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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月30日 

http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/238050/?category=research
東北の医学部新設、1校選定に至らず
遠藤座長「文科相発言、議事に影響せず」

2014年7月30日 橋本佳子(m3.com編集長)

 文部科学省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」(座長:遠藤久夫・学習院大学経済学部長)の第4回会議が7月30日に非公開で開催され、会議後、記者会見した遠藤座長は、3校の候補から1校を選定する議論をしたものの、「決定には至らなかった」と説明した。

 その理由として、各委員の選定の視点に相違があるため、3校のうちいずれを推すかが異なる点を挙げた。下村博文文科相が、7月19日の福島県郡山市での講演、および22日の閣議後の記者会見で、最終決定が1~2カ月ずれ込む可能性を示唆したこととの関係を問われた遠藤座長は、「大臣発言があったために、議事の運営を変えたことは一切ない」と否定。遠藤氏は、前回の第3回会議では、早ければ今回の会議で決まる可能性を示唆していたが、その後に何らかの状況の変化があったわけではないとし、「委員の間で、意見の統一が見られなかった」と繰り返した(『7月末にも新設医学部構想選定、文科省構想審査会』を参照)。

 次回会議の予定について、文部科学省高等教育局医学教育課長の袖山禎之氏は、「まだ調整中だが、メドとしては8月下旬に調整できればと考えている」と説明。遠藤座長は、「見通しははっきりしないが、私としては議論を尽くして、委員が納得する形で、できるだけ早く決めたいと思っている」と述べるにとどまり、次回会議で決定できる見通しか否かについては明言を避けた。


 1校選定も「条件付き」の可能性

 第4回会議には、12人の委員中、10人が出席。当初2時間の予定だったが、2時間30分に及んだ。前回までのヒアリングの結果を受け、文科省が論点整理を行い、それを基に議論した。

 遠藤座長は、「各構想について相当突っ込んだ議論を行い、論点は明確になった。どの構想も、よい面と不十分な面があった」としたものの、「不十分な面」の具体的な内容については、個別の構想に関係するため、明らかにはできないとした。「まだ議論の途中なので、最終的には分からないが、1校を選定する際、不十分な点については、何らかの条件が付くという印象」(遠藤座長)。ただ、「1校も選定しない」事態にはならない見通しだ(『東北の医学部新設、「現時点でダメな候補なし」』を参照)。

 第4回会議の議論では、(1)東北地方が抱えている課題の解決に向けて、各構想が適切かどうかという視点、(2)構想実現のための実行可能性――という点から、主に議論が行われた。委員の意見がまとまらなかったのは、例えば、実行可能性として財政上の問題を重視する意見もあれば、東北地方の医療に資するかどうかを重視するなど、委員によって選定する際に重視するポイントが異なるからだという。「これまでは会議の前半にヒアリングを行い、後半に議論をしていた。会議の最初から3つの構想について議論したのは、今回が初めてであり、思いのほか、いろいろな議論があった」(遠藤座長)。

 「今日の議論で、各委員がどんな意見を持っているのかが分かったので、それを踏まえて次回会議で議論を深めていく」と遠藤座長は語る。話し合いで1校に絞ることを目指すが、それが難しい場合には、例えば複数の評価指標を作り、各構想について点数を付け、合計点数で選定するといった選考方法も考え得るという。

 なお、袖山課長は、下村文科相の発言について、「2016年4月の開学であれば、(当初予定していた)27年4月の開学に比べて、若干スケジュールに余裕があるので、拙速に決めるのではなく、議論を尽くしてほしいという趣旨で発言したと理解している」との見解を示した。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43402.html
東北医学部新設、結論出ず- 次回審査会は早くて来月下旬
( 2014年07月30日 21:31 )キャリアブレイン

 文部科学省の構想審査会(座長=遠藤久夫・学習院大経済学部長)は30日、4回目の会合を開いた。東北地方の医学部新設に応募のあった3陣営から1つに絞るための議論を行ったが、結論は出なかった。前回会合後、遠藤座長はこの日にも選定する意向を示していた。同省の担当者によると、次回会合は早くて来月下旬という。【丸山紀一朗】

※「解説・東北医学部新設、選ばれるのはどこか」はこちらをクリック。

 新設を申請しているのは、脳神経疾患研究所(福島県郡山市)、東北薬科大(仙台市青葉区)、宮城県。選定時期をめぐっては、15日の前回会合後に遠藤座長が、「あまり時間をいつまで取っても(どうか)と思う」などと述べ、30日の選定に意欲を示したが、下村博文文科相が22日、3陣営の準備の進み具合を見極めるとして、「1、2か月は最終決定が延びるかもしれない」と発言していた。

 30日の会合後、遠藤座長は記者団の取材に応じ、「きょうは結論には至らなかったが、各構想について相当突っ込んだ議論がなされた」と述べた上で、どの構想にもいい面と不十分な面があり、「不十分な点への対応をどのように担保するか。言ってみれば、選定に当たっての条件を付す必要もある」とした。

 また、結論が出なかった理由について、「思いのほか、いろいろな意見が出て、委員間で意見の統一がなされなかった。大臣の発言は無関係だ」と強調した。議論の進み具合を聞かれ、「9合目まで来たかと思ったら、7合目だったということもあり得るので難しい」とも発言。選定時期については、できるだけ速やかに決めたい考えを繰り返し示した。



http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014073000810
東北医学部、決定は来月以降=意見分かれ決まらず-文科省
(2014/07/30-18:46)時事通信

