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地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

12月16日 

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/t230/201412/539858.html
特集◎東北・新医学部 苦難の船出《前編》
東北薬科大に決定するも調整は難航

2014/12/12 加納亜子=日経メディカル

琉球大学以来、37年ぶりとなる医学部新設が動き始めた。東日本大震災からの復興という観点と実現可能性の高さから、開設主体には東北薬科大学が選ばれ、2016年春の開学に向けた準備が進んでいる。しかし、地域医療への影響を懸念する声は根強く、実現までの道のりは険しい。

 「医学部新設に向けて、ようやく一歩前進できた」──。11月11日、東北薬科大学に新設する医学部の在り方を話し合う「教育運営協議会」で、教員の公募・選考指針が大筋で認められたことを受け、同大理事長・学長の高柳元明氏が発した一言だ。この発言は、地域医療への悪影響を懸念する声が強い東北地方での医学部新設が、いかに難しいものであるかを物語っている。

火付け役は民主党政権
 医学部の新設は、医師不足に悩む地域が以前から要望してきたもの。だが国は、医師不足には既存の医学部の定員増で対応する方針を堅持してきたため、1979年の琉球大学以来、医学部が新設された例はなかった。

 流れを変えたのは、2009年に政権交代を果たした民主党政権だ。「医療崩壊」といわれた状況を受け、当時の政府が2010年に医学部新設を検討する姿勢を示したところ、医師不足が顕著な地域を中心に医学部新設の意向を表明する大学や病院が続出。北海道医療大学(北海道当別町)、公立はこだて未来大学(北海道函館市)、国際医療福祉大学(栃木県太田原市)、聖隷クリストファー大学(浜松市北区)、仙台厚生病院(仙台市青葉区)が、次々と医学部新設の準備を進めていることを明らかにした。

 ところがその後、2011年に東日本大震災が発生したことで状況が一変。被災地の復興という観点から、医学部新設の候補地として東北地方がクローズアップされることになった。

 以前から国に東北地方への医学部新設を認めるよう繰り返し求めてきた宮城県の村井嘉浩知事は2013年10月、安倍晋三首相に医学部新設を直談判(12月17日に村井氏のインタビューを公開)。時を同じくして宮城県議会が医学部新設を求める意見を決議したほか、「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」や東北市長会も、相次いで医学部新設を国に要望した。


医学部新設に向けて奮闘する東北薬科大学

 こうした動きを受けて政府は2013年11月、東北地方に医学部新設を認める方針を決定。12月には復興庁、文部科学省、厚生労働省の3省庁が「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針」を公表するに至った。

 なお、上に挙げた北海道など東北以外の医学部新設構想は、今のところ実現のめどは立っていない。強いて言えば、国際医療福祉大が「国家戦略特区」として千葉県成田市に医学部を新設する構想が水面下で進行中だが、これも実現するかどうかは不透明。構想実現に向け、具体的な議論が進んでいる計画は東北のみというのが実情だ。

医学部新設は復興策の1つに
 さて、その東北地方の医学部新設だが、3省庁による基本方針は、震災からの復興、今後の超高齢化と東北地方における医師不足、原発事故からの再生を目的に、「東北地方に1校に限定して、医学部新設について認可を行う」と明記。新設に当たっては、図1に掲げた「4つの留意点」を遵守するよう求めている。

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図1 東北地方の医学部新設に課された「4つの留意点」
(「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針について(3省庁合意)」から一部改変)
(*クリックすると拡大表示します)

 その上で文科省は、2016年4月の開学を前提に、2014年5月末を医学部新設構想の受け付け締め切りに設定(図2)。有識者や専門家で構成される「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」(以下、構想審査会)が、その審査を担うことを決めた。

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図2  医学部新設構想の選定から認可までの流れ
文科省は当初、既存の大学が医学部を新設する場合の「最短スケジュール」で開学時期を2015年4月としていたが、新設に名乗りを上げた大学側の準備状況などを考慮し、今年4月に開学時期を2016 年4月へと先送りした。(「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針について(3省庁合意)」を基に編集部作成)
(*クリックすると拡大表示します)

 これを受けて、締め切りまでに東北薬科大、宮城県、南東北病院グループの3陣営が医学部新設に名乗りを上げた。東北薬科大は薬学教育との、宮城県は宮城大学看護学部との、南東北病院グループは傘下の医療機関群との連携を、それぞれ強調。卒業生の地域定着策についても、個々の強みを生かした案を提示した。

 東北薬科大は、宮城県が新設する基金(学費総額の約9割を50人分)と大学独自の修学基金(学費総額の半分を20人分)による2つの地域枠の設置を表明。宮城県は、東北の自治体病院への10年間の勤務を義務付ける代わりに、入学金や学費、奨学金を定員60人全員に貸与する優遇措置を設けるとした。南東北病院グループも、定員の100人全員を奨学生とし、そのために年間7億5000万円の奨学金と1億8000万円の留学費用を確保していることをアピールした。

 構想審査会は、関係自治体や既存の大学、日本医師会などの意見も聞きつつ、各陣営の構想を審査。その結果、8月に東北薬科大の「東北医科薬科大学構想」を選定した。座長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部長)は、同大の新設構想について「全般的にさらなる改善・向上の余地はあるが、構想審査会が提示する条件をクリアできれば、求められる水準に達すると判断した」と説明。被災地の地域医療、災害医療に配慮したカリキュラムが充実しており、教員確保の具体的な方策があること、修学資金や研修先に連携先を明示した点などを選定理由に挙げた(表1)。

