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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月12日 

http://www.m3.com/news/iryoishin/338579?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150712&dcf_doctor=true&mc.l=111736934
後発品「疑問あれば、処方止め」が最多◆Vol.3
勤務医は、薬剤師や薬剤部を活用傾向

2015年7月12日(日)配信 池田宏之(m3.com編集部)

Q.5 後発医薬品使用中に、効能効果に疑問を感じた場合の対応

 Q.5では、後発医薬品使用中に、効能効果に疑問を感じた場合の対応を、複数選択可能な方式で聞いた。回答者勤務医304人、開業医200人。
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 いずれの回答も4割に満たなかったが、最多だったのは、「疑問を感じて時点で使用を止める」で34.9%。特に開業医では、半数が使用を止めている結果となった。次いで、「メーカーに問い合わせる」で32.3%、「薬剤部や薬剤師に確認する」が30.0%。

 「使用停止」と「メーカー問い合わせ」は開業医の回答が多かったのに対して、勤務医で最も多かったのは、「薬剤部や薬剤師確認」(119人)で、4割近くなった。開業医は、身近に薬剤の専門家がいないことが、処方の中止の多さにつながっている可能性がある。

 「効能・効果に疑問を感じたことはない」は9.9%、「何もしない」は4.4%となった。「その他」の回答では、「先発医薬品を勧める」「外用剤の後発医薬品は基剤が悪くて使えない」といった意見があった。



http://www.m3.com/news/iryoishin/339343
全80大学の麻酔科教授に訴訟支援を要望
「麻酔科医師労災訴訟を支援する会」、判決問題視

2015年7月12日(日)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医師ユニオン主催の「麻酔科医師労災訴訟裁判」の緊急報告会が7月11日に開催され、同ユニオン代表の植山直人氏は、全国の80大学の麻酔科教授や日本麻酔科学会宛てに、同裁判への支援を呼び掛ける要望書を送付したことを明らかにした。

 要望書は、植山氏が共同代表世話人を務める「麻酔科医師労災訴訟を支援する会」名で、7月1日付。労災をめぐる今年4月の東京地裁判決が、麻酔科医の勤務実態を反映していない判決であることから、「この判決を放置することは、日本の医療にとって大きな禍根を残す」と訴え、東京高裁に意見書を送るほか、同支援する会の賛同人に加わることなどを求めている。


 同会が問題視しているのは、約200床の民間病院で、常勤医1人体制だった当時53歳の麻酔科医とその妻が、勤務先の病院を安全配慮義務違反で訴え、損害賠償を求めた裁判。同麻酔科医は、2007年8月に脳出血を発症し、遷延性意識障害となり、現在も寝たきりの状況が続いている。原告側の主張では、発症前1カ月の時間外労働時間は121.12時間で、過労死ラインを超えていた。労働基準監督署は労災認定したが、今年4月の東京地裁判決は、原告の請求を棄却。原告の代理人弁護士であり、過労死弁護団全国連絡会議幹事長も務める川人博氏は、緊急報告会で「ひどい判決で、すぐに控訴した」と述べ、麻酔科医の業務実態などを明らかにするため、植山氏らに協力を要請したことを説明した。

 判決で認定された発症前1カ月の時間外労働時間は56.5時間で、「手術中も容態が安定している患者であれば、麻酔科医は椅子にすわって本を読んだり、休憩のために中座することが可能であり、また、麻酔の方法もほとんど定められた方法で実施すれば足り、手術中、高度の精神的緊張を終始強いられるわけではない」などと判断した。川人氏は「判決では、『そもそも過重労働はなかった』とされた。時間外労働時間は、実際の半分くらいしか認めていない。しかも、麻酔科医の労働を低く見ている」と憤りを隠さなかった。また本判決では、計41カ所の労働時間の計算間違いがあり、原告の申立を受け、東京地裁は40カ所の誤記を認め、訂正している。

 緊急報告会では、麻酔科医の妻も登壇し、「全く予想外の判決だった。判決では、私たちが話したことは全く取り上げておらず、病院側の言い分のみが書かれている。麻酔科の仕事を軽視しており、全てがことごとく否定された」と判決を問題視。病院側から労災認定申請をしないよう要望されたことや、病院側が労災認定を問題視し、国を提訴していることなどを明かした。

 「麻酔科医師労災訴訟を支援する会」の共同代表世話人は、植山氏のほか、NPO法人医療制度研究会副理事長の本田宏氏、小児科医の夫を過労死で亡くした中原のり子氏の3人。同会では、全国の医師に対しても、「麻酔業務・当直業務等に関する質問に対するアンケート」への回答、東京高裁への意見書提出などを求めている(詳細は、同会のホームページを参照)。東京高裁での第1回口頭弁論は8月5日に予定されているため、アンケートの締め切りは7月31日。


遷延性意識障害で寝たきりに

 本裁判の争点は、(1)原告医師の業務の過重性、(2)業務と脳出血の因果関係、(3)被告らの安全配慮義務違反の有無、(4)損害――だったが、東京地裁判決では、(1)そのものが否定された。

 麻酔科医が勤務していた民間病院は、脳出血を発症した2007年8月当時、常勤1人(本人)と非常勤3人。手術件数は月平均で115件だった。麻酔科医は、副院長と麻酔科部長を兼務しており、手術麻酔のほか、外科外来、内視鏡検査、当直などの診療業務のほか、幹部会議などの管理業務にも従事していた。

 脳出血を発症したのは2007年8月11日。他院に搬送され、一命を取りとめたものの、遷延性意識障害が残った。その後、数回の転院を経て、現在は自宅療養中だ。寝たきりで、気管切開され、胃瘻の状態。「週1回くらいはゼリーを食べ、リハビリも続けている」(麻酔科医の妻)。

