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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月13日 

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/sapporo/550939.html
夢は医師、手術模擬体験 札幌の病院で中学生、緊張しながらメス
(07/13 16:00) 北海道新聞

 医師の仕事を模擬体験を通して知る「ブラック・ジャックセミナー」が12日、札幌市手稲区の手稲渓仁会病院で行われた。手稲区内の中学生28人が参加し、最先端の超音波メスなどを使って、人体に見立てた肉を切除するなどの手術体験に挑戦した。

 医療現場で外科医などの不足が課題となっている中、中学生のうちに医療職への関心を持ってもらうのが狙い。手稲区内の中学校を通じて募集した。

 手術着を身につけた中学生たちは、緊張した面持ちで手術室へ。外科医の指導を受けながら、手術台のマネキンの上に置かれた鶏肉にメスを当て、がんの患部に見立てて青色に染色された部分を取り除く処置などに取り組んだ。

 稲積中3年の池田純大(よしき)君(15)は「弟が小さいころに長期間入院したことがあり、そのとき以来、医師の姿にあこがれてきた。将来は小児科医になりたいので、わくわくしました」と話していた。(細川伸哉)



http://www.zaikei.co.jp/article/20140713/204010.html
“念のため受診”や“はしご受診”を防げ 厚労省で議論始まる
2014年7月13日 10:52 財経新聞

 “念のため受診”や“はしご受診”を防止するために、紹介状がない患者が大病院を受診する際の初診料・再診料を設定するための議論が厚生労働省で始まった。軽症患者が不必要に大病院を受診することで、無駄な医療費がかさみ国民の税負担がますます増えたり、医師の負担が増加することで日本の医療システムそのものが崩壊の危機にさらされることを回避することが目的だ。

 日本では医療のフリーアクセスが重視されており、患者は自分の意志で受診する病院を選ぶことができる。しかし本来ならば、体調不良を感じたなら、まずは自分の日頃の体調を知ってくれている“かかりつけ医“を受診し、その上で、かかりつけ医が必要と判断したならば、紹介状を書いてもらい、大病院を受診するのが効率的だ。紹介状をもらうことで同じ検査をする手間を省いたり、必要がないのに大病院を受診して、何時間も待合室で待ちぼうけということもなくなるだろう。

 現在でも200床以上の大病院を紹介状なしに受診する場合、病院が独自に追加の初診料や再診料を設定し、患者に請求することは可能だ。しかしこの仕組みを活用して患者から初診料の追加負担を徴収している病院は1204施設に留まり、200床以上の病院数からみれば半数弱に過ぎない。

 患者からすれば、近隣のクリニックを受診するのも少し足をのばして大病院を受診するのも、費用面からみて大差ないため、安易な“念のため受診”や“はしご受診”が増加する。

 東京都が2012年に行った調査によれば、紹介状がなく同じ症状で複数の医療機関にかかったことのある、いわゆる“はしご受診”の経験者は27%、経験したことがないがしようと思った人(4%)も含めると、3割が自身の判断ではしご受診している。

 その理由は、「症状が改善しない、または治らなかった」が最多で56%だが、「念のため、他の医療機関も受診した」30.7%、「診断や治療に納得いかなかった」29.7%と、念のため受診も多いことがわかる。

 例えば風邪や肩こり、腰痛といった軽微な症状で安易に大病院を受診する人が増えることは、大きな弊害につながる。今年5月には九州大学の飯原弘二氏らの研究チームが脳卒中専門医の4割が長時間労働などによって“燃え尽き症候群“となっており、深刻な医療事故につながる危険があることを警告しているが、勤務医の過労問題は日本の大病院のどの診療科でも同様だ。

 大病院に軽症患者が集中すれば、本当に重症な患者が必要な治療を受けられない可能性が出てくる。そもそも医師の疲弊が度を超えれば、日本の医療そのものが危うくすらなりうる。

