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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月16日 医療一般

http://www.m3.com/iryoIshin/article/155922/?portalId=iryoIshin&pageFrom=openIryoIshin
レポート  医療維新
「ジェネラリスト宣言」を採択
Generalist Japan 2012、都内で約250人集め開催

2012年7月16日 橋本佳子(m3.com編集長)

 ジェネラリスト全国会議「Generalist Japan 2012」が7月16日、医師や医学生ら約250人を集め、東京都内で開催され、議論の総括として「医療者が有機的に連携し、社会とのつながりを再構築することで生老病死が生活の一部になっている社会」を目指すという、「ジェネラリスト宣言」を採択した。

 同全国会議の主催は、教育事業などを通じてジェネラリスト(家庭医・総合診療医)の育成を目指す目的で、2012年4月に発足した非営利法人(一般社団法人)「Medical Studio」、後援は日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会。

 会議の開催に先立ち、「ジェネラリストが増えた社会のあり方」を募集、計103件のメッセージを 40に分類。会議当日、参加者に「共感できる未来像」を三つまで投票してもらい、その結果、上位に入った未来像を要約する形で、「ジェネラリスト宣言」をまとめた。上位三つに入ったのは以下の通り。

【ジェネラリストが増えた社会のあり方】の投票結果
1位 ジェネラリストが協調・連携することで、スペシャリストの真価が効率的に発揮され、互いに尊厳を持って、意見交換・連携ができる社会
2位 健康、生き方、死に方について普段から考え、話し合える社会
3位 人生に医療が寄り添う懐の深い社会

 ジェネラリスト全国会議は、午前9時30分から午後5時まで1日かけて開催。午前中は、「Medical Studio」の代表理事で、医師の野崎英夫氏の趣旨説明のほか、「ジェネラリストは日本の医療を救うのか」をテーマにオープニングパネルを実施。午後は、10人のジェネラリストによる円卓会議、「ジェネラリスト大国ニッポンになるためには」のほか、同時並行で「ジェネラリストの魅力を伝える医学教育」と「越境者たれ!コミュニティを変えるジェネラリストとは」の二つのテーマのセッションが行われた。

 円卓会議では、ジェネラリストの定義や役割、養成のための教育・研修、質の保証、キャリア形成支援、医療界・社会でジェネラリストが認められるための方策、ジェネラリストとして取り組むべき臨床研究など、実に多角的な視点から議論が展開された。何らかの結論が出たわけではないが、ジェネラリスト自身が自らの問題としてアイデンティティーを確立するとともに、社会に対して、「ジェネラリストは、誰に、どこで何を提供する医師なのか」を明確にする重要性が浮き彫りになったと言える。

 会議を通じて得た知見を基に、参加者一人ひとりも「私のジェネラリスト宣言」をまとめ、その一部が紹介された(下記を参照)。「Medical Studio」理事で、東京大学医学教育国際協力研究センター講師の孫大輔氏は、「ジェネラリストの魅力を日々情報発信していく」と宣言。同じく理事で、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授の坂本文武氏は、「ジェネラリストは誰もが必要だと思っていても、これまではなかなかうまく行かなかった領域」であるとし、非医療者の立場としてジェネラリストの育成や支援にかかわっていくとした。

