Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月18日 

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/45705.html;jsessionid=F4D7E55EE0B8E06DE1BDC3537D994528
口頭での指示、意図した内容伝わらず- 医療機能評価機構、解釈間違い事例公表
2015年05月15日 17時00分 キャリアブレイン

 日本医療機能評価機構は15日、医療機関で口頭での指示や依頼をした際、送り手の意図した内容が伝わらず、受け手が間違って解釈したケースが、2011年1月から15年3月末までの間に4件あったことを明らかにした。同機構の総合評価部会は、指示や依頼を受ける際、復唱して確認する必要性を挙げている。【新井哉】

 報告のあったケースの中には、看護師が前日に使用した塩化ナトリウム注10%(20ミリリットル)を実施済みとする入力を依頼するため、研修医に「(端末に)打ってください」と伝えた。しかし、研修医は静脈注射を「打つ」と解釈し、塩化ナトリウム注10%を患者に静注したという。

 また、別のケースでは、医師が患者に上部消化管内視鏡検査を始めたが嘔吐反射が強く、のどまで進めたところで検査を終了。内視鏡室に入って来た看護師に「(のどまで挿入したが、上部消化管の)検査をしていない」と伝え、内視鏡を検査台にかけた。

 看護師は医師の言葉を「内視鏡を使用していない」と解釈。医師と看護師の会話を聞いた内視鏡洗浄担当の看護助手も内視鏡を使っていないと解釈し、洗浄や消毒をしないまま別の患者に使用した。解釈の間違いのあった医療機関では、送り手は相手に意図が伝わる言葉を使用するといった取り組みを行い、再発防止に努めているという。



http://www.m3.com/news/iryoishin/321871
「新たな被害者を作るな」、事故調査に警鐘
医療制度研究会で講演、浜松医大教授の大磯氏

2015年5月18日(月)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 5月16日に開かれたNPO法人医療制度研究会の第86回講演会で、浜松医科大学医学部法学教授で、医師で弁護士でもある大磯義一郎氏は、「医療者の人権保護からみた医療事故調査制度の問題点」と題して講演、この10月から医療事故調査制度が始まるのを踏まえ、「医療事故の調査で新たな被害者を作ってはいけない」と警鐘を鳴らし、同制度を医療者個人の責任追及ではなく、真に医療安全に資する制度として運営していく重要性を繰り返し強調した。

 そのためのカギとして、大磯氏が挙げたのは、2点。一つは、弁護士の利益相反と病院管理者の利益相反という、二つの利益相反をいかにマネジメントするかだ。もう一つは、「国際標準から50年遅れている我が国の医療安全への取り組み」(大磯氏)について、その遅れを早急に取り戻すこと。

 大磯氏がこれらの二つの問題が内在している例として挙げたのが、昨年4月の国立国際医療研究センター病院の造影剤ウログラフインの誤投与事故(『造影剤の誤投与事故、「間違いない」と担当医』を参照)。病院管理者は、個人責任に帰着させて事故対応をするのは、病院管理者らの利益相反に対する認識不足と、医療安全に対する知識不足に原因があると、大磯氏は指摘。

病院管理者と医療者の利益相反の考え方(提供:大磯義一郎氏)
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 同事故では、誤投与した医師個人の責任が追及され、業務上過失致死罪に問われ、現在公判中だ。「病院管理者と医療者の間には利益相反がある。病院管理者は、落とし所を考える。個人責任に帰して、全面謝罪をすれば、社会的なバッシングも受けにくい」(大磯氏)。これに対し、現場の医療者は、病院が組織の問題として対応しなければ、民事・刑事・行政責任を問われ得る。「病院管理者は、悪気がなくても、トカゲの尻尾切りをしてしまう。だからこそ、利益相反の存在を知ることが必要」(大磯氏)。

