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3月1日 

http://www.m3.com/news/iryoishin/299201?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150301&dcf_doctor=true&mc.l=89743417
医療維新
シリーズ: 降圧剤論文問題と研究不正
京大研究者「広告内容知らず」、CASE-J
ゴールデンクロス経緯不明、京大が調査結果公表

レポート 2015年3月1日(日)配信池田宏之(m3.com編集部)

 武田薬品工業の降圧剤ARB「ブロプレス」に関する臨床試験「CASE-J」の疑惑について、京都大学は2月27日に会見し、論文の結果について「問題がない」とする調査結果を公表した。統計的に有意差がないにも関わらず「ゴールデンクロス」などとして、「ブロプレス」投与群が優れているように見える図表が広告を用いられた点について、京大は、研究に携わった人物2人を厳重注意処分としたものの、「京大の関係者は広告に用いられた表に関与していない」「広告に使われたことを知らなかった」との結論となっている(結果は、京大のホームページに掲載)。

  武田薬品が「広告に用いるために京大の研究者に働きかけて変更した」とする糖尿病新規発症の定義も、京大とは言い分が食い違ったまま。ノバルティスファーマ社の降圧剤「ディオバン」問題ではカルテデータと、論文データの相違が見つかったが、今回の調査では両者の突合を行っていないなど、徹底的な調査とは言い切れず、全容解明からは遠い内容だが、京大は今回の報告書を最終報告とする(『武田、CASE-J試験に一貫して関与』を参照)。

京大、内部調査委員会で調査

  CASE-Jは、心血管イベントの発生などを主なエンドポイントとして、ARBのプロプレスと、Ca拮抗薬のアムロジピンの2種類の降圧剤の有効性を検証した多施設の医師主導の臨床研究試験。研究実施期間は2001年から2005年まで。 登録したのは4728症例。主要評価項目の複合系心血管イベントについては、両群ともに発現がともに134例で有意差がなかった。副次評価ポイントの糖尿病新規発症などについての追加解析も実施され、プロプレスに有意な結果が出て、広告に利用されるなどした。事務局業務とデータマネジメントやデータ解析は、京都大学医学研究科EBM共同研究センターが実施していた。結果は、2006年には国際高血圧学会で発表され、2008年2月に米国心臓病学会の学会誌Hypertension誌に論文が掲載されている。

 しかし、2014年2月に論文の表に懸念を示す指摘がHypertension誌掲載され、京大は学内に「CASE-Jに関する調査委員会」を2014年3月に立ち上げ、関係者のヒアリングや資料の精査などを進めてきた。統計など一部は、第三者として疫学専門家の滋賀県機構健康科学センター長の川村孝氏に検証を依頼した。


日本語スライドのみにずれ

 CASE-Jについて問題視されてきた主なポイントの1つは、「ゴールデンクロス」と呼ばれる、心血管イベントの発生率を示したグラフ。実験開始当初はブロプレス群の方が、イベントの発生率が高い状態が続いていたが、約36カ月後には逆転して、42―48カ月の時点では、ブロプレス群の方が低くなっているように見えるグラフを、武田薬品が広告に用い、一部では「ゴールデンクロス」と強調していた。グラフには、P値も示され両群間に有意差がないことが示されていたが、「誤解を与え、処方に影響しかねない」との指摘が出ていた。

 京大の調査の結果によると、「ゴールデンクロス」のグラフの元となったデータは複数種類存在している。生データと論文データ、英語版のスライドは一致していたが、広告などに用いた日本語版のスライドのみが、「生データなどと一致しない」(報告書)結果となった。ただ、京大の調査の結果、日本語版のスライドについては、「EBM研究センターで日本語版のスライドを作成した事実はない」と結論づけ、広告に利用された「ゴールデンクロス」のグラフへの関与を否定する結果となった。

 会見では、広告に利用されている表を、研究を実施した担当者らが認識していた可能性についての質問が出た。京大医学研究科長の上本信二氏は、ゴールデンクロスについて、「研究に携わった当事者は気付かなかったと説明した」と説明。京大副学長の湊長博氏も、グラフに常にP値が明記されていた点を強調して、誤解を与えるようなグラフでない点を指摘し、研究の正当性を強調した。

ゴールデンクロスの認知「検証材料ない」

 ただ、実際には日本語版スライドのグラフは、アムロジピン群のイベント発生率がわずかに高くなるずれがあり、見た人が誤解しかねない図になっていた。ブロプレスは、日本でトップクラスの売上を誇る降圧剤で、各種媒体を通じて、大々的なキャンペーンが実施されていた以上、関係者が気付くはずとの指摘が、会見では相次いだ。京大の顧問弁護士の藤川義人は、「ゴールデンクロス」と説明した資料が一部であった点を強調した上で、「(広告作成時に気付かなくても)あながち不自然ではない(販促に使われている間に使われたかどうかについては)検証する材料がない」と述べ、調査の限界を吐露した。

