Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

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3月7日 

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO84108450Y5A300C1PE8000/
何が患者連続死を招いたか
2015/3/8付 日本経済新聞 社説

 群馬大学病院で先進的な手法によって肝臓の切除手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していたことが明らかになった。

 悲惨な事故がかくも続いて起きたのは異常だとしかいいようがない。徹底した原因究明と再発防止策が必要だ。

 死亡した患者が受けたのは、腹腔(ふくくう)鏡手術と呼ばれる。腹部に小さな穴を開け、そこからカメラ(腹腔鏡)や医療器具を体内に入れ、医師はモニター画面を見ながら器具を操作する。

 腹部を切り開く従来型の手術に比べ、患者の負担が小さく、回復も早いとされる。ただし医師には十分な経験や技術が求められる。

 問題の手術は2010年から14年にかけて実施されていた。執刀したのはすべて同じ医師だ。未熟な技術による処置や術後の管理など多くの点で問題があった。

 驚くべきは、この医師は従来型の開腹手術でも複数の死亡事故を起こしていたことだ。なぜこのような医師が新たな手法の手術まで続けることができたのか。

 同病院では患者が死亡した際に、何が問題だったかを検証する会議が開かれていなかったようだ。医療事故としての報告もなかった。新しい技術を患者に使ってもよいかを検討する院内の倫理委員会なども通していなかった。

 院内のチェック機能はまったく働いていなかったといわざるを得ない。10月から始まる医療事故の調査制度では、まず院内調査が基本となる。群馬大病院のような状況が他の病院でもあるとすれば、新制度への不信感にもつながりかねない。

 一連の事故を執刀した医師一人の責任にするのは簡単だ。しかし背景には、第1外科、第2外科などと分かれて、お互いの意見交換も乏しい大学病院の閉鎖的な診療環境があることも間違いなさそうだ。組織のあり方から見直すような抜本的な対策が求められる。

 医療事故を起こさない緊張感のある組織かどうか。全国の病院でも緊急に点検すべきだ。



http://www.m3.com/news/iryoishin/301049
医療維新
シリーズ: 群馬大学腹腔鏡死亡事故
「調査不十分、悪質な医療過誤」群大被害者弁護団
執刀医の稚拙さ指摘、刑事告訴も視野に

レポート 2015年3月7日(土)配信高橋直純(m3.com編集部)

 群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡による肝臓手術を受けた患者の死亡が続いた問題で、弁護士で作る群馬大学病院肝臓手術被害対策弁護団(安東宏三団長)が3月6日に会見し、弁護団が独自に行っている調査の中間報告を公表した。3月3日には病院側が最終報告書を公表したが、弁護団は「群大病院の最終報告書は執刀医、診療科長、遺族からの聞き取りが不十分など見直しが必要。調査を継続すべきだ」と主張した(『死亡全8症例「過失あり」、群大最終報告』を参照)。弁護団が術中ビデオの検証を依頼した専門医が「執刀医、助手とも稚拙、技量がかなり悪い。ここまで記載のないカルテは見たことがない」と評価したことも明らかにした。「重大かつ重複した悪質な医療過誤」として、刑事処分や行政処分を訴えることも検討していくとしている。

 弁護団は、「医療問題弁護団」(東京都葛飾区、代表者:鈴木利廣弁護士)に所属する8人が今年2月に結成。腹腔鏡下肝切除術で死亡した8人のうち2人の遺族から依頼を受けており、専門医の協力を受けながら術中ビデオやカルテなどの検証を行っている。群大病院病院長の野島美久氏にも聞き取りをした。依頼しているのは死亡時70代の女性と、80代の男性の遺族。医療的な調査に協力している専門医は、東京都内の大学病院勤務で腹腔鏡技術認定医を持つ「著名な医師」(弁護団)という。


