Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月31日 

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140831/trd14083113060013-n1.htm
70歳以上の外来医療費 上限引き上げへ 厚労省検討
2014.8.31 13:06  産經新聞

 厚生労働省が、医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費制度について、70歳以上の外来医療費の上限を引き上げる方向で検討に入ったことが30日、分かった。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会で近く議論を始める。

 現在、70歳以上の外来医療費の毎月の負担上限額は、年収370万円以上の場合は4万4400円、370万円未満は1万2千円、住民税非課税の低所得者は8千円となっている。70歳未満(上限額3万5400~15万円)に比べると大幅に優遇されており、増え続ける医療費を抑制するためには、高齢者にも支払い能力に応じた負担を求めるべきだと判断した。

 上げ幅は、入院を含めた上限額に近づける案が有力だ。同額まで引き上げた場合、年収370万円以上の人は8万100円、370万円未満の人は4万4400円まで上限額が上がることになる。低所得者に関しては、現行の8千円が据え置かれる公算が大きい。

 ただ、引き上げに対する高齢者の反発は必至で、統一地方選を来春に控えた与党内にも、「世論の地ならしが必要」(自民党幹部)との慎重論がある。

 高額療養費制度 年齢や所得に応じて医療費負担の上限を定めた制度。医療機関や薬局で支払った額が毎月の上限額を超えると、差額が支給される。?歳未満に関しては、年収770万円以上の人の上限を引き上げるなどの制度改正が平成?年に行われる。



http://news.livedoor.com/article/detail/9201798/
患者にカルテを見せることで医師との両者にもたらされたメリットとは?
GIGAZINE(ギガジン)  2014年08月31日08時00分
By Sean Lamb

病院や診療所で診察を受けるとき、医師は患者から症状を聞きながらカルテにメモをとるのが通例です。通常、医師と患者がカルテを一緒に見るということはなかなかありませんが、1人のアメリカ人医師が患者とカルテを共有したところ、予期していなかった利点が生まれました。

When Patients Read What Their Doctors Write : Shots - Health News : NPR

http://www.npr.org/blogs/health/2014/08/14/340351393/when-patients-read-what-their-doctors-write

ジョージ・ワシントン大学緊急医療センターのLeana Wen医師は、ある日患者に問診を行いながらいつもと同じようにキーボードを打ちながらメモとっていました。すると患者が「何を書いているか、見せてもらってもいいですか?」と聞いてきたのです。Wen医師にとって「何を書いてあるか見せて欲しい」と聞かれたことは初めてのことだったので一瞬戸惑ったものの、「カルテを見せてはいけない理由はないはず」と思い、患者にPCのディスプレイを見せながら、書かれていることを説明しました。

Wen医師が説明していると、患者は「痛みを感じ始めたのは先週ではなく、3週間前からです」とカルテに書かれている間違いを指摘。また、カルテには過去の診療記録として「アルコール乱用」と記載されていたのですが、それを見た患者はストレスにより数カ月前に過剰飲酒を再開していたことをWen医師に明かしました。

カルテを見せながら問診を行うことで、患者の病状がアルコールの過剰摂取による膵臓(すいぞう)炎ではないかという疑いが強まり、早期に検査を行った結果、その後の治療の役に立ったとのこと。Wen医師は学生時代、カルテが複数の医療機関で共有してコミュニケーションをスムーズにするための道具である、と教えられていたため、患者と共有することでメリットがあるなど考えたこともありませんでした。

1966年にHealth Insurance Portability and Accountability Act(HIPAA:医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)が制定される前、アメリカでは患者がカルテを閲覧できるのは患者が医療機関に対して訴訟を起こした場合のみだったそうです。HIPAAは患者にカルテを閲覧する権利を与える条項が含まれている法律で、制定により患者は以前より簡単にカルテを閲覧できるようになりましたが、それでもなお、カルテを閲覧するには手間のかかる手続きを経る必要がありました。

ところが、2010年に内科医のTom Delbanco医師と看護師であり研究員でもあるJan Walker氏の2人が「OpenNotes」という、医師が患者とカルテを共有する実験をスタート。その時に立てられた仮説はカルテを患者と共有することで、患者と連動した治療を行うことができるというもの。