 軽症者の大病院受診、不要な救急車のコール、安易な休日夜間の受診――これらはすべて、我が国の医療制度を崩壊の危機に誘い込む。救急車は別として、夜間の受診は国の定めによって上乗せ料金が発生していることを、患者は知っているのだろうか。今回の議論で初診料が設定されることになったなら、まずはそのことを十分に患者に周知することが重要だろう。(編集担当:横井楓)



http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140713/k10015975511000.html
病院内の携帯電話使用 指針見直しへ
7月13日 13時09分 NHK ニュース

病院内の携帯電話使用 指針見直しへ
携帯電話の電波の影響を調べている総務省や携帯電話会社などの協議会は、現在、原則禁止している病院内での携帯電話の使用を、場所によっては認めるとする指針の見直し案をまとめました。

総務省や携帯電話会社などで作る協議会では、病院内で携帯電話を使用すると電波が人工呼吸器や輸液ポンプといった医療用の機器の誤作動を引き起こすおそれがあるとして、原則として禁止する指針を定めています。
しかし、最近の医療用の機器は電波の影響を受けにくいものが増えてきたうえ、携帯電話が発する電波も以前より弱くなっていることから、多くの病院では携帯電話の使用を認め始めています。
このため協議会では、病院内での携帯電話の使用に関する指針を見直すことにし、素案を公表しました。
この案では、病院の食堂や待合室といった共用スペースでは、医療機器を使用している患者から1メートル程度離れれば携帯電話の使用を認めるとしています。
また病室では、周囲に患者が居ない場合通話を可能とし、患者が居てもメールのやり取りを認めることにしています。
一方、手術室や検査室などでは使用を禁止し、従来どおり電源を切るよう求めています。
協議会ではこの案をホームページ上に公開して広く意見を受け付けたうえで、早ければ来月中にも指針として取りまとめ、全国の医療機関に周知したいとしています。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071302000133.html
産学癒着 根深い病 ノバルティス社事件
2014年7月13日 朝刊 東京新聞

 降圧剤ディオバンをめぐる臨床研究のデータ改ざん事件で、薬事法違反罪(誇大広告)で元社員とともに起訴された製薬会社ノバルティスファーマは、薬事業界に影響力のある日本高血圧学会の役員らに多額の講演料などを提供し、役員らも期待に応えるようにディオバンのPRを繰り返した。その後、東京地検特捜部の捜査で効能が偽りだったことが判明。産学もたれあいの構図の下、安易にノ社の販売戦略に加担した学会の責任が問われている。 (中山岳、加藤益丈)
 「教授十五万円、准教授十万円、講師七万円と、社内でランク付けしていた」。ノ社の営業担当だった元社員は、医師を集めて開くディオバンに関する講演会で、講師役を務める日本高血圧学会員らに支払っていた謝礼の相場を明かす。
 ノ社は二〇〇〇年にディオバンの販売を開始。〇七年以降、五大学が相次いで効能に関する論文を発表した。講演会はホテルなどで開かれ、「ディオバンには降圧効果だけでなく、脳卒中を抑える効果がある」とした京都府立医大や東京慈恵医大などの論文の意義を、学会役員らが説明した。元社員は「ディオバンは良いと言ってくれる先生には、講演を三十~四十回頼んだ」と振り返る。
 別大学の研究者が一二年、東京慈恵医大の論文に疑問を投げかける論文を発表した際は、ノ社が医療専門誌に出した座談会形式の反論広告に学会員計四人が登場。「疑念は払拭(ふっしょく)された」などとノ社を援護する議論を展開した。
 本紙が入手した資料によると、座談会で司会を務めた学会役員の大学研究室には〇七~一一年度、ノ社を含めディオバンと同種類の降圧剤「ARB」を製造する製薬会社計七社から、総額約一億七千万円の寄付があり、うち三千万円余りがノ社だった。大学と学会事務局は取材に対し、いずれも捜査中であることを理由に「コメントは控える」と回答した。
 学会に所属するある研究者は「製薬会社に都合の良い研究や発言をする先生にはお金が集まる」と批判している。
 今月一日、誇大広告の罪で起訴、再逮捕されたノ社の元社員白橋伸雄容疑者(63)は、京都府立医大の臨床研究でデータ改ざんをした疑いが持たれている。東京地検特捜部が同大の論文通りの効能があるかカルテから解析し直したところ、脳卒中の抑制効果は確認できなかった。白橋容疑者は東京慈恵医大の臨床研究にも参加しており、大学側はデータが改ざんされた可能性を認めている。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/49247/Default.aspx
協和キリン ネスプ臨床研究問題で社外調査委「公競規違反の可能性強い」 営業本部長辞任へ
公開日時 2014/07/14 03:52 ミクスOnline