 東北地方に新設する大学医学部について審査する文部科学省の有識者会議は30日、構想の実現可能性などを巡り意見が分かれたとして、決定が来月以降になると発表した。当初は今月末にも応募した3校から1校を選ぶ予定だった。
 座長の遠藤久夫学習院大教授は「できるだけ早く決めたいが、委員の評価が異なり、十分議論することにした」と説明。「それぞれ不十分な点もあり、決定に際し条件を付ける可能性もある」と話した。次回は8月下旬以降になるという。
 医学部新設を申請しているのは福島県郡山市の脳神経疾患研究所、東北薬科大(仙台市)、宮城県の3団体。いずれも2016年春開学を目指している。



http://www.oita-press.co.jp/1010000000/2014/07/30/001916690
医師不足解消へ「研修会」 へき地医療肌で感じて
7月30日 大分合同新聞朝刊

 医学生がへき地の医療現場で体験学習をする「地域医療研修会」が実施され、学生たちが29日、県内の山村や漁村の医療機関で実習。地域医療の現状を学んだ。県によると、今夏の参加者は過去最高の70人。関係者は「医師不足の解消、地域医療の充実につながってほしい」と期待を込めた。

 研修会は学生たちにへき地医療への関心を高めてもらおうと、県が毎年企画。近年は自治医科大の県出身者と大分大学医学部に地域枠で入学した学生が参加している。地域枠は奨学金を貸与する代わりに卒業後の7~9年間、地域医療に携わってもらおうと、県と大分大が2007年度から設けた制度。09、10両年度に枠が拡大され、研修への参加も昨年より10人増えた。
 70人のうち、1班の25人は28日から、2班の45人は8月18日から、それぞれ2泊3日の日程で県内のへき地診療所やへき地医療拠点病院で診療を見学したり、往診に立ち会ったりする。
 佐伯市米水津の市米水津診療所(伊藤祐司所長)では、大分大学医学部3年の浜野朋恵さんと角沖史野さんが研修していた。伊藤所長や非常勤の伊藤威之医師は外来患者と笑顔で会話を交わし、学生2人に「地域の文化や食習慣、風習などを理解し、患者一人一人とじっくり向き合うことが大切」と伝えた。
 浜野さんは「医師が地域に根付いていることを肌で感じた」。角沖さんは「患者との接し方や検査の仕方などが大学病院とは違い、新鮮に感じた」と話した。
 県医療政策課によると、県内の医師数は人口10万人当たり256・5人と全国平均(226・5人)を上回っている。しかし、医療圏別で見ると医師は東部(別府、杵築、国東各市と姫島村、日出町)と中部(大分、臼杵、津久見、由布各市)に約8割が集中しているため、それ以外の南部、豊肥、西部、北部では全国平均を下回っている。
 高窪修課長は「地方に住んでいても一定の医療サービスが受けられるよう、医師の確保、養成に努めたい」と話した。



http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/237998/?category=report
安達中医協委員、退任であいさつ
「偏りや恣意性がないエビデンスで議論を」

2014年7月30日 橋本佳子(m3.com編集長)

 7月30日の中央社会保険医療協議会総会(会長:森田朗・国立社会保障・人口問題研究所所長)で、この日で委員を退任する安達秀樹氏(京都府医師会副会長)が最後にあいさつし、「偏りや恣意性、過不足がないエビデンス」を基に、議論を行う重要性を訴えた。安達氏に代わり中医協委員に就任するのは、日医常任理事の松本純一氏(『中医協委員、日医推薦は安達氏から松本氏に交代』を参照)。


 安達氏は、民主党政権誕生直後の2009年10月に、嘉山孝正氏(現山形大学学長特別補佐)とともに、中医協委員に就任。中医協委員の任期は最大で3期6年だが、任期途中で交代する。安達氏は、「あの政権交代の混乱の中で、就任した時のことが、相当昔のように感じる。決して短い4年9月ではなかった」と振り返り、中医協委員として「エビデンスベースで、公明正大な議論を行うこと」を常に心がけてきたと説明。「私と同じ時期に就任し、昨年秋に退任された嘉山孝正委員は、業界での立ち位置は相当違うものの、全く同じ考えを持っていることを、お互いに確認しながら、主張してきた」(安達氏)。

 「エビデンスベース」での議論は、大変難しく、面倒であることも事実。「検討事案について出されるエビデンスが、偏りや恣意性がない、そして過不足のないデータでなければ、本当の意味でのエビデンスベースの議論にならない。偏りや恣意性のあるエビデンスで議論をすると、エビデンスベースに名を借りた、政策誘導につながる」。安達氏はこう釘を刺すと同時に、エビデンスを基にした議論が中医協で定着しつつあるとの認識を示した。

 安達氏は、1号、2号、公益側の委員、専門委員、参考人のほか、事務局を務めた厚生労働省職員に感謝の言葉を述べるとともに、エビデンスベースの議論を継続していくよう求め、あいさつを終えた。