 2008年にある雑誌に掲載された座談会で、京大研究者が「ゴールデンクロス」とされた部分について、「今後どうなるのか」と言及する論文を発表しており、京大の研究者内に認識があった可能性を問う質問も出たが、上本氏は、「ゴールデンクロスを強調していたのではなく、(有意差がない前提で)今後クロスするかもしれないという意図だった」と釈明。「スポンサーだから(広告への意見を)言い出せなかったのでは」といぶかしがる質問も出る中、大々的に広告に利用された「ゴールデンクロス」の経緯については、不明なままだった。

 京大は、研究に従事した2人に対して、厳重注意の処分を実施した。理由として、「販促資料に携わったが、知らないうちに歪められた結果が使われたことと、研究の責任者としての立場で注意がいっていなかったこと」が理由というが、人物については、京大は「懲戒処分でない」として、ともに京大所属の男性である点以外は一切明らかにしなかった。

京大、武田の影響を否定

 2点目の疑問点は、有意差が出て、広告に利用された糖尿病の新規発症数の副次評価項目への追加と、評価方法変更の経緯。武田薬品の報告では、「武田薬品の写真から京大の研究者に働きかけて、評価項目として追加してもらった」旨になっていたが、京大側は、武田薬品の影響を否定している。

 京大の調査では、当時、CASE-Jが、海外におけるバルサルタン(販売元:ノバルティスファーマ社)の大規模臨床試験「Value試験」を意識しながら進められていた点を強調し、藤川氏は、「働きかけがあってもなくても、糖尿病は評価項目として追加されていただろう」との認識を示した。評価方法の変更についても、湊氏は、問診から、検査数値のデータを用いる客観的な評価方法への変更だった点を指摘して、京大研究者の科学的妥当性を強調した。

 また、武田薬品の報告書では、元社員が運営委員会に「進行役として出席していた」としていたが、その点についても京大の調査結果は否定していて、武田薬品の関与の低さを指摘する内容となっている。結局、「糖尿病について、働きかけを実施し、広告に用いた」とする武田薬品側の主張との食い違いを残したまま調査が終了していて、自主的な調査の限界を感じさせる一幕となった。


COI「当時考えると問題なし」

 利益相反については、京大はいずれも「当時の基準からすれば問題がない」との結論となった。CASE-Jにおいては、プロトコル作成や試験参加医師募集への協力、CRFへの入力や送信などに、武田薬品の社員が一部関与していたことが明らかになっている。2000年には、ヘルシンキ宣言が改定されるなど、世界的にCOI管理への注意を促す流れがあったが、報告書では、「CASE-Jが開始された約14年前には、利益相反の概念自体が一般化していなかった」としている。藤川氏は、現時点においては、試験の公正さや適正さに疑念を持たれることを回避するべきとの認識を示しながらも、「さかのぼって適用されると研究活動が委縮する」と述べた。

 武田薬品で研究に携わっていた社員が、途中から京大EBM共同研究センターに所属が変わった点については、元社員が武田薬品から報酬を受けていなかったことなどを理由として問題視していない。

調査範囲に疑問相次ぐ

 京大は、2時間半に及ぶ会見の中で、多くの点で、論文の正当性と、問題の少なさを強調し続けた。一方で、調査の不十分さを指摘する声も出た。会見で質問が集中したのは、調査範囲の問題。今回の調査においては、論文作成のためのデータから統計解析や、作成された図の妥当性などを調査したものの、残されているカルテデータと、実際の論文作成データの突合は実施していない。実施しなかった理由について、湊氏は、IDやパスの管理が厳格に実施され、データマネージャーのコントロールも十分であった点を強調し、「武田薬品の社員など第三者がデータに関与できるという疑義はなかった」と説明した。

 ただ、ノバルティス社のディオバン問題では、カルテデータと論文データにおいて、血圧の値やイベント数が異なるなどの問題点が発生。参加した医師が、症例を登録する際に、何らかの恣意的な操作をした可能性もゼロとは言い切れない中で、「なぜ調べなかったのか」との質問が相次いだ。武田薬品がCASE-Jについての調査結果を出したのは2014年6月である点を考えると、半年以上も遅れて公表された調査結果として、十分と言い切れるかには疑問が残った。

 会見においてはCASE-Jの意義を問う声も出た。日本初の大規模医師主導臨床研究とする声もある中で、武田薬品側の関与や誤解を与えかねない広告が広く使われるなどの問題が発生したが、湊氏は、「(問題を踏まえても)未熟だったか判断できない」と発言。さらに、「高頻度に使われる市販の薬品を検証した意義が大きい」と実験の意義を強調する場面もあり、あくまで医師主導臨床研究だったとの認識を示した。論文の修正などの予定はないという。



http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1503/02/news019.html
コラム
日本は本当に医師不足なのか?:
医学部入試を通して、日本の「医師不足」を考える

