Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

8月15日 

http://www.m3.com/iryoIshin/article/242007/
医療機関の消費税問題
不完全な診療報酬の補填 - 1から分かる消費税問題◆Vol.2
設備投資の額と連動し、損税拡大

2014年8月15日(金) 池田宏之(m3.com編集部)

 1989年0.76%、1997年0.77%、2014年、1.36%――。厚労省が、医療機関の控除対象外消費税対応として「診療報種に上乗せした」とする消費税だが、十分な金額になっているのだろうか(初回は、『医療機関の「損税」とは?- 1から分かる消費税問題◆Vol.1』を参照)。

診療報酬の0.67%分が“損”

 実際には、補填額が不足して、差分を医療機関が補填している形となっている。近年、大きな問題となっているのは、1989年と1997年分の合計は「1.53%」。日本医師会などは、保険診療における消費税負担は医療機関全体で「2.2%」で、差の0.67%分は補填されていないと見ている。原因としては、消費税補填分を上乗せした診療報酬の項目が、過去の診療報酬改定で、減点されたり、項目ごと削除になってきたからだ。

 「0.67%が補填不足」という認識は、厚労省も理解を示している。それを示すのが、2014年度診療報酬改定で、厚労省の「8%引き上げ時に、診療報酬全体の1.36%分を確保した」との主張に表れている。増税分の3%に対しての補填が「1.36%」であることから、逆算すると5%時の控除対象外消費税は「約2.2%」となる。厚労省も医療界も、「医療機関は、診療報酬0.67%分を、控除対象外消費税の問題で負担している」というコンセンサスは得られているとみられる。金額にすると2700億円強となる。

設備投資多ければ、損税が拡大

 「診療報酬による補填」は、一見、合理性のある方法にも見えるが、医療機関や保険者からの批判は根強い。主な理由は(1)医療機関ごとの支出の違いに対応できずに、補填不足となる医療機関が発生する、(2)「非課税」前提の保険診療の医療費について、不透明な形で、患者や保険者から徴収している――の2点だ。

 (1)では、マクロな視点から見れば、「医療機関の負担分は0.67%」となるのは事実だが、実際の医療機関の控除対象外消費税の負担には、ばらつきがある。最も大きな要因は、建物の建て替えや医療機器の購入などの設備投資の多寡だ。2007年の日医の調査によると、「負担割合が2%以下」の医療機関の群の控除が対象外消費税の負担分は、1.63%(設備投資分0.11%、設備投資以外1.52 %)だったが、「負担割合が6%を超える群」では、10.82%(設備投資分が8.67%、設備投資以外が2.15%)となり、設備投資にかかる負担分の割合は78倍以上の開きがある。設備投資は大規模な医療機関ほど多額になる傾向がある中、病院団体からは「設備投資の負担が大きい」と、長年にわたり不満が表出してきた。

 2014年度の診療報酬改定でも、高額の設備投資をした場合の対応について、別途補填する方法を中医協で話し合ったが、結局解決策が見いだせずに見送りになった。2014年改定は、「広く薄く行きわたる」初診・再診料、入院基本料で補てんされ、大規模医療機関の不満は続いている。

「非課税」なのに消費税払う国民

 (2)は、表向き「非課税」にも関わらず、国民や保険者が、診療報酬に上乗せされた消費税分を負担している点だ。医療機関で発生する控除対象外消費税の負担を軽減するために、国民や保険者に、消費税を転嫁しているのが実情となっている。仮に、控除が可能な制度となっていれば、負担は、税収減となる国が負うことになるが、国は「医療費は非課税」という建前を保ったまま、一定程度の税収を確保していることになる。

 医療機関からすると、国民からの、的外れな怒りを招きかねない事情もある。「医療は非課税」にも関わらず、「医療機関への支払いには、消費税分が転嫁されている」との認知が広まれば、医療機関への批判を招きかねない。日本医師会は、一般国民向けのパンフレットを作って、広報活動に努め、不当な誤解を招かないように対策を打っている。

日医「2014年の増税分は、確保」

 一方、2014年度改定での負担分は、増税3%分の予算として、1.36%分、5200億円の財源が確保されている。この点について、日本医師会の今村聡副会長は「(消費税率5%から8%の引き上げで発生する控除対象外消費税は)マクロな観点からは確保されている」と指摘していて、新たな損税は発生していないという認識だ。

 病院団体からは、2014年度改定について、「開業医に財源が多く回っているのではないか」と批判する声があるが、2014年改定の消費税補填の財源は、医療費と課税経費率に基づいて「病院」と「診療所」に分けて確保されており、今村氏は「開業医に多く回っていることはない」と理解を求めている。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43546.html
不十分な地域医療連携、東京都が改善に本腰- 都立病院に患者支援センターを順次整備へ
( 2014年08月15日 20:00 )キャリアブレイン

 東京都が、診療や看護、生活上の経済的問題などにワンストップで対応可能な「患者支援センター」を都立病院に整備し、転院先の紹介や在宅療養への移行などの支援体制を拡充させることが、15日までに分かった。多摩総合医療センターで今年度行われているモデル事業の課題の整理や効果の検証を行い、来年度以降、他の都立病院にも同センターを順次整備することで、都内でこれまで連携が不十分だった在宅医らとの地域連携にもつなげたい考えだ。【新井哉】

 患者やその家族の疑問や不安に対して、病院側が的確に対応して患者の安心を確保するのが目的で、地域の医療機関や地域包括支援センターなどとも連携体制を構築し、患者の地域生活への早期復帰を支援する。

