Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

12月25日 

http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/280855/?category=report
「質の悪い医師増える」と高久氏、成田の医学部新設で
日医、医学会なども改めて反対を表明

2014年12月25日 池田宏之(m3.com編集部)

 千葉県成田市における国家戦略特区による医学部新設の検討を受けて、日本医師会、日本医学会、全国医学部長病院長会議は12月24日、医師養成数の過剰や現在の構想の不十分さを指摘した上で、「反対」を明言する会見を開いた(資料は、日医のホームページ)。新設の影響について、会見者から「(募集停止する大学が相次ぐ)法科大学院のようになってはいけない」「質の悪い医師が増える」といった意見が出た。

132人に1人が医師になる可能性

 会見には、3団体から9人が出席。日医の横倉義武会長が強調したのは、医師養成数の問題。2008年度から2015年度にかけて、年間の医師養成数は1509人増加している点や、地域枠で入学した学生全員がまだ臨床現場に出ていない点を指摘して、「医師養成数に一定のめどがつきつつある」と述べた。さらに、人口減少の中で、1976年には437人に1人が医師になっていたのに対して、2014年には162人に1人となっているグラフを示し、現状の医学部定員数でも「2030年には132人に1人になる」として、医師過剰になるとの認識を示した。横倉会長は、医師1人の養成費用や地元医師会の反対にも言及した上で、「(成田への医学部新設は)反対。人口が減る中で、今後の医師養成数を検討した上で浸透に対応する必要がある」とした。「医師養成数を検討して対応」との表現について、「他の団体より表現が弱いのでは」との指摘に対して、横倉会長は、「トーンの違いはない」と足並みがそろっている点を強調した。

 加えて、横倉会長が紹介したのは、法曹界の規制改革で、募集停止が多発している法科大学院。合格率に課題がある法科大学院は、入学者が9割減り、募集停止校が、74校中20校に上っている点を踏まえ、「医学部は、(法律系の大学と比べて)設備が極めて重い。法科大学院のようにならないようにと、強く申し上げたい」と話した。


日本医師会の横倉義武会長(中央)や日本医学会の高久史麿会長(左)らは、改めて、千葉県成田市における医学部新設に反対する考えを示した。
「質の悪い医師増加、国民幸せでない」

 日本医学会の高久史麿会長は、医学会の幹事会において、全員が新設に反対した点に言及し、「(現在までの定員増加で)医学生の質の低下を指摘するデータも出ている。質の悪い医師が増えるのは国民にとって幸せではない」とした。地域偏在などの問題について、高久会長は、「国として考えていかないといけない問題」とした上で、地域医師会と大学で、協働して取り組む姿勢の重要性も強調した。

 全国医学部長病院長会議副会長の甲能直幸氏は、成田市や国際医療福祉大学が示している「国際医療への貢献」「グローバルスタンダードの医療施設提供」などについて、「既存の大学で対応できる」と、同会議の従来の主張を繰り返し、新設医学部が不要である点を指摘した(『成田市・新設医学部「陳腐」と批判』を参照)。同会議相談役の寺野彰氏は、国際医療福祉大学について、「栃木で計画があったときの目的は『地域医療』、神奈川の時『先端医療』だった。どこまで真剣なのか」と、同大学の姿勢を批判した。

成田の高度医療提供問題ない」

 同じく同会議相談役の河野陽一氏は、千葉県の実情を紹介。成田市のある印旛保健医療圏について、既に基準病床数を満たしている上に、成田赤十字病院と2つの大学病院の分院がある点を指摘して、「近くに高度医療病院が存在していて、高度医療の提供に問題はない」と述べた。成田市に600床規模の大学病院ができた際の影響について、「地域医療提供や看護師確保からすると、プラスよりアンバランスになる側面がある」と指摘した。



http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=286419
医師不足で休日・時間外の診療中止 紀南こころの医療センター
(2014年12月25日更新) 紀伊民報

 公立紀南病院組合が運営する紀南こころの医療センター(和歌山県田辺市たきない町)が15日から、休日・時間外の診療を中止している。医師不足が深刻で、解消のめども立たないという。