協和発酵キリンは7月11日、腎性貧血治療薬・ネスプ(一般名:ダルベポエチンアルファ)の医師主導臨床研究をめぐり、同社MRらの不適切な関与が指摘された問題で、労務提供や奨学寄附金の提供について「公正競争規約(公競規)第3条に違反する景品類の提供にあたる疑いが強い」とした社外調査委員会の最終報告をホームページ上で発表した。一方で、薬事法や個人情報保護法違反はなかったとした。この問題をめぐり、問題を認識しながらも約7か月間営業本部以外の経営陣と情報共有しなかったことが指摘された取締役常務執行役員の西野文博営業本部長が7月31日付で辞任するほか、研究にかかわった7名の社員が処分を受けた。

研究は、徳洲会札幌東徳洲会病院で、血液浄化センター長兼腎臓内科部長が実施した「維持血液透析患者における持続型赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による腎性貧血改善効果とhepcidin isoformに関する臨床的検討」。同研究については、被験者数などのプロトコル違反が明るみとなり、同院が緊急専門倫理委員会を設置し、調査する中で、協和発酵キリンの同研究への不適切な関与が判明した。調査では、院内倫理委員会(IRB)で臨床研究実施の承認が下りる前に患者の同意取得、検体採取がなされていたことも明らかになっている。

調査は、担当MR、学術担当、札幌支店腎専任営業所長、札幌支店長、札幌支店渉外倫理室マネージャー、本社渉外倫理室長、営業本部営業統括部長、取締役・営業本部長など10名のメール記録などを調査したほか、代表取締役社長を含めた幹部から合計34回のヒアリングを行った。


◎販促目的の臨床研究支援 公競規違反誘発の構造的原因に

同問題が起きた背景として報告書では、①ESA市場における熾烈な競争環境と、小規模臨床研究を利用した営業戦略②社内ルールの不明確さ、建て前的運用など法令遵守体制の脆弱性③臨床研究への関与に関する社会規範の不明確性及び製薬・医療界の慣行―があったと指摘した。

医師への臨床研究の提案は、ネスプ発売当時から販促の一貫に位置づけられており、「医師の研究ニーズを刺激するような情報提供と積極的な資金的・労務的サポートを通じて医師側の研究負担を軽減することにより、切り替え研究の採用を働きかけていた」とした。2014年初頭に策定された販売戦略でも学会での1000症例程度の切替え研究の発表が目標とされ、14年4月時点で進行中の74件の臨床研究のうち、「切替えを促進する内容が相当数あった」。

報告書では、こうした販促目的での臨床研究支援が「本質において処方誘因性を強く帯びていることから、公競規違反を誘発する構造的な危険性があると指摘せざるを得ない」とした。

公競規に抵触する可能性としては、労務提供と奨学寄附金の提供について言及。労務提供については、▽MRがプロトコルの主要部分を作成、データの整理・集約をサポートした▽学術担当がデータ解析の一部を担っていた――ことから、「組織的かつ継続的な労務提供が行われていた実態が見受けられる」と指摘。さらに医師がパソコンを扱えず、MRが頻繁に資料作成を行っていることや、これら業務について研究開始当初から労務提供が想定されていたことなどから、「軽微な労務提供であったと見るのは相当ではない」とした。

奨学寄附金については、同院付属臨床研究センターに2012年12月に50万円が提供されているが、使途をMRと医師の間で事前に取り決め、臨床研究センターも把握していたことなどから、「実質的には医師の自主研究に対し、その費用を賄うものとして提供された」と指摘。同研究が薬剤の切り替えを前提とされたネスプの販促手段であったことや、医師に処方の決定権があったことなどから、「従前のESAがネスプに切り替えられる可能性が相当高かったと認められる」とした。