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表1 構想審査会による各構想の主な選定結果
(文部科学省ウェブサイト「構想審査結果の理由」を基に編集部で作成)
(*クリックすると拡大表示します)

 一方、宮城県と南東北病院グループの構想は、実現可能性の低さを理由に落選した形となった。宮城県の構想には、地域完結型の教育の具体策が示されておらず、経営面、人材確保、地域定着策が準備不足だと構想審査会は指摘。南東北病院グループの構想についても、東北各県や既存の医大・医学部との連携体制が構築できておらず、財務面も確実性に欠けると判断した。

突き付けられた高いハードル
 とはいえ新設構想が選定された東北薬科大も、諸手を挙げて喜べる状況にはない。選定に当たって構想審査会から、新たに「7つの条件」(表2)を突き付けられたからだ。この7条件は、東北薬科大の関係者が「我々の医学部新設構想の実現を阻むために、あえて無理難題を押しつけたのではないか」と訝るほどハードルが高いものだった。

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表2  東北薬科大に提示された医学部新設に向けた「7つの条件」
「東北地方における医学部設置に係る構想審査会構想審査結果」から一部改変)


第2回の教育運営協議会後の記者会見で、「ようやく一歩前進した」と安堵の表情を見せた東北薬科大の高柳元明氏。

 条件の1つが、東北6県や各大学、地元医療関係者との「運営協議会」(後に「教育運営協議会」として発足)の設置だ。東日本大震災からの復興という趣旨に沿った医学部運営が行われることを担保するために構想審査会が設置を求めたものだが、その開催自体が難航した。もともと東北には、医学部新設によって地域医療を担う医師が教員などとして流出することへの懸念が強く、反対姿勢を取る自治体や大学が少なくない。そのため、初回の協議会開催までに2カ月もの期間を要することになった。

 文科省による根回しもあり、東北薬科大は10月22日に、ようやく第1回の教育運営協議会の開催にこぎ着けた。協議会には東北各県の医療担当部局や大学医学部、医師会、医療機関の関係者らが出席し、委員長に東北大総長の里見進氏が、副委員長には東北薬科大の高柳氏が就任した。

反対派からの異論が相次ぐ
 ところが、第1回の協議会は冒頭から紛糾した。教員の公募・選考の指針妥当性が議題に挙がっていたのだが、「構想審査会による審査を終えておらず、医学部新設が正式に決まっていないのに、教員の公募を開始するのは疑問だ」(岩手医大理事長・学長の小川彰氏)と批判の声が上がったのだ(12月18日に小川氏のインタビューを公開)。

 この意見に、文科省の担当者は「教育運営協議会は医学部新設に向けた準備の具体的な進め方を検討する場であり、それを踏まえて構想審査会が改めて新設の是非を判断する」と手続きの流れを説明し、その場を収めた。

 一方、東北薬科大が示した公募・選考指針に対しては、地域医療への影響を懸念する声が相次いだ。同大は教員の公募・選考に当たり、(1)地域医療に著しい影響を及ぼす恐れのある引き抜きをしない、(2)応募者の所属長の意見を聞き、地域医療に支障を来さないように配慮する、(3)女性教員の起用を心掛ける──などの留意点を盛り込んだ指針を提示している。

 しかし、「(他施設からの)直接的な引き抜きはもちろん、教員の採用により、その後任を確保するために医師の間接的な引き抜きが起これば、地域医療に影響を及ぼす」などの異論が続出。応募に対して所属長の意見書を添えるとの対応についても、「1人の所属長が、地域医療全体を考えた判断ができるのか」と実効性を疑問視する声が上がった。

 そのため委員長の里見氏は、東北薬科大に対し、地域医療に支障を来さないことを判断する基準をより細かく盛り込んだ公募・選考指針を改めて作成するよう要請し、第1回の教育運営協議会は終了した。

 協議会後、東北薬科大の高柳氏は「今回の協議会で公募・選考指針への了解が得られ、来週にも募集を開始できると考えていたが、大変厳しいスケジュールになった」と険しい表情で発言。周囲には、「ある程度の反対は想定していたが、想像以上に風当たりが強い。予想していたうちの最悪のシナリオだ」と漏らしたという。

地域医療に配慮した修正案
 新たな“宿題”を与えられた東北薬科大は、東北各県の自治体や大学医学部、医師会を回って意見を募り、修正した公募・選考指針を作成。11月11日に開催された第2回の教育運営協議会に提示した。修正後の公募・選考指針は、所属長による意見書の提出を応募者全員に求め、意見書には応募者の転出に伴う診療科や地域医療への影響を記載する形式を取った。

 さらに、地域医療への影響を懸念する声に配慮し、細かな留意点も明記した。(1)医師数が少ない地域や特定の大学、病院から極端に多く採用しない、(2)転出が困難な場合は本人の意向を確認した上で特に慎重に判断し、選考委員会は採用予定の応募者が転出した場合の後任者確保の見通しや地域医療への影響を踏まえて総合的に判断する、(3)地域医療への影響を判断する際に必要と認められれば、選考委員会が関係自治体や後任者の所属長など必要な関係者から意見を聞く──をはじめとする8項目だ。

 修正された公募・選考指針に対しては、なおも「地域医療への支障を来さないということを、どう判断するのか」などの意見が出たものの、その他に目立った反対意見はなく、修正案は大筋で合意された。

 これを受けて東北薬科大は、11月14日に基礎医学・臨床医学系の教授ら約180人の教員公募を開始。募集要項には、総合診療医を中心に地域医療を担う医師養成を目指す医学部の方針を明記。「求められる教員像」として、「医学教育に貢献し、自ら率先して地域医療に貢献する気概と意欲を持った教員」を掲げた。



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特集◎東北・新医学部 苦難の船出《後編》
課題は修学資金の確保、国の支援は望み薄?

