Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月10日 

http://apital.asahi.com/article/news/2015081000007.html
帰省分娩、佐久医療センターが10月から制限
2015年8月10日  朝日新聞

 佐久地域の中核的な病院である佐久医療センター(佐久市)はこのほど、院内の周産期母子医療センターで行っている分娩(ぶんべん)や婦人科の診察を10月から来年3月まで一部制限することを明らかにした。5人の産婦人科医師のうち女性医師2人が9月から長期療養に入るためと説明している。

 佐久・小諸地域の妊婦は従来通り受け入れるが、地域の実家に戻って出産する「帰省分娩(ぶんべん)(里帰り出産)」には対応できなくなる。年間約800件扱う分娩のうち約360件が帰省分娩という。帰省分娩を希望する妊婦には、浅間総合病院(佐久市)、小諸厚生総合病院(小諸市)、花岡レディースクリニック(同)の3病院を紹介する。婦人科の2次検診なども受診を制限するが、放射線治療など高度医療が必要な患者は受け入れる。

 渡辺仁院長は「常勤医師5人でも非常に少ない体制で、3人では妊婦の受け入れを制限せざるをえない」と話す。産婦人科医は全国的に不足しており、代わりの医師が見つからなかった。2人が復帰する来年4月からは通常の診療に戻す予定。渡辺院長は「研修医に残ってもらうなど、いろいろな方法で産婦人科医の確保に努めていきたい」としている。

 (桜庭泰彦)



http://news.mynavi.jp/news/2015/08/10/174/
医療従事者が足りない」これって本当?
  [2015/08/10] マイナビニュース

「医療従事者が足りない」これって本当?
ニュースなどでよく、「医療従事者の数が足りない」という言葉を耳にすることはありませんか?

しかしこれは本当なのでしょうか。その疑問を解くために、厚生労働省がまとめた「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」から見ていきましょう。

■1,000人を2.4人の医師が見ている

平成24年のデータによると、人口10万人に対して、医師の数は237.8人である、という数字が出ています。つまり、1,000人の患者を、2~3人程度の医師で見ている、ということになります。

このような数字を聞いたとき、「医師の数が少ない!」と思ってしまうのは、無理もないことです。しかし、1,000人全員が病気にかかっており、医師の手当てや診断を必要としているか? と言われると、そうではありません。

ちなみに、歯科医師の場合はもっと少なく、人口10万人に対して80.4人となります。薬剤師の場合は、10万人に対して219.6人となっています。

■医師の数は減っているか

では、人口10万人に対する医師の数は減っているのでしょうか?

これに対しては、「増え幅に違いはあるものの右肩上がり」だと言えます。歯科医師や薬剤師も同様です。

医師の数は、昭和57年に比べると1.7倍近くになっています。もっとも増加率が高い薬剤師の場合は2倍以上に、もっとも増加率が低い歯科医師の場合であっても1.6倍近くになっています。

このため、“医師不足”というのは、少々乱暴な見方だと言えるでしょう。

■平均年齢と地域差

ただし、医師の平均年齢もまた、右肩上がりです。昭和57年には40歳程度だった平均年齢が、平成24年に44歳近くになっています。

また、医師の数は、地域によっても大きな違いがあります。無医村などが取り上げられるからか、「田舎には医師が少ない」と思う人もいるかもしれません。

しかし現在、10万人あたりの医師の数がもっとも少ない県は、関東圏にある埼玉県です。同じ関東圏であるにも関わらず、東京都の半分くらいしか医師がいません。

ちなみに、医師の専門ごとにみていくと、また異なる結果になります。たとえば、小児科の専門医がもっとも少ないのは茨城県、外科の専門医がもっとも少ないのは新潟県です。

だからといって医師の数の多い県や地域に住居を構えたりすることは考えなくても良いでしょうが、もしも家族が病気がちだったり大きな病気を患っているという場合は、選択肢のひとつになるのかもしれません。

本記事は「nikkanCare.ism」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。



http://mainichi.jp/shimen/news/20150811ddm041040131000c.html
群大の患者死亡:外部調査委新設
毎日新聞 2015年08月11日 東京朝刊