 安達氏に対しては、森田会長と厚労省保険局長の唐澤剛氏がそれぞれ労いの言葉を述べた。当初は公益側委員、後に会長として安達氏と中医協に臨んできた森田会長は、「特に基本的な問題について、鋭い指摘があり、司会の立場としては困ったこともあるが、制度の在り方を根本的に見直す意味では大変勉強になった」と安達氏の功績をたたえた。



http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20140730011110001.html
水曜「生きる」【けんこう処方箋】
「家庭医=専門医」の時代に 草場鉄周

朝日新聞 2014年07月30日

●北海道家庭医療学センター理事長・草場鉄周 

 今回は、家庭医療の担い手である家庭医について語る。

 日本の医療には専門医制度があり、脳外科や皮膚科など、各専門領域の学会がそれぞれの専門医の養成を担ってきた。

 家庭医については、日本プライマリ・ケア連合学会が専門医としての家庭医である「家庭医療専門医」を養成してきたが、その数はまだ400人弱で、広く日本のプライマリ・ケアを担っているとは言いがたい。

 これまでは開業医、または中小病院の医師が日本各地でその役割を担ってきたし、現に今もそうである。

 と言うのも、日本ではほとんどの医師が家庭医以外の専門領域を何年か専攻した後に開業し、プライマリ・ケアを提供するのが一般的だった。家庭医療が一つの分野として認識されてこなかったのだ。

 だから、家庭医を専門医として捉える風土は日本にはほとんどなく、「医師なら誰でもそれなりの年数働けばできる医療、誰でも家庭医になれる」という理解が普通だった。

 しかし、社会保障制度が複雑になり、医療の専門分化が進むなかで、家庭医療が果たす役割の広範さ、それを担う質の高い家庭医の養成の必要性が先進諸国で急速に認知された。現在、ほとんどの先進国で制度としての家庭医療が定着し、家庭医も医師の20~50%程度を占め、国民に広く認知されていると言ってよい。

 ところが、日本では「全ての医師が家庭医としての能力を持ち、さらに細かな専門分野を持てばよい」と語る人も少なくない。

 確かにそうなれば、わざわざ医師を選ぶ必要がなく便利だろう。しかし、国民が求める質の高い医療を提供するために、医師には経験と生涯学習が必要だ。

 医師も一人の人間である。家族との時間や余暇を楽しみつつ、仕事に力を注ぐためには、選択と集中が必要だ。家庭医と他の専門医の連携がしっかり担保されていれば、家庭医が最初に患者の健康問題に幅広く対応するのが最も効率が良く、他の専門医の専門性を高めることにも役立つ。

 ここ十年、家庭医という専門医をめざす若手が少しずつ増えてきた。医学生のころから志す者も少なくない。7月現在でまだ387人しかいない家庭医療専門医だが、彼らは3年間の専門研修を受け、専門医の誇りを持って全国でプライマリ・ケアを実践している。

 かくいう私もその一人である。次は、私自身の学びと成長を通して家庭医という選択の実際を語る。



http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/237327/?category=interview
世界の医療の常識を作るコクラン-森臨太郎・コクラン共同計画日本支部長に聞く◆Vol.1
臨床研究を統計学的に統合、100カ国以上に浸透

2014年7月30日 聞き手・まとめ:池田宏之(m3.com編集部)

 臨床研究のシステマティック・レビューで世界中に「Evidence-based Medicine」を広めてきたコクラン共同計画が2014年5月に、日本支部を設立した。1992年に英国で始まったコクラン共同計画が、欧米やアジア各国に広がる中、日本には20年以上経過してようやく支部ができたことになる。日本支部設立の狙いや、日本の臨床研究や医療の在り方の影響について、コクラン共同計画日本支部の森臨太郎支部長(国立成育医療研究センター政策科学研究部長)に聞いた(2014年6月24日にインタビュー。4回の連載)。

――コクランについて簡単に教えてください。

 コクラン共同計画は20年と少し経過しましたが、コクランのシステマティック・レビューの作成が一番の役目です。システマティック・レビューを開発したのは、コクラン共同計画と言われていて、システマティック・レビューのゴールデンスタンダードになっています。欧米でメジャーな存在になったのは、「EBM=コクランのシステマティック・レビュー」といったイメージが根付いたことがあります。

 コクランシステマティック・レビューは、簡単に言うと、診療課題に対する臨床研究を網羅的に探し出し、研究の質を評価した上で、統計学的にメタ解析することです。権威者が方針を示すのでなく、「エビデンスに基づいて医療従事者や患者が、情報共有して意思決定していく」という新しい考え方提示して、根付かせたのが功績です。システマティック・レビューを集めたものが、コクラン・ライブラリーになります。


コクラン共同計画日本支部の森臨太郎支部長は、コクランがメーカーからの直接資金を受けない中立性を強調する。
――コクランは、どれくらい広がっているのでしょうか。

 現在、100カ国以上で2万8000人以上の人が、コクラン共同計画に貢献しています。アジアでは、中国とオーストラリアにセンターがあり、香港、タイ、シンガポール、韓国、マレーシアに支部があります。さらに、台湾とインドネシアにも支部設立が計画されています。支部とセンターは、ほとんど差がなく、今後区分がなくなっていく方向です。

――対象は、医療品や医療機器の臨床研究になるのでしょうか。

 医薬品が多かったのは事実ですが、両者に加えて、ケアの方法や医療政策も対象に入ってきましたし、今では「ガイドラインは効果があるのか」といったテーマにも取り組んでいます。