2014/12/15 加納亜子=日経メディカル

 教員公募がスタートし、医学部新設に向けたステップをまた1つクリアした東北薬科大だが、残された課題は多い。

 まず、医学部の設置認可申請に向けた教員の採用予定者のリスト作成に当たっては、個々の採用予定者について「地域医療への影響がない」と判断した理由を教育運営協議会に説明し、理解を求める必要がある。同大は「(地域医療への影響がないか)説明が付かない場合、基本的に採用はしない」と教育運営協議会の席で発言しているが、こうした厳しい条件の下で必要な教員や勤務医、看護師などが集まるかは不透明だ。

 もっとも、教員の確保については、「公募は全国で常に行われており、教授職の人材なら集まるのではないか」と楽観視する声も聞かれる。

修学資金確保のめどは立たず
 それよりも大きな課題と見られているのが運営費の確保だ。私立大学の医学部は通常、国から年間約10億円の私学助成金を受け取っているが、新設の場合、この助成を受けられるのは卒業生が出る7年目から。つまりその分、運営費として6年間で60億円を自前で確保する必要があるわけだ。

 さらに東北薬科大の構想では、卒業後の一定期間、東北地方の自治体病院に勤務することを条件に、学費返済を免除する医学生修学資金制度を設けることを打ち出している。6年間の学費を学生1人当たり約3400万円と想定し、入学定員の120人のうち50人に約9割の3000万円を貸し付け、それにより卒後10年間の東北勤務を義務付ける。加えて、東北地方出身者の20人を対象に学費総額の半分の貸与を行い、卒後5年間の勤務により返済を免除する制度だ。

 これら2つの修学資金制度の運営には「トータルで150億円ほど掛かる」(高柳氏)見込みで、東北薬科大は宮城県が主体となり設置する予定の「医学生修学資金(ファンド)制度」に支援を求めている。宮城県は以前から医学部を設置するに当たり、運営費として6年間の私学助成金の2分の1の額とされる30億円を、さらに新たに構築する修学資金制度に80億円を支出することを公表してきた経緯があるからだ。

 しかし、宮城県知事の村井氏は「80億円は協力が最大限得られた場合の上限だ。実際の拠出額は、対象となる医学生を受け入れ、修学資金の返還を肩代わりする自治体病院や自治体などの意向を含めて判断する」とトーンダウンしている。その他の県も既に修学資金制度を設けているだけに、東北薬科大が新たな支援を求めても応じてもらうのは容易ではない。

国の運営費支援は望み薄?
 実際、第2回の教育運営協議会で高柳氏は、修学資金について「宮城県をはじめ東北各県を回り意見を聞いているが、調整中だ」と発言し、交渉がスムーズに進まない状況を認めている。この点について、支援を要請される立場の東北大医学部長の大内憲明氏は、「医学部新設については、以前から政府には慎重な判断を求めてきた。だが、新設を認める方向となった以上、『4つの留意点』と『7つの条件』が満たされれば認めざるを得ない。その場合は、国として十分な支援をすべきだ」と語る。

 これに対し、復興庁の担当者は「まずは宮城県など東北6県をはじめとする関係機関と、しっかり協議するところから進めていただきたい」と答えるにとどめ、東北薬科大への支援の意向を明らかにしていない。

 国や東北6県の支援により、十分な運営費や修学資金が確保できなければ、東北薬科大の医学部は定員や地域枠の縮小を迫られ、地域定着策が不十分との指摘を受ける恐れがある。また、教員や学生を無理に集める形になれば、医学教育の質が担保されない事態も考えられる。

 そもそも教育運営協議会の各委員は、医学部新設に無条件で賛成しているわけではない。例えば日医は、あからさまに反対する姿勢こそ示していないが、「『4つの留意点』と『7つの条件』の厳守は絶対だ。今後の教育運営協議会の議論を通じて達成状況を見極めたい」(常任理事の釜萢[かまやち]敏氏)と話している。全国医学部長病院長会議や東北市長会もほぼ同様の意見で足並みをそろえている。

 構想審査会が示した条件を東北薬科大が満たせなければ、教育運営協議会の委員が一斉に反対に回り、医学部新設構想が頓挫する可能性も否定できない。同大の関係者は「八方塞がりといえる状況だが、実現に向けて粘り強く取り組んでいきたい」と気を引き締める。東北の医学部新設への道のりは長く険しい。



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特集◎東北・新医学部 苦難の船出《インタビュー1》
国は医学部新設の実現に向け積極的な支援を
宮城県知事の村井嘉浩氏に聞く

2014/12/16 加納亜子=日経メディカル


 今回の医学部新設は、東北に1カ所、できれば宮城県に医学部を新設したいという強い思いを持って働き掛け、実現したものだ。三十数年ぶりの医学部新設が宮城県で実現する方向に進んでいることは、大変喜ばしいと感じている。

 私自身も地域の医師不足や偏在の解消に寄与する方策として、「病院完結型」から「地域完結型」の医療への転換を具現化する医学部の新設を目指したが、残念ながら総じて準備不足で、具体性に欠けるとの評価を受けた。