ジェネラリスト全国会議には約250人が参加、学生や若手医師の姿が目立った。

【私のジェネラリスト宣言】(会場で読み上げられたものを抜粋掲載)
・これからもニーズ主義でいくぜ
・ジェネラルマインドを持つ。社会との対話から見い出される問題点を解決するために、情熱を抱いて汗をかきたい。
・還暦を過ぎたが、真のジェネラリストになるべくがんばりたい。
・将来のホスピタリストとして、次の世代を育てることに関わりたい。まず今できることとして、研修医の勉強会を続けていきたい。
・地域の医療人の総合支援のつながりを作りたい。ジェネラリスト、総合診療を目指すそれぞれの医療施設が、実は競合関係に入りつつあり、お互いの理解が消失しつつあるので、もう1回その支援体制を作りたい。
・家庭医とか、ジェネラリストなどという枠組みではなく、○○(本人の名前)という医師になるために、自分が自分であるための行動をやっていきたい。
・国民のためにジェネラリストができることを、国民、ほかの医療者に広めていき、そして必要とされるようになる。
・ジェネラリストとしての情報収集と発信を自分なりにやっていきたい。
・パッション。
・顧客に応じた発信方法を工夫していきたい。
・すべては患者のために。
・「越境」は帰れる故郷があるからこそ。「越境」して得た経験は、ジェネラリストの未来に還元する。
・医療の意義を考える機会を定期的に作っていく。
・まず自分の足元から備える。被災地から人材育成を始める。
・自分がジェネラリストというキャリアを選択した場合の10年後、20年後はまだまだ見えてこないけれど、ジェネラリストとして充実した仕事、生活ができるのなら、すごく、すごく魅力的。
・「私が目指すジェネラリスト100のストーリー」を発信できるようにがんばっていきたい。
・患者さんに話す時に、「家庭医です」と自己紹介する。
・自己満足で終わらない。
・ジェネラル精神を培うために、自分自身に深みを付けて、様々な人と交流していきたい。
・ジェネラリストとは、ゴール設定のプロデューサーであると同時に、稼げること、便利であることが、存在感を増すことにつながる。
・ジェネラルマインドを体現し、極めていく。
・患者さんが抱えるリスクと、共に向き合うアドボケーターとなる。
・地域の方ともっとかかわり、エバンジェリストを増やす努力をする。
・今やパラダイムシフトの到来。制度設計と評価、これを忘れずに一つひとつの課題を整理し、前に進めていきたい。
・ジェネラリストの面白さ、大変さを伝え、対話をしていく。
・よりケアにかかわる、より住民にかかわる、より社会にかかわる。いろいろな方をつなげられるジェネラリストとしてのあり方を強く持ちたい。
・ジェネラリストを増やす一歩は、医師として、人としての魅力を示す卒前教育と、一般市民へのアピール。
・毎日一つ、患者さんのためになることを勉強する。



http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=15440
病院の垣根越え医師不足解消 研修医 地域育成型に JA愛知厚生連海南病院 
(2012年07月16日)日本農業新聞

 JA愛知厚生連海南病院(弥富市)は、地域の市民病院や医師会に呼び掛け、病院の垣根を越えた研修で若手医師を育成し、医師不足を解消した。地域住民への勉強会も開き、「軽症者は診療所、重症は病院」と医療機関の役割に応じた来院を促し、地域医療の中核的な役割を果たしている。
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http://www.m3.com/iryoIshin/article/155715/?portalId=iryoIshin&pageFrom=openIryoIshin
インタビュー  医療維新
国際医療福祉大学にこだわる理由なし - 黒岩祐治・神奈川県知事に聞く◆Vol.2
「医学部新設の意思表示」の意味で国に要望

2012年7月17日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――人材養成の観点から、医師不足問題についてもお聞きします。宮城、新潟、静岡、そして神奈川の4 県知事の連名で、2011年12月20日、国に対して医学部新設を要望しています。県のグランドデザイン策定プロジェクトチームがまだ中間報告の段階であり、医学部新設の是非については両論併記でした。この時点で要望を出した理由は。

 神奈川では医師も大変不足しています。特に勤務医が不足している問題があります。この問題については、非常に長い歴史があり、かつては「医師過剰時代が来る」と言われていた。

 厚生労働省、役所というのは、いったんある方向性、見解を決めると、現場からは「医師が足りない」という声が上がってきても、それを変えようとはしない。矢崎(義雄)先生は、ご自身が座長を務められた検討会(編集部注:厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」、2006年7月に報告書)で、「医師不足ということを明記したい」とおっしゃっていた。ところが、厚労省から「冗談じゃない。診療科による偏在、地域による偏在であり、決して全体としては不足しているわけではない」と言われ、押し切られたそうです。この経緯をご本人から聞いたことがあります(編集部注:報告書に付記した座長談話で、「医師が不足しているため、医学部の定員を増やす必要がある」と付記)。

黒岩祐治知事は、医学部新設に当たって、「一番条件がいいところを誘致していくのが、県のスタンス」だと言う。

 しかし、現場からは「医師不足だ、医師不足だ」という声がどんどん高まってきた。ようやく舛添(要一)厚労大臣の時に、医師不足を認めた(編集部注:2008年6月の「安心と希望の医療確保ビジョン」で、医学部定員増を打ち出す)。それではどうするのか。医学部を新設するのか、既存の医学部の定員を増やすのか。あるいはメディカルスクールのようなものを作るか。