 また大磯氏が、「弁護士の利益相反」と指摘するのは、患者側だけでなく、医療側の弁護士にとっても、医療事故が紛争化すれば、仕事につながり、メリットがあると見るからだ。「2000年代前半の医療界の失敗は、医療者がバッシングを受けた時に、法律のプロに対応策を求めた点」とし、弁護士のアドバイスは参考程度にとどめ、医療者が自立的に対応すべきとした。

 「医療安全の50年の遅れ」とは、誤投与事故の原因を、ヒューマンファクターに求めるやり方だ。その後の医療安全は、組織上の問題、さらには「複雑なシステム」として捉える「レジリエンス・エンジニアリング」の考え方で対応する流れになっていると紹介(『なぜ繰り返される異型輸血の事故 - 中島和江・阪大病院中央クオリティマネジメント部部長に聞く』などを参照)。

 組織的に対応する場合、医療事故とその要因は「スイスチーズモデル」に例えて説明されることが多いが、大磯氏は、「穴にパッチを充てると、別のところに穴が開く」と指摘。パッチとして、事故が起きるとマニュアルやチェックリスト、ガイドラインが新たに作成されることが多い。これらは病院管理者の「免罪符」になり得るが、現場の医療者にとっては、マニュアル等以外のことに対応できなかったり、それが膨大になると業務負荷が高まり、結果的に遵守できないなどの問題が生じ得るとした。

 さらに、厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の構成員も務めた大磯氏は、同制度の省令や通知についても、医療者の人権保護の視点から解説。同検討会で議論になったのが、事故調査報告書や事故調査の際のヒアリング内容などの文書の取り扱い。これらが民事裁判や刑事裁判に使われることへの医療者への懸念は根強い。大磯氏は、医療者に対して、事故調査のための聞き取りを行う際には、「医療安全のために行うものであり、責任追及のために使われるものではない」旨を説明するとともに、報告書の冒頭などにこの旨を記載すれば、民事訴訟手続きで「文書提出命令」が来た場合でも、裁判所が「提出義務なし」と判断すると大磯氏は説明した。

 「我が国の人権感覚、レベル低い」
 大磯氏は講演の冒頭で、福島県立大野病院事件(2004年12月に事故発生、2008年の福島地裁判決で医師無罪)や、東京女子医大の人工心肺事件(2001年3月に事故発生、2009年3月の東京高裁判決で医師無罪)で医師が業務上過失致死罪に問われた例を挙げ、「責任追及のために行う事故調査は副作用が大きい。医療事故調査制度は、患者のためだけではなく、医療者が安全な環境で医療を行うためにも、医療安全を目的として運営することが必要」と指摘し、患者と医療者との「Win-Win」の関係を構築すべきとした。

 しかしながら、国立国際医療研究センター病院のほか、群馬大学の腹腔鏡事故、東京女子医科大学のプロポフォール投与事故など、昨今発生した事例を挙げながら、事故対応は依然として個人の責任追及型から変わっていないと問題視した。

 国立国際研究センター病院の事故について、「事故が起きたことだけではなく、その後の対応が残念だった」と語る大磯氏。事故対応の問題として、(1)医師法21条の異状死体の届出対象ではないものの、2014年4月16日の事故当日に、警視庁牛込署に届け出た、(2)翌々日の4月18日に記者会見し、「医師の誤投与」としてヒューマンファクターに絞った形で事故を公表、(3)ウログラフインのアンプル等にある「脊髄造影には禁止」との警告に、担当医がなぜ気付かなかったのかは不明、などと発表しただけで、医療安全の観点から気付かなかった理由について検討していない、(4)8月の外部委員を含めた医療事故調査委員会の報告書を公表した際にも、ヒューマンファクターが原因であるとし、マニュアル整備や相互チェックの実践などの再発防止策を掲げ、「職員が一丸となって診療に当たることを決意する」などと結んでいる――などの点を指摘。

