Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

6月26日 

http://www.m3.com/news/general/334404?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150626&dcf_doctor=true&mc.l=109380770
福岡大に1億円超賠償命令 「手術後の管理不適切」 
2015年6月26日(金)配信 共同通信社

 福岡大筑紫病院(福岡県筑紫野市)で手術を受け、重い後遺症を負ったとして、難病のクローン病患者の男性=北九州市=と親族が、大学と主治医らに計約6億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は25日、「術後の管理が不適切だった」として計約1億6千万円の支払いを命じた。

 判決理由で青木亮(あおき・まこと)裁判長は、手術中に6リットルの出血があった上、手術翌日に出血して容体が急変した点を挙げ、「術後管理は再度出血することを念頭に置いてすべきだ。主治医ら3人は、血圧や脈拍数に異常があったら連絡するよう、当直の看護師に適切な指示を出すべきなのに怠った過失がある」と認定した。

 判決によると、男性は2001年にクローン病を発症し、09年5月に手術を受けたが、翌日未明に腸管から出血。緊急手術を受けたものの、脳障害や運動障害が残り、寝たきりの状態となった。

 この医療事故では、福岡県警が13年、主治医ら5人を業務上過失傷害の疑いで書類送検した。福岡地検は14年、全員を嫌疑不十分で不起訴とした。

 福岡大筑紫病院は「判決文を精査し、対応を考えたい」とのコメントを出した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/332682?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150626&dcf_doctor=true&mc.l=109380771
新制度で産業医、「負担が数倍に」 - 野村忍・早稲田大学人間科学学術院教授に聞く◆Vol.1
ストレスチェック制度が12月施行
 
2015年6月26日(金)配信 聞き手・まとめ:成相通子(m3.com編集部)

 今年12月から労働安全衛生法の改正で「ストレスチェック制度」が新設される。法改正は昨年6月に公布され、厚生労働省が周知に努めているが、新制度施行に当たって現状の課題や影響が指摘されている。心身医学を専門とし、自身も産業医の経験がある早稲田大学人間科学学術院教授、野村忍氏に伺った(2015年6月8日にインタビュー。計3回の連載)。

――まず今回の制度改正の意義、目的について教えてください。


心身医学を専門とし、自身も産業医の経験がある早稲田大学人間科学学術院教授、野村忍氏に伺った。
 第一の目的は、メンタルヘルスの一次予防、病気にならないように セルフケアを支援し、快適な職場づくりに努める。第二の目的は、ストレスチェックで高ストレスと判定された「高ストレス者」について、アフターケア、事後措置 をすることです。

 事後措置とは、医師、特に産業医が面談し必要に応じて、(1)就業上の配慮が必要な場合は、残業時間の削減や、職場環境で上手くいかない時の配置転換など、就業上の配慮を事業者に対して申告する、(2)うつの程度がひどい人に対して医療機関を紹介し、専門家の治療を勧奨する――の二つです。

――産業医でもメンタルヘルスに詳しくない医師は多いと聞きます。現状でストレスチェックをやる問題点はないのでしょうか。

 法律上は現在も50人以上の事業所には産業医を必ず置くことが定められています。厚労省としては、産業医がいて、産業保健スタッフ、保健師や看護師らと連携して会社の健康管理、産業保健を現状でもきちんとやっているという前提の上に、産業医を中心とした制度を思い描いているようです。

 ところが現状は、専属の産業医がいる会社は非常に少ない。大企業などではきちんとやっているところもありますが、多くの場合は産業医がいても、非常勤、嘱託だったり、週に1回とか、場合によっては月に1回、時には名前ばかりの産業医であることもあり、実際は業務をやれる産業医は非常に少ないという問題があります。

 さらには、産業医も多くは内科や外科の高齢の先生がやっている場合が多いです。名前ばかりの産業医が多いことを踏まえると、ストレスチェックをするのは非常に困難です。

――実務をできる産業医が少ない中で、現時点で企業に対して具体的な影響は何か起きているでしょうか。

 これからでしょう。将来そういう問題が出てくるかもしれない。企業は自分の所の産業医ができない時は、外部委託、アウトソーシングをしてその部分を代行してもらうという流れになるのではないでしょうか。

――57項目のストレスチェックの質問票を厚労省が用意しています。産業医の役割はどうなるのでしょうか。

 産業医がやるとすれば、厚労省の57項目を使い、厚労省が提供する集計ソフトを使えばとりあえずはできます。しかし、実務を誰がやるのかが非常に難しい問題です。

 大きな企業で、例えば1000人や1万人の会社で、それだけのことを産業医ができるかと言うとできません。そのため、会社の中に実務担当者を設置し、実務担当者を産業医が指示をする仕組みを想定していますが、そのような実務担当者もどこまでできるかが問題。おそらく外部委託が多くなるのではないでしょうか。

 また、57項目以外にも民間で開発された質問票とソフトが使われていて、現在はそれを利用している企業がほとんどです。9割ぐらいはそのような外部委託のツールを使っているのでしょう。今までの年次の推移と今後の比較をするためにも、同じツールを継続して使いたい企業は多いと思います。

――産業医にとっては、検査後の面談の負担も大きいですね。

 現在の産業医の役割とは、(1)健康診断をやって、要注意の人を呼び出す事後措置などの健康管理をする、(2)どのような作業環境で社員が仕事をしているのか巡視して例えば職業病や労働災害になりそうなリスクをコントロールする――の二つ。さらに最近できたのが、(3)過重労働面談で、労働時間が長い人に面談や健康診断を行い、残業時間を減らすよう指示するなどの事後措置です。他にも、社内の健康教育や研修の実施などが現況の産業医の役割になっています。

 これらに加えて、ストレスチェックを行うと、負荷が2倍か3倍かになると思います。やること自体もそうですが、やった後の面談をどうするかが問題です。当面は産業医がやることになっているが、今の厚労省の試算では、だいたい検査を受けた人の10%の人が高ストレス者と選定されます。1000人の会社では100人が面談の対象者になる可能性になり、非常に負荷がかかります。

 面談の内容も負荷が高い。面談では身体疾患だけでなく、ストレスに対してどうするか、うつとか不安を診ないといけません。身体疾患はドクターであれば診られると思いますが、メンタルの方の面談のスキルは持っていない人がほとんど。それを研修などでもう一回トレーニングしてやることになると思います。そうすると負荷が今までの何倍にもなります。

 産業医と企業の契約内容も、例えば月額で契約している嘱託の場合、契約料金も2倍や3倍もらわないと対応できないことになるでしょう。

――面談の時間はどれぐらいになるのでしょうか?