両者が始めた実験に対して、「患者がカルテを間違えて理解してしまう」「患者が訴訟を起こしやすくなる」といったことを恐れた他の医師から大きな反対を受けましたが、実験後には参加した患者の約80%が病状について深く理解でき、健康管理に関する意識が高まったと回答し、約66%が指示通りに処方箋を服用したという結果が得られました。そして、99%の患者が今後も医師とカルテを共有したいと希望したのです。実験に参加した医師の中には「カルテを患者に読んでもらうことで、以前より強固な信頼関係を築けた」という意見も聞かれました。

OpenNotesは実験にとどまらず、アメリカ中の病院や診療所に広まり、2014年には財団法人から資金援助を受けるほど大きな運動を起こすことになります。ただし、OpenNotesに反対の姿勢を見せ続ける医師たちがいるのも事実です。精神科医や心療内科医といった医師は、患者にカルテの全てを見せるべきか、ためらっているとのこと。また、患者がカルテを複製したり、カルテの情報をSNSで公開したりする可能性を危惧する声も聞かれます。

では、日本で患者がカルテを閲覧できるかというと、カルテは個人情報として、個人情報の保護に関する法律の第一節「個人情報取扱事業者の義務」の第25条で、下記のように定められています。

第二十五条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。

一 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

二 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合

三 他の法令に違反することとなる場合

また、平成17年4月に施行された個人情報保護法の定めにより、医療機関は個人情報取扱事業者に位置づけられています。

医の倫理の基礎知識|医師のみなさまへ|医師のみなさまへ|公益社団法人日本医師会

http://www.med.or.jp/doctor/member/kiso/d1.html

つまり、個人情報取扱事業者として認められている医師は、上記の3つの項目に当てはまらない限りにおいて、患者から求められた場合にはカルテを開示しなければならない義務があります。実際に日本でも多くの病院が患者にカルテを開示しており、患者が診療中にカルテを見せて欲しいとお願いしても何の問題もない、というわけです。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03090_02
【寄稿】
医学教育認証評価の現状と展望
――東大医学部での状況を含めて

大西 弘高(東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究センター)
週刊医学界新聞 第3090号 2014年09月01日

未整備だった日本の医学教育認証評価

 近年,医学教育認証評価の動きが話題になることが非常に増えてきた。本稿では,その歴史,背景,現状などについて簡単にまとめてみたい。

 私が認証評価(accreditation)という用語を初めて耳にしたのは,2001年,医学教育を学びに米国に留学していたときのことだった。指導教員に,「行動科学カリキュラムってどういうものですか」と尋ねたとき,「今はLCME(Liaison Committee for Medical Education)の認証評価の準備で忙しい時期だけど,誰と誰に尋ねれば……」と認証評価担当者を教えてくれた。マレーシアにいたときも認証評価の話題が時折出ており,医学教育の質保証について度々議論されていた。当時,認証評価が医学教育の質保証に不可欠なシステムであることは理解できたが,それがどの程度大変なことなのかは実感が沸かなかった。

 2008年,西太平洋地区医学教育会議(AMEWPR)に出席したとき,主要な議題は域内医師移動自由化に向けた認証評価であった。2003年に出た世界医学教育連盟(World Federation for Medical Education;WFME)のグローバルスタンダードは知っていたが,2001年にWHO西太平洋地域卒前医学教育質保証ガイドラインが出ていたことはその場で初めて知った。

 日本では,2004年に機関別,すなわち大学単位での認証評価が学校教育法で定められた。ただ,医学教育については,当時すでに韓国,マレーシア,タイなど多くの周辺国がシステムを構築していたにもかかわらず,日本では未整備なままであった。

“黒船”=ECFMGアナウンスメント

 2010年9月,ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)がアナウンスメントを出したというニュースが伝わってきた。ECFMGは米国での臨床研修を希望する海外医学部卒業者に許可を出す組織だが,アナウンスメントの内容は「2023年以降は,LCMEやWFMEと同等の基準を用いた認証評価を受けた医学部の卒業生のみが申請できる」というものであった。

 一時は「米国への臨床研修の意義はかなり低下した」とか,「日本から米国への臨床研修者はかなり減っている(ので認証評価のことは無視してもよいのではないか)」というような反応もあった。しかし,徐々にさまざまな情報や背景が理解されていき,「全国医学部長病院長会議や日本医学教育学会を中心に医学教育分野での認証評価システムを構築すべきだろう」という議論が進んだ。

個別の認証評価が不十分な日本

 医学部の評価は,1910年に米国で出されたフレクスナー報告に原形があると言われる。20世紀に入って質の悪い医学校が増えたため,フレクスナー報告に基づく教育改革が断行され,多くの医学校が廃止に追い込まれた。米国では,1942年に医学教育に関する認証評価システムが構築され,現在もLCMEによる認証評価が医学教育の質管理,質保証に大きな役割を果たしている。

