Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

1月17日 

http://www.m3.com/iryoIshin/article/286670/
医療維新
医師不足への処方せん
医学部教員、定員183人に応募288人、東北薬科大学
東北大医師らが約25%、途中経過を公表

2015年1月17日(土) 橋本佳子(m3.com編集長)

 東北薬科大学の「第3回教育運営協議会」(委員長:里見進・東北大学総長)が1月16日に開催され、2016年度の医学部新設に向け、教授をはじめとする教員、計183人を募集したところ、1月15日までに計288人の応募があったとの途中経過を公表した。

 内訳を見ると、基礎系は募集教員数38人の3.7倍に当たる140人の応募があったが、臨床系は募集教員数145人に対し、応募はそれをわずかに上回る148人だった。288人のうち、東北大学に所属する医師らが、基礎系35人、臨床系36人の計71人で、応募総数の約25%を占める。

 会議後に会見した東北薬科大学理事長の高柳元明氏は、「(東北各県、各大学とも)恐らく予想以上に応募が集まっていると思っているのではないか」と述べ、今後、教員選考を進めるとともに、採用候補が決まった診療科・部門から順次、応募を締め切る方針を示した。次回2月5日の第4回教育運営協議会には、「100%ではないが、大まかな選考状況を示す予定」(東北薬科大医学部設置準備室委員・事務局長の堀田徹氏)。

 16日の会議では、新設医学部卒業生の地域定着策について議論した。東北薬科大学は、入学定員100人のうち、「宮城県枠」30人分、「東北5県枠」20人分の計50人分の修学資金を用意する構想を提示。卒業後に一定期間、東北地方の医療機関に勤務することなどを条件に、同大、県のほか、趣旨に賛同した法人・個人などが拠出する修学資金を用意する。東北薬科大学の新設医学部は、入学金400万円、授業料は6年間で3000万円、計3400万円程度の学費を想定している。うち約3000万円を修学資金で賄えるようにする。さらに、「一般枠」50人も含め、全員を対象に、入試、学部教育、卒後教育の各段階で、地域医療に関心を持ち、従事する医師養成を目指す。

 宮城県は、自身が医学部新設に手を上げていたこともあり、修学資金として80億円の拠出を予定しており、「おおむね了承」としたが、それ以外の東北5県からは懸念の声が上がった。各県とも現在、既存の地元医学部・医科大学の医学生に、修学資金を出しており、その一部を東北薬科大学の新設医学部生に充てるか、修学資金を増やすには議会の承認が必要であり、いずれも容易ではないと考えるからだ。既存の修学資金を充てれば、その分、地元医学部等への修学資金は減少する。

 一方で、修学資金を得て入学する、いわゆる地域枠の現状を踏まえ、定員が埋まらなかったり、地域枠の医学生の学力を懸念する意見も出た。換言すれば、既存医学部・医科大学自身も、卒業生の地域定着に苦労していることが伺える。さらに、「宮城県枠」が30人分に対し、他県では1県平均4人分と少ないことから、岩手医科大学理事長・学長の小川彰氏は、「東北地方の中でも、人口当たりの医師数が一番多い宮城県に手厚くなると、東北地方に新たな医師偏在が生じることを危惧している」とコメント。

 政府は東北地方への医学部新設に当たって、2013年12月に定めた「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針」で卒業生の地域定着などの4条件、文部科学省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」は7条件を、それぞれまとめている。

 日本医師会常任理事の釜萢敏氏は、「現時点では、これらの条件を満足しているとは認識できない状況。なぜ(2008年度以降、2015年度までに)約1500人も入学定員が増えている中で、東北地方に1校に限定して医学部を新設するという視点を踏まえて、議論をまとめていかなければいけない。医師会を通じて各県の状況を聞くと、『大学から詳しい説明はない』と聞く」などと指摘、地域定着策をはじめ、まだ東北各県のコンセンサスは得られていないとの認識を示した。「新たなに医学部を作っても、仙台市の医師は増えるかもしれないが、それ以外はほとんど関係ないことになれば、(東北地方の医師不足を解消するという)この構想が狙いとはかけ離れたことになるのを危惧している」(釜萢氏)。

 高柳理事長は、「(医学部新設の準備は)やはり大変な作業だが、徐々に我々の教育方針や修学資金などに対する考えが理解されるようになってきたのでは」との認識を示すが、いまだ越えるべきハードルは少なくない。