 厚労省の想定では、基本的には1人に対して30分。また、ストレスチェック後「遅滞なく」面接指導をするという文言があります。遅滞なくとは、早急にということだと考えられますが、例えば100人の対象者がいて、1カ月以内に面談を済まして、事後措置につなげないといけないとすれば大変な労力がかかるでしょう。



https://www.m3.com/news/iryoishin/334161?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150626&dcf_doctor=true&mc.l=109380918
後期研修も大学病院中心で◆医学部長アンケートVol.2
「地域全体像を描く市中病院は極めて限られる」
 
2015年6月26日(金)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 改革が進む専門医制度。一部の学会では、今年度から新制度での更新が始まるが、新たの研修(後期研修)が始まるのは2017年度から。(『専門医の更新料、日本専門医機構に「1万円」』を参照 )。日本専門医機構の専門医制度整備指針では、中核となる専門研修基幹施設と複数の専門研修連携施設が連携して、専門研修施設群を形成することになっている。

 第2問では、大学病院は基幹施設になるべきかを尋ねた。

第2問 2017年度から新たな専門医制度がスタートします。その専門医研修は大学病院を中心に行うべきでしょうか。それとも市中病院が中心になるべきでしょうか。
  ア.大学病院中心  イ.市中病院

 第1問に続いて、専門医制度についても8人が「大学病院中心」と回答した。大阪市立大学医学部長の荒川哲男氏は「特に、総合診療専門医を除く分野は大学病院を核とし、市中病院を含む病院群でカリキュラムを作るべき。研修の母体は大学病院。総合診療専門医に関しては、カリキュラム作成や統括は大学病院が行うべきであるが、実際の研修はへき地を含む市中病院や診療所で行い、臨床研究を学ぶ目的で、大学病院は短期間履修するのが適当」との意見を寄せた。

 山形大学医学部長の山下英俊氏は「多機能専門教育が可能なのは大学が中心となったシステムであり、大学はそのために機能すべきと考える」と回答。広島大学医学部長の木原康樹氏も「市中病院にあって、地域全体像を描きつつ展開しているところは極めて限られている」と指摘した。

 そのほか、「幅広い協力病院のネットワークを持ち、万全の指導体制を備える大学病院が、専門研修基幹施設としての役割を果たし、研修の中核を担うことが適切であると考える」という意見もあった。



http://www.m3.com/news/general/334403?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150626&dcf_doctor=true&mc.l=109380773
学部生も動物で手術訓練 大分大、実習施設オープン 
2015年6月26日(金)配信 共同通信社

 大分大は25日、医学部生の時から内視鏡や腹腔(ふくくう)鏡の操作に慣れてもらおうと、動物を使った外科手術の実習ができる施設をオープンさせた。各地の大学では模型やシミュレーション機器を使うのが一般的だが、医療現場では高度の技術が求められ、本番さながらの訓練で安全性を高める。

 大分大によると、卒業前にこの施設で継続して実習する予定で、こうした取り組みは全国でも珍しいという。施設は研修医も使用でき、約3600万円を投入して手術台や器具をそろえた。

 新しく開発した手術器具などのテストも想定。大分大の担当者は「医師や企業の研究者にも活用してほしい」と話している。



http://www.m3.com/news/iryoishin/334064
24時間体制の事故調“よろず相談”
東京都医師会、10月の制度開始向け始動
 
2015年6月26日(金)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 この10月からの医療事故調査制度のスタートに備え、東京都医師会ではこのほど24時間体制の「院内調査支援相談窓口」をスタートさせた。同医師会は「支援団体」に手を挙げており、その主要業務に当たる。死亡事例が発生した時に第三者機関への報告対象になるか否かについての相談のほか、病理解剖やAiを依頼する場合の依頼先、院内調査実施に当たっての助言や調査支援など、医療事故調査に関するさまざまな相談に応じる。いわば医療事故に関する「よろず相談」だ。担当するのは、都内3大学の医療安全に精通した医師や法医学の教授、准教授、計5人だ。


 東京都内には、13の大学病院本院がある。都医師会ではこれらの大学として連携し、遺体の保管・搬送、病理解剖、院内調査支援などにも取り組む。日本医師会は、47都道府県医師会と一括して、厚生労働省に対し、「支援団体」として申請した(『日医、医療事故調の支援団体に名乗り』を参照)。福岡県や愛知県の医師会は、医療事故調査に関わってきた経験があるが、それ以外の多くの医師会の準備は始まったばかり。その中で、医療事故報告事例が多く、ノウハウの蓄積も進むと予想されるケースとして注目されるのが、東京都医師会の取り組みだ。

 6月21日の役員選挙で都医師会会長に就任した尾崎治夫氏は、会長就任に当たって、3つの施策に取り組む方針を打ち出した。(1)東京にふさわしい「地域医療提供体制」と「地域包括ケア」の構築、(2)超高齢社会を見据え、東京都民の予防医療への取り組み――に加えて掲げたのが、「変容を迫られる医師をしっかりサポートできる医師会」であり、支援団体としての取り組みはその一環だ。

 尾崎氏は、「医師が直面するさまざまな問題に対して、医師会として支援するシステムを作っていく方針。10月から始まる医療事故調査制度への対応も非常に重要であり、医師が安心して医療に取り組むことができる体制を作っていきたい」(尾崎氏)。最終的には、医療事故に限らず、死亡事例か否かなどにかかわらず、診療上のトラブルなどについての幅広い相談を行う窓口に発展させる構想がある。

 この4月以降、既に3例の相談を試行的に受け、解剖などを実施、院内調査を進めた。(1)産科における死産事例、(2)転院して別の病院に入院した患者が、退院間近に死亡した事例、(3)入院患者が、ある朝、突然死亡していた事例――だという。都医師会の担当理事の小林弘幸氏(順天堂大学病院管理学教授)によると、第三者機関(医療事故調査・支援センター)への報告対象に関する基準がそれほど明確ではないこともあり、該当事例かどうかの判断は、必ずしも容易ではないという。小林氏は、経験を重ね、事例を検証していく重要性を説く。

 大学教授、准教授、5人が相談に対応

 東京都医師会では、2013年9月に「院内調査委員会ワーキンググループ」を設置、「支援団体」の在り方などについて検討を進めてきた(『院内調査、支援団体の検討進む』を参照)。具体的準備を進め、相談受付などを試行的に行い、6月19日の地区医師会会長会議で、「支援団体」の体制を説明した。

 「支援団体」としての主な業務は、(1)院内調査支援相談、(2)遺体の受け取り・搬送・保管、Ai撮影、(3)病理解剖、(4)院内調査実施の支援(委員の派遣や報告書作成の支援)――など。これらは、大学をはじめ、他の「支援団体」と連携して取り組む予定だ。

 あくまで「支援」であり、各医療機関から支援の要請があれば対応する。主な対象は、中小病院や診療所などを想定している。大病院と異なり、事故調査の経験やノウハウに乏しいと考えられるからだ。小林氏は、「中小の病院や診療所の先生方にとっては、ハードルが高い制度ができるように映る。しかも、対象となる事故が起きる頻度は、開業して一度経験するか否かくらい低いと思われ、実際に直面した時に、どう対応すればいいか困ることが想定される」と説明する。24時間の相談体制にしたのも、こうした事情からだ。「一生懸命やっていても、事故は起きる。事故が起きた場合にも、支援を受け、不安なく日常診療に戻れる体制にしないと、“2次災害”が起きる可能性がある」(小林氏)。