 わが国では,認証評価と関係なしに入学定員が減ったことがある。第二次世界大戦終了直前に医学専門学校が急増し,入学者定員が1万人を超えたが,終戦後,GHQによる改革で医学校は85校から45校に,入学定員は2800人に減らされたのである。その後,医学教育の管理は,1948年の医学教育基準,1956年の大学設置基準などにもとづき,当時の文部省が厳しく行ってきた。その後,学生運動の時代などをくぐり抜け,高等教育機関もオートノミーを重視する流れが生まれた。また,1991年の大学設置基準大綱化により,各大学が学部教育を自由に編成できるようになったと同時に,自己点検・評価を行い,改善を怠らないことが努力義務規定となった。

 前述のように,2004年には学校教育法に基づくわが国の認証評価制度が開始され,全ての高等教育機関は,定期的に認証を受けた評価機関による評価を受けることとなった。各大学は,基準に沿った自己点検・評価を行い,外部評価委員の質疑や現地査察を受け入れる。カリキュラムだけでなく,教員,評価システム,経営などの観点に関しても評価を受け,評価が低い場合には,次回の認証評価までの期間を短くしたり,学生受け入れ停止を命じたりする。

 このような大学全体を対象とした「機関別認証評価」はすでに制度として根づきつつある。一方,「分野別認証評価」は専門職大学院に限って法制化されているため,医療系の中で助産領域や公衆衛生大学院などが行っている程度である。

国内6大学連携の認証評価トライアルがスタート

 2010年のECFMGアナウンスメントにより,「臨床実習が72週以上必要になるのでは」という情報が駆け巡った。これは,米国のある州の規準でしかなく,このような量的規準は現状検討もされていない。ただ,この「72週問題」は認証評価に対する危機感を大いに高めた。

 そのころから,全国医学部長病院長会議,日本医学教育学会,文科省はそれぞれ高い関心を持って取り組みを始めた。結果,東医歯大の奈良信雄氏を中心に,東女医大,新潟大,慈恵医大,千葉大,東大の6大学連携による文科省GP事業が始められることになった。東女医大は2012年にAMEWPRのメンバーらによる国際外部評価を受けた。また,東医歯大,新潟大,慈恵医大,千葉大が2013-14年にGP事業における認証評価トライアルを行い,現在結果が出るのを待っているところである。

 WFMEグローバルスタンダードに準拠した医学教育分野別評価基準日本版はほぼ固まりつつあるが,今後,日本医学教育認証評価評議会(JACME)の設立,WFMEによるJACMEの承認,医学教育分野別認証評価の法制化といった課題が残るだろう。これら6大学の医学部が現在内部点検評価,外部評価の受審といった認証評価のトライアルを行っており,制度化の基盤づくりが進んでいる。

医学教育の課題に,あらためて正面から向き合う機会

 東大も6大学連携事業の一翼を担うため,2015年2月に認証評価トライアルを受審することとなった。2014年初頭に医学部長が受審を決断し,3月には準備委員会,5月には8つの領域のワーキンググループの組織が固まった。Area 1からArea 8/9の8つの領域のワーキンググループには,医学系研究科の教授全員と,これまで教育に関与してきた教員に委員になっていただいた(図)。私は,この中で幹事代表という立場におり,委員長と全てのAreaの先生方,事務局との連絡などを行っている。

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図 東大医学部・国際基準に基づく医学教育認証評価準備委員会組織図
 医学教育分野別評価基準日本版を概観すると,重要なポイントは,(1)アウトカム(教育成果)基盤型教育,(2)臨床教育の実質化,(3)学習者評価とアウトカムの連動,(4)学生の声を取り入れた医学部運営,(5)教員やプログラムの評価システム(Institutional Research: IR),(6)ガバナンスを持った医学部管理運営,といったところであろう。医学教育関係者にとっては,従来から議論されてきた内容ではあるが,あらためて東大医学部においてこれらの課題に正面から向き合うこととなっている。