 独居の高齢者や高齢者のみの世帯が増加する「高齢化の進展」と、都の全死亡者数の約3割を占め、その8割が高齢者とされる「がん患者の増加」、困窮や社会的な孤立状態といった「生活上の課題の多様化」などに対応する施策が求められていた。

 都立病院でも、患者やその家族が相談したいことがあっても、どこに聞いていいか分からず、何度も病院に来てもらうケースもあり、職員間の情報共有や、在宅を支える機関との連携が不十分といった課題があったという。

 こうした課題を解消するため、都は、複数の職種や部門を一体的な組織として運営することが必要と判断。医師を組織のトップに置き、看護相談や退院調整を担う看護師、医療福祉相談を行うソーシャルワーカー、病床管理や地域連携を図る事務職員を配置する患者支援センターを都立病院に順次整備する方針を決めた。

 在宅医療に欠かせない訪問看護ステーションや在宅医との連携について、都は「必ずしも十分というところまではいっていない」と指摘。今後、地域の協議会などに都立病院が参加し、顔の見える連携や情報収集を図る方針だ。

 また、診療や看護、療養、生活や経済上の問題についても、都は病院の窓口を一本化し、「受診・入院から転院・退院、在宅療養まで、シームレスな相談支援を設ける」としている。今後、都内に8施設ある都立病院だけでなく、東京都保健医療公社の病院にも患者支援センターを展開する見通し。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43539.html
女性医師の活躍を応援、厚労省シンポ開催へ- 東京都内で
( 2014年08月15日 13:07 ) キャリアブレイン

 厚生労働省は24日、女性医師のさらなる活躍を応援するシンポジウムを東京都内で開催する。医療や医学の現場で働く女性医師の講演や意見交換を通じて、働きやすい環境整備の在り方などについて考える。【松村秀士】

 シンポジウムは、8日に初会合が開かれた「女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会」に関連したもので、国立国際医療研究センターで行う。

 女性として医療や医学の現場で働いてきた5人が体験談などを講演するほか、参加者との意見交換も行われる。登壇者は、▽惠谷ゆり氏(大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌部長)▽安田あゆ子氏(名古屋大医学部附属病院医療の質・安全管理部副部長)▽岩本あづさ氏(国立国際医療研究センター国際医療協力局派遣協力第二課医師)▽津下一代氏(あいち健康の森健康科学総合センター長)▽山本纊子氏(日本女医会会長)。

 厚労省の担当者は、「特に医師を目指す医学部生や研修医に参加してもらい、講演者の体験談やメッセージを参考にしていただきたい」と話している。



http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/241738/?category=research
仕事で最も使うのは「医師向けサイト」◆Vol.3
必要な情報は「検索」で探す傾向

2014年8月15日 池田宏之(m3.com編集部)

Q.3 仕事で、一番、使う頻度が高いサイト (単位:人)
 1位  その他の医師向けのサイト (m3.comなど)   239
 2位  一般の検索サイト (Google、Yahoo!など)    78
 3位  論文検索サイト (PubMedなど)        74
 4位  所属学会サイト                60
 5位  オンラインジャーナル(NEJM、Lancet など)  13
 6位  行政機関のサイト(厚生労働省など)      12
 7位  医療者向け、一般検索サイト以外        9
 8位  製薬企業のサイト               7
 9位  公的研究機関のサイト(国立感染症研究所など) 4
 9位  EBM関連サイト                4
11位  私的医療機関のサイト             3
12位  公的医療機関のサイト             1
12位  医療機器メーカーのサイト           1
12位  医療や科学をテーマとした個人のサイト・ブログ 1
15位  所属学会以外の学会サイト           0

 Q.3では、「仕事をしていく上で、一番、使う頻度が高いインターネットサイトはどこか」を、1つのみを選択できる形式で聞いた(有効回答数506人)。

 最も多かったのは、m3.comを含めた医師向けのニュースや情報を提供する「その他の医師向けのサイト」(学会や行政機関、論文検索サイトを含まず)で239人となった。近年医師向けの情報サイトは増加傾向にあり、半数近くの医師がいずれかのサイトをよく利用しているとみられる。

 2番目に多かったのは、GoogleやYahoo!などの「一般検索サイト」で78人、3番目に多かったのが、PubMedなどの「論文検索サイト」で74人。「オンラインジャーナル」は13人、「行政機関のサイト」は12人にとどまった。情報が集約しているサイトを訪れて、目的に沿って検索し、必要な情報に接触していることが伺える。

 具体的サイト名も必須回答として聞いた。5人以上の回答が集まったサイトは以下の通り。
   ・m3.com   233人
   ・PubMed   68人
   ・Google   46人
   ・Yahoo!   28人
   ・日経メディカル 10人
   ・医中誌   10人
   ・厚生労働省 7人
   ・Care Net   7人
   ・日本皮膚科学会 6人
   ・NEJM   5人



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43535.html
自殺未遂の救急搬送、「精神科と連携必要」- 救命センター調査、看護職への支援不十分
( 2014年08月15日 10:00 )キャリアブレイン


 救命救急センターに搬送された自殺未遂者について、9割近くの施設の看護スタッフが、精神科医療との連携の必要性を感じていることが、大分県立看護科学大精神看護学研究室の後藤成人助教の調査で分かった。後藤助教は「今後、自殺未遂者への対応に関する教育や研修、マニュアルがどの程度普及しているかといった具体的な調査を行う必要がある」としている。【新井哉】

 CBnewsマネジメント関連記事『自殺未遂者の救急搬送、地域連携で減らせ!』は、ここをクリック

 後藤助教は、全国の救命救急センター(約240施設)の救急部門の看護責任者を対象にアンケート調査を実施し、80施設から回答を得た。

 80施設のうち、72施設が受診した自殺未遂者を精神科医療機関に紹介していた。また、アンケートの自由記載では、看護師が情報提供やサマリーの作成などを行っている実態が浮き彫りになったという。

