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12月15日 

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1412/1412044.html
必ずしも明確でない「侵襲」の定義,判断が困難に
厚労省・文科省新倫理指針(案)

[2014年12月15日] MT Pro / Medical Tribune

「疫学研究に関する倫理指針」と「臨床研究に関する倫理指針」の一本化を目指し,文部科学省と厚生労働省の合同会議で検討されてきた「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)」〔以下,新指針(案)〕では,現行の倫理指針に比べて「介入」と「侵襲」の定義が広がった。しかし「侵襲」については必ずしも定義が明確ではなく,リハビリテーションやスポーツ医学などの介入研究で侵襲と判断された場合,モニタリング・監査の実施が必要になってくる。昭和大学研究推進室講師の田代志門氏は,第35回日本臨床薬理学会学術総会(12月4~6日,会長=愛媛大学大学院薬物療法・神経内科学教授・野元正弘氏)のシンポジウム「改正倫理指針に,医療機関・研究者はどのように向き合うべきか」で,実際には侵襲の判断が難しくなると指摘した。

既承認薬の単群試験でも介入研究と見なされる可能性も

 新指針(案)を見ると,「介入」の定義を「研究目的で,人の健康に関するさまざまな事象に影響を与える要因(健康の保持増進につながる行動,医療における病傷の予防,診断または治療のための投薬,検査などを含む)の有無または程度を制御する行為(通常の診療を超える医療行為であって,研究目的で実施するものも含む)をいう」としている。

 田代氏は,「割り付けあり」または「未確立医療行為の研究目的での実施」とする現行の指針に比べて,新指針(案)では「やや広がっている」との認識を示した。そのため,今後は既承認薬の単群試験でも介入研究と見なされる可能性があると指摘した。

 また「侵襲」について,新指針(案)では「研究目的で行われる,穿刺,切開,薬物投与,放射線照射,心的外傷に触れる質問などによって,研究対象者の身体または精神に傷害または負担が生じることをいう。侵襲のうち,研究対象者の身体および精神に生じる傷害および負担が小さいものを“軽微な侵襲”という」と定義している。

「精神的な侵襲」も侵襲と定義

 現行の指針では,「侵襲」を穿刺以上の医療行為としていたが,今回「精神的な侵襲」が追加されるなど,侵襲の定義に明らかな広がりが見られる。

 また,過去に検討会で示されたガイダンス案によると,「侵襲」としては従来グレーゾーンであったMRI撮像や日常診療で行われる採血量の上乗せなども「軽微な侵襲」に含まれることになっているという。

「軽微な侵襲」とは,①一般健診で行われる程度の採血や胸部単純X線撮影②造影剤を用いないMRI撮像③(少量)上乗せの穿刺,採血,組織切除―であり,「投薬やCT・PET検査は,軽微な侵襲に該当しないと考える」と同氏は述べた。

 侵襲については検討会で合意形成が得られず,必ずしも明確な定義は示されていないという。その点を踏まえ,同氏は判断が難しいと思われる例を挙げた。

 まず,アンケートやインタビュー調査における「精神的な侵襲」の解釈だ。例えば,対象者の精神的負担が大きく,「軽微な侵襲」にとどまらないとされてしまうと,無記名式であっても文書で同意を得なければならず,それによって個人情報の取り扱いという新たなリスクが生じることになる。

 さらに,1人暮らしで未成年の大学生を対象とした運動介入研究を行う場合,「侵襲あり」と見なされれば,全ての親から書面で同意を得ることになる。また看護,リハビリテーション,スポーツ医学などの介入研究で「軽微な侵襲」を超えると判断された場合,記録の保存やモニタリング・監査の実施が必要になる。そのため,同氏は「侵襲の判断が難しくなる可能性がある」と指摘した。

(田上 玲子)



http://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=44486
7対1重症度基準クリアは約8割- 6月時点、日病調査
( 2014年12月15日 21:20 )キャリアブレイン

 一般病棟7対1入院基本料(7対1)を届け出る病院のうち、同基本料の施設基準の「重症度、医療・看護必要度」の基準を6月時点で満たしていた割合が約8割にとどまることが、日本病院会(日病)の調査で分かった。【佐藤貴彦】

