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6月16日 

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43012.html
東北に医師残る「特殊な医学部を」- 全自病会長、文科省の構想審査会が初会合
( 2014年06月16日 18:19 )キャリアブレイン

 東北地方の医学部新設に応募のあった3陣営の構想から1つを選定するための構想審査会の初会合を、文部科学省は16日、東京都内で開いた。同審査会の委員である全国自治体病院協議会の邉見公雄会長はその中で、新設される医学部について、「これまでと同じような医学部では、従来と変わらず学生は卒業後に東北に残らない。できるだけ残るような特殊なものにした方がいい」として、例えば地域医療を担う総合診療医の育成に特化することなどが考えられると述べた。【丸山紀一朗】

 東北の医学部新設をめぐっては先月、宮城県、東北薬科大(仙台市青葉区)、脳神経疾患研究所(福島県郡山市)の3陣営が、申請書類を同省に提出した。3陣営はいずれも2016年4月に開学予定としており、予定通り進めば、医学部新設は1979年の琉球大以来、37年ぶりになる。

 16日の初会合では、各大学の設置構想の概要が示され、今後の審査の進め方や議論する上で重視するポイントなどについて、委員間での意見交換などが行われた。今後、来月初旬の2回目の会合で3陣営からのヒアリングを行い、同月中旬の3回目の会合で岩手県や福島県、東北大、岩手医科大、日本医師会などから意見聴取する。その後、同省は4回目の会合を今夏までに開き、1つに絞る。



http://www.m3.com/iryoIshin/article/225023/?portalId=iryoIshin&pageFrom=openIryoIshin
レポート 医療維新
医師不足への処方せん
東北の医学部新設、文科省の選考スタート
「“金太郎飴”の医学部、新設の意味なし」との意見も

2014年6月16日(月) 橋本佳子(m3.com編集長)

 文部科学省は6月16日、「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」の第1回会議を開催した。委員は計12人で、座長には学習院大学経済学部長の遠藤久夫氏、副座長には自治医科大学学長の永井良三氏がそれぞれ選任された(文末を参照)。

 政府は2013年12月、「東北地方に1校に限定して、一定の条件を満たす場合に医学部新設を認める」方針を閣議決定した。文科省は5月30日の締め切りで、候補を募集。応募したのは、南東北総合病院などを運営する一般財団法人脳神経疾患研究所(福島県郡山市)、東北薬科大学(仙台市青葉区)、宮城県だ(『南東北、東北薬科、宮城県が名乗り』を参照)。いずれも2016年4月の開校予定。構想審査会は、この特例的な医学部新設のために設置されたもので、大学設置・学校法人審査会に先立ち、応募の中から1校を選ぶ役割を担う。

 第1回会議では、3件の医学部新設構想については概要紹介にとどまり、議論は審査基準に集中した。文科省は、医学部新設の「必要な条件整備」として、(1)震災後の東北地方の地域医療ニーズに対応した教育等を行う、(2)教員や医師等の確保に際し、引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策を講じる、(3)大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り、地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じる、(4)将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じる――の4つを挙げている。

 このうち、特に盛り上がったのが、(3)をめぐる議論だ。「東北地方における医学部新設が、今の医師不足の解消に果たしてつながるのか」という根本的な問題提起のほか、東北地方に医師を定着させる施策の難しさを指摘する意見が出た。「全国に80の医学部・医科大学があるが、“金太郎飴”のように同じような医学部を、81番目として作っても意味がなく、卒業生は東北地方に残らないだろう。ある程度特殊な医学部を作るのがいいのではないか」(全国自治体病院協議会会長の邊見公雄氏)との発言もあり、「地域枠」や「奨学金制度」にとどまらない方策の必要性が指摘された。

 遠藤座長は、3件の構想の全体的スキームは異なるが、医師を地域に定着させる方策については、「3件とも大差はない」との見方を示した。今後予定しているヒアリングなどで情報を集め、検討することが必要だとした。