 都医師会理事の橋本雄幸氏(汐留みらいクリニック院長)も、「予期しない死亡は、かえって中小病院や診療所が直面するケースが多いのではないか」と見る。さまざまな経験や知見が蓄積される大病院とは異なり、医師が少ない中小病院などでは経験等に限りがあるからだという。「同じような事例でも、予期できたか否かは、医療機関によって異なるという難しさがある」(小林氏)。

 (1)の相談を受け付ける5人は、「院内調査委員会ワーキンググループ」のメンバーの教授、准教授クラス計5人。医療事故調査制度では、「診療に関連した予期しない死亡」が報告対象だが、その判断は事例の蓄積によって明確になると考えており、制度に精通した医師が相談に応じ、経験やノウハウを蓄積すべきとの考えからだ。まず10月までは試行的に進めつつ、「院内調査委員会ワーキンググループ」を毎月開催し、件数や内容について検証を続ける。本格始動する10月以降も同様に、検証を継続する予定だ。

 もっとも、実際にどの程度相談が寄せられるかどうかは未知数のため、5人で対応できるかどうかは不明だ。小林氏は、「最初はさほど多くはないのではないか。ただし、何かの医療事故が起き、それがメディアなどに取り上げられ、(第三者機関に報告すべき事例と思われるのに)報告していなかった場合などが批判的に取り上げられれば、相談が増えることが予想される」と見る。

 (2)の「遺体の受け取り・搬送・保管、Ai撮影」は、NPOりすシステム「Aiセンター・新木場」が担当する。(3)の病理解剖は、東京大学、昭和大学、順天堂大学での実施が既に決まっており、残る都内の10大学などとも連携予定。近く各大学に対応可能かを確認する予定だ。「遺体をどう移送するか、また病理解剖の体制は、これまで厚生労働省などでもあまり議論されてこなかった。しかし、モデル事業をやっていた時代から、病理解剖の重要性を認識していた。病理解剖なくしては、きちんとした院内調査は難しいだろう」(小林氏)。病理解剖については、担当医の立ち会い、司法解剖とのすみ分けなども、今後の検討課題だ。

 (4)の「院内調査実施の支援」についても、大学と協力しつつ行う。「院内調査を自院でできる場合はいいが、そうでない場合には、支援が必要。また調査報告書の作成主体は、あくまで各医療機関だが、これまで経験がない場合には書き方が難しいので、そのアドバイスも行う」(小林氏)。橋本氏は、院内調査の支援について、「第三者性に留意する」と強調。例えば、依頼した診療所の院長の出身大学とは異なる大学に委員の選出を依頼するなどの配慮を行う。事故調査結果については制度上、「遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない」とされている。小林氏は、調査報告書の取り扱いについては、「患者が、『絶対にほしい』と言った場合には、匿名化等などを行い、出さざるを得ないのではないか」と見る。

 以上の「支援団体」としての業務は、いずれも都医師会会員以外からの依頼にも対応する。日本医師会は医療事故調査の費用を賄うための保険を検討している。同保険に加入する会員の支援に係る費用はその保険で賄い、会員以外からは、所要の費用を徴収する予定だ。なお、10月までの試行的取り組み、また医慮事故調査制度の対象事例以外の相談は、都医師会の予算で対応する。

 都医師会は「支援団体」の体制を整えるに当たって、この4月から、医賠責担当と「支援団体」担当の部署と委員会を切り分けた。この6月の新執行部発足に伴い、担当理事も分けている。

 医師、医療者への啓発が課題

 「支援団体」の体制は整いつつあるが、10月の医療事故調査制度のスタートに向け、課題もある。橋本氏はその一つとして、医師への啓発活動を挙げる。「医療法が改正され、制度が創設されること自体、知らない医師は多い。10月のスタートは差し迫っており、いかに周知徹底を図るかが課題」(橋本氏)。既に地区医師会の会長や医療安全担当理事などへの説明会は開催したが、今後、各地域で一般会員向けの説明会の開催も検討する。

 小林氏は、「医療事故調査制度の成否は、医療者側と患者側それぞれの倫理観にかかっている。どちらかが倫理観を崩せば、この制度がより良い方向に向かわなくなる恐れがある」と見る。例えば、医療者側については、いざ患者が死亡した場合に、医療事故調査・支援センターへ報告せずに済むよう、カルテにさまざまな死亡が「予期される」と防衛的に記載する懸念がある。一方、患者側についても、不必要に警察に相談したり、責任追及に走る事態などが考え得る。「医療者と患者、双方が、医療安全のための制度として、医療事故調査制度を活用する倫理観が求められる」と小林氏は強調する。

 尾崎氏は、「情報の非対照性などから、『予期しない死亡』の捉え方は医療機関側と患者側では必ずしも一致しない。『予期しない死亡』が発生した場合に、病理解剖やAi、院内調査という流れに乗り、その結果を報告書としてまとめ、遺族に伝える。こうした取り組みを通じて、100%までは行かなくとも、お互いに納得できるシステム作りが求められている。医療事故調査制度が信頼できる形で運用されるようになれば、遺族がいきなり警察に行くような事態は無くなって行くのではないか」と語っている。



http://www.m3.com/news/iryoishin/333039
製薬企業の謝礼は「賄賂」にあらず
問題は臨床研究の法規制、被験者保護の法整備と医療ガバナンス確立
 
2015年6月26日(金)配信 鈴木悦朗(神奈川県保険医協会学術部長)

 臨床研究のデータ不正、捏造が社会問題化し、それに重ね製薬企業による研究・講演などへの医師への謝礼の額や多寡へ、不当な印象づけをまとう報道も相次いでいる。医薬品・医療機器、医療技術の研究・開発は、医学・医療の発展に必須であり、医師、医療者の関与抜きでは成り立たない。研究・教育(講演)への正当な対価は社会的に当然であり、これへの指弾は筋違いである。現在の事態を機に、萎縮のスパイラルに医療者側が陥ることとなれば、医学・医療の研究開発の遅滞・停滞を招き、人材や医療環境の育成・醸成はもとより、国内で享受できる「成果」を失い、高額な機器・医薬品の輸入増加を招く結果となる。医学・医療の研究法制の構造的問題に触れるとともに、医療のガバナンス確立に向けた、利益相反について直言する。