 準備委員会や各ワーキンググループにおいて自己点検評価を進める中で,少しでも改革を進めたいという気運が高まっていると感じる。認証評価は,“黒船”によって一気に制度化にまで進もうとしているわけだが,個人的にはこの波を一時的なものに終わらせるのではなく,ぜひ長期的展望に立って改革を進めたい。そのためには,今回の認証評価を乗り切るだけでなく,今回の自己点検評価で今後の方針等を記載する際,数年後の第2回認証評価受審に向けてしっかり考えておくことが必要だろう。学部全体で意見の集約を図るため,今年だけで4回のFaculty Development(FD)ワークショップを行う予定である。この認証評価をよい機会ととらえ,東大医学部における医学部改革が,ぜひ全国の医学部にも注目してもらえるようにしていきたい。


大西弘高氏
1992年奈良医大卒。同年天理よろづ相談所病院,97年佐賀医大附属病院総合診療部を経て,2000-02年イリノイ大医学教育部にて医療者教育学修士課程修了。03年からは国際医学大(マレーシア)医学教育研究室で自大学のカリキュラム評価・教員評価の取りまとめ,アウトカム基盤型教育の導入に従事。05年より現職。専門は総合診療,医学教育。日本医学教育学会,日本プライマリ・ケア連合学会,日本医療教授システム学会にて理事を務める。



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03090_01
医学教育から新たな可能性を発信
第46回日本医学教育学会大会開催

週刊医学界新聞 第3090号 2014年09月01日

 第46回日本医学教育学会が,7月18-19日,岡村吉隆大会長(和歌山医大)のもと,和歌山医大紀三井寺キャンパス(和歌山市)で開催された。和歌山にゆかりのある江戸時代の外科医・華岡青洲の言葉にちなみ,主題には「活物窮理――医学教育の本質を求めて」が掲げられた。本紙では学際的な視点から医学教育の広がりを検討するパネルディスカッションと,医学教育の利益相反(COI)について議論されたパネルディスカッションの模様を報告する。

文化人類学・社会学の視点から医学教育を学ぶ意義とは

 医療の対象となる人間には,それぞれ多様な営みがあり,その理解には当事者の視点に立つことが求められる。準備教育・行動科学教育委員会企画「医学生のうちに学んでおきたい社会科学の質的アプローチ」(座長=東海大・和泉俊一郎氏,神戸市看護大・樫田美雄氏)では,医学教育における質的アプローチの有効性について検討された。
 文化人類学を専門とし,18年にわたり医学教育に携わっている星野晋氏(山口大)は,超高齢社会を迎えた現在,クリティカル・パスや地域包括ケアなどの新たな方策が提起されているものの,これらは未だ課題が山積みである現状を説明。その要因として専門職間と,専門職-生活者間,二つの文化摩擦があると指摘した。医療者は疾患を見るだけでなく,患者家族など当事者が何に困っているかを見る「事例性」の視点,すなわちProblem Basedで課題および支援を組み立て,なおかつ他職種との共通理解が必要との見解を示した。そのために人類学や社会学が培ってきた質的アプローチを用いたケースレポートの作成が有効であり,そのノウハウを医学教育で学ぶことは,将来の臨床経験においても生きてくると述べた。

 医学教育におけるエスノグラフィーの可能性について解説したのは飯田淳子氏(川崎医療福祉大)。エスノグラフィーとは,参与観察やインタビューによって得た質的データに基づき,記述・考察をする文化人類学の研究手法である。専門知識を深く学ぶ前の医学部低学年時に質的アプローチを学ぶことは,患者・家族・他職種といった他者理解を深め,地域・生活全体を把握する包括的視点の習得にもつながる。また,他者と直接かかわることで得られる自己省察が,高学年での臨床と結びつけた応用や後のキャリアを考える際にも生かされるなど,多様な意義を持つと語った。

 社会学の立場から発言したのは長谷正人氏(早大)。患者にはそれぞれ個別性があり一般化できないが,普遍的なこととして症例研究を共有できるのは,量的ではない,質的なアプローチの存在があるとし,医師-患者関係の理解を深める質的アプローチとして,グレゴリー・ベイトソンのコミュニケーション論的学習理論を紹介した。この学習理論は三つの段階に分けられる。医療の現場に援用すると,疾患のみに着目して患者の治療方法を考えるのが「学習I」,医師-患者関係のコミュニケーションに配慮して治療するのが「学習II」,さらに患者の暮らす社会の常識や生活習慣といった背景を踏まえて治療自体の意味を問い直すのが「学習III」であると位置付けた。氏は,「学習III」の見地から,患者の自律的な自己治癒力を奪ってしまう近代医療を批判したイヴァン・イリイチに対し,人間は本来他律的であることに喜びを感じる存在と説明。したがって医療においても「治す/治る」ことのなかに他律的な喜びを見いだすことがコミュニケーション論に期待される質的アプローチの視点であると示唆した。