 また、9割近くに当たる69施設の看護スタッフが、「対応の仕方が分からない」や「自殺未遂を繰り返すため、外来で話を聞くだけでは解決にならない」などの理由を挙げ、「精神科医療との連携が必要」と考えていることが分かったという。

 80施設のうち57施設(71.2%)が自殺未遂者への対応に関する研修などの教育の機会がなく、マニュアルがない施設も58施設(72.5%)、スタッフへの精神的なフォローのない施設も54施設(67.5%)あった。この結果について、後藤助教は「救急部を受診した自殺未遂者への対応や、看護師への支援体制が不十分であることがうかがえる」と話している。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41498
『医療詐欺』が明かす驚くべき日本の医療の実態
コネがなければカネがあっても病院をたらい回しされる

2014.08.16(土) 川嶋 諭  JBpress

日曜日の明け方、左足の親指を戦車にでも踏まれたような痛みが突然襲ってきた。まだ起きるには少し早い時間帯だったが、飛び起きずにはいられなかった。いったい何が起きたんだ。


やる気のない医師に唖然

 指を少し動かしてみる。次の瞬間、とんでもない痛みが足の先から脳天に向かって貫いた。寝ている間に足の骨を折ってしまったのか・・・。いや、そうだ、胸に手を当てなくても原因は察しがついた。

 痛風発作だ。金曜日に痛飲して水分を十分に取らず、土曜日は暑い中の激しいテニスで体力を消耗させている。ついに来てしまったのか・・・。

 風が吹いても痛いことから痛風と呼ばれるようだが、風がなくても心臓が鼓動を打つたび、左足が悲鳴を上げる。

 日曜日なので病院は閉まっている。本心は救急車に来てもらいたかったが、こんなことで救急車を呼んでしまっては、命に係わる病気や事故の人がいたら申し訳ない。とにかく月曜日の朝まで約30時間、歯を食いしばって痛みに耐えた。

 月曜日の朝、ネットで痛風を専門にしている開業医を調べ、オープンと同時に駆け込んだ。幸いすいていてすぐに診てもらうことができた。

 「先生、どうも痛風発作を起こしたらしいんですけど」

 「今までに発作を起こした経験は?」「いえ、ありません」

 「尿酸値は日頃高いの?」「最近定期健診を受けていなので実は分からないんです。すみません」

 「ではとりあえず血液検査をしよう。腕を出して」

 この間2~3分くらいだっただろうか。

 「それじゃぁ、痛み止め4日分と尿酸値を下げる薬30日分の処方箋を書いておくから近くの薬局で受け取って。それから、痛みが引くまでは尿酸値を下げる薬は飲まない方がいいかも。ときどき症状を悪化させる場合があるから。それじゃ、帰っていいよ」

 「先生、もう来なくていいんでしょうか。血液検査の結果はどうすれば・・・」

 「そうね、1週間過ぎ頃にまた来てみて」


退化に向かっている日本の医療

 何となく納得がいかないまま、処方箋を持って薬局へ。激しい痛みに顔をしかめながら足を引きずって歩く私に気を遣ってくれ、私は椅子に座ったまま薬剤師の方が丁寧に対応してくれた。そして、痛風についていろいろな知識を授けてくれた。医師は何も説明してくれなかったのに・・・。

 医者って何だろう。常日頃疑問に思っていたことが自分が病気になって改めて証明されたような気がした。

 1週間後、痛みが引いていたので、すでに何の期待もなく再びその開業医の先生の診察を受けに行った。やはり、期待しないという期待がその通りになった。

 「先生、よろしくお願いします」

 「えーと、何だったけ」

 「痛風にかかったみたいで、先週受診して今日は血液検査の結果などを教えていただこうと思いまして」

 「そうだったね。えーと、あれれ、尿酸値はそんなに高くないんじゃない。へ~そんなこともあるんだ。薬は30日分出してあったよね。では今日はもういいよ」

 会話は本当にこれだけである。もう何かをこの先生に聞こうという気が全くなくなった。血液検査の結果をもらうことも忘れてしまった。

 帰りがけ、この医院があるビルのエレベーターに乗るとビル名と医師の名前が一致していることに気がついた。どうやらこのビルのオーナーさんらしい。そこそこ大きなJRの駅から徒歩30秒の好立地(痛風で足が腫れているときには10分の距離だったが・・・)。

 医者だからこのビルのオーナーになれたのか、ビルのオーナーだから医者になれたのか、どちらでもいいけど、こうした治療を見る限りこの国の医療システムはどうなっているんだと思わざるを得ない。間違いなく進歩ではなく退化に向かっている。

 そんな時だった。日頃大変お世話になっている東京大学医科学研究所の上昌広特任教授から1冊の本が届いた。上教授が書き下ろした最新本である。『医療詐欺』(講談社α新書、税抜840円)。


医療サービスには賢い受け方がある

 上教授には福島第一原子力発電所の事故直後に飯舘村で行った村民検診などにも同行させていただいたり(「福島を『聖地』にするか『廃墟』にするか 世界の頭脳と資金を被災地に~上昌広・東大教授の復興プラン」、「こんな美しい村をなくしていいのか! 菅野典雄・飯舘村長インタビュー」)、様々な医療改革の旗手をご紹介いただいている。歴史が大好きで物静か、非常に温和な先生なので、医療詐欺という本のタイトルには少し驚かされたものの、実際、本を読み始めると詐欺に近い日本の医療システムが浮き彫りになっている。