 利益相反、利益誘導の誘惑をどう排するか 法的規制の諸外国と指針対応の日本

 産学連携により臨床研究、臨床試験が旺盛になると、大学、学術機関、学術団体、医療機関など公的存在、公的性格を帯びた存在が企業活動に深く関与することとなり、その存在の「責任」と、所属する「個人が得る利益」(経済的利益、名声など)との衝突・相反する状態、「利益相反(conflict of interest:COI)」が不可避的に発生する。医学研究はヒトを対象とし、他領域の産学連携と異なり、被験者の人権、生命の安全・安心が毀損される可能性が高く、また、研究方法・データ解析などの歪曲などのおそれも秘めている。よって、利益相反の「管理」が重要である。そのことは過去の不祥事を教訓に導き出されている。

 近年、各機関・施設は医学研究の公正・公平性の維持、透明性、社会的信頼性の保持のため、自律的に各団体、各機関が「指針」策定により研究成果を社会に還元している。

 世界に目を転じれば、米国はSunshine法により、医薬品・医療機器等の製造業者に、飲食、物品の利益提供や研究・講演の謝礼に関する報告義務を課している。フランスでも同様に「医薬品行政改革法」で法的に義務を課している。

 日本では日本製薬工業協会のガイドラインにより、各企業の自主的努力により公開としており、社会的な疑念の払拭や信頼回復には必ずしもつながっていない。逆に中途半端な位置づけが、講演などの対価報酬公開に対し副次的悪影響を懸念し、正当な講演活動の敬遠なども現実におきている。個人情報保護法制との抵触や整合などへの疑問も尽きず、割り切れない思いを医療者側は抱く格好となっている。

 臨床研究を一本の法的規制の下におき、資金提供の正当性を付与し、医学研究に有為な人材関与を

 日本の臨床研究はこれまで「倫理指針」対応であり、先般、疫学研究と臨床研究と指針統合されたが、再生医療は再生医療等安全確保法の法規制、一方、医薬品・機器の製品化の治験は医薬品・医療機器法(旧・薬事法)の法規制と、統一した法規制の下での実施とされていない。また被験者を保護する法整備もなされていない。

 現在、研究不正に端を発し、臨床研究の法規制が検討され、厚労省より自民党に法制化の枠組みが示されている。この中で製薬企業等から医師等への資金提供の公開を、臨床研究資金のみに限定し、原稿執筆、講演謝礼は除外し、業界の自主規制に委ねるとしている。

 悪印象が既についている感があるが、製薬企業依頼による研究協力や講演への謝礼は正当な対価であり賄賂ではない。社会的慣行の範囲の飲食もある。研究開発への協力や講演への依頼への対価支払いは、他産業や異業種でも往々にしてある。医療界のみが言われない批判や誹りを浴びる理由もない。

 われわれは臨床研究に関し指針対応など曖昧にせず、統一的な一本の法制の下規制し、資金提供に関る報告義務も課し、大学、学術機関、研究機関、医療機関が医学研究に果たす役割りを法的、社会的に認知させ、資金提供の正当性を公開を条件に付与し、無用な批判、萎縮を招かないようにすべきと考える。不祥事や利益誘導は、適正にこの法で罰すればよい。関係方面の理解と賢察を願いたい。

※本記事は、2015年6月22日付けの談話として、神奈川県保険医協会が同協会のホームページ上で発表した内容を、編集部でタイトルとレイアウトのみ変更したものです。



http://apital.asahi.com/article/news/2015062600026.html
群馬大病院の重粒子線治療の早期再開を要望 国に分間県市長会・町村会 
2015年6月26日 朝日新聞

 県市長会の清水聖義会長(太田市長)と県町村会の貫井孝道会長(玉村町長)は24日、厚生労働省を訪れ、群馬大病院での重粒子線治療についての早期再開を求める要望書を塩崎恭久・厚労相に手渡した。

 町村会事務局によると、群大の自主点検等の対応を踏まえ、新規患者の受け入れを早期に認めることや、重粒子線治療以外の先進医療についても、必要とする患者への影響を最小限とするため、早期に認めるよう求めたという。

 群大は5月13日から重粒子線治療での新規患者受け入れを止め、治療についても今月18日から停止している。



http://www.sankei.com/west/news/150626/wst1506260001-n1.html
【関西の議論】
「うちの子を殺す気か」看護師全員が一斉辞職に追い込まれた理由 特別支援学校「先進県」のはずが…
 
2015.6.26 11:00 産経ウェスト

 鳥取県立鳥取養護学校(鳥取市)で看護師6人全員が5月下旬に一斉辞職し、医療的ケアが必要な児童・生徒の一部が一時、登校できなくなる事態が起きた。県教委などによると、保護者からケアの遅れに対し繰り返し批判を受けたことが理由で、「うちの子を殺す気か」などと強い調子で迫られることもあったという。背景には要員不足の事情があり、県教委も人員配置や学校側のフォロー体制の不備を認め、改善に乗り出したが、保護者との和解はできていない。児童・生徒を積極的に受け入れ、特別支援学校の体制が「全国でも先進的」と胸を張る同県だが、思わぬトラブルで現場のあり方が見直されることとなった。

登校できない

 県教委などによると、同校の30~50代の女性の看護師6人全員が5月22日までに、一斉に辞職を申し出た。6人はいずれも非常勤で、後に復職を申し出た1人を除き、その後は出勤していない。

 同校は小学部~高等部に児童・生徒76人が在籍。うち、33人がチューブでの栄養補給やたんの吸引などの医療的ケアを必要とする。学校側は週明けの25日を臨時休校としたが、その後は付き添いの保護者がいる子供を除く10人程度が登校できない事態になった。

 同校では、1日あたり看護師5人が専用ルームでケアを担当していた。看護師の人数や配置については国などによる明確な基準はなく、学校側がケアが必要な児童・生徒数に対し適正とみられる人数を配置してきた。

 ところが、ケアが必要な児童・生徒は平成23年度が18人だったのに対し、今年度は1・8倍に増加。看護師の業務量が増えたことでケアを行う時間が遅れるなどし、4月ごろから一部の保護者から不満の声が上がるようになった。

県議会でも問題に

 この問題は6月8日の県議会総務教育常任委員会でも取り上げられた。県教委の説明によると、子供へのケアが7、8分遅れたとして、保護者から厳しい指摘を受けたことがあったという。

 また看護師から事情を聴いたという県議は「保護者にもかなり問題があるように受け取らざるを得ないような発言、生命にかかわるような言い方があった」と指摘。例えば点滴の位置が低いなど看護師に同じようなことを繰り返し言ったり、「何でこんなことするの」「うちの子、殺す気」といって迫るケースもあったという。

 県議によると、こうした事態にもかかわらず、看護師側は非常勤であることから言いたいこともいいにくい状況だったという。

 これに対し山本仁志教育長は「必要な看護師は確保しているつもりだが、チームで働ける体制になっていたかなど課題があったと認識しており、それらを解決するような体制をつくっていきたい。保護者に対しても納得が得られるよう努力していきたい」などと答えた。