2015年03月02日 05時00分 Business Media 誠

国公立大学の医学部入試が行われました。医学部の定員数は未来の医師数を規定します。今回は、医学部入試を通して、昨今叫ばれている日本の「医師不足」について取り上げます。
[Credo]

 2月25日、26日、国公立大学の医学部入試が行われました(私立大学医学部は既に入試が始まっています)。

 医学部入試の定員数は未来の医師数を規定し、日本における未来の医療のあり方を決める重要な医療政策の1つです。今回は、医学部入試を通して、昨今叫ばれている日本の「医師不足」について取り上げます。

 医師不足を考える際、「数」と「分布」を分けて考える必要があります。まず、数を見て見ましょう。

日本の医師は不足しているのか

 下のグラフは、OECD(経済協力開発機構)がまとめた国民1000人当たりの医師数を示しています。データは2012年の数値。(以下の図は全て筆者作成)
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(出典:OECD)
 日本(赤)は、OECD諸国の平均(黄)を下回り、下から6番目となっています。医師数の定義が若干違う国が混じっていますが、その点を考慮しても、国際的に見て日本は人口当たりの医師数が少ないという事実は揺るぎません。「数」が少ないのです。

医学部定員は増員されている

 この「数」が少ないことに対して、医学部定員を増員するという対策がとられてきました。医師不足の状況を受け、2008年に医師数の増加が必要という閣議決定がなされ、翌2009年以降の定員数が一気に増えました。
03012.jpg
(出典:文部科学省)
 医学部志望者にとっては定員増は良いニュースかと思われますが、この医学部定員増とともに志願者も増加傾向にあり、入学の倍率自体は横ばいの状況です。


医師の分布はどうか

03011.jpg
(出典:厚生労働省)
 実は、「数」が少ないことに加え、「分布」の偏りがあります。右のグラフは、2010年に厚生労働省が調査したデータに基づいて作成したものです。全国の病院を対象にした調査で、「現状の医師数/必要な医師数」で必要医師倍率を計算しています。

 まず、倍率が全国で1倍を越えているため、全国的に医師が不足していることが分かります。それに加え、都道府県でその不足の程度に偏りがありました。

 倍率が低いほうが医師の充足に近いことを示しますので、東京都や大阪府など大都市を抱えた都道府県でより医師充足傾向がみられます。医師の分布は、大都市に偏っているのです。この地理的な分布の偏りとともに産婦人科など、診療科による分布の偏りもみられます。

医師分布への対策

 より深刻な「地方での医師不足」に対応するため、医学部入試では、地域枠の設定を行っています。地域枠とは、医学部のある都道府県内の出身者を対象とした推薦入試の実施や、卒後数年間の医学部のある都道府県内での勤務を条件とした奨学金の給付などを通して、地方に残る医師を確保する取り組みです。

 2008年時点では33大学403人だった地域枠は、2013年時点で69大学1396人に拡大されました。このほか、大学病院と地域病院の連携を強め、地方においても専門的な研修が受けられるようにするシステムの構築や、地域医療を担う意欲を高めるような医学部における教育体制の充実などが行われています。

今後に向けて

 数の不足や分布の偏りに対する対策は始まっています。しかし、高齢化社会によって患者の増加も予想される中で、このスピードでの医師数増加が適切か否かは今後見極めていかなければいけません。

 また、数を増やしたことで都市から地方に医師が移動するであろうという当初の予想が、医師においてはあまり見られていないのが現状です(歯科医師ではこの現象がみられました)。この分布の偏りの是正のため先に書いたような対策がなされていますが、いずれも強い強制力がない点が弱みです。

 各国の対応はどうでしょうか。例えばフランスでは、医学部6年生のときに全国の医学生全員がECNという全国統一試験を受けなければいけません。そして、国の出先機関である州保健庁が、成績順に医学生(研修医)の働く診療科、勤務地を決定します。医学生は希望を事前に提出しますが、成績が悪ければ希望通りにはなりません。この仕組みによって、医師の診療科偏在、地域偏在がコントロールされています。英国も政府によって専門医定員数、地域医師数が規定されています。

 現時点で、日本では医師の希望通りに診療科や勤務地を選択できます。世界一の長寿国となった日本の医療は胸を張っていいはずですが、医師数の不足と分布の偏在は確かに起きている問題です。未来への対策とその効果判定をしっかり行っていく必要があります。 医師不足対策の1つとしての医学部入試に、今後も注目が集まります。(橋本直也)


  1. 2015/03/02(月) 06:18:07|
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