 記者会見等の在り方について、医師個人を特定し得る形で公表したことから、大磯氏は、「トカゲの尻尾切りの対応をした。人権蹂躙の程度が尋常ではない」と問題視。その上で、医療安全の観点から次のように述べた。「マニュアル類の一定の整備は必要だが、何か起きるたびにマニュアルを作っていると、マイナスに働くこともある。これまで造影剤の同種事故で8件が刑事事件化している。役に立たない再発防止策を並べ、最後は精神論に任せていても、何も解決にもならない。残念ながら9件目の同種事故は起き得る」(大磯氏)。

 アンプル等の警告について、大磯氏は「人がよく見ないと分からないのは、警告ではない」と指摘。この点について、フロアからは「警告」を書いたラベルをはがさないと、アンプルを切れないような構造にするなど、「フール プルーフ(fool proof)」の対策を取り得るにもかかわらず、なぜ医療界はこうした対応を取らないのか、との疑問も呈せられた。

 そのほか大磯氏は、群馬大学の腹腔鏡事故については、外部委員も含めた院内事故調査の報告書において当初、「過失があった」と個人責任を追及する表現が多用された点を問題視(『群馬大学腹腔鏡事件の報告書は小学生レベル』を参照)。「過失があった」との表現は、医療界などからの批判を受け、削除された(『最終報告書から「過失あり」を削除、群大病院』を参照)。

 女子医大のプロポフォール投与事故については、術後管理に関わった中央ICUの医師らについて、外部委員会の報告書で、「診療行為についての供述を避けようとする態度が認められた」「はなはだ無責任な言動と言わざるを得ない」などと指摘されている点を、大磯氏は問題視。「本当にひどい。事故調査に当たって、医療者の秘匿性や非可罰性が担保されていない。我が国の人権感覚はこのレベル」(『「死因は禁忌薬の使用」、女子医大第三者委』、『東京女子医大プロポフォール投与事件』を参照)。

 「ミランダルールに則った調査を」
 10月からの医療事故調査制度について、医療者の人権保護の視点から強調した一つが、事故調査報告書の匿名化だ。大磯氏は、「個人の責任逃れの議論をしているのではない。個人責任追及は、本制度と別個に議論にすべきという主張であり、この点は間違わないでもらいたい」と前置きした。その上で、厚労省の検討会で、報告書の匿名化を提言した理由について、「いくら匿名化しても、当事者には分かってしまう。個人が特定できないようにするためではなく、医療事故調査・支援センターに対する個人情報保護法に基づく、事故調査報告書の情報開示請求を回避することが匿名化の目的。匿名化すれば、センターは個人情報を有していないことになり、開示請求の対象外になる」と説明した。

 また、民事裁判における裁判所から医療機関に対する、事故調査報告書などについての文書提出命令への対応についても大磯氏は説明。裁判所は、(1)内部文書性(外部に開示することが予定されていない文書であること)、(2)不利益性(開示によって所持側に看過し難い不利益が生じる恐れがあること)――という視点から、提出すべき文書か否かの判断をするという。「判例から言えば、報告書は非公開だが、報告書の冒頭に、内部文書性と不利益性に該当することが分かるように記載すべき」と大磯氏はアドバイスした。

 しかしながら、一方、刑事責任が追及される場面で、警察の強制捜査が入った場合には、報告書は保護できないと説明。「捜索差し押さえがなされた場合、厚労省や業界団体が一体となって、抗議すべき」。大磯氏はこう述べ、医療事故調査の結果により個人責任追及のリスクが払拭できない以上、人権保護の手続きである「ミランダルール」に則り、(1)報告書が刑事訴追の資料として捜査機関に提供されることがあり得る、(2)黙秘権がある、(3)弁護士に相談することができる――などの点を、聞き取り対象の医療従事者に事前に説明するとともに、報告書に対する訂正申立権や拒否権、異議申立権を求めるべきとした。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201505/20150518_15004.html
<挽歌の宛先 祈りと震災>(42)自らの役割問い続け/第8部 臨床宗教師はいま(1)
2015年05月18日月曜日 河北新報