学校側も体制の不備認める

 県教委などによると、同校の場合、看護師は1日あたり6時間勤務2人、5時間2人、3時間1人のシフトをとっていた。業務はケア以外にもケアの準備や洗浄などがあり、学校の会議などに出て意見を言う時間はなかった。

 一方、学校側も今回のトラブルを受け、看護師の代わりに保護者からの苦情を受ける体制がきちんとできていなかったと認めた。

 看護師の一斉辞職は、保護者からの厳しい指摘を繰り返し受け続け、思い詰めた結果だとして改善策を検討。保護者からの要望を受け止める窓口を設ける▽看護師が会議に参加できるようにし、職務上の意見を聞く窓口を明確化する-など、環境整備を実施することを明らかにした。

医療的ケア先進県のはずが…

 同県は「医療的ケアの必要な子供を通学させたい」という保護者の要望に応え、平成12年度から養護学校など特別支援学校に看護師を配置し、在宅だった重度の肢体不自由の子供らを受け入れてきた。こうした取り組みは他県からも「先駆的といわれる」(県教委特別支援教育課)。現在、特別支援学校は県内に4校あり、看護師の1日の稼働人数は辞職者を出すまでは全体で13人を確保していた。

 同校では6月11日、隣接する県立中央病院など3機関から看護師計4人の派遣を受け、1日あたり3人体制で医療的ケアを再開。15日には辞職を申し出ていた看護師1人が体制改革を確認の上、復職した。

 しかしケアの体制はなお不十分。当面は6月末をめどに看護師を6人にするのが目標で、月内にはもう1人採用する見込みという。1日あたりの体制も従来の5人から6人に強化することを検討している。野坂尚史校長は「学校独自でも努力し、縁者を頼るなどあらゆる手をつくして看護師を探したい」と話す。

 児童・生徒は現在ほぼ通学を再開しているが、一部の保護者と学校側の和解はまだという。県教委は学校から状況について聞き取りを進め、保護者会などで運営について理解を求める考えだ。

全国的な傾向

 文科省特別支援教育課によると、全国の公立特別支援学校で日常的に医療的ケアを必要とする幼児・児童・生徒は平成18年度以降増加傾向にある。26年度の調査では通学と訪問教育を合わせ7774人。全在籍者の5・9%にあたり、18年度に比べ1873人(31・7%)増えた。

 1人で複数のケアが必要な人も多く、延べ件数は2万3396件。内容別では、たんの吸引など呼吸器関係が69%、経管栄養など栄養関係が24・1%など。こうした状況に伴い、看護師も1450人と、18年の707人の2倍以上に増加した。

 同省は23年、特別支援学校などでの医療的ケアに関する今後の対応について都道府県に通知した。その中で、最近の傾向としてケアの内容がより熟練を要し複雑化しており、「児童・生徒の状況に応じて一定数の看護師の配置が適切に行われることが重要」と指摘。一方、保護者との関係では、看護師らの対応には限りがあるとして「相互に連携協力することが必要」としている。



http://www.m3.com/news/iryoishin/334563
シリーズ: 中央社会保険医療協議会
薬歴未記載81万件「保険制度への影響大きい」
不正請求額は最大で3億円超、関係団体の調査で判明
 
2015年6月27日(土)配信 高橋直純(m3.com編集部)

 6月24日に開催された中央社会保険医療協議会総会で、2014年の1年間で81万2144件、約3億円分の薬剤服用歴未記載があったことが報告された。大手ドラッグストアの調剤薬局で薬歴未記載が相次いだ問題を受け、日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の3団体が厚生労働省の要請を受け自主点検した。厚労省は各薬局に対し、不正請求額の自主返納を求めるほか、3団体は再発防止のための通知や研修を強化するとしている。

 2015年2月に新聞報道で大手薬局チェーンの薬歴未記載が報じられたことを受け、厚労省は2月23日に3団体に調査を要請した。調査対象期間は2014年の1年間(資料は厚労省のホームページに掲載)

 1年間の薬剤服用歴管理指導料の算定件数は2052万9703件で、そのうち3.96%に当たる81万2144件の薬歴未記載が発覚した。薬剤服用歴管理指導料は41点、もしくはお薬手帳に記載しない場合は34点で、診療報酬の不正請求額は最大で約3億3000万円になる可能性がある。未記載が故意かミスかは分からないという。厚労省は「お金を返してもらうのは当たり前。問題があれば厳正に対処していく。(中医協では)調剤報酬の在り方を議論してほしい」と説明している。

 団体別に見ると、日本薬剤師会が983店、54万3156件(同会把握の薬剤服用歴管理指導料算定件数の3.28%)、 日本保険薬局協会が225 店、5万4454件(1.39%)、日本チェーンドラッグストア協会が323 店、43万115件(7.34%)で、日本チェーンドラッグストア協会加盟店の未記載率が際立っていた。薬歴未記載が見つかった薬局は1220店だったが、調査対象となった薬局全体の数は把握できていないという。

 日本薬剤師会常務理事の安部好弘氏は、「薬剤師を代表する委員として、極めて遺憾であり、深くお詫び申し上げたい」と謝罪。その上で、再発防止のため通知、研修に取り組んでいると説明し、「保険調剤に真摯に取り組んでいる大多数にとっては、ルールを守れないところは保険調剤業務から退場していただきたいという気持ちだ」と語った。厚労省には「未記載が多い薬局には 個別指導の実施を求めたい」と要望した。

 保険者代表の委員からは厳しい指摘が相次いだ。健康保険組合連合会副会長の白川修二氏は「ミスであっても保険制度に与える影響は大きい。今回の調査期間は1年間だが、過去はどうなっているのか。請求権のある10年間分を徹底的に調べ、不正があれば刑事告訴を検討しないとペナルティにならない。自主点検という生ぬるいものではなく、行政できちんと始末をつけてほしい」と要望した。

 経団連 社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理の石山惠司氏も「日本チェーンドラッグストア協会の7ポイントは異常だと思う。自主返還ができるか疑問。性悪説で見て、監査をしてほしい」。日本医師会副会長の中川俊男氏は「安易に、『返還すれば良い』としてはいけない」と釘を刺した。

 

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO88603960X20C15A6CC1000/
高齢者の「残薬」深刻 管理しきれず症状悪化も  
2015/6/27 2:03日本経済新聞 電子版

 複数の病気を抱える高齢者が処方された多種類の薬を飲みきれず、自宅で大量に見つかる「残薬」が問題になっている。薬を服用せずに症状が悪化したり、医師が服用を前提に別の薬を処方して副作用が出たりといった深刻な事態も生じている。残薬を減らそうと、薬剤師が高齢者宅を訪れて相談に乗るなどの試みも広がり始めた。

 「飲んでない薬がこんなに見つかりましたよ」。薬剤師の高崎潔子さん(65)は、訪問した千葉市の80代女性の自宅で大量の残薬を見つけた。血圧を下げる薬、目まいの薬、ビタミン剤、精神安定剤――。数年前に処方された薬もあり、総額は計4万円分に上った。

