたいな町になれば生き残るんです。

 ここはいい街なので来て下さいと、早く手をあげて、整備したところはたぶん生き残ります。だけど、ネガティブなところは沈むんじゃないでしょうか。

 (聞き手・佐藤陽、岩尾真宏)

 ■介護ベッド、地域で差 県外からの流入で不足も

 緊急性や重症度が高い患者に対応できる能力を示す「急性期医療レベル」は、川崎南部と湘南西部が、全国平均レベルの「レベル5」だったが、残りの9医療圏は、平均より少ない「レベル4」だった。

 2040年に介護ベッドの余裕がどの程度あるかを示す介護ベッド準備レベルをみると、11医療圏でレベル2~6と開きが出た。県西が最も余裕があり、横浜西部、横須賀・三浦が続く。一方、横浜南部や湘南東部、県央は最も不足していた。横浜市内の3医療圏では、西部は比較的余裕があるが、北部と南部は、かなり不足する予測だ。

 2015年と比べた25年の介護入所施設の収容能力(ベッド数)は、横浜西部、川崎北部、県西を除く8医療圏で、1410~7301床マイナスになる予測。介護ベッド準備レベルなどで、比較的余裕のある数字が出ていても、今後、介護施設が圧倒的に足りない東京都などから高齢者が流入してくる可能性が高い。


 ■病床数1万床増、必要 在宅患者、最大で倍に 県推計

 団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、県は医療需要や目指すべき医療提供体制を記す「地域医療構想」の策定を始めた。まず25年の必要病床数や在宅医療患者数を推計し公表した。これらのデータなどを基に、県はどんな施策が必要かなどの議論を進める。

 7月30日、横浜市内で開かれた県保健医療計画推進会議で、地域医療構想に関する議論が始まった。県医療課から、初めて25年の必要病床数と在宅医療患者数が示された。レセプト(診療報酬明細書)のデータや将来の人口推計などを厚生労働省の計算式にあてはめ、県が推計した。

 25年の必要病床数は、14年に比べ約1万900床多い約7万2200床。(1)高度急性期(ICU=集中治療室=など)(2)急性期(手術直後など)(3)回復期(リハビリテーション)(4)慢性期(長期療養)といった機能別にみると、高度急性期や急性期を減らし、回復期を約1万6500床増やす必要があるとの結果が出た=グラフ。中でも横浜市は約6900床増やさないといけない。土地や人材を確保できるかが課題になる。
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 今後焦点になるのは、神奈川と周辺の都県との患者の流出入をどう考えるかだ。例えば、横浜市から都内の病院に通うケースは少なくないが、できるだけ県内で完結するようにするか。それによって必要な病床数も変わってくるからだ。県の担当者は「今後、東京都などと調整するが、現段階ではどちらの考え方をとるかは白紙」という。

 一方、25年の在宅医療患者数の見込みは、この10年で約1・7倍に急増することもわかった。最も高いのは相模原市で、2・1倍に増える予想が出た。県央が約1・9倍、川崎北部が約1・8倍だった=表。

 県は、こうしたデータを基に、各地域の実情も加味しながら、来年10月ごろまでに構想を策定する。大まかに(1)25年の医療需要(2)目指すべき医療提供体制の実現に向けた課題(3)その体制を実現するための施策、からなる。11の医療圏ごとの構想も盛り込む。昨年成立した地域医療・介護推進法で、都道府県に構想策定が義務づけられた。

 県医療課の担当者は「既に病院の中には、積極的なリハビリで在宅復帰を促す『地域包括ケア病棟』(回復期病棟の一種)をつくる動きが出ている。県も、急性期から回復期に病棟を転換するためのハード面の補助や、リハビリ人材の育成などソフト面の支援をしていきたい」と話している。

(佐藤陽)

 ◆キーワード

 <日本創成会議の提言> 東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)は急速に高齢化が進み、今後10年間で後期高齢者が175万人増加し、介護需要は45%増加する。施設を高齢者が奪い合う事態になるとし、こうした事態への「危機回避戦略」を打ち出した。戦略では「お試し移住」支援など、東京圏の高齢者の地方移住の促進▽利便性の高い地域への集住促進▽医療介護拠点への転用などの空き家の有効活用▽医療・介護サービスでのロボット活用などを提言。具体的な移住先として、医療・介護に余力のある26道府県の全国41地域を挙げた。

