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Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

5月26日 


https://www.asahi.com/articles/ASM5P4H5DM5PPIHB01K.html
医師不足でお産休止の恐れ 兵庫・ささやま医療センター  
前田智 2019年5月22日15時00分 朝日新聞

 兵庫県丹波篠山市は、市内にある「兵庫医科大学ささやま医療センター」の産婦人科で、医師不足から分娩(ぶんべん)の取り扱いが休止になる恐れがあるとして、態勢の維持や支援を考える検討会を立ち上げることを決めた。25日に準備会を開く。

医師は過密、だけど出産は隣県で 分娩休止から10年
 市や同センターによると、産婦人科の医師は現在2人。今月に入り、分娩を取り扱う態勢の維持が難しくなっていると、県から市に連絡があった。市側が大学側に確認すると、安心安全な分娩態勢の維持が難しいと説明を受けたという。

 2017年度に市内で生まれた269人のうち、33・1%の89人がセンターで生まれるなど、センターは中核的な存在。市と大学が昨年に結んだ基本協定では、市は運営補助金として大学に年1億2600万円を交付。大学は診療科の存続に努めるが、医師不足などやむを得ない事情で存続が困難になった場合は協議するとしている。

 市側に協議の申し入れはないが、「子育て一番のまちを目指す中、分娩が休止になれば市民に不安が広がる」(酒井隆明市長)と、検討会の立ち上げを決めた。委員は市医師会や自治会などの代表、学識経験者、出産を経験した女性ら約15人。来年3月まで10回ほど会を開く。

 センターの内藤泰事務部長は取材に対し、分娩休止は決めていないとしつつも、24時間態勢で医師2人では休みも取れないのが現状と説明する。「産婦人科をやめるのではない。医療機関の役割分担など、地域で安全な分娩態勢をどう確保するか。分娩休止も選択肢の一つで、近いうちに市と協議したい」と話した。(前田智)



https://this.kiji.is/503757495439918177?c=39546741839462401
常勤医師不足、貸付金2億円超も未返還 滋賀、市民病院の現状  
2019/5/22 11:20 (JST)5/22 13:17 (JST)updated 京都新聞

 滋賀県野洲市は21日、市議会市民病院整備事業特別委員会で、7月1日からの野洲病院の市営化に向けた現状を報告した。現在21人いる常勤医師が19人しか確保できず、非常勤医師で補う方針であることや、野洲病院への貸付残高約2億2500万円が返還されず、債務を免除する可能性があることなどを明らかにした。21年開院予定の新病院整備費については5億円増額する見通しを示した。

 野洲病院では常勤医師21人のうち6月までに2人が退職するため7月以降は19人となる。市は当初22人の雇用を想定していたが、「現状の野洲病院を下回らないような体制を整える」として非常勤医師2人を雇い、21人を確保する予定であることを示した。医師確保対策補助金として約1500万円を6月議会に提案する一般会計補正予算案に盛り込む。

 旧野洲町が経営資金として85〜87年に貸し付けた計9億円に関しては、未返還の残高が約2億2500万円あるが、民間の金融機関からの短期借入金約2億5千万円の返済を優先するため、市への債務を免除する可能性を検討していく。

 21年にJR野洲駅前で開院予定の新病院整備費は、建設資材の高騰などで約110億円から5億円増える見込みを示した。新病院を巡っては6月中に実施設計を終え、秋ごろに建設工事業者の入札を行う見通し。



https://www.medwatch.jp/?p=26509
地域医療構想・働き方改革・医師偏在対策の一体実施で現場は混乱、まず機能分化・連携を進めよ―四病協  
2019年5月23日|医療現場から MedWatch

 「地域医療構想の実現」「医師の働き方改革」「医師偏在の解消」について、厚生労働省は三位一体として進めるとしているが、地域医療構想の実現すらままならない中で、3施策を同時、一体的に進めることは混乱を招くばかりであり、その進め方には反対である―。

 5月22日に開催された四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院)の総合部会では、こういった点で4団体の意見が一致したことが、日本病院会の相澤孝夫会長から報告されました

 相澤日病会長は、個人的見解として「まず地域医療構想を実現して病院の機能分化・連携を進め、その機能等に合わせて医師配置等を考え、さらにその体制の中で働き方改革の実現を目指すべき。さらに、地域医療構想は『病棟単位』での機能分化を念頭においているが、本来は『病院単位』での機能分化を考えていくべきではないか」との考えを示しています。
 
ここがポイント!
1 まず機能分化・連携を固め、そこに必要な医師配置、働き方改革実現可能性の順で検討を
2 専門医制度の全体像を考えるべき、日本専門医機構の抜本的見直しが必要

まず機能分化・連携を固め、そこに必要な医師配置、働き方改革実現可能性の順で検討を

厚生労働省は、「地域医療構想の実現」「医師の働き方改革」「医師偏在の解消」の3施策について「相互に連環しており、一体的に進める必要がある」との考えを示しています(関連記事はこちらとこちら)。例えば、「地域に救急病院が複数あり、それぞれの病院で救急応需体制をとらなければならいために、医師の時間外労働短縮が難しい」という事情があれば、地域医療構想調整会議で「地域の救急医療提供体制のあり方」(例えば一部の病院に救急機能を集約化するなど)を議論しなければ、「働き方改革」を実現できません。また、病院によっては、「医師の働き方改革」を実現するために医師の増員が必要となるところもあります。また「高度急性期機能を強化する」病院では、高度なスキルを持つ医師の確保・養成が当然必要となります(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。

しかし四病協では、「3施策を一体的に実施すれば混乱が生じる」との点で意見が一致しています。

3施策の中で最も早く議論が開始されたのは「地域医療構想の実現」で、地域ごとに2025年度における▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―の機能別の必要病床数を推計し、それに向けて地域の医療機関が議論し(地域医療構想調整会議)、自主的に機能分化・連携を進めていくものです。しかし四病協では「各地の地域医療構想調整会議では、議論が十分進んでいない。そこに、医師働き方改革(時間外労働の上限規制等)や医師偏在対策(医師多数の地域から医師少数の地域への医師派遣等)を加味せよとなれば現場は混乱してしまう。まず機能分化・連携の姿を固め、そこにどれだけの医師が必要か、働き方改革の実現は可能かを順に考えていく必要があるのではないか」とし、一体的な実施には反対との見解を固めています。

また相澤日病会長は、「個人的見解」と前置きした上で、▼働き方改革は、主に「病院の勤務医」が対象となり、そこでは「病院の医師数」が重要な要素となるが、そのデータに基づく議論が十分に行われていない▼地域医療構想では「病棟の機能」に着目し、「急性期が多い、回復期が不足している」と、言わば「ベッドの取り合い」論議をしているが、本来は「病院の機能」に着目し、「どの病院はどういった機能を果たし、そのためにはどの病院と連携すべきなのか」と言った議論を行うべきであろう▼にわかに病院(とくに公立病院・公的病院等)の「統廃合」が議論されているが、病院は重要な社会資本であり、これを活かして「機能分化・連携」を議論すべきあろう―との考えを提示。さらに、「機能分化・連携という『森』を見ずに、自院という『木』が倒れないかどうかだけを考え、バラバラに動いてしまっている」と厳しい指摘を行いました。

「地域医療構想の実現」「医師の働き方改革」「医師偏在の解消」のいずれも、病院団体の理解と協力がなければ円滑には進みません。今後、審議会・検討会なども通じて十分に意見交換していくことが必要でしょう。

専門医制度の全体像を考えるべき、日本専門医機構の抜本的見直しが必要

 また、5月22日の四病協・総合部会では、新専門医制度をめぐり「日本専門医機構と関係学会では、我が国において専門医をどう育成し、そこにどう日本専門医機構が関わっていくべきかという大局的な議論が十分になされていないようだ。組織体制も含めて抜本的な見直しが必要である」との点でも意見が一致しています。

 この点、日本病院会では「専門医制度の在り方に関する提言」をまとめており、近く相澤会長から、厚労省や日本専門医機構へ提言を行う方針が確認されました。その動きも見ながら、四病協での行動を検討していくことになります。

 さらに、昨今、「内科等の基本領域と、サブスペシャリティ領域との連動研修」にストップがかかったり、「専攻医採用上限(シーリング)」について厚労省の試算した都道府県別・診療科別必要医師数をベースとするなどの点について、四病協では「日本専門医機構や学会のプロフェッショナル・オートノミーが失われつつあるのではないか」との厳しい指摘も出ているといいます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。



http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/190522/ecn19052220460017-n1.html
ハードル低い健診医への復帰支援 高まるシニア医師の存在感  
2019.5.22 20:46 Iza.net / 産経オンライン

 医療業界に特化した人材サービスを中心にグループ展開をするMRT(東京都渋谷区、小川智也社長)。同社でもシニアの存在は高まっている。

 ■リタイア医師を支援

 超高齢社会を迎え、医師不足が深刻だ。高齢者は1人当たりの来院回数が増える傾向にあるため、対応が追いつかなくなる。病床不足や、一般患者が診察・入院しにくくなるという悪循環が生まれているのだ。

 この解決には予防医療が重要といわれる。なかでも「健診」は、病気の早期発見、早期治療・完治が可能になるため、ニーズが高まっている。

 その健診において今、同社が力を入れているのは、現役を引退した60-80代の医師たちの健診医復帰支援だ。

 「健診は身長体重・血液・心電図等の検査を行い、最後は医師の診断が不可欠です。しかし場所が(学校などで)点在しており、(春の健診シーズンなど)時季が限定されているため常勤医では難しく、非常勤・単発での勤務形態が多いのです。また、健診による診断は、異常がないかだけの診断なので、リタイア医師の復帰としてはハードルが低いのです」と執行役員の加藤修孝さん(33)は説明する。

 ただ、シニア医師の場合、電子メールなどが不得意なこともあるため、同社では24時間365日、電話でのサポート体制を完備。復帰時の不安を取り除くサービスも提供している。


 ■医療現場への貢献

 一口にシニア医師といっても、事情はさまざまだという。

 「開業医を継承したが、生活や海外旅行のために健診バイトをしたいという人、長時間拘束で負担になる常勤は難しいが現場に携わりたいという人など、抱えている状況や思いはいろいろです」(加藤さん)

 同社は他社にはない独自ルートで、シニア医師の希望に沿う勤務しやすいサービスを提供できるよう環境を整えている。

 現在、同社からの紹介で勤務している医師は20-80代、そのうち約15%を60-80代が占め、今後もこの割合は増加が予想されるという。このシニア医師たちが健診医として活躍することで、患者の重症化を未然に防ぐことが期待でき、深刻な人手不足の医療現場の改善にもつながっていく。(「オレンジ世代」取材班)



https://www.medwatch.jp/?p=26481
2020年度予算、「医療介護総合確保基金の大幅増」「医師少数地域に赴任する医師への補助」など実施せよ ― 日医  
2019年5月21日|医療現場から MedWatch

 来年度(2020年度)政府予算においては、例えば医師や看護師等の「働き方改革」に向けて、准看護師の養成を強化し「医師からタスク・シフティングを受ける看護師」の業務が過剰にならないよう配慮する必要がある。また、2025年度の地域医療構想実現を目指し、地域医療介護総合確保基金の「医療分」について、大幅な増額と柔軟な運用を実現すべきである。さらに、医師偏在の是正に向けて、例えば「医師少数の地域に赴任する医師」への経済インセンティブ付与なども検討する必要がある―。

 日本医師会は5月15日に、こうした要望内容(2020年度概算要求要望)を明らかにしました(日医のサイトはこちら(概要)とこちら(詳細)とこちら(新規項目の抜粋))。

ここがポイント!
1 がんゲノム医療の推進に向け、我が国でもリキッドバイオプシー確立など目指せ
2 医師から業務移管される看護師が負担過剰にならないよう、准看護師育成も強化せよ
3 地域医療構想の実現目指し、医療介護総合確保基金の積み増しなど実現せよ
4 介護医療院への転換支援、介護従事者の確保などに注力せよ

がんゲノム医療の推進に向け、我が国でもリキッドバイオプシー確立など目指せ
 日医の2020年度予算編成に向けた要望内容は、(1)予防・健康(2)働き方改革(3)オリンピック・パラリンピック対策(4)地域医療(5)ICT・AI・IoT活用(6)災害対策(7)薬務対策への予算確保(8)介護保険(9)医療の国際貢献推進(10)医学・学術(11)医療安全(12)医療保険―の12項目と非常に多岐にわたります。このうち(12)の「医療保険」は、2020年度の診療報酬改定とも密接に絡み、今後、別枠で要望が行われることになります。(1)から(11)の項目の中から、気になるものを拾ってみましょう。

まず(1)の予防・健康に関しては、妊娠・出産から高齢者までの「切れ目のない健康長寿社会」の構築を求めるとともに、これを下支えする「生涯を通じた患者個人の健診データをかかりつけ医等が参照し、診断補助や保健指導に活用するための健診標準フォーマット」を運用するための財政支援を求めています。

また、我が国の死因第1位を独走する「がん」への効果的かつ効率的な治療法選択・開発に向けた「がんゲノム医療」推進に向けた取り組みの強化も求めています。具体的には、リキッドバイオプシー検査(唾液や血液などを検体として、低侵襲で実施するがんの診断)など「ゲノム情報を活用した、安全で精度の高い、かつ簡便な検査法」の確立や、「遺伝カウンセリングなどの相談体制」の構築、「治療に結びつかなかったゲノム治療難民のフォローアップ体制」構築などを要望しています。現時点では、がんゲノム医療によって最適な抗がん剤等が見つかる可能性は10-20%程度にとどまっており、残り8-9割の患者の落胆は大きくなることから、そのフォローが非常に重要となるでしょう(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。

さらに、▼妊産婦健康診査の公費負担増▼出産育児一時金の42万円から55万円への引き上げ▼不妊治療に関する公費負担制度の在り方見直し(所得制限の撤廃)▼病児・病後児保育の充実と、小児デイケア・ショートステイ施設の整備▼妊産婦医療費助成制度の整備▼▼治療と仕事の両立支援の推進(中小・零細企業への助成など)▼特定健康診査・特定保健指導実施体制の充実(特定健診とがん検診との同時実施体制整備など)▼糖尿病性腎症の重症化予防への支援▼アレルギー疾患対策の充実▼がん対策の充実(がん診断時からの緩和ケア実施など)▼難病対策の充実(難病拠点病院と地域医療機関との連携補助等、関連記事はこちらとこちら)―など幅広い、保健医療の充実を求めています。