 同基本料の重症患者の受け入れに関する基準は2014年度診療報酬改定で厳格化された。具体的には、血圧測定や時間尿測定、喀痰吸引の実施などを、重症かどうかを判断する項目から除外。その一方で、抗悪性腫瘍剤の内服といった項目が追加された。7対1の施設基準では、これを満たす重症患者の割合が15%以上であることを求めている。この見直しによる影響の緩和のため、9月末まで経過措置が設けられていた。

 日病は7-9月に、14年度改定に関する会員病院の調査を実施。インターネットやファクスなどで688病院から有効回答を集めた。このうち、7対1を算定している415病院に重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合を聞いたところ、1.7%が「13%未満」、4.8%が「13%以上15%未満」と回答した。11.1%は無回答だった。

■ICU管理料などでも「要件の厳しさうかがえる」結果に

 同改定では、特定集中治療室管理料とハイケアユニット入院医療管理料でも、重症者の受け入れに関する基準が厳しく見直されている。

 日病の調査では、特定集中治療室管理料3か4を届け出る208病院の10.6%、ハイケアユニット入院医療管理料2を届け出る34病院の20.6%が、それぞれ6月時点で、患者の重症度に関する基準を満たしていないと回答した。無回答は、特定集中治療室管理料3か4では12.0%、ハイケアユニット入院医療管理2では14.7%。基準をクリアしていたのは、特定集中治療室管理料3か4では77.4%、ハイケアユニット入院医療管理2では64.7%だった。

 どちらの管理料も、一定の間、重症度に関する基準を満たしていると見なす経過措置がある。その期限は、特定集中治療室管理料は年度末まで、ハイケアユニット入院医療管理料は9月末まで。

 この結果について日病は、「重症度の高い特定入院料の要件の厳しさがうかがえる」としている。

■収益・単価増も、費用伸びて赤字拡大

 同調査ではさらに、688病院の回答を基に、診療収益や医業損益についても分析。14年6月の診療収益(入院+外来)の平均値は、前年同期比で2.57%増え、診療単価も、入院で3.19%、外来で2.33%、それぞれ増加していた。

 ただ、医業損益について調べたところ、費用の伸びが収益の伸びを上回り、赤字の病院が58.2%から66.3%に増加した。特に材料費などの伸びが大きく、「消費税増税による影響も大きい」と指摘。さらに、「今回の改定は、赤字病院の拡大など病院経営に大きな打撃を与えた」としている。



http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/277885/?category=report
慈恵医大、望月氏の客員教授取消、JHS最終報告
望月氏のイベント報告、非ディオバン群に偏り

2014年12月15日 池田宏之(m3.com編集部)

 東京慈恵会医科大学で実施された降圧剤「ディオバン」の臨床研究「Jikei Heart Study」(以下、JHS)について、同大は12月12日に最終報告書を発表した(資料は、同大のホームページに掲載)。2013年7月の中間報告のあと、JHSのイベントを調べたところ、論文の責任著者である望月正武氏の報告イベントのうち約7割が非ディオバン群に偏り、望月氏のイベントを除くと、ディオバン群と非ディオバン群のイベント数が同数となり、Lancetに掲載された論文(撤回済み)の結論が導けないこと分かった(『「科学論文の価値ない」、ランセットJHS論文撤回へ、慈恵医大』を参照)。

 望月氏は、恣意性を否定しているものの、研究への信頼性をさらに大きく落とす結果となった。同大は、望月氏の同大客員教授の肩書を取り消した。また、論文に関与し、現在も同大に所属している6人を厳重注意としたほか、理事長は給与の20%、学長は10%を、3カ月間自主返上することとなった。

望月氏報告、非ディオバン群が10倍

 中間報告では、利益相反開示の問題や、初回登録時や12カ月後などの血圧が2群間で差がなくなるように操作された可能性が示唆されていた。以降、同大は、イベントについて調査を実施した。JHSにおいては、1次エンドポイントは心血管イベントの発生や心血管死で、客観性の高いものが設定されていたが、2次エンドポイントでは、脳卒中や心不全による入院など、医師の主観が入る可能性のあるイベントとなっている。

 研究の最終時期に近い2006年1月のデータにおいて医師の全イベント報告は833件で、全体ではディオバン群が47%、非ディオバン群が53%だった。ただ、望月氏の報告したものは、非ディオバン群のイベントを占める割合が約70%あり、全体よりも多く、ディオバン群が優位になる偏りがみられた。他にも60%以上を占めた医師も複数いた。