 2008年12月には労災認定され、2010年5月に麻酔科医とその妻は、損害賠償を求めて提訴。弁論と和解協議が進められたものの、和解は打ち切られ、2014年9月に結審。今年4月の東京地裁判決は、原告の請求を棄却した。

時間外労働の認定、原告の主張の認定

 麻酔科医の妻によると、麻酔科医は脳出血で倒れる前の2年くらい前から疲労の状態が続き、夜眠れず、うつ傾向が続いていたという。しかし、常勤麻酔医1人体制のため、自身が辞めれば勤務先に迷惑がかかると考え、勤務を続けていた。

 原告側の主張では、脳出血を発症する1カ月前の時間外労働時間は、121.12時間。労災認定されたのは93.31時間、東京地裁が認定したのは56.5時間と、原告側の主張の約半分だった。

 川人弁護士は、「労働過重性の判断では、発症前1カ月の状態が問題になる。12日間の連続の勤務が2回、当直も4回あった。緊急手術で翌日まで病院にいた日も含めれば5回であり、当然、労災として認定される事案」と指摘。さらにその前の2カ月を見ても、140.16時間、88.01時間と長時間の時間外労働が続いており、「発症1カ月前と同じ程度の過重な労働実態であり、オンコールもあった。その上、医師という職業の過重性は、通常のデスクワークよりもはるかに重い」(川人弁護士)。

 にもかかわらず、東京地裁判決が、麻酔科医の業務の過重性を軽く見たのは、「麻酔は人の生命に関わるものであり、わずかなミスでも人の死という重大な結果をもたらす可能性があることから、その実施は高度の緊張を伴うものであり、日常的に精神的負荷が高い業務である」などの原告の主張が認められなかったからだ。判決では、例えば以下のように判断している。

 「麻酔準備は最も時間がかかる全身麻酔であっても事前準備は15分ないし30分程度であって、手術はおおむね10時から開始されること、(中略)これらの事実からすれば麻酔準備のために所定始業時間よりも早く出勤する必要があったとは認められない」

 「手術中も容態が安定している患者であれば、麻酔科医は椅子に座って本を読んだり、休憩のために中座することが可能であり、また、麻酔の方法もほとんど定められた方法を実施すれば足り、手術中、高度の精神的緊張を終始強いられるわけではない」

「高度プロフェッショナル労働制度」は過労死招く

「麻酔科医師労災訴訟を支援する会」の共同代表世話人の中原のり子氏。
 「麻酔科医師労災訴訟を支援する会」の共同代表世話人を務める中原氏は、小児科医の夫を過労自死で亡くしている(『最高裁が医師不足や医師の過重労働に警鐘』を参照)。「一生懸命やっている人たちが報われない社会であってはいけない。多くの犠牲者がいるのに、それでもなお、医療界は変わらない。夫のように絶望するのではなく、何とかよい社会にできればと思っている。(今回の麻酔科医は)命はあっても、ひどい判決に対し、(遷延性意識障害のため)一言も反論できない。多くの人がその代わりに反論しなければいけないのではないか」と述べ、支援を訴えた。

 中原氏は、昨年6月に成立した過労死等防止対策推進法の制定に向け、長年活動してきた。現在、懸念しているのは、「高度プロフェッショナル労働制度」の導入だ。同制度を盛り込んだ労働基準法の改正案が今国会に提出されている。「夫がなぜ死亡したのかが、労災が認定されても分からなかった。けれども、この新しい裁量労働法制を見た時に、ようやく分かった。際限のない成果主義であり、働けど、働けど、さらに売上を上げることが求められる新しい制度には、過労死する罠が仕掛けられている」と中原氏は語り、同制度に対し、警鐘を鳴らしている。



http://www.m3.com/news/iryoishin/337794
「地域医療」「国際認証」、力を入れる取組み◆医学部長アンケートVol.7
今年度の各校の取組みを紹介

2015年7月12日(日)配信 成相通子(m3.com編集部)

 アンケートの最後に、各校で今年度力を入れている取組みを伺った(調査の概要は、『「大学の役割、高まる」 ◆医学部長アンケートVol.1』を参照)。地域医療や国際認証、研究支援などがキーワードに上がった。

第8問 今年度の貴医学部・医科大学が力を入れる取り組みなどがございましたら、ご紹介ください。

山形大学医学部長 山下英俊氏

1.山形大学医学部がんセンターを中心に、重粒子線がん治療装置(山形大学モデル)開発プロジェクトの推進。
2.山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所を中心とした研究の活性化、そこと山形県の病院に密着した山形県コホト研究(分子疫学研究)の推進により予防医学に貢献する。
3.山形県地域医療構築についての研究と提言。


筑波大学医学専門学群長 原晃氏

国際認証を本年度11月に受審する。

埼玉医科大学医学学長 別所正美氏
1.医学教育の質向上を目指したカリキュラム改革の推進(2016年度年生から新カリキュラム導入予定)。
2.リサ-チアドミニストレ-ションセンタ-の開設(研究倫理、研究費の適正使用など、コンプライアンス遵守を大学として組織的に推進するために、2015年4月から活動開始)。
3.医療安全の確保と医療の質の向上(日本のメイヨ-クリニックを目指す運動の継続)。


東京慈恵会医科大学長 松藤千弥氏

1. 国際標準に対応した臨床教育カリキュラム改革
2. 高度な総合診療能力を持つ医師の育成のためのプログラム開発
3. 医療の国際化対応のための学生・教職員を対象とした教育・研修
4. 臨床研究の支援体制の強化と研究倫理の浸透
5. 国立がん研究センターとの連携事業の推進