医師から業務移管される看護師が負担過剰にならないよう、准看護師育成も強化せよ

 また(2)の働き方改革に関しては、医師から多職種へのタスク・シフティングの推進支援などを要望しています。

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」では、勤務医の時間外労働上限を2024年4月から原則960時間以下とし、地域医療の確保に欠かせない救急病院等について特例的・暫定的に1860時間以下にするなどの方針を明確化。これを実現するために、今後、5年間で▼医療機関における労務管理の実施(勤務環境マネジメントの強化)▼医師から多職種へのタスク・シフティング(業務移管)等による労働時間の短縮―などを強力に推し進めることとしています(関連記事はこちら)。

 ただし、医師から、例えば看護師へのタスク・シフティングを進めるにとどまらず、すでに多忙な看護師の業務が過剰とならないよう、「看護師から多職種(准看護師や看護補助者など)へのタスク・シフティングを進め、看護師は『看護師でなければ実施できない業務』に特化する」ことが必要で、他の職種についても全く同じことが言えます。

こうした点を踏まえて日医では、▼准看護師の養成を強化し、病院が多くの看護師を確保できるよう支援する(准看護師養成所の教育環境改善)▼看護補助者の処遇改善▼医療秘書当の養成推進▼タスク・シフティングなどに先進的に取り組む医療機関への必要経費補助▼タスク・シフティングに資する什器・備品やICT機器導入の支援―などを行うよう求めています。

さらに、▼医療機関における勤務環境マネジメントの強化支援▼医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)における労務管理支援事業の充実▼女性医師の就業・復職支援―などの実施も求めています。

地域医療構想の実現目指し、医療介護総合確保基金の積み増しなど実現せよ

 一方、(4)の地域医療に関しては、地域医療構想の実現に向けて、▼地域医療介護総合確保基金の「医療分」の大幅増と柔軟な運用▼地域医療構想調整会議の活性化支援(外来、介護連携のための部会設置など)▼かかりつけ医機能・身近な入院機能を担う中小病院や有償診療所への支援▼在宅医療を担う診療所・中小病院の確保▼救急医療「後」の患者を受け入れる後方施設の整備▼病床機能の収斂(機能転換で必要な人材の確保養成や病棟整備の補助)―などを行うよう求めています。

地域医療構想は「2025年度の実現」を目指して進められていますが、地域で基幹となる公立病院や公的病院等の機能改革について、必ずしも十分な絵が描けていないことから、今後、「再検証」を行うこととなっています。残された6年間で、どのように各地域の議論を活性化させ、機能分化等を推進していくのか、各医療機関の動向はもちろん、厚労省や都道府県の舵取りにも注目が集まります(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 
また2020年度には、第7次医療計画(2018-23年度)の中間見直し作業を各都道府県で行うことになります(2019年度中に厚労省で見直し指針を策定し、2020年度に都道府県で見直し作業を行い、21年度から見直し後計画をスタートさせる)。この点について日医では、▼小児在宅ケアの支援▼在宅療養患者の最終段階における「家族等からかかりつけ医への連絡体制」構築▼在宅副主治医制の運用支援▼在宅医療を担う医師・看護職員等養成のための啓発事業(研修など)▼汎用性が高く、継続性の担保されたICT整備―などが必要と強調。

 
さらに2020年度からは、医師偏在を是正するために各都道府県で「医師確保計画」をスタートさせます(2019年度に計画を作成)。新たな指標に基づく「医師多数」地域から「医師少数」地域への医師派遣などを強力に進めるための「魅力的なキャリア形成プログラム」を作成したり、将来においても医師が不足する都道府県から大学医学部に「地域枠」「地元枠」の設定等を求めることなどを盛り込みます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。

この「医師確保計画」を実効性あるものとするために、日医は▼医師少数の区域等に赴任した医師への経済的インセンティブ付与▼医師少数の区域等に赴任した医師の「子弟」への教育・進学支援▼医療機関の勤務環境改善支援▼ドクターバンクの設置促進と全国ネットワーク化▼看護学生への支援(就学資金貸与)の充実▼訪問看護師の育成―などを行ってはどうかと提案しています。医師確保計画等に基づいた医師偏在対策が功を奏しない場合には、より強力な対策(例えば開業制限など)が検討される可能性もある点には留意が必要です。

なお、医師の偏在状況(配置状況)をより正確に把握するために、▼医師・歯科医師・薬剤師調査の見直し▼必要医師数調査の実施―なども日医は求めています。

介護医療院への転換支援、介護従事者の確保などに注力せよ

 また(8)の介護保険関係では、▼介護医療院への転換助成▼介護従事者の確保(労務管理や、出産・妊娠・育児への支援、新たなケア手法の検討など)▼地域包括支援センターの機能充実▼在宅医療と介護サービスを一体的に提供する体制の構築(多職種共同研修など)▼科学的介護実現に向けたデータ収集やデータベース構築とその活用▼介護保険総合データベース(通称、介護DB)の活用促進▼認知症にかかる地域支援事業(認知症初期集中支援チームなど)の充実▼かかりつけ医と認知症サポート医との連携推進▼認知症疾患医療センターの整備▼認知症研究の推進―などに注力することを求めています(関連記事はこちらとこちら)。

 2022年度からは、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度にはすべて後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していくと予想されます。こうしたニーズに的確に対応するために、主に医療分野では「地域医療構想の実現」が、主に介護分野では「地域包括ケアシステムの構築」が進められており(それぞれ連関する)、日医もこれを積極的にサポートしていく考えを明確にしています。



https://www.medwatch.jp/?p=26486
専門医制度、「専門医の質確保」(高度な研修)と「地域医療の確保」は両立可能―医師専門研修部会(2)  
2019年5月21日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 専門医制度の在り方を議論する際には、「地域医療の確保」という視点ももちろん重要であるが、「教育・研修レベルの確保」が絶対要件となり、両者は「両立可能」な関係にある―。

 5月14日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)では、こういった議論も行われました。

 今後の具体的な「サブスペシャリティ領域」論議をする際に、重要な視点となるでしょう。
 
内科領域、専攻医1人当たりの症例数は長野・山口・鳥取・静岡で多く、濃密研修が可能
 専門医資格は、従前、各学会が独自に養成・認定を行っていました。しかし、学会が乱立し、それぞれに専門医養成を行っていることから、「国民に分かりにくくなっている」「質が担保されているか不明確である」との批判を受け、2018年度から、各学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で認定する仕組みへと改められました。

 具体的には、19の「基本領域」(1階部分)と「サブスペシャリティ領域」(2階部分)の2層構造となっており、「基本領域のみの専門医資格を取得する」ことも、「基本領域とサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得する」ことも可能です。

【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域
 
このうち、内科・外科・放射線科の各基本領域学会では、社会的意義や国民への認知の程度などを踏まえ、以下の23学会・領域を「サブスペシャリティ領域とすべき」と推薦し、日本専門医機構でもこれを認定しています。

【内科領域】
▼消化器病▼循環器▼呼吸器▼血液▼内分泌代謝▼糖尿病▼腎臓▼肝臓▼アレルギー▼感染症▼老年病▼神経内科▼リウマチ▼消化器内視鏡▼がん薬物療法―

【外科領域】
▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺▼内分泌外科―

【放射線領域】
▼放射線治療▼放射線診断―議論
 
また内科・外科領域については、一定の症例について「基本領域での経験症例」と「サブスペシャリティ領域での経験症例」との重複カウントを可能とし、より早期に「基本領域とサブスペシャリティ領域の資格を保有する専門医」を養成する「連動研修」が計画されていました。しかし、専門研修部会では▼サブスペシャリティ領域の中には、国民に分かりにくいものもある(消化器内視鏡など)▼連動研修は地域医療の確保を阻害する恐れもある―という意見が多数出され、「この4月(2019年4月)からの連動研修スタート」に待ったがかかっています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

例えば、基本領域である内科において「A病院・B病院・C病院を循環する」という研修プログラムが組まれていたとします。「地域医療の確保」という各方面からの強い要請を受け、例えば「基幹病院のみで完結させない」などの配慮・工夫が凝らされています。

しかし、サブスペシャリティ領域との連動研修となった場合、「B病院には当該サブスペシャリティ領域の指導医がいないので、A病院とC病院のみで研修を完結させ、B病院での研修(勤務)を行わない」という事態が生じてしまう可能性が指摘されています。この場合、B病院の所在する地域において、医師確保に困難が生じるなど「地域医療への悪影響」が生じる可能性を否定できないためです。
 
こうした「待った」がかかった状況の中、医師専門研修部会の遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)は「一度、専門医制度の在り方について根本に戻った整理・議論を行う必要がある」と判断。基本に立ち返った議論を委員および厚生労働省当局に要請しました。

まず、厚労省は専門医制度を検討する際には、冒頭に述べた過去の反省に立ち、▼国民へ分かりやすいものである▼医療提供体制・医療計画に資するものである―こととの2つの視点を提示。前者の「分かりやすさ」は、例えば、一般の国民・患者が医師や医療機関を探す際に「専門家でなければ正確に理解できない資格」では困る、というもので、専門研修部会はもちろん、社会保障審議会・医療部会などでも何度も確認されている視点です。

また後者は、当然のことですが「専門医も地域医療の1プレイヤーである」ことを確認する視点です。地域医療は、都道府県の定める医療計画(5疾病5事業及び在宅医療など)に沿って進められ、そこには2020年度からスタートする「医師確保計画」も組み込まれます。したがって、「一部の地域・一部の診療科に専門医が集中し、他地域では医師が極端に不足する」という事態は避けなければなりません。

この視点に立って厚労省は、専門医制度を議論するにあたり、(1)国で専門医制度を議論する意義は「専門的医療を、できるだけ公平に国民に提供する」点にある(2)診療内容と専門医資格とが一致することが原則である(3)都道府県レベルで養成が困難な「希少疾患に対応する専門医」は、ブロック単位(東北ブロック、関東ブロックなど)での養成も検討する―という論点も提示しています。

このうち(1)は、「専門医の在り方」について、大きく2つの側面があることを意味しています。学会・日本専門医機構は「専門医には、専門的な知識・技術を習得しなければならない」という側面からアプローチして専門医制度を検討・構築することが求められ、一方、国(専門研修部会も含めて)は「専門医には、習得した質の高い専門的医療を、公平に国民に提供しなければならない」という側面からアプローチすることが求められるというイメージです。

どちらの側面も重要で、学会・専門医機構のアプローチが十分でなければ「質の高い医療の確保」が不可能になり、国のアプローチが不十分であれば「医療にアクセスする機会」が阻害されてしまいます。5月15日の専門研修部会でも、この点が再確認されました。

地域医療確保に責任を持つ自治体の立場で参画する立谷秀清委員(全国市長会会長、相馬市長)は「地域枠・地元枠出身の医師が新専門医制度のプログラム制(定められた医療機関で定められた年限、研修する仕組み)で置いて行かれることにないよう、カリキュラム制(年限を定めず、一定の症例を経験する仕組み)の充実を要望してきた。日本専門医機構・学会・全国医学部長病院長会議・国・医師会が連携し、地域医療を確保してほしい」と強調。

また同じく自治体の立場で参画する阿部守一委員(長野県知事)は、「地域枠医師が専門医資格更新で不利益にならないような配慮」「希少疾患に対応する専門医も、すべての都道府県において一定期間は連携病院として研修がなされるような枠組み」を要望しています。

両委員の意見は、後者の「専門的医療を公平に国民に提供する」という側面を重視したものと言えるでしょう。

この意見への反論はもちろん出ていませんが、山内英子委員(聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)や片岡仁美委員(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療人材育成講座教授)らは、前者の「専門的な知識・技術の習得」という側面を「絶対的条件」として強調します。片岡委員は「『医師の不足する地域なので研修はほどほどでよい』ことなどがあってはいけない。日本内科学会ではJ-OSLERシステムで研修実績を把握し、質の担保を図っている。各学会や大学病院が、専攻医をバックアップする仕組みが必要である」と指摘しました。

また山内委員は、この点に関連して「研修医(専門医資格の取得を目指す専攻医も含めて)時代に地域医療に携わる考え方もあるが、例えば研修を受け一人前の知識・技術を身に着けてから地域医療に携わるほうが、より地域医療にとってプラスではないか」との考えも示しています。医師偏在対策について議論した「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」では、ベテラン医師による断続的な「医師少数の地域」での勤務を認定する仕組み(医師派遣機能を持つ地域医療支援病院の「管理者(院長)要件」などとして活用)も設けており、山内委員の考えはすでに厚労省も取り入れていると考えることができそうです。

 
 なお、日本内科学会からは「J-OSLERシステムによれば、専攻医1人当たりの経験症例数が多い(言わば、濃密な研修を実施している)都道府県は、長野県・山口県・鳥取県・静岡県などで、都市部の専攻医がより多くの症例を経験しているというわけではない」ことが報告されています。これは、「勤務地(研修地)」と「研修の質」とは、必ずしもトレードオフの関係(言わば「どちらかを重視すれば、他方をあきらめなければならない」という関係)にはないことの証左と言えるでしょう。

 「専門医の質確保」と「地域医療の確保」とを両立する(日本内科学会報告を踏まえれば実際に両立可能である)という視点で、今後、サブスペシャリティ領域の在り方などを議論していくことになります。
 
 

https://www.m3.com/news/kisokoza/675694
公立医療機関だからできる医療過疎地での役割―柳澤勉・埼玉県立循環器・呼吸器病センター副病院長に聞く◆Vol.2  
2019年5月22日 (水)配信m3.com地域版

 埼玉県内の死因第4位に挙げられる脳卒中。しかし、県北部では緊急医療体制が十分に整っているとはいえず、遠方の埼玉医大に搬送されるケースも多発していた。2019年4月にカテーテル治療にも対応できる「脳神経センター」を開設。名称も新たに、スタートした脳神経センター開設の経緯や、県北部エリアの救急医療体制の実情と課題について、副病院長の柳澤勉氏に伺った。(2019年4月11日インタビュー、計2回連載の2回目)

▼第1回はこちら

――埼玉県が運用を開始している「埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワーク(Saitama Stroke Network、以下、SSN)」。県南地域と県北地域とで登録されている医療機関の数に大きな差があります。理由は何でしょうか。
 医師の数が理由だと思います。医療機関側に対応したい気持ちがあり、設備を整えられるとしても、治療できる医師の数が揃わなければ対応できません。埼玉県に限らず、医師はどうしても県庁所在地周辺地域に集まってしまう傾向にあります。医師にも生活があるわけですから、田舎よりも都市部に近いところで暮らしたいと思うのはおかしいことではありません。通勤に時間をかけるのも負担になるので、職住近接を考えたとき、都市部に医師が集中してしまうのは致し方ないと言えるでしょう。

――とはいえ、都市部以外でも救急医療の体制の整備は必要ですね。
 都市部から離れた地域になると、高齢者の人口が増えます。救急医療が必要になる可能性が高いのは、やはり若者層より高齢者層ですから、総人口が少ないからといって救急医療の需要が低くなるわけではないのです。