 プロローグ(まえがき)には「ほとんどの患者は医療サービスの賢い受け方を知らない」とある。まさに私のことではないか・・・。

 医療改革の本というと上から目線の難しいものが多いと決まったようなものだが、この本は違う。医療の素人が読んでも分かりやすい。例えば、「患者は医療サービスの賢い受け方を知らない」というケース。

 こういう設問の設定そのものがまず読者目線でなければできない。そのうえに上教授自らの実体験で説明されていて否応なく読者を惹きつける。さすがはメディア界に知己の多い上教授だと思った。

 その実例とはこうである。関西に住む98歳になる上教授のおばあさんが体調に異変を来たし、日頃かかりつけの医師に相談して大病院を紹介してもらおうとしたが見つからない。

 そこで、おばあさんを看護している上教授のお母さんは、大阪の大学病院に連絡して救急車を呼び40分かかっておばあさんを連れて行くが、そこで対応した宿直の若い医師は、「この程度なら近所の病院で診てもらって」とたらい回し、また40分かけて自宅に戻って来るはめになった。

 結局、お母さんは上教授に連絡して別の大きな病院に緊急入院することができ一大事にはならなかったが、なぜこのようなことが起こってしまうのか。上教授は日本の医療システムに対する大きな誤解があるからだと言う。

 例えば、こんな常識はないだろうか。国立病院では先端的な医療を提供し、地元の病院は開業医が手におえない治療の難しい患者がかけこむ場所である――。

 おそらく日本人のほとんどが当然のことだと思っているだろう。しかし、実態は真逆に近いと上教授は言う。「国立病院は軽症患者しか受け入れません。もっと正確に言えば、軽症患者しか受け入れることができないのです」。

 軽症患者しか受け入れられない。これには「そんなはずはないだろう。優秀な医師を集め、最先端の医療設備が整っている国立病院は先端医療の担い手でなければならない」と、誰しもが反論するかもしれない。

 しかし、国立がんセンター中央病院にも勤務したことがある上教授にすれば、国民に最先端医療を提供する場所ということの方が"非常識"に映る。上教授は国立がんセンターに勤務していたとき、重症患者が何度も門前払いされるのを見てきた。


国立病院に門前払いされる患者たち

 また、「『合併症が多い重症患者は受け入れるな』と医師たちに指示している上司の姿も何度も目にしてきました」と言う。

 なぜこのようなことが起きるのか。それは国立病院が重症患者の治療を目的として設立されているわけではないからだ。例えば国立がんセンターは、「新規治療の開発のための臨床研究の推進」を最大の目的として設立されているという。

 そのため、臨床研究に合致するような重症患者は受け入れるが、例えば合併症が多くて研究に不向きな患者さんは排除される。また体力の消耗が激しい患者も研究の対象外とされてしまう。

 つまり国立がんセンター(現在は国立がん研究センター)で診てもらえるのは、一握りの患者さんだけということになる。

 いくら研究のためとはいえ、病気で苦しんでいる患者を門前払いするのは医師として、人間として許されることではない。そう考える医師も中にはいるという。しかし、そのような態度を見せれば冷遇され、ほかの病院へ移らざるを得なくなるのだそうだ。

 なぜこのようなことが起きてしまうのか。それは日本の医療が、実は患者のためではなく身内、つまり医師や厚生労働省の役人にとっていいように設計され運用されているためである。

 例えば、保険診療と自由診療を組み合わせた混合診療を認めようという社会の要請に対し、日本医師会は頑なに反発を繰り返している。いまだに強い政治圧力を持っている日本医師会の反対によって実現できないでいる。

 混合診療を認めれば、医師は高額の治療費を受け取れる自由診療を優先し、日本の"世界に誇れる"国民皆保険制度が崩れてしまうというのが日本医師会の主張である。確かにその危険性はゼロではない。

 しかし、保険診療か自由診療かの選択を迫られ、金銭的理由から高度な治療を諦めざるを得ない状況の方がはるかに問題が大きい。

 上教授はこの問題について、極めてユニークな比喩を使って説明している。混合診療は飛行機のビジネスクラスのようなものだと言うのである。エコノミー席が大半でわずかなファーストクラスがあるのが現在の日本の医療システム。


ビジネスクラスの導入で格段に良くなる日本の医療システム

 ファーストクラスに乗れる人はごく一握りに限られ、航空会社は収益の大半をエコノミークラスに依存しなければならず、必死でコストダウンし超過勤務が当たり前のように働いても利益が出ない。

 実際、日本の看護師は米国の看護師に比べて8倍もの労働を強いられているという。それだけ働かせても病院は一向に利益が出ないのは、コストダウンだけでは経営は成り立たないためである。

 これに対し、混合診療、つまりビジネスクラスを作ることで航空会社は収益を安定させることができたように、病院もしっかりと利益を出せる。また航空会社がその利益を基に安全対策にも投資ができたように、病院も治療の安全性に力を入れられる。

 では、なぜビジネスクラスを作りたがらないか。それは、医師が競争を嫌っているからにほかならない。冒頭の私を診た医師が象徴しているように、競争のない社会は、何もしたくない人には大変心地良い。

 しかし、競争のない社会に進歩はないのもまた、冒頭の医師がからくも証明してくれている。増え続ける社会保障費がこの国にとって最も大きな負担となっているいま、効率的で世界最高水準の医療システムが求められている。

 努力なしに既得権益に守られただけのシステムはもういらないどころか、日本を沈没させてしまう。実は、競争が効率的で最先端の医療を実現している例がこの国にもある。公的医療保険の適用外である不妊治療の分野である。上教授は次のように書く。