 糸川秀彰病院長が24日、紀南病院組合議会の全員協議会で報告した。

 センターには今年3月末まで常勤医が7人いたが、来年1月には4人に減少する。精神保健福祉法に基づき、患者の強制入院や隔離、拘束の判断ができる精神保健指定医も3人いたが1人になる。許可病床は198床だが、現在稼働は144床にとどめている。

 4月に常勤医6人(うち指定医2人)となり、6月には常勤医2人が体調不良で休職したことから4人(同1人)になったため、時間外救急を一部制限するなどして対応した。

 7月からは県立医大(和歌山市)から指定医の派遣を受け、野上厚生病院(紀美野町)からも当直応援を受けて5人(同2人)体制で運営してきた。しかし、10月に県立医大の医師2人が体調不良となり、医師派遣が12月末で中止となった。野上厚生病院からの当直応援も10月末で終了した。県内の公立病院はどこも医師不足で、補充のめどが立たないという。

 同センターは紀南で唯一の公立精神科病院。本年度、11月末までの時間外救急患者の受診は269件で、うち入院は48件。今後は県立こころの医療センター(有田川町)が受け入れを担う。患者や関係機関には11月中旬から周知しており、これまで大きな混乱はないという。

 糸川病院長は「医師不足で残された医師は業務過多になっている。医師の都会偏重や公立病院敬遠といった構造的な課題解消が必要」と話している。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/44572.html
在宅医療に関する報酬改定「撤回を」- 保団連が声明、中医協の影響調査受け
2014年12月25日 13時37分キ ャリアブレイン

 全国保険医団体連合会(保団連、住江憲勇会長)は25日、中央社会保険医療協議会(中医協)の部会が実施した2014年度診療報酬改定の影響調査の結果の速報を受けて声明を出し、同改定で実施された在宅医療に関する診療報酬の見直しを撤回するよう求めた。【佐藤貴彦】

 中医協の部会が実施した調査は、集合住宅などに住む複数人の患者を一日で訪問診療する場合(同一建物居住者)の診療報酬の引き下げに関するものだ。24日に速報が公表され、中医協の総会は同日、これを基に医療・介護現場への改定の影響について議論。在宅医療の現場に、全体的に大きな問題は起きていないとの認識を確認した。

 保団連は調査結果のうち、改定前後の変化に関する診療所の回答から、在宅医療に取り組む医療機関にかなりの影響が出ていることが明らかになったと指摘。訪問診療に携わる医師の労働時間が長くなったかどうかを聞く設問で25.4%、訪問診療に関する収入が減ったかどうかを聞く設問で41.3%が、それぞれ「大いにあてはまる」か「あてはまる」と答えている点などを強調した。

 さらに、医療機関が訪問診療する患者を囲い込むため、集合住宅などとの間で契約を交わして利益を提供するといった事例について調べた結果、そうした契約が改定前にあったと答えた医療機関が、診療所で1.3%、病院ではゼロだった点にも言及。「レアケースを根拠に在宅医療点数の大幅引下げを断行し、真摯に在宅医療に取り組む医療機関が被害を受けている事実は、到底容認できるものではない」と訴えた。

 保団連は、同一建物居住者の在宅患者訪問診療料や在宅時医学総合管理料の減算のほか、訪問診療料を算定する同一建物居住者について、「訪問診療に係る記録書」の記載を求める運用なども撤回するよう求めている。



http://mainichi.jp/area/gunma/news/20141225ddlk10040245000c.html
群馬大病院:事故調査委「診療科長の責任重大」 中間報告ウェブ公開 /群馬
毎日新聞 2014年12月25日 地方版

 群馬大医学部付属病院で腹腔鏡(ふくくうきょう)を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、病院は24日、事故調査委員会の中間報告書と改善報告書をウェブサイトで公開した。事故調は「閉鎖的診療体制が事故の背景にあると考えられ、診療科長の管理責任は重大」と指摘した。

 2010年12月以降に第2外科の40代男性医師から腹腔鏡を使う肝臓切除手術を受けた患者約90人中、8人が4カ月未満で死亡したことを受け、今年7月に事故調が設置された。外科医ら5人の外部専門家と、学内の医師ら7人で会合を重ねている。

 病院側はこれまで、手術に耐えられるかを判断するために肝臓の大きさや状態を把握する手術前の検査が不十分だったとしていた。報告書によると、男性医師は、これらの事前検査の代わりに、より簡易な「KICG」と呼ばれる状態検査をしたと説明したが、カルテ上で実施が確認できたのは8人中2人だけだった。