 脳卒中のように、発症から治療までのタイムリミットが厳しい病気の場合、物理的な距離は命を救えるかどうかに直結する重要事項です。であるにもかかわらず、地方になると、その地域にある医療機関で対応可能なものが1次救急だけになってしまうことも少なくありません。2次救急の時点で遠方の大病院に搬送せざるを得ないという状態は、患者にも家族にも負担にもなるし、受け入れ先の病院側を圧迫することにもつながります。

――県北エリアの脳卒中患者の救急搬送先が限られていたことにもつながりますね。
 県北エリアにも、1次救急に対応できる医療機関はあります。しかし、2次・3次と症状が重くなると、途端に対応できる医療機関がなくなってしまいます。結果として、患者は深谷赤十字病院(深谷市)へ、深谷赤十字病院が受け入れられない場合は埼玉医科大学国際医療センター(日高市)へと搬送されていました。循環器・呼吸器病センターでは、これまで循環器内科・呼吸器内科のみ、3次救急まで対応して参りました。これからは、脳神経センターの開設に伴い、脳神経外科の領域でも3次救急まで対応できるようになります。

 群馬県境に近い場所になると、埼玉ではなく群馬の病院に搬送されるケースもあります。県庁所在地付近には対応できる病院が多くあるからです。もちろん、必要に応じて助けてもらうことは悪いことではありませんが、やはり地域の医療は地域で担うのが最善ではないかと考えています。その場所にはその場所で医療を必要としている患者がいるわけですから、隣県任せにしておくべきではないでしょう。県民の医療を引き受けるのが、県立病院の役目だとも考えています。

――ただ、総人口が少ない地域で病院の運用をする難しさもあるのではないでしょうか。
 そうですね。そのため、地方の医療こそ、循環器・呼吸器病センターのような公立医療機関が担っていくべきものだと考えています。公立医療機関には、私立病院のように何かを決めたらすぐに行動できるというような身軽さはありません。今回、当センターに脳神経センターを開設するにあたっても、役所関係の手続きに関して、一つ一つ段階を踏んで進めていかなければならないという手間がありました。

 何かをしようと話がまとまると、まずは議案を提出します。その後、自治体の条例に照らし合わせ、県議会の承認も受けなければなりません。そこから、ようやく予算を計上します。計画がまとまってから実際に動き始めるまで、簡単に1~2年は経過してしまうのです。今回の脳神経センターも、動き始めたのは3年前でした。

 私立病院は経営陣が決定しさえすれば物事を進めていけるため、公立病院よりスムーズに事が運ぶでしょう。しかし、私立病院には、患者数が一定以上見込めなければ何かを始めにくいという、経営面でのハードルがあります。公立医療機関にも経営判断は必要ですが、私立病院の方は判断がよりシビアになると思われます。

 全国各地で、県庁所在地周辺とそれ以外との救急医療格差が生まれているだろうと思っています。受け入れ病院が少ない地方には、これから救急医療が必要になる可能性が高い高齢者が多く、この状況は今後しばらく続くでしょう。だからこそ、公立医療機関は地域で完結した医療を提供する役割を担わなければと考えています。公立医療機関は、県民からの税金も運営資金になっているわけですから。ただし、やはり人材不足は深刻です。行政側は必要ポストに医師を雇えるだけの予算を提示してくれてはいるんですが、それでも難しい。「後は自助努力だ」と言われてしまうこともありますが、地方になればなるほど自院の努力だけでは医師数を増やすことは困難でしょう。

――今回、県立循環器・呼吸器病センターに脳神経センターが開設されることにより、県北エリアの脳外科分野の救急医療体制はどう変わっていくと思われますか。
 これまで埼玉医科大学国際医療センターに搬送するしかなかった患者を受け入れられるようになるため、深谷赤十字病院、埼玉医科大学国際医療センターの負担を減らせるのではないでしょうか。搬送時間を理由に受け入れてもらえなかった患者も救えるようになるでしょう。

 深谷赤十字病院や当院の他、1次救急・2次救急と症状の段階に応じて対応可能な各医療機関とも連携しながら、県北エリアの救急医療を回していきたいですね。

――脳神経センターは2019年5月7日から本格始動するとのことですが、今後の動きについて聞かせてください。
 これから「県立循環器・呼吸器病センターがSSNの基幹病院になった」というPRに力を入れていきたいですね。医師会に周知を行っていきます。最初に患者が運び込まれた病院の医師が、当院の脳神経センターがSSNであると知っていれば、迅速にこちらに転送指示を出せますから。1次・2次・3次救急を地域の医療機関で連携して対応できる体制を作っていきたいと考えています。

 また、高度な脳神経外科治療と血管内治療が可能であることに加え、脳卒中と因果関係の強い心臓血管疾患などの包括的診療機能を併せ持っていることも、当施設の大きな強みだと考えています。脳卒中患者の最後の砦として、まずは24時間365日脳卒中患者に対して血栓回収可能な血栓回収センターの認定を目指し、包括的脳卒中センターとして埼玉県北部地域の脳卒中医療のリーダーとしての役割を果たせるように整備したいと考えています。

◆柳澤 勉(やなぎさわ・つとむ)氏
埼玉県立循環器・呼吸器病センター副病院長。1984年新潟大学医学部卒、1992年より同センターの呼吸器内科医。専門は呼吸器内科一般、結核。

【取材・文:卯岡 若菜】



https://www.medwatch.jp/?p=26538
病床稼働率の著しく低い病院、国の補助でダウンサイジングや機能転換を促進せよ―日慢協、武久会長・池端副会長  
2019年5月24日|医療現場から MedWatch

 地域医療提供体制を詳しく見ていくと、病院ごとに病床稼働率・利用率に大きなバラつきがある。稼働率・利用率の低い病院は、「ダウンサイジング」や「地域の医療ニーズにマッチした機能への転換」がどうしても必要だが、コストもかかるため、何らかの補助を検討すべきではないか。また、地域には「住民が暮らしていくために欠かせない医療機関」も存在することから、そこは国などが関与し、存続を図る必要がある―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、5月23日の定例記者会見でこのような考えを述べました。
 
同じ地域、同じ機能でも稼働率に大きな差があり、それは「地域住民の評価」結果
 入院医療においては「在院日数の短縮」が必要です。不必要な長期入院には、▼ADLの低下▼院内感染リスクの上昇▼患者・家族の経済的損失(医療費がかかることはもちろん、収入が途絶える可能性もある)―などさまざまな弊害があるためです。

 さらに「入院から外来へのシフト」(例えば抗がん剤治療など)が進められ、病院によっては、新規患者の確保が追い付かず、病床稼働率・利用率が低下しているところもあります。一方、こうした「在院日数の短縮」等によっても病床稼働率・利用率を維持している病院も少なくありません(関連記事はこちら)。

 日慢協が病床機能報告結果をもとに調べたところ、例えば北海道小樽市では、稼働率・利用率が90%を超える急性期一般病院(急性期一般病棟を持つ病院、ケアミクスの場合も)がある一方で、60%そこそこの障害者病院(障害者施設等入院基本料の届け出病棟を持つ病院)もあります。
日慢協会見1 190523
 
また同様に大阪府門真市では、稼働率・利用率が90%近い急性期一般のみの病院がある一方で、70%そこそこのケアミクス病院もあります。
 
さらに岡山県玉野市では、急性期一般・障害者施設・地域包括ケア・回復期リハというケアミクス体制を敷きながら、稼働率・利用率が40%台にとどまる病院もあります。
 
こうした病床稼働率・利用率の差は「地域住民による評価の結果である。稼働率・利用率の低い病院は地域住民から評価されていない。今、何か手を打たなければ、10年後、20年後には存続できないであろう」と武久会長は見通します。

 
その際に重要となる視点として、(1)ダウンサイジング(病床数の削減)(2)機能転換―の2つがあげられます。

まず(1)のダウンサイジングは、地域の医療ニーズ(患者数)を踏まえて、病院を「適正な規模」にすることを意味します。池端幸彦副会長は「急性期病棟では70%、慢性期病棟では90%程度の病床稼働率・利用率がなければ安定経営は難しい」と指摘しており、例えば200床の急性期病院で、病床稼働率・利用率が60%にとどまっているのであれば、120人の入院患者を70%で割り戻し、170床程度にダウンサイジングすることがまず考えられます。これにより、看護配置を手厚くすることなどができ、場合によってはより高い診療報酬を取得できる可能性も出てきます。なお、都道府県知事が認めれば「200床未満」の病院であっても地域医療支援病院となることが可能です。

しかし、武久会長は「いまだに、病床数の多さをステイタスと考えている病院も少なくない」と指摘したうえで、「減反政策ならぬ『減床』政策として、ダウンサイジングを行う病院には一定の補助を行ってはどうか」と提案。この点、ダウンサイジングには地域医療介護総合確保基金を活用できますが、武久会長と池端副会長は「退職するスタッフも出てくるであろうし(退職金の発生)、構造設備の見直し(改修コストの発生)も必要になる」ことから、これらを適切に賄えるよう、さらに「1床当たり500万円程度の補助」を行うよう提言しています。

また(2)の機能転換は、地域の医療ニーズ(疾患等の構成)を踏まえて、「適切な病棟構成」にすることを意味します。例えば、高齢者の多い地域では「急性期病棟」から「回復期病棟」や「慢性期病棟」への転換することが求められます。

武久会長は、「公立病院であっても、地域によっては『急性期病棟の維持』から『回復期や慢性期への転換』へと柔軟な考えを持つ必要がある」と指摘しています。

この点、地域医療構想の実現に向けた議論を行う厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、「公立病院や公的病院等は、公立病院等でなければ担えない機能に特化すべき」とし、例えば「民間病院と公立病院が競合する地域で、公立病院が地域包括ケア病棟や療養病棟を整備することは好ましくない」との方針を打ち出しています。ただし、過疎地等で公立病院しかないような地域では、その公立病院が総合的な機能を果たす必要があり、急性期から回復期、慢性期まで多種類の病棟を持つべきことは当然で、武久会長の提言と、地域医療構想ワーキングとの議論とに齟齬はない点に留意が必要でしょう。

 
さらに武久会長・池端副会長は、ダウンサイジングや機能分化を進めてもなお経営が困難な病院のうち、「その病院がなければ地域が守れない」というところには、国等による補助で存続させる必要があるとも指摘します。

例えば過疎地や離島などでは、そもそもの患者数が少なく、病院は慢性的な経営困窮状態にあると言えるでしょう。しかし、当該病院の存続がなければ地域住民の生活がなりたたないようなケースでは、ダウンサイジングや機能転換を十分に進めた上で、「存続のための補助」を行う必要があると武久会長・池端副会長は強調。また池端副会長は「外来医療や在宅医療においても、バックベッドが必要である」とし、「ここは残さなければならない」という病院については存続のための補助をすべきと説明しています。

 

https://www.kobe-np.co.jp/news/tanba/201905/0012358882.shtml
柏原病院と住民の懇談会、継続へ 地域の健康増進目指す 丹波  
2019/5/24 05:30神戸新聞NEXT

 兵庫県丹波市内各地で約9年半にわたり、月1回、巡回開催されている県立柏原病院(丹波市柏原町柏原)と住民との懇談会。7月の県立丹波医療センター(同市氷上町石生)の開院に伴い同病院が閉院した後も、継続されることが分かった。同病院は「住民と触れ合える大切な場。懇談会を通じ、地域の健康増進や医療体制の充実を図っていきたい」としている。

 2008年ごろ、柏原病院は医師不足が深刻化し、診療機能の低下に陥っていた。そんな中、「住民自らが地域医療を支えよう」と丹波市自治会長会が企画したのが、医療関係者と住民が病院の方針や将来像を話し合う懇談会だった。09年10月に始まり、月1回開催。市内25地区を順に回っており、今年4月で112回を数える。

 毎回、副院長や診療科部長ら常勤医、医療スタッフのほか、神戸大学医学部付属病院に在籍し、「地域医療プログラム」として柏原病院で臨床を学んでいる研修医が参加している。病気の治療や予防、最近では丹波医療センターの概要などを講話で紹介。その後、住民が自由に質問する。

 112回目の懇談会は4月23日、同センターが立地する丹波市氷上町石生の生郷交流会館で開かれ、研修医2人が脳卒中と緑内障について解説した。

 質疑応答の時間には、住民から講話内容に関することの他、「研修医の働き方改革は」との質問も。研修医は「地域医療では医師の数が限られている。医療の質を保とうとすれば、どうしても勤務時間が増える」と話し「働き方改革を地域の医師にあてはめるのは、なかなか難しいという印象も持っている」と、率直な思いを述べていた。

 市自治会長会理事で、生郷自治振興会会長の酒井浩二さん(62)は「懇談会を通じて、研修医に丹波の魅力を知ってもらい、研修終了後も『丹波に残りたい』と思ってもらえたら」と期待する。

 開催日時や場所については決まり次第、各自治会がチラシ配布などで周知する。次回は27日、丹波市青垣町田井縄の旧芦田小学校で開催。問い合わせは事務局の丹波市まちづくり部市民活動課TEL 0795・82・0409

(藤森恵一郎)



https://www.m3.com/news/iryoishin/677390
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
1860時間は例外、基本は960時間以内 - 迫井正深・厚労省審議官に聞く◆Vol.1
「36協定なし、勤怠管理なし」は論外
 
インタビュー 2019年5月22日 (水)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)、水谷悠(m3.com編集部)

 この4月から、医師以外の医療従事者については時間外労働の上限規制が適用となった。医師に限っては、5年間の猶予があり、2024年度からの適用だが、改革は待ったなしだ。
 医師の働き方改革についての方針をまとめたのが、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の3月の報告書。同省は、本改革は、地域医療構想、医師偏在対策と「三位一体」で進めていく必要性を強調する。これらを総合的に所管する立場にある、厚労省大臣官房審議官の迫井正深氏に、医師の働き方改革に関する基本的な考え方を整理し、その影響、「三位一体」改革の意味について解説していただいた(2019年4月25日にインタビュー。全5回の連載)。

――先日、日本外科学会で医師の働き方改革をテーマに講演され、多くの質問が出ました(『「外科医こそ率先して働き方改革を」、迫井厚労省審議官』を参照)。厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」報告書ですが、まだ正しく理解されていないとお考えですか。

 はい。「B」の水準(時間外労働の上限規制の特例に当たる地域医療確保暫定特例水準)の「年1860時間」ばかりが注目されていますが、時間外労働を「年960時間」以内に抑えるのが基本です。ただし、どうしても難しい場合には暫定的に認める。ただし、その場合でも、最大で「年1860時間」までとなっているのです。全ての医師を「年1860時間」まで働かせるとは誰も言っていません。