 7月5日の第2回会議では、応募者からのヒアリング、7月15日の第3回会議では、関係自治体(岩手県、福島県、東北市長会、東北大学、岩手医科大学、福島県立医科大学、日本医師会を予定)からの意見聴取を実施、第4回会議(開催時期は未定)で1校の選定を目指す。なお、応募者の利害関係への配慮のほか、活発な意見交換を行う観点から、第2、3回会議は非公開で行う。

 今後の議論の焦点は、「必要な条件整備」をどのように具体化するか、また具体化した条件を3件の構想に照らし合わせて、いかに審査を進めるかにある。会議後、遠藤座長はこれらの議論は平行して進める方針を説明。いずれの構想も審査基準に合致せず、選定されない可能性もあり得るが、遠藤座長は、「ベストな構想を選定したい」と述べ、選定に当たって、条件を付けることも考えられるものの、「候補なし」は現時点では想定していないとした。

 東北地方に医学部を新設する意味は何か?

 医学部新設の「必要な条件整備」のうち、(3)の「大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り、地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じる」の関連で、「また“ザル”になってしまったのでは、医学部を新設する意味は全くない。いかに“目の細かい網”を作るか、という視点で審査を行う必要がある」と手厳しい指摘をしたのが、邊見氏。「東北限定の医師免許があってもいいのではないか。それくらいの考えがないと、東北地方に医学部を作る意味はない」。邊見氏はこう述べ、議論の参考にするため、東北の既存の各医学部・医科大学の卒業後および初期臨床研修後、どの程度、地元に残っているかについて、データ提出を求めた。

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏からは、根本的な問題提起がなされた。「(医学部新設が)今の東北地方、医師不足が、即効性を持って解決することにつながるのか。医師が一人前になるには、10年くらいかかる。既に2008年以降、東北6県の医学部定員は合計で219人増えている。将来的に医師過剰時代になったときに、廃校にすることはできない。東北地方に医学部を作ることの意味を教えてほしい。医学部新設で、医師不足が加速、あるいは地域医療が崩壊したり、卒業生が東北地方にとどまらないのでは意味がない」。


構想審査会は計12人の委員で構成。第2回と第3回の会議でヒアリングを重ね、第4回会議で選定候補の審査を行う予定。

 総合診療医の養成大学、支持する声も

 (1)の「震災後の東北地方の地域医療ニーズに対応した教育等を行う」の関連では、「東北地方の地域医療ニーズ」とは何かが議論になった。

 独立行政法人国立病院機構理事長の桐野高明氏は、「震災復興という視点からは反対する人はいないが、医学部新設の効果が出てくるのは、(医学部新設までの期間と、医師が一人前になるまでの期間を合わせて)15年くらい先のこと」と述べ、「タイムスパンの感覚が少し合わないと思う。どの点を重視すればいいのかが分かりにくい」と指摘した。

 さらに桐野氏は、「(地域に医師を定着させるための)地域枠が本当に機能するのかについて、若干の疑問がある。一方で、大学はグローバル化を進めており、大学のある県に医師を定着させる動きと逆行するのではないか。震災復興が大きな目的であるものの、その理念の下、非常に特殊な医学部を作るのか、あるいはスタンダードな医学部を作るのか、この点も分からない」とも問いかけた。

 この桐野氏の発言から、議論は発展。邊見氏は、前述のように、「ある程度特殊な医学部を作るのがいいのではないか」と提案。邊見氏がその例として挙げたのが、総合診療医の養成を中心とする大学だ。専門医制度の改革が現在進められていることを踏まえ、「(臓器別の)専門医は、大都市の方が症例数が多く、早く取得できる。一方、幅広く疾患を診る総合診療医の養成は、東北地方の医学部に(患者層などを踏まえると)適している」と述べ、総合診療専門医が19番目の基本領域の専門医として位置付ける動きとも、タイミング的に合致しているとした(『専門医機構の副理事長、有賀氏と小西氏が就任』を参照)。