COIの議論の広がりを期して

 臨床研究における医師と製薬会社との不適切な関係に対し,社会の厳しい視線が集まっているが,COIは臨床研究だけの問題にとどまらない。COI委員会企画「教育のCOI:あなたの影響力の方向性は間違っていませんか?」(座長=東大・大西弘高氏,留萌市立病院・宮田靖志氏)では,医学教育におけるCOIが議論された。

 初めに登壇した大西氏は,日本医学教育学会の取り組みを紹介。19ある社会医学系学会の中で最も早く研究倫理COI委員会を設置して指針策定を行い,年次大会では発表者がCOI状態を自己申告するなどの体制を整えていると説明した。その上で,「医学教育学会の活動において研究のCOIは重要だが,今後教育の場面でも問題となり得るのではないか」と提起した。例として年次大会のランチョンセミナーや製薬会社MRによる食事つき勉強会,シミュレータ企業による便宜供与などを示し,(1) 教育者が学習者を教育する際に問題となるもの,(2) 医学教育に関与する企業が学習者に直接影響を及ぼすもの,(3) 医学教育に関与する企業が教育者に影響を及ぼすとともに,教育的に問題となるものの3点に要約。医学領域の教育活動に関連したCOI問題の対策は不十分との認識を示し,議論の活性化を促した。

 日常臨床で遭遇するCOIを,自院での検討事例から報告したのは高屋敷明由美氏(筑波大病院)。氏が所属する総合診療科では,製薬会社MRによる薬剤説明会が弁当・資料の無料提供で実施されていたが,スタッフミーティングでCOIの問題が提起され,是非を検討することになったという。「薬の情報を得られる」「批判的吟味の実践ができる」などのメリットがある一方,「偏った薬剤情報を聞く」「処方行動に影響を受ける」といったデメリットから,MRによる説明は朝の5分間に限定,薬の資料以外,飲食物の提供は一切なしとした。賛否はあったものの,「製薬会社からギフトを受け取る姿を学生・研修医に見られたくない」という共通認識が確認された。プロフェッショナリズムの観点からも「学生・研修医に対する影響を認識し,行動を顧みて教育に当たる必要がある」と訴えた。

 COI教育の現状と課題から,新たな論点を提起したのは宮田氏。COIについて,「中立的な立場で第三者のために業務を遂行すべき立場の者が,自分や関係他者の利益を優先するためにその中立性を損なうこと」と概説した上で,医師と製薬企業の関係は,臨床研究だけでなく,一般臨床医から医学生に至るまで同様に問題になり得ると述べた。特に,医学生と製薬企業との関係はあまり議論されてこなかったことに注目。実際,臨床実習開始前に比べ,医学生が製薬企業からギフトを供与される機会が格段に増えることがわかっており,製薬企業と関係する機会が増えると,「ギフトを受け取ることは問題ない」と認識するようになるという[PMID:20730093]。さらに,「製薬企業からの働き掛けに自分は影響されない」と思う割合は61%に上り,「自分だけは大丈夫」と心理的防衛機構が働いて製薬企業とのかかわりを合理化してしまうという調査結果も示した[PMID:17356984,11347622]。ただ,COIの評価を前に,個々人の決断・動機・妥当性には複雑な要素が絡み合い,これらの調査には莫大な労力が必要なことから,検証実施は現実的ではない。氏は,COIを教育するには,まず具体的なポリシーを策定することが望まれると主張。オープンな場で対話を重ね,皆でポリシーを作り上げていくことが必要だと参加者に呼び掛けた。

[PMID:20730093]Saito S1, Mukohara K, Bito S. Japanese practicing physicians' relationships with pharmaceutical representatives: a national survey. PLoS One. 2010 Aug 13;5(8):e12193. doi: 10.1371/journal.pone.0012193.
[PMID:17356984]Chimonas S1, Brennan TA, Rothman DJ. Physicians and drug representatives: exploring the dynamics of the relationship. J Gen Intern Med. 2007 Feb;22(2):184-90.
[PMID:11347622]Steinman MA1, Shlipak MG, McPhee SJ. Of principles and pens: attitudes and practices of medicine housestaff toward pharmaceutical industry promotions. Am J Med. 2001 May;110(7):551-7.