 しかも、それは病院の管理者側の判断で決めることはできません。管理者の申し出を踏まえ、都道府県が吟味して、「この病院なら、仕方がない」と判断されて初めて認められる必要最小限の例外です。これらの根本論が理解していただけていないと思います。


時間外労働を「年960時間」以内に抑えるのが基本であることを強調。
――検討会報告書がまとまった3月28日の報道では、「年1860時間容認」といった書き方がありました。

 私たちは、医師の働き方改革を進めようと思っています。しかし、メディアにそのような書き方をされると、「結局、この改革はちゃんと進まないんだな」といった逆の印象を与えるアナウンス効果になってしまう。医療界の中にも、「改革しなくてもいいんだ」という雰囲気ができてしまうことを懸念しています。

 まず各医療機関に、長時間労働を縮減していく努力を最大限していただくことが大前提です。その大前提のスタート地点が、勤怠管理を含む労務管理。それをしっかりやりつつ、地域の医療提供体制のことも真剣に考えていただく。いろいろな改革をやってもなお、地域医療の提供を考えると、どうしても「年960時間」に収まらない。その場合に例外的に認められる上限が、「年1860時間」です。

 従って、もし法定時間を超えた時間外勤務が必要な場合であれば、「36協定を知らない」「36協定を結んでいない」などは論外中の論外で、あり得ない。「勤怠管理など、どうせできない」というのも、論外です。私は、医療サービスは特別なものだと思います。けれども、労働という側面から見れば、特別なものではなく、どれだけ働いたかを管理するのは当たり前のこと。それをやってこなかったから、医療のいろいろな問題が波及して生じています。例えば「外科医のなり手がいない」という問題の根っこに何があるのか――。「外科は割が合わない」「やっていられない」という声を煎じ詰めていくと、労務管理をしていない、それなりの処遇をせず、対価を払っていない、不合理な長時間労働を平気でさせている――という問題に行き着きます。

――「C1」(集中的技能向上水準、初期・後期研修医が該当)と、「C2」(医籍登録後の臨床従事6年目以降の者が、高度技能の育成が公益上必要な分野について、特定の医療機関で診療に従事する際に適用)については。

 先ほどお話しした時間外労働規制の大原則の上に立って、初期・後期研修医を想定した「C1」に加えて、後期研修降の特定の医師について「C2」を設けている理由は、医療サービスの特性としてどうしても必要だと考えるからです。医療技術は絶えず進歩、変化していきます。医師は最新の医療を届けたいと思っており、我々も届けてほしいと思っている。「この時期に、集中的に医療技術を学ばなければいけない」「今この技術を日本に広めるためにどうしても集中した取り組みが必要」と考える医師たちにとって、時間外労働の上限規制がバリアとなってしまうことが適切ではない場合があり得る。このような状況に対して、極めて限定的に運用するという意味です。

 さらに、これも繰り返し言っていることですが、「年1860時間」は当面の数字です。2024年4月までに「年1860時間」超の医師をゼロにするとともに、「B」については今後の取り組みで「年1860時間」の時間外労働上限を下げていき、2035年度末を目途に廃止を目指す方針です。「C1」と「C2」については、研修の効率化等による縮減を図りながら検証していくことになります。

――改めて検討会の議論の経緯を振り返っていただきたいのですが、2017年8月に議論がスタートしました。計22回開催されましたが、ここまで長期の開催になると当初は想定されていましたか。議論の節目などはあったのでしょうか。

 私が直接的に関わるようになったのは、(医政担当の審議官として)着任した2018年7月以降です。それ以前は、(厚労省保険局)医療課長として、診療報酬改定において医師の働き方改革に取り組む立場から、「この問題は容易には解決できない、根源的な課題」との認識を持って見ていました。従って、「いろいろな意見があるにせよ、2年間で皆さんがよく同じ方向に向かうようになった」「軌を一にして動いていただけた」と受け止めています。(検討会の)最後に拍手が起きたのは、その象徴だと思います。

 意見の違いがあっても、「働き方を変えなければいけない」と皆さんが思っておられたのでしょう。

――「同じ方向に向かうようになった」のは、何らかのきっかけがあったとお考えですか。それとも議論を重ねた結果でしょうか。

 それは議論を重ねた結果だと思います。



https://www.m3.com/news/iryoishin/677391
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
医療界と社会、双方の働き方改革が必須 - 迫井正深・厚労省審議官に聞く◆Vol.2
宿日直、応召義務など各論も考え方は整理
 
インタビュー 2019年5月25日 (土)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)、水谷悠(m3.com編集部)

――以前から医師の長時間労働、過労死の問題は指摘されていても、なかなか改善は進みませんでした。今回の議論は、政府全体として「働き方改革実行計画」が策定されたことが発端です。これがなければ、医療界で働き方改革は進まなかったとお考えですか。

 厚労省の検討会で議論を重ねていた方は、次第に認識が整ってきたと思います。しかし、医療現場は忙しいので、働き方改革について、一般紙の見出しや、かいつまんだ話くらいしか知らない医師たちは、「やはり長時間労働を容認するのか」といった議論になりがちです。

 しかし、重要なのは、働き方改革は日本の社会全体の課題であるということ。まずは日本が置かれている社会の状況を理解していただく必要がある。生産年齢人口が減少する時代にあって、日本社会全体で生産性の向上に取り組まなければいけない。諸外国と比較しても日本の現状は厳しいという文脈でお話しすると、分ってくれる人が多いのです。この前提がなければ、医療だけ、医師だけで働き方改革を進めるのは難しかったかもしれません。


働き方改革を進めるには、医療者と患者側が両輪となることが必要となると説く。
――時間外や休日に、医師に説明を求める患者家族もいます。「なかなか仕事を休めないから」という人が多いのかもしれませんが、その辺りの認識も社会全体で変えていく必要がある。

 まさにその通りです。(医師と患者家族側の)両方が、「これまでの医師の働き方はおかしくはないですか」と問われているのです。

――両方が両輪となって進めないと、医師の働き方改革は進まない。

 そう思います。だから「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」を開催したのです(『「国民全体が医療危機に取り組むべき」デーモン閣下、宣言発表』を参照)。

 私は県の(医療担当の)部局長を務めたことがあり、地域でのキャンペーンやマスメディアの注目を集める努力も何度かやりましたが、国民や患者へのキャンペーンは、ともすればワンショットで終わりがちです。今回は絶対にそうさせたくはなかった。デーモン小暮さんの参加が注目されましたが、デーモンさんはもともと健康や医療に関連する行政施策にずっと協力してくれた方だったからであって、あれで終わりにするつもりはないのです。懇談会でキャンペーンの考え方、ネタを整理してもらいましたので、今後、それらのノウハウを活用し、懇談会委員にも協力していただきながら、繰り返しキャンペーンをやっていく必要があります。

 例えば、全国交通安全週間と同様に、「医療は皆のもの、皆で支え合うもの」であることを繰り返し、定期的に啓発していくことが必要です。「コンビニ受診」も、医療者の疲弊を生み、究極的には自分たちが困ってしまうことなのです。「かかりつけ医を持ちましょう」と呼びかけるのも、医療について考えてもらう一つのいいきっかけです。その他、薬の服薬の仕方や救急車の受診の仕方など、いろいろなテーマで定期的なキャンペーンを展開することが想定されます。

――検討会では、宿日直、応召義務、自己研鑽の扱いも議論になりました。この辺りは今後、通知を出していくことになると思います。ただ、「検討会報告書では、時間外労働の上限規制の時間は決まったものの、詳細はこれから」と受け止める向きもあります。

 報告書をまとめて終わりではなく、積み残した事項はもちろんあります。ただ議論の過程で、何が問題なのか、その中核的な課題はあぶり出すことができました。今後、さらに検討すべき事項や行政文書として記載するという実務的な積み残しはありますが、対応の基本的な考え方や解決の方向性自体は整理できたと思います。

 宿日直については、昭和24年(1949年)の通知が使われていますが、「病棟当直において、少数の要注意患者の状態の変動への対応について、問診等による診察、看護師等他職種に対する指示、確認を行うこと」といった考え方で整理しました。応召義務についても、関係有識者による研究成果を引きながら「時間外の上限規制を超える場合に、診療に応じなかったからと言って、勤務医が応召義務違反で罰せられることはない」という考え方を導きました。

――「B」、「C1」や「C2」を適用するために、「地域医療提供体制の実情も踏まえ、当該医療機関における医師の長時間労働の実態及び労働時間短縮の取組状況を客観的に分析・評価し、当該医療機関や都道府県に結果を通知し、必要な取組を促す機能」を、都道府県から独立した中立的な組織として設けるとされています。

 「B」、「C1」や「C2」の対象をどのように適用するか、また「B」の取り扱いを中心とした中立的な組織の在り方も今からの議論です。(2024年度から時間外労働の上限規制が始まるため)遅くても2023年度中にはこれらの適用対象を定める必要があり、残された時間はそう多くはありません。

――各論ですが、「宿日直の定義を緩和することで、時間外労働ではなく、宿日直として扱い、結果として時間外労働の縮減を狙っているのでは」という見方もあります。

 確かに、これまで宿日直の扱いが明確でなかった一面があったかもしれませんが、そもそも「宿日直」として扱うためには、労働基準監督署から許可を得て行う必要があります。入院医療の在り方が以前とは変わってきた中で、それに併せて宿日直の扱いも現代化し、「このような業務なら、宿日直許可でなじむ内容」という例示的なラインを示しています。言い換えれば、宿日直として許可を得ながら、実態は割増賃金が発生するような「時間外労働」だった場合には、明らかにアウトということが分かるようになるようにします。それをなし崩し的に、宿日直として認めることは、あり得ません。



https://www.m3.com/news/iryoishin/678019
日本専門医機構の抜本的見直しを、四病協
「三位一体の改革」には問題あり、反対
 
レポート 2019年5月23日 (木)配信水谷悠(m3.com編集部)

 四病院団体協議会は5月22日に総合部会を開き、専門医制度や地域医療構想について議論した。終了後に記者会見した日本病院会会長の相澤孝夫氏は、厚生労働省が算出した「2016年の医師数が、必要医師数および2024年の必要医師数と同数あるいは上回る診療科」などを基に、日本専門医機構が2020年度専攻医のシーリング案を作成したことやサブスペシャルティ専門医との連動研修の4月開始が見送りになったことについて、「プロフェッショナルオートノミーを掲げている日本専門医機構としていかがか。専門医をどう育てていくか、機構がどう関わるか全体を見据えた議論がなかなかされていない中で、機構がこのままの形で続いていくのは難しいのではないか」との意見が出て、抜本的な見直しを求めて行動や意見をする方向で議論がまとまったことを明らかにした。


 地域医療構想については、医師の偏在対策、医師の働き方改革と合わせ「三位一体の改革」として進めていくことについて「大いに問題があり、反対である」との意見が強く出たという。

 相澤氏は、「医療機能の分化・連携をどう進めていくかがまだ決まっていない中で、三位一体どころか、3つともやることでにっちもさっちも行かないような状況になっているという意見がある」と説明。さらに、「もともとはそこにどういう医療機能が必要でどんな病院だからというのがあって、医師を派遣し、どんな働き方をしていくかが決まる。 順番にやるべきことが一度に押し寄せて難しい」と述べた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/677141
「新・家庭医療専門医」、総合診療専門医のサブスペ創設へ
2020年度からプライマリ・ケア連合学会、キャリア明確化と質保証目指す
 
レポート 2019年5月19日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本プライマリ・ケア連合学会理事長の草場鉄周氏は、5月18日に京都市で開催された同学会の第10回学術大会の理事長挨拶で、総合診療専門医のサブスペシャルティ専門医として、学会認定の「新・家庭医療専門医」を養成する方針を表明した。2020年度からの開始を予定。前日5月17日の理事会で了承した。

 草場氏は、「プライマリ・ケアの発展に貢献する質の高い人材養成を目的とし、総合診療専門医取得後の将来性のあるキャリアを支援する新たな枠組みを提唱したい」と意気込みを見せた。世界家庭医機構(WONCA)などが設定する国際認証を受けることを目指す。

 詳細は今後検討し、7月の理事会で決定。9、10月に新プログラムを募集、11、12月に審査を行い、2020年度から養成開始というスケジュールを見込む。

 日本専門医機構の総合診療専門医の養成開始後も、日本プライマリ・ケア連合学会は、「家庭医療専門医」(Ver.2)の運営を続けている。「新・家庭医療専門医」は、「家庭医療専門医」(Ver.2)をバージョンアップさせたVer.3と言える位置付け。「新・家庭医療専門医」の基準を満たした施設で、総合診療の研修をした場合には、その一部を「新・家庭医療専門医」の単位として認める方向で検討している。例えば「総合診療の研修3年+家庭医療専門医1年」といったパターンが想定し得る。

 「新・家庭医療専門医」と同様に、今後、日本病院総合医学会をはじめとする関係学会、団体と共同しつつ、「病院総合診療専門医」、「他のサブスペシャルティ専門医(在宅・緩和医療など)」も、総合診療専門医のサブスペシャルティとして位置付けることも想定している。

 草場氏は、「新・家庭医療専門医」養成開始の背景として、総合診療の専攻医は2018年度と2019年度ともに、専攻医全体の2%で、180人前後にとどまり、2017年度の家庭医療専門医時代の203人よりも減少したことを挙げ、次のように説明した。「新制度が開始したにもかかわらず、むしろ減少しているのは、大変危惧すべきこと。その理由は、総合診療専門医の制度設計の不安定さだろう。専門医取得後のキャリアパスが不明確で、サブスペシャルティ専門医の議論はストップしており、今後の展開も不透明。総合診療専門医の議論はいったいいつになるのか、非常に心配している。これまで通り、日本専門医機構と連携・協力体制を堅持しつつ、学会独自で動いていくことも必要ではないかと判断した」。

 「専門医制度に関する説明会」を緊急開催
 理事会決定を受け、「専門医制度に関する説明会」も18日の夕刻に急きょ開催。日本プライマリ・ケア連合学会副理事長の前野哲博氏が、現時点での検討状況を説明した。

 前野氏は、学会にとって重要な決定事項であるにもかかわらず、幅広く学会員の意見を聞くプロセスを経ずに理事会決定した理由について、(1)日本専門医機構が認定する専門医以外に、学会認定の専門医を立てられる確信を持てたのが、ごく最近だった、(2)同機構の総合診療専門医の制度設計等にはまだ時間がかかる、(3)総合診療の専攻医のキャリアパスが見えないまま、新制度から3期目に当たる2020年度の専攻医の募集が始まる――ことを挙げ、学術大会というタイミングに合わせて公表すべきだと判断したと理解を求めた。