 長年、総合診療医の養成に取り組んできた、日本医学教育学会理事長の伴信太郎氏(名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻総合診療医学分野教授)も、邊見氏の意見を支持。日本と同様に、長年、医学部が新設されなかったカナダで、2000年代半ばに、ジェネラルな医療に従事する医師養成を柱とする医学部が新設され、成功している事例を紹介し、「やはり特殊な医学部を新設するのが大事ではないか」と述べた。伴氏の“特殊な医学部”は、「今の80大学における教え方とは、教育法が異なっているという意味での特殊」だという。「1年目から地域に行って、学びを地域で行う。臨床実習も、大学病院中心ではなく、地域に出る。卒後の臨床研修とも一体化させたプログラムにすれば、地域で愛着を持って医療を行う医師を養成できる。必ずしも総合診療専門医を養成するのではなく、内科や外科に行く医師がいてもいい」(伴氏)。

 「医学部新設で人々に安心感」と医学教育課長

 これらの委員の質問に回答したのは、文科省高等教育局医学教育課長の袖山禎之氏。

 まず東北地方に医学部を新設する意味について、「大きな目的としては、震災からの復興がある。特に、東北地方の関係団体から、医学部新設についての要望があったことが大きい。また東北地方における医師不足への対応でもある」と説明し、理解を求めた。ただし、医師不足解消への即効性に欠けることは認め、「人材養成なので、直ちに効果が現れるものではなく、10、20年という中長期をにらんだもの。新しく医学部ができることにより、人々の安心感が生じるため、1校に限り認める判断とした」とコメントした。

 さらに、袖山氏は「まさに構想審査会の中で、どんな点をより重視するのかを議論してもらいたい。それに沿って議論していく。スタンダートか特徴のある大学を作るのかについても、まさに議論のポインになってくる」と述べ、文科省として方針を示すのではなく、委員の活発な議論の中で結論を得ることを期待した。

 私学、「定員削減」要件がネックか

 (2)の「教員や医師等の確保に際し、引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策を講じる」について発言した一人が、東邦大学医学部医療政策・渉外部門特任教授の小山信彌氏。「地域からの医師の引き抜きなどで地域医療に支障を来さないことが条件だが、何が引き抜きに当たるのか否かという判定基準はあるのか」と質問。

 桐野氏は、「東北大学のメンバーを入れずに、東北地方にいい医学部は作れないのではないか」と問題提起し、小山氏と同様に、地域医療への影響度を見る数値目標を入れるのかを尋ねた。

 (4)の「将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じる」について、逸見氏は、将来、医学部定員の削減が必要になった場合に、私学の場合は経営が成り立ちにくく削減しにくいことを踏まえると、「候補は1つ(宮城県)に絞られるのでは」と発言。

 そのほか、永井氏からは、「臨床、研究、教育という視点も必要だが、財務状況のチェック」との意見も出て、専門家による精査を文科省に求めた。

「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」の委員
泉美貴  東京医科歯科大学社会医学部門医学教育学分野教授
遠藤久夫 学習院大学経済学部長
岸玲子  北海道大学環境健康科学研究教育センター副センター長
木場弘子 キャスター、千葉大学客員教授
桐野高明 独立行政法人国立病院機構理事長
小山信彌 東邦大学医学部医療政策・渉外部門特任教授
津田喬子 名古屋市立東部医療センター名誉院長、前公益社団法人日本女医会会長
永井良三 自治医科大学学長
濱口道成 名古屋大学総長
伴信太郎 日本医学教育学会理事長、名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻総合診療医学分野教授
邊見公雄 全国自治体病院協議会会長
山口育子 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長



http://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/news/20140616-OYTNT50461.html
県立医学部構想、宮城大に絞り込み 県方針
2014年06月17日 読売新聞

 県が、構想中の県立医学部について、宮城大(大和町)に設置する方針を固めたことが16日、複数の関係者への取材でわかった。医学部のみの単科大の新設も検討したが、準備期間が足りないとして断念した。県は近く、医学部構想を審査している文部科学省にも伝える考えだ。


 県は5月、医学部キャンパスと600床の付属病院を県立で栗原市につくる構想を同省に申請。ただし医学部の運営形態については、〈1〉宮城大の1学部として設置〈2〉医学部のみの単科大を開学――の2案を提出していた。