 薬局タカサ(千葉県市原市)の在宅療養連携支援室長を務める高崎さんが女性宅を訪れたのは、女性を担当するケアマネジャーから相談を受けたためだ。

 脳梗塞を患った女性は目まいや頭痛、腰痛などの症状があり、7種類の薬を処方されていた。しかし薬を管理できず、紛失してしまう。服用しないため症状は悪化。別の病院を受診して薬を受け取るが再び紛失するなど、残薬が増える悪循環に陥っていた。

 高崎さんは医師に相談して薬の種類を減らしてもらい、朝飲む薬は1つの包みにしてカレンダーに貼り付け、昼・夕に飲む薬は瓶に入れて分かりやすくした。近くに住む家族にも協力してもらった結果、女性の症状は改善したという。

 東京都府中市の女性(89)も痛み止めやビタミン剤など12種類の薬を処方され、管理できずに半年分がたまっていた。訪問した薬剤師が全て使用期限内だったことを確認し、医師に処方を一時止めてもらった。

 残薬問題などを受け、厚生労働省は全国約5万7千の薬局を、患者が複数の病院から受けた処方箋をまとめて管理する「かかりつけ薬局」へ転換する方針だ。薬剤師が患者の薬剤服用歴(薬歴)を管理し、薬の重複や飲み残し、副作用リスクなどをチェックする。問題があると判断すれば医師に相談して処方箋の内容の変更を促す。

 多くの薬局は病院の周辺に店舗を設け、その病院の処方箋に沿って患者に薬を出しており、複数の病院に通う患者の薬歴を十分に管理できていないのが実態だ。

 医師で日本在宅薬学会の狭間研至理事長は「患者が薬を飲んでいないのに、医師が服用を前提に別の薬を処方すると、治療効果がなかったり副作用が生じたりする懸念がある」と指摘。「薬剤師には、患者宅を訪問して薬の服用状況や効果を確認し、医師に伝える役割が求められる」と話している。



http://biz-journal.jp/2015/06/post_10523.html
「死に場所がない」問題が深刻化?看取り難民大量発生の恐れ 破綻した在宅死推進政策 
文=編集部
2015.06.27 Business Journal

 団塊世代を中心に湧き起こった終活ブームは、2025年以降はいよいよ「死の本番」へと移っていく。2025年に団塊世代が75歳を超え、後期高齢者人口は約2000万人にも及ぶ見通しで、30年から40年にかけては「多死時代」に突入する。そこで最も深刻な問題となるのが、どこで人生の最期を迎えるか、いわば「死に場所」の確保である。

 最期の時を迎える場所は病院か、自宅か、介護施設か。その選択をできないどころか、最期の場所を確保すらできない「看取り難民」が大量に発生しそうなのだ。
 まず、死亡場所の変遷を振り返っておきたい。日本人の死亡場所は1950年代までは80%以上が自宅だったが、以降は今日まで右肩下がりを続け、自宅死と対照的に伸び続ける病院死が70年代後半に逆転した。医療経済研究機構が02年に発表した死亡場所の内訳に関する調査によると、日本は病院81.0%、ナーシングホーム・ケア付き住宅2.4%、自宅13.9%。フランスはそれぞれ58.1%、10.8%、24.2%、オランダは35.3%、32.5%、31.0%という構成比だった。
 厚生労働省は医療費抑制に向けて病床数削減を図りながら、2038年に病院以外の「在宅死」(介護施設での死亡を含む)を40%に引き上げる方針だ。この在宅シフトを実現させる仕組みが、医療・介護・生活支援を地域で一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築であり、厚労省はこれを国策と位置づけている。
 厚労省を後押ししたのが、社会保障制度改革国民会議が13年8月に「病院完結型から地域全体で治し、支える地域完結型へ」と提言したことである。地域包括ケアシステムは「住み慣れた地域で最期までその人らしく」というコンセプトで彩られ、さまざまな調査で在宅死を望む国民が多い現状に合致しているが、あくまで目的は病床数削減による医療費の抑制である。
 ところが、この国策が「看取り場所の消滅」という事態を招きかねないのだ。10年以上にわたって訪問診療を続けている医師は、危惧を述べる。
「看取り場所の確保に年々苦労しています。在宅療養では家族が24時間365日支えられることが必須ですが、老老世帯や独居世帯が増えて、それが望めなくなりました。しかも、日本人の多くが在宅での看取りを経験しなくなって久しいことから、死生観が培われていないのです。だから、例えば延命治療を行うかどうかについて、判断のできない家族が増えています」
 民間病院の看護師長も、現状での在宅シフトに疑問を抱いている。
「患者さんを地域で支えようというコンセプトで、在宅シフトのシナリオを書くのは簡単です。しかし、家族や地域の看護や介護の力が弱体化している中で、医療費削減を理由にどんどん退院させて、一体誰が支えるのでしょうか」

■ 地域医療構想

 では、家族の機能が衰退している渦中で、在宅シフトはどのように進められていくのだろうか。
 在宅シフトに拍車をかけるのが、15年度から17年度にかけて厚労省が進める第6次医療計画に追記される「地域医療構想」だ。これは2次医療圏(医療法で設定された複数の市町村を統合した単位)をベースに構想区域を設定した上で、区域ごとの医療需要を推計して必要病床数を算出し、25年のあるべき医療提供体制を検討するという取り組みである。
 構想区域によっては、不足している病床の増設も考えられる。区域ごとに設置される地域医療構想調整会議において、増床は病床機能の転換や集約化に併せて検討され、表向きは病床削減を目的にはしていない。厚労省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が作成したガイドライン(案)にも、病床削減という文言は記載されていない。増床する場合は、病床機能の転換や集約化と併せて「次第に収れんするよう」と微妙な表現で書かれている。
 しかし、医療提供体制政策はすべからく病床削減に向かうため、この構想に対しては日本医師会(日医)が反応した。今年3月19日に開かれた都道府県医師会地域医療構想担当理事連絡協議会で、日医の中川俊男副会長は「地域医療構想の仕組みは不足している機能の解消であり、急性期病床を削減する仕組みではありません」と指摘した。さらに中川氏は「財務省筋は急性期病床をもっと減らすようにと言ってきています」と打ち明け、警戒感を表明したのだった。
「これまで病床削減を正当化するために地域医療構想を使ってはいけないと強調してきましたし、これからも強調していきます」(中川氏)

■ 現実離れした地域包括診療料

 こうして国が舵を切った在宅医療の推進では、昨年4月の診療報酬改定で主治医機能の確立を目的として地域包括診療料と地域包括診療加算が新設された。この報酬は診療所と200床以下の中小病院を対象に、24時間対応、常勤医師3人以上(診療所の場合)、2次救急指定病院または救急告示病院(病院の場合)などを算定要件として適用される。24時間対応には診療所にも看取りを担当してほしいという意図が込められ、在宅での看取りを促す施策がスタートしたのだ。
 だが、厚生労働省の期待に反して普及していない。今年4月8日、厚労省は地域包括診療料の届け出件数が14年7月時点で122施設、18府県でゼロだったことを公表した。