 厚生労働省は、5月14日の医道審議会医師分科会医師専門研修部会で、専門医制度の検討の視点として、「厚労省が専門医について議論する意義は、各学会が医師の専門的な知識や技術を習得していること(Specialists)を証明する専門制度とは異なり、専門医が一定の質の専門的医療を、できる限り公平に国民に提供すること(Professionals)を保証することではないか」と提示した(『2020年度専攻医シーリング、機構案通りに厚労省医道審で了承』を参照)。前野氏の(1)の発言は、この点も踏まえたものであると思われる。

 また、総合診療の研修プログラムでは、内科研修が1年組み込まれているが、いまだに日本内科学会が運営するJ-OSLER(専攻医登録評価システム)を使える状況になっていない。専門医試験の内容も決まっていないなど、到達すべきゴールが見えない状況が続いている。

 「新・家庭医療専門医」はこうした問題を解決するため、総合診療の専攻医に対し、将来のキャリアパスを示すとともに、その質の担保を図ることを目指す。

 イメージは、「都市部、郡部にかかわらず、プライマリ・ケア診療、組織管理、地域に根ざした学術活動の基盤を身に付け、地域プライマリ・ケアのリーダーシップを発揮できる人材」。「家庭医療専門医」(Ver.2)よりも、上のレベルを目指すため、臨床研究・教育、プライマリ・ケアのリーダーとしての研修などの部分を手厚くすることを想定している。

 「新・家庭医療専門医」の研修は、開始に先立ち登録が必要。2018年度と2019年度に総合診療の研修を開始した専攻医には移行措置を予定。既存の家庭医療専門医からの移行なども、今後の検討課題だ。「病院総合診療専門医」と「他のサブスペシャルティ専門医(在宅・緩和医療など)」については、関係学会、団体と共同しながら検討する。

 前野氏は、総合診療専門医の養成については、これまで通り、日本専門医機構との連携・協力体制を維持することを強調。一方で、「新・家庭医療専門医」は、当面は同機構の認定を求めることは想定していないとした。「サブスペシャルティ専門医として認めてもらうには、厳しい制限があり、実績が必要。今はできるだけ早く魅力のあるプログラムを作り、実績を積み、社会に認められることを優先する。機構認定のサブスペシャルティ専門医を目指すかどうかは、その後に状況を見て判断する」と前野氏は説明、何よりもまず質の高い「新・家庭医療専門医」を養成していくことが先決であるとした。

緊急開催した「専門医制度に関する説明会」には、多数の学会員が出席。



  1. 2019/05/26(日) 10:10:44|
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5月12日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/675793
退職医師の再就職支援、2020年度開始目指す、NPO全世代
第4回フォーラム、「従来の医師の就労斡旋と一線を画する」
 
レポート 2019年5月11日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 NPO法人全世代の第4回フォーラムが5月11日に開催され、全世代理事で、医師の内田健夫氏は「医師のセカンドキャリアと地域医療を支えるネットワーク」について、退職予定医師らの再就職支援事業に取り組む方針を説明した。エントリー受付を今年中に開始し、2020年度からの事業開始を目指す(『退職医師支援の枠組み、早ければ2020年4月にも運用開始へ』を参照)。

 内田氏は、「従来の医師派遣、医師の就労斡旋の取り組みと一線を画し、医師にとって多様な選択ができるようにしたい」と抱負を語った。再就職支援事業は、退職予定医師、あるいは退職医師の求職と、医師不足に悩む医療機関の求人をマッチングさせる事業。「例えば、3カ月働いて、あとはフリーという医師を4人集めれば、1年間分の常勤となる」と内田氏は説明。「週に2泊3日に働き、残りの日はフリー」といった柔軟な勤務も想定。「(勤務以外の日は)温泉に入ったり、釣をやったり、ゴルフしたりするなど、趣味と地域医療への貢献をマッチさせるような形での提案もやっていけるのではないか」(内田氏)。

 一方で、医師不足の医療機関も、医師の多様な働き方を受け入れるようになると見ており、医療提供体制の見直し、効率化も並行して進むことを期待する。

 日本医師会をはじめとする医療関係団体は、準備段階から加わっており、今後、全国医学部長病院長会議などにも協力を求め、準備を進める予定。

 全世代代表理事の尾身茂氏も、全世代が検討してきた医師偏在対策は、法制化されたと説明。今後の取り組みとして、医師の再就職支援事業も、「うまくいく可能性がある」と期待を込めた。

 コーディネーターには自治医大卒医師の活用も
 全世代は2015年9月に発足。活動の一つとして、医師の地域偏在対策について検討した。2016年10月に、専門研修を終えた後の一定の時期に、保険医療機関の責任者になる条件として、医師不足地域での勤務を一定期間義務付ける私案を公表した(『「医師不足地域での勤務」、保険医療機関の責任者の条件』を参照)。

 内田氏は、2018年7月に成立した改正医療法では、一部の地域医療支援病院の管理者要件に、医師少数区域での勤務が法制化されたことを説明。ただ、「即効性があり、すぐ解消につながっていく話でもない」ことから、「地域創生、医師不足対策の二つに合致しているということで、退職予定医師等をターゲットにして、医師不足、医師偏在の解消に役立つ取り組みを検討してきた」と内田氏。

 医師側、医療機関の双方にとって、コストの問題も含め、「これがいいという、医師派遣システムが今のところない」と内田氏は指摘。さらに1970年代の「一県一医大学構想」で医学部定員が増加、その卒業生が定年を迎える時代になっていることも、再就職事業に取り組む理由だという。「こうした年代は、知り合いや医局に頼むなど、非常に狭いところでセカンドキャリアを選んできた。(医師の再就職支援事業で)セカンドキャリアの新しい提案ができるのではないか」(内田氏)。

 内田氏は、医師と医療機関側双方のニーズをいかにマッチングさせるかがカギとなると見ることから、今後の課題として、「顔が見える現場とのつながりがあるコーディネーターの確保」を挙げる。地域の医療事情に精通している、自治医科大学の出身者などとも連携することを想定している。「ケースを重ね、情報が集まれば、将来的には、まずAI(人工知能)で一義的にマッチングさせ、その後。コーディネーターが個別に対応していくことを想定している」(内田氏)。

 フロアからは、日本医師会常任理事の釜萢敏氏が、「これまでにない画期的な取り組み」と期待を込めてコメント。厚生労働省は現在、専門研修における地域、診療科偏在対策を検討している。釜萢氏は、専門研修に進む医師は1学年は9000人程度であることから、「今困っている地域の偏在が解消できない。この取り組みをしっかりとしたものにしていくことが非常に大事」と述べ、医師と医療機関、双方の条件のすり合わせを精緻に行っていくことが必要と求めた。



https://www.washingtonpost.com/national/health-science/when-should-an-aging-doctor-call-it-quits/2019/03/29/e602da24-3075-11e9-8ad3-9a5b113ecd3c_story.html?noredirect=on&utm_term=.7d4562ed4309
When should an aging doctor call it quits?  
By Jonathan Maltz March 31 The Washington Post

When are you going to retire, Doc? It’s a question I was asked several times a week. When it didn’t elicit a satisfactory answer, I would receive a variation on the same theme the next visit: How long are you going to do that commute? My patients knew that we had sold our house and moved to a condo closer to the city, which led to a 45-minute drive to and from my suburban office each day.

I was in my late 60s and had been a family doctor in the same town for nearly 40 years. I had taken care of several generations within the same families. For the past nine years, a partner and I had run a concierge practice, where an annual $1,600 membership fee covered all our care. Our only concern was the patient’s welfare, not an insurance company’s; we provided same day in-office care and home visits, and there was no time pressure when seeing a patient. It was a wonderful way to practice medicine.

But in 2016, my 72-year-old partner wanted to retire. His decision made me reconsider my own desires. I concluded I didn’t want to be in practice by myself; it was time for me to go, too. After a long search, we found someone we trusted with our patients’ care to buy the practice.

The median age for retirement from clinical activity for primary care physicians is 65, according to a report from the American Academy of Family Physicians. The number of physicians over 65 who are actively practicing medicine quadrupled from 1975 to 2013. In 2016, the Federation of State Medical Boards’ census reported that the number of actively licensed physicians 70 and older numbered 94,969. I’m part of that club.

The reality is: As your longtime doctor ages, there may come a point when you start to wonder whether your doctor is still competent and up to date on the best practices or whether it’s time to end what is likely a trusted relationship and go find someone new.

It’s a valid concern.

Hospitals have wrestled with this problem for many years. On the one hand, aging doctors are often part of the hospital’s leadership. On the other hand, hospitals have a duty to keep their patients safe. In recent years, some hospital systems have introduced mandatory testing (of cognition, health, strength, motor skills, balance and reaction time) for doctors over 70.


It’s harder to spot loss of competence in private practitioners who have few or no affiliations with hospitals or peers who could potentially notice worrisome changes. The hospital testing has not been scientifically validated through good studies and, in any case, it is hard to assess physician competence.

I know a doctor, now in his 70s, who has recent memory loss — he can no longer do his billing — but his distant memory is intact. By all accounts, he remains a competent doctor and still sees patients, receives referrals and gives lectures. He enjoys practicing and isn’t ready to stop. There is no mechanism to get him to quit.

I have seen several colleagues restrict their practices as they get older. They no longer do complex or long procedures or they stop operating altogether because they no longer have the stamina or they feel like they are not as skilled as they used to be. They work fewer hours, thus reducing their stress level. These measures may allow them to work comfortably for several additional years.


Denial is a huge factor for all of us when it comes to recognizing cognitive decline. Doctors are no different in this respect, especially considering that being a physician is an identity and often a calling, not just a job and a way to earn a livelihood.

I’ve had friends and patients ask me how they can assess whether their aging physician should stop practicing medicine or whether they should stop going to that doctor. Here are some red flags I tell them to watch for:

● A doctor you’ve known for many years doesn’t remember you or frequently mixes you up with someone else.

● The physician is dismissive or impatient — and this is a change in his or her usual demeanor.

● When you ask your doctor a question, you often get a confusing or convoluted answer and asking follow-up questions doesn’t help clarify the matter.


● The physician repeatedly forgets to do things (whether it’s order tests, research a question or condition you have, refer you to a specialist, call you with test results or complete another task) that he or she promised to do.

● Your physician seems to refer you to another medical professional for nearly every ailment.

● ● Your doctor has difficulty hearing (or seeing) or seems to be a bit shaky handling instruments.

Ultimately, it’s important to follow your gut. If you don’t feel comfortable or confident in your doctor, find a new one, regardless of how old or young your current doctor is. It really should be that simple.

I am now 70 years old and I work part time in a walk-in medical clinic. I love being a doctor and I love the work it involves. My mind is sharp and I’m in good health — and my hope is that my age has allowed me to acquire greater wisdom, compassion, resilience and stress tolerance.


My own doctor is over 65 and he still appears on the local “Best Doctors” lists — because he has good judgment, a deep reservoir of knowledge, a great bedside manner and other qualities that make him a wonderful doctor. My feeling is: That’s what everyone should look for in a physician of any age.

Jonathan Maltz is a family physician practicing part time in Bethesda, Md. For 40 years, he practiced full time in Olney, Md.



https://www.healthcareworkplaceupdate.com/healthcare/considerations-for-an-aging-physician-policy/
Considerations for an Aging Physician Policy  
By Yvonne Norris Maddalena on April 24, 2019
Healthcare Workplace Update

Labor and Employment Laws and Developments in Healthcare Industry
Aging is inevitable. As the general population trends older, so do the physicians providing care across the United States. While data differs depending on the source, somewhere between one in three and one in four practicing physicians are over the age of 65, with this percentage rising even higher in many specialties. With this aging comes concerns that the cognitive and/or physical dexterity skills of those physicians may deteriorate over time. The resulting potential injury to public safety cause many healthcare organizations to consider policies addressing the aging of their physicians. However, there are many issues that must be considered in order to have a late career medical practitioner policy that can withstand scrutiny by state and federal courts and agencies.

While organizations look to promote patient safety and limit their liability and reputational harm that can result from any negligence in patient care, those goals must be balanced against the rights of the physician. There are many considerations for any such policy. These include what should be the beginning age for any such screening, what is the frequency for any assessments, what are the specific screenings that will be performed and by whom, and what are the consequences for refusing to undergo the assessments. These are just some of the determinations that must be made.

Analysis of what specific screenings will be conducted—such as whether to include substance abuse testing, the role (if any) of peer reviews, if there should be a physical exam, and which cognitive screenings are to be utilized—should focus on maintaining an individualized determination of the skills and health of each particular physician. This will assist in ensuring that no discrimination takes place in violation of the federal Age Discrimination in Employment Act and state and local laws prohibiting age discrimination. Such individualized assessment will also aid in defending against any potential disability discrimination claims that could arise when the organization learns of a previously undisclosed mental condition such as depression or a physical disability that may trigger an obligation to engage in an interactive process to determine if the organization can reasonably accommodate the physician’s condition.

While many jobs affecting public safety, such as air traffic controllers and airline pilots, have mandatory retirement ages, such policies for physicians remain largely untested in the courts despite the growing discussion in the healthcare community. The more narrowly tailored such a policy is, and the more personalized each screening can be, the greater the chances the policy will withstand legal scrutiny. Any organization contemplating such a policy should be cognizant of the legal risks and be prepared to articulate a nondiscriminatory reason based on objective fact rather than generalized perception for implementing a policy that requires physician screening based on patient safety concerns.