 男性医師は日々のカルテの記載内容が乏しかった。この点について、第2外科のトップである診療科長が指摘したにもかかわらず改善されていなかったことが明らかになった。病院によると、男性医師は「ペース配分を間違えた」と説明しているという。【尾崎修二】



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=110056
群大病院、執刀医「保険適用外と説明」…遺族証言とズレ
(2014年12月25日 読売新聞)

 腹腔鏡ふくくうきょうを使う高難度の肝臓手術を受け患者8人が相次ぎ死亡した群馬大学病院(前橋市)は24日、院内に設置した事故調査委員会の中間報告書を病院のウェブサイトに公表した。

 報告書では、手術が保険適用外であることを執刀医が「患者に口頭で説明した」と遺族の証言と食い違う主張をしていることなどがわかったが、手術ミスの有無といった医学的評価など核心的な問題は年度内にまとめられる最終報告に持ち越された。

 中間報告書によると、インフォームド・コンセント(説明と同意)が不十分だったという問題について、執刀医は、病院側の聞き取りに対し、「口頭では、他の治療法を提示し、保険診療では認められていない術式であることや高難度手術であることを説明していた」と話しているという。

 複数の遺族は読売新聞の取材に、「手術方法が保険診療として認められていない高難度のものだったとは聞いていない」と話しており、執刀医の主張は遺族の証言と食い違っていた。

 しかし、調査委がカルテなどを調べた結果、この主張を裏付ける記録はなかった。報告書では「すべての症例で日々のカルテ記載が乏しく、手術適応や治療方針を判断する過程が不明だった」とされた。

 執刀医が「保険適用外と説明した」と主張している8人のうち7人の手術は、保険診療として診療報酬が請求されていた。保険適用外の手術は本来、臨床試験として病院の倫理審査委員会に申請の必要があったが、執刀医が所属する第二外科は申請しておらず、「保険適用外の新規手術は臨床試験として実施するという意識が欠けていた」と報告書は指摘した。

 8人の死亡後、経過の問題点を検証する死亡症例検討会が一度も開かれていなかったことについては、「行われたという記録を確認できなかった」と認めた。そのうえで「他からの意見や批判を受けることなく閉鎖的診療体制が続いていたことが事故の背景因子」と報告書は結論づけた。

 ただし、不明な点も多い。病院によると、調査委には肝臓手術を専門とする外部の医師も加わっている。しかし中間報告書には、手術の医学的な評価に関する項目はなく、手術にミスがあったかどうかや、手術に適しているかどうかの判断に問題はなかったかなどには触れられていない。執刀医が不適切な腹腔鏡手術を繰り返した理由も不明だ。

 この執刀医による開腹手術では過去5年で10人が死亡し、うち5人が腹腔鏡手術を導入する前年度の2009年度に亡くなっている。厚生労働省にも報告されているが、中間報告書にはこのことについて一切言及がなかった。



http://www.minpo.jp/news/detail/2014122520051
期限切れワクチン接種 福島の医療機関が幼児ら16人に
2014/12/25 10:19  福島民報

 福島市の医療機関が11月27日から今月12日までに、有効期限が過ぎた麻疹・風疹混合ワクチンを市内の1~6歳児15人と成人1人の計16人に接種していた。24日、市が発表した。福島市医師会によると、これまでのところ健康影響は出ていないという。
 医療機関の担当者が13日、ワクチン在庫を確認したところ、期限切れワクチンの接種が発覚した。有効期限が2~17日過ぎていた。担当者の確認漏れが原因とみられる。
 担当医師が24日までに、接種を受けた幼児15人の保護者と成人本人に謝罪した上で、健康状態を調査したが問題は見られなかった。1カ月後をめどに抗体検査する。
 福島市は24日、市医師会に再発防止に向けた指導を徹底する文書を通達した。市医師会は25日、市内の約250の医療機関に文書をファクスする。
 市医師会は来年4月から3カ月間、期限切れワクチンを接種した医療機関を予防接種登録医療機関から除外する。



http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2014/M47520061/
厚労省報告書「バルサルタン事件の再発防止とはならない」
日本医師会総合政策研究機構客員研究員(東京都健康長寿医療センター顧問)
桑島 巌 氏
[2014年12月25日(VOL.47 NO.52) p.06] MT Pro / Medical tribune