 今回の選定の経緯には、納得していない部分もある。宮城県の構想については、構想提出後に進めてきたカリキュラム編成や教員確保に向けた準備作業の内容が、文科省から構想審査会に伝えられていなかった。また、宮城県の構想ではなく、東北薬科大の構想が選定された場合に県が支援できる内容も文科省に伝え、「支援内容に認識のズレが生じないよう、東北薬科大に確認した上で構想審査会での協議を行うべき」と依頼したにもかかわらず、確認することなく決定に至っている。

 しかし、東北薬科大に決まった以上は、同大が真に東北の医療の復興に貢献する存在となるよう、可能な限りの支援をしていきたいと考えている。

 今後、東北薬科大が新設の条件とされた「4つの留意点」と「7つの条件」を達成するには、教育運営協議会の委員から出された意見にしっかりと対応し、1つずつクリアしていく必要がある。そのためには、東北地方の各県市町村、医師会、医学部との綿密な調整・協議が必要となる。だが、これを東北薬科大単独で行うのは難しい。さらに2016年4月の開学に間に合わせるとなると、スケジュール面でも大変厳しい状況だ。こうしたことから、国がより前面に立ち、責任を持って支援する必要があると考えている。

 東北薬科大の医学部は、地域医療に貢献する役割がとりわけ大きく期待されている。東北大との適切な役割分担の下、相互に連携・協力し、より強固な地域医療体制を構築していただきたい。(談)



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201411/539432.html?ref=RL2
応募時は所属長による意見書を併せて提出
東北薬科大、医学部教員の公募開始へ
「ようやく1歩前進した」と理事長は安堵

2014/11/12 加納亜子=日経メディカル

 東北薬科大学は11月11日、医学部新設に向けて第2回教育運営協議会を開催し、医学部教授をはじめとする教員などの公募・選考に関する基準案を提示した。協議会にて了承されたことから、早くて今週末、遅くとも来週には教員の公募を開始する。今後、全国の医学部、薬学部のある大学、研究所などに向けて公募する他、ホームページにも詳細を掲示する予定だ。

 今回了承された公募・選考の基準案は、第1回教育運営協議会での「医師の引き抜きなどによる地域医療に支障を来さないことへの担保が不十分」といった意見を踏まえ、修正したもの。第1回目の協議会後に東北各県と関係機関、医師会などに出向き、「改めて意見を聞き、最大限に意図を組んで作成した」(東北薬科大学理事長・学長の高柳元明氏)。

 この基準案では、応募する際に所属長による意見書を併せて提出するよう求めている。所属長とは、大学では学部長、病院では病院長、研究機関であれば研究所長や機構長などのこと。意見書は、応募者の転出に対する意見を「同意する」「困難」「判断できかねる」から選んだ上で、転出に伴う診療科や地域医療への影響、後任者が確保できているかなどを記載する形式。「困難」と回答があった場合は、職業選択の自由に配慮して本人の意向などを確認した上で「特に慎重に判断する」と定めた。

 また、基準案にはその他にも地域医療への影響に配慮することを目的に、細かな留意点が記されている。具体的には、(1)医師数が少ない地域から採用することのないようにし、特定の大学や病院から極端に多く採用することのないようにする、(2)転出が困難な場合は本人の意向を確認した上で特に慎重に判断し、選考委員会は採用予定の応募者が転出した場合の後任者確保の見通しや地域医療への影響を総合的に判断する、(3)選考委員会は、地域医療への影響を判断する際に必要と認められる場合は、関係自治体や後任者の所属長など必要な関係者から意見を聞くーーなど、8項目だ。

 協議会では、「(医学部新設が)地域医療に支障を来さないかどうかは、どのように判断するのか」(岩手医科大学理事長・学長の小川彰氏)などの質問が出たが、高柳氏は「あくまで協議会を開催し、実施するのは東北薬科大学。あくまで本大学の責任で判断し、文部科学省の構想審査会に提出する。公募開始後に協議会で認められた指針に沿っていないところがあれば、指摘していただきたい」と回答。

 委員長を務める東北大学総長の里見進氏も「協議会は、地域医療への影響に支障を来たさないよう採用を進めるにはどうすればよいかを考える場だ。そのために厳しい基準を設けている。3年後、4年後の地域医療に支障がないとは誰も言えないはずだ。できるだけ支障を来さない形で進めましょうとしか言えないだろう」と見解を示した。

 こうした議論を踏まえ、東北薬科大学はさらに修正を加えた公募・選考基準を用いて、公募を開始する。協議会後に高柳氏は「医学部新設に向けて、ようやく一歩前進した」と安堵の様子を見せた。年内には書類選考を終え、早ければ面接を始めるところまで進める予定だという。

 公募は開始することとなったものの、東北薬科大は遅くとも2015年2月までに構想審査会から示された4つの留意点と7つの条件を満たした構想を固める必要がある。「地域定着策や、東北地方の医師数が増えた後の入学者数の調整方法など、議論すべきことは多い。納得できる内容にしなければ、新設構想自体が潰れてしまう可能性もある。こうしたことも覚悟した上で急いで議論すべき」(宮城県医師会長の嘉数研二氏)と意見が出るほど議論の進みは遅い。里見氏が「間に合うか? 次回は12月下旬の開催となるのか」と投げ掛けるシーンもあった。

 なお、新設する上での課題の1つとされる修学資金に関しては、各県との協議が必要となることから、その準備が整い次第、次回の協議会を開催するとしている。


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http://www.cabrain.net/news/regist.do;jsessionid=2EB5840C0307C636E088D357ADFD914B
赤字病院拡大、報酬改定などが要因で- 全日病が会員調査
( 2014年12月16日 19:09 )キャリアブレイン