 論文執筆に用いられた最終的なデータを見ても、望月氏の報告による全イベントは、ディオバン群の9件に対して、非ディオバン群では10倍の90件となっていた。望月氏の報告を除くと、ディオバン群と非ディオバン群では、イベント数は84件で同数となり、報告書は「両群に差がなく、Lancet論文の結論は導けない」と指摘している。同大の調査に対して、望月氏は「イベント採択権限はエンドポイント委員会にあるので、全て報告しただけ。偏っていると言われても思い当たることはない」と恣意性を否定したという。

入院条件でも「入院確認できない」症例

 さらに、論文執筆に使われたデータのイベントの妥当性を第三者の会社に依頼したところ、イベントとして疑問が指摘された症例が、ディオバン群で11件、非ディオバン群で63件の合計74件見つかった。うち10件は、「イベントとして認められない」と判断。残りは、イベントの発生はあるものの、基準を満たさないもので、ほとんどが「入院治療がイベント採択の条件になっているにもかかわらず、入院が確認できない」症例だった。

 同大の報告書は、ディオバン群が優位になるような望月氏の報告数の偏りについて、「(望月氏の症例が)エンドポイント委員会に多く採択され、最終データとして、非ディオバン群に不利に働く結果を導いていた」と結論づけている。ただ、エンドポイント委員会への報告や、委員会の資料が存在していないなどの事情から、イベントの採択の経緯は不明なままとなっている。患者に対する過剰診療、過少診療は確認されなかった。



http://www.m3.com/news/GENERAL/2014/12/15/277544/?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD141215&dcf_doctor=true&mc.l=77578178
責任教授、恣意的診断か 薬効、宣伝に有利に 慈恵医大、最終報告 バルサルタン 臨床試験疑惑
毎日新聞社 2014年12月13日(土)

バルサルタン:臨床試験疑惑 責任教授、恣意的診断か 薬効、宣伝に有利に 慈恵医大、最終報告

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、東京慈恵会医大の調査委員会(橋本和弘委員長)が12日、最終報告書を発表した。試験には複数の医師が参加したが、試験責任者で当時教授だった望月正武氏(73)が担当した患者のデータが、目立ってバルサルタンの宣伝に有利な結果になっていたことが分かった。医師の恣意(しい)的な診断が試験結果をゆがめた可能性がある。【河内敏康、八田浩輔】

 最終報告を受け、大学は望月氏の客員教授の肩書を取り消し、試験に関与した教員を厳重注意した。また、栗原敏理事長は給与の2割を、松藤千弥学長は1割をそれぞれ3カ月間自主返上する。

 昨年7月の中間報告では、試験に参加した販売元のノバルティスファーマ社員が血圧値のデータを操作していた可能性があると指摘していた。今回の最終報告は、この点も改めて指摘した。

 調査委は、中間報告の後に入手した患者データを新たに検証。望月氏が脳卒中などの心血管疾患と診断した症例数が、バルサルタンを服用する患者グループでは9件だけだったのに対し、服用していないグループでは90件と10倍多かったことが分かった。研究チームは、バルサルタンの脳卒中などの予防効果は他の降圧剤よりも大きいと結論付けていたが、望月氏の診断分を除くと、両グループの差はなくなった。

 望月氏は調査委に対し「偏っていると言われても、思い当たることは何もない」と話しているという。慈恵医大の試験結果をまとめた論文は、既に撤回されている。

 ◇京都府立医大と調査の矛盾解消

 バルサルタンの臨床試験を実施した5大学のうち、最初に試験を始めた東京慈恵会医大の論文は、2007年に海外の有名医学誌「ランセット」に掲載された。他の降圧剤にはみられない特別な効果があると認めた論文は、販売元ノバルティスファーマの広告に再三引用され、大きな宣伝効果をもたらした。

 一連の疑惑では東京地検特捜部が、京都府立医大の11年と12年の論文で脳卒中などの発症数を改ざんしたとして、統計解析を担当したノ社元社員の白橋伸雄被告(63)と法人としてのノ社を薬事法違反(虚偽広告)で起訴し、捜査を終結している。慈恵医大の論文については虚偽広告の公訴時効(3年)が経過していた。