 なお、東北薬科大学は、文科省の構想審査会に提案した際、「復興支援特別枠」を20人とし、医学部定員は120人としていたが、100人に減らしており、結果的に当初は「70人以上」としていた修学資金の定員枠が50人に減少した点を問題視する声も委員から上がった。高柳理事長は、「入学定員は多い方が財政面でも安定するため我々としてはいいが、新設医学部なので、教育環境が充実するまでは、100人にした方がいいのでは、という構想審査会の提言に従った」と説明した(『東北薬科大、医学部新設の“第一関門突破”』を参照)。


 医学部長、病院長も応募に同意

 教員の応募状況を地域別に見ると、東北地方が基礎系46人、臨床系104人、東北以外が基礎系94人、臨床系44人。東北地方の県別では、地元の宮城県が最も多く、基礎系38人、臨床系94人で計132人、応募総数の半数弱。うち東北大学に所属する医師らが、基礎系35人、臨床系36人の計71人で、応募総数の約25%を占める。

 応募に当たっては、応募者の転出が地域医療に与える影響について、所属長の「意見書」が必要になる(『医学部教授らの公募開始へ、東北薬科大学』を参照)。「意見書」未提出の10人を除いた278人のうち、「転出に同意」が266人、一方、「転出の判断はできかねる」が12人、「転出は困難」は0人だった。東北大学の医学部長や病院長らも、提出に同意をしていることになる。

 この現状に対し、宮城県医師会会長の嘉数研二氏は、「宮城県、特に東北大学から、応募していることが分かる」と指摘、教員選考の妥当性を判断するため、応募者の所属や、所属長が「転出に同意する」と判断した理由などの関係資料の提出を求めた。岩手県保健福祉部長の根子忠美氏も、「県として、(応募者の転出が)地域医療に影響を及ぼすかどうかについて、関心を持っている」と指摘、検討する機会を設けるよう要望。堀田氏は、県別に関係資料をまとめ、対応すると回答した。

 修学資金を受ければ、6年間の学費は約400万円

 新設医学部の卒業生の東北地方への地域定着策は、修学資金のほか、入試、学部教育、卒後教育の各段階における教育・研修等で進める。

 修学資金のうち、「宮城県枠」の場合、東北薬科大学が運営主体となり法人を新設して管理する。利用できる医学生は、出身地や出身校を問わず、全国から応募可能。6年間で3000万円を借り入れることができ、卒業後10年間、宮城県内の自治体病院など、「指定医療機関」に勤務すれば返済は免除される。宮城県の80億円の拠出金などが、修学資金の原資となる。「指定医療機関」は、卒業生の雇用を希望する場合、3000万円を10年にわたり、宮城県に納付する。つまり、宮城県にとって見れば、最初に原資を拠出するだけで、修学資金を実際に負担するのは、卒業生を採用する「指定医療機関」になる。

 「東北5県枠」の場合、各県が約1500万円、東北薬科大学が1500万円をそれぞれ拠出し、合計で約3000万円とする。卒業後の義務年限は、各県の修学資金制度に準じる。義務年限を満たせば、返済は免除される。堀田氏は、「各県の修学資金制度を、本学が側面から支援していく仕組み。各県の義務年限に、本学も合わせる。各県の修学資金制度に、本学が1500万円を上乗せすることになるので、より強い地域定着策になるのではないか。また医学生にとっても、授業料に相当する額が無利子で貸与されるメリットがある」と説明する。約3000万円の修学資金を得れば、6年間で約400万円という、国立大学医学部相当の自己負担で修学できると、試算される。医学部新設から10年間はこの制度を維持、その後は、各県の医師需給状況により、制度継続の要否を検討する。

 卒業生の地域定着に向け、キャリアパスも工夫。入学前には、高校生対象に地域医療のセミナーや体験学習などを実施するとともに、入試では面接などを通じて、地域医療に対する使命感や熱意を持つ医学生の採用を目指す。

 学部教育では、6年間を通じた「滞在型学習」を行う。つまり1年目から6年目まで毎年、医学生がそれぞれ同じ地域を繰り返し訪問して、地域医療などを学び、自分が教育を受けた地域を、新たな「ふるさと」と捉え、卒業後にその地域の医療を支えるマインドを養う。卒業後は、地域医療と先端医療をバランスよく学べるよう、勤務先と大学病院とを行き来する、循環型研修によるキャリア形成を進める。