 「不妊治療は公的医療保険の適用外ですので、お金の有無で患者に『格差』が生じます。厚労省や日本医師会の理屈で言えば、この『格差』を利用して、患者に不適切な治療を強いるようなアウトロー医師が増え、『安全』などと無縁な医療現場になっているはずですが、現実は違います」

 「実は日本の不妊治療技術は、世界でもトップレベルになっているのです」

 なぜか。それは競争があるからである。かつてのように良い医師を探すのが大変だった時代と違い、現代はインターネットの普及で、簡単に腕の良い医師を見つけることができる。

 そして、素晴らしい不妊治療を施している医師のもとには多くの患者が集まり満足度が上がれば治療費を高めに設定できる。その結果、優秀なスタッフを雇うことができ、最新の設備も導入できる。

 そして価格に見合う以上のサービスが提供できるようになり、さらに患者が増える。こうしてプラスのスパイラルが形成された結果、日本の不妊治療技術は世界トップレベルになったという。


競争原理が働く分野では世界の最先端に

 このような実例があるにもかかわらず、厚労省や日本医師会は、頑なにいままでのシステムを守り抜こうとする。もはやそうした行為は「医療詐欺」でしかない、と上教授は喝破するのである。

 この本には、古い医療システムを守ることに血道を上げている「医療ムラ」がどのようにして自分たちの身分を守っているか、その巧妙な手口が「不都合な真実」として14ほど挙げられている。

 その一つひとつがなるほどと思わせる。ここに紹介したのはごく一部である。国民の1人でも多くの人にぜひ読んでもらいたい一冊である。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43544.html
勤務環境改善システム指針案でパブコメ- 医療機関の取り組むべき事項示す
( 2014年08月15日 17:38 )キャリアブレイン

 医療機関の勤務環境を改善するための新たな仕組みが10月に始動するのを前に厚生労働省は、病院と診療所の管理者が取り組むべき事項を示した指針案に対するパブリックコメントを来月10日まで募集している。この仕組みは改正医療法に基づくもので、医療機関がPDCAサイクルを回しながらスタッフの勤務環境を自主的に改善する活動を促進する狙いがある。【丸山紀一朗】

 指針案は、同省の研究班がまとめた「勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き」のエッセンスを抽出したもの。医療機関の管理者が具体的に取り組む事項として、▽勤務環境改善活動を組織全体で実施することを改善方針として表明▽多様な職種から成る協議組織を設置▽勤務環境の現状を定量・定性的に把握▽一定期間に達成すべき到達点を明らかにした改善目標を設定-などを挙げた。

 さらに管理者は、改善目標を達成するため、▽具体的な実施事項や時期、手順などを定めた改善計画を作成▽改善計画を継続的に実施▽改善計画の終了後、その実施状況を評価し、次回の改善計画に反映-などに取り組むとした。また、指針案は、都道府県による勤務環境改善への支援を活用するよう管理者に求めた。



http://www.nippon.com/ja/in-depth/a03105/
特集 日中関係の現場で本当は何が起きているのか
心を尽くせば気持ちは必ず通じる
中国への日本式糖尿病医療輸出を通じて学んだこと

飯塚 陽子
[2014.08.15] Nippon,com in depth

日本式の糖尿病医療をセットで中国に持っていく——日中関係の険悪化で中断してしまったこのプロジェクトの中心となった医師が体験したのは、政治とは全く関係がない、治療を求める患者と医師の心の通った交流だった。

「糖尿病大国」中国の現実

 中国が、今や世界一の「糖尿病大国」であることをご存知でしょうか。生活習慣の変化などを背景に患者は急激に増加し、国際糖尿病連合によれば、有病数は9,240万人に達する(2010年)とされているのです。
 そんな中国において、2011年度に上海、12年度に杭州で実施された「日本式糖尿病診療サービス」調査研究事業に、私は提案・企画・医師として参加しました。経済産業省が主導する「医療サービス国際化推進事業」の一環として、日本の医師、看護師、栄養士、薬剤師などで構成される医療チームが企業とコンソーシアムを形成し、実際に中国現地の病院で患者の診察、治療に当たるというプロジェクトです。
 きっかけは、10年に中国から初めて講演に招かれ、併せて同国の医療現場を訪れたことでした。糖尿病治療に関して、それまで中国の目は欧米に向いていました。しかし、この病気は人種による違いの大きいことが一つの特徴です。私を呼んだのは、そのことに気づいて、アジアの中でも特に医療技術の進んだ日本に注目し始めたからだろうと思います。
 そこで見学した治療の実態には驚きました。日本では、糖尿病治療といえば、食事療法、運動療法、生活習慣の改善が基本。それでも数値が目標以下にならない場合に、初めて薬物療法・インスリン療法等が加わります。それらの各ステージで看護師、栄養士、薬剤師、それに医師などが適切な指導、教育を行いながら、患者のモチベーションを引出し・持続させる、患者中心のエンパワーメント「チーム医療」がスタンダードなのです。しかし、中国ではそうした発想はまったくなく、治療はあくまで医師のトップダウン、薬物療法が中心。しかも、薬物の用量が欧米並みで日本の約2-4倍と高く、患者側には低血糖が頻発していることから、不信感も芽を出していました。
 病院という「ハード」自体も、多くの問題を抱えています。中国のトップレベルの病院でさえ、音響を配慮した設計がされていなく、病院が大変騒々しく、また、一つの外来診察室で机を並べて、同じ部屋で4人の医師が同時に4人の外来患者を診るというのが現状でした。
 そうした状況を初めて知った私は、ただ話をするだけでなく、日中の医療交流を本格的に進めることで、「糖尿病大国」に日本の知見や技術を提供し、広めることはできないか、と痛感しました。思いが通じたのか、ちょうどそのタイミングで、経産省が日本の優れた医療を丸ごと輸出する、という公募事業をスタート。渡りに舟とばかりに手を挙げた、というわけです。