医師側にとってもこれらの資金的・労務的支援を当初から期待していた可能性が高く、「これらの存在がネスプへの切り替えを前提とする臨床研究の実施に当たって重要な判断材料となった可能性が高い」とした。その上で、「製薬企業の業界における“正常な商習慣に照らして適当と認められる範囲”を超えたものと評価すべきと考えられ、公競規第3条に違反する景品類の提供にあたる疑いが強い」とした。なお、同社は、公取協に7月10日にこの報告を行っている。

報告書では、これらの労務提供などの問題について、同社社内ルールに定められた建て前と実態に大きなかい離があったことも指摘した。社内ルールでは、奨学寄附金の使途を限定する“紐付き寄付金”の禁止やデータ解析が禁止されていた一方で、「営業現場では一定の労務提供は書面などの正式な記録に残さない形で事実上容認されていた」とした。実際、問題となったMRは「“軽微なものは他のMRもやっている”、“みんなやっているから問題とならないだろう”という安易な横並び意識に加え、“(ルール遵守よりも)上手くやれ”という社内の雰囲気があったと述べている」。


◎薬事法、個人情報保護法違反は認められず

薬事法の誇大広告については、①合計30症例117検体のヘプシジン値等の測定が行われたが、いずれも完遂されなかった②担当MRや学術担当が取得・解析したデータが改ざんした事実や改ざんを疑わせる事実が認められなかった―とした。その上で、論文の公表や広告資材等にも利用されなかったことなどから薬事法違反には当たらないとした。副作用の報告義務については、研究中に重篤な有害事象は11例21件認められたが、MRは病院側から連絡を受けておらず、認識もしていなかったと供述していることなどから、「有害事象を認識していたとはいえず、薬事法上の報告義務を負っていたとは認められない」とした。

MRが患者氏名、IDが記載された資料を入手していたことから、個人情報保護法違反も懸念されたが、MR自らは患者を特定できない形での測定結果を受領する予定だったことなどから、17条に規定された“偽りその他の不正の手段”には該当せず、違反しないとした。ただし、MRと学術担当が情報共有していた実態を問題視。「道義的非難のレベルは相当厳しくあってしかるべき」とした。一方で、MRに患者の同意を得ずに情報提供を行った医師については、個人情報保護法違反に該当することも明記された。


◎西野営業本部長 取引先との悪化懸念で社内情報共有せず

同問題では、西野営業本部長ら経営陣の責任も問われた。調査報告では、西野営業本部長が2013年8月から14年4月までの約7か月間、営業本部以外の経営陣に情報共有せず、対応の遅れを招いたことが問題視された。西野営業本部長は、13年8月に病院側が共同臨床研究について調査を開始、9月中旬に外部機関による監査が開始されることを認識。さらに、遅くとも同年12月20日以降は厚労省に同問題が報告される可能性があることを認識していた。同氏は、この問題を社内共有化し、病院側よりも先に厚労省へ問題を報告することで病院側に迷惑がかかり、結果として取引先である同院との関係が悪化することを懸念。事態の推移を見守る受け身の対応をとったとした。

ただ、事態が問題視された13年後半から14年4月は医師主導臨床研究が社会問題化していた時期であったことから、「過渡期にある業界の危機意識が十分社内に浸透していたとはいえず、結果として会社としての対応の遅れの一因になったものと認められる」と指摘した。その上で、社内の情報共有を怠った西野営業本部長の対応は「適切性を欠いたものといわざるを得ない」とした。

西野営業本部長は同社が問題を把握し、対策本部を立ち上げた4月下旬に辞意を表明しており、一身上の都合により退職する。


◎プロモーション活動の在り方見直しへ

同社は、この問題を踏まえ、▽奨学寄附金の管理体制の整備、▽コンプライアンス遵守を監視する渉外倫理室を社長直轄の体制とする、▽MR活動を文献紹介による情報提供とする―などの対策をすでに実施。今後は、▽透明性の高い奨学寄附金の審査プロセスの構築、▽社内ルールの見直し・周知徹底、▽渉外倫理室、CSR推進部によるチェック機構を医師主導臨床研究だけでなく原稿執筆料や講演料まで拡大・強化、管理体制の整備、▽マーケティング部門も含めたプロモーション活動の見直し――を行うとしており、8月に予定される取締役会で付議される予定という。



http://biz-journal.jp/2014/07/post_5390.html
室井一辰『気になる医療の“裏”話』(7月14日)
「無駄な医療撲滅運動」の衝撃 医療費抑制も期待、現在の医療行為を否定する内容も