 府立医大の試験は先に発表された慈恵医大を手本に進められ、結論もその内容を再現する形となっていた。白橋被告が統計解析などで深く関与した点も共通していた。だが、府立医大の調査では脳卒中などの症例で改ざんが見つかっていたのに、慈恵医大の中間報告では症例に改ざんは見つかっていなかった。

 今回の最終報告が望月正武元教授の症例に不自然な偏りがあったと明らかにしたことで、府立医大との「矛盾」は解消された。しかし、調査の開始から1年8カ月もの時間を要した。



http://www.m3.com/news/GENERAL/2014/12/15/277921/
癒着問題視され、慶大へ移籍…徳島大病院元部長
読売新聞 2014年12月13日(土)

 徳島大病院が発注した情報システム業務の契約を巡る汚職事件で、収賄容疑で逮捕された病院情報センター元部長の森川富昭容疑者(45)(現・慶応大政策・メディア研究科准教授)が病院に在職中、複数の業者との関係を病院内で問題視されていたことが、病院関係者への取材でわかった。

 森川容疑者はこれを契機に病院を退職し、慶応大への移籍を決めたという。大阪地検特捜部は、当時の経緯について病院職員から事情を聞いている。

 森川容疑者は、医療情報システムの専門家として徳島大病院で実績を上げ、2009年3月、同センターの初代部長に就任した。

 病院関係者によると、部長就任後、森川容疑者の執務室には贈賄側のコンピューターシステム開発会社「ダンテック」など複数の業者が常に出入りするようになり、親しい企業関係者を集めた医療情報システム関連の勉強会も開いていた。

 一方で、森川容疑者は、贈賄容疑で再逮捕されたダンテック元代表取締役の高橋徹被告(50)(公契約関係競売入札妨害罪で起訴)から12年1月に54万円を受け取ったとされ、この時期には、病院職員から「業者から飲食接待を受けている」などと癒着を指摘する声が上がっていたという。

 森川容疑者は周囲に「頑張って仕事をしているのに非難されるのは我慢できない」と訴えていたといい、12年3月末で病院を退職し、同4月に慶応大へ移った。



http://www.m3.com/iryoIshin/article/277890/
エボラ対応に見る米国地域医療の脆弱さ
「現場からの医療改革推進協議会」第9回シンポ

2014年12月15日(月) 橋本佳子(m3.com編集長)

 12月14日に東京都内で開催された、「現場からの医療改革推進協議会」の第9回シンポジウムで、米国テキサス州のベイラー大学病院ベイラー研究所膵島移植部門の助教を務める瀧田盛仁氏は、「エボラウイルス2次感染で浮き彫りになった米国地域医療の課題―テキサス州ダラスでの事例から―」と題して講演した。

 米国内でエボラ出血熱の感染が初めて確認された患者を診察したのは、テキサス州ダラスの中核病院の一つ、Texas Health Presbyterian Dallas。ジョージ・ブッシュ前大統領も心臓手術を受けた病院だ。リベリアでエボラ出血熱患者の搬送などの支援をした後に帰国した患者は、無保険者だった。瀧田氏は、最初に受診した際、抗生剤投与のみで帰宅したエピソードという視点から、一連の経緯を検証すると、オバマケア(Affordable Care Act)によってもなお無保険者が多い米国の現状や、医師不足で救急外来の待ち時間が長いなど、米国の地域医療が抱える問題点が浮き彫りになるという、ユニークな視点から講演した。

 無保険者の診療は、病院の持ち出しになることが多く、保険者からの支払いも締め付けがあり、病院経営が厳しい状況も紹介された。エボラ出血熱も含め、感染症対応の体制や職員の教育、さらには診療を十分に実施できる保障はあるとは限らない現状がうかがえた。

 その一方で、瀧田氏の講演では、米国ではこのエボラ出血熱の患者の経過をはじめ、さまざまな情報公開が進んでいる実態も示された(米国議会下院のホームページに掲載)。


 診療医師の略歴、メディアに

 患者は9月20日にダラスに帰国、その4日後の9月24日に発熱、翌25日の夜にPresbyterian Dallasの救急外来を受診したが、抗生剤が処方され、帰宅。その後、同病院を9月30日に再び受診した際に、エボラ出血熱と診断された。その後、治療の甲斐なく、10月8日に死亡した。同病院の2人の看護師に2次感染したが、他の州の高度病院に搬送され、血液からウイルスを検出しない状態になり、退院した。その後、接触者への経過観察も終わり、テキサス州は11月7日、エボラ終結を宣言した。