 これらを実現するため、大学教員を配置する「サテライトセンター」を、宮城県の石巻市と登米市の2カ所に設置するほか、地域医療ネットワーク病院を整備する方針だ。


 既存修学資金との調整が必要

 以上のような「地域定着策」に対して、各県から出たのは、既存の修学資金を東北薬科大学に振り分ける難しさだ。

 口火を切ったのが、岩手県保健福祉部長の根子氏。「東北5県枠」の場合、1県当たり平均4人となる点を踏まえ、「岩手県は55人の奨学金制度を持っている。現在の制度に上乗せして、4人の枠を設けるのは難しいので、55人の枠で4人分をどう考えるかだ。2008年度以降、岩手医科大学の卒業生の地域定着策の一環として奨学金制度を拡充してきたため、同大卒業生の方を優先しながら運用していく。したがって、4人分を確保するのが、非常に難しい」と述べた。仮に各県の奨学金制度が使えない場合、東北薬科大学が拠出する1500万円の修学資金のみで、地域に定着する方策を考えることが必要だとした。

 他県からも同様の意見が出たが、堀田氏は、各県に新たな修学資金制度の創設を求めているわけではなく、既存の制度の活用を求めていると説明。各県の状況により、修学資金を出せるかどうかは変わり得ることを認めた上で、医学生に対し、修学資金を希望する県の希望を複数聞き、1県4人にこだわらず、東北5県全体で20人の枠を確保する努力をしていくとした。

 また前述のように、「宮城県枠」が多く、岩手医大の小川氏などからの、「東北全体の医師不足解消にはつながらない」との指摘に対し、高柳理事長は、「宮城県の場合も、仙台市の医師は充足しているが、それ以外の地域は不足している。だから宮城県は80億円を拠出するとした。どうしても宮城県を優先せざるを得ない」とし、他県の枠を増やすのであれば、「各県で修学資金を用意していただければ」と切り返した。

 「地域枠」の医学生の質を問う声も

 地域定着に向けた教育・研修についての発言もあった。山形大学医学部長の山下英俊氏は、現在、新専門医制度の構築が進められている現状を踏まえ、「専門医をどんな形で取得させるか、そのストラテジーが重要。また一部の学会では、研究マインドも養成するとしている。大学院をどう考えているのか」と質問。東北薬科大学医学部設置準備室室長の福田寛氏は、「総合的な診療ができる医師を目指するとしても、ある程度の専門性が必要。義務年限の中で、専門医を取得するのは難しい問題だが、一時的に専門教育を組み込んで、ローテーションさせるなどの方法を考えている」と答え、大学院については、将来的には必要と考えているものの、初期の段階では難しいとした。

 修学資金を用いた「地域枠」の定員が埋まらない現状がある一方、その医学生の学力低下を懸念する意見も出た。秋田大学医学部長の伊藤宏氏は、「必ず確保できるのか。(既存の医学部は)地域枠の医学生を確保するのに、結構苦労している」と述べ、修学資金を希望する医学生の確保方策を質問する一方、「矛盾することだが、地域枠の学生を無理に確保すると、学生のレベルが下がることが懸念される。この辺りはどう担保するのか」と質した。

 これに対し、高柳理事長は、修学資金の対象者は、「宮城県枠」でも、出身地や出身高校に限らず、全国から広く集める体制にしたのは、幅広く医学生を集めることで、学生の質の担保につながるためと説明。

 そのほか、各県から修学資金の運用をめぐって、さまざまな意見が出たため、岩手医大の小川氏は、文科省の構想審査会で、医師の地域偏在の解消に向けて、東北各県との調整が求められているとし、「十分な調整が取れていないから、こうした議論になるだろう。各県とすり合わせをするというが、いったいいつやるのか」との疑義を呈した。堀田氏は、「既に各県と協議をしている。本日の会議は最終回ではない。引き続き、各県と協議を重ね、完成形の制度を示すために鋭意努力していく」と答えた。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201501/20150117_13042.html
<医学部新設>運営協 地域定着策に異論続出
2015年01月17日土曜 河北新報