◆弁護団が指摘する群大病院の最終報告書の問題点

1. 執刀医、第2外科部長の科長からの説明・聴取が不十分
 執刀医、診療科長から遺族に対する説明がないまま調査を終結することは問題である。
2. 遺族からの聴取が不十分
 遺族への聴取は一定程度されているが、不十分である。
3. カルテ記載欠落・虚偽記載は「刑事罰に値し得る」程度のもの
 開腹術で死亡した患者の保険書類に虚偽の病名を書いたことは、虚偽有印公文書作成罪に該当する極めて悪質な行為。国公立病院の医師が作成するものは公文書であるとされ、過去には都立病院の病院長が担当医師と共謀して、医療事故により死亡した患者の死亡診断書および死亡証明書の作成の際、死因を病死としたことについて、虚偽有印公文書作成罪が成立したこともある。鑑定を依頼した専門医は「ご遺族に癌と伝えないことはあり得ないし、虚偽記載は相当悪質だ。誤診を隠したかったとしか考えられない。それ以外に動機が見当たらない」と指摘している。
4. 術前評価の前例欠落は「重大な過誤の連続」であるのに解明不十分
 専門医は「容量計算、IGC15分停滞率検査をせずに手術適応や術式選択をすることは不可能であり、あり得ないことである。医師100人に聞けば100人がしないことはあり得ないと答えるであろう。肝臓を専門としない外科の医師でもしている余りに基本的な事項である」と指摘している。
5. インフォームドコンセント欠落(同意なき違法な侵襲行為)の評価が不十分
 遺族によると、執刀医の説明は「今手術をしないと死んでしまうよ、という説明だった。難しい手術という説明はなく、慣れているという印象を持った」「すごく簡単な手術だから大丈夫。体力的に今が限界とも言われた」というものだった。
6. 手術手技は執刀医・助手ともに「稚拙」「技量が悪い」がその点の評価が不十分
 専門医は「(本件執刀医の)手技はかなり稚拙である。鉗子のハンドリングもよくなく、剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。術野も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。腹腔鏡の技量についてはかなり悪いと言える。無用に肝臓に火傷をさせるなど、愛護的操作がない。助手のカメラ操作も下手」と指摘している。
7. 診療体制の問題も著しく、「2例目以降の7例は回避できた死亡」であるが解明が不十分
 専門医は「通常の大学病院では、予期せぬ死亡があった場合、医療安全委員会が開かれて検討する。通常は1例で何か事件が起きれば、反省して改善案を検討していく。次に同じことが起きないようにルールを作る。診療科長が何らかの処置をとるのが通常である。診療科長がしっかりマネジメントできていなかったと言わざるを得ない。1年間で4人も腹腔鏡下で死亡したのであれば、通常の大学病院ではそれ自体で手術停止となる。腹腔鏡下で1例死亡したのであれば、腹腔鏡下での術式を中止することも考えられる。1例目が出た段階で検討していれば、ICGを実施していない点について相当叱責された上で改善策が取られたであろう」と指摘している。
8. 開腹手術の問題
 開腹手術事案の調査報告を待たずに本腹腔鏡事案を切り離して最終報告、最終合意することはできない。

「刑事責任に値する感触」

 記者会見では刑事処分についての質問が相次いだ。安東氏は「過去の事例と比べても、あAq件数が 突出している。弁護団としては、刑事責任を問うことは非常に慎重にしているが、このケースについては刑事責任を問うことに値するのでは、という感触を持っている」と話す。ただ、今後の調査の結果次第としており、現時点で刑事告訴などの具体的な動きは決まっていないという。

 過失と死亡の因果関係については「聞き取りの中で病院長から(弁護団が扱う)2例とも『当該過失がなければ死亡を回避できた』と言及されており、因果関係を認めているという認識している。ただ補償水準の中で、因果関係の程度の問題が出てくる可能性がある」と説明した。

病院側の姿勢に評価も

 弁護団は真相究明や再発防止に対する群大病院の姿勢については、「遺族も弁護団も評価している」と説明。安東氏は今年10月から開始が予定される医療事故調査制度に関連し、「(厚生労働省の検討会では)事故調査の結果公表は不要、報告書作成不要、遺族に渡すことは控えるべきという意見が一部の委員から出ている。そういう状況と対比すると、調査し、公表し、遺族に伝えた群大病院の姿勢は評価できる。そうしたことがなければ、遺族は現状程度の納得もなかったはず」と指摘した。

 ただ、調査状況を公開する姿勢は評しつつ、「調査・解明が不十分なまま『最終』報告とすることについては、遺族と早期に示談を成立させることで、特定機能病院の承認取消回避、医師個人に対する刑事罰あるいは行政処分を回避する目的のために早期収拾を図ろうとしているとの疑いを抱かざるを得ない」と述べた。

 遺族に提供されたカルテの記載と最終報告書の内容が違う点などもあることなどから、群大病院に対してさらなる調査を求める一方、弁護団として執刀医、診療科長に聞き取りを求めている。弁護団の調査報告の結論は、聞き取りが済んでから出す予定で、医療的鑑定についても他の専門家に協力を求めていくとしている。

◆弁護団が公表した遺族のコメント (全文)
「群大だということで先生を信じていた。(医療のことは)難しいことで分からないが先生を信頼して命を預けた。母自身も死ぬまで信じていた。今回のような思いはしたくなかった」
「担当医(執刀医)の言葉があまりになさ過ぎる。謝りに来たこともないし、こういう言葉を発していたということすら、(間接的にも)届かない(決まった担当者が事務的な連絡のために来ただけ)」
「世の中の一番の信仰は医学ではないか。初めて会った人に命を預けるのだから。しかも群大ということで先生もそろっていると考えられているから先生の言うことは否定できない。生死を左右する医療の仕事に携わっていると普通の人よりも死への感情は薄れる部分はあるかもしれないが、患者が命を預けるということと生死を左右する職業であるという意識を持ってしっかりやってもらいたい。執刀医に直接会ってこのことを伝えたい」
「執刀医も問題だが、教授(診療科長)がより問題ではないか」
「(保険請求の問題や診断書の嘘の記載のことを踏まえると)実験台にされたのではないかとも思う」
「同じこと、この家族の悲しみを繰り返したくない。自分たちで最後に。他の人にこういうことが起きないように。今後同じような犠牲者が出ないようにしてほしい」


  1. 2015/03/08(日) 07:13:05|
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