――信用度の低い研究は、解析対象から外れるとの話ですが、どのようなロジックになっているのでしょうか。

 臨床試験の研究デザインなど、多様な側面から、「研究の質」を体系的に評価します。現在得られている知見から、大きく結果が違うからといって、対象から外すことはしません。資金の提供元についても、例えば製薬会社の資金が多く入って、色が強ければ、明示はしますが、あくまで客観的に「研究の質」を評価します。

――極端な結果はうまく“無視”できるのでしょうか。

 はい。一つひとつの研究結果がずれているようでも、世界全体で見ると、そこまでずれは発生しません。「とてつもなく巨大な臨床研究を1回やれば済む」という意見もありますが、結局、研究をした際の条件に左右されます。複数の研究を統計解析して、同じ方向を向いているというのが、大切なエビデンスです。

――アジア人対象、欧米人対象といった、人種なども、解析する上で問題になるのでしょうか。

 人種間で差がある薬は非常にまれで、そのようなエビデンスもごくわずかです、むしろ、国が持つ医療制度だったり、経済的な発展度合いが、臨床試験の背景も研究に影響しますので、人種を評価できるかは疑問です。

――テーマはどのように決まるのですか。

 コクランに参加する研究者がレビューのテーマを決めて、手を挙げます。本部で、テーマが、他に実施中の案件や既存のテーマと重ならないかどうかや、重要性を見極めて、許可していくシステムです。

――運営はボランティアなのでしょうか。

 医薬品医や療機器メーカーからの資金を受け取らない方針になっていて、ほとんどが公的資金です。病院がコクランと契約して受け取るライセンスフィーもありますし、英国、カナダ、オーストラリアといった国では、政府がかなり支援しています。

 レビューの著者は、学術ボランティアの側面もありますが、学術論文として認められるインセンティブもあります。WHOとは、公式提携パートナーになっているので、ボランティアの団体というより、かなり公的な存在になってきていると思います。その意味で、参加者は「公的財産を提供する」といったイメージで参加している部分があると思います。

――欧米で広まったのは、製薬会社の資金のような問題を抱えていたからでしょうか。

 製薬会社の資金や出版バイアスの問題など、不正の歴史は長いです。その中で、信頼できる情報としてみなされた部分があると思います。

――レビューの書き方などで、コクランの弱点はありますか。

 論文は、かなり定型化されていて、決まった項目を淡々と書いていくもので、比較的書きやすいです。一方で、タイトル登録から論文完成までに、長い時間(9カ月から12カ月)がかかります。また、資金が豊富ではないので、分野によってはレビューの完成まで時間がかかったり、タイトル登録しようと思っても、本部の体制が脆弱で受けてもらえないケースがあります。分野の充実は、コクランとしてのこれからの課題だと思います。

――医師には、エビデンス以外にも、経験知があります。患者が持つバックグラウンドも千差万別です。一見すると、「経験知が排除されるのでは」という疑問が浮かびます。

 確かに、若い世代を見ていると「エビデンス原理主義者」のような医師がいるのも事実です。ただコクランとしては、経験知は否定しませんし、エビデンスという意味では、当然ですがペニシリンについての臨床研究はありません。臨床研究は、分からないことに対して実施するものであって、「エビデンスがない」治療を全て排除すれば、医療は成り立ちません。

 実際にレビューを書けば、エビデンスの限界と重要性、付き合う距離感が分かると思いますので、著者の増加に期待しています。コクランの示すエビデンスと逆をいく診療が、医師個人の判断として実施されることを、否定するものではありません。

――コクランのレビューを見て、ご自身の診療の常識が覆されたことはありますか。

 基本的にありません。コクランの提供する情報は、常識的なものが多いです。



http://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=43389
後発品銘柄、医師の6割「薬局に任せる」- 民間調査
( 2014年07月30日 10:00 )キャリアブレイン

 後発医薬品を院外処方する際、銘柄の選定について応需薬局と「話し合いをせず任せる」と回答した診療所の医師は6割に上ることが、民間の調査で分かった。「薬局へ薬剤銘柄の指示をする」は5%にとどまった。【丸山紀一朗】

 また、先発医薬品メーカーからの許諾を得て、先発品と同じ製法や添加物で造られた後発医薬品「オーソライズドジェネリック」(AG品)について、「内容まで知っている」「名称程度は知っている」と答えた薬局薬剤師は96%に上った。しかし、このうち、通常の後発医薬品とは異なるという点を、患者に「全く説明していない」「ほとんど説明していない」が合わせて6割だった。

 一方でAG品は、後発医薬品について不安や不信感を持っている医師の理解を得られやすいと感じている薬局薬剤師が、全体の8割だった。その理由として、「成分も添加物も同じであれば不安材料は減る」「副作用の問題や適応症の有無、安定供給に対して説得力がある」といった点を挙げた回答が多かった。

 調査は今月、開業医と診療所の勤務医205人と薬局薬剤師215人を対象に、経営コンサルティング会社「ネグジット総研」と医薬品市場調査会社「エス・マックス」が共同で実施した。



http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/237997/?category=report
「患者紹介で対価」、今改定以降減ったのか?
「同一建物への訪問診療」への締め付け、影響調査