For more guidance on your potential or existing late career physician policy, please reach out to your Jackson Lewis attorney, Ms. Maddalena or any member of our Healthcare practice team.



https://www.nishinippon.co.jp/nnp/medical_news/article/507998/
医師の働き方 識者に聞く 岡留健一郎さん 中原のり子さん  
2019年05月06日11時00分 (更新 05月06日 11時15分) 西日本新聞

 医師の働き方改革を議論する厚生労働省の有識者検討会は3月末、2024年度から勤務医に適用される残業時間の上限規制の枠組みや医師の負担軽減策などを盛り込んだ報告書をまとめた。残業規制は、地域医療を担う医師や研修医らの上限を最大で「年1860時間」とした。報告書をどう受け止めるか。2人の識者に聞いた。

 ●地域医療を崩壊させぬように 済生会福岡総合病院名誉院長 岡留健一郎さん

 -一部の勤務医の残業時間の上限が年1860時間では、長時間労働は改善されないとの批判も根強い。

 「医師の健康を確保しながら、地域医療における役割をどう果たすか。『今月は残業が多いから』と、手術や検査を途中でやめられるだろうか。医療は不確実性と公共性が大きく、一気に労働時間を短縮すると地域医療は崩壊してしまう。もちろん1860時間がベストではない。2035年に一般労働者並みの年960時間にする努力を忘れてはならない」

 -実現には何が必要か。

 「医師の偏在を解消すること。マンパワーが十分な都市部は働き方改革の余地もあるが、地方の中小病院は厳しい。救命救急や周産期医療など診療科によっても医師が足りない。へき地の医師不足解消のために設けられた医学部の『地域枠』を機能させるなど、対策が必要だ」

 -各病院で取り組むべきことは。

 「私が働く済生会福岡総合病院(福岡市)では昨春から土曜休診、診療時間外の説明中止、救命救急医の交代制などを実現し、残業が月100時間以上の医師が激減した。労務管理の徹底、医師がやらなくていい業務の移管、女性医師が働きやすい環境整備なども大切。自己研さんと勤務のメリハリをつけ、だらだらと病院に残らせない」

 「全国の勤務医約20万人のうち、残業が年1860時間を超えるのは約1割。この2万人を減らすのはそれほど難しくない。問題は年960時間以上残業する約3割(6万人)の労働時間をいかに削るか、だ」

 -自己研さんの時間が削られ、医療の質が下がらないか。

 「医師は患者のため、努力を怠らない。トータルで休む時間が増えないとの指摘もあるため、連続勤務時間制限(28時間)や勤務間インターバル(9時間)などの対策も講じている」

 -患者に求めることは。

 「夜間のコンビニ受診をしない、診療時間外に説明を求めないなど、患者の協力は必須だ。時間外診療では十分な医療が担保されない。医師の働き方改革は患者の安全にもつながることを理解してほしい」

 ▼1971年九州大医学部卒業。九大医学部助教授、シカゴ大、済生会福岡総合病院長などを経て2017年から現職。日本病院会副会長も務める。医師の働き方改革に関する検討会メンバー。72歳。

 ●「過労死前提」改革と呼べない 東京過労死を考える家族の会 中原のり子さん

 -小児科医だった夫の利郎さん=当時(44)=を過労自殺で亡くした。検討会の議論をどう聴いたか。

 「夫は小児科部長代理となった半年後、勤務先の病院の屋上から身を投げた。常勤医が6人から3人に減ったため、多い時は月8日の当直をこなし、32時間連続勤務も多かった。亡くなる直前は『病院に殺される』と言っていた。遺書を読み、彼が命を懸けて伝えたいことならばメッセンジャーになろうと決意した。検討会では参考人として、その思いを訴えた」

 -残業時間の上限は、激論の末の決着だった。

 「年1860時間は月換算すると155時間。脳や心臓疾患による労災認定基準となる『過労死ライン』(2~6カ月平均80時間)の2倍近い。過労死を前提とした働き方改革は、改革ではなく、野放しとしか言いようがない」
 「今瀕死(ひんし)の状態で働く医師たちの声が反映されていない。検討会の終盤、副座長が『現場の医師に説明できない』と批判し、委員を辞任した。報告書に『賛同できないとする意見があった』と記された点は重い」

 -どんな懸念があるか。

 「労働基準監督署からの是正勧告で残業時間削減に成功したり、交代勤務制を導入したりと改革に着手していた病院もある。『1860時間までOK』と改革が鈍化、後退しないか」

 -3月には若手医師と「医師の働き方を考える会」を立ち上げ、長時間労働の規制を訴えている。

 「労働組合ではなく、産科医など現場で働く若い医師たちが反対の声を上げてくれた。集まった署名はわずか3週間で8千以上。厚労省には当直などを含めた医師の就労データの収集と公開を医療機関に義務付けることや、労務管理に違反した医療機関の管理者への罰則適用を徹底することも要望した」

 -今後の活動は。

 「国は長い間、医師不足の問題にきちんと向き合わず、日本の医療は医師の自己犠牲的な労働によって支えられてきた。失った命は二度と戻らない。患者の命を守る医師こそ、健康で人間らしい働き方をさせてほしい。これからもロビー活動を続けていく」

 ▼東京過労死を考える家族の会会員。薬剤師。1999年に医師の夫を過労自殺でなくし、労災認定を受け和解が成立するまで11年闘った。2014年の過労死等防止対策推進法の制定に尽力した。63歳。

 ●残業 「年1860時間まで」 一部で容認

 検討会は2017年8月に設置され、22回の議論を重ねてきた。報告書では、一般の勤務医の残業時間の上限は「年960時間」とし、休日労働を含めた一般労働者と同じ長さにした。地域医療を担う特定の病院は、35年度までの特例で「年1860時間」とする。国が定めた指標を基に都道府県が選定し1500カ所程度になる見通し。技能の向上が必要な研修医なども、本人が希望すれば「年1860時間」まで認める。

 年1860時間が適用される医師には健康確保のための措置を義務付けた。連続勤務は28時間(研修医は24時間)までで、終業から次の勤務の間に9時間の休息(勤務間インターバル)を設け、これらが実施できない場合は代償休息を付与する。残業が月100時間以上となった場合は、産業医の面接指導を受けなければならない。

 労働時間短縮の方策としては、業務の一部を看護師などに任せる「タスクシフト」や医療機関の集約化・重点化、地域や診療科による医師の偏在対策などが盛り込まれた。労働時間の長い医療機関には短縮に向けた計画作成を義務付け、長時間労働の要因を分析して指導する仕組みもつくる。

=2019/04/29付 西日本新聞朝刊=



https://www.m3.com/news/kisokoza/669646
日本初、行政直営の研修センターが医療過疎を救う-埼玉県保健医療部医療人材課河野貴久氏に聞く◆Vol.2  
2019年5月8日 (水)配信m3.com地域版

 医師数を着実に増やす埼玉県の取り組みについて、埼玉県保健医療部医療人材課の河野貴久氏にインタビュー。後半では、県内に誘導した医師を定着させるための施策と、その旗手といえる「埼玉県総合医局機構 地域医療教育センター」について伺った。(2018年10月27日インタビュー、計2回連載の2回目)

▼第1回はこちら

――「医師確保・派遣委員会」の施策などで確保した医師を、次は、どうやって埼玉県に定着させるかというのは課題ですね。
 医師不足地域でのキャリア形成というのは、なかなか厳しい部分があるのは事実です。2年間の臨床研修が修了すると、次は専門医取得を目指すことになりますよね。埼玉県の病院にも、さまざまな診療科の専門研修プログラムがあり、修了することで専門医の資格を取ることができます。ところが、埼玉県の奨学金制度の貸与者の赴任先となる地域は、小児科・産科・救命救急センター以外では、専門研修プログラムを受けられる病院が少ないのです。その理由としては、指導医が少ないこと、症例数が認定基準に届かないことが挙げられます。専門医は、医師となるうえで絶対に必要というわけではありませんが、キャリア形成を考えると、取れた方がいいわけです。埼玉県ではそれが難しいということになれば、医師の流出は止められません。

 そこで、2018年度から力を入れ始めたのが、埼玉県総合医局機構の「医師キャリア形成支援委員会」による、専門研修の連携病院を増やそうという取り組みです。

――連携病院の増加によって、どのような効果が期待されるのでしょう。
 専門研修の場としては基幹病院がメインになるわけですが、一定期間は連携病院での研修が必須です。連携病院になり得る病院であれば県内にもたくさんあるので、通常の専門研修の期間である3年間丸々は難しくても、1年ほどなら医師を受け入れられる。そうして、奨学金の返済免除の義務を果たしながら専門医も取れるというのは、埼玉県の大きな魅力になると考えています。現在はそのために、県下の病院の方々と調整をしているところです。

 また2018年4月から、医局機構にキャリアコーディネーターを設置したのも、キャリアパスを整備するためです。嘱託の位置付けで県下の大学病院の先生に就任いただき、キャリア形成支援プログラムの作成、若手医師の相談対応、基幹病院の先生とのマッチングなど、我々のような事務方だけでは難しい部分を担っていただき、施策を補完するのが目的です。

――「地域医療教育センター」も、埼玉県で働く価値を高める施策でしょうか。
 そうですね。地域医療教育センターは、県の地域医療を担う医師の教育・研修環境の向上と、県内への定着を図るのを目的に作られたシミュレーションセンターです。高規格シミュレーターをはじめとした機器、病室や診察室を模した空間を備えており、実践さながらの研修が可能です。それを、県内で好アクセスのさいたま新都心に整備しました。同様の研修センターは他県にもあるのですが、行政直営となると全国初です。


地域医療教育センターは、多彩なシミュレーターを備え、自由に使うことができる
 特に高規格シミュレーターについては、持っているのは大学病院クラスの医療機関になると思います。そうなると、こうした研修をしたい人は、東京などの大学病院に就職されることが推察されていました。「地域医療教育センター」によって、埼玉県の地域医療を担っていただく医師をはじめとした、医療従事者の方の教育と研修の環境を向上させ、それをきっかけに県内への誘致・定着を図っていこうと考えています。

病室や診察室を模したエリアがあり、いろんな想定で診療・診察のトレーニングが可能
 センターの特徴としては、県内の医療従事者であれば、どなたでも無料で利用できます。県外の方々からも利用したいというお声をいただいていますが、あくまで県内の方々しか利用できません。さらにもう一つ、原則として、平日は午前9時〜午後9時、土日祝は午前9時〜午後5時で利用が可能です。医療従事者の方々は日中は診療がありますので、そのニーズを押さえた時間帯で開館しています。

――利用状況はどれほどなのでしょうか。
 2017年4月1日にオープンし、同年度は1万77人の医療従事者の方にご利用いただきました。2018年度は9月末の時点で、7417人です。ペースを見る限り、このままいけば実績でも前年度を上回ると思われます。印象としては、特に土日と夜間にかなり利用していただけていますね。

――具体的にどういった用途で利用されるのでしょう。
 まずは、技術の習得を目的とした使われ方ですね。気管支・消化器内視鏡や超音波画像診断装置、静脈注射シミュレーターなどを使った医療手技もそうですし、SimMan 3GやSim Juniorなど、病院単独では整備しづらい高規格シミュレーターを使った救命・蘇生トレーニングも可能です。

 それ以外にも、医療関係団体の研修に利用していただくこともあれば、埼玉県総合医局機構による自主企画研修もあります。例えば、JMECCやPALSの研修を我々が企画します。県内の各病院の先生にコースディレクターをお願いするなどし、県内の病院で働く方々が受講して資格を取得できるようにします。こちらも、医療従事者がキャリアパスを考えるうえで、メリットになり得ると思います。

 埼玉県には医学部がある国公立大学がないとお話ししましたが、半面、そうしたところの縛りがないことで、研修を企画するにあたって、いろんな県内医療機関の先生に講師を依頼しやすいです。所属先の病院以外の先生から教えてもらうことで、視野が広がることもありますし、場合によっては学んだことを持ち帰って自分で反復練習したり、同僚に共有したり。そういったかたちでのスキルアップが図っていけるのではないでしょうか。またそれらを通して、病院間の結びつきが強くなってきているのを感じます。こうしたことも、医療従事者の確保・定着に繋がっていくのではないかと、期待しています。

構成・取材・文 ・撮影=井上良太(シーアール)



https://www.saga-s.co.jp/articles/-/370992
医師不足解消へ奨学金利用募る 県内勤務で全額免除も  
5/8 8:00 佐賀新聞

 小児科や救急科など医師が不足する分野の解消を目的に、佐賀県は奨学金「県医師修学資金」の利用希望者を募っている。大学生と研修医に奨学金を貸与し、県が指定する県内の公的医療機関に一定期間勤務することを条件に、奨学金の返還を全額免除する。

 対象は小児科、産科、救急科、麻酔科を目指す県内外の大学生(4年生以上)と臨床研修医の計4人。貸与額は年額で大学生が122万8千円、臨床研修医が150万円となっている。県内の公的医療機関の対象科で貸与年数の1・5倍の期間働くことが返済免除の条件になる。申し込みは31日まで。

 制度は2005年度から始まり、県医務課によると、18年度末時点で延べ88人が利用し、このうち対象となる県内の4科に27人が勤務している。

 問い合わせは県医務課、電話0952(25)7033。



https://hc.nikkan-gendai.com/articles/253498
医学部に入学する時点から国が丸抱えして管理するのも一案  
2019年05月10日 by 天野篤 バックナンバー(C)日刊ゲンダイ

 医師を目指す学生の質が落ちている――。このところそう感じることが多くなったと前回お話ししました。考えられる要因はいくつもありますが、医学教育制度の見直しも必要だと考えています。

 これまでは、全国の国公立大学の医学部と私立大学の医学部がバランスよく医師を輩出していましたが、いまはそれが崩れてきている印象です。高齢化がどんどん進んで患者が増えている一方、地方は医師の数が足りていない状況が続いています。いわゆる医師の偏在の問題が、さらに大きくなっています。また、都市部は医師の数は多くても、先進的で高度な医療が次々に行われることで一人一人は多忙になり、結果的に地方も都市部も医師が不足しているのが現状です。

 そうした問題を解消しようと、舛添厚労大臣の頃から医学部に入るための門戸を広げて医師数を増やす政策がとられました。しかし、並行して実施された初期臨床研修医制度の弊害で大学医局の地域医療支援ができにくくなった実情が加わり、むしろ地方の医療が疲弊してしまいました。

 医学部への門戸を広げたことに加え、さらに地域医療支援の名目で「地域枠」や「地元枠」という学力の低い学生が入りやすい制度も導入された結果、近年は医師国家試験の合格率が90%割れを起こす事態もまれでなくなっています。9600人程度の同学年国家試験受験者のうち約1000人が不合格となり、教育経費が年間約1000億円も空転した形になっているのです。

 この無駄遣いに異を唱えるのを私以外に聞いたことがありません。それぞれが微妙なしがらみを持つ状況から、国家試験合格率が高い大学も批判の声をあげにくい状況になっているのです。

■医師は公費で育ててもらっているという意識を持たせる

 この事態をそのままにしておくと、結果的に医学生の定員制限という医師数を根本的に減らす政策を簡単に誘導してしまうことになります。病院が病床利用率の低迷を防ぐためにベッド数を減らすのと同じ考え方です。現在進行形で行われている働き方改革や地方国立大学付属病院でのますますの医師不在によって、地方医療サービスの低下には歯止めがかけられず、福祉の切り捨てにつながるのは必至な状況になってきています。

 こうした実態を見ると、やはり医学教育制度を見直す必要があると思います。例えば、医師を目指す学生が医学部に入学する時点から丸抱えして管理するのも一案です。地方の医療が疲弊しないように卒業生の就労先も振り分け、一定の条件や待遇で働いてもらいながら、ある程度の経験を積んだ段階で新たな進路先を見つけさせるというスタイルです。特定のイデオロギー的な仕組みにも思えますが、「すべての国民に一定水準以上の平等な治療を提供する」という理念を原則にしている日本の国民皆保険制度の中では、それもひとつの方法ではないでしょうか。