 群馬大医学部付属病院(前橋市)で腹腔(ふくくう)鏡や開腹による肝臓手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、同大は10日、外部専門家6人のみで構成する医療事故調査委員会を新設すると発表した。同一医師の手術で死亡した18人のほか、死亡していない事例も含め、この医師の全手術を調査対象とする。新調査委は医学・科学的検証を学術団体に依頼する。8月中に初会合を開き、今年度末をめどに報告書を病院側に提出する予定。【尾崎修二】



http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201508/0008292867.shtml
やぶ医者大賞を募集 へき地医療に貢献する若手医師が対象
2015/8/10 21:46 神戸新聞

 兵庫県養父市は、「やぶ医者」の語源が「養父にいた名医」だったとの説にちなみ、昨年創設した「やぶ医者大賞」への応募を受け付けている。へき地医療に貢献する若手医師が対象で、受賞者2人に奨励金50万円などを贈る。

 へき地医療に携わる魅力の発信や若手医師の育成が目的。応募資格は、へき地の診療所か公立の病院に5年以上勤務する医師か歯科医師で、今年4月1日時点で50歳未満。自治体や医師会などから推薦を受ける必要がある。応募者は本年度から3年間、審査対象になる。

 養父医師会の井上正司会長や京都大大学院の中尾一和教授、兵庫医科大の小谷穣治教授らが審査員を務める。受賞者は11月28日、養父市で開かれる表彰式に出席し、講演する。

 同市のホームページにある申込用紙で8月31日までに同市へ郵送する。同市保険医療課TEL079・662・3165



http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1508/1508035.html
地域基幹病院で臨床研究を実施
臨床フィールドでの気付きが重要

[2015年8月10日] MTPro / Medical Tribune

 市立福知山市民病院(京都府)では,臨床研究に関するワークショップの開催により,臨床研究の開始や学術誌での論文受理などの成果を得ている。同院地域医療研修センターセンター長の和田幹生氏は,地域基幹病院で臨床研究を行うポイントとして,臨床フィールドが臨床研究につながるという気付きを促すことなどを,第47回日本医学教育学会大会(7月24~25日,会長=新潟大学医学部長・総合医学教育センター長・牛木辰男氏)で報告した。

2014年に系統的ワークショップを開始

 2009年に同院総合内科が本格的に稼働したのを機に,2011年に臨床研究の勉強会や論文抄読会を開いた。エビデンスを意識した議論が活発化し,臨床研究への興味が増したものの,論文発表までには至らなかった。

 そこで,総合内科,救急科,研修医を対象に,昨年(2014年)2月から今年3月にかけて,地域での臨床研究の実施・発表および後期研修医・若手医師の育成を目指した系統的ワークショップを開催。主に土日を利用して,臨床研究実施に必要なPECO(Patient・Exposure・Comparison・Outcome)の立て方,研究デザインや質の担保の仕方などを学んだ。

 ワークショップ単発での参加希望者も募り,議論を活発化させるなどの工夫を行った。また,臨床研究経験者によるメンター制度の導入や院外の勉強会への参加を奨励した他,参加者が作成・発表したプロトコルの相互批評を行った。

 地域ベースの臨床研究の実施・発表に向け,身近にあるクリニカルクエスチョンや日常臨床上の所見・データへの意識を促した結果,学会での発表演題をまとめた論文が学術誌に受理。2014年度に開始した臨床研究は5件で,そのうちの1件は日本プライマリ・ケア連合学会の研究助成対象に採択された。2015年度は6件の臨床研究開始が見込まれているという。

 和田氏は,これらを継続する上でワークショップ開催や臨床研究実施自体の時間確保,データ収集時の欠損値をどうするかが課題であると述べ,後者に対してはカンファランスでの相互確認という方策を挙げた。

 基幹病院で臨床研究を行う上でのポイントとして同氏が上げたのは,系統的学習,診療フィールドが臨床研究につながることへの気付き,メンターやピアレビューアー(仲間)の存在,平日勤務内での一定時間の確保の4点。患者の役に立つ臨床研究の実施が患者アウトカムの改善につながる可能性があると同氏は強調した。