 私自身はあの時、医学部新設が大きなテーマとして浮上したと思った。しかし、その後、いろいろな政局の中で、うやむやのまま今に至っています。医学部を新設しようとすると、医師会が反対するという構図で来たわけです。その中で、神奈川県では高齢化が急速に進む現状がある。それとともに、医師自身も高齢化していくという問題もあります。現役で働ける医師が減っていく。だから、医学部を作るべきだと思っていました。

 ただ、グラントデザイン策定プロジェクトチームでは、意見がまとまっていなかった。だから私は、自分自身の中では、「医学部を新設するといい」と思いながらも、議論の行方を見るポジションでした。その時に昨年末、たまたま新潟県の泉田(裕彦)知事から電話があって、「新潟県も医学部を作りたいと思っている。一緒に行きませんか」と呼びかけられた。「意思表示、エントリーをしておかなければ、将来、『医学部を作る』と言った際に、具体化の作業が始まらないだろう」というのが私のその時の認識。「新潟が行くのであれば、神奈川もエントリーします」ということで国要望したわけです。

 その後、今、言われたように、「プロジェクトチームでまだ決めていないにもかかわらず、なぜ知事は医学部新設を国に要望したのか」となり、紛糾した。「知事の真意を聞こう」ということになったため、「真意を説明します」と出向いたら、その前に県医師会のメンバーが委員を辞めていた。抗議の撤退をしていた。残ったメンバーに対して、私は今のような説明をしたわけです。「エントリーしただけです。エントリーしないと話が始まらないからです」と言ったら、皆さんは「あ、そうだったのか」と納得された。

 その後、ここの部分は正確にお話をしますが、神奈川県医師会長とお会いした際に、「我々は誤解をしていました。間違った情報を入れる人がいた。申し訳ございませんでした」と言われ、県医師会の別の副会長を委員として戻した。私が謝って委員として戻ってもらったように、一部で伝えられていますが、それは違います。

――先日、大久保神奈川県医師会長にインタビューした際、「知事が特定の大学を念頭に置いていると思ったが、知事は『念頭にない』と言ったので、それで『誤解していた』と答えた」とお聞きしました(『医学部新設、うさんくさい」と言ったわけ - 神奈川県医師会会長・大久保吉修氏に聞く』を参照)。

 それはありました。私は、知事に就任する前まで、国際医療福祉大学大学院の教授でした。国際医療福祉大学には、まさに医学部を作りたいという気持ちがあることは間違いない。だから、私が「医学部」と言うと、「国際医療福祉大学の医学部を作ろうとしているのか」と思われたという話です。そんなこと別に思っていません。プロジェクトチームのメンバーにも、このことを説明しています。

――知事は、現時点でも「特定の大学を念頭に置いているわけではない」ということでしょうか。

 現実問題として、水面下では、いろいろな大学と接触しています。私自身が、国際医療福祉大学にこだわらなければいけない理由は一つもないわけです。本当にないです。条件面をはじめ、様々な面で折り合うところに来ていただきたい。

――医学部を新設する場合、県立ではなく、どこかの大学を誘致する。一番条件がいいところを、県としては探すというスタンスになりますか。

 そういうことです。



http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/313143
医療の最先端研究 理系高校生が体験
2012年7月17日 00:58 =2012/07/17付 西日本新聞朝刊=

 理系大学の研究内容を高校生に紹介する「ひらめき☆ときめきサイエンス」が16日、八幡西区の産業医科大であり、参加した福岡、熊本両県と東京、大阪の13校に通う1~3年生計21人が、医学部での実習に臨んだ。

 このイベントは、子どもの理科離れが指摘される中、大学の最先端の研究に触れることで科学への理解や関心を深めてもらうのが狙い。同大が開くのは2回目。

 この日は「神経活動を自分の目で見てみよう!」をテーマに、生徒たちがカエルを解剖して神経を取り出したり、神経細胞の動きを特殊な顕微鏡で観察したりした。

 同大は、体内でつくられるホルモンの遺伝子に、緑や赤の蛍光タンパク遺伝子を融合させ、「ニューロン」と呼ばれる神経細胞を蛍光顕微鏡で観察することに成功。愛情や信頼感といった人間の脳の高度な機能との関わりも指摘され、医学界で注目されている。