2014年7月30日 橋本佳子(m3.com編集長)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:森田朗・国立社会保障・人口問題研究所所長)は7月30日、2014年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査のうち、「同一建物同一日の訪問診療等の適正化による影響調査」の調査案を、一部修正を前提に了承した(資料は、厚労省のホームページに掲載)。8月に調査票を送付する予定。

 調査は、医科医療機関、訪問看護、歯科医療機関、薬局、集合住宅の計5区分で実施。医科医療機関の調査対象は、(1)在宅療養支援診療所(1500施設)、(2)在宅療養支援病院(500施設)、(3)在宅時医学総合管理料または特定施設入居時等医学総合管理料の届け出施設(500施設程度、(1)と(2)を除く)。2014年度診療報酬改定で、「同一建物同一日の訪問診療」が大幅に減額され、現場の影響が多いことから、本調査は他の特別調査に先駆けて実施することになっていた(『訪問診療の減額の影響、優先的に調査』を参照)。

 医科医療機関用の調査票は、委員から回収率の低さへの懸念も出るほど、非常に詳細な内容だ。「2014年度改定で、事業者等から、医療機関へ患者を紹介する対価として経済上の利益の提供を求める契約の申し出が減った」「事業者から、患者の紹介を受ける対価として、医療機関が経済上の利益を提供する契約を交わしたことがあるか」なども聞くため、匿名での回答を求める。

 改定の訪問診療への影響に関しては、(1)改定前後の訪問診療の変化(2014年3月と7月の比較。同一建物およびそれ以外の訪問診療件数など)、(2)8月の特定の1日で、「同一居住施設で、最も多くの患者を診察した日」等の訪問患者全員の訪問実績(各戸の訪問前の場所と後の行き先、滞在時間、訪問診療を行っている理由など)、(3)(2)のうち患者4人の実態(要介護度や病名、実施している医療の内容など)――などについて調査する。


 厚労省の調査票案に対しては、細かい点で幾つか疑義が呈せられた。日本医師会副会長の中川俊男氏が、指摘した一つが、(2)の「特定の1日」の期間。厚労省案は「8月18日から8月24日のうち」と限定していたが、医療機関がより回答しやすいよう対象期間を広げるよう要望。

 また患者4人の実態調査は、厚労省案では(2)で回答した「特定の1日」の訪問実績のうち、「同一居住施設」2人、「同一居住施設以外」2人の計4人に関する調査を想定していた。ただし、当該日に「同一居住施設以外」への訪問診療がないことも想定されるため、中川氏は、それ以外の実績も回答できるよう変更すべきとした。調査の趣旨が、「同一居住施設か否かで患者像が異なるか否か」を把握するのが目的であり、訪問診療の日が同一であるか否かは関係ないからだ。さらに、中川氏は、患者4人の実態調査について、「医療機関は重症の患者を選ぶ傾向にある」と指摘、こうした偏りが生じない対応を求めた。

 プライマリ・ケアの在り方、2015年度に結論

 そのほか、7月30日の中医協では、政府が6月24日に閣議決定した、「経済財政運営と改革の基本方針2014」「日本再興戦略」改訂2014、「規制改革実施計画」に関する中医協での検討スケジュールが提示された。

  具体的時期が提示されたものとしては、「DPCデータについて、第三者提供の本格的な運用に向け、今年度より、試験的に運用を開始」など複数の項目が「今年度内」とされたほか、「7対1入院基本料の在り方」は2016年度改定に合わせて検討する。さらに、「プライマリ・ケアを専門に担う複数の医師が連携して24時間の対応を行う取り組みを支援するなど、プライマリ・ケアの提供体制を整える措置を検討」は、2014年度に検討開始、2015年度に結論を出すとしている。



http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/m20140730ddlk22040119000c.html
ドクターヘリ:静岡・神奈川・山梨、協定締結 3県で広域連携 /静岡
毎日新聞 2014年07月30日 地方版

 静岡、神奈川、山梨の3県は29日、ドクターヘリの広域連携で基本協定を締結した。運用範囲は静岡市以東の21市町、神奈川、山梨両県全域。相互支援により県東部地域は、3県のドクターヘリ3機による救急医療体制の充実が図られる。運用開始は8月1日。

 基本協定は、大規模事故などで多数の傷病者が発生し、自県のドクターヘリのみで対応できないほか、重複要請や悪天候、機体の故障などで出動できないケースを想定している。運航経費は出動側の負担としている。

 3県のドクターヘリが待機する基地病院は、順天堂大医学部付属静岡病院(伊豆の国市)、東海大医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)、山梨県立中央病院(甲府市)。

 県は東部、西部地域でドクターヘリ各1機を運用。昨年度の出動は東部758回、西部555回だった。3県は昨年12月にドクターヘリの広域連携で基本合意し、基本協定や運航マニュアルの調整を進めていた。【立上修】



http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=102660
看護師のやりがい学んだ 高校生20人が介助体験
(2014年7月30日 読売新聞)鳥取

 鳥取県東部の高校生が29日、鳥取市末広温泉町の鳥取生協病院で「一日看護師体験」に参加、車いすの扱いや入院患者の入浴の介助などを学んだ。

 6校の1~3年生約20人が参加、白衣に着替えて、乗る人と押す人に分かれて、車いすで段差を越える練習をした。看護師らから、足が車いすと地面の間に巻き込まれて転倒しないよう、患者の足を足置きに必ず乗せてから前進することなど、アドバイスを受けていた。