 2016年4月に新医学部の開設を目指す東北薬科大(仙台市青葉区)の第3回教育運営協議会が16日、仙台市内であった。大学側が卒業生の地域定着策などを説明。東北6県の自治体や医療関係者からは異論が相次ぎ、次回運営協に結論を持ち越した。
 薬科大は、入学定員を当初計画の120人から100人に縮小する方針を説明。出席者からは「これでは十分な医師が確保ができると思えない」「新医学部の設置者に選定された後に肝心の定員を変更していいのか」との指摘があった。
 修学資金は、卒業後の勤務地によって宮城県枠30人、宮城以外の東北5県枠20人に貸与する方針。宮城県枠は県が拠出する80億円を原資とし、5県は各県の既存の修学資金制度に薬科大独自の奨学金を上乗せする。
 これに対し、5県の自治体関係者からは不満が続出。「(制度設計が)宮城に偏り過ぎ、新たな医師偏在を生みかねない」「割り当てが少なく、医学部に対する期待が半減した」などの声が上がった。
 薬科大は「宮城県から80億円の出資を受けるため(宮城県枠を)優先せざるを得ない」と理解を求め「各県と協議を重ねたい」と答えた。
 教員医師には15日現在、定員183人に対して288人の応募があった。東北からの応募は150人あり、内訳は宮城132人、福島7人、青森4人、山形3人、岩手と秋田が各2人。東北大からは71人が応募した。
 薬科大は2月の次回運営協に採用教員リストを提示する考え。出席者からは「応募者の所属や採用を判断した理由、転出後に所属機関に影響がないかなども示してほしい」との要望があった。




http://www.m3.com/iryoIshin/article/282902/
医療維新
JNP、日本の医療の欠点を補う - 東京医療センター松本・菊野両氏に聞く◆Vol.1
所属は看護部ではなく各診療科

2015年1月8日(木) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 2015年10月から、看護師の「特定行為」研修制度がスタートする。今年注目される医療界の動きの一つだ。それに先んじて、いち早く看護師の役割の拡大に取り組んできたのが、国立病院機構東京医療センター(東京都目黒区)だ。2010年から東京保健医療大学が設立した大学院と連携し、米国のナースプラクティショナーを念頭に、医行為も可能な看護師の養成に取り組んできた。現在、同センターで働くJNP(Japanese Nurse practitioner:診療看護師)は8人。
 2014年3月まで院長を務め、JNP養成に積極的に取り組んできた、名誉院長の松本純夫氏と、4人のJNPが所属する救命救急センター長の菊野隆明氏に、JNPの現状をお聞きした(2014年12月19日にインタビュー。計6回の連載)。

――国立病院機構では、2010年4月から、東京医療保健大学と連携し、特定行為ができる看護師の養成を開始しています(『看護師の役割拡大は患者の「安心」「安全」のため - 東京医療保健大学大学院看護学研究科長・草間朋子氏に聞く』を参照)。

写真
国立病院機構東京医療センター名誉院長の松本純夫氏。
松本 大学院は設立から5年目。2年課程なので、卒業生は3回生まで出ています。東京医療保健大学の大学院を修了し、国立病院機構に就職している看護師は、JNP(Japanese Nurse practitioner:診療看護師)と呼んでいます。

菊野 1学年の定員は20人。既に約60人の卒業生がおり、当院には8人が就職しています。うち半分は当院の職員だった人で、それ以外は他の病院に勤めていた人です。

――8人の看護師は、何年目くらいの方が多いでしょうか。

松本 大学院の入学条件は、看護師として5年以上の経験を持つ人です。

菊野 大学院に入った時点では、経験年数が5年から10年の看護師。5年ぎりぎりで入学した人も一部いますが、多くは10年近いキャリアを持っています。

――4人の看護師は、手挙げ式で大学院に行かれたのか。それとも病院が推薦したのでしょうか。

菊野 当院の4人の職員は、手挙げ式です。国立病院機構の場合には、キャリアアップのために2年間、休職できる制度があります。本人が意思表示をして、院長がそれに値すると認めれば、その制度を利用して大学院に入学することができます。しかし、そうした制度が整備されている病院はまだ少ないようです。国立病院機構以外の病院の人は、病院をいったん退職されて入学しているケースが多いと聞いています。

写真
国立病院機構東京医療センター救命救急センター長の菊野隆明氏。
松本 看護師が1人や2人休職しても、業務が回る病院は出せます。小規模の病院にいると、志はあっても看護部長が許可してくれない施設があるようです。

菊野 大学院の卒業生のうち、元の病院に戻るのは、5割程度のようです。

松本 キャリアップしたいと考え、大学院に入学し、さらに働きたい病院がある。その中で就職先を自由に選んでいるわけです。当院を選ぶ人がいるのは、大学院の臨床実習をここで行うことが多いからでしょう。

――8人はどちらの部署におられるのですか。

菊野 当院の場合は、大学院卒業後の1年間は、初期研修期間と設定しています。現在は救急科、総合内科、外科という基礎的な診療部門で、3カ月ずつ研修する。あとはプラスアルファとして、放射線科、手術室、臨床検査科、リハビリテーション科、薬剤科の中から、3つを選択してもらい、1カ月単位で研修してもらいます。選択科は、ほとんど本人の希望を受け入れています。