 生徒たちは実験結果を発表し、大学側から記念の「未来博士号」を授与された。



http://www.sakigake.jp/p/special/12/iryo/article3_04.jsp
あきた 医療を問う 第3部・人材育成
[臨床研修病院]
手厚い指導心掛ける やりがい伝え医師勧誘

(2012/07/16 付)秋田魁新聞

 由利組合総合病院(由利本荘市川口)で4月から、2年間の臨床研修に入った針金幸平さん(26)は横浜市出身。「一度病院を見に来いよ」。日本医大(東京)6年生だった昨年、仙台市で開かれた病院説明会に参加。たまたま同病院のブースを訪れ、橋本正治副院長から声を掛けられた。
由利組合総合病院で臨床研修中の針金さん(右)=由利本荘市川口

 「病床数が多く、たくさんの症例を経験できそうだった。都会に比べ娯楽の少ない環境でじっくり学ぶのもいいと思った」と針金さん。3カ月の外科研修を終え、「先生たちがよく面倒を見てくれる。研修医が少ないため手術には全て入れてもらえた。もし外科に進むなら、研修後もここに残るのもありかな」と充実した表情を見せた。

 由利組合病院で研修委員長を務める橋本副院長は「研修医を数十人単位で抱える都会の病院とは違い、研修医一人一人が幅広く臨床経験を積むことができ、精神的にも鍛えられる」と地方病院での研修の利点を強調する。

  ■―――■

 2004年に始まった臨床研修制度は、医師免許取得後、2年間の臨床研修を義務付けている。医師の県内定着を促進するには、県内の病院を研修先に選んでもらえるかどうかが鍵となる。

 県は06年、県内14の臨床研修病院と共に県臨床研修協議会を設立。病院合同説明会や指導医講習会、研修医講習会、医学生スキルアップセミナーなど研修医確保に向け、病院と共にさまざまな事業を展開している。

 針金さんが研修する由利組合病院の研修医は、04年の13人をピークに、05~09年は11~6人で推移。しかし、09年7月以降、消化器科の常勤医が不在となる時期があったため学生に敬遠され、10~12年は3~1人にとどまった。

 他病院の協力を得て、消化器系の研修に支障は出ていないが、学生の間に広がったマイナスイメージが払拭(ふっしょく)できず、研修医を一定数確保することは難しいという。

 「地域医療に頑張って取り組んでいる様子を見せることが大切。疲弊している姿ではなく、患者さんに感謝されている姿、楽しんで仕事をしている姿を見せたい」。橋本副院長は研修先に選んでもらうため、「やりがい」を伝えることが重要だとする。

 県内の臨床研修病院は、針金さんのように出身も大学も県外という人材を呼び込む努力をしている。ただ実際には、県内病院を研修先に選ぶのは秋田大出身者が大半だ。秋田大の1、3、5、6年生は毎年、県内の臨床研修病院で実習しており、病院にとって研修医勧誘の場ともなっている。

 「卒業が近づくとみんな都会志向が強まり、研修先に有名病院を選びたがる。地域医療への関心が高い学生に早くからアプローチすることが大事」と橋本副院長。

  ■―――■

 由利組合病院では、研修医が担当医師と相談しながら研修プログラムを作成できるようにしているほか、院内勉強会を週1、2回開くなど「手厚い指導」を心掛けている。

 菊地顕次院長は「病院を挙げて、若い医師を育てようという意識が芽生えている。『もてなす』のではなく、一人一人を大事にしながら地域医療に真摯(しんし)に向き合う姿勢を伝えていきたい」と話す。

県内の臨床研修病院
 医学部を卒業し医師免許を取得した研修医が、2年間の臨床研修を積む病院。県内では秋田大医学部付属病院やJA秋田厚生連が運営する6病院など計14病院が厚生労働省から指定されている。



http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120709/234278/?top_updt&rt=nocnt
「コンサルタントが見た“大阪都”」
老朽化した病院の建て替えに、無理やり黒字化するプランを描いていた
府市統合で、必要な病院の維持と投資効率を見直すことがやっと可能に

* 上山 信一 、 大嶽 浩司
2012年7月17日(火)日経BP


 上山信一氏(慶応大学総合政策学部教授)は大阪府・市の特別顧問を務める。現在、府市統合本部は「大阪都構想」の実現に向けて、府・市の主要事業の民営化、統合プランを作成中である。上山氏はかつてマッキンゼー社などで一緒に仕事をした経営コンサルタントたちの力を借りて各事業の生産性、経営形態などの評価を行っている。前回、前々回はモノレール事業について考察した。