 体が不自由で入浴ができない人のために、洗髪なども手伝った。

 看護師を目指しているという県立八頭高2年(16)は「仕事の具体的な内容が分かって、これからの勉強の励みになります」と話していた。

 体験は進路選択に役立ててもらおうと、病院を運営する鳥取医療生活協同組合が主催、春と夏に、県東・中部の高校生を対象に毎年行っている。



http://www.minyu-net.com/news/topic/140730/topic6.html
看護師“目指そうかな” いわきで高校生が「1日看護体験」
(2014年7月30日 福島民友トピックス)

 県と県看護協会は29日、いわき市の病院で看護に興味のある市内の高校生を対象にした1日看護体験を開き、参加者が看護師の業務に理解を深めた。
 総合磐城共立病院では、高校2、3年生計29人が参加。3グループに分かれ、理学療法室、救命救急センター、集中治療室などを見学したほか、技術研修室では疑似採血の練習ができる腕の模型で、本物に近い静脈の感触を自分の腕と比べながら確かめていた。中村美奈さん(勿来3年)と筥崎(はこざき)美緒さん(磐城一3年)は「看護師のイメージをつかむことができ、あらためて病院の役割の大切さを知った」と話した。
 福島労災病院では、高校2、3年生計21人が参加。4病棟で指導を受けながら実際に患者の洗髪、手浴、足浴やベッドメーキングなどの実習を行った。手浴実習をした馬目美結さん(磐城一3年)は「指導の先輩から細かい気遣いを教えてもらった。将来は看護師になりたい」と笑顔で話した。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43404.html
在支診利用の約6割、自宅での最期を希望- 民間会社の報告書
( 2014年07月30日 22:24 )キャリアブレイン

 在宅療養支援診療所(在支診)を利用していた高齢者の約6割が、生前に自宅での最期を望んでいたとする報告書をみずほ情報総研が明らかにした。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などを利用する高齢者は、5割以上が介護施設での最期を希望していた。【松村秀士】

 報告書は、厚生労働省の2013年度老人保健健康増進等事業として、みずほ情報総研が、医療機関や介護施設などを対象に実施した長期療養高齢者の看取りの実態調査の結果をまとめたもの。13年10月から11月にかけて調査を行い、2988件の回答を得た。

 それによると、医療機関や介護施設、在支診・在宅療養支援病院(在支病)の従事者に、「最期を迎える場所として利用者はどこを希望していたか」と質問したところ、在支診での回答は「自宅」が57.8%と、約6割を占めた。次いで、「分からない」(23.9%)、「介護施設」(10.0%)、「病院や診療所」(6.9%)の順に多かった。在支病での回答で最多だったのも「自宅」で48.4%。以下は、「分からない」(30.6%)、「病院や診療所」(11.0%)、「介護施設」(6.9%)と続いた。

 有料老人ホームやサ高住などでの回答は、「介護施設」が56.5%で最も多く、以下は「分からない」(32.2%)、「自宅」(4.4%)、「病院や診療所」(3.1%)の順となった。

 介護老人保健施設で最も多かった回答は「分からない」で59.7%。次いで「介護施設」(33.5%)、「自宅」(2.3%)と続いた。

 療養病床を有する医療機関での回答は、「分からない」が62.1%で、「病院や診療所」が31.4%、「自宅」が3.8%。介護療養病床を有する医療機関では、「分からない」が65.6%、「病院や診療所」が24.0%、「介護施設」が3.4%だった。

 みずほ情報総研は「長期療養の高齢者が最期を迎えた場所は、生前に本人が望んでいた所とほぼ一致していた」としている。



http://digital.asahi.com/articles/ASG796TC0G79PTIB00R.html?_requesturl=articles%2FASG796TC0G79PTIB00R.htmlamp;iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG796TC0G79PTIB00R
島根)島根大病院、各科の最新治療紹介本を刊行
木脇みのり

朝日新聞デジタル 島根 2014年7月31日03時00分

 島根大学病院が、治療内容や高度医療の取り組みについて分かりやすく紹介する「島根大学医学部附属病院の最新治療がわかる本」を初めて刊行した。

 28診療科のほか、検査部や救命救急センター、栄養治療室など17の診療施設・診療支援施設をそれぞれ紹介。高度医療の項目では、6月に成功したと発表した新生児の心臓手術例、前立腺がんや花粉症などの治療について解説している。

 外来診療や検査予約などの利用方法や、診察を担当する医師の一覧もある。

 井川幹夫病院長は、「島根でも水準の高い医療が提供されていることを県民に知ってほしい。島大病院の得意分野や、横断的な組織が診療を支えていることを理解してもらえれば」と話している。今後も内容を更新して、刊行するという。

 A4判110ページで、税抜き1480円。県内外の主要書店やネット通販アマゾンで販売する。県内の病院や保健所計約950カ所にも寄贈するという。(木脇みのり)



http://mainichi.jp/select/news/20140731k0000m040167000c.html
中医協:委員に日本医師会「3人」枠復活 5年ぶり
毎日新聞 2014年07月31日 02時30分