文=室井一辰/医療ジャーナリスト
Business Journal 2014.07.14

 筆者は6月、『絶対に受けたくない無駄な医療』(日経BP社)という書籍を上梓した。2014年現在でも進行中の、米国の医学界による「無駄な医療撲滅キャンペーン」の動きを、日本で初めてまとめた。その内容は本書出版まではほとんど日本では知られていなかったが、日本にとっても無視できない動きだと考えている。米国流を礼賛する意図はないが、米国の“良いとこどり”は賢明な選択だ。
 6月にスタートした出版連動連載の記事『米国医学会が出した「衝撃のリスト」』(日経ビジネスオンライン)が同サイト週間アクセス数トップとなり、人々の医療への関心の高さををあらためて認識する一方、フェイスブックのシェアが10日間で1万7000件まで広がり、ネット上での記事拡散範囲も医療界から学界、行政、経済界など幅広く、関心の幅の広さも興味深い。
 そこで今回は、米国で始まった無駄な医療撲滅運動をめぐる裏話を紹介しつつ、手加減のない米国流キャンペーンの背景に何があるのかを探ってみたい。日本の医療政策、医療事業を考える上でも参考になるはずだ。

●「無駄な医療」をおよそ250項目列挙
 前出の「衝撃のリスト」が強い関心を集めた理由は、世界的地位のある米国医学会が無駄な医療を認定しているため、信憑性を伴っているからだ。世界の医師が模範とする医学会が団結して公表しているという点が重要だ。米国の医師約60万人のうち8割に当たる約50万人が、所属学会を通してこの「無駄な医療撲滅運動」に参加している。この運動は、「Choosing Wisely(チュージング・ワイズリー)」と呼ばれており、興味深い動きであるにもかかわらず、日本でほとんど知られていなかったのは、英語や専門性の壁のほかに、日本で公然と行われている医療行為を無駄だと示している事例もあるため、進んで紹介しようという人がおらず、既得権の壁のようなものもあったのではないか。
 
 米国内科専門医認定機構財団(ABIM財団)という非営利組織が中心となり、米国に複数存在する医学会に呼びかけ、無駄な医療を挙げている。13年の段階で参加する医学会は71団体を数え、50学会が約250項目を挙げるところまで拡大した。その内容はインターネット上で無料で全項目公開している点が重要だ。誰もが簡単に無駄な医療の中身を見られるようになっている。
 「ピルをもらうのに膣内診は不要」
 「じんましんができても検査をするな」
 「中耳炎で抗菌薬を飲むな」
 「超高齢者にコレステロールは無用だから使うな」
など、日本では一般的に行われているような医療行為についても、不要だと認定されているものもある。
 筆者がこの米国医学会の動きを知ったのは、13年夏頃、米国不整脈学会が無駄な医療を数え上げていることを知ったのがきっかけだったが、当初は「衝撃のリスト」の持つ価値に気づかなかった。日本にとっても実はかなりのインパクトのある内容を、淡々と落ち着いた文面で発表していたためだ。例えば、前出の「超高齢者にコレステロールを使うな」「じんましんで検査するな」というような内容は、日本で多くの医療機関が手掛けている医療行為を否定する内容になる。そのため、その内容の重要さに時間をかけて気が付き、日本では間違いなく賛否を呼ぶ内容だと想像できたので、和訳して世に問うてみようと思ったのが冒頭の自著出版のきっかけとなった。