 そのほかにも、統合と改革の対象となる事業は数多いが、その1つに、府立と市立の公立病院事業がある。5月末、府市統合本部は病院事業の改革の方針を発表した。それによると市立3病院を運営する大阪市病院局を2014年度までに「地方独立行政法人」とし、2015年度までに府立5病院を経営する独法の「大阪府立病院機構」と経営統合する。また府立病院や市立病院で働く医師、職員ら約5300人は非公務員化されることになった。

 また法人の統合に先立ち、2015年までに老朽化している市立住吉市民病院(住之江区)と近くの府立急性期・総合医療センター(住吉区)に機能集約して新病棟を同センター敷地内に建てることも決めた。

 今回は府と市の特別参与として、府市病院の経営統合案をまとめた大嶽浩司・自治医科大学准教授(経営コンサルタント、医師)に登場していただき、公立病院事業の改革について、議論のポイントなどを語ってもらった。(聞き手は、伊藤暢人)

今回は5月末に発表された大阪府市公立病院の経営統合についてお話をお聞きします。まず、府と市を統合する「大阪都構想」において、病院事業はどのような位置付けにあるのかを教えてください。

上山:府と市の統合を考えた時、病院事業は真っ先に検討すべきテーマの1つでした。なぜなら患者からみたら府立か市立かはどうでもいいのです。現在、大阪には府立病院と市立病院が両方で8つあります。それぞれ立派に役割を果たしていますが、互いの近所に病院があっても、お互いバラバラにやってきました。経営統合して適正配置すれば機能もアップし、無駄も省けます。

 公立病院統合のポイントは3つあります。第1には病院を経営する法人の統合です。理事会や事務部門を1つにする。そして大阪全体の観点にたって公立病院の役割を見直す。

 第2に病院そのものの再編。たとえば府立病院Xと市立病院Yが近所にあって、同じ機能を持つならば、ひとつに統合して強化するといった選択がありえます。

 第3に民間も含めた府域全体の医療資源をどう有効活用するかという点です。過疎地と違って、大阪はむしろ医療の供給過剰地域です。大学付属病院、民間病院、クリニックなどいろいろある。大阪の医療ニーズがどれだけあって、民間、大学病院もたくさんある中で公立病院の果たすべき役割を考え直す。大阪都が誕生して都立病院になった時、都の医療政策で都立病院はどのような役割を果たすべきか。もしかしたら不要かもしれないという検討です。

医師の言葉がわかるコンサルタント経験者を迎えた

 現在、大阪府と大阪市の担当部門から成る病院タスクフォースチームがこうした3層にわたる、複雑なテーマを検討しています。しかし医者は技術屋の最たるもので専門用語がいっぱい出てくる。行政学では「情報の非対称性」というのですが、医者にしかわからないこと、政治家や行政マンには判断できない事柄も出てきます。そこで、大嶽さんに特別参与として参加してもらうことにしました。

 大嶽さんは臨床医として勤務する傍ら、シカゴ大学のビジネススクールでMBA(経営学修士)を獲得し、マッキンゼーで経営コンサルタントをやった経験があります。都内で病院改革をやったこともあり、現場の実務にも詳しい。医者と議論し、屁理屈が出てきたら論破してもらうのに格好の人材です。

目前の問題が住吉市民病院の建て替えだった / 大阪府・市の特別参与 大嶽浩司さん

大嶽:3 層のうち、本当は最も話し合いたいのは第3番目にあたる大阪全体での医療資源の有効活用についてです。でも、そういう大きなテーマを議論するには時間がかかる。また府と市というカルチャーの異なる2つの組織が一緒になろうという時に、公立以外の病院を含めたあり方論や、いきなり理想論を語り合ってもうまくいきません。

 一方、知事と市長からは目の前の現実問題として、老朽化した市立住吉市民病院(大阪市住之江区)の建て替えをするべきか否かという問題提起がありました。この問題は非常に具体的で、府と市が一緒になって解いていく試金石ともなるテーマです。そこでまずはこの課題をクリアしようと考えました。