 瀧田氏が、まず米国の特徴として挙げたのが、報道の在り方。最初に診察した医師の経歴は、写真付きで、地元メディア、「dallas news」サイトに掲載された。それによると、Mayo Medical School卒業の53歳。カリフォルニア州で研修後、Presbyterian Dallasに勤務。その後、顎骨感染の見逃しで、医療訴訟に遭う。放射線科用ソフトウエア会社を立ち上げるが、資金難に直面し、再びPresbyterian Dallasに戻ったという。

 救急外来でも1時間待ち

 9月25日の患者の初診時の症状は、腹痛、めまい 吐き気、頭痛で、熱は37.8℃。一般的な血液検査などのほか、CT検査も実施している。「本音を言えば、無保険者の方、しかも夜に、これだけの治療をしており、丁寧にやっていると思う」と瀧田氏。

 初診時の問題の一つが、医療従事者間の情報伝達の在り方。救急外来の看護師が、西アフリカから帰国した患者と聞いていたが、それが医師に伝わらなかった。電子カルテに問題があるとされた。Presbyterian Dallasでは、医師用の電子カルテと、看護師用は別だという。「米国は縦割り社会だが、情報は拡散する社会。電子カルテだけが悪者なのか」(瀧田氏)。

 救急外来の待ち時間の長さも見逃せない。患者が救急外来を訪れたのは、午後10時20分頃で、10時37分に受付をし、その1時間後にナースによるトリアージが開始、医師の診察を受けたのはその約50分後だ。

 メディケアの統計によると、救急外来での待ち時間は、テキサス州の平均は26分。Baylor Univercity Medical Centerは50分、Presbyterian Dallasは52分と長い。その背景にあるのが、まず医師不足。10万人当たり医師数は、テキサス州は約200人で、米国全体では260人弱、日本の237.8人(2012年)よりも少ない。

 テキサスの無保険者、依然2ケタ

 無保険者の問題も大きい。テキサス州の無保険者は2013年は21.3%だったが、オバマケアにより、2014年14.8%まで減少。しかし、依然として2ケタの無保険者がいるのは、テキサス州の場合、単身世帯では年収1万1490ドル以下、4人家族の場合は年収2万3550ドル以下については、Affordable Care Actでもカバーされない。

 無保険者は、日中はチャリティーによるクリニックで、最低限の診療を受ける。夜間は、ベイラー大学やPresbyterian Dallasのような、中核病院のERを受診する。「中核病院では、保険にかかわらず、患者を受け入れるよう求められている。しかし、無保険者にかかる治療費は病院の持ち出し。その額は、2013年の場合、ベイラー大学では年1.728億ドル、Presbyterian Dallasは年8.65億ドルで、総収入の10%から15%に当たる。保険に入っている人から取らないと、病院としてはやっていけない」(瀧田氏)。

 瀧田氏の専門は、膵島移植。自家移植の場合、民間の保険では年間30件程度実施している。しかし、メディケア、メディケイドの患者については、病院の持ち出しになるため問題視されるという。

 メディケア・メディケアから、ベイラー大学への支払いも2014年度は減額されるほか、「とかく、お金のペナルティーになる」(瀧田氏)。患者が再入院した場合、メディケアからの支払いは減らされるルールもあるという。

 さらに、Presbyterian Dallasでは、エボラ出血熱患者を受け入れた経営的ダメージも大きい。2次感染を恐れたためか、患者診断後の約1カ月は、救急外来患者が約53%減少、それに伴い、外来の収入も約25%減少したという。

 「人と金」をいかに好循環で回していくかが各病院の課題であり、ベイラー大学では、他病院との共同購入などのアライアンスの強化、病院自身が保険者として健康保険を作るほか、病院事業体の合併も検討しているという。



http://www.m3.com/iryoIshin/article/277732/?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD141215&dcf_doctor=true&mc.l=77578179
急性期の医療ニーズ、DPCデータで推計
慢性期は在宅医療と一体的に需要見込む