 2014年度診療報酬改定後の今年5月の総収支が赤字の病院が、前年同月と比べ増えていることが、全日本病院協会(全日病)が16日に公表した会員調査の結果から明らかになった。特に、東京にある病院や、一般病床のみの病院、DPC対象病院などで収支が悪化する傾向が見られ、全日病は、14年度の「診療報酬改定による急性期入院医療の厳格化」や「消費税増税による支出増」が要因としている。【佐藤貴彦】

 全日病は5月、会員病院の収支状況などを調査。930病院から回答を得て集計し、前年同月の状況を調べた前回の会員調査(831病院が回答)の結果と比較した。

 それによると、医業収入を医業支出で除して算出する「医業収支率」の平均は、今年5月が104.6%で、前年同月の105.5%から減少した。医業収支率が100%に満たない病院の割合は25%で、前年同月と比べ2ポイント増加。また、医業以外の収支も加えた「総収支率」の平均は104.6%(前年同期比1.8ポイント減)で、この比率が100%未満の赤字病院の割合は24%(同2ポイント増)だった。

 総収支率を病院の所在地ごとに見ると、「東京」が35%(同6ポイント増)と高かった。「政令指定都市」は21%(同3ポイント減)、「その他」は23%(同2ポイント増)だった。

 また、一般病床のみの病院の総収支率は102.8%(同3.3ポイント減)で、療養病床のみの病院の113.0%(同0.3ポイント減)や精神病床のみの病院の112.1%(同0.9ポイント減)より低かった。

 DPC対象病院の総収支率は102.0%(同3.7ポイント減)。これに対し、DPC準備病院は104.4%(同2.6ポイント増)、それ以外の出来高算定病院は109.4%(同1.0ポイント増)と、前年同期と比べ高くなっていた。

 全日病は、急性期の入院医療を担う病院の経営状態が悪化すると、地域の医療提供体制に「大きな影響を及ぼす」と指摘。今後、診療報酬体系や消費税の在り方について、十分に議論する必要があるとしている。



http://www.asahi.com/articles/ASGDH6DL1GDHULBJ012.html
医療・健康・福祉(アピタル)
腎臓移植の患者選定でミス 優先順位高い患者に確認怠る

寺崎省子
2014年12月16日11時42分 朝日新聞デジタル

 脳死での臓器提供を検証する厚生労働省の会議は15日、11月に東京都内であった臓器提供で、優先順位が高く腎臓移植を希望するかどうか確認すべき患者に対し、意思確認を怠るミスがあったと発表した。移植する患者を選ぶ日本臓器移植ネットワークは、この患者に謝罪した。

 移植ネットによると、提供したのは都内の病院で脳死になった30代男性。腎臓は別の2人に移植され、膵臓(すいぞう)は医学的理由で断念された。意思確認の順番を飛ばされた患者は膵臓と腎臓の同時移植を希望していた。担当コーディネーターが「膵腎同時移植の希望者には、腎臓単独での意思確認はしなくていい」と誤解していたという。

 腎臓移植手術が始まろうとしている時にミスが判明。移植を受けられないにもかかわらず、コーディネーターはこの患者に移植の意思をたずねていた。結果的に、この患者は体調不良のため移植を希望しなかったという。

 検証会議は「希望しても移植手術ができない状況になった時点で連絡をするのは不適切」と指摘。複数の臓器を希望する場合の意思確認のルールを明文化するよう求めた。(寺崎省子)



https://www.m3.com/open/clinical/news/article/278261/
認知症身体疾患、救急病院94%「困難」
長寿医療研究センターなど研究班が調査

2014年12月16日 m3.com編集部

 国立長寿医療研究センターはこのほど、全国の救急告示病院3697カ所に行った認知症患者の身体疾患に関する医療調査結果の一部を公表した。有効回答を寄せた救急告示病院の94%が認知症患者の身体救急疾患への対応が困難と答えるなど、救急医療の現場が苦慮している実態が浮き彫りになった。団塊世代が後期高齢者となる2025年に向けて認知症患者のさらなる増加が見込まれており、抜本的な対策が必要であることが示唆された。

 調査では、全国3697カ所の救急告示病院にアンケートを実施し、589病院の有効回答を解析した。86%は認知症患者の身体救急疾患の診察を「通常行っている」か「行うことが多い」としたが、7%は「通常は行わない」か「行わないことが多い」と答えた。緊急入院については83%が行っているとした一方、5%は「通常受け入れない」または「受け入れないことが多い」と回答した。また、94%は認知症患者の身体救急疾患への対応は困難との認識を示した。その理由(複数回答)として、多い順に「転倒、転落の危険がある」(487病院)や「意思疎通が困難」(473病院)、「検査、処置への協力が得られにくい」(453病院)などが挙げられた。

 この調査は国立長寿医療研究センターと帝京大学ちば総合医療センター、東京都健康長寿医療センターの研究班が実施した。同研究班は「救急医療の現場では認知症患者の身体疾患への対応に困難を感じており、喫緊の対策が必要であることが示された」と考察している。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/44494.html
看護職員採用、半数の病院で目標下回る- 横浜市、13年度調査で判明
( 2014年12月16日 17:37 )キャリアブレイン

 横浜市が市内の各病院の看護職員の採用状況などについて調査したところ、採用目標を達成できなかった病院が半数近くあることが明らかになった。同市の担当者は、目標を達成できなかった病院の約6割が200床以下だったとし、「中小病院の労働条件が大規模病院に比べて改善されていないのが未達成の要因ではないか」と分析している。【松村秀士】