大阪以外の地域に住んでいる読者にとっては、大阪の公立病院がどういう状況にあるかがわかりません。まず、どういう病院があるかから説明してもらえますか。

上山:大阪には府立病院が5つ、市立病院が3つあります。

 大阪府は2006年に直営をやめて、独立行政法人の大阪府立病院機構を設立しました。府は同機構を通じて現在、5病院を経営しています。急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)、呼吸器・アレルギー医療センター(羽曳野市)、精神医療センター(枚方市)、成人病センター(大阪市東成区)、母子保健総合医療センター(和泉市)と機能ごとに分かれています。

 一方、大阪市立の3病院は大阪市役所による直営のままで、市役所内の病院局が運営しています。高度医療を提供するという位置付けの病床数1063床の総合医療センター(大阪市都島区)、淀川以北をみる総合病院の十三市民病院(大阪市淀川区)、南部医療圏の総合病院で病床が157しかない小規模の住吉市民病院があります。

 このうち、住吉市民病院は1950年の開院で、施設が老朽化しています。耐震強度も低く、2015年度中に耐震化が必要とされていました。

 実は大阪市はダブル選の前の昨年5月に、産科や小児科に特化した120床程度の新病棟に建て替える基本構想を公表し、2012年度予算に基本設計の費用を盛り込む予定でいました。

 しかし、昨年11月、橋下徹市長が就任します。そして市立3病院と府立5病院の経営統合を目指す方針を発表したため、計画を見直す必要が生じていたのです。

建て直し計画案を取りやめ、統合する方向で考え直すことにしたのですか。

大嶽:いいえ、最初から統合と決めていたわけではありません。しかし、昨年、市が発表した建て替え案は費用も大きく、需要に比べてずいぶん背伸びして作ったものだといわれていました。少なくとも現実に即した案を作る必要がありました。そこで近所の府立病院との統合案のほか、現地での建て替え案なども含めて、複数の選択肢を分析・検討しました。

バラ色の未来を描いて黒字になるプランを無理に作った

背伸びというのはどういう点ですか。

大嶽:平松前市長のときに市役所が作った建て替えプランでは、分べん件数を1000件、病床数を120と設定していました。しかし、現在、住吉市民病院が取り扱っている分べん件数は726件です。子供を産む数が減っている今のご時世に、それほどたくさんの産婦さんを連れてくることは難しい。また公立病院を拡大することで、頑張っている民間病院を圧迫することにもなりかねない。

 1000というのは無理をした数字だということは、プランを作った市の担当者もわかっていた。ただ、そうしないと収支が取れない。

 病院の建設には非常に大きな設備投資が必要です。レントゲンだのCT(コンピューター断層撮影装置)だの、高額な設備・機器を導入しなくてはならない。医療IT(情報技術)システムも構築しなくてはならないし、給食用のお釜だって買わなくてはいけない。規模が小さな病院では、黒字化が難しいのです。

 昨年、市が作った建て替えプランでは、57億円の費用がかかると見込んでいました。病床稼働率90%で試算した場合、1000件のお産を扱っても、初年度は約1600万円の赤字。7年目からようやく黒字化するという見込みになっています。

 赤字を垂れ流し続けるようなプランでは、当然、市民の支持は得られません。議会を通すためには、黒字になるようなプランを作らなくてはならない。それにはこれくらいの分べん件数が必要だという逆算で作ったのが当初の建て替え案でした。リサーチをして、「1000件ぐらいの需要があります」というのではなかったのです。

上山:それで今回は現状の患者数に即した現実的な建て替え案を作ってみたのです。病床数は80床程度、分べん件数は750件と設定した。これだと、建て替えにかかる費用が約45億円。同じく病床稼働率90%で試算して、初年度は約7000万円の赤字。7年目から4000万円の赤字に縮小する。赤字はずっと続くわけです。

 一方で住吉市民病院からわずか約1.8kmの距離に府立急性期・総合医療センターがあります。病床数は768。高度救急救命センターもある、とても大きな病院です。そこで、建て替えをやめて府立の方を拡張する、つまりこの2つの病院を統合したらどうかと考え、プランを作成しました。

大嶽:これは府立の方に産科と小児科の新病棟をつくるというプランです。入院患者数が100人強増えるぐらいなら、CTも食事用のお釜も、今あるものをちょっと融通すれば何とかなる。設備投資が非常に少なくて済むのです。こうしてプランを作ってみたところ、費用は30億円に抑えられ、初年度から約4000万円の黒字になるという結果が出ました。