大阪市立大学医学部長 荒川哲男氏

1. 国際交流
2. 広報活動


兵庫医科大学長 中西憲司氏

1.研究医コースの設置
 2014度研究医枠による定員増が認められ、正式には2016度から運用する。3年次、4年次で医師としての素養を涵養する科目や実習以外の大半の授業科目の出席・試験を免除し選んだ研究室でじっくり研究に専念し、短期の留学も可能とする。学習については全ての講義をビデオ収録し、見たい講義は自由に閲覧可能で、医学教育センターにおいてマンツーマンで学習支援を行う。臨床実習については基本的な部分は通常通りであるが、5年末から6年初めの選択実習は免除し研究室に再度配属する。
 その後の卒業、国家試験受験は他の学生と同一である。年間150万円(4年間)の奨学金を支給し、卒業後は大学院進学(初期研修は可能)し、その後は特任助教として身分保障も行い、5年間の研究従事で奨学金返済を免除する。全国屈指の大胆なコースと自負しており、学生の積極的な応募を期待している。このコースは、研究を志す学生に実験手技と研究の楽しさを教え、無事研究者として学会デビューを果たすまで親身に支えることを目指している。
2. チーム基盤型学習の導入と実施
 カナダのLarry Michaelsen博士が開発した教育手法で、少人数のグループ学習であるがチュートリアルとは異なり、教員が主導して能動的な学習を促す。3、4年次に導入している。
3. 英語教育の充実と国際交流の強化
 1~2年次の一般英語、2年次の英語論文講読演習、3年次の医学英語、4年次の英語による臨床推論(全て英語による講義)、5年における医療英会話、6年における短期海外臨床実習(希望者)などを実施している。


広島大学医学部長 木原康樹氏

Super Global Universityにおける医学部にふさわしく国際的に開かれた質の高い医療人の育成に取り組んでいく。



http://www.m3.com/news/iryoishin/338451
社会保障費1.5兆円減、受診時定額負担に反対
マイナス改定と受診抑制での給付圧縮は医療荒廃の道

2015年7月12日(日)配信 桑島政臣(神奈川県保険医協会政策部長)

 骨太方針2015が閣議決定され、2018年度までの3年間の一般歳出増1.6兆円、社会保障費増1.5兆円を「目安」とし、歳出改革を断行するとした。公共サービス、社会保障の「営利産業化」を掲げるこの方針は、「削減額」が明示されないためか反発が目立ないが、実は小泉内閣時代を大幅に上回る規模となる。この間に2回の診療報酬改定を控えマイナス改定は必至であり、既に予告がなされている。しかも受診時定額負担の診療所での導入を念頭においており、医療機関、患者双方への「痛み」を強いることになる。われわれは医療荒廃をもたらす、この給付圧縮路線に強く反対する。

◆そもそも社会保障費の伸びの数字がオカシイ 消費税分の充実分は1.85兆円の筈

 骨太方針2015では、2012年度から15年度までの3年間の社会保障費(国庫負担)の実質的な「増額分」が、高齢化での増加分相当の「1.5兆円程度」であるとし、この基調を向こう3年間継続するとした。2015年度の社会保障費31.5兆円から12年度分28.9兆円を差し引き、その間の消費税増税による社会保障充実分を1.0兆円とし1.5兆円と弾いたものである。

 しかし、消費税での充実分は本来1.85兆円(14年度0.5兆円、15年度1.35兆円)である(社会保障制度改革推進本部・資料)。つまり、「真実」の増加分は「0.65兆円」(3年間)でしかない。これは単年度2,100億円と、これまでの高齢化を主とする1兆円~8千億円の増額基調を遥かに下回る。

 この間13年度は自立・自助を基調とする社会保障プログラム法制定、14年度は診療報酬実質▲1.36%改定、高齢者医療の患者2割負担導入、15年度は介護報酬▲2.27%改定、介護保険の利用者負担2割化(一部)とホテルコスト外しが行われてきた。これらに重ね個人所得の低迷の下で、従来の患者負担、利用者負担が、益々過重化していることが影響し、大幅な給付圧縮がなされたことになる。

 骨太方針により、この「基調」を15年度から18年度も踏襲される。つまり、これらと同類の施策の断行を意味する。今後の消費税の充実分(推定)は6兆円程度(16年度1.35兆円、17年度1.87兆円、18年度2.8兆円)となっており、この「充当」は一体改革の「約束」である。消費税率引き上げ5%分のうち1%分(2.7兆円)は社会保障の充実にあてることになっている(財務省HP)。

 しかし、既に見た通り、「充実分」を「過小」に見積り、数字の操作で社会保障費の実質増額分を誤魔化し圧縮の論拠とすることは想像に難くない。2月の「中長期の経済財政に関する試算」(経済財政諮問会議・資料)では、「充実分」は全て織り込まれておらず、逆に3年間で4兆円のマイナスギャップが生じている。消費税「充実分」と「補填分」を誤魔化した14年度診療報酬改定は、その典型である。3年間の高齢化伸び率10%分への対応が1.5兆円というのも過去の資料と齟齬がある。

 消費税による「充実分」の「中抜き」だが、法人税の20%台への引き下げが背景にある。今年度34.62%が32.11%へ引き下げられたが(影響額1兆2千億)、数年かけ20%台とする方向で当初税率から5%、2兆3,500億以上の減収となる。この穴埋めが浮上する。加えて、2020年度のプライマリーバランス黒字化への国債発行の減殺分への補填が働いている感がある。約束の「充実分」が、流用され、減らされていくということである。

◆診療報酬は▲5%超改定? 受診時定額負担は政策誘導の新たな「打ち出の小槌

 社会保障費の削減の主力は構成上、制度上から医療となる。この3年間に2度の診療報酬改定が控えるが、骨太方針2015に沿い報道観測の年5千億円削減だと、国庫で計1兆円(5千億円×2回)の▲10%改定に匹敵し、毎回ほぼ▲5%改定の壊滅的な打撃となる。正味の年8千億円なら1.6兆円で▲16%、毎回ほぼ▲8%であり、毎年1カ月分の保険収入が雲散霧消することになる。