 看護職員の需給動向や看護師確保の取り組みなどを把握するため、同市は7月から8月にかけて、市内の134病院を対象にアンケート調査を実施。101病院から回答を得た。

 調査結果によると、101病院のうち48病院で、採用目標をクリアしておらず、計273人の看護職員が不足していた。目標を満たさなかった病院のうち、不足人数が10人未満だったのは40病院、10―19人は5病院、20人以上は3病院だった。

 看護職員が不足している病院に具体的な対応策を挙げてもらったところ、「臨時職員などを雇用して対応」が47.9%で最も多く、次いで「現在の職員で対応」(35.4%)などだった。

■退職率、調査開始以降で最低水準

 同市は、離職状況についても調査した。13年度の看護職員の退職率は、前年度比1.8ポイント減の12.5%で、調査を開始した07年以降、最も低い水準だった=グラフ=。院内保育施設を整備している病院は53施設(52.5%)あり、このうち4分の3以上が24時間保育を取り入れていた。同市の担当者は、「こうした取り組みの積み重ねが、退職率の低下につながっている可能性がある」としている。同市は今後、ホームページを使った求人情報提供に注力するほか、潜在看護師復職支援や看護専門学校への助成事業などを続ける方針だ。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20141217ddm041040176000c.html
東京女子医大病院:禁止鎮静剤投与、小児12人死亡 鎮静剤と因果関係なし 外部調査委が結論
毎日新聞 2014年12月17日 東京朝刊

 東京女子医大病院(東京都新宿区)で、人工呼吸中の小児への使用が原則禁止されている鎮静剤「プロポフォール」を投与された小児12人が死亡した問題で、同病院が設置した外部有識者による調査委員会が今月、いずれのケースも投与と死亡に因果関係は認められなかったとする報告書を厚生労働省に提出していたことが関係者への取材で分かった。同病院では今年2月、12人とは別の2歳男児が投与後に死亡し、警視庁が業務上過失致死容疑を視野に関係者の事情聴取などを進めている。厚労省は男児の報告書の提出も受け、高度な医療を提供する特定機能病院の指定取り消しが必要かどうかを検討する。

 同病院は6月、2009年1月〜13年12月の約5年間に15歳未満の患者計63人にプロポフォールを投与し、うち12人が投与後数日〜3年以内に死亡していたと発表した。各症例を検証するため、小児科関連学会の理事ら4人からなる調査委を設置し、カルテの分析を進めていた。関係者によると、12人中1人についてはプロポフォールの投与はごく短時間だったとして対象から除外。残る11人について検証した結果、筋肉の細胞が血液中に溶け出すなど「プロポフォール注入症候群」と呼ばれる副作用症状がいずれのケースでもみられなかったことを確認した。11人は全員が重度の心臓病患者で、最終的に感染症などが原因で死亡したと結論づけた。

 一方で、プロポフォールの長期投与が重い副作用を引き起こす可能性があることを考慮し、医師らが血液検査をしながら経過を観察するなど、もっと慎重に投与すべきだったとも指摘した。

 厚労省と東京都は6月、同病院の安全管理体制などを確認するため、医療法に基づく立ち入り調査を実施。病院側に経緯の報告を求めていた。

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 ■ことば

 ◇プロポフォール

 効果がすぐに表れ、目覚めも良い利点があることから全身麻酔や人工呼吸器を使う際に用いられる鎮静剤。海外では長期投与による死亡例もあり、厚生労働省は医師向けの説明文書で、集中治療室で人工呼吸中の小児への使用は「禁忌」としている。ただ、法律で禁じているわけではなく、他の薬剤で対処が難しい場合は医師の裁量で使われる場合がある。



http://mainichi.jp/select/news/20141217k0000m040061000c.html
ノバルティス:副作用の未報告3264例…最終報告書
毎日新聞 2014年12月16日 20時06分(最終更新 12月16日 21時05分)

 製薬会社ノバルティスファーマ(東京)は16日、薬の副作用情報を国に報告していなかった問題に関する最終的な調査報告書を厚生労働省に提出した。未報告の重い副作用情報は26品目で計3264例だった。厚労省は医薬品医療機器法(旧薬事法)違反の疑いで調査している。

 ノ社の社員が白血病治療薬の臨床試験に過剰に関与していたことや、副作用情報を報告していなかったことが今年に入って発覚。これを受け、ノ社が全社員を対象に副作用の未報告例を調査した結果、約1万例が放置されていたことが判明していた。今回はこの約1万例を精査し、3264例が国に報告すべき重い副作用情報だったと結論付けた。

 薬の注意事項などの添付文書を変更しなければならない新たな内容は含まれていなかったと説明している。

 厚労省は「報告義務を怠った違反件数が(厚労省内で)確定すれば、件数の多さを考慮して業務停止も含め行政処分を検討する」とした。

 またノ社は、2011年以降に行われた医師主導の臨床試験で、社員が研究関連書類を作成するなど不適切に関与した新たな事例が見つかったこともホームページで公表した。調査はスイス本社が依頼した第三者機関が実施したという。ノ社は件数や関与の詳細について「お話しできない」(広報部)と明らかにしなかった。

 ノ社を巡っては、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の虚偽広告事件で東京地検特捜部が元社員と同社を薬事法違反で起訴している。【八田浩輔、河内敏康、桐野耕一】



http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/278209/?category=report
「事故報告書の4%が捜査の端緒」、容認できるか
「現場からの医療改革推進協議会」第9回シンポ