 法規制導入を視野に,今年(2014年)4月から臨床研究の適切な制度を検討してきた厚生労働省の「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」(以下,制度検討会)は,法規制の対象を未承認または適応外の医薬品や医療機器に関する研究にとどめ,バルサルタンのような既承認薬の適応範囲内の臨床研究は,研究者らによる自助努力や法規制によらない対応策を求めるとする「臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書」を12月11日に発表した。バルサルタン問題をめぐり,再発防止を検討する厚労省の「高血圧症治療薬の臨床研究に関する検討委員会」で委員を務めた日本医師会総合政策研究機構客員研究員(東京都健康長寿医療センター顧問)の桑島巌氏は「これではバルサルタン問題の教訓が生かされたとはいえず,臨床研究の不正防止にはならない」との疑念を示した。

妥協点を探った苦肉の策

 制度検討会は11月27日の最終会合で,開発薬の治験だけでなく,適応外の医薬品や医療機器を用いた臨床研究にInternational Conference on Harmonisation-Good Clinical Practice(ICH-GCP)を適用するなどの案をおおむね了承した。

 つまり,承認された適応範囲内で効果や安全性を検討する臨床研究については適用されない。その代わり,「医薬品・医療機器の広告に用いられることが想定される臨床研究」というくくりで,なんらかの法規制を求める模様。

 しかし具体的なことには言及していない。報告書を見ると,研究者らによる自助努力や法規制によらない対応策とのバランスを重視したことが見て取れる。

 医師主導型臨床研究の法規制導入をめぐり,“臨床研究が萎縮してしまう”とする慎重な意見と,“先進国と同様,必要である”とする2つの意見に分かれていた。

 桑島氏は「今回,法規制を未承認薬と医薬品の適応外使用に限定し,既承認薬の医師主導型臨床研究を法規制の対象外とした案は,妥協点を探った苦肉の策であるという感は否めない。これでは既承認薬の研究であったバルサルタン事件の再発防止策とはなりえない」との見解を示した。

 研究不正の再発を防止するには,バルサルタンのような既承認薬を用いた臨床研究にも,医薬品による介入リスクに応じた規制や罰則は必要だ,と同氏は言う。

 報告書では,不適正な行為を行った研究者には,所属する医療・研究機関や学会も厳しい姿勢で臨むなどの自主的な取り組みを求めているが,同氏も同じ認識を示しており「高血圧治療薬などの既承認薬は安全性が示されているため,必ずしも法規制は必要ないだろう。しかし,研究不正が生じた場合は,公的研究費を打ち切るあるいは所属学会から研究者を除名するなどの厳格なルールを決めてもよいのではないか」と提案した。

SPINは臨床医の判断を誤らせる一因

 医薬品の広告に用いることを想定した臨床研究も法規制の対象としたが,桑島氏は「そのような臨床研究はほとんどなく,無意味である」と一刀両断に切り捨てた。

 同氏が市販後医薬品の臨床研究に厳格さを求めるのは,近年,種まき試験(seeding trial)が散見されるからだという。

 Seeding trialとは「企業が特許切れの製品に対抗するために,新しい薬に切り替えてもらうための臨床試験で,ノバルティスファーマの白血病治療薬に関するSIGN研究がこれに当たる」(同氏)。

 Seeding trialの目的は,本来医師が知りたいことの解明ではなく,販売促進が目的であり,かつそれが公費である保険診療の中で行われることに問題がある,と同氏は指摘する。またその報道には,SPINを駆使したゆがんだ内容や広告が目立つという。

 SPINとは,結果に統計学的有意差がなく企業の期待した結果が出なかった場合,当該薬が有効であるように印象付けたり,サブグループのデータのみを解析して有効性を強調したりする手法である。

 同氏は「SPINは臨床医の判断を誤らせる一因となりかねず,患者の不利益に結び付く可能性が大きい」と指摘した。

“広告ウオッチ”の立ち上げを計画中

 製薬企業の努力によって,近年は抗リウマチ薬,抗血栓薬,新規経口抗凝固薬,糖尿病治療薬など有効な新薬が多く登場した。桑島氏は,医師は製薬企業の開発努力を尊重しているとした上で「薬剤には有効域と毒性域との幅が狭いものが少なくない。注意して使用しないとリスクが増大する医薬品もある。だからこそわれわれ医師は,SPINを駆使した医薬品の記事広告に警戒する必要がある」と強調した。