(田上 玲子)



http://apital.asahi.com/article/takayama/2015080600008.html
地域における医師の確保について
高山義浩 (たかやま・よしひろ)
2015年8月10日 朝日新聞

先日、早稲田の学生さんと一緒に飲みました。大学では、地域における医師の確保を研究テーマにしていて、卒後は病院事務の仕事に取り組みたいと考えているんだそうです。

「まずは、医師が働きやすい病院が必要ですよね」と学生さんが言いました。「地域に医師をつなぎとめるための条件だと思います」

私が医者なんで、彼なりに調子を合わせようとしてくれたのかもしれません。たしかに共感しますが、そこが出発点となることには同意できません。

「そりゃそうだよねぇ。医者に限らず、職場が働きやすいにこしたことはない。でもさ、病院のことをボロクソに言いながらも、そこで働き続けている医者は少なくないよ。なぜだと思う?」
 「・・・」

病院で働いたことのない学生さんには、ちょっと難しそうでした。伸びきった髪の毛で耳は隠されています。唇は真っすぐ一文字で、意志の強そうな目をしています。けっこう頑固者かもしれません。

もう少し話をすすめてみます。

「病院と医者の関係よりも、病院と地域の関係の方が、医者の働きがいって意味では重要なんだよね。医者にとってクソな病院でも、患者さんから愛され、地域から信頼されている病院なら、やっぱり良い病院なんだよ。それは認めざるをえない。そして、少なからぬ医者が、良い病院で働きたいと思っている」

学生さんは考えているようでした。私は「なんで早稲田に入学したの?」と聞こうかと思いましたが、ちょっと皮肉が強いのでやめました。それに病院は患者さんのためにあるのです。医者のためにあるんじゃないですからね。学生のためにある大学とは話がちがいます。

「でも、それだけじゃないですよね」と学生さんは言いました。そして、考え込んでいるようです。不安定な沈黙。仕方ないので私はビールを飲み干しました。

そう、それだけじゃない。何だって言えることだけど・・・。すこし間をおいて、私は切り口を変えてみることにしました。

「研修医のような若手はちょっと違うかもね。どちらかというと、よい指導医を求める傾向があるし、実力がつくかどうかを気にしている。で、その視線は病院のなかに留まってることが多いよね。ま、それはそれでいいと思うけど・・・、でも、いずれ地域のために仕事をしていることに気づくことになる」

「だから、地域から信頼される病院をつくらなければならないと・・・」

「そうそう。当たり前の話なんだけど、これって、医師確保の前提だと僕は思ってんだよね。地域から信頼される病院づくりにおいては、医者だけが頑張ってても全然ダメ。むしろ、かなり事務方の実力が問われるんだ。あと、ソーシャルワーカーとか地域との窓口ね」

「なるほど」と、これには学生さんも納得がいった様子。

「もちろん、政策的に医学部卒業生を増やすことで、医師の供給量を確保することも必要だよ。でも、それで医者がこぼれ落ちてくるのを待っているようでは、やっぱり日本の地域医療の未来はないと思っている。医師の勤務環境を改善することも、若手のキャリアアップを支援することも大切だ。でもね。一番大切なことは、患者さんから愛され、地域から信頼される病院を作ることだ。その本来の医療機関としての使命を達成することが、医師の確保につながるってことを僕たちは信じる必要がある。いや、それが信じられなければ、どう転んだって、日本の医療はおしまいだよ」

「もっと地域と密着した病院を作らなければなりませんね。事務方にできることも多そうです」と学生さんは言いました。「ところで、地域が努力すべきことはあるでしょうか?」

「う~む・・・」と、今度は私が考え込む番でした。自分のなかのパターナリズムを見透かされましたね。コンシューマーではなく、クライアントでもなく、パーティシパント(参画者)として、地域は医療のために何ができるのでしょうか? たぶん、まず関心をもつことでしょう。それを満たすためにも、やっぱり病院は地域に開かれてゆかなければなりません。