親身の診療に目の前で泣き出す患者

 第1回の上海への派遣は、11年の10月。市内の病院に「日本式糖尿病クリニック」を設置して、中国人糖尿病外来患者に対して医師による診療、看護師による糖尿病教室、栄養士による食事指導などを、無償で行いました。その効果は一目瞭然で、体重の減少のほか、血糖値、血圧や脂質など調べたすべての項目において改善が見られ、しかも我々の外来に受診回数の多い患者ほど、改善効果がより顕著である、という成果を上げることができました。
 ただ、そんな患者さんたちの反応は、私たちの予期しないものでした。例えば、私の診察の後、看護師や栄養士のところを回った患者さんの多くがわざわざ戻ってきて、「こんなにたくさんの方が、私一人のためにいろいろしてくれて、ありがとうございました」と頭を下げて、全員笑顔で帰っていくのです。反対に、目の前で切々と症状を訴えていた人が、突然涙をあふれさせたのにもびっくりしました。理由を尋ねると、「今まで、自分の話をこれほど親身になって聞いてもらったことはなかった」そうなのです。そんな患者さんたちの姿に驚き、感激して、「この信頼関係で好循環のチームに加わりたい」と話してくれた中国人の医療スタッフもいました。
 調査でも、「日本式」に対する患者さんの満足度は極めて高いものでした。症状の改善とも合わせ、チーム医療の理念、大切さを再確認することができたのです。

尖閣「反日デモ」でも現場は変わらない

 こうしてスタートは順風満帆に見えたプロジェクトでしたが、思わぬところで障害に見舞われることになってしまいました。12年に、尖閣諸島問題を契機に中国で起こった反日運動、反日デモの影響を、もろにかぶってしまったのです。
 実はこの年には、「日本式の糖尿病チーム医療」をより深く・より広く推進するため、上海では有償で取り組み、新たに広州にも展開させる計画でした。ところが、両方の病院は急遽NGに。恐らく、苦渋の決断だったのでしょう。
 一方、そうした状況にもかかわらず、新たに杭州から「ぜひ来てください」という強い要望がありました。私たちの側に、戸惑いの気持ちがまったくなかった、と言えば嘘になるでしょう。病院の上層部がゴーサインを出していたとしても、個々の患者さんのレベルでは、日中関係の悪化を反映して、特別な思いを抱いているかもしれません。プロジェクトメンバーは、そうした点にも細心の注意を払いながら、1年目以上に高いレベルのサービスを提供しよう、と決意を固めあって現地に向かいました。
 しかし、行ってみると、我々のそんな心配はまったくの杞憂に終わりました。患者さんたちは、上海の時と同じように「日本式」に満足し、心から感謝の言葉を述べてくださいました。病院関係者も、やはり日本のチーム医療の価値を認めて、「またぜひ来てほしい」と言ってくれたのです。また、我々が帰国後、杭州の病院は全職種において希望者を募集し、日本に研修に派遣するという方針を決めたということです。少なくとも、私が接した中国の患者さんや医療従事者に、国と国とのいさかいを気にしたり、それを理由に態度を変えたりする人は皆無でした。

80歳上海男性からの手紙で深めた確信

 2年間の中国でのプロジェクトを通じて私が最も学んだことは、医療の現場では、こちらが献身的に尽くせば、その気持ちはどんな相手にも必ず通じる、信頼関係が醸成できる、ということです。お互いの違い(文化・風習・理念等)を尊重し合い・認め合い、お互いの強みを活かし、より心が通い合えるような、よりwin-win効果が得られるような交流は、恐らく対中国人、アジア人に限らない、真の交流であり、「真理」なのだろうと思うのです。

上海の患者からの感謝の手紙

 私は80歳です。糖尿病にかかって30年になります。元々は糖尿病を大したものと思わず、自然の成り行きに任せていていいと思っていました。しかし、皆さんの指導を受けるようになってからは、毎日合理的な食生活・運動を継続するようになり、病状の改善が自覚でき、健康生活に対しても自信がもてるようになりました。日本と中国の合同外来に感謝いたします。皆さんが数カ月にわたり、疲れを知らずに中日両国の間で奔走されていることに対し敬意を表します。
 中日人民友好万歳!
     患者 ●●● 拝




 上海の病院で、我々の外来に5回通った80歳の男性が、最後の診察の時に渡してくれた手紙を紹介しましょう。この方は、それまで、「あれも食べるな、これも食べるな」と言われ、気分は沈み、半ば鬱(うつ)のような状態だったそうです。それが、我々の「カロリーとバランスに注意すれば、食べても大丈夫」という指導を受けることにより、症状も改善に向かい、糖尿病に前向きに向き合う気持ちが生まれました。手紙を読んで、我々のやっていることは、ただ症状を改善させるだけではなく、人の人生も変えることができるのだと感激し、あらためて確信を深めることができました。