 田村憲久厚生労働相は30日、厚労相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)の新たな委員に、日本医師会(日医)の松本純一常任理事を任命する方針を固めた。民主党政権当時に日医執行部以外から任命された委員の後任となる。2009年に日医執行部が中医協から排除されて以降、5年ぶりに日医執行部の3人枠が復活する。

 30日の中医協で民主党政権当時に任命された安達秀樹・日医社会保険診療報酬検討委員会委員長が任期途中での退任を表明した。田村氏は次回の中医協で、松本氏を委員に任命する。現在、日医執行部の委員は2人おり、松本氏の就任で「日医執行部枠」が3人になる。

 旧自民党政権当時、日医は中医協に3人を執行部から出してきた。しかし、民主党政権で長妻昭厚労相(当時)が日医からの推薦枠をゼロにし、代わりに地方医師会や大学病院の代表3人を任命した。今回退任を表明した安達氏はその一人で、当時は日医の肩書ではなく京都府医師会副会長で選ばれた。【中島和哉】



http://sankei.jp.msn.com/region/news/140731/chb14073103580004-n1.htm
銚子市立病院運営、現管理者では困難 検討委が市長に答申 千葉
2014.7.31 03:58 産經新聞

 赤字経営が続く銚子市立病院(同市前宿町)の経営形態などを外部有識者が検討する委員会は30日、「現在の指定管理者による運営の継続は困難」として、市が医療公社を設立して運営することが望ましいとする提案を越川信一市長に答申した。

 答申では、指定管理者の医療法人財団「銚子市立病院再生機構」が平成22年4月に運営を担って以来、市が市営の前病院時代より多額の赤字補填(ほてん)をしていると指摘。労働基準監督署から労務管理の是正勧告を受けるなど問題も多く、「経営のノウハウや能力がない」とした。委員の一人は「経営者にふさわしくないと判断した」と批判した。

 医療公社として運営すれば、民営のメリットを生かしながら行政側の統制を効かせられるとしている。今後は軽症患者を診療する初期救急や、国保旭中央病院(旭市)からの患者受け入れなどの後方支援を柱とするという方向性も示した。

 越川市長は「答申を真摯(しんし)に受け止め、市立病院を必ず存続させるという強い意志で方向性を決定したい」と述べた。同機構との指定管理協定は来年3月まで。



http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140729/269411/?n_cid=nbpnbo_top_updt
絶対に受けたくない無駄な医療
無駄な医療を「思い出のマーニー」から考える
患者側の怒りを買う「誘発需要」と情報の非対称性

室井 一辰(医療経済ジャーナリスト)
2014年7月31日(木) 日経ビジネスオンライン

『絶対に受けたくない無駄な医療』の発売に連動した連載前半では、米国医学会の出した「衝撃のリスト」の狙いと背景を説明した。連載後半は、医療経済学の観点も加えて無駄な医療の「病理」を探っていく。まずは、医療という「サービス」を特殊たらしめる最重要課題である情報の非対称性の問題から見ていこう。
第1回 米国医学会が出した「衝撃のリスト」
第2回 ピル処方に内診は必要ない
第3回 米国医学会揺るがす「セルフリファラル問題」
第4回 「 爪水虫の服薬は無駄 」とあえて叫ぶ
第5回 『思い出のマーニー』で考える無駄な医療

 『絶対に受けたくない無駄な医療』を出版してから連載を続けているが、掲載期間を開けてしまったことをまずお詫びしたい。無駄な医療について読者の皆さんの洞察を深めるために、どのようにお伝えすればいいかを考えているうちに長い時間が経ってしまった。

思い出のマーニーが問う「疑念の問題」

 無駄な医療について考えている時に、気分転換にと思って鑑賞したのがスタジオジブリ新作アニメ『思い出のマーニー』だった。監督を務める米林宏昌さんが同じ高校でずっと気になっていたのだ。友人同士や家族観、異性間の愛情の問題をいろいろな方向から問うていく。いい映画だった。

 思い出のマーニーでこんな場面があった。主人公が、「愛情の中に金銭勘定が紛れている」と疑念を抱く場面だ。結果、主人公は心に傷を負う。

 ネタバレを避けるために詳しくは触れないが、私にはこの場面が心に引っ掛かった。強引だと言われるのは百も承知だが、無駄な医療をめぐる問題は突き詰めると、この映画、思い出のマーニーで描かれた「疑念の問題」に近いと思われたからだ。

 この場面で描かれていた心の葛藤を少しだけ書くとこうだ。

 あくまで「善意」だと思っていた他者からの愛情の裏側に「悪意」の影を感じ取って、疑心暗鬼に陥る。その愛情は本当なのかと、分からなくなる。多くある心象描写のごく一部ではあったので、映画全体から見ると大きなところではないかもしれないが、医療の世界でも似たようなことがあるよな、と納得した。

瓦解し始めた医療における性善説

 これまで医療に対しては「赤ひげ先生」の世界観が広く受け入れられてきた。暗黙の了解として、「医師ら医療側は自分たちの立場や利害によらず、患者の利益を考えるものであり、そうあるべきだ」といった見方である。医療の目的は患者の病気を治癒させることであり、命を守ること。あくまでも善意でもって医療行為をなしており、患者の利益に適う医療行為を医療側は行うはずだと信じられてきたわけだ。