 東日本大震災の被災地では、信心の立場を超えて生者と苦しみを共にする「臨床宗教師」が生まれた。被災者や終末期患者らのそばにいて、生老病死の深淵で模索を続ける。地域社会との新たな関係性を探る宗教者を見つめる。



 鼓動のように人工呼吸器の作動音が寝室に響く。沈黙の中、次の言葉を待つ。
 栗原市の普門寺副住職、高橋悦堂さん(35)は臨床宗教師として、名取市で寝たきり生活の男性(48)を毎月訪ねる。
 男性が声を絞り出す。「前世で悪いことをしたからこうなったんだ」
 前世の報いが現世に現れるという考え方は差別の助長につながるとの見方が、宗教者の中にはある。高橋さん自身の死生観とも違う。
 でもうなずくように声を掛ける。「前世があるかは分からないけれど、それで気が楽になるのなら…」
 その言葉に導かれ男性が心の内を明かした。「来世の自分に苦労させたくない。だから今をしっかり生きるんだ」
 
 首から下を動かせず、寺に行くのは難しい。「死後の世界や戒名のこと。坊さんなら話をちゃんと聞いてくれる」
 高橋さんは、東日本大震災を踏まえて東北大が2012年10月に始めた臨床宗教師研修の1期生だ。在宅医療が専門の名取市の岡部医院と連携して患者宅に赴く。臨床宗教師としての報酬はない。
 寺の長男なので、住職を継いだら檀家(だんか)との関わりを中心に暮らすのだろう-。漠然とそう思っていた。被災者の傾聴活動に取り組む中で生き方が変わった。
 震災による多くの不条理な死は、現代の死との向き合い方を社会に問い掛けた。
 多くの人が病院で医療を施されたまま死ぬ。その過程に宗教者はほとんどいない。核家族化は死を日常から遠ざけた。僧侶でさえ葬送の場や仏事でしか死に触れていなかったと高橋さんは自戒する。

 臨床宗教師へと導いたのは、その必要性を震災前から説いていた岡部医院の故岡部健医師との出会いだった。がんで震災後に死の床についた岡部さんから「俺の最期をみとれ」と言われた。徐々に弱り死にゆく姿を見届けた。
 生と死のはざまで苦しむ心を受け止めたいと誓った。
 仙台市内のホームホスピスにも通う。末期がんの名取市の高齢女性は津波で自宅を失った。女性を助けようと家に戻り亡くなった息子。「親思いだった」と繰り返した。真言宗を信仰する女性は、曹洞宗の高橋さんに真言宗の開祖空海の話を聞かせてくれた。
 半年ほど通ったことし2月。意識のない女性の手を握り、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と真言宗の経文を唱えた。1時間後に旅立った。
 病気の痛みを取り除けるわけではない。無力さを思い知ることがある。「支えを必要としている人との一瞬一瞬を大事にする。死後だけではなく、生に向き合いたい」
 宗教者は誰のため、何のためにいるのか。臨床宗教師の現場は修行でもある。



http://www.m3.com/news/iryoishin/321933
養成医師の7割が流出する県も、医師流出入推計
慶大医学生が内科学会で発表、「正しい実態把握が不可欠」

2015年5月18日(月)配信高橋直純(m3.com編集部)

 慶応大学医学部5年生の岡田直己氏が4月に開催された第112回日本内科学会講演会で発表した「医師流出入動態推計」が話題になっている。都道府県ごとに医師の流出入数を算出した結果、全国7県では、養成数の過半数を超す医師が他県に流出している一方で、千葉、埼玉の2県では自県で養成した医師の2倍以上の医師が流入するなど、医師の流出入には地域差が大きいことが明らかになった。4月の発表以降、地方自治体からも問い合わせがあると言い、 岡田氏は「医師不足解消のためにも客観的な数値が不可欠」と研究の意義を語る。