 2年目は、どこかの部門に配属されます。現時点では、8人のうち、配属が済んでいるのは、救急科4人、外科1人です。残り3人が現在、初期研修中です。救急科が多いのは、ICU出身者が多いからです。

――大学院2年間を終えた後、さらに1年間の研修が必要ということ。

松本 誰が考えても、それは当たり前でしょう。これは、草間先生(2010年当時、東京医療保健大学院看護学研究科長の草間朋子氏)、山西先生(2010年当時、国立病院機構理事で、東京医療センター副院長の山西文子氏)と、私で話し合って作ったもの。山西先生は「1年は研修させた方がいい。その間に、自分の適性を見つけてもらう」という意見でした。

――研修プログラムは、東京医療センターで独自に作成されたのですか。

松本 はい、独自に作成したもので、「東京医療センターモデル」です。ただ、当院には、複数のJNPが勤務しているので研修体制も作りやすいですが、1人しかいない病院では、まだ手探りだと思います。

――研修で教えるのは、医師ですか。

菊野 はい。

松本 JNPは看護師ですが、所属は看護部ではなく、各診療科です。

――救急科、総合内科、外科の研修が必須とのことですが、JNPにどんな役割を期待しているのでしょうか。

松本 私が講演などを依頼された時に言っているのは、「特定看護師や診療看護師が、病棟の師長になれば、日本の医療の今の欠陥を補うことができる」ということ。これは矢崎先生(2004年から2012年まで国立病院機構理事長を務めた矢崎義雄氏)などとも、一致した点です。矢崎先生のアイデンティティーは、常に新しいことを提案することであり、日本の医療制度を変えることに情熱を持っています。その情熱と、私が長年温めていた構想などが、東京医療保健大学への大学院開設につながった。

 私の構想は、大学卒業後の3年目に、東京都済生会中央病院で勤務していた時、ロールモデルになる看護師に出会ったことがきっかけです。アメリカでナースプラクティショナーが制度的に立ち上がっていく直前に、アメリカの看護大学で教育を受けて帰国した、30代の師長でした。私はそれ以降、アメリカと日本の看護教育の違いを、臨床をやりながら考えていた。アメリカの医療にはいい面と悪い面があるけれど、私はいい面を見たということ。

――その看護師は、どんな仕事をされていたのでしょうか。

松本 私は3年目のレジデントでしたが、外科医たちは毎朝、症例検討のカンファレンスをやります。それが終わると、気になる入院患者を短時間で診た後は、オペに入ってしまう。師長は、「あなたたちは、手術室で勝負するのが仕事。病棟の患者さんは私に任せなさい」と言うのです。採血や胸レントゲン写真の結果が出てくると、その師長が診る。突然、内線で、「松本先生」と手術室に電話がかかってくる。「あなたの患者さんは、カリウムが6(mEq/L)ある。このままでは、心室細動になるかもしれない。心電図の波形も、少しT波が高い。どうするの?」と言い、カリウムを下げるための手段を提示してくる。「私が、部下の看護師と一緒に、やっておいてあげるから」と。

――判断は先生に仰ぐけれども、実施するのはその師長。

松本 「医師からの直接指示で、診療行為を代行する」ということ。その前に勤務していた病院では経験したことがなかったために、鮮烈に覚えています。済生会中央病院が、非常に進歩的だったのは、そういう人を採用して、師長を任せるという柔軟性があった点でしょう。

――ドクターは、病棟、手術室、外来などいろいろ行きますが、病棟看護師はずっと病棟にいます。

松本 救命救急センターのように、24時間張り付いているレジデントと指導医がいるところはいい。しかし、患者さんに異常が出た時に、すぐに駆けつけることができる医師がいない病院もある。当院(780床)には、非常勤も含め、医師は約270人いますが、医師が多いと言われる当院でも、医師が駆け付けるのに時間がかかるケースはあり得ます。



http://www.m3.com/iryoIshin/article/283225/
医療維新
JNPの研修、初期研修医と同等 - 東京医療センター松本・菊野両氏に聞く◆Vol.2
「ある時は医師、ある時は看護師」

2015年1月18日(日) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――JNP(Japanese Nurse practitioner:診療看護師)は、大学院に入学する前、認定看護師あるいは専門看護師の資格を取得していた人が多いのでしょうか。