2014年12月16日 橋本佳子(m3.com編集長)

 「現場からの医療改革推進協議会」の第9回シンポジウムが12月13日、東京都内で開催され、「医療事故調査制度」のセッションで、弁護士の井上清成氏は、院内医療事故調査報告書がまとめられた事例の4%が警察介入の契機となったという研究を引用し、「医療事故調査制度では、年間2000件から2500件の報告があると想定されており、うち4%であれば、年80件から100件について警察の捜査が行われることになる。これは医療現場として到底容認できるものではない」と語気を強め、あくまで責任追及を切り離した、医療安全のための制度設計にすべきと訴えた。

 井上氏の発言のもとは、12月11日の厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」。研究を紹介したのは、浜松医科大学医学部教授の大磯義一郎氏(『医師への懲罰、回避できるかが最大の焦点』を参照)。弁護士の宮澤潤氏は、「4%というわずかな例外をもって、制度全体を考えるべきではない。大多数がどうあるべきかを踏まえ、制度を考えていくのが健全な在り方」と指摘。これに対し、弁護士の田邉昇氏は、4%が警察介入の端緒となることについて、「到底容認できない。医療者は萎縮する。そんなことも分からないで議論しているのか」と宮澤氏に反論した場面があった。


 「医療事故調査制度」セッションの企画者は、長崎県の諫早医師会副会長の満岡渉氏。シンポジストは、井上氏、田邉氏のほか、坂根Mクリニック(茨城県つくば市)院長の坂根みち子氏、いつき会ハートクリニック(東京都葛飾区)院長の佐藤一樹氏、日本医療法人協会常務理事の小田原良治氏という、計5人。いずれも10月に公表された日本医療法人協会「医療事故調ガイドライン」(以下、医法協ガイドライン)の作成メンバーで、田邉氏と小田原氏は、厚労省検討会のメンバーだ(『医法協“事故調”GL、橋本政務官に提出』を参照)。

 満岡氏は、2008年の医療事故調査制度の第3次試案や大綱案が「医療安全のため、と言いながら、事故調査を行い、過失の有無を判定して、現場の医療者の責任追及、紛争解決につなげる制度だった」と指摘。今年6月の医療法改正を受け、2015年10月からスタートする医療事故調査制度が、同じ轍を踏まないよう、医法協ガイドラインを作成し、また本セッションを企画したと説明した。

 医法協ガイドライン作成の経緯や特徴を紹介したのは、坂根氏と小田原氏。医療事故調査制度が責任追及の仕組みではなく、事故の再発防止に資する制度にするため、医療の実態に即した現場目線で作成に取り組んだと強調。坂根氏は、今年4月に発足した「現場の医療を守る会メーリングリスト」の世話人代表。現時点で252人が参加している。

 田邉氏と佐藤氏は、異状死体の届出を定めた医師法21条の解釈を中心に講演。両氏とも、外表異状説に基づき異状死体の届出を行うべきとしたものの、いまだ医療界には混乱があると問題視、医療事故の警察への届出は、医療関係者からのものが最も多く、2000年代前半に急増。東京都立広尾病院事件の2004年の最高裁判決が出た以降、減少傾向にはあるものの、いまだ同判決が示した「外表異状説」が現場に理解されていないと、両氏は見る(『医療事故等の警察への届け出、2009年は3割強の大幅減』、『医療事故、被害者からの届出は微増』などを参照)。「医師法21条とバーター的に、医療事故調査制度を安易に受け入れることは問題」と釘を刺し、医師法21条の正しい解釈を現場に浸透させる重要性を強調した(『医師法21条、法改正の必要なし - 田邉昇弁護士に聞く』を参照)


 「医療事故調サバイバル2014」

 「医療事故調サバイバル2014」と題して講演した坂根氏は、歴史を振り返り、以前、そして最近でも、現場で行われている医療事故調査が「自らのスタッフを守る仕組みではなく、現場の医療者の首を差し出す形になっている」と指摘。例に挙げたのが、国立国際医療研究センターで今年4月、脊髄造影には禁忌のウログラフィンを投与、患者が死亡、担当医が書類送検された事例だ。同センターが事故後の記者会見で、担当医の卒後年次などを明らかにしたため、個人が特定されたとし、「秘匿性、非懲罰性が全く無視された」と問題視した。

 さらに坂根氏は、全日本病院協会会長の西澤寛俊氏が研究代表者を務める、厚生労働科学研究費補助金の「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」に、厚労省が医療事故調査制度のガイドライン作成をゆだねたことに危機感を覚え、医法協ガイドライン作成した経緯を説明(『“事故調”西澤班、「自律的な院内調査が基本」』を参照)。「西澤班は、厚労省のお墨付き。こちらのガイドラインは歯牙にもかけられないと思った」(坂根氏)ものの、厚労省検討会は、西澤班の中間報告と医法協ガイドラインを基に進められている。

 小田原氏も、WHOドラフトガイドラインに則り、責任追及と切り離した医療安全のための仕組みにするため、医法協ガイドラインを作成したと強調した。医療事故調査制度は、2015年10月からスタートするものの、法律の公布から2年以内に見直すとされている(『“事故調”、異例の前提で法案提出』を参照)。

 「新制度が良い制度となるかどうかは、厚労省のガイドライン次第。医法協ガイドラインに近いものであれば、結果的に良い制度であり、不備部分のマイナーチェンジで済む。そうでなければ、抜本的な見直しを考慮しなければならない」(小田原氏)。

 「改正医療法にないもの」とは?