●日本の医療界にとっても有益
「衝撃のリスト」が良いのは手加減がないところだ。日本でも患者向けに医療行為を説明するものはあるが、わかりやすく解説しようとするあまり、内容が平易すぎて専門性の低い内容に陥りがちだ。病気の当事者に近づけば近づくほど、細部を知りたくなるものだ。「衝撃のリスト」を見ていくと、前述のような比較的、理解しやすい項目だけではなく、次のように専門性の高い項目も並んでいる。
 「コルポスコピーは、子宮頸がんの経験がある場合も安易にしない」
 「糖尿病では、スライディングスケール法を用いて血糖値を管理しない」 
 「抗核抗体の関連検査は安易にしない」
 「ぜんそくの診断ではスパイロメトリーを使って」
 「アレルギー検査に非特異的IgE検査、IgG検査は避ける」
 「『いきなり手術』はご法度」
 これらはすべて病気の当事者にとっては切実な問題になっており、無駄な医療行為の項目はまだまだ拡大中である。
繰り返しになるが、米国の「衝撃のリスト」は、日本の患者にとっては診断、治療、予防の選択肢を考える上で非常に役に立つ。さらに、健康保険関係の団体などにとっても、保険料をかける価値のある医療を検討したり、国や地方自治体が医療政策を考える上でも重要になってくる。
 
●背景に医療費高騰という問題
 では、米国医療界はどのような動機で、このようなリストを作成・発表しているのだろうか。
 まず、大きなきっかけとなったのがオバマケアだ。従来、米国では約5000万人もの無保険者がおり、医療機関での診療を容易に受けられない状態にあった。オバマケアは、こうした状況を大きく転換して、日本のような国民皆保険を実現しようとする動きだ。しかしこれは、低所得層の医療利用が進む半面で、日本をはるかにしのぐ総額約300兆円に医療費が増大する可能性があるため、米国は医療費の抑制にも動く必要に迫られている。医療提供者にしてみれば、医療費抑制の動きの中で、本当に必要な医療行為にまでカネが回ってこなくなるのは避けたい。そこで、無駄な医療行為に流れるカネの流れを断ち、必要な医療行為にカネを回しやすくする環境をつくりたいという意図があると考えられる。
 このほかには、米国で進行する「self-referral(セルフリファラル)」という問題への批判に応えようとする意図があると思われる。「医療界が自分だけの尺度で医療行為の意義を判断して実施するのはまかりならない」という批判だ。ある検査を行う際、医療を施す側のみの判断で検査を増やすと、本来は無意味な検査が実施され、「やりすぎ」になる恐れがある。米国では、医療界に対して、医療界の外の尺度も踏まえて、医療行為の価値を判断するように求める動きが広がっているのだ。これにより、米国の医療界には自らが推進しようとする医療行為について「なぜ必要なのか」を説明する責任が生じるようになっている。
 以上みてきた動きは、日本の医療界にとっても決して無関係ではない。米国同様に日本の医療界の内側からも、無駄な医療撲滅運動が出てくる素地はある。ちなみに、すでに欧州など米国外にも同様の動きが広がっており、日本国内の今後の動きが注目される。
(文=室井一辰/医療ジャーナリスト)

Choosing Wisely www.choosingwisely.org/



http://diamond.jp/articles/-/56030
「何のために働くのか」を
毎日、実感できる職場が目指す夢とは?

――祐ホームクリニック 武藤真祐氏(後編)
ダイヤモンド オンライン 2014年7月14日

高齢化が進む中、病院や介護施設ではなく「自宅で最期を迎えたい」と考える人が増えている。そのために不可欠なのが、在宅医療。往診してくれる医師や看護師、ケアマネジャーが連携し、24時間365日、相談できる体制をつくること。これを実現するため、東京と宮城県・石巻で在宅医療を手がける医師の物語。一見、相矛盾する要素を兼ね備え、圧倒的な価値を生み出す“バリュークリエイター”の実像と戦略思考に迫る連載第4回後編。

※この記事は、GLOBIS.JP掲載「大学病院、戦略コンサルタントを経て、高齢者の笑顔を選んだ医師 後編―武藤真祐氏(バリュークリエイターたちの戦略論)」の転載です。