 県はこれまでの検討で、単科大方式では、医学部新設の手続きとは別に、大学の設置認可申請を行わなければならない上、学長を選出する必要もあり、2016年度の開学は不可能として、宮城大案が妥当と判断。県の構想が認められれば、学生は、教養課程の2年間を大和町のキャンパスで、専門課程の4年間は栗原市のキャンパスで、それぞれ学ぶ予定だ。

 医学部新設を巡っては、県のほかに東北薬科大(仙台市青葉区)と脳神経疾患研究所(福島県郡山市)が、それぞれ構想を申請している。



http://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/news/20140616-OYTNT50485.html
卒業後の定着策、選定ポイントに
2014年06月17日 読売新聞

 医学部新設を巡り、文部科学省は16日、有識者12人による構想審査会の初会合を開き、3者の申請内容の審査を始めた。今後、意見聴取などを行い、早ければ7月下旬から8月上旬の第4回会合で1校に絞り込む。委員からは、卒業後の医師の定着策や総合診療医に特化した育成を求める声が相次ぎ、これらが選定のポイントになりそうだ。

 医学部がある東北の6大学では、地元出身者らを一定数入学させる「地域枠」を設けているが、根本的な医師不足の解決にはつながっていない。委員からはこの日、「金太郎あめのように同じような医学部を作れば、卒業生はまた都会に行ってしまう」などの指摘が続出、卒業後の勤務先を東北に限定するなどの案が出た。また、「総合診療医の育成に特化すべきだ」と臨床重視の医学部を望む意見も出た。

 次回は7月4日で、3者から非公開で意見を聞く。同15日の第3回会合では、岩手、福島両県や東北大、日本医師会などから意見を求める。



http://www.cabrain.net/news/article/newsId/43001.html
日病・堺会長「患者申出療養、統一見解を」- 本格的な議論始まる前までに
( 2014年06月16日 11:19 )キャリアブレイン

 日本病院会の堺常雄会長は14日に開いた社員総会後の記者会見で、政府の規制改革会議が保険外併用療養費制度に新たな「患者申出療養」(仮称)の仕組みを設けることなどを安倍晋三首相に答申したことについて、本格的な議論が始まる前までに「他団体の意見も聞いて、病院団体としての考えをまとめたい」との考えを示した。患者申出療養を創設するには、健康保険法の改正などが伴うとみられるため、社会保障審議会医療保険部会でも議論される見通しだ。【君塚靖】

 堺会長は、「社員総会前の理事会で、患者申出療養へのいろいろな意見は出たが、詳しい内容が見えない状況で議論するのは難しい。例えば、患者さんの安全性がどのように担保され、どこが責任を取るのだとか、議論すべきところは山ほどある」と述べた。このほか同日の理事会では、社会保険診療への消費税の在り方について、消費税率10%への引き上げ時の原則課税を求めていくことを確認した。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/48115/Default.aspx
国立大病院の資金提供GL 寄付金・謝金等を「診療科単位」で公表へ 
公開日時 2014/06/17 03:52 ミクスOnLine

国立大学付属病院長会議は6月16日、高血圧治療薬「ディオバン」による医師主導臨床研究の不正問題を受け、奨学寄附金や講師謝金・原稿執筆料などを診療科単位で明らかにすることなどを柱とした、「企業等からの資金提供状況の公表に関するガイドライン」を公表した。受託研究等については、それぞれ総件数と総額の公表にとどめる方針。名古屋大医学部付属病院の石黒直樹院長は、研究関係で診療科名を伏せる理由について、「企業にとって研究開発の内容が、病院側にとってそうした技術を持っているということが、それぞれ類推されかねない」と説明。「企業機密に関わる」と、理解を求めた。

千葉大医学部付属病院の山本修一院長は会見で、「国立大学付属病院での資金提供状況の報告義務は少数なので、資金提供の全体が把握できずに、透明性が担保できていない」と指摘した。その上で、「ディオバンの臨床研究もそこに問題の一端がある。各病院は適切に処理しているので問題はないが、透明性GLに基づく公表は社会の信頼を得るために必要」と述べ、傘下42大学45病院がGLに基づき、それぞれ資金提供の状況を公表する意義を強調した。