 届け出件数が少ない要因としては、「常勤医師3人以上(診療所の場合)」と「24時間対応」の項目が挙げられる。日医が昨年12月に発表した調査結果(対象医師1519人)では、約7割の医師がこれらの項目について「負担・困難」と回答している。
 在宅での看取り推進策では、訪問看護ステーションの拡充も挙げられる。昨年4月の診療報酬改定で新設された「機能強化型訪問看護ステーション」は、24時間対応体制加算やターミナルケア加算などの届け出を算定要件に、機能強化型訪問看護管理療養費を取得できて大幅な増収が期待される。
 厚労省や日本看護協会は機能強化型訪問看護ステーションの増設を促進しているが、増収という政策誘導が必ずしも狙い通りに進むとは限らない。関東近郊に20拠点を開設する訪問看護ステーションは、機能強化型に移行する計画はないという。運営会社の社長は理由を打ち明ける。
「看護師が続々と退職するリスクが高いからです。訪問看護ステーションに就職する看護師は急性期病院出身者が大半で、20代後半になって当直や夜勤に疲れ、普通の生活をしたいという動機で移ってくるのです。うちで24時間体制を取ったら、看護師にとっては元の木阿弥になってしまい、すぐに辞めてしまうでしょう」
 機能強化型訪問看護ステーションには異業種から参入してくる流れもあるが、看護業界からは歓迎されていないようだ。
「異業種から参入してくる事業者の多くは単なる金儲け目的で、医療制度や診療報酬体系の基本すら知らない事業者も少なくありません。もともと医療への志があるわけではないので、儲からないと思ったらすぐに撤退する可能性も高い。そのため機能強化型の普及を目指す看護業界は、異業種参入組を、市場を歪ませてしまう元凶のように見ているのです」(医療コンサルタント)

■ 医療と介護の溝

 こうした現状にあって、病院は病床が削減され、診療報酬による政策誘導で在院日数の短縮を強いられ、患者は支え手が不在の「住み慣れた地域」に半ば放り出されるのだ。入院医療と在宅医療が共にひっ迫する中、双方の間に広がる溝を埋めるのが介護の役割である。だが、介護施設は看取りの場所として十分に機能していない。
「看取りは病院で行うという連携関係が続いてきた経緯があるため、ターミナルケア体制が十分に整備されていないのです」(ケアマネージャー)
 加えて、医療と介護の距離が思うように縮まらない現実もある。すでに制度上は医療と介護の関係は連携から一体化へと進みつつあるが、現場では「医療と介護は別もの」と考える医師はいまだに少なくない。「多職種協働」という一体化のキーワードが、むなしく先行しているのが実情である。民間病院に勤務する理学療法士は実態を語る。


「医療・介護に携わる多職種でチームを組んでも、協働と呼べる体制にはなかなかなりません。職種間の力関係から、医師が右を向けと言えば右、左を向けと言えば左を、他の職種は向かざるを得ないのですから」
 しかも一体化しようにも、介護職の大幅な不足が一向に解消される見通しにない。厚労省の推計では、25年までに介護職を100万人増員しないと、高齢化を支えきれないという。


■ 隘路にはまった現実

 いまや国民医療費は年間40兆円に迫っている。その抑制策として構築が進む地域包括ケアシステムは「病院から地域へ」を合言葉に、いわば原理主義のように医療・介護業界に浸透しつつあるが、それぞれの地域で扇の要となる自治体には、疑問の声が上がっている。
「地域包括ケアシステムを機能させるには医療機関と介護施設だけでは供給力不足で、地域住民のマンパワーが必要になってきます。しかし、地縁や血縁が濃くて、助け合いの習慣が定着しているような地域でないと、マンパワーを確保できないでしょう」(自治体保健福祉部長)

別の自治体福祉担当者はこう打ち明ける。
「自治体としては介護予防などにNPOやボランティアにも期待しなければならないところですが、正直にいってアテにはできません。活動の継続性が不安定だからです。やはり事業者でないと、サービス提供の質と量を安定的に確保できません」
 多死時代に向かう医療現場は、まさに八方塞がりに陥っているのだ。ある病院勤務医は、地域幻想からの覚醒を提言する。
「財源がないからという理由で次々に退院させてしまうのは、そもそも医療のあり方として問題があります。まず医療費と介護費の負担と給付を見直すこと。それから、これが最も重要な施策ですが、既存の医療システムにカネとマンパワーを投入すること。その意味で、医学部の新設も必要でしょうし、混合診療をもっと緩和して医療機関の収支を改善することも必要でしょう」
 負担と給付の見直しはともかく、医学部新設と混合診療の緩和は、共に日医を中心に今の医療界には忌避され、当面は受け入れられない。
 こうして隘路にはまった現実がある限り、団塊の世代は葬儀業者や信託銀行などが仕掛ける終活ブームに乗せられている場合ではあるまい。最期の場所としてどこを選ぶのか、そしてどんなターミナルケア体制を望むのか。医療・介護の提供体制を研究し、その推移も見通しておくことが大切といえよう。
(文=編集部)



http://www.m3.com/news/iryoishin/332204
シリーズ: その時どうする?患者トラブル調査
「治療は詐欺」「手遅れで来院」、医療否定の患者◆Vol.11
1割以上が遭遇、トラブル、「治療する必要はあるのか」
 
医師調査 2015年6月27日(土)配信 成相通子(m3.com編集部)

 Q10:近藤誠氏の本など、医療を否定する情報を信じている患者とトラブルになったことはありますか。「ある」と答えた場合は、そのエピソードを教えてください。

 がん治療の有効性を否定したり、科学的根拠が乏しいのに現代医療を否定するような内容の書籍などメディア情報が世間にあふれている。そのような情報を信じる患者とトラブルになったことがあるのか――。501人に聞いた。

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(%は、それぞれのカテゴリ内でその選択肢を選んだ人の割合)
 その結果、そのような患者とトラブルになったことが「ある」と答えたのは全体の13.6%。勤務医と比較すると開業医の方が多い傾向が見られた。

 具体的なトラブルの内容を見ると、治療しなかったために病気が進行してしまったり、病状が悪化したことを医師のせいにして被害を訴えたりする例があった。

 中には、これまでの治療が詐欺行為だったとして「医療費を全額返還してほしい」と言ってきた患者もいるとの意見があった。

・「今までの治療は全て詐欺行為だったから、医療費を全額返還せよ」。
・「医者が騙して金儲けしてるんだろ」。
・ニヤニヤ笑いながら、「ぼく、あの本読んだんで、薬とか飲みませんよ」と。
・「この医者はこう言ってる。あんたはなぜ違うんだ?」
・病状の悪化を、治療や検査のせいにしてこちらを非難する。
・書籍や新聞を持参して、その考えに固執して治療方針への理解が得られないことがあった。
・医師の言うことは信じないと断言する患者。
・手遅れになってから来院してくる。