エリート医師は、戦略コンサルタントを経てなぜ、激務の在宅医療を選んだのか? ――祐ホームクリニック 武藤真祐氏(前編)を読む

 すでに高齢化社会となった日本で、ニーズが高まる在宅医療。住み慣れた家で家族と一緒に暮らしながら、信頼できる医師や看護師にみてもらいたい。高齢の患者が持つ「当たり前の希望」をかなえるべく、4年前、東京に「祐ホームクリニック」を開設し地域で在宅医療を始めた武藤真祐(むとうしんすけ)。3年前、震災被害に遭った宮城県石巻市にも在宅医療の拠点を作った。

 患者や家族のことを第一に考える――。医療従事者なら誰もが考える理想を事業として実現し、日々の業務として実行していく。これを可能にしたのは武藤が言う「大変なことをやってくれる周りの人たち」。「僕も調整や働きかけはしますが、主体的に動いて不可能と思われることも実現してしまう」。一例は、事務局長の園田愛だ。

驚異的な実行力で支える
右腕の存在


 2011年9月、在宅療養を支援するための診療所、祐ホームクリニック石巻が開設した。東京で培った在宅医療のノウハウを生かして医療を提供している。震災から半年弱経っても、高齢化が進んだ土地には、孤立し、必要最低限の生活も難しい中、じっと耐える人々がいた。彼・彼女達を助けたい。その一心で先頭に立って動いたのが、園田だった。全く土地勘のない中で、準備期間に通常1年かかると言われる中2ヶ月で、建物を立て、スタッフを集め、行政と交渉し、地域と深く関わりながら診療所の立ち上げにこぎつけた。

 行動力、実行力、「お年寄りは、もっと優しくされていい」と願う情熱を兼ね備えた園田は、自身が社会起業家として一国一城の主になってもおかしくない。大学では経営学を専攻し、卒業論文では高齢化社会を扱った。就職先は医療関連のコンサルティング会社。そんな園田が武藤と深く関わったのは、2007年。武藤と構想して立ち上げたNPOヘルスケアリーダーシップ研究会の活動を通じてのことだった。2年後の2009年夏「会社を辞めて独立しようと思っている」と打ち明けた園田に、武藤は笑顔で言った。「いいね。僕が最初のクライアントになるよ」。じっくり話をするうちに、園田は「自分が考えていたのは武藤さんの構想の一部分だと気づき、武藤さんの事業を手伝うことにしました」。

何のために働くのか、毎日、実感できる

 その時から5年弱。今も一緒に走り続ける最大の理由を、園田はシンプルな言葉で表現する。「自分たちの仕事の意義を、毎日のように感じられるからかもしれません」。例えば祐ホームクリニックは、在宅で看取りまで支援する。住み慣れた家で愛する家族に囲まれ、患者が天寿を全うすると「そのお部屋はとても満ち足りた空気で満たされます」。それは現場にいる医師・看護師・介護関係者はもちろん、クリニックでオペレーションを担当する事務スタッフにも伝わってくる。関係者全員が、自分たちが何のために努力しているのか、毎日のように感じることができる。

 患者と家族に対する提供価値を最優先すると、組織のありようも既存の医療機関とは変わってくる。例えば緊急時。患者の家族から電話を受けた事務スタッフは医師に素早く指示を出す。「先生、○○さんのところへ行ってください」。ピラミッド型の病院組織において、普通なら事務スタッフは医師に「お伺いを立てる」。でも、武藤は言う。「最前線の情報を持っている人が指示を出してくれないと、医師は動けない。遠慮なく指示してください」。


 患者第一を実践するための権限委譲は細部に渡っている。例えばクリニックのウェブサイトには「在宅医療にかかる費用」について分かりやすい説明がある。そこには例として「月2回訪問した場合」の自己負担額合計を6840円と記してある。また、「一ヶ月あたりの医療費負担は概ね12,000円程度(+介護保険分580円程度)です。 これ以上かかった場合には手続きにより返還してもらうことができます」という記載もある。在宅医療はまだ、新しい形態ゆえ、全てが保険外診療で非常に高くつくのではないか、と不安を持つ人が多いことに充分配慮した分かりやすく親切な記載だ。このように利用者の立場を考慮した文面を考えているのも、クリニックのスタッフだ。