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/49456/Default.aspx
協和キリン 臨床研究不祥事受け営業活動・組織のあり方検討 寄附金決済はCSR推進部
公開日時 2014/09/01 03:50 ミクスオンライン

協和発酵キリンは8月29日、腎性貧血治療薬ネスプの医師主導臨床研究に同社MRらが不適切らに関与した問題を受け、渉外倫理室を統合する形で新しいCSR推進部を10月1日付で発足させ、コンプライアンス体制を強化すると発表した。この中で、問題発覚後に設置された「営業活動改革チーム」の責任者として、同部を管掌する代表取締役・副社長執行役員の河合弘行氏を充て、一連の問題を受けての今後の営業活動、組織のあり方を検討していくことになった。

検討の背景について当社は、同問題の社外調査委員会報告書で「社会規範の変化に対する感度不足」を指摘されたことを挙げ、今の社会規範に対応した営業活動・組織を継続的に検討、今後具体化し、随時実行に移していく。チームは、営業組織から中立的な総務部や渉外部、CSR推進部からなり、河合氏は同チームの責任者として営業本部を管掌する。

新しいCSR推進部は、コンプライアンスの徹底・強化に取り組むとともに、大学等への寄付金の審査、決済を行うほか、臨床研究のに関するポリシーなどを近く制定、公開する。CSR本部長には執行役員で研究開発本部研究開発企画部長の中西聡が異動する。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41598
明日の医療
製薬会社が医師に払う謝礼金額、お教えします
「過度な接待」はいまも行われているのか?

2014.09.01(月) 多田 智裕 JB Press

8月18日から、製薬企業が医師らに支払った講師謝金・原稿執筆料などの個人別金額の情報公開が始まりました(「『企業活動と医療機関等の透明性ガイドライン』に基づく公開情報」)。

 ファイザー製薬が公開した情報では、2012年から1年間で6000名の医師に支払われた医学研究会の講演報酬などは10億円だったとのことです。

 ただし、10億円と書くと大きな金額のようですが、医師1人当たりに換算すると年間16万円、月1万3000円ほどです。

 そもそも、この金額公表の目的は、“臨床試験の公平性の担保”です。「製薬会社は研究に必要な資金援助しか行っていないし、医師や医療機関側もそれ以外は受けていない」という証明のために公開されるものです。

 医師個人ごとの金額公開が不要とまでは言いませんが、まず、プライバシーの観点から私は若干違和感を感じます。また、研究や講演を頑張った医師が「年間500万を受け取った」とわざわざ報道されるのは、公開制度の本来の趣旨を理解した報道とはとても思えないのです。

2011年以降、高級飲食の接待は廃止されている

 製薬会社の団体である日本製薬工業協会が「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を2011年に制定してから、医師が製薬会社の医薬情報担当者(MR)から高級飲食の接待を受けることは一切なくなりました。

 一部の医師は、接待がなくなって残念に思っているかもしれません。けれども私を含めた大部分の医師は、接待ではなく、しっかりとした医薬品の臨床データを求めています。そのデータを基に、今提案できるベストの薬を患者さんに処方したいと思っているのです。

 ですので、接待がなくなってMRさんと一緒に会食する機会がなくなり、情報をやり取りするだけの間柄になってしまう寂しさはあるものの、仕事の効率としては良くなったと思っていました。

 2011年以降、製薬会社は、医学に関する研究会・講演会の開催後援のためにしか費用を支出していません。今回公表された「10億円」という金額は、この研究会・講演会の協賛金として医師に支払われた講演料や原稿料の金額なのです。

個人の収入公開は本当の収入を反映しない

 以前、日本ではいわゆる長者番付という高額納税者のリストが公開されていました。しかし、公開されたリストを基に寄付金の要請が殺到したり、また犯罪のターゲットなどにされてしまうというデメリットが多かったため、2006年以降公開は中止されています。

 そもそも納税額は、実際の収入を必ずしも反映していません。会社を設立している人は、所得を個人の収入ではなく会社の収入として付け替えられるため、ランキングそのものの意味がなくなってしまっていたのです。

 実際、私がいただいている諸々の講演料や原稿料も、すべて私の診療所の経営の足しにするため、診療所の法人宛で受け取っています。ですから、私個人の名前が今後公開されるリストに載ることはありません。

医師の1回の講演料の相場は?