2014年12月14日(日) 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」(座長:遠藤久夫・学習院大学経済学部長)は12月12日の第5回会議で、地域医療構想で定める4つの病床区分の医療需要の推計方法を議論、高度急性期機能と急性期機能については、DPCデータなどによる医療資源投入量に基づきの医療需要を推計することについて、おおむね了承された(資料は、厚労省のホームページに掲載)。

 慢性期機能の医療需要は、在宅医療の医療需要とも関係することから、両者を一体的に見込むことについても同意が得られた。その際、在宅医療の進展には、地域による差がある上、今後の進展が想定されることから、「できるだけ地域に戻すことを目指す中で、全国平均、あるいはトップランナーかなど、どこを目指すのかをガイドラインに盛り込む方針」(厚労省医政局地域医療計画課長の北波孝氏)。

 4つの病床区分の医療需要を推計する意味について、北波課長は、「2025年にどのような医療体制を構築するかを、構想区域ごとに考えていくため」と説明、推計はあくまで区域単位で行うものであり、個々の病院でどのように病床区分していくかは別の問題であるとした。「今あるデータの中で、何ができるかを考えたい。DPCデータを出来高換算して医療需要を考えるのは、一つの案ではないか。より精緻なデータが出てくれば、改善していく」(北波課長)。

 推計に当たって、厚労省は、2013年の全国のDPC病院、約49万床分のデータを分析。入院患者数が多い上位255の疾患について、DPCごとに、入院初日を始点として、1日当たりの医療資源投入量(入院基本料を除く。検査、投薬、注射、画像診断等を含む)の中央値を入院からの日数別にプロット、その推移を見た。多くのDPCでは、入院後、2、3日は医療資源投入量が多いが、その後は安定、ただし、異なる動きをするDPCが幾つかあることなどが明らかになった。

 論点は、計3つ。第一は、高度急性期機能については、特に医療資源投入量が高い段階の患者の受け入れを想定していることから、救命救急病棟やICU、HCU等に入院するような患者像も参考にして区分する点で、了承された。第二は、急性期機能については、医療資源投入量が落ち着いた後も、引き続き患者の状態安定化に向けた医療が継続されている患者の扱いで、この点については次回会議でその推計方法を引き続き検討する。

 第三は、慢性期は在宅医療の医療需要と一体的に捉えるが、現時点では在宅医療の充実状況には地域により差があるため、全国的な状況を勘案して設定するかという点。2011年の患者調査(福島県は2012年)を基にした療養病床の人口10万人当たりの入院受療率は、最高は高知県の614で、最低の長野の122と5倍強の開きがある。どの程度の患者を慢性期機能の病床、あるいは在宅医療で対応するかについて、医療資源投入量ではなく、在宅医療を推進するような指標を設定する方針になった。

 次回会議で、高度急性期機能と急性期機能の区分の在り方のほか、4つの病床区分のうち、残る回復期の医療需要の推計方法などについて議論する。なお、DPCデータのほか、NDBのレセプトデータも推計に活用し得るが、現時点では分析が遅れているという。

 第5回会議では、地域医療構想に基づいて、2025年の医療提供体制を実現するための施策についても議論。(1)病床の機能分化・連携の推進、(2)在宅医療の充実、(3)医療従事者等の確保・養成、(4)都道府県の役割の適切な発揮、(5)地域医療構想の実現に向けたPDCA――などの施策を策定するよう、ガイドラインに盛り込む方針。特に、(3)のほか、(4)でも、都道府県や市町村の職員への研修を充実させる重要が指摘された。地域医療構想の策定と実現のカギは、人材確保と養成と言える。

 なお、(1)の病床の機能分化について、日本医師会副会長の中川俊男氏から、現場からは、病床利用率が低い病床が削減対象になることに対する懸念が出ているとし、その方法についての質問が出た。北波課長は、病床が稼働しているか否かは病床単位ではなく、病棟単位で見ていくとした上で、「あくまで医療機関が自主的な取り組みと、関係者による協議を通じて実現することが基本」と説明、都道府県知事が病床転換等を公的病院に指示、あるいは民間病院には要請するのは例外的とした。


 高度急性期と急性期の区分が課題

 東京大学政策ビジョン研究センター特任教授の尾形裕也氏は、DPCデータの活用について、「例外はあるが、医療資源投入量がどう推移するか、そのパターンが分かるのでおもしろい」と評価した上で、「高度急性期機能と急性期機能を分けるにはこれだけでは難しいだろう」と指摘。