すごいのは
「経歴がピカピカだから」ではない


「経歴がピカピカだから『武藤さんってすごいね』という方もいますが、今の武藤さんのすごさは、そこから来ているのではないのではないかと思います」と園田は言う。「仕事の一番大変な部分を厭わずに引き受けながら、自分の力を過信せず、うまく人の力を借りられることが、武藤さんのすごいところ」。クリニックを立ち上げた当初、武藤は自ら24時間365日働いて、何でも自分でやった。だから今も、やろうと思えば大抵のことはできる。今はそんな武藤を見て「私がやります」というスタッフに恵まれている。クリニックは外科、癌の専門医、精神科医、麻酔専門医など、武藤の専門である循環器内科以外の専門を持つ医師の協力で成り立っている。うまくいく理由について「(人の力を借りられるのは)根底に、他人への信頼や尊重があるから」と園田はみる。

 在宅医療の課題として挙げられる要素の多くは、異なる専門家同士の「連携」だが、祐ホームクリニックでは、その大半をクリアしている。同クリニックの医師は、以前から、自分が手術を担当した患者の自宅を訪問し、善意で様子を見に行っていた。クリニックでは、「たとえ、診療報酬の点数にはならなくても、患者さんのためになることは積極的にやっていく雰囲気」(園田)であり、患者や家族の求めに応じて、実行している。一般的に、医療は、ニーズと可能なサービスにずれが大きいとされるが、こういう話を聞いていると「規制を超えてニーズに合ったサービスが構築されていくではないか」と思えてくる。

 東京で在宅医療を始めた翌2011年5月、武藤は一般社団法人高齢者先進国モデル構想会議を作った。2カ月前に起きた東日本大震災を高齢社会の縮図と捉え、超高齢化社会の課題が被災地で一気に凝縮して現れている状況に危機感を覚え、震災の翌月、4月に被災地支援チームを編成し、支援活動を始めた。それが、石巻での在宅医療支援につながっている。

石巻には日本の未来が
凝縮されている


 石巻で在宅医療を始めた時「ここは日本の未来の縮図だ」と武藤は思った。震災により、高齢化が進むこの街で高齢者が幸せに暮らすこと。それは厳しいとか、難しいと表現されるが、武藤と一緒に働く人々からすれば「越えるべき壁のひとつ」にすぎないのだろう。

 高齢先進国モデル構想会議は、次のような目的を掲げている。

「私たちは、人の尊厳ある人生の全うを支え、豊かな老いを実現できる社会システムの構築に取り組みます。それにより、人々が希望ある未来を思い描き、安心して年を重ねることができる社会づくり、そして次世代によりよい社会を残そうとする社会潮流の創造を目指します」。

 そのために、高齢者をコミュニティで支える包括的なサービスモデルの構築を目指し、研究、啓発、広報や実証実験を行っている。

彼の夢はいつの間にか
「みんなの夢」になっている

 誰もが分かる名声がほしければ東大に残ればよかった。50歳になる頃には教授になっていただろう。お金が欲しければマッキンゼーに残ればよかった。製薬会社向けのアドバイジングで年収数千万円になっただろう。望めば偉くなることもお金持ちになることもできる稀有で高い能力を持つ武藤が選んだのは、全く別なものだった。それは「日本社会を変える」というより大きな夢であり、具体的には人生の最後を幸せに過ごせる社会だった。それは、6歳の時、野口英世に憧れて医師を志した武藤にとって、実は夢への近道に見えている。

 園田は言う。「武藤さんの夢は、いつの間にか、私たちみんなの夢になっている」。そこに見えているのは、誰にでも分かりやすい幸せだ。「誰もが人生の最後まで希望を持てる社会」「お年寄りが大事にされ、笑顔で暮らせる社会」。高齢化先進国、日本の行方を世界が見守る。武藤はその最も先端を走る。その舞台は最新鋭の実験機器を備えた研究室ではない。彼と言葉を交わすことで、笑顔を取り戻す高齢者とその家族の家を訪ねながら、文字通り走っている。


  1. 2014/07/14(月) 06:24:36|
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