 しかし、残念なことに、医療側に悪意があると分かって幻滅する事象が起きている。

 世界的に問題となっているのは、医療側が患者の利益に必ずしも寄り添わず、自らの立場や利益を守ろうとしているとの疑念の方だ。医療の目的に沿わない医療行為は無駄な医療となる。連載の第3回「米国医学会揺るがす『セルフリファラル問題』」で取り上げたのは、まさしくこの問題だった。

 愛情をかけてくれていると思っていたのに、実はその愛情の裏には不純な動機があった――。思い出のマーニーで描かれた場面はあくまでも「個人対個人」の問題だったが、医療における無駄な医療の問題は個人対個人の疑念が積み上がり、社会全体の問題に発展している。医療における性善説が崩れつつあると言ってもいいかもしれない。

「誘発需要」は社会的に損失を与える

 医療経済学の分野では、医師ら医療側が自らの立場や利益を考えて、本来であれば患者に不必要であるはずの医療行為を施す事象を「誘発需要」と呼んでいる。

 東京大学の橋本英樹氏らの編著書 『医療経済学講義』に詳しいが、誘発需要は社会的な損失をもたらすと説明している。この書籍の記述を引用すると、「医師によって誘発された医療サービスは、患者の利益(健康の改善)には貢献しない可能性が高いため、それに伴って発生する医療費は社会的な損失であると言える」。

 これは、一般的なビジネスで言うところの「需要を作る」のとは状況が異なる。通常のビジネスの場合、サービスの専門性にもよるが、サービス提供者と消費者の間の「情報の非対称性」が少ない場合が多いため、サービス提供者が提示した新しい需要のメリットを消費者は即座に理解できる場合が多い。

 ところが、専門性の高い医療には情報の非対称性があるので、同じようにはいかない。患者側から、医師ら医療側の知識や思考などが見えにくいためだ。「不治の病が新薬で完治するようになった」という話ならば分かりやすいかもしれない。より複雑になってくると、患者はもうワケが分からない。

リスク回避で帝王切開が世界的に急増

 第4回で取り上げたように、「爪水虫に飲み薬」では爪水虫でない患者に飲み薬を処方しているという問題がある。また、日本ではピルを処方する際に内診するケースが大半だが、米国内科医学会は今年7月に内診の禁止令を出した(第2回を参照)。これも、専門知識がなければ、医師に言われるがままに内診を受けてしまうだろう。

 問題事例を挙げれば枚挙にいとまはない。『絶対に受けたくない無駄な医療』でも具体的な例をいくつも挙げている。

 1年ほど前、脚の動脈が狭くなったところに、症状がないにもかかわらず、ステントと呼ばれる金属製の筒状の網を挿入する治療でトラブルが発生して問題となった。個々の医療行為は、一人の医師と一人の患者の間で行われており、患者は医師の判断を信じて手術を受ける。ところが、場合によって、医師ら医療側が「患者側には分からないだろう」と弱みに付け込んで、金銭的利益のために過剰な医療を提供している場合がある。結果として、この事例ではある医学会が問題視する事態に発展してしまった。

 このほかにも帝王切開が世界的に増加しているのがよく知られている。帝王切開は出血をはじめリスクと無縁ではないが、通常の膣からの分娩と比べると短時間で安全という見方もあって、訴訟リスク回避のための過剰な医療になっているのではという疑念が浮上している。

 医療側と患者側でなされている不要な医療行為が積み重なって、社会的に大きな負担を生んでいる。

 無駄な医療が本当に生じているのかを検証するのは容易ではない。日本では、医療行為にかかった費用を審査する仕組みが公的に導入されている。医療側が不要な医療を提供するのを防ぐ仕組みは整っていると見ることも可能だ。実際、医療機関が不正に請求したと見られる場合には、差し戻す仕組みが機能している。

現代医療の急所が姿を現す

 さらに、患者側は医療機関を自由に選べる。無駄な医療を提供する医療機関はそっぽを向かれて閑古鳥がなくかもしれない。その状況下で、無駄な医療を提供している余裕はないだろう。だからこそ、誘発需要は医療経済学と呼ぶ学問領域でも難題と見なされ、重要な研究対象となっている。 

 しかし、実際に無駄な医療は医師同士さえも見えにくい形で存在している。だからこそ、この連載で繰り返し紹介してきた米国の「Choosing Wisely」のような無駄な医療撲滅運動が発生するのである。

 実例を積み重ねていく帰納法的な手法で無駄な医療の発生を抑制するだけでなく、社会の構造を分析し、演繹的な手法から無駄な医療の発生する仕組みを解明するアプローチも大切になる。実際に、無駄な医療は生じているのかどうなのか。その因果関係の解明はさらに時間をかけるべき問題だ。

 併せて、医療界の構造的な問題にも目を向けたい。その源流をたどっていくと、現代医療の急所が姿を現す。無駄な医療を生み出す「病理」と言っていいかもしれない。

 次回は、世界的な医学誌にも掲載された日本の医療界の分析を読み解いていく。現代医療の弱点がつまびらかにされており、それこそが無駄な医療を生む元凶と言っていいものと考えられる。さらに掘り下げていこう。


  1. 2014/07/31(木) 05:14:51|
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