 そもそも、いまの学生は医学部に入学して医師になるまでの過程で公費が投入されています。私立大学の場合、6年間の医学教育費は学生1人当たり約1億1000万円かかっています。6年間の学費が2000万円の大学では、9000万円が公費で賄われている計算になります。国公立大学の場合は授業料が安い分、さらに多くの公費が使われています。医師は国民の税金に支えられて育ててもらっているのです。

 そうしたことを考えると、医師は国民に奉仕しなければなりません。「自分の力で医師になった」という考えは大間違いで、世の中のために働いて恩返しをする。そんな意識を学生の頃からしっかり教えていくことが大切です。ただ、いまの医学教育の現場では、そういった意識を教育する時間が足りないのが現状で、どうしても観念論だけで終わってしまう場合がほとんどです。ですから「公費で育ててもらっているんだから、自分さえ良ければいいという考えではダメなんだ」ということを学生に納得させるだけの数字的な根拠を、教育する側が示せるようにならなければいけません。

 もちろん、「患者のため、世の中のために労を惜しまず働く」という意識を持っている学生もいます。しかし、だんだん現実に染まっていって、志を忘れてしまう医師も多い印象です。また、近年は女性医師が増えたことで医師同士が結婚して家庭を築くパターンも増えました。そうなると2人でそこそこ稼いで、そこそこの暮らしができてしまうため、「まあ、この程度でいいか」という安定志向に落ち着いてしまうケースも増えてきています。いまは学生の頃からそうした風潮を感じます。

 院長を退き、後進育成にもさらに力を注げるようになったいま、技術的な教育だけではなく、精神面の育成や医師としての“魂”を叩き込み、世のため人のために力を尽くす一人前の医師をひとりでも多くつくっていきたいと考えています。



https://www.toonippo.co.jp/articles/-/189662
地域枠4人が県外流出 弘大医学科16年度卒  
2019年5月11日 東奥日報

弘大医学科地域枠に出願する際に提出する確約書。県内医療施設などに従事することを志願者と保護者の連名で約束する
 青森県内の医療機関などで働くことを条件に、弘前大学医学部医学科に入学した2017年3月(16年度)卒の地域枠学生54人のうち、2年間の卒後臨床研修を経て今春、4人が要件の対象外となっている県外の医療機関に就職したことが10日、同大の調べで分かった。県外流出を防ぐ大学側の取り組みなどで、前年の県外就職(12人)の3分の1にはなったが、医学部側は「地域医療を守るためにも、ルール順守は重要」とし、学生や医師に、制度の趣旨や目的を理解してもらうよう、一層呼び掛ける方針。
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https://www.m3.com/news/iryoishin/672649
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
大学勤務医「研究の扱い」、今後の焦点 - 山本修一・千葉大病院長に聞く◆Vo.2
非常勤医のアルバイト「現状では時間管理できず」
 
インタビュー 2019年4月30日 (火)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)、水谷悠(m3.com編集部)

――厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」では、応召義務、宿日直、兼務の在り方、自己研さんなどが議論されました。「細かいことは何も決まっていない」とのことですが、今後の検討課題として一番気になる点はどこでしょうか。

 大学病院の勤務医については、研究の取り扱いが決まってないところが一番だと思います。医師としての診療業務に関しては、時間管理は可能でしょう。宿日直については、宿日直許可が下りる基準はほぼ明示されました。「当院のこの科とこの科は宿日直だけど、この科は時間外の扱いになる」とイメージできます。自己研鑽についても、何が該当するか見当が付きます。

 助教以上の常勤職員は教育・研究職で、教育・研究・診療、3つのタスクが課せられています。教育については時間でカウントできますが、研究の部分をどう扱うかは決まっていません。厚労省の検討会でも言いましたが、マウスを相手に研究したり、病院で論文執筆のためにデータ整理をしたりしている時間をどうカウントするかが問題になります。

 大学の他の学部の研究者は、基本は専門業務型裁量労働制です。一方で診療に従事し、時間管理されるという要素も併せ持つ医師について、どう労務管理するのかが議論がされていないのです。


大学病院の場合、研究あるいは非常勤医のアルバイトの管理など、課題が多いという。
――現実的にどこで議論するかは、決まっているのでしょうか。

 厚労省は、「臨床医の部分はやります」と言う。研究者の管轄は文部科学省ですが、「大学病院の医師だけの話だけでは済まなくなる」と言う。医学だけでなく、他の分野の研究者にも跳ね返ってくる話ですから、尻込みをしてしまうのです。簡単ではありません。

 ただ手をこまねいていたら、5年後に大学病院はもう大変なことになってしまう。大学病院に勤務する医師は全部で約6万人。日本の約30万人の医師の約5分の1に相当します。大学病院に勤務する医師は特殊な存在ではないので、この議論は避けて通れません。なかなか名案がない状態ですが、関係者が知恵を絞らなくてはいけません。今後1年ぐらいで、方向性はしっかり出さないとまずいと思っています。AJMC(全国医学部長病院長会議)を中心に議論を進めていくことになるでしょう。

――大学勤務医については、副業・兼業の扱いも問題になります。検討会の最後の方で議論が出てきました。例えば医局から関連病院に週1日行く場合は医局で把握できますが、個人が自分でアルバイト先を探していくような場合、時間管理は可能なのでしょうか。

 千葉大の場合、常勤医と非常勤医の割合は、3対7くらい。常勤医については兼業規定があるので、無届けのアルバイトはできず、時間管理も可能。もし届け出ていなかったら、懲戒処分の対象になります。一方で、非常勤医の場合、医局が割り振っているアルバイトは把握できますが、契約した時間以外にもアルバイトしたら、現状では把握のしようがないです。

――でも、合算で管理しなければいけない。

 一般職における副業・兼業については、「申告制」という案が出ています。「申告を基に雇用主は兼業・副業も把握しなさい」という規定です。申告がなかった場合には、雇用主は把握できず、そこに罰則をかけようもないと思います。

 そもそも問題なのは、非常勤医の給料が極めて安いということ。千葉大病院の場合、日給は1日1万3500円です。給料が安いからアルバイトに行かなければいけない。それにより、民間病院の当直が成り立っているという循環ですよね。

――約7割が非常勤医とのことですが、やはり若手が多いのでしょうか。また国立大学は2004年度に法人化されたため、教員ポストは独自に増やすことが可能ではないかと。

 40歳近くにならないと、常勤医のポジションは取れないので、その手前の医師たちは多くが非常勤医です。そうした労働力に依存して、診療が成り立っているのが現実。その分の人件費しか手当てされていない。そもそも診療報酬も文科省からの補助金もそれを前提にした建て付けになっています。

 もちろん可能なら、私たちは常勤医を増やしたい。少なくとも専門医を取った医師は、全部常勤医にしなければいけないと思っています。けれども、それをやったら、本当に人件費がパンクしてしまう。

――大学病院の特徴としては、時間外労働の「暫定特例水準C2」に該当する医師が多いと想定されることも挙げられます。

 どんな医師が該当するか、現時点ではあまりリアリティーを持てていないのですが、専門医を取得して、もうワンステップ上、例えば大学病院で看板を背負えるような腕を持ちたい、あるいは地域の基幹病院の看板になれるようなサージャン(外科医)になりたい、といったレベルの医師を想定しているのでしょう。私は外保連の手術試案「E」レベルの手術の技術を磨く医師(試案の難易度は、A~Eの5段階)かと思いましたが、「D」レベルも含まれるかもしれません。

 「この地域で、この手術ができるのは、この医師だけ」となれば、患者数は多い上に、それを学ぶために若手が集まってくる。「D」や「E」の手術は手間もかかる。師匠の手術はできるだけ見たい。弟子入りする医師に対しては、変な時間規制をかけることはやめよう――。そんな考え方、イメージなのだと思います。



https://www.m3.com/news/iryoishin/672650
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
働き方改革、カギは医師自身の意識改革 - 山本修一・千葉大病院長に聞く◆Vo.3
病院の再編・集約化、タスクシフティングも必要
 
インタビュー 2019年5月7日 (火)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)、水谷悠(m3.com編集部)

――医師の時間外労働の上限規制は、2024年4月から適用されます。5年後を見据え、まずどの辺りから改革に着手しなければならないとお考えですか。

 大部分が都道府県に委ねられます。それぞれの都道府県できちんと実態把握を行い、地域医療構想、地域医療計画を動かしていかないといけません。今までその必要性が言われていてもなかなかできませんでしたが、私は病院の集約化、機能分化が必要だと思っています。今みたいにばらばらに救急車を受けるのではなく、2次救急、3次救急をどこで受けるかなど、ちゃんとプランを立てなければ、回るはずはない。それを各都道府県ができるかどうかです。


医師の働き方改革は、地域の医療提供体制の再構築が先決だと説く。
――タスクシフティングなど各病院での取り組み以前に、地域の医療体制の見直しを先にやる必要があるということですか。

 そう思います。どこの病院でも、現状で既にぎりぎりの人数でやっている。余裕があるのは、ごく一部の基幹病院くらいじゃないですか。千葉県内を見てもそうです。だから今から現状分析をきちんとやらなければいけない。

――「厚労省は医師の働き方改革を機に、地域医療体制の再編を進めようとしている」とお考えですか。

 そうです。だから病院団体はみんな戦々恐々としているのです。特に中小病院、200床規模の病院への影響は大きいでしょう。

――病院ごとに対応しようとすると、「医師の取り合い」などが生じてしまうので、まずはあるべき医療提供体制を考え、地域での各病院の役割を明確にするのが先決。

 その通りです。今のままでは、救急車を取れなくなるところが続出するでしょう。先にもお話ししましたが、大学病院勤務医のアルバイトの時間をどう管理するか、という問題もあります。200床規模ぐらいの病院は、入院患者の半分ぐらいが救急経由のケースが多いようですが、夜間に救急を取っているのはアルバイトの当直医師。

 アルバイトの医師の時間管理が厳しくなったら、急性期の看板を下ろさなければいけないところが出てくるでしょう。つまり国は、相当な大規模な改革を起こすつもりではいる。起こさないと働き方改革は、成功しない。厚労省の幹部は、「さまざまなことを同時にやらなければいけない」「重大な決意を持って、前に進む」ということを言っておられます。

――地域医療構想、医師の働き方改革と、医師確保計画は、「三位一体」だと言われます。

 まさにそうです。最初に申し上げたように、「医師一人一人」というところに視点を置いた、今までに例を見ない大規模な医療制度改革です。

――千葉県のケースをお聞きしたいのですが、千葉県の医療審議会などの場で、大学がイニシアチブを取りながら地域の医療提供体制の在り方を考えていくご予定などはありますか。

 はい。その辺りは、大学として積極的に関わっていきます。千葉大には今度、千葉県からの出資で寄付講座ができます。「次世代医療構想センター」という名称です。地域医療計画に関する各種データ、例えば医師や看護師の需給などについてデータを分析して、効率的な医師や看護師の配置などを検討、提言していく講座です。千葉県における主たる医師の供給源は千葉大学なので、大学としても強力に取り組んでいくということ。以前、厚労省に勤務していた吉村健佑医師がセンター設置準備室を統括して進めていきます。

――地域全体での取り組みの一方、各病院でも働き方改革を進めなければいけないと思います。千葉大では、例えば看護師の特定研修、タスクシフティングなどには既に取り組んでおられるのでしょうか。

 看護師の特定研修については、厚労省は特に大学病院でしっかり取り組んでほしいという方針。AJMCと国立大学附属病院長会議に、それぞれ委託の相談が来ています。国立大学については、eラーニングのほか、必要な事務局機能は、国立大学病院長会議事務局が請け負うなど、準備を進めています。2019年度中に体制を整え、2020年度から養成を始めることになると思います。

――特定行為研修制度のパッケージ化ですね(『「連続勤務は28時間まで」「勤務は9時間のインターバル」』を参照)。

 そうです。千葉大病院にはまだ特定行為研修を受けた看護師はいませんが、外科術後管理領域、術中麻酔管理領域の研修に取り組んでいくことになります(パッケージ研修は、他に在宅・慢性期領域)。

――特定行為研修を受けた看護師が増えてくると、うまく役割分担できるようになり、医師の時間外労働も減少するとお考えですか。

 大学病院には、重症の症例、例えば他の病院で、「いやもう、ちょっとうちではできませんから、大学病院に相談してください」と言われた患者さんが紹介されてきます。当然、術後の管理もものすごく大変。今は外科医が術後も当直し、何とか乗り切っているわけです。理想的には特定行為研修よりも、もうワンランク上の診療看護師のような、臨床推論までできる人の方がいいのでしょうけど、特定行為研修を修了した人が医師でなくてもできる部分を担ってもらうことは必要です。

――今までそうした役割分担が進まなかったのはなぜでしょうか。「自分の患者さんはずっと診なければ」という医師の意識でしょうか。

 そうだと思います。役割分担を提案しても、「ちゃんとやれる人がいたら、任せます」と言う。「任せられるよう、教えればいい」「術後のケアがちゃんとできなかったら、困るでしょう」と返すと、「いや、それをやると、手術成績が下がりますよ」という医師もいます。

 厚労省の「医師の働き方に関する検討会」で、私がそんな話をしたら、渋谷さん(検討会の構成員を務めていた、渋谷健司・前東京大学教授)が、「ナースプラクティショナーに任せても、術後の成績は変わらない」というデータを提出してきました。

 結局は、任せられる人を育てるかどうか、自分の守備範囲はどこからどこまでかという問題だと思います。いまだに手術だけでなく、抗がん剤治療や放射線治療までも行う外科医は少なくない。本来なら外科医は、手術の部分にだけ全力投球すればいいはずです。この辺りにまだ古い体質が残っているのでしょうね。「全部、自分でやる」といった意識の改革はかなり求められると思います。

――働き方改革は、医師の意識改革の契機になる。

 週末も教授が回診に来るような診療科では、若手は集まりません。「土日も回診に来ているから、うちは成績がいいんだ」といった発想を変えてもらわないといけない。千葉大の場合、2019年度の後期研修医は、外科、消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科などメジャーな外科全体で15人のみ。千葉県の人口は約600万人。15人では将来が懸念されます。

――外科系という領域そのものが嫌われているのではなく、勤務が厳しいから医師が来ない。

 私は、働き方に対する姿勢の問題だと思います。手術をやりたいと考える若手は多い。外科医が働きやすい環境づくりをしている教室には、外科医が集まっています。

――その意味では、外科医不足を解消するチャンス。

 本当にそうだと思います。外科に入ろうという若い人たちにとっては、ものすごい追い風ですよね。一方で、今の体制を何とか維持しようという医師たちにとっては、ものすごくアゲンスト。今までのやり方を全部、変えなければいけないからです。



https://newswitch.jp/p/17539
計画相次ぐ国立大統合、「1法人複数大学制度」の是非
自主性保ち合理化
 
2019年05月07日 ニュースイッチ・日刊工業新聞

 一つの国立大学法人を設立して複数の大学を経営する「1法人複数大学制度」(アンブレラ方式)を活用した経営統合の計画が次々と具体化してきた。トップバッターとして2020年度の実現を目指す名古屋大学・岐阜大学の動きが公になったのは、わずか1年前だ。これを可能にする法改正が、今国会中で議論中だ。分野を融合する医工連携で地元産業界を引きつける静岡、3単科大学で文理融合を図る北海道、工学人材の育成を模索する奈良と、各地域案件の状況を見る。