 調査期間は1994年から2012年までの18年間で、厚生労働省の公開データから都道府県別に、各地域にある医学部での「養成数(医師国家試験合格者数)」と「実際の増加数」を算出。同期間の死亡(廃業含む)数を推計し、養成数から除いた数値を計算上の増加数とし、「実際の増加数」の差を流出入数とした。例えば東京都におけるある1年では、1292人が養成された一方、436人が死亡しており、計算上の増加数は856人となる。一方で実際の増加数は648人だったので、208人(養成数の16%)が他県に流出したと推計した。

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都道府県別医師流出入率
※岡田氏提供 クリックすると図が拡大されます。

石川では養成医師の7割が流出
 その結果、最も県外への流出が多かったのは石川県では養成した医師の68.0%が流出、以下、島根県58.9%、鳥取県56.4%が続いた。一方で、最も流入が多かったのは千葉県で232.2%、埼玉県225.6%、兵庫県72.7%なども流入が多く、大都市近郊の県で医師の流入が多い傾向があった。千葉、埼玉の両県は人口が多いにもかかわらず、医学部を持つ大学はそれぞれ1校しかないことが理由と言える。医師の流入が多いと思われがちな東京都は、13の医学部があり、逆に16%が流出していた。

「女性医師」は流出率下げる因子
 岡田氏は、流出入に影響を与えると考えられる背景因子について重回帰分析を行った。都道府県ごとの医師養成数、女性医師割合、人口10万人当たりの医師数、医師平均年齢、私立医学部立、人口密度、進学率、失業率、高齢化率、給与額(全職)について分析したところ、医師養成数と女性医師割合が有意な因子となった。

 人口10万人当たりの養成数が1人増えると流出率が約13%増加、女性医師割合が1%増えると流出率が約7%減る計算になった。この2つ以外は有意な因子とならなかった。つまり、「医師の養成数が多い地域から少ない地域へと移動する傾向がある」「女性医師は移動しにくい傾向がある」という結論になる。岡田氏は「地域ごとの医師養成数の差を医師が移動することで是正される傾向はあるが、是正し切れているとは言えないだろう」と分析する。

 今回の研究は全て公開データを使って行ったが、それでも情報収集には時間がかかった。「資料を集めるために3カ月間、厚労省の図書室に何度も通った」と苦労を語る。発表が新聞に取り上げらたこともあり、多くの反響が寄せられた。流出率の高い自治体からは対応策についての相談も寄せられたという。現在は論文執筆の作業を進めている。

 発表は岡田氏の他、ナビタスクリニック立川(東京都立川市)の谷本哲也氏、相馬中央病院(福島県相馬市)の森田知宏氏、山形大学医学部の成松宏人氏(現神奈川県立がんセンター)、東京大学医科研究所の上昌広氏の5人の連名で行われた。研究を指導した谷本氏も「感覚的に分かっていたことでも、数字で示したことが大きい」と意義を説明する。

都道府県医師流出入率 
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※岡田氏提供データより作成



http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/news/1505/051900299/?rt=nocnt
女医に対するみんなの誤解
性別にとらわれすぎると、よりよい医療を受けるチャンスを逃す

橋口玲子=緑蔭診療所医師
2015/5/19 日経Gooday

「医療とは、医師から受けるもの」、こんな一方通行のイメージを私たちは抱いてしまいがちです。しかし、最善の医療は患者がかしこく「手に入れるもの」という発想を持つと、今よりももっと満足のいく治療を受けられたり、医師とのコミュニケーションをもっとうまくできるようになるはずです。臨床経験が豊富で、遠方からの患者も多い緑蔭診療所の橋口玲子先生に、知っておくと絶対役立つ、患者の心得を指南してもらいます。

 長年医師をしていると、患者さんが私を医師として頼りにしてくれることを感じ、ありがたく思う一方で、「女性だから女性の体のことは何でも分かってくれるはず」と思い込まれて、戸惑うことがあります。例えば、こんなケースです。