「国と国」を超えて、日中医療交流に貢献したい

 実は私は、父が中国人、母が日本人のハーフで、16歳まで中国で暮らしていました。そうした生い立ちからも、日本で学んだ知識や技術をベースにした日中の医療交流を推進することが、長年の夢であり、私自身に課せられた使命だと思っています。
 人口が減少する日本では、「日本式」の優れた医療を受ける人たちも減っていきます。これを輸出することは、他国の人たちの健康に貢献するためだけでなく、人類共通の財産で、限られた資源である技術の維持、発展のためにも有意義なことだと考えます。
 残念ながら、経産省の中国向けのプロジェクトは、2年間で休止を余儀なくされました。でも、「ぜひ来てほしい」という病院は、今でもたくさんあります。何らかの形で再開できるよう、これからも努力を続けたいと思っています。
 できれば、今後中国とは、糖尿病を軸とした予防、診断、治療のネットワークを確立したい。また、臨床だけでなく、教育、研究の協力拠点を構築していきたい。さらに、糖尿病分野のみならず、日本の優れた医療技術におけるあらゆる分野での協力体制の構築を目指していきたい。それが私の目標です。
(構成・南山武志、写真・コデラケイ)



http://www.m3.com/iryoIshin/article/241768/?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD140815&dcf_doctor=true&mc.l=56647963
改めて問う専門医制度改革の意義
専門医改革は「医療界の失敗の後始末」◆Vol.1
診療領域の細分化、専門医の乱立が問題に

2014年8月15日(金) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 2017年度からスタートする専門医制度改革は、「第三者機関による専門医の評価・認定の実施」と、「19番目の基本領域の専門医として総合診療専門医の創設」の二つが柱だ。
 総合診療専門医の座談会に続き(『総合診療専門医、今まさに創設へ』を参照)、第二弾として、日本専門医機構理事長の池田康夫氏、日本外科学会理事長の國土典宏氏、日本脳神経外科学会理事長の嘉山孝正氏による座談会を企画した。國土氏と嘉山氏は、学会の立場から提言、池田氏とともに、専門医制度改革の成否を左右するキーパーソンだ(『「学会外し」の専門医制度、73学会が覆す』を参照)。
 3氏に、専門医制度改革の意義や目指すべき方向性について、語ってもらった(2014年7月5日に座談会を実施。計7回の連載。写真:的野弘路)。

――専門医制度改革がなぜ今、必要かという点から、改めてご意見をお聞かせください。

池田 日本の専門医制度の歴史は、米国と比べれば浅いのですが、これまで各領域の学会が非常に努力をされ、いい制度を作り、質の高い専門医を育成してきたと思います。この点は、疑いのない事実です。

 ただ、2002年度に厚生労働省が専門医の広告を可能とする学会の外形基準をまとめ、その基準を満たしている学会が認定する専門医は広告が可能になったため、その前後からさまざまな学会が専門医制度を作る動きが出てきました。その結果、学会の数と同じくらいの専門医ができてしまい、「専門医制度の乱立」のような状況になり、学会による差も生じてきた。非常に長い歴史を持ち、きちんと制度設計がなされている専門医制度がある一方、そうでない専門医制度もあります。非常に質が高い専門医と、あまり質が高くない専門医のいずれも、「専門医」と名乗ることは、日本の医療にとって大きな問題です。そこで、もう少し標準化しようという動きになってきたわけです。

 つまり、専門医をどのように定義し、その質を上げるためには、何をすべきかが問われる状況になってきたことが、一番大きいと思います。

 では、そもそも専門医制度はなぜ必要か。第一は、医師自身のキャリア形成のためであり、自分の専門領域については、責任を持って患者さんを診ることができるようにするために、専門医制度は非常に大事です。それだけのキャリアを積んだのであれば、世の中に知ってもらう必要もあります。一方、患者さんの側から見ると、受診に役立つ専門医制度でなければいけません。これらの面から見たときに、日本全体として、必ずしも満足できる専門医制度になっていないのが現状です。この点は、(日本専門医機構の前身の)日本専門医制評価・認定機構の時代から、私は懸念していました。

 さらに、日本の医療の質は、諸外国と比べて決して劣るものではなく、むしろ誇るべき領域はたくさんありますが、さまざまな意味で曲がり角に来ていると思います。長い歴史の中で、今のこの時期に、もう一度、医療提供体制を見直す必要が出てきたのではないか。この機に専門医制度を整備することによって、日本の医療の質の向上や、医療提供体制の改革を進めることができると考え、改革に取り組んでいるわけです。恐らく、この点は各領域の学会の先生方も、それぞれ意識されていると私自身は思っています。

嘉山 専門医制度の改革は、時代の要請だけでなく、「大学院の重点化」という、我々医療界の失敗の後始末の意味もあると考えています。1990年代に、東京大学をはじめとして、米国と同様に、大学院重点化を進めると同時に、昔の「ナンバー内科」が、腎臓内科、肝臓内科などに分かれるなど、各診療領域も細分化してしまった。それに伴い、教授の数も、また大学に入る運営費交付金も非常に増えました。東大が始めたために、他の旧帝大がそれに倣い、他の大学にも広がっていった。

 大学院については、米国に負けない研究を進めるためにも、専門領域の細分化はいいのでしょう。その方が論文を出しやすい現実もあります。しかし、それを医学教育や、卒後の研修、専門医研修にも当てはめてしまったために、問題が生じてきたのです。例えば、腹痛にしても、さまざまな原因がありますが、教育研修が細分化されると、横断的な見方ができなくなる上、日本の医師を育ててきた「屋根瓦方式」の研修もやりにくくなる。私は当時、こうした細分化の流れに大反対しました。

 それが現実となって現れたのが、当直体制です。内科系の医師が当直していても、腎臓内科の専門医であれば、肝臓に問題があり、黄疸がある患者が来ても対応できない場合が出てくる。これでは、国民から期待されている当直医、医師の姿からかけ離れてしまう。