 しかも、かかりつけ医の推進とセットでの受診時定額負担の導入が「検討」の文言ながら盛り込まれた。これは先般、国会で法律が成立し導入となった、紹介状なしでの大病院受診の際の定額負担(選定療養の義務化)の手法の応用が濃厚だ。健保法附則で患者負担は3割を維持とタガがはまっている中での荒技として考案されたが、法で「医療機関の責務」として紹介、連携を規定し、それを果たすために法定の定率負担を超えて、差額で定額負担の徴収を療養担当規則で義務づけたものだ。

 「かかりつけ医」とは、14年度診療報酬改定で導入された、「地域包括診療料」「地域包括診療加算」の算定医療機関であり、塩崎厚労大臣も次回改定に向け積極的な推進を明言している。この不算定の医療機関の場合に再診料を10点引き下げ、100円の受診時定額負担を選定療養として義務付ける。法の責務規定に診療所の役割を位置づけ、その要件を欠く場合の定額負担徴収が考えられる。

 「地域包括診療料」「地域包括診療加算」は、ゲートキーパー(振分け機能)型と違う“自己完結型”の「登録医」制である。受診医療機関の集約化の狙いも潜んでいる。この算定医療機関は、全診療所の6%(内科系診療所の10%)あり、診療所の初診・再診は年間109.5億回なので、定額負担100円とし再診料10円引き下げるとなれば、医療費1兆円弱(国庫で2,500億円)に相当する。この選定療養義務化は、実質的な受診時の定額負担、「上乗せ免責」であり、健保法を逸脱している。患者負担増の打ち出の小槌、政策誘導の新機軸ともなり受診抑制と医療機関の経営難を深化させるだけである。

◆産業化は医療からの「医師外し」路線 倒錯した政策は憲法25条の否定

 骨太方針2015は、これ以外にも、OTC類似薬の保険外し、生活習慣病薬への参照価格制導入、保険者によるデータヘルス(栄養士、理学療法士等による健康指導、介入)、健康ヘルス産業と結んだ健康作り(自助努力)による保険料の値引き(傾斜設定)やヘルスポイント(オマケ)付与、セルフメディケーションの推進、自己採血検査を医療機関以外に認める「検体測定室」の増加を睨んだ「かかりつけ薬局」との連結など、給付範囲見直し・縮小に止まらず、疾病リスクに応じた保険商品と同様の民間保険原理の導入・定着、医療からの医師の関与を部分的に外し、「企業」へと移譲させる布石も随所に見られる。ここで言われる「社会保障の産業化」は、「営利産業化」であり、社会保障費抑制が経済活性化に資するとする認識は、もはや「倒錯」以外の何ものでもない。憲法25条の否定である。

◆患者負担は限界 顕著な受診抑制窓口負担を解消し政策転換を

 社会保障費の極端な圧縮は、医療において顕著である。その主因は過重な患者負担による受診抑制にある。健保3割負担以降の受診延日数は一貫してマイナス基調であり、累積で、▲6.6%と大幅減である(03年度▲1.4%、04年度0.1%、05年度▲0.3%、06年度▲0.7%、07年度▲0.9%、08年度▲1.3%、09年度▲0.6%、10年度0.1%、11年度▲0.1%、12年度▲0.9%、13年度▲0.8%)。1施設あたりの受診延べ日数は同様の累積で医科診療所▲7.1%、歯科診療所▲6.5%と、第一線医療でより顕著である。患者の診療実日数(月単位)も診療所外来で03年度2.11日から14年度1.65日へと▲21.8%、歯科で03年度2.44日から1.92日へと▲21.3%と極端に落ち込んでいる。

 サラリーマンの平均給与は健保2割負担となった1997年の467万円がピークで、以降、凋落の一途で2013年度は414万円(非正規168万円)と50万円以上も下落(国税庁)。非正規労働者も当時の20%から37%に増加、1,962万人に上っている。日医調査(12年)では3割負担で66.5%、2割負担で58.3%の患者が過重感を訴え、経済的理由での過去一年間の未受診は双方で10%ずつあった。

 これ以上の受診時の負担増、保険給付縮小、民間保険化路線では早晩、医療荒廃は必至となる。内需の冷え込みは深刻となり財政再建は画餅に帰す。患者負担は受診の障壁、疾病自己責任の最たるものであり、貧困者はじめ経済的余裕のない層の病気を一層悪化させる愚策である。多くの先進国にならい、定率負担の撤廃、少額定額負担など痛痒を感じない水準も視野に、窓口負担を解消し、皆保険に相応しく、等しく受診の機会を保障すべきである。そのために応能負担の徹底、所得再分配の強化を図ることが王道であり、それこそが社会不安の解消、経済活性に繋がる道である。骨太方針2015は単なるコストシフティングと、社会保障への営利参入である。われわれは骨太方針2015の撤回、方針転換を強く求める。

※本記事は、2015年7月6日付けの「理事会声明」として、神奈川県保険医協会が同協会のホームページ上で発表した内容を、編集部でタイトルとレイアウトのみ変更したものです。



http://www.m3.com/news/general/339348
主治医以外の意見、聞きやすく…窓口開設へ
2015年7月12日(日)配信 読売新聞

 腹腔鏡ふくくうきょう手術を受けた患者が相次ぎ死亡した問題を受け、千葉県は、主治医を介さずに他の病院の医師の意見を聞く手続きができる「セカンドオピニオンセンター」を今夏にも県がんセンターに開設する。

 保険適用外で高難度の腹腔鏡手術が患者に十分な説明なく行われ死亡例が出たことを教訓に、再発防止策の一環として導入される。

 セカンドオピニオンセンターは、手術などの治療の前に患者から相談を受け、意見を聞ける専門家のいる病院選びや必要書類の準備を支援する。院内の患者相談窓口に新設し、看護師らスタッフ6人が対応。主治医に直接申し出るという、通常の手続きを回避することで、他の医師の意見を受けやすくする。主に院内の患者が対象だが、外部の患者も専門家のいる病院の情報提供などを受けられる。