具体的な公表内容は、①奨学寄附金・現物寄付②講師謝金、原稿執筆料・監修料、コンサルティング等業務委託費③受託研究・共同研究・受託事業等④その他(接遇等費用)―の4項目。このうち①と②は、診療科単位でそれぞれの総件数と総額を公表。③はそれぞれの総件数と総額を、④は総額のみを、公表するとした。一定期間後に、受託研究等の細目を明らかにすることなどは現時点で想定しておらず、今後の検討課題という位置づけになる。

なおGLの対象は、国立大学付属病院で活動する全職員で、非常勤も含む。資金提供したすべての企業・団体・個人が対象だ。製薬企業だけでなく、医療機器メーカー、出版社なども網羅する。日本製薬工業協会のような医師別の公表については、「個別に許可が取れない」とした。

国立大学付属病院長会議はGLに基づき、今年9月から同年4~6月分のデータを暫定的に発表する。2014年度以降は、決算が確定次第の対応となる。



http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/blog/hai/201406/537013.html
コラム: 裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
全医師の0.8%しか存在しない“絶滅危惧医種”とは?

2014/6/17 日経メディカル / nikkei BP

絶滅危惧医種(ぜつめつきぐいしゅ)
絶滅の危機にある医種のこと。特に診療科単位で設定されることが多い。種の選定に当たっては、国や学会などの正確性や客観性を基に、生息実態を調査し、現実との乖離(かいり)を推定し、“レッドドクターリスト”の作成、保全すべき診療科の選定、その保全計画の策定等について論じられている(と、筆者が勝手に定義付けた)
 上記は冗談として、医師不足・医師偏在が叫ばれて久しい。「医師が足らずに現場が回らない」とどの科も悲鳴を上げているだろう。医学部新設などの医師不足の緩和策を練られてはいるものの、その効果の検証はまだまだ先だろう。医師不足や偏在の問題は刻一刻と現場を疲弊させている。

 “レッドドクターリスト”の上位に挙げられているのは「病理医」だ。医療者の皆さんは病理医の重要性は十分に理解されているだろう。顕微鏡で細胞の悪性度を判断することで、米国では、“Doctor of Doctors”と呼ばれ、様々な病気の最終診断を担う守護神とされている。その病理医が“絶滅危惧医種”に指定されそうな勢いだ。どの科も医師不足で悩んでいるのは理解できるが、病理医不足はその中でも突出している。まずは、どこまで絶滅の危機に瀕しているか、病理医の現状を見てみよう。

 病理専門医は、29万人ほどいる全医師の0.8%ほどだ。つまり、100人医師が集まっても1人いるかいないかのレベルだ。実数は2232人であり、対人口10万人で1.7人である(2013年9月1日現在)。産婦人科や救急科も少ないと言われているが、最低必要医師数倍率(不足率)を見ると、 産婦人科医2.91倍(65.6%)、救急科2.07倍(51.7%)に対し、 病理医3.77倍(不足率73.5%)と、圧倒的“人気”職種だ(08年日本医師会「病院における必要医師数調査」)。

 さらに、厚生労働省の調査では、05年から12年の7年間に病理医診断料の件数は1.7倍、術中迅速は3.04 倍、免疫染色は2.54倍に増えてきている。驚くべきことに、がん診療連携拠点病院であっても13%の病院で常勤病理医がいない。個人的な話で恐縮だが、福井県で外科医として働いた私にとって看過できないデータを見付けた。なんと、福井県の病理専門医数はたったの8人(13年3月)だ。私が勤務していた病院の病理部は深夜遅くまで電気がこうこうと光っていたのを覚えている。まさに、福井県の最終診断を担っている「8人の侍」だ。