 しかも、府立急性期・総合医療センターには救急救命センターもあって、様々な領域の専門家がいます。分べん時、いざという時には、その部隊の力を借りることもでき、医療の質と安全性が格段に向上します。住吉の建て替えをやめてそこに機能を統合すれば、一等地にある住吉市民病院の跡地の有効活用も可能です。つまり、安全という面でも、経営効率という面でも、非常に良いことが分かったのです。

 5月29日に開かれた府市統合本部会議でこれらの案のメリット、デメリットを説明し、知事と市長は、現地での建て替えはしない、統合するという判断をされました。

「なくてはならない病院」だったか

あえてお聞きしますが、市が当初、作成していた「建て替え案」にメリットはあったのでしょうか。

上山:職員にとっては建て替えの方がメリットがあったでしょうね。長年、住吉市民病院に勤めてこられた方々には愛着があるでしょう。事務職員やコメディカルスタッフの待遇も良いので今からよその病院に移って、新しい風に吹かれるのはしんどいという思いがあるでしょう。

 住吉市民病院に通い慣れた患者さんの中にも、同じ場所で新しい病院ができることを望んでいた人もおられたでしょう。わずか1.8kmの距離ですが、遠くなるのはイヤだという方はおられるはずです。

出所:第12回大阪府市統合本部会議資料「府市病院経営統合について」
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住吉市民病院は一部の住民にとって、なくてはならない病院だったと言えるのでしょうか。

大嶽:400mしか離れていない民間の総合病院が、昨年末に400床もある12階建ての新病棟を建てたばかりです。そこでほとんどまかなえます。ご存じのとおり医療の料金は全国統一で民間でも公立でも患者の負担額は同じですし。

 さらに、住吉市民病院は地域医療を担う病院として、盤石の体制とは言いきれない部分もありました。例えば小児救急は火曜日と金曜日の週2日しか受け付けていません。夜中にも仕事ができる若手の医師の人数が限られているからです。

 また、日本では10万件のお産で4~5人のお母さんが亡くなります。つまり、世界でもかなり医療の水準が高いのです。住吉市民病院は、これまで少ない医師数でこの高い水準の医療を提供してきました。つまり、医師個人の頑張りに依存してきた。しかし、この規模で今後もやっていけるかというと不安をぬぐいきれません。

公立病院こそ夜間救急に貢献すべきだと思うのですが。

大嶽:住吉市民病院に限りません。市立の総合医療センターは1000床もあり、高度な設備も整っているし、それを扱える医者もいっぱいいる。だけど、重症の救急搬送は原則平日の9時~17時の間しか受け付けていません。

病院の稼働率を引き上げれば、患者さんにもメリット

それは急患になるのですか。普通の飛び込み患者と同じような気がしますが…。

大嶽:民間病院でもよくある話です。僕がある病院の経営改革を手伝っている時に、収益力の高い病院にしたいというので「患者さんが困っている時に助けたら、ロイヤルカスタマーになりますよ」という話をして、救急を強くしようとしたのです。ところが職員の多くは夜中に働くのを嫌がる。

 本当は、良い設備があって、それを扱える医者がいるなら、24時間、365日、稼働率を上げて、どんどん患者さんを治療していけば、患者さんはあり難いだろうし、病院側の収益も上がります。
大阪府・市の特別顧問を務める上山信一さん(左)と、同じく府・市の特別参与の大嶽浩司さん

 しかし公立病院の場合、病院経営が赤字でも、給料は同じように出る。誰も困らない。職員は公務員のメンタリティーで働いていますから、夜間休日の救急をとるインセンティブがないのです。このため急患をどんどんとるようなやる気のある医師は、働きがいのある民間病院に出てしまう。要するに日本の多くの夜間や休日の重症救急医療は官でなく民が担っているのが現実です。

 そうは言っても、住吉市民病院が長年、地元に根付き、多くの患者さんを救ってきた病院であることは間違いありません。愛着を持って通い続けていた患者さんも少なくないでしょう。

 そういう事情を考慮しつつも、松井知事や橋下市長は「この地域は民間病院も充実している。ここに市立病院がないと地域医療が担えないという状況ではない」として、近所の府立病院と統合という結論を下したのです。

(構成:小林佳代)


  1. 2012/07/17(火) 05:52:52|
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