 「医療事故調査制度がなければ、(医師法21条に基づき)事故を警察に届け出なければいけない。事故調ができれば、警察沙汰にはならいから楽、と思っていないか」。こう問いかけたのは、田邉氏。

 そもそも医師法21条の解釈が医療界でいまだ混乱がある、と田邉氏は指摘する。医師法21条は、「外表面に異状がある異状死体」の届出を求めているのであり、届出範囲は意外に狭く、院内で診療行為に起因した死亡は、外表面に異状がない場合がほとんどであるため、診療関連死に医師法21条が適用されるケースは極めて稀であるとした。「医師法21条による刑事介入を恐れて医療事故調査制度を作るべき、という議論は誤り」と切り捨てた。

 佐藤氏も、外表異状説に基づく医師法21条の運用と、WHOドラフトガイドラインの普及に尽力してきた経緯を紹介。過去のさまざまな議論の経緯を踏まえ、「医師法21条改正を叫んで、第三者機関への届出と行政処分のバーター取引になるのは、最悪の結果」と述べ、あくまで医療安全のための仕組みと、責任追及の仕組みは切り分けて構築すべきと訴えた。

 佐藤氏の講演で興味深かったのが、「改正医療法にないもの」として、(1)医療機関が、第三者機関に事故を報告しないことへの罰則、(2)「原因究明」の文言、(3)「管理」に起因した事故の報告、(4)報告書を遺族に渡す義務――の4点だ。医療事故調査制度を定める医療法には、「省令で定めるところ」という文言が13カ所ある。省令、さらにガイドラインは、あくまで法律に準拠すべきというのが、佐藤氏の主張だ。「法律では、再発防止の記載は1回しかなく、まだ厚労省の検討会では議論されていない」と佐藤氏は述べ、WHOドラフトガイドラインに準拠し、医療安全のための制度を作ることが必要であり、現場の医療者の人権が尊重されない制度は絶対に回避すべきだ強調した。

 「弁護士は再発防止策を読む」

 5人のシンポジストの講演後のディスカッションで取り上げられた一つが、事故の調査報告書における再発防止策の取り扱い。この論点も、厚労省の検討会で意見が分かれている点だ。

 医法協ガイドラインでは、「報告書には、原則として、診療経過の客観的な事実のみを記載」という方針で、再発防止策は常設の院内医療安全委員会で検討すべき事項としている。小田原氏はこの点を説明、その上で、事故調査に当たっては、再発防止のための情報収集できるよう、個人の秘匿性を担保することが重要だとし、「厚労省の検討会では、報告書への再発防止策の記載は、任意的記載事項でほぼ固まるだろう」との見通しを示した。

 井上氏は、「(弁護士は)再発防止策を読む。(法的に責任追及するための)結果回避義務の着眼点が得られ、紛争につなげることができるからだ。医学的評価として、『一般的ではない』『逸脱している』などの記載があると、紛争につながりやすい」と説明。井上氏は講演で、「弁護士から見た事故調」として、患者の側に立つ弁護士について、「医療事故は即ち民事紛争であり、民事紛争の適正な解決のために原因究明と再発防止が必要、と思えてこその正統派か」との見方を示しており、事故調査と紛争解決を一体的に考える傾向があるとした。

 「第三者による調査、正しいとは限らず」

 さらに満岡氏は、「今回の医療事故調査制度は、どのように医療安全につながるかを考えたが、どうも思いつかない」と述べ、「院内調査が誤った時に、(第三者機関による調査が)機能するのか」と問いかけた。

 これに対し、佐藤氏は、2001年の東京女子医大事件で業務上過失致死罪に問われたものの、無罪になった経験を踏まえ、回答した(『院内事故報告書は告発書兼鑑定書、女子医大事件』を参照)。院内調査、さらには外部調査が警察捜査の端緒になった上、両者の事故原因は異なっていたと説明。「モデル事業(診療行為に関連した死亡に関する調査・分析モデル事業)でやってきたことを踏まえると、医療事故調査制度が、医療安全に資するとは思えない。第三者が調査すれば、正しい原因が分かるという考え自体が間違っている」と指摘し、院内調査に当たっては、外部委員を入れても構わないものの、関係者へのヒアリングを十分にすることこそが重要であり、その報告書には再発防止は書くべきではないとした。



http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20141216ddlk28040387000c.html
個人情報:豊岡病院日高医療センター、患者情報流出疑い /兵庫
毎日新聞 2014年12月16日 地方版

 公立豊岡病院組合は15日、豊岡病院日高医療センター(豊岡市日高町岩中、99床)の外来患者情報が最大22人分流出した可能性がある、と発表した。

 組合によると、今月4日、センター内の内科外来待合スペースに置かれている検査結果の見方を記した説明用紙(A4判、白黒コピー)の中から、診療報酬明細書のコピー3枚(6人分)が見つかり、発覚した。検査説明用紙は持ち帰りが自由になっている。

 診療報酬明細書には住所、電話番号の記載はないが、名前、生年月日、傷病名などが記載されている。

 診療報酬明細書を扱うスタッフと、検査説明用紙を扱うスタッフが先月中旬ごろ、同じ複写機を使用。機器に残っていた診療報酬明細書のコピーと検査説明用紙が交ざったという。

 組合は、当時のコピー対象だった最大22人分の診療報酬明細書のコピーが待合スペースにあった可能性があるとして、今月12日までに全員に謝罪した。【浜本年弘】

〔但馬版〕



  1. 2014/12/17(水) 06:05:30|
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