 また、数が少ないことだけが問題なわけではない。病理医の世界でも「高齢化」の波が容赦なく襲ってくる。病理専門医の平均年齢は約52.4歳(12年9月現在)。さらに、今後5年以内に現在の病理専門医の約5分の1に当たる400人超が定年で保険医療機関の常勤職を離れる可能性があるのだ。一方、新規病理専門医数はここ数年ほぼ横ばい状態であり、高齢化がどんどんと進行している。がん診療を中心に、増える仕事、少ない人員、ご高齢な医師による過酷な労働環境が目に見える。

 嘆いていても仕方がない。なぜ病理医が不足するのかを見てみよう。

(1) 医学生や研修医への知名度が不十分
(2) 病理医のキャリアパスが限られている(開業という選択肢が少ない)
(3) 病理医のイメージが悪い

 厳しい見方もあるが(特に(3))、これは日本病理学会のお偉い方から聞いた話であるから、当事者の方々も理解していると考えている。病理医の方々怒らないで下さい。

 学生時代に受けた教育により、暗い、汚い、地味、剖検業務、顕微鏡相手などのイメージを持っている若い医師が多いかもしれない。また、文部科学省配下の医学部では病理学は基礎医学に分類され、厚生労働省配下の病院では病理診断は検査の一部とみなされている。これから進路を決めようとする医学生に少々魅力を訴えにくい状況だ。

 しかし、現状の病理の世界は、古典的な形態学に止まらず、生化学や分子生物学の領域も複合した総合科学として変わりつつあり、より臨床サイドへ進出するチャンスが増えてきている。さらに、病理科は標榜科にも認められ、開業という選択肢が膨らむ可能性も出てきている。女性医師が増えてきている昨今、当直などがなく比較的子育て支援が進んでいる診療科として病理科は魅力的だろう。

 といっても、なかなか急に病理医の数は増えないだろう。そこで切り札が創られた。

 日本のがん診断の質の低下を防ぐべく、病理医不足問題を解決しようと、職種を超え、業種を超え、多くの有志が議論し、ある解決策が講じられたのだ。NPO法人「がんの早期診断・治療に必要な病理診断の総合力を向上させる会」の結成だ。国民全体の幸福を追求し、医療の質、特にがん診断の向上を目指すべく、それに関係する医療者や団体、企業が一堂に会しての大きなうねりを生むための取り組みだ。

 ついに、病理医側だけでなく、他科や企業、患者さんなどの声が一つとなって、大きな運動となり始めた。病理医側からはこれまでもこれからも病理医不足を社会に訴えていくだろう。ただ、どうしてもある職能団体のための一定の利益誘導と取られかねない懸念もある。本NPOは、日本における総合診断力の質の低下の懸念とさらなる向上のために、産官学、そして市民が連携して動き出したのだ。病理医不足解消の切り札である本NPOの今後の期待すると共に、本NPOのように、医師だけの声でなく横の壁を越えたさまざまな動きが医師不足や医師偏在の解消の一助となるように願っている。



http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140616/plc14061622470014-n1.htm
【成長戦略】
混合診療拡大は“玉虫色”決着

2014.6.16 22:47 産經新聞

 新成長戦略素案に掲げられた混合診療拡大策「患者申出療養」(仮称)は、規制改革会議の当初案に比べ内容が大きく後退した。成長戦略の目玉が欲しい官邸側と現行制度維持を目指す厚生労働省などとの綱引きの末、“玉虫色”の改革プランに落ち着いた格好だ。

 3月に同会議が示した当初案「選択療養制度」は、患者と医師の合意があれば混合診療を幅広く認める内容だった。これに厚労省は「安全性の担保」を理由に難色を示し、日本医師会(日医)も「国民皆保険が揺るがされる」と強く反発した。

 調整の結果、患者申出療養には、専門家の合議機関が安全性を認めない限り混合診療の対象にはしないことなどが明記。混合診療拡大を規制改革の柱に据えながらも、慎重派に対する「最低限の担保」(日医の横倉義武会長)を盛り込んだというわけだ。