「直接の答えになってないけどね。ただ、ず~と前から、僕は言い続けてんだけど、医師の採用にあたっては、地域住民の意見を聞くべきだと思っている。とくに臨床研修病院では、研修医採用の面接官のなかに地域住民の代表を加えるべきだよ。医者たちだけで選んでいるうちは、地域との距離は空いたままだ。研修医たちには地域から選ばれたという自覚が必要だし、地域は研修医を選んだという責任を共有すべきだ」

「それいいですね」と学生さんは同意してくれました。「なんだか医師の確保って言っても、できることたくさんありますね」

「そうそう、景気よくやんないとね」と私は言いました。幸せなことに、やれることはたくさんあるんですから・・・。

高山義浩 (たかやま・よしひろ)
1970年、福岡県生まれ。地域医療から国際保健、行政から臨床まで幅広いフィールドで活動。行政では、2009年の新型インフルエンザ流行時に、厚生労働省においてパンデミック医療体制の構築に取り組んだほか、2014年には2025年問題に対応する地域医療構想の策定支援に従事した。臨床では、JA長野厚生連佐久総合病院などを経て、現在は沖縄県立中部病院において感染症診療と院内感染対策に従事している。また、在宅緩和ケアにも取り組んでいる。



http://www.yakuji.co.jp/entry45296.html
医療機関の人事評価制度は
2015年8月10日 (月) 無季言 薬事日報

◆ある大学病院の薬剤部を取材した際、数年前に作成した「業務修得度チェックリスト」が役立っていると聞いた。「医師に処方提案できる」「レジメンチェックを正しく実施できる」など、各部門での薬剤師の業務内容を100以上の項目に細分化したものだ

◆リストに沿って薬剤師は、各業務の修得度を5段階で自己評価する。その結果、各部門で修得すべき業務内容と現時点での到達度が明らかになるという

◆以前は調剤室など各部門に配属された後、次にいつ別の部門に異動になるのかが不明確だった。幅広く業務を修得できないとして、退職する薬剤師も少なくなかった。そのため業務の修得基準を明確にし、部門間の垣根も低くして、異動しやすい環境を整えた

◆また、自身の業務目標を設定して、その進捗状況を定期的に上司と話し合う仕組みも導入。仕事への意欲を引き出した。医療機関の人事評価制度は改良の余地が大きく、その分だけ成果を出しやすいように思える。各医療機関の規模や特徴に合った、最適な制度のあり方を探ってほしい。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46435.html
医・介の数値目標設定で改革評価を明確化- 諮問会議の専門調査会、12月に工程表策定
2015年08月10日 19時15分 キャリアブレイン

 政府は10日、経済財政諮問会議の下に設けた「経済・財政一体改革推進委員会」(専門調査会、会長=新浪剛史・サントリーホールディングス代表取締役社長)の初会合を開き、医療・介護分野などの改革の取り組みを評価するための数値目標を設定することを決めた。専門調査会は数値目標の達成時期などを明示した改革工程表の策定に向けて検討し、12月に諮問会議で取りまとめる=検討項目一覧とスケジュール詳細=。【丸山紀一朗】

 この日の会合では、専門調査会が検討する項目を確認。主要歳出分野のうち、社会保障では最も多い44の検討項目が挙げられた。国や自治体、保険者、国民などの取り組みを評価する数値目標を設定するとし、例えば医療・介護に関する地域差是正の目標として、療養病床の数や平均在院日数などを考慮する方向性が示された。生活習慣病予防のための保険者の取り組みや、国民の主体的な健康づくりの取り組みを評価する目標なども検討する。

 専門調査会は、「骨太方針2015」に盛り込まれた経済・財政再生計画の進捗を管理するために設置した。専門調査会の下に、▽社会保障 ▽非社会保障 ▽制度・地方行財政-の3つのワーキング・グループ(WG)を設置し、今月中にそれぞれ初会合を開く。11月までに専門調査会の会合を6回、各WGの会合を数回程度開き、数値目標の設定や改革工程表の策定に向けて議論を重ねる。



http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1508/1508031.html
卒前教育で在宅医療診療を学ぶ
京都府立医大の試み