菊野 救急の認定看護師や集中治療の専門看護師の資格を持っていたり、救急病棟、あるいは外科病棟で長い間、働いているなど、それぞれいろいろなバックグラウンドを持っています。これらの経験があれば、大学院レベルの教育についていきやすい。


「医師はいつまで経っても医師だけれど、JNPは、ある時は医師、ある時は看護師。立場を上手に使い分けている上、医師よりも、患者に対して親切かもしれない」(松本純夫氏)
――例えば、救急の場合、JNPと、救急の認定看護師とはどのように違うのでしょうか。

菊野 仕事内容は、全く違います。認定看護師や専門看護師は、医行為ができないという点が、決定的に異なります。認定看護師や専門看護師が主にやっているのは、マネジメントと教育です。救急の認定看護師の場合、院内の救急診療体制を見直したり、看護師たちに救急に関する教育をする。例えば、ICTの専門看護師も、感染に関するデータを収集したり、院内を啓蒙などの活動を行っています。

 つまり、仕事の主な対象は職員、あるいは病棟などの組織。これに対して、JNPの対象は、あくまで患者さんです。JNPについては、医行為ができることが強調されていますが、それ以上に重要なのは、一人ひとりの患者について考察して、臨床推論する能力を持っている点。

松本 ある先生が、2年前にこの病院を視察した際に、JNPが言った言葉が一番イメージ的に分かるでしょう。救急の認定看護師で、JNPの資格を取得しました。「認定看護師の時は、勤務時間が終わって、家に帰れば、患者のことは全て忘れていた。でも、JNPとなって働き始めたら、担当した患者さんのことが、家に帰っても頭を離れなくなった。どうやって治したらいいんだろう、と常に考えるようになった。これが、認定看護師だった時代との一番の大きな変化」と話したのです。この先生は感激して、唸っておられました。

――大学院の2年間を修了すると、ある程度、特定の医行為などができるようになるのでしょうか。

菊野 大学院を卒業してJNPになり、「この看護師は、救急看護を10年やっていたから、任せられる」という判断になるかというと、それは違います。実際の働きぶりを観察した上で、私たちが判断しています。

 大学院では、医行為に関しては、理論的な部分、どんなリスクがあるか、どんな点に注意すればいいのかなどについては学びます。例えば、お料理の本をどれだけ読んでも、実際にお料理しないと、上手にはならないでしょう。それと同様に、大学でシミュレーターなどを使ってどんなに練習しても、医行為自体はうまくなりません。安全な手順を学ぶことが目的であり、手技が上達するトレーニングではないからです。

――では、救急部門に配属された4人のJNPは、どんな研修をしているのですか。1次、2次の救急を担当されている。

松本 研修医と一緒に、次々と来る患者さんを担当しています。

菊野 はい、そうです。3次救急は別の診療システムなので、担当しているのは、1次、2次の救急外来。初期研修医と混ざっている時間帯もありますし、JNPだけの時間帯もありますが、指導医1人に対し、その下に初期研修医と横並びでJNPを配属しており、初期研修医と全く同様に、救急患者さんを順番に担当して、診療していく体制です。一番多い時間帯では、1人の指導医に対して、合わせて4、5人が付いています。

 初期研修医もJNPも、まず看護師などによるトリアージの情報を基に、指導医から「こういうアプローチをしなさい」といったアドバイスを受ける。それから問診や診察を行い、「この点が疑わしいので、こんな検査をやりたいと思います」と指導医にコンサルテーションに行く。そこでまた、アドバイスをもらい、必要な検査をやる。結果が出たところで、その判断と治療方針を自分たちで考えて、またコンサルテーションに行く。その承認を受けることができれば、その通りの治療を行う。こんなプロセスでやっています。

――JNPは、初期研修医と全く同じ研修を受けている。

松本 全く同じです。時に、JNPが初期研修医にアドバイスすることもある。上手に自分たちの看護師としての経験を生かしています。私は講演でいつも、「医師はいつまで経っても医師だけれど、JNPは、ある時は医師、ある時は看護師。立場を上手に使い分けている上、医師よりも、患者に対して親切かもしれない」と話しています。

――外科や救急部門における、JNPの勤務体制はどうなっているのですか。夜勤もしくは当直などはあるのでしょうか。

菊野 当直はさせていません。日勤と准夜勤のみです。深夜帯に患者さんが殺到することは、実際には少ないので、JNPが勤務することにより、クオリティーがより上がるとか、効率がよくなることは、あまり期待できません。むしろ日中や准夜勤の時間帯で、他の職種のシフトの谷間みたいな時間、ボトルネックができるような時間帯で、JNPは非常に臨機応援に動いています。