 同県によると、外部の患者向けにセカンドオピニオン外来を設ける病院は多いが、院内の患者を対象に病院が支援窓口を設ける例は珍しいという。

 腹腔鏡手術を巡る医療事故で同県が設置した検証委員会会長の多田羅浩三・日本公衆衛生協会会長は「主治医に治療方針を熱心に説明されると患者はその意向に誘導されがちになる。患者の立場を守るためには、セカンドオピニオンの普及が不可欠だ」と話している。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46177.html?src=topnewslink
産科・分娩施設、医師と助産師300人不足- 神奈川県が調査、病院数も減少
2015年07月12日 15時00分 キャリアブレイン

 神奈川県内の産科・分娩施設について、県が調査を行ったところ、医療機関側が医師と助産師が約300人不足していると医療機関側が考えていることが分かった。分娩を取り扱う病院も減っており、県は「医師確保が喫緊の課題」としている。【新井哉】


 調査によると、不足しているのは、産科にかかわる医師が160人、助産師が139人。今年度(4月1日時点)の分娩取り扱い施設は病院が前年度比3施設減の60施設、助産所が同1施設減の29施設、診療所は前年と同じ58施設だった。今年度の病院と診療所、助産所の分娩取り扱い件数の合計は、前年度比1687件減の6万3782件を見込んでいるという。

 県は2017年度までの県保健医療計画で「医療従事者の確保困難により周産期救急患者を受け入れる病院が年々減少」と指摘。新規の受け入れ病院を確保する必要があることから、県域を越えた周産期搬送体制の構築などを進めている。

 調査は病院64施設、診療所63施設、助産所32施設の計159施設に対し、昨年と今年のそれぞれ4月1日現在の体制や、昨年度の分娩取り扱い件数の実績と今年度の見込みなどを聞いた。



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=120978
主治医以外の意見、聞きやすく…窓口開設へ
(2015年7月12日 読売新聞)

 腹腔鏡ふくくうきょう手術を受けた患者が相次ぎ死亡した問題を受け、千葉県は、主治医を介さずに他の病院の医師の意見を聞く手続きができる「セカンドオピニオンセンター」を今夏にも県がんセンターに開設する。

 保険適用外で高難度の腹腔鏡手術が患者に十分な説明なく行われ死亡例が出たことを教訓に、再発防止策の一環として導入される。

 セカンドオピニオンセンターは、手術などの治療の前に患者から相談を受け、意見を聞ける専門家のいる病院選びや必要書類の準備を支援する。院内の患者相談窓口に新設し、看護師らスタッフ6人が対応。主治医に直接申し出るという、通常の手続きを回避することで、他の医師の意見を受けやすくする。主に院内の患者が対象だが、外部の患者も専門家のいる病院の情報提供などを受けられる。

 同県によると、外部の患者向けにセカンドオピニオン外来を設ける病院は多いが、院内の患者を対象に病院が支援窓口を設ける例は珍しいという。

 腹腔鏡手術を巡る医療事故で同県が設置した検証委員会会長の多田羅浩三・日本公衆衛生協会会長は「主治医に治療方針を熱心に説明されると患者はその意向に誘導されがちになる。患者の立場を守るためには、セカンドオピニオンの普及が不可欠だ」と話している。



http://www.sankeibiz.jp/econome/news/150712/ecb1507121706002-n1.htm
かかりつけ医に「眼科・耳鼻科」研修を 高齢者、専門医へ道のり遠く…
2015.7.12 17:06 SankeiBiz


 高齢者が、かかりつけ医に目や耳の症状を訴えるケースが目立つという。眼科や耳鼻科は内科の診療所に比べると数が少なく、足腰が弱ってきた高齢者には受診が困難になることもあるからだ。家庭医を育成する学会では、眼科や耳鼻科の知識を学んで初期治療を行い、必要なときに確実に専門医につなげよう、との取り組みが進んでいる。(佐藤好美)

 栃木県益子町の「どこでもクリニック益子」の池ノ谷紘平院長は内科とリウマチ科を掲げる。だが、患者からしばしば、「先生、目も診てくれないか」と言われる。

 町内には9カ所の医療機関があるが、眼科と耳鼻科はない。隣町の眼科まで車を使えば20分ほど。だが、車がないと1時間近くかかる。運転しない人や高齢者には負担になる道のりだ。

 患者から聞かれるたびに、池ノ谷院長は「ごめんなさい」と断ってきた。専門治療が必要な状態と見分ける自信がないし、「視力が低下してきた」という訴えにも対応できない。

 だが、あまりによく聞かれるので、具合が悪いのに眼科にかかっていない人が多いのではないかと、戸別訪問でアンケートを行った。質問は、目に何らかの自覚症状があるか▽その問題で眼科を受診したか▽受診していない場合は、その理由▽車の運転ができるか-など。

 53人(平均年齢65・5歳)から得た回答によると、目に何らかの症状がある人は75%。だが、症状がある人の60%は眼科を受診していなかった。理由には(1)症状が軽い(46%)(2)遠方、通えない(38%)-などが挙がり、「通えない」人の大半は車の運転ができなかった。

 池ノ谷院長は「厳密な調査ではないが、移動手段がなく受診していない人は、この地区だけでも推計で100人はいると思う」と言う。しかも「症状が軽い」と思って受診していない人が緑内障や白内障の可能性もある。

 眼科の巡回診療を求めて署名活動もしたが、すぐには難しそうだ。「自分で簡単な眼科診療をして、必要なら専門医に送るのが一番効率がいいかもしれない」と思っている。

■かかりつけ医に眼科研修 専門医に送る見極めがカギ

 6月末の土曜日、東京都渋谷区で「プライマリケア医のための眼科診療セミナー」が開かれた。参加したのは、各地の病院や診療所で働く現役医師30人。眼科が専門でない医師ばかりで、池ノ谷院長もここに参加した。