[2015年8月11日] MT Pro / Medical Tribune

 高齢化に伴い,わが国では在宅医療診療の重要性が増しているが,その卒前卒後教育は必ずしも十分とはいえない。京都府立医科大学在宅チーム医療推進学講座では,昨年(2014年)医学生と研修医が在宅医療に参加し,必要な知識・技能・態度を習得する参加型卒前教育および初期臨床研修プログラムを始めた。同講座教授の山脇正永氏が,現時点で得られた教育効果や課題について,第47回日本医学教育学会大会(7月24~25日,会長=新潟大学医学部長・総合医学教育センター長・牛木辰男氏)で報告した。

実施後全ての評価項目が改善

 2013年に同大学に開設された大学在宅医療推進学講座は,在宅チーム医療の卒前教育・初期臨床研修および研究を行う初の講座である。

 同講座では,京都府医師会・薬剤師会,京都府の協力の下,昨年から京都市内4カ所の在宅医療診療所の訪問診療・訪問看護に,同大学医学生が参加する診療参加型臨床実習(大学教員も週1~2回同行)を行っている。その他,訪問リハビリテーションや退院後,在宅医療に切り替える入院患者の退院前カンファランス,サービス担当者会議に,医療スタッフとともに参加する。さらに,他大学の薬学部生や看護学科生との連携による多職種連携教育も行っている。

 実習前に医学生に行ったアンケートでは,在宅医療に対する具体的なイメージがなく,必ずしも興味に結びついていなかった。「患者に近い」「未来の医療」などのポジティブなイメージが挙げられる一方で,ネガティブなものとしては「医療が限定的」「(対話を中心とした)いわゆる昔の往診」などが見られた。

 実習後,リッカート尺度を用いて教育効果を判定した結果,在宅医療診療に関する「知識」「イメージ」「制度」を含む7項目全ての評価が有意に上がっていた。一方,課題点として,受け入れ先である在宅医療診療所の確保,教育方法とその質の担保,多職種連携に要する人員の確保などをどうするかが挙げられた。

 山脇氏は,在宅医療診療に関する診療参加型卒前教育プログラムの効果的な導入時期と期間についても課題が残るとしたが,大学医学部低学年から継続的に医療現場を知る教育を行う必要があると提言した。

(田上 玲子)



https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201508/543353.html
コラム: 池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
医療事故報道におびえる管理者

2015/8/11 池田正行  日経メディカル

 「いよいよ事業者に直接取材を敢行しようかと考えていたところ、上司が私に告げた。『それ、サツに情報を渡せ。サツに事件としてやらせろ』。取材で得た情報を警察に提供し、刑事事件として捜査してもらう。その代わり、捜査着手の際は優先的に教えてもらえるから、スクープとして記事を書くことができる。そんな理屈だった」(高田昌幸著『真実~新聞が警察に跪いた日~』角川書店)

 上記は著者(当時、北海道新聞記者)が、不法投棄を繰り返す産廃業者を記事にしようとした時の経験談です。医療事故の際、病院管理者がおびえるのは、このように警察と密接に連携した一般大手メディアからの攻撃です。もし警察への通報が遅れれば、自分が「事故隠し」との猛烈な攻撃の矢面に立つ。逆に一般大手メディアの手先となって迅速に警察に通報すれば、「国民感情」も刺激せずに済む。そういう計算が働いているのでしょうか。実際、ウログラフィン誤使用事故では、一般大手メディアからの攻撃は、一部では実名まで出てしまった担当医に向けられ、管理者は型どおりの記者会見だけで難を逃れました。さらに、「病院側は、事故の後、すぐに警察に事故の届出をしている。この点は、模範的な対応だったと思う」と御遺族からも高い評価を頂いています。

恫喝商法の犠牲者
 非開示情報をすべて「隠蔽」と決めつけ、その組織に「国民の皆様に対して不正を働く悪の組織」のラベルを貼って国民感情をあおる。そんな“国民感情専門家集団”よる恫喝商法の端緒が、2001年9月に始まった牛海綿状脳症(BSE いわゆる狂牛病)パニックでした。彼らは雪印食品(2002年3月従業員1000人を解雇し会社を清算) を皮切りに、赤福、石屋製菓、船場吉兆、不二家、伊藤ハム、ローソンと、2000年代以降、食品企業や飲食業を次々に血祭りに上げ、元検察官で弁護士の郷原信郎氏の追求さえはね付けるモンスターメディアに成長しました。