 医療用医薬品の広告の在り方を見直す厚労省の「製薬企業の薬事コンプライアンスに関する研究班」(主任研究者=日本大学薬学部教授・白神誠氏)は,広告違反を把握する手段として,医療従事者による広告監視モニター制度の設立案などを取りまとめた。

 桑島氏は,自身が理事長を務める臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)の公式サイトの中で,この医療従事者による広告監視モニター制度案に近い“広告ウオッチ”を立ち上げることを計画しているという。“広告ウオッチ”はSPIN論文を利用した広告をJ-CLEAR会員や医療関係者から報告してもらうというもの。

 その目的について,同氏は「医療用医薬品広告に“適正”を求めるというより,“臨床試験の結果を曲げて伝えるのをやめよう”ということだ」と説明した。

科学的妥当性を審議できる外部倫理審査委員の起用を

 では,何が臨床研究不正の歯止めとなり,臨床に本当に必要な情報が正しく伝わるのかを桑島氏に聞いたところ,以下の4点を挙げた。

 1つ目は,医療研究機関・大学における倫理審査委員会の体制改善であるとした。一連の事件では,PROBE法であるにもかかわらずソフトエンドポイントを設定するなど,臨床研究の科学的妥当性が問題となったが,倫理委員会ではこの点が見逃されてしまった。臨床研究に対する倫理審査委員会のリテラシーの低さが根底にあった。

 わが国の医療機関では,倫理面に配慮し,倫理審査委員として一般有識者や法律家などで人選を行ってきた。しかし一般有識者などは,倫理面から審議を行うことができても,臨床研究の科学的妥当性に関しては詳しくない。そのため同氏は,臨床研究の科学的妥当性についても十分審議できる人員構成が必要であると提言した。

 また,副院長や診療部長などの診療系幹部職員は,日常診療が多忙過ぎて,委員会との両立がかなり難しいのが実情である。例えば院内コールなどで離席することもしばしばあり,十分な審議に参加できない場合も少なくない。

 ならば「外部委員として,臨床研究に造詣が深い定年退職した医師を迎え入れるのはどうか」と同氏は提案する。

論文リテラシーの強化を

 2つ目は医学学術誌の査読システムの見直しであるとした。残念ながら,バルサルタンの不正論文は,各誌のレフェリーではなく京都大学循環器内科の由井芳樹氏によって指摘された。PROBE法であるにもかかわらずソフトエンドポイントが設定されていた点や,血圧値の奇妙な一致,電解質データでの異常な標準偏差値などは論文査読の段階でチェックされるべきであった。

 3つ目として桑島氏は,製薬企業,出版社における企業モラルの向上を挙げた。社内倫理審査の研究結果を広告に用いる場合の適正表現をチェックする機能が働いていれば,結果的に不正であった論文を用いた広告が拡大・普及することはなかったと指摘した。

 4つ目はSPIN論文に対する読者である医師自身のリテラシーの強化だ。同氏は,論文化されたときにSPINを見抜く力も必要だと強調した。

不正再発時は法規制対象を再検討へ

 今年11月27日に開かれた制度検討会の最終会合では,法規制の対象として「未承認薬または適応外の医薬品・医療機器などを用いた臨床研究」と「これらの広告に用いられることが想定される臨床研究」の2点が報告書(案)に盛り込まれた。

 その後,規制範囲の検討拡大を記す一文を追加。12月11日に公表された報告書では,バルサルタンをはじめとする市販後大規模臨床研究のような不適正事案が再び起こった際は「その状況や内容に応じ,対象範囲の妥当性についてさらなる検討を要する場合がある」とした。

 7回にわたって行われた制度検討会では,法規制によって研究自体が萎縮してしまうことへの懸念についてもたびたび議論されてきた。最終的には,法規制と研究者の自助努力とのバランスを図ることが重視された。

 なお,報告書詳細は厚生労働省の公式サイト内「医政局が実施する検討会等」の欄を参照。


  1. 2014/12/26(金) 05:33:10|
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