 また当院には、夜間帯の入院患者さんが全て入る救急病棟があります。内科当直は特に、非常に患者さんが多くて忙しいですから、入院時にオーダーは出したけれども、その後のフォローまで、なかなか追いつかない。病棟の看護師が変化に気づけば、もちろん医師に報告しますが、何も変化がなかったり、安定していたりすると、なかなか現実には手が回りません。

 そうした患者さんに対して、対応しているのがJNP。朝一番で救急外来のカルテと、入院カルテ、過去の記録、検査データなどを全てチェックして、現時点での治療方針や経過に問題はないかを確認しています。

――JNPが、カルテなどを見て、問題点があるかどうかを判断できる。

菊野 はい、できます。

――看護師の特定行為については、「侵襲性が高い行為をどこまで認めるか」という議論があります。JNPと研修医が行う行為について、どう線引きしているのでしょうか。

菊野 研修医と全く同じですね。

松本 研修医も、JNPも、最初からできるはずはない。だから同じ教育システムなのです。

菊野 私たちの部門では、初期研修医であっても、例えば気管挿管や中心静脈穿刺などをやらせてもらえず、研修を終える人もいます。JNPに関しても同様です。「十分な知識や技術があり、リスクマネジメントができるかどうか」を上級医が判断して、やらせるかどうかを決めています。

松本 「資格を取ったら、全てのことができる」と考えるのは、余計な心配で、実際の臨床現場ではそんなことはあり得ない。我々が医師として育ってきた時を考えれば、分かるはずです。

――医師であっても、またJNPであっても、できる人とできない人がいる。

菊野 はい。私たちは医師免許を持っているので、全ての医行為をやる権限があります。しかし、例えば、私自身は外科医かつ救急医。では私がお産をやるかというと、それはやりません。精神科の治療を胸を張ってやるかというと、やはり手を出さない。精神科の先生からも、「菊野先生、精神科の患者さんを診るのは、やめてください」と叱られると思う。それと同じことだと思うのです。

 我々医師は、卒後、何年もかけて修練を積み、自分も、周囲も、「この点については任せられる」ということを、相互に認め合った分野において働いている。これは、医師でも、JNPでも同じです。要は、その人の能力を見ているわけです。さらに言えば、JNPでも、「うちの病院では、ここまで許してもらえるけれども、他の病院に行けば、そこまでの信頼関係がなければ、認めてもらえない」ことはあり得るだろうし、それは医師に関しても同じです。



http://www.ryoutan.co.jp/news/2015/01/18/008722.html
新大江病院、分院化後は在宅医療など柱に
両丹日日新聞2015年1月18日

市民病院の分院となる新大江病院 福知山市大江町河守の国民健康保険新大江病院が、今年4月から福知山市民病院の分院(公設公営)になる。分院化で何が変わるのか。市民病院の香川恵造院長は、在宅医療など2本柱を軸にした運営方針を立てている。

■「地域全体を診る医師」育成■

 新大江病院は旧大江町が国保大江診療所として1953年に開設した。間もなく大江病院に改称。05年度には、町主体の医療法人財団が指定管理者として引き継ぎ、公設民営となった。現在は内科と消化器科、リウマチ科の3科で、ベッド数は72床ある。

 公設民営になってから、2年間は黒字を確保していたが、医療スタッフ不足などが原因で、08年度からは赤字経営となり、12年度には約9200万円の赤字を出すなど、厳しい経営状況に陥った。

 13年6月に、地元から「新たな展開を図るため、公設公営化を」との要望があり、指定管理期間が今年3月末で終了するのに合わせ、市は4月から市民病院の分院にすることを決めた。

 香川院長は「分院化後は『総合診療専門医の育成』と『在宅医療の推進』を2本柱とし、さまざまな課題を解決し、地域に必要とされる病院を目指したい」という。

 総合診療専門医とは、患者の病気を幅広く継続して診療し、「地域全体を診る」ことが求められる医師のこと。「大江地域には高齢者が多く、複数の病気を抱え、慢性化しやすいお年寄りなどに対応できる」とも話す。

 大江分院内には、地域医療研修センター(仮称)を設置し、専門医を育成する。分院を人材育成の場としても位置付けることで、「意欲的な若い医師たちが集まり、医師不足の解消につながるのでは」と期待している。