 講師は、京都大学・医学教育推進センターの加藤浩晃医師(眼科専門医)。まずは、ウイルス性結膜炎や結膜下出血など病名の異なる「赤い目」のスライドを5枚示し、こう言った。

 「こういう場合も、こういう場合も、患者さんはすべて『目が赤い』と言って、やって来ます」

 充血や目やにの状態により、どう病気を区別するか、どう治療し、どう感染を防ぐか、どんな状態のときに眼科専門医に紹介すべきか、加藤医師は具体的に説明した。

 その後は、眼球の奥をのぞく「眼底鏡」の使い方や眼圧の測り方の実習。眼底鏡を持ち、2人1組になってお互いの目をのぞいていた医師の間から、「見えた!」「映った!」と声が上がった。

 緊急に病院搬送すべき病気の見極めや、応急処置も含めて6時間。真剣な表情で講義を受けた医師らの質問は途切れず、予定時間を大幅に超過して終了した。

 セミナーを主催したのは、家庭医を育成する「日本プライマリ・ケア連合学会」。眼科のほか、耳鼻咽喉科や産婦人科でもこうしたセミナーを行う。いずれも、募集と同時に定員が埋まる。同学会の雨森(あめのもり)正記・生涯学習委員長は「地方では特に、年配の人が眼科まで行くのはハードルが高い。ちょっと視力が落ちてきたとか、目やにが出るときに、眼科に行った方がいいのか、点眼薬を出せばいいのか、判断できることが大切」とする。

 特に重要なのが、専門医に送るべき状態を判断すること。急ぐのか、1カ月以内でいいのかの判断も不可欠だ。「専門の医師が、初期からすべてのケースに対応するのは難しくなっている。役割を分担し、専門の医師には、より技術の必要な治療に時間と力を配分してほしい」(雨森委員長)

 講義に当たった加藤医師も、かかりつけ医が簡単な眼科疾患を診ることには利点が多いと考えている。例えば、緑内障の初期は自覚症状がない。40歳以上の20人に1人が緑内障なのに、受診しているのはその1~2割というデータもある。「かかりつけの医師が緑内障を見つけてくれれば、眼科への早期受診につながり、もっと多くの人が失明や視野狭窄(きょうさく)になるのを遅らせることができる」と訴える。

 こうした知識が求められるのは実は、地方に限らないようだ。東京の都心区から参加した病院勤務医(45)は「患者さんは、何十年も通っているお年寄りばかり。つえをついて病院に来て、買い物は宅配に頼っている。そういう人に眼科受診を勧めるのも難しい。できるところは診て、送るべきときに眼科医に送れる技術を身に付けたい」と話す。

 冒頭の池ノ谷院長はセミナーを経て、患者の目を診ることに現実味がわいてきた。「器具も必要だし、もう少し勉強して準備を整えたい」と話している。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/51824/Default.aspx
厚労省 療養病床の在り方めぐり検討会初会合 制度改正に向け議論
公開日時 2015/07/13 03:50 ミクスOnline

厚生労働省は7月10日、病床数削減の方向性が示されている療養病床のあり方をめぐり、制度改正に向けた選択肢を整理する目的で、「療養病床の在り方に関する検討会」の初会合を開いた。2025年にも到来する超高齢化社会に備え、医療・介護一体となった医療提供体制構築に向けて、慢性期医療の在り方、医療提供体制の在り方を議論する。2017年度末には介護療養病床の廃止も予定されていることも踏まえ、検討会では、療養病床の人員体制や施設基準などを検討し、今年中にも取りまとめる。

厚労省は、制度改正に向けた選択肢の整理に向けた論点を提示した。療養病床の在り方について、▽病気と共存しながらQOLの維持・向上が図られるよう、在宅復帰や在宅生活の継続を支援する、▽継続的な医学管理を行い、人生の最終段階においても穏やかな看取りを支える—などを例示。人員体制、施設・設備の在り方、制度上の位置付け(医療法、介護保険法、報酬制度など)、医療計画や介護保険事業計画などでの位置付けや施設整備に対する財政支援の在り方などについて検討する方針を示した。

介護療養病床をめぐっては、2006年に介護療養型老人保健施設への転換の方向性が示されたが、転換が進まず、期限が延長された経緯がある。高齢化が進展する中で、看取りが必要な患者など医療ニーズの高い入所者が増加する中で、どの施設が受け皿となるかも課題となっている。

日本医師会の鈴木邦彦常任理事は、「施設も在宅も活用する日本型の構築が必要となる」との見方を示した。

療養病床数の地域間格差も指摘されるが、「地域の特性を反映したもので、地域医療構想でも尊重されないといけない」と指摘。人口減少やサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームが増加する中で、療養病床は減少しているとした上で、「現行のスピードをあげて、機能転換や病床数の削減を求めるのであれば、現場が納得できる基金や補助金などによる支援が必要」と述べた。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201507/542987.html?bpnet
記者の眼
なぜ繰り返される造影剤誤投与の悲劇

2015/7/13 満武里奈=日経メディカル


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写真1 事故当時のウログラフイン注60%のアンプル(上)と外箱(下)(提供:バイエル薬品)
アンプルのラベルと外箱にはそれぞれ、商品名のすぐ下に赤字で「脊髄造影禁止」と表記されている。今回の医療事故を受け、同製品は今年4月に包装変更を行っている(写真2参照)。

 7月14日に東京地方裁判所で、国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)で発生した造影剤誤投与による患者死亡事故の刑事裁判の判決が下される。事故当時、医師免許取得から5年目だった整形外科医A氏(30歳)が業務上過失致死罪に問われている。