 北波課長は、「救命救急病棟やICU、HCUの患者像も念頭に置きながら、どのくらいの点数のところで、区分できるかを検討していく」と述べ、どの疾患の患者に、どんな医療が提供されているかも加味するとした。

 日本医療法人協会会長代行の加納繁照氏は、医療資源投入量がどの程度下がった時点までを急性期機能として見込むかを質問。北波課長は、下がった時点の切れ目のところですぐに区分するのではなく、「転院や退院など、次のステップに移るための期間をどう評価するかは念頭に置かなければいけない」と答えた。

 「人」の投入量の評価が課題

 もっとも、厚労省の提案した医療需要の推計方法について、幾つか懸念や問題を指摘する声もあった。

 日本病院会副会長の相澤孝夫氏は、医療資源投入量が安定した後も、ときどき一時的に高くなるパターンを示すDPCがあると指摘。「おそらく抗がん剤の投与であり、それであれば外来でも可能」としつつ、「医療資源投入量だけで推計するのは、難しいのではないか。提供している医療内容を考慮しないと、間違える方向に行くのではないか、と危惧している」と述べた。

 DPCデータの分析の際、医療資源投入量から、入院基本料を除く点について疑義を呈したのが、全日本病院協会会長の西澤寛俊氏。「薬剤などが高額だったら、急性期と言えるのか。一番大事なのは、人ではないか。入院基本料を除いていることに若干疑問を感じる」(西澤氏)。

 北波課長は、「人の配置ついては、7対1や10対1の入院基本料の病棟で見ている場合でも、個々の患者で見た時の医療資源投入量とどう関係するかが分からないので、いったん外している」と説明、どのように関連するかは今後の検討課題であるとし、「高額の薬剤を使う場合には、それなりに投薬の管理に手間がかかっているのではないか」とも述べ、理解を求めた。西澤氏は、今後の課題として、「1分間タイムスタディ」などを実施して、医療者の業務量を把握するよう求めた。

 慢性期機能の医療需要、在宅医療の伸びで左右

 慢性期機能の医療需要の推計について、医療資源投入量を用いることが難しいのは、同じ包括点数であっても、DPCデータとは異なり、療養病床のレセプトデータから、医療行為を出来高換算することが難しいため。NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、「医療資源投入量とは別の指標として何を想定しているのか」と質問。

 北波課長は、「入院受療率以外には、現時点では考えられない」と説明。ただし、療養病床あるいは在宅医療体制の整備状況が地域によって異なることなどから、「現状の入院受療率をそのまま追認することは、まさにこれから在宅医療を推進していく観点からは問題がない訳ではない。できるだけ地域に戻していくことを進める中で、どこを目標とするのかをガイドラインで決める。全国平均か、あるいはトップランナーを目指すのかなどを検討してもらいたい」と求めた。

 稲城市役所福祉部長の石田光弘氏は、「地域で暮らす高齢者が、医療を伴う介護保険サービスで支えるイメージがある。推計に当たっては、介護保険サービスの整備状況も踏まえることが必要ではないか」と指摘。北波課長は、この辺りは今後の検討課題であるとした。

 基金事業の評価が必要

 第5回会議のもう一つの議題、2025年の医療提供体制を実現するための施策については、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本看護協会の各団体から、歯科医療、薬剤師と看護師の業務を適切に盛り込むほか、山口氏からは、6月に成立した改正医療法の特徴は、国民の責務が盛り込まれた点であるとし、適切な受療行動を取れるよう、地域医療構想をホームページに掲載するだけでなく、具体的に住民に届く公表の在り方を検討するよう求めた。

 尾形氏は、地域医療構想の策定や実現に当たって、都道府県が果たす役割は大きいことから、「職員の専門的スキルが求められる。研修体制の整備、担当者の人材養成が重要」と指摘。相澤氏は、市町村職員の研修も必要だとした。

 慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏は、地域医療構想の実現に向け、PDCAサイクルを回していく重要性を指摘。「基金(新たな財政支援制度。2014年度は904億円)を活用した事業については、地域医療構想と連動させる形で適切な評価指標を設定し、PDCAが回るようにするなど、有機的なつながりが構想の実現に重要」(土居氏)。


  1. 2014/12/16(火) 05:44:54|
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