 そもそも、現在でも混合診療を限定的に認める「保険外併用療養費」という制度がある。患者申出療養は、審査期間の大幅短縮などの変更点はあるが「大枠では現行制度の範囲内」(厚労省幹部)の仕組みだ。今後の制度設計の議論でさらに“有名無実化”が進む可能性も否定できない。(松本学)



http://biz-journal.jp/2014/06/post_5141.html
医療費削減狙う規制改革に「岩盤」 健康食品とサプリ、世界に遅れる規制緩和と経済的損失
文=井上久男/ジャーナリスト
2014.06.17 Business Journal

 本題に入る前に筆者の基本的な考えを述べると、安倍政権の集団的自衛権の行使容認に向けた動きには反対だが、いわゆるアベノミクスの「第三の矢」と呼ばれる成長戦略における規制改革、例えば農協改革や医療改革については概ね賛成だ。
 特に産業活動において「新陳代謝」が緩やかな日本においては、規制改革によって既得権を打破していかなければ、能力とやる気のある新興勢力が新規参入できず、健全な競争にも促されずに、産業活動が次第に停滞していく。その結果、消費者は価格が高いうえに、サービスや商品の中身はたいしたことのないものを買わされる羽目になる。最終的なツケは消費者が払うことになる。

 ただ、「新陳代謝」のプロセスでは、さまざまな問題が起こることも十分にあり得る。例えば、規制改革によって混合診療が認められることにより、先進的な医療行為を受けた患者が、想定外の副作用で苦しむこともあるかもしれない。しかし、これは誤解を恐れずに言えば、社会が大きく変化していく際にはどこかで支払わなければならない「代償」ではないか。当然ながら起こり得るリスクを想定してそれを排除する努力は重要だが、そこばかりに注力していれば、「石橋を叩きすぎて渡らない」といったことになりかねないだろう。

 規制改革を進めていくためには、官庁が事前に利害関係者と調整して細かいルールをつくることよりも、大きな方向性を決めて自由に参入を促し、参入後に法律違反や倫理上の問題などがあれば厳しく罰したり、業界から追放したりする「事後監視型社会」への変貌が求められる。健全な自己責任型の社会への変貌が必要だともいえるだろう。そうでなければ大胆なイノベーションも起こらない。しかし、日本は「お上頼み」の国柄であり、国がつくった規制で守られることを国民が好む傾向にあるのではないか。こうした意識も変えていかなければ、大胆な規制緩和はできないだろう。

●厚労省、医師会、製薬業界の癒着か

 冒頭にも述べたように規制改革は安倍政権の重要な経済政策のひとつだが、筆者が取材をしている分野では、昨年提示された規制改革の方向性が大きく後退している。それは、健康食品やサプリメントの機能性表示に関する規制改革でみられる。いったんは掲げられた規制改革の狙いや、現在に至って潰されそうになるまでの流れを以下に説明していく。

 安倍晋三首相は昨年6月5日、「成長戦略第三弾」と題する内外情勢調査会での講演の冒頭で次のように語った。

「健康食品の機能性表示を解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには的確な情報が提供されなければならない。当然のことです。現在は、国から『トクホ』の認定を受けなければ『強い骨をつくる』といった効果を商品に記載できません。お金も時間もかかります。とりわけ中小企業・小規模事業者にはチャンスが事実上閉ざされていると言ってもいいでしょう」

 安倍首相の発言を補足説明すれば、日本ではこれまで「血圧が気になる方へ」といったような機能性表示は、国から認可を受けた特定保健用食品(トクホ)や栄養機能性食品にのみ許されてきたが、健康食品やサプリでも科学的なエビデンスがあるものには、機能性表示を認めるというものである。直後の6月14日には健康食品やサプリの表示規制の緩和を実施することを閣議決定した。

 安倍政権が健康食品やサプリの機能性表示の規制を緩和させていく狙いには、医療費の削減がある。日本では年間に約1兆円ずつ医療費が増大し、健康保険財政などを圧迫している。ここに手を打たなければ、いずれ国民皆保険制度は維持できなくなる可能性がある。圧迫の大きな要因は、病院にかからなくていい程度の病気でも病院に行き、しかも大量に薬が処方されていることにある。筆者の知る限り、高齢者の間では、貼り薬や風邪薬を医者に頼んで他人の分まで処方してもらうケースがある。国民皆保険制度によって、本人の負担は少なくても、結局は健康保険財政の負担が増え、いずれそのツケは、保険料の値上げなど国民に回ってくる。