 実際のところ、製薬会社後援の研究会で医師1人に支払われる講演料の相場は3万~10万円です。全国規模の研究会でメインの講演を行う場合には10万円を超えることもあるかもしれませんが、通常の20分程度の発表だと3~5万円、1時間程度のメイン講演を行う場合でも10万円がおおむねの相場です。

 一部に、年間500万円近くの講師謝金・講演料を得ている医師がいると報じられていますが、これは毎週1回以上研究会・講演会の依頼を受けない限り達成できない数字です。おそらく休む暇もなく飛び回っていることでしょう。製薬会社から過度に不当な利益を得たというわけではなく、それだけ頑張って仕事をしたと解釈すべきだと思います。

 また、薬剤の発売後実態調査や、薬剤の副作用情報収集などの場合に、製薬会社から医療機関に手数料が支払われることもしばしばあります。こちらは、発売後調査で1つの症例あたり2万円、副作用情報で1つの症例あたり1万円が相場です。とはいえ、いずれも年間で多くても数件しか発生しません。書類作成とやり取りの手間ひまを考えると、利益供与にあたるほどの仕事ではないと思われます。

 その他、臨床試験や治験の際には、ポイント制(期間や検査回数の多さなどの細かなポイントの合計)で医療機関への支払い金額が決まります。臨床試験や治験は期間が数年間にわたることもしばしばあり、1つの症例あたり30万円を超えることもあります。ただし、この金額が医師個人に直接支払われることはありません。

 さらに、10例以上の数百万円以上に及ぶ契約の場合は、定期的に製薬会社の内部監査が入ります。また、数年に1度は「PMDA」(医薬品医療機器総合機構=厚生省の外部機関)の監査も入ります。

「医師への過度な接待」はすでになくなった

 繰り返しになりますが、これから公開されていく製薬会社の医師への支払い情報は「製薬会社は適正な謝礼しか支払っていません」ということを証明するためのものです。

 今回述べたように、製薬会社から医師への飲食のみの接待は2011年以降一切行われていません。研究会や講演会の開催に伴うお弁当・飲食は、製薬会社より提供されていますが、これも華美でない金額内(3000~5000円程度)とガイドラインで定められており、その範囲内のものです。

 「医師への過度な接待をなくす」という目的は、2011年にガイドラインが設定施行された時点でほぼ達成されていると私は考えます。

 データ公開そのものは悪いことではありませんが、肝心なのは公開情報を解釈する能力です。高額な収入を得た医師がいるとすれば、それは余暇を惜しんで努力して稼いだ結果であり、それだけ意義のある講演や研究をしたということなのです。マスコミにはぜひそのことを理解してほしいと私は思うのでした。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/49462/Default.aspx
ノバルティス 2500例の因果関係の否定できない重篤な有害事象で報告遅延 
公開日時 2014/09/01 03:50 ミクスオンライン

ノバルティスファーマは、MRなどが自社製品に関連する有害事象を把握しながらも約1万例で報告遅延が起きていた問題で8月29日、因果関係の否定できない重篤な有害事象が2579例あったと発表した。因果関係など評価中の6118例と併せた8697例を医薬品医療機器総合機構(PMDA)、厚労省に報告したという。同日付で、厚労大臣に改善計画書を提出した。副作用報告の遅延をめぐっては、7月31日付で、厚労省から薬事法に基づく業務改善命令を出されており、8月末までに改善計画書の提出とともに副作用報告遅延をめぐる社内調査結果の報告が求められていた。


薬事法違反があったのは、慢性骨髄性白血病治療薬・グリベック(一般名:イマチニブ)、タシグナ(ニロチニブ)をめぐり実施された、▽慢性骨髄性白血病治療薬に関するQOLアンケート調査(KIZUKIプロジェクト)、▽東京医科大医学部附属病院に事務局を置くTokyo STI study Group (TSSG) が実施した1研究―。報告義務のある副作用を把握していたにもかかわらず、定められた期限内に報告していなかったほか、複数のMRが副作用情報を同社の安全管理統括部門に伝えていなかった。業務改善命令では、▽社内の全MRから安全管理統括部門に確実に報告される体制をとり、そのための教育訓練を実施すること、▽知りえたすべての有害事象などの収集情報についてもMRが安全管理統括部門に報告すべき対象であることを明確にすること―などが求められていた。

◎有害事象報告義務達成状況 人事評価項目の指標に


改善計画書では原因として、▽有害事象に関するトレーニングを受けていたにも関わらず、MR が知り得た全ての有害事象を報告することの重要性を十分に認識していなかった、▽営業所長および営業部長を含む営業部門の管理者の監視が十分ではなかった―ことを挙げた。その上でこの傾向が「がん領域で顕著にみられた」とした。また、安全管理統括部門への有害事象を報告していないケースを検出する上で、効果的なシステム、プロセスも存在しなかったとした。