 専門医は、神の手を持つ「スーパードクター」ではありません。患者さんの全身状態を診て、自分の専門領域であれば治療し、専門外であれば適切な医師に紹介できる能力を持つ。それが専門医です。しかし、細分化により、その機能が失われ、全身状態を見ることができない医師があまりにも増えてきた。そのため、専門医制度全体を見直す必要が出てきたわけです。今度、新たに誕生する総合診療専門医は、その意味で、原点に戻っているだけであって、本来は大講座制のままでやっていれば、必要はなかったはずです。

池田 その意味から言えば、私自身が内科ですが、日本内科学会の責任は結構、いや非常に大きい。

嘉山 外科では、術後の全身状態管理のために、循環動態や呼吸管理などの勉強が必要になる。だから外科は、細分化されたけれども、そのダメージはまだ小さい。それでも、脳神経外科でも、「下垂体手術しかしない」医師もいます。善し悪しの問題ではなく、東京なら成り立つのかもしれませんが、地方では絶対に無理です。

――各基本領域の専門医については、「裾野の広さ」が求められる。

池田 その意味では、小児科の先生方は、「小児領域の総合診療医」という意識をかなりしっかり持って、専門医制度を作っています。一方、内科は、早くサブスペシャリティの専門医研修に入れるよう、初期臨床研修終了後1年の内科研修で受験でき、認定内科医となれる仕組みを作ったために、大きな問題を抱えていることは事実です。しかし、ここに来て内科も、「総合的に診ることができる内科医」を養成してから、サブスペシャリティに進むという方向に大きく舵を切りました。これは非常に大きな変革です。

――國土先生、外科の立場からいかがでしょうか。

國土 専門医制度を改革する必要性については、池田先生と意見は全く一緒です。私自身のケースですが、基本領域の外科のほか、サブスペシャリティの消化器外科、消化器病、肝臓専門医など、計5つの専門医と5つの指導医を持っています。これらを維持するだけでも大変であり、お金もかかります。なぜこれだけの数の専門医が必要かという問題意識を持ち、何とか整理すべきだと私も思っていました。

 また中小の学会にとっては、学会を活性化したり、学会の経営状況を良くするために、専門医制度を作ることは、一つの手っ取り早い方法であることも事実です。しかし、これでは国民から見ても、専門医を取得する医師から見ても、本末転倒です。こうした状況は何とかしなければいけないとも考えていました。したがって、医療の質を向上させるためにも、第三者機関が認定する専門医制度の確立には、大いに賛成しています。

 しかし、厚労省の「専門医の在り方に関する検討会」の議論を見ていると、専門医を取得する医師にとってどんなメリットがあるのか、という議論が全く抜け落ちていたのです。

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図1 國土典宏氏は、外科専門医をベースに、計5つの専門医を取得(提供:國土氏)

池田 そうですね。

國土 「それはおかしい」と、私は議論の途中で声を上げた。結果的に検討会の最終報告書には、その視点も加えられました。国民のためだけでなく、専門医を取得する医師のためにも、いい制度でないと、成り立ちません。「Win-Win」という視点で、検討を進めるべきだと思っています。それは結局、「学会も、(日本専門医機構の)社員になるべき」という議論にもつながっていきます(『「学会外し」の専門医制度、73学会が覆す』を参照)。

 「専門医を取得する医師にとってのインセティブは、あまり要求しない方がいい」とさまざまな方からアドバイスを受けたので、今は表立っては言いません。しかし、最終的にはそれを目指すべきだと思います。それが専門医の側から見た一つの目標です。同時に、一人の医師にとって2つか、3つの専門医を取得すれば済む、専門医制度にしてもらいたいと思っています。

嘉山 その関連で言えば、日本脳神経外科学会では、先輩方が関連学会が専門医制度を作ることを検討していた頃、「多すぎる」と抑えたのです。関連学会に、専門医を作らせなかった。私の専門は、脳腫瘍と脳卒中ですが、日本脳腫瘍学会では専門医制度を作りませんでした。日本脳神経血管内治療学会や日本脊髄脊椎病学会は、整形外科と放射線科の領域とも重なる学会でもあり、専門医制度を作りましたが、今後の検討事項です。

 例えば、肝胆膵、あるは血液内科であれば、一生続くテーマを扱います。しかし、血管内治療、あるいは超音波などの学会は、方法論の学会であり、時代によって、より優れた機器や方法論が出てくれば、廃れてしまう。これらは、自己研さんを目指す学会であるべきです。



http://www.m3.com/news/GENERAL/2014/8/15/242287/?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD140815&dcf_doctor=true&mc.l=56648117
宮城県が全市町村のがん受診率一覧を公表 予防や早期治療に役立てる目的で
河北新報 2014年8月15日(金) 配信

 県はがんの予防や早期治療に役立てようと、2012年度の市町村がん検診の受診率一覧表を作成した。市町村の受診率を比較した一覧を作ったのは初めてで、県疾病・感染症対策室のホームページで公表している。

 厚生労働省が毎年公表する受診率は分母となる対象者数の基準が市町村間で異なり、これまで比較できなかった。県は今回、同一基準の推計対象者数を求め、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸(けい)がんの男女別受診率を算出した。

 このうち男性の肺がん検診受診率はトップの登米市が89.81%で、最低は南三陸町の16.74%だった。乳がんでは富谷町が57.29%に対し、山元町が22.20%、子宮頸がんでも富谷町が72.57%、名取市が12.92%と開きがあった。

 県はがん検診の自己負担が無料の自治体ほど受診率が高く、受診希望者が申込票を請求しなければならない自治体は低い傾向があると分析している。広報の方法などによっても、受診率に開きが生じるとみている。

 県疾病・感染症対策室の担当者は「比較表を参考に、各市町村は受診率向上に努めてほしい」と話した。


  1. 2014/08/16(土) 09:07:21|
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