 いわゆる「杏林大割りばし事件」を巡って、医師に対して誹謗中傷を繰り広げた件で、後に放送倫理・番組向上機構(BPO)から「重大な放送倫理違反」勧告を受けることになる「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS)に対して、2007年1月、郷原氏は不二家に対する報道内容における捏造疑惑を追及しました。しかしTBSは「取材源の秘匿」を振りかざして取材経過に関する事実を覆い隠し、 公共の電波で「無償広告」を行って報道被害を受けた側を懐柔するという卑劣な手段を使ってまで、郷原氏の追求に徹底抗戦したのです(郷原信郎著『思考停止社会』講談社)。

 この恫喝商法はWHOによるメディア関係者のための自殺予防の手引きもどこ吹く風とばかりに、痛ましい犠牲者も生んできました。我々は1年前に理化学研究所の笹井芳樹氏を失いました。インペリアルカレッジロンドン上席講師の小野昌弘氏はその追悼文の中で、「科学者の君は 殺されたのだ」としています。2004年の鳥インフルエンザパニックの際には、京都府にある浅田農産の会長夫妻が自殺しました。2001年からの牛海綿状脳症(BSE)パニックの際にも5人の自殺者を出しています。警察への通報には熱心でも、自分が回避した恫喝の矛先がどこに向かうのかも考えない。そんな管理者を生み出すのも、この恫喝商法です。そして、「患者の立場になって考える医師」が「部下の立場になって考える管理者」になるとは限らない。そんなことを我々に教えてくれるのもまた、この恫喝商法です。

 高濃度カリウム製剤事故の例からもわかるように、業務上過失という法の抜け穴からは、事故の「主犯」であるシステムエラーはもちろん、救命可能性や事故防止策を含めた重大な事実の数々がすり抜けていきます。モンスターメディアは「真相究明」を叫びながら、真相究明能力のない裁判を利用して末端の医療者だけを吊し上げる扇情的な報道により収益を上げます。そして判決後にはすべてを忘れたふりをして次の餌食を求める一方、北陵クリニック事件を始めとした「不都合な真実」に対しては完全黙秘する。幾多の報道で繰り返されてきたこの悲劇を、医療事故調査制度(事故調)を使って阻止できるかどうかは、ひとえに我々一人一人の法的リテラシー・メディアリテラシーにかかっています。

悪循環を断ち切る鍵を握るのは?
 こうして、「事故発生→扇情報道の嵐→真相隠蔽裁判→関係者の完全黙秘→事故の忘却→事故再発」という悪循環が、テレビドラマ水戸黄門のように延々と繰り返されてきました。モンスターメディアが創るこの悪循環を断ち切れるかどうかは、一番の潜在的被害者である若い医療者の行動如何にかかってきます。大切な部下のこれからの人生への配慮よりも、警察への忠誠心を優先するような管理者の下では誰も働きたいとは思いません。そんな管理者が支配する病院では、優秀な人材が流出し、職員の士気が低下し、事故が起こる可能性が高くなり、実際に事故が起こればさらにまた人材を失う。この悪循環の被害者になるのもまた、若い医療者です。

 1982年5月、新人研修医オリエンテーションの場で、病院長から医師になったばかりの私たちに言い渡された最初の仕事が、医師賠償責任保険加入の手続きでした。今から33年前でさえ、管理者も研修医も事故に対してそれだけ敏感だったのです。ましてや、あと1カ月余りで事故調が発足するという今の時代、病院管理者の事故対応は、マッチング開始を来月に控えた多くの医学生にとって、臨床研修病院選択の重要な判断基準となっています。そんな彼らが、高濃度カリウム製剤による事故やウログラフィン誤使用事故が、どの臨床研修病院で起こり、そこの管理者が事故の際にどんな対応をしたのか、知らないはずがないのです。


  1. 2015/08/11(火) 09:08:00|
  2. 未分類
  3. | コメント:0
<<8月11日  | ホーム | 8月9日 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する