 多かったのは、がんに関する話題。患者とトラブルにならなくても説得に苦労するケースや、無治療で進行して亡くなった場合に遺族が対応を問題視するなど、情報を信じた患者だけでなく、周りの家族や診察した医師も影響が出ていることが分かった。

・トラブルにはならなかったが、患者が近藤理論を信じ、根治が期待できる胃がんの手術を拒否したため、治療を受けていただくまで説明に苦労した。
・免疫療法という名の、無治療を希望された症例があった。
・現実を受け入れられないこともあり、5th opinionまでDr shopping。最後は民間療法で亡くなり、遺族が初期治療が不適切等と言ってきた。
・トラブルにはなっていないが、投薬中止・減薬はしたことがある。自分の責任でしてくださいと言いました。宗教関係で輸血拒否もあった。
・がんの治療は意味がないと主張された。
・がんは治療しなくて済むの一点張りの患者。
・がんと診断しているのに、一切の治療を拒否している。
・スタチンを飲むとガンになりやすいという週刊誌の記事を見て、スタチンを中止した患者がいる。
・多発性骨髄腫の患者。数年前に指名で近藤誠先生が初診。直接の原因かは分からないが、抗癌剤治療を完全拒否のまま療養型病院に転院した。
・トラブルではないが、高血圧治療中で前立腺癌と診断されるも、治療を拒否して民間療法に頼り、1年後に死亡した患者さんを診たことがあります。
・治療方法を変更してほしいといった要望の通りにしたら、すぐに悪化して亡くなった。それを医療サイドのせいにしようとした。断固拒否した。
・手術が必要であることを説明しても理解されずに受診を中断された。
・近藤先生のお話をどうしても伺いたいといって、がんが進行してしまった。

がん治療だけでなく、ほかの医療否定の問題もある。ステロイド治療や宗教上の理由による輸血拒否、高血圧治療の拒否、予防接種の拒否などが挙げられた。

・ステロイド拒否症の患者にしつこく文句を言われた。
・ステロイド軟膏の塗布を極端に避ける患者さん。
・手術の際に輸血が必要な患者(エホバ信者)に了解を得られなかった。
・コレステロールの薬は飲む必要がないと言い張って自己判断で中止した。
・検査治療の必要性を説いても聞こうともしない。
・高血圧治療の拒否。
・高血圧治療について、健診学会の血圧145/90が正常というような見解のため治療を拒否されたり、中断させられるようなことがあった。
・血圧を下げたくない、と言われたり、眼科には行かないと主張された(自分は内科)。
・予防接種不要と考えている親とのトラブル。

対応策や意見を記載してくれた回答もあった。「医療を否定する人を治療する必要があるのか」という根本的な疑問を投げかける回答者もいた。

・そういったことはあるが、逆にその反論本を紹介した。
・マスコミ受けを狙った本には騙されないように患者に説明している。
・治療に対して理解せず、自分の都合の良いことを書いてある書籍を盲信する患者がいた。テレビが特にタチが悪い。
・医療を否定する人を治療する必要があるのだろうか。



http://toyokeizai.net/articles/-/74377
医薬品扱う専門会議は「利益相反」がゾロゾロ
自己申告を鵜呑み、ずさんなチェックの実態
 
長谷川 愛 :東洋経済 編集局記者 2015年06月27日

厚生労働省の再確認で実態が判明。薬事分科会の委員が辞任することに

医薬品や医療機器などの承認を行う国の専門家会議で、委員による不適切な“申告漏れ”が明るみに出た。

厚生労働省は6月5日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会の委員のうち8人が、薬事に関する企業の顧問などに就き、定期的に報酬を得ていたことを公表。薬事分科会規程に反するため、8人とも辞任届を提出することになった。

発端は今年3月に、一人の委員から企業の顧問などへの就任について報告があったこと。これを受けて厚労省が約300人の全委員に、企業との契約内容を再確認し、実態が判明した。委員の多くが新薬候補や製品に関するアドバイザー契約を結んでおり、中には企業の代表取締役を務める事例もあった。

寄付金・契約金の”過少申告”

調査の結果、契約関係にあった企業に関連する審議で、「有利になるような委員の発言はなかった」(医薬食品局)としているが、委員の認識不足と、当局の確認の甘さが露呈した格好だ。

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また、薬事分科会の委員のうち24人が、審議品目の関連企業からの寄付金・契約金などの受領金額を過少申告していたことも判明。これは、4月下旬の朝日新聞の報道を受け、2014年度の審議会における委員の申告内容を、厚労省が企業に確認したことで明らかになった。

薬事分科会では、会議で審議される品目の製造販売業者と、競合品を作る最大3企業それぞれについて、委員が寄付金・契約金などの受領金額を4段階で申告する仕組みを設けている。その金額の多寡に応じて、審議や議決への参加が認められている。

過少申告が判明した24人中8人は、議決に加われない「50万円超500万円以下」の受領だったが、「受領なし」または「50万円以下」と申告し、議決に参加していた。ほかの16人は「50万円以下」とすべきものを「受領なし」と申告していた。これに対する罰則はない。

実は、厚労省では2014年4月にも、子宮頸がんワクチンの副反応検討部会で、企業からの金銭受領に関して、委員の申告内容に数多くの誤りが見つかっている。にもかかわらず、こうした問題が再度起きただけに、委員の自己申告に頼った運用が、信頼性を欠くことは明らかだ。

厚生労働相が今後の対策を言明

6月9日の厚生労働委員会で、塩崎恭久厚労相は、「委員の申告内容を企業に確認する“裏取り”を導入する」と今後の対策を説明。年度の誤りを防止する観点から、申告様式を改訂し、規程の重要事項は、会議開催の都度、注意を喚起する方針も示した。

だが、寄付金などの申告内容そのものを見直すべき、との指摘も根強い。審議の議決に加われない「50万円超500万円以下」という現行規程だと、3年前に60万円受領していても、3年連続で500万円受け取っていても、扱いは同じとなる。薬害オンブズパースン会議の水口真寿美・事務局長は、「(審議会の)透明性や信頼性を高めるためにも、どの企業から、いつ、いくらもらったかを具体的に公開すべきだ」と唱える。

命にかかわる製品を扱うだけに、利益相反のずさんな管理は許されない。厚労省は自己申告の鵜呑みを改めるだけでなく、規程そのものの見直しも検討すべきだ。

(撮影:今井康一)

(「週刊東洋経済」2015年6月27日号<22日発売>の「核心リポート02」を転載)


  1. 2015/06/27(土) 06:59:32|
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