 また、日本人の平均寿命は延びたものの、元気に生活できる「健康寿命」は男性で70.4歳、女性で73.6歳であり、平均寿命との差は10歳近くも開いてしまった。70歳頃に健康を害して、余命を薬漬けで過ごすケースも多い。こうしたことも積み重なって医療費の増大につながっている。適切に医療を受ける権利は否定されるべきではないが、薬への過度な依存には問題があり、自助努力で健康を守っていくことの重要性は指摘されるべきである。こうした構造がまかり通っている背後には、厚生労働省-医師-製薬業界が癒着した「業界トライアングル」があることも否定できないだろう。

 規制改革の政策には、医療費の増大に対応すべく、国民が自助努力で健康食品やサプリを活用して自分の健康は自分で守り、薬漬けにならない健康的な生活を目指す社会を構築していくという狙いが含まれている。「セルフケア」や「セルフメディケーション」という考え方が大切になってくるだろう。

● グレーンゾーン広告が氾濫する背景

 しかし、現状では薬事法などによって健康食品やサプリに機能性を表示することができず、消費者に適切な情報が開示できない。その結果、グレーゾーン的な広告が氾濫する。その象徴的なものが、グルコサミンの広告で女優が膝に手を当てて回しながら「ぐるぐるぐるぐる グルコサミン」などと口ずさむテレビCMだろう。薬事法では薬以外は部位指定や効能を表現することが禁止されているため、「膝に良い」とは文字で表現できないが、女優が膝に手を当てているだけで「膝に良い」とは言っていないので、グレーゾーンなのである。もちろん消費者は、膝が痛い人が飲むものと受け止める。

 規制緩和によって、科学的なエビデンスがあれば、「膝の健康に良い」「関節の健康を促進する」などの表示ができるようになる。消費者に誤解を与えず、選ぶための情報を正確に提供していく狙いもあるのだ。消費者がその効果を正確に理解しないまま飲むということは、消費者保護の観点から見てもよくない。摂取することでどのような効果が期待できるのかを、明確にする必要がある。また、機能性をしっかり表示できるようになれば、薬との飲み合わせの注意も表現できるようになるはずだ。

 安倍政権がモデルとしている規制改革は、米国が1994年から始めた「ダイエタリーサプリメント制度」にある。医薬品とサプリの区別やサプリ摂取の目的の明確化、サプリに対する知識と理解の促進、産業育成、医療費削減などの目的で始まったものだ。この結果、米国ではサプリや健食産業が急成長し、約20年間で商品数が16倍、業界全体の売上高も7倍の約4兆円にまでそれぞれ拡大した。例えば、エキナセアやイチョウ葉エキスなどは、加工方法や調整方法が進歩して品質が高くなるのと同時に、市場規模が拡大すると、他国からウコンなどの新しい素材も持ち込まれ、最新の加工法とミックスして機能性が強くなった商品もある。米国では規制緩和によって好循環が生じ、そこからイノベーションが生まれた。そのプロセスでは悪徳業者も出現したが、結局は消費者の選択肢が広がると同時に消費者の目が肥えて、優良業者のみが生き残る結果となった。

 実は先進国でサプリや健康食品の定義が法的に明確になっていないのは日本だけである。ドイツでは「アポテイク」と呼ばれる薬局があり、そこでは医師が薬を飲むほどの症状ではないと判断すると、ハーブなどの健康食品を処方することもある。TPP(環太平洋経済連携協定)によって、健康食品やサプリの国際的な流通が増えることも想定されるため、機能性表示について各国間で整合性を取る動きも起きている。例えば、ASEAN(東南アジア諸国連合)は、米国のダイエタリーサプリメント制度を参考にしようとしている。日本もグローバルスタンダードに対応しなければ、世界で後れを取ってしまう可能性がある。
(文=井上久男/ジャーナリスト)


  1. 2014/06/17(火) 05:31:12|
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