 事件が起きたのは昨年4月16日。腰部脊柱管狭窄症の再発疑いで入院していた78歳の女性患者に脊髄造影検査を行う際、脊髄への注入が禁忌とされている造影剤ウログラフイン注60%をA氏が誤って脊髄腔内に注入した。

 患者は当日、14時からの検査を終えて16時に病室に戻ったものの、徐々に強くなる両下肢の痛みを訴えた。30分もしないうちに痙攣が出現し、意識が消失。原因不明のまま懸命な心肺蘇生が行われたが、痛みを訴えてから4時間後の20時に永眠した。

 同病院は翌17日、院内に医療事故調査委員会を設置し、18日には記者会見を開いて謝罪。21日には病院ホームページでも医療事故が発生したことを報告し、謝罪した。医療事故調査委員会では3回の検討を行い、8月26日に事故原因の分析結果と再発防止策や医療安全体制強化の提言をホームページに掲載した(「脊髄造影検査におけるウログラフイン誤使用による死亡事故についての報告」 )。

 だが、昨年12月3日、警視庁捜査1課は業務上過失致死容疑でA氏を書類送検(関連記事)。今年3月に在宅起訴した。起訴理由は、造影剤選定に当たり、その薬理作用を確認することを怠った過失があったというもの。今年5月から3回にわたり東京地裁で公判が行われたが、A氏は「間違いありません」と過失を認めており、事実関係に争いはない。検察は禁錮1年を求刑している。

 裁判で紹介された遺族の夫、そして2人の息子の意見書には、「しっかり反省し、二度と医療にかかわることのないように辞めてもらいたい」「人の命を預かる仕事に就いているにもかかわらず、脊髄造影に使用できないことを知らず、箱の注意書きを読まないなど、医師としての資質に欠ける。己の不勉強と傲慢反省し、一生、贖罪に努めてほしい」といった意見があった。

 一方で、多くの医師らがこの事件を他人事ではないと感じているようだ。少なくとも東京都、長崎県、熊本県の保険医協会、現場の医療を守る会、日本産婦人科協会などが「寛大な判決」を求める嘆願書を東京地裁に提出。いずれも、A氏の個人責任を追及するのは妥当でなく、病院の医療安全体制に欠陥があったことが今回の医療事故を招いたのだと主張している。


脊髄造影検査はダブルチェック体制なし

 裁判で明らかになったのは、脊髄造影検査時における病院側の体制の幾つもの不備だ。

 まず、脊髄造影検査を行う際には医師がその都度、使用する造影剤を検査室に隣接する操作室の棚から取り出す体制となっており、薬剤師によるダブルチェックの体制が欠落していた。処方箋が介在していなかったため、薬剤師による疑義照会は行われていなかった。

 また、検査には脊髄造影検査に初めて立ち会う初期研修1年目のB氏、C氏の2人がいたが、経験不足から造影剤の誤使用に気付かなかった。B氏は、A氏の指示通り、ウログラフインのアンプルカットを行っている。同病院ではCTや血管造影検査の際には看護師、診療放射線技師が常時立ち会う体制になっているが、脊髄造影検査や瘻孔造影、結腸造影などについては、これらのスタッフが立ち会っていなかったことも明らかになっている。

 一方で、同病院の医療事故調査委員会が昨年6月に取りまとめた調査報告書は、この事故の問題点の1つとして「レジデントに整形外科医としての医学的知識が欠如している」ことを挙げている。「基本的な医学的知識が欠如しているほか、造影剤の注意書きを確認してそれに準拠することを怠ったことが本件事故発生の一番大きな原因であった」と記載している。

 A氏にとって、その日は同病院で脊髄造影検査を行う初めての日だったが、他の医療機関では既に10件程度の脊髄造影検査を経験していた。ただし、いずれも造影剤の準備や確認などは看護師や診療放射線技師が行っていたため、ウログラフインが脊髄造影検査に禁忌であることを認識していなかったとA氏は公判で語っている。1カ月前に股関節造影で使用したウログラフインを棚の中に見つけ、使用しても問題ないだろうと判断したという。

 A氏の指導医も証言台に立ち、「A氏は外来、入院、手術、どれも特に問題なく、平均以上だった。脊髄造影検査も任せても問題ないと判断した」と話している。


繰り返されてきた造影剤誤投与

 実は、国内における造影剤ウログラフインの誤投与による死亡事故は初めてではない。今回の件を除き、既に7例について刑事裁判が行われ、うち5例で医師らが有罪判決を受けている。判決は、罰金50万円となったものから、実刑または3年の執行猶予付きで禁錮1年となったものまで様々だ。こうした過去の教訓が生かされていれば、今回の事故は防げた可能性がある。

 「いくら注意しても人間には限界があり、ミスをしてしまうことがある。それを『気合いで防げる』と考え、個人責任を追及して刑事裁判で解決しようとするのは前近代的だ。だからこそ同じ医療事故が繰り返されてきた」。こう断じるのは弁護士であり、医師でもある浜松医科大学教授の大磯義一郎氏だ。

 大磯氏は、病院側が安全管理体制の構築を怠った事実、すなわちシステムエラーを放置していたことを棚に上げ、今回の事故の原因が医師個人の過失にあると結論付ける報告書を医療事故調査委員会で作成したことが刑事裁判につながったとみており、「たまたま地雷を踏んでしまった一人の研修医の人生が台無しになった」と語る。

 「医療事故は刑事裁判で裁いても解決しない」ということを、今年の(日経メディカル5月号特集「医療事故調で現場はどうなる」の取材の際、有識者の先生方は口々に訴えていた。医療事故の「原因究明」と「再発防止」を目的に、今年10月には医療事故調査制度が開始し、過誤の有無を問わず、予期しない死亡事故について院内調査を行うことが全国の病医院に義務づけられる。