 ■県内の医療・介護の余力(1~7段階)と2025年の収容能力(▲はマイナス)

 ◇医療圏(区市町村名)
  急性期医療レベル
  介護ベット準備レベル
  2015年と比べた25年の介護入所施設の収容能力(ベッド数)

     *

 ◇横浜北部(鶴見区、神奈川区、港北区、緑区、青葉区、都筑区)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:3
  収容能力(ベッド数):▲3438

 ◇横浜西部(西区、保土ケ谷区、戸塚区、旭区、瀬谷区、泉区)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:5
  収容能力(ベッド数):748

 ◇横浜南部(中区、南区、磯子区、金沢区、港南区、栄区)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:2
  収容能力(ベッド数):▲7301

 ◇川崎北部(高津区、多摩区、宮前区、麻生区)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:4
  収容能力(ベッド数):941

 ◇川崎南部(川崎区、幸区、中原区)
  急性期医療レベル  :5
  介護ベット準備レベル:3
  収容能力(ベッド数):▲1425

 ◇横須賀・三浦(横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、葉山町)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:5
  収容能力(ベッド数):▲1410

 ◇湘南東部(藤沢市、茅ケ崎市、寒川町)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:2
  収容能力(ベッド数):▲3186

 ◇湘南西部(平塚市、秦野市、伊勢原市、大磯町、二宮町)
  急性期医療レベル  :5
  介護ベット準備レベル:4
  収容能力(ベッド数):▲1852

 ◇県央(厚木市、大和市、海老名市、座間市、綾瀬市、愛川町、清川村)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:2
  収容能力(ベッド数):▲3920

 ◇相模原(相模原市)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:3
  収容能力(ベッド数):▲2489

 ◇県西(小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町)
  急性期医療レベル  :4
  介護ベット準備レベル:6
  収容能力(ベッド数):283

 <日本創成会議の資料を基に作成。レベルは数が高いほど余力があることを示す。急性期医療レベルは全身麻酔の実績や、病院への移動時間をもとに算出。介護ベッド準備レベルは2015年の75歳1千人に対する介護ベッド数の全国平均(81床)を基準とし、現在の介護数などから出した。>


 ■医療・介護の受け入れ余力のある地域

  北海道  旭川市、函館市、釧路市、帯広市、北見市、室蘭市
  青森県  青森市、弘前市 岩手県 盛岡市
  秋田県  秋田市
  山形県  山形市
  新潟県  上越市
  富山県  富山市、高岡市
  石川県  金沢市
  福井県  福井市
  京都府  福知山市
  和歌山県 和歌山市
  鳥取県  鳥取市、米子市
  島根県  松江市
  岡山県  岡山市
  山口県  山口市、下関市、宇部市
  徳島県  徳島市
  香川県  高松市、三豊市、坂出市
  愛媛県  松山市、新居浜市
  高知県  高知市
  福岡県  北九州市、大牟田市
  佐賀県  鳥栖市
  長崎県  長崎市
  熊本県  熊本市、八代市
  大分県  別府市
  鹿児島県 鹿児島市
  沖縄県  宮古島市

 (日本創成会議の資料に基づく。過疎地域は対象外。)


 ■2025年の在宅医療患者数の推計

医療圏   2013年度(人) 25年(人) 増加率(%)
横浜北部     14909  26738    179
横浜西部      8068  13877    172
横浜南部      8658  14058    162
川崎北部      8013  14721    183
川崎南部      5808   8818    151
横須賀・三浦    9908  14252    143
湘南東部      7150  11898    166
湘南西部      5324   9348    175
県央        6826  12705    186
相模原       4853  10189    210
県西        4251   6689    157
合計       83773 143299    171

 (厚労省の計算式に基づき県が試算。東京都などとの患者の流出入が現行のまま継続すると仮定した推計値。小数点以下は切り捨て。そのため合計数が合わない)

(朝日新聞 2015年8月15日掲載)

  1. 2015/08/16(日) 09:31:01|
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