Hさん(女性)
「婦人科関連の不調で気になっていることがあるんです。先生が内科の先生だということは知ってはいるのですが、やっぱりこういう場合は女医さんに診ていただきたくて。女性だから話しやすいし、女性のつらさもよく分かっていただけると思って…」
 50代前半のHさんは、閉経後にイライラや冷えなどの更年期症状で悩んでいました。さらに話を聞くと、最近、外陰部のひりひりするような痛みや性交痛が気にかかっているようです。

 閉経後の女性はエストロゲンの低下によって膣や外陰部の粘膜は薄く弱くなり、膣粘膜の潤いも減ります。この状態は「萎縮性膣炎・萎縮性外陰炎」と呼び、外陰部の痛みや痒み、性交痛が生じる場合があります。

 Hさんの症状が萎縮性膣炎・外陰炎であることは内科医でもわかりますが、ホルモン療法などの治療をするとなると担当は婦人科です。残念ながら、婦人科は私の専門外。私を頼ってきてくれたHさんには申し訳なかったのですが、治療を希望されているのなら、婦人科を受診するのが良いことをお伝えしました。

女医のほうが「オンナの気持ちがわかる」?

「同性医師の方が自分の気持ちが伝わりやすく、わかってくれるはず」と期待しがちです。(©Ferli Achirulli-123rf)
 Hさんのように、更年期の悩み、ましてや夫婦関係のことは男性医師には話しにくい、恥ずかしいという気持ちはよくわかります。女性なら乳房や女性器の話、男性なら泌尿器の話は非常にプライベートな要素を含みます。そのため、異性の医師に相談することに抵抗を感じる、というのはごく自然なこと。「同性医師の方が自分の気持ちが伝わるし、わかってくれるはず」と期待する人は多いかもしれません。

 しかし、医師の側からすると、性器に関する話であっても、夫婦関係の話であっても、患者さんの不調や悩みの原因を突き止め、正しい診断をつけるために必要な情報の1つにすぎません。医師は「限られた時間の中で、いかに患者さんの訴えを整理し、診断を診立て、最適な治療方法を選択するか」ということに意識を集中しています。さまざまな患者さんを診てきて、経験も豊富ですので、患者さんが「恥ずかしい」と思う話でも、ドライに受け止めているのが普通です。

 ですので、「診察時に話しにくい、恥ずかしい」という気持ちはいったん忘れて、「治療を受けて、症状を改善したい」という思いを優先し、勇気を出して相談してもらえたらと思います。

女性特有の病気でも、専門外の女性医師より専門の男性医師

 確かに、男性医師は女性特有の症状を経験することができません。ですが、大事なのはその不調を「医師自らが体験している」ことではなく、「患者さんからの訴えを聞いて、どういう状況なのか想像できる、理解できる能力を持っている」こと、そして「原因や治療法を見極める知識と経験がある」ことではないでしょうか。

 実際、緑蔭診療所の院長である夫は婦人科医で漢方専門医ですが、月経前症候群(PMS)や更年期障害の女性をたくさん診ています。これらの不調の多彩な身体症状と精神症状がどのように現れ、患者さんがどんなふうに苦しんでいるかを、女性である私よりもはるかに理解しています。私自身はPMSも更年期障害も幸い経験しなかったので、PMSのめまいは人によっては、「突然、髪の毛をつかまれて後ろへ引き倒されるような感じ」だと彼に聞いてびっくりしたことがあります。つまり、女性特有の病気であっても、専門外の女性医師より専門の男性医師の方が、よほど患者さんの助けになるのです。逆もまた然りです。

女医の方が器用?