 超高齢社会に対応する在宅医療の推進については、医師と看護師でチームをつくり、通院が困難な患者らに対し、訪問診療などを行うことにしている。

■診療科再編 本院とネットワーク化■

 設備面では、電子カルテシステムを導入し、市民病院とのネットワーク化を図る。また訪問診療の際にも、患者の検査結果や投薬状況などの医療情報をタブレット端末で見ることができるため、「在宅医療にも大いに活用できる」という。

 診療科は内科、小児科、リハビリテーション科に再編。これまで病院に併設してきた「リウマチ・膠原病クリニック」と、患者数が少なかった北有路の有路診療所は廃止する。

 ただし、クリニックの機能については、しばらく移行期間を設けることにし、最終的に市民病院へ完全移行する方針だという。

 このほか薬の院内処方を院外処方に変更▽検体検査や人間ドックの市民病院への引き継ぎ▽エレベーターの改修・新設-などが予定されている。

 香川院長は「安心安全な医療を提供したい。経営面で不安が無くはないが、出来る限り改善し、ゆくゆくは黒字化を図っていきたい」と話している。



http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14215044370966
在宅医療・介護、連携進む 自治体や医師会、県内15拠点 
2015年1月18日(日) 茨城新聞

住み慣れた場所で医療や介護サービスを受けられるよう、自治体や地域の医師会が中心となって在宅医療・介護の連携拠点づくりが県内15カ所で進められている。高齢化がピークを迎える「2025年問題」に備え、情報通信技術(ICT)を活用して患者情報を共有する動きや業種を超えた研修会などが活発化。関係者は地域の実情に応じた連携の在り方を模索している。

13年度から始まった県の「在宅医療・介護連携推進事業」の一環。団塊世代が75歳以上となって医療や介護需要が増える25年問題に対応するため、在宅医療と介護環境を整える狙いがある。

連携拠点づくりを進める自治体のうち、笠間市は昨年10月から患者情報を市や介護事業所、医療機関などと共有できるシステム「介護健診ネットワーク」を導入し、本格運用を始めた。

インターネット上で情報を管理する「クラウド」を活用し、利用者の同意を得た上で介護認定情報やケアプラン、緊急連絡先などをパソコンやタブレット端末で確認できる。

さらに、患者宅を訪れる医療・介護従事者は床擦れや傷口の画像をシステムに転送して医師の指示を仰いだり、患者の服薬情報を確認して飲み間違いや飲み忘れを防ぐこともできる。

かさまケアマネ会の小森聡会長は「利用事業者がさらに増えれば有効な連携のツールになる。多職種の連携が深まることで、人間味のあるケアになっていく」と話す。

つくば市医師会は在宅医が中心となり、看護師や薬剤師、ケアマネジャーなどを交えた事例検討会を月1回ほど開催。認知症の要介護者の対応など実例を題材に議論し、課題を共有する。

在宅医の開拓も進める同医師会は「連携の土台はできつつある。今後は連携の仕組みづくりが課題」として、患者の退院支援や在宅での療養生活支援に必要な連携策を探る。

ほかに、市民向け講演会も各拠点ごとに開かれており、在宅医療と介護サービスに関わる相談窓口の開設なども計画されている。

国立社会保障・人口問題研究所は県内の65歳以上の高齢者は25年に86万2千人に上り、高齢化率は31・2%に達すると推計。高齢者は14年比で約11万人増える見込みだ。

連携推進事業は来年度から介護保険法に位置付けられ、今後は全ての市町村が取り組むことになる。県厚生総務課は「先行する15拠点の取り組みを他自治体のモデルとし、全体の底上げを図っていきたい」としている。(戸島大樹)



http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20150117_9
首都圏から看護師呼び込め 県、就活サイトを活用
(2015/01/17) 岩手日報

 看護師有資格者のU・Iターンを促そうと、岩手県は民間の看護師就職・転職サイトを活用したPRに乗り出した。県が所在を把握できず、就業情報を伝えにくい首都圏の本県出身者らに、県が参加する都内の就業イベントを案内。若手看護師の都市部流出が課題となる中、効率的な人材確保につながるか、成果が注目される。

 県看護職員県内就業推進事業の一環で事業費約2千万円。全国最大級の看護師転職専門サイト「ナース専科 求人ナビ」を昨年12月から活用している。登録者のうち、本県出身者、勤務経験者ら本県ゆかりの人材へ、県が参加する就業イベント情報をメールで特別配信する。

 県によると看護師の県内定着率は10年が42・6%。県医療政策室の葛尾淳哉医務課長は「できる限り多くの人に本県での就業情報を提供し、看護師を呼び込みたい」と意気込む。


  1. 2015/01/18(日) 08:33:43|
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