 「どうすれば二度と同じ悲劇を繰り返さずに済むのか」――。筆者はその答えを求め、有識者に意見を聞いて回ってみた。

より踏み込んだ対策が必要

 浜松医大の大磯氏が提案するのは「注意書きの表示法の見直し」と「厚生労働省による指導」だ。ウログラフインは外箱とアンプル、それぞれに「脊髄造影禁止」の文字を赤字で示しているが、「人がよく注意しないとミスを防げないのでは注意書きとはいえない」と大磯氏は指摘し、表示法のさらなる改善をメーカーに要請することも1つの手段と考えている。

 実際、バイエル薬品は今回の事故を受け、今年4月にウログラフィン注の包装改良を行っている。外箱とアンプルに表示していた「脊髄造影禁止」「血管内投与による造影には使用しないこと」の文字を拡大して強調して対応している(写真2)。


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写真2 ウログラフィン注60%の外箱(提供:バイエル薬品)
左が事故当時の外箱、右が今年4月の包装変更後の外箱。もともと記載していた外箱の「脊髄造影禁止」「血管内投与による造影には使用しないこと」の文字を拡大して強調した。

 また、今回の事故では、脊髄造影検査についてダブルチェック体制がなかったことが分かっている。これについて大磯氏は「例外を作らず、薬剤師がダブルチェックする体制を整備しておくことが重要だ」と強調。その実現には、厚労省が都道府県を通じて各施設を指導するなど、行政による積極的な働き掛けがあってもよいのではないかと話す。

 大磯氏と同じく、医師であり弁護士でもある田邉昇氏は「例えば再発防止の方策として、ウログラフインを脊髄造影に使用できないような形状に変更するなどして販売することも有効ではないか」と提案する。

 裁判を傍聴するなどして今回の刑事裁判を注視してきた、いつき会ハートクリニック院長の佐藤一樹氏も、「今後同様の事故を繰り返さないためには、製品、機械、システムの設計段階で、ユーザーが誤った操作をしないように配慮し、万が一誤った操作をした場合でも、故障したり危険な状況に陥らないように設計する『フールプルーフ』の概念や、故障や誤操作によるトラブルが発生することをあらかじめ想定し、起こった際には致命的な事故や損害につながらないよう設計する『フェールセーフ』の考え方を医療安全の現場に導入し、製品を改良することが必要だ」と話す。過去には、繰り返し事故を招いた高濃度の製剤規格を廃止して低濃度に一本化した例(フェニトインなど)や、誤投与を予防するために専用針しか接続できないよう改良した例(高濃度カリウム製剤など)もある。

  一方、医療安全に詳しい自治医科大学メディカルシミュレーションセンター長で医療安全学教授の河野龍太郎氏は、再発防止策を実現することはそう簡単ではないと指摘する。「『その時、注意しておけば間違わなかった』とはよく言われることだが、勤務中ずっと注意を持続できるかというと、人間の能力的にそれは不可能。エラーをした人は、その行為の瞬間は正しいと思って行動しているので、『なぜその時に、それを使うのが正しいと判断したのか』を検討しなければ同じ悲劇は繰り返される」。こう語る河野氏は、事故の原因分析には人間行動に関する深い知識が必要だと訴えている。

 ただし、医療安全のシステムエラーを分析できる人材を養成するには時間も費用も掛かる上、抽出された問題点を改善につなげる場合にも、同じく費用、時間、マンパワーが必要になる。「もし、完全に医療事故を防止しようとするなら、職員へ教育訓練を行った上で、能力管理、正しい判断に必要かつ十分な情報の提供、人間の行動特性を考慮したエラーの起こりにくいシステムを作るなど、大幅な改革が必要となるだろう。だが、現在の医療システムはNo Money、No Manpower、No Timeの3N状態。さらにNo Management状態で、リソースが全く不足している。医療従事者だけの自助努力には限界があるので、国民全体でこの問題を考えるべきだ」と河野氏は訴える。

 医療事故の原因となるシステムエラーを排除することは一朝一夕にはいかないだろうが、できる限りの再発防止策を講じられるよう、各医療機関が地道に努力を続けていくしかなさそうだ。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/51820/Default.aspx
武田薬品 ARBブロプレス誇大広告の業務改善命令に対する改善計画 厚労省に提出 計画詳細は後日公表
公開日時 2015/07/13 03:51 ミクスOnline

 武田薬品は7月10日、ARBブロプレスの臨床試験「CASE-J」の誇大広告に伴って厚労省から出された業務改善命令に対する改善計画を、同日付で同省に提出したと発表した。ただ、計画の内容は10日時点で明らかにしておらず、「あらためて当社ホームページ上に公開する予定」としている。同社は本誌取材に、厚労省から改善命令を6月12日に受領し、1か月以内に改善計画を提出するよう求められていたことから、まず改善計画を提出した事実のみを発表したと説明した。

 同社はこの日の発表資料の中で、「14年3月以降、医療関係者向け広告資材に関する審査・管理体制を強化してきたが、今般の業務改善命令を受け、新たな改善策を実施する」「再発防止に向け、改善計画に沿って必要な改善策を迅速かつ確実に実施し、当社の取り組みが医薬品業界全体の適正な広告活動の一助となれるよう努める」としている。

 なお、厚労省は改善命令の際、改善計画の中に、▽広告等の審査体制について、内部職員による社内審査に止まらず、外部の有識者等も含めたものに整備する▽新たな審査体制の下、過去に作成した広告等についても外部有識者の意見等も踏まえ最新の知見に基づく見直しが速やかかつ継続的に行われる審査体制・社内体制を整備する▽再発防止のため、広告等の作成・審査に携わる社員及び管理職の者に対し、医薬品医療機器法を始めとする法令、通知及び業界自主基準を改めて周知徹底するとともに、適切な教育訓練の一層の充実を図る――といった内容を盛り込むよう求めていた。


  1. 2015/07/13(月) 05:27:24|
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