診察してもらう医師の性別にこだわっていると、より良い医療を受けるチャンスを逃してしまうかもしれません。(©ximagination-123rf)
 一般に、「女医は優しい」「女医は話しやすい」というイメージを持っている方がいますが、女性医師であっても非常に話し方がきつく、つっけんどんな人もいますし、男性医師でも包容力があり、話しやすい人はたくさんいます。

 また、女性医師のほうが「繊細で指先が器用」だと思っていませんか。

 ずんぐりとして無骨なごつい手の持ち主の男性心臓外科医が、小さな子どもの心臓の一部を拡大鏡で見ながら大変器用に切開し、美しく縫合するのを私はたくさん見てきました。

 そういった医師のことを医療の現場では「手がきれい」といいます。器用さも性差ではなく、個人の修行のたまものといえるでしょう。

 できれば同性の医師に診てもらいたい、という患者さんの気持ちを否定するつもりはありませんが、女性だから、男性だから、というこだわりにしばられていると、よりよい医療を受けるチャンスを逃すことにもなりかねません。そのときどきの症状に応じて、プロフェッショナルな医師との出会いを模索してほしいと思っています。

まとめ

女性医師だからといって、女性特有の病気や不調に精通しているとは限らない
患者のつらさを理解し、共感する能力に性差はない
患者さんが「話すのが恥ずかしい」と思う症状でも医師にとっては診療情報の1つに過ぎない
(まとめ:柳本 操=フリーライター)

橋口 玲子(はしぐち れいこ)
緑蔭診療所(神奈川県南足柄市)医師
1954年、鹿児島市生まれ。東邦大学医学部を卒業。東邦大学医学部客員講師、および薬学部非常勤講師、国際協力事業団専門家を経て、1994年より現職。現代医学と漢方を併用した診療を行う。循環器専門医、小児科専門医、認定内科医、医学博士。成人および小児の心身症などのメンタルヘルス不調、高血圧、糖尿病などの生活習慣病やアレルギー疾患の診療のほか、ハーブ療法やアロマセラピーを用いたセルフケアに関する講演、執筆活動も行う。
(写真:室川イサオ)



http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/news/1505/051900296/
特集◎医療事故調で現場はどうなる(6)事例報告
群馬大の医療事故調査は典型的な失敗例!?

2015/5/19 満武里奈=日経メディカル

 群馬大学医学部附属病院は今年3月、第二外科に所属する40歳代の男性医師によって行われた腹腔鏡下肝切除術93例のうち、8例について「過失があった」とする報告書をまとめ、謝罪会見を開いた。

 この事件を巡っては、事実関係とともに事故調査手法のあり方に注目が集まった。医療事故調査制度に詳しい関係者らの間でおおむね意見が一致したのは、事故調査手法の不適切さだ。

 「責任追及型の事故調査をした典型的な失敗例。医療安全を学んだことがない人が調査すると、ああいう報告書になってしまう」と断じるのは坂根Mクリニックの坂根氏。

 一橋大の山本氏は「あれほどの大病院でもあのような院内報告書を出すのかと驚いた。報じられていることが事実とすれば、最も問題なのは責任逃れのために、1人の医師をスケープゴートにしたことだ」と語る。

 また「事故調制度があれば、あそこまで死者を出さずに済んだかもしれない」という意見も多い。昭和大病院の有賀氏は、「もし私があの施設の病院長だったら、死亡事例について診療科長がどのようなデスカンファレンスをしていたのかを調べるところだ」と話す。

 一方で、「単純な医療事故と一緒にしてもらっては困る。十分な経験のない人が、無理に結果を出すために行ってしまった事例と見ることもできる。本人の資質と組織ガバナンスの問題だろう」(日医の松原氏)との意見もあった。

 この事件を反面教師として、医療事故調査制度に生かすことが求められている。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/45717.html
特定行為研修中の代替職員の確保で支援を- 日看協が厚労省に要望
2015年05月18日 18時24分 キャリアブレイン

 日本看護協会(日看協)の坂本すが会長は18日、厚生労働省の二川一男・医政局長に対して、2016年度予算に関する要望書を提出した。今年秋に始まる特定行為の研修制度については、看護師の人数が限られている訪問看護ステーションや介護施設などが研修に看護師を派遣する際、期間中の代替職員を確保するための財政措置を求めている。【敦賀陽平】


  1. 2015/05/19(火) 05:05:31|
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