その上で、業務改善として命じられた「社内の全MRから安全管理統括部門に確実に報告される体制をとり、そのための教育訓練を実施すること」としては、▽再発防止のための体制整備、▽是正措置としての教育研修――を明記した。

体制整備では、▽GVP 上の安全管理実施責任者である治療領域別の営業部長に対し、8月22日付で厳重注意を発令し、再発防止に向けた社員への教育などの対策に万全を期すよう指示、▽MR の人事評価項目に有害事象の報告義務達成状況を指標として加え、今年下期(7 ~12 月)の評価から適用、▽営業部門における業務報告システムの改善、▽スイス本社の監査部門による体制についての監査、営業本部以外の部署による第三者による点検、▽本社・安全管理統括部門、薬事・品質保証部門がコンプライアンス部門と協調し、各営業所を来年から順次訪問し、MRと直接対話する――を挙げた。


教育研修では、医師主導臨床研究に関する社内ルールの徹底と社内風土の改善を目的に集合研修として実施された特別研修の中で再度研修するなどして周知を図ってきたとした。
社内調査実施後の4 月以降の有害事象の安全管理統括部門への報告症例数が約 40%増加したことも報告し、研修の成果が上がっているとした。

今後は、7月~来年1月までの6か月間を1クールとしたビデオ配信による有害事象の月例教育プログラムも実施する。7月、8月は安全管理統括部門へ報告すべき情報の詳細など有害事象報告の基本を学ぶ。9~12月は、講演会の資料やアンケート調査結果などの具体的な情報源を想定するなど、具体事例を交えた研修を行い、さらなる意識の浸透を図る。また、10 月にはグローバルで共通の教育プログラムを e-learning にて社員全員に受講させ、テストによる理解度チェックを行い、合格者をシステム内で管理するとした。

「知りえたすべての有害事象などの収集情報についてもMRが安全管理統括部門に報告すべき対象であることを明確にすること」については、安全性情報収集の手順を示したGVP に関する業務手順書の中に、情報ソースによらず、知りえたすべての有害事象が報告対象となることを明記した。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/49452/Default.aspx
武田薬品 インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン 膀胱がんリスクの増加認められず
公開日時 2014/09/01 03:51 ミクスオンライン

武田薬品は8月29日、インスリン抵抗性改善薬アクトス錠などピオグリタゾン含有製剤に関する10年にわたる疫学研究結果で、同製剤投与による膀胱がん発生リスクの有意な増加は認められなかったと発表した。このデータは同日(米国時間28日)、日本の厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)、FDA、EMAなど各国の規制当局に提出した。厚労省は、まずPMDAでデータを評価し、その結果を踏まえ対応を検討する。

日本における臨床現場への情報提供について同社は、解析結果が文献化されていないことから積極的に行っておらず「質問が出た場合に事実関係を答えるにとどめている」としている。

この疫学研究は、同社がペンシルベニア大学に委託して行ったもので、同大とKaiser Permanente医療保険グループ(KPNC)の研究部門により実施された。5年間の中間解析では、同製剤を2年以上使用した患者において膀胱がんの有意なリスク増加を指摘。日本では添付文書に膀胱がんの発生リスクの増加のおそれが明記されるに至った。

今回の発表されたのは、その疫学研究の10年間の最終解析で、発表によると、主要解析では、同製剤の投与と膀胱がん発生リスクとの間には関連性は認められなかった。膀胱がん発生リスクとピオグリタゾンの投与期間、累積投与量あるいはピオグリタゾン投与開始からの期間との間のいずれにおいても関連性は認められなかったという。詳細なデータはまだ開示されておらず、研究チームが2014年中に論文投稿する予定という。

このデータ提出を受け、厚労省医薬食品局安全対策課の上野清美安全推進室長は、本誌に「まずPMDAで内容が評価されることになる。その評価を受け(厚労省として)、どのような対応が必要になるか考えていくことになる」と話した。検討にどの程度かかるかは不明で、その間は添付文書に従って薬剤を使用することになる。

添付文書では「重要な基本的な注意」に、▽膀胱がんの既往を有する患者には本剤の有効性及び危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断▽患者又はその家族に膀胱がん発症のリスクを十分に説明してから投与▽投与中は定期的な尿検査等を実施--することなどと記述されている。

  1. 2014/09/01(月) 05:48:19|
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