アンブレラ方式活用、自主性保ち合理化

 04年度の国立大法人化は「大学の教育研究をだめにする」という現場の声が小さくなかったが、15年の月日は重い。運営費交付金の削減が続く中、改革を求める社会の声も受けて「反対一辺倒では乗り越えられない」ことを多くの関係者が実感するようになった。

 各大学が覚悟を決めて向き合うようになった転機は、「地域」「特色」「世界」の3類型から主な方向性を各大学が選択する制度の導入だ。

 86の国立大はもはや横並びではない。その方が自らの魅力を発揮できる―。地域の事情や規模、分野に合った教育・研究・社会貢献を、各大学が主体的に考えるという意識が浸透した。

 さらに政府は、切り詰めて緊縮財政に対応する大学“運営”ではなく、外部資金獲得などを組み合わせた“経営”という言葉で、次の改革を促す。その最もドラスチックなものが「統合」だ。

 大学の統合は一般に「地味だが地域を支えてきた中小規模大学が、大規模大学に飲み込まれる」との危惧が強い。しかし1法人複数大学制度ならば、各大学の自主性を保ちつつ合理化ができる。文部科学省は「大学のブランドや地域との関係、同窓会などを残しつつ、リソースを最大限に活用できる。

 現在、この方式での統合を表明しているのは4地域・グループの9大学。全国立大の1割だ。別の大学の追加参加を歓迎するグループも多い。文科省に在り方の見直しを求められている教員養成系の大学・学部など、気にならないはずがない。公私立大や研究開発法人などとの別の形式の議論もある。次の再編に向けた環境が整いつつある。

 一般社会の関心は「次の統合案件はどこか」に向きがちだが、大学改革は“統合ありき”ではない。統合という手段を使い、何をしたいのか。社会に意味ある存在として何ができるのか―。それが強く問われる。(文=編集委員・山本佳世子)

名大・岐阜大 「強み」と「特徴」相互補完

 名古屋大学と岐阜大学は法人統合して東海国立大学機構を設立する。設立時期は法改正次第のため未定だが、2020年4月からの新入生受け入れを目指す。両大学の強みと特徴を生かして相互補完し、国際競争力強化と地域創生への貢献を目指す。強みに応じた研究拠点を形成して教育研究機能を強化、公的資金や外部資金の獲得増加につなげる。

 少子化社会では「縮小均衡で生き延びる発想は捨てる」(松尾清一名大総長)と判断、同機構の傘下に両大学が入るアンブレラ方式で統合する。中心となる同機構本部に両大学がぶら下がり、同機構経営協議会やアドバイザリーボード、同機構事務局がそれぞれ運営に関わる「マルチ・キャンパスシステム」を形成する。両大学の自律性を尊重しながらも、地域の国立大学間の壁を取り払う。

 国の教育予算が減り、大学のプレゼンスが落ちる中、高等教育機関が持続的に発展し、人類や社会に貢献するには現状のままでは厳しいという危機感を持つ。名大は世界との競争、岐阜大は地域貢献を目指す中で補完し合い、組織的、戦略的に目標に向かうことで地域産業発展に貢献する考え。

 名古屋と岐阜がある中京圏はモノづくり産業の集積地。航空宇宙や炭素繊維、農学などの研究を強化、産業構造の変革につなげる。航空工学では名大は設計やシミュレーションに強く、岐阜大は部品加工に強いため補完しやすい。農学では基礎分野中心の名大と全般教育が得意な岐阜大で補完する。

 英語教育や数理データサイエンス、専門領域をまたいだ研究、リベラルアーツなどへの対応には個別の大学のリソースでは限界がある。両大学の特徴を組み合わせて強化し、教育のやり方を変えて地域にも世界にも通用する人材を育成する。

 統合のシンボルとして両大学の研究の柱の一つである糖鎖研究の拠点「糖鎖生命コア研究拠点」を岐阜大学に20年に開設する。同機構の大型研究拠点の一つで、免疫など細胞間の相互作用に重要な役割を持つ糖鎖の機能解明などを目指す。

 名大と岐阜大では規模や体力差があり、岐阜大は名大に吸収されるのではという懸念があるが「強みを持ってとがらせるチャンス」(岐阜大森脇久隆学長)と意気込む。

 同機構に賛同するほかの大学があれば受け入れる方針。松尾清一名大総長は「新しい試みとして従来の大学のイメージを捨て、他大学が参考になる形を目指す」と強調、統合のプロトタイプとしての役割を果たす考え。(文=名古屋・市川哲寛)

静岡大・浜松医大 地方創生担う“知の拠点”に

 静岡大学と浜松医科大学。静岡県内の二つの国立大学が大きな転換点を迎えた。両大学の国立大学法人を統合し、2021年4月をめどに「国立大学法人静岡国立大学機構」を設立。地方創生を担う“知の拠点”として社会課題の解決などに取り組む構えだ。

 「介護などの分野で地域貢献が可能になる」―。静岡大の石井潔学長は統合のメリットについてこのように語る。静岡大はこれまで、複数の学部にまたがるプログラム「地域創造学環」で中山間地域の地域創生などに取り組んできた。しかし今後は高齢化の中で、介護や医療過疎などの課題解決ニーズが高まると読む。「医学的知見が入ることで活動により厚みが出る」と期待を見せる。

 一方の浜松医科大は、教育での効果について言及した。「一般教養の修学内容が充実し、医師としてのコミュニケーション能力育成の体制がより充実するのでは」と今野弘之学長は語る。研究面でも「人文系の情報と医療を組み合わせることで、独創的研究や新分野開拓ができるのでは」と前向きだ。


 しかし統合に際しては壁もあった。静岡大では人文系学部を中心に懸念の声があり「(再編について)かなり詰めた議論をした」(石井学長)と明かす。今後も丁寧な説明を継続し、理解につなげるという。

 統合後初の入学者受け入れ予定は22年4月。「今はまだ、競争社会で戦うためのスタートラインにつくことができた段階」と今野学長。両大学の“二人三脚”はまだ始まったばかりだ。(文=浜松・竹中初音)

小樽商大・帯広畜産大・北見工大 課題解決に臨む実学志向

 小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の統合は、広大な北海道で遠距離にある異分野の3単科大学によるものだ。これまで研究拠点大学の北海道大学では、道内各地へ配慮が行き届かない点をそれぞれ補ってきた。

 しかしグローバル化やIT化、イノベーション創出のニーズ増大という時代に、単科大学では限界がある。それを克服するのが、統合だ。さらに小樽商大の和田健夫学長は「3大学はいずれも、異分野の知識や産学官ネットワークを活用し、課題解決に臨む実学志向の大学だ。それだけにユニークで魅力的なことが成し遂げられるはずだ」と強調する。

 小樽商大はビジネス教育と産業界のネットワークを強みとする、北海道で唯一の社会科学系国立大学だ。そして統合検討のきっかけは、同大が大学改革で他の2大学と、ベンチャーマインド育成プログラムや社会人向け教育などで連携したことだという。「文理融合のリード役という、文系学部・大学の一つの方向性を示す使命がある」(和田学長)と自負している。

 統合案の浮上後、文科省の18年度新規の「国立大学改革強化推進補助金」の獲得に向け、3大学は大車輪で動いた。その結果、経営体制、文理・異分野融合の連携教育、産学官連携のセンター設置、遠隔教育システムという四本柱が、スピーディーに確定。推進組織の整備や3大学教職員の理解も促進されたという。(文=編集委員・山本佳世子)

奈良女子大・奈良教育大 リベラルアーツで工学教育

 47都道府県の中で唯一工学部がなかった奈良県で、工学部が生まれる芽が出てきた。奈良女子大学と奈良教育大学は2022年度までの一法人複数大学方式での統合と同時に、工学部の設置を目指している。「日本はモノづくり大国でありながら、産業界でも教育界でも今の時代に合った工学人材が不足気味」(小路田泰直奈良女子大学副学長)。社会ニーズに対応し、国立大としての存在感を高める。

 両大学は法人統合を機に、奈良先端科学技術大学院大学や奈良工業高等専門学校、奈良文化財研究所、奈良国立博物館などと連携する「奈良カレッジズ」構想を描いている。いまや文化財研究においても分析など工学知識は不可欠。各機関の特色を生かし連携や人材の流れをつくり出す。

 奈良女子大の学生の比率は30%が理学部で、理系要素を持つ生活環境学部を合わせると理系がかなり多い。小路田副学長は「統合を管理部門の単なる経費削減にとどめるつもりはなく、教育を根っこから変えたい」と意欲を見せる。工学教育は従来型の“専門漬け”でなく、より広い見地から学ぶリベラルアーツを入り口に、学年が進むごとに学生の興味や希望で専門性を突きつめる課程を想定している。

 また、日本の教育現場では理科の先生は大学で化学や生物を専攻した人材がほとんどで工学出身者が少ない。子どものモノづくりへの興味を伸ばす、工学的センスを持つ教員の育成も検討している。
(文=東大阪支局長・坂田弓子)
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https://www.medwatch.jp/?p=26235
地域医療構想の実現に向けて、国のサポートを強化すべきだが・・・―社保審・医療部会  
2019年5月7日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 地域医療構想を2025年に実現することとなっているが、地域によって進捗状況に大きなバラつきがある。国が地域医療構想調整会議の議論に介入するなど、サポート体制を強化すべきではないか―。

 4月24日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった議論が行われました。

 ただし、例えば厚労省がダイレクトに地域医療構想調整会議の議論に関与することとなれば、「自主的な機能分化」という地域医療構想の大原則を変えることにもつながりかねません。国のサポートが重要なことは述べるまでもありませんが、まずは「データ提供」などを強化していくことになるでしょう。
 
地域医療構想調整会議の進捗状況には依然バラつき
(1)医師の働き方改革(2)医師偏在対策(3)地域医療構想の実現―、これらの一体的実施に向けた取り組みが進められています。例えば、地域において病院の機能分化が十分に進まず、またニーズを充足できる医師数が確保できなければ、個々の医師の負担は軽減されないといった具合に、これら3施策は相互に連関しているためです。
 
まず(1)の医師の働き方改革に関しては、2024年度から「勤務医の時間外上限規制」(通常は年間960時間以下とし、救急医療機関などで特例的に年間1860時間以下とする)を適用することとなり、今後5年の間に、すべての医療機関で▼いわゆる36協定の締結をはじめとする労務管理の徹底▼医師から他職種への業務移管(タスク・シフティング)を進めるなど労働時間の短縮―を徹底することが求められます(関連記事はこちら)。

また(2)の医師偏在対策については、新たな指標に基づいて「医師多数」「医師少数」の地域をそれぞれ定め、医師多数の都道府県・2次医療圏から医師少数の都道府県・2次医療圏への医師派遣等を促します。また医師少数の地域を持つ都道府県では、大学の医学部に対し「地域枠」の設置を求めることなども可能です。各都道府県では新たに「医師確保計画」を定め、こうした医師派遣を促進するための施策(魅力的なキャリア形成プログラムなど)を定め、2020年度から稼働させます(関連記事はこちらとこちら)。

さらに(3)の地域医療構想は、2025年度(いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる)に向けて地域の医療提供体制を再構築するための「計画」という位置づけです。まず公立病院・公的病院等の機能について地域医療構想調整会議で明確化等を進めることとなっており、2019年度以降、地域において「公立病院・公的病院等でなければ担えない機能」への特化が進んでいるのかを検証するとともに、回復期や慢性期の機能分化論議も進められる見込みです(関連記事はこちらとこちら)。

 
4月24日の医療部会では、とりわけ(3)の地域医療構想について「2025年度の実現に間に合うのか」との指摘が複数出されました。例えば、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「2025年まで6年を切ったが、地域において調整会議論議の進捗には依然として大きなバラつきがあるようだ。国が行司役として調整会議の議論に介入すべきではないか」と指摘。河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)も、国によるサポートの強化を求めています。

一方、島崎謙治委員(政策研究大学院大学教授)は、「国民健康保険の都道府県単位化(財政責任主体を都道府県とする)も、地域医療構想等の実現などと密接に関連し、極めて個別性の高い状況となることから、国による一律の関与は困難ではないか。介入すべきは国よりも都道府県である」と指摘しています。

こうした指摘を受けて厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は、地域医療構想調整会議の議論活性化に向けて▼第三者的立場から意見を述べるアドバイザーの育成▼より詳細なデータの提供―などを行っていることを紹介し、「国によるサポート」を強化していく考えを強調しています。

ただし、冒頭に述べたように、例えば「国が地域医療構想調整会議の議論にダイレクトに介入する」こととなれば、「自主的な機能分化」という地域医療構想の大原則を変えることにもつながりかねず、さらに極論を言えば「地域で議論をする必要もない」ことになります。わざわざ各地の会議に出席せずとも、国が地域の医療提供体制等に関するデータ(病床機能報告データなど)をもとに、「●●病院は急性期機能に、〇〇病院は回復期機能に特化してください」と指示すれば足りる、ということにもなりかねないのです。しかし、これに地域の医療機関が納得して従うとは考えられず、「国によるサポートの強化」としては、まずデータの提示などにとどめ、医療機関による自主的な機能転換を促していくことになるでしょう。

 
なお、(2)の医師偏在対策の一環として、「地域における外来医療機能の不足・偏在等への対応」も今後実施されます。新たに「外来における医師の多数地域」を設定し、そこでの新規開業に対しては▼在宅医療▼初期救急(夜間・休日の診療)▼公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)―など「地域に必要とされる医療機能」を担うよう求めることとなります(関連記事はこちら)。

この考え方について山崎學委員(日本精神科病院協会会長)は、「医師多数地域で開業する医師の中には、学校医も担わない、医師会にも加入しないという人もいる。そうした人に『地域に必要とされる医療機能』を担うよう求めて、実効性があるのだろうか」と厳しいコメントをしています。稼働状況を見て「効果に乏しい」ことが分かれば、さらなる施策(極論すれば一定の開業制限など)が検討される可能性もあります。

 

https://www.m3.com/news/kisokoza/675052
勤務医の働き方 都市偏在の是正も必要だ  
2019年5月8日 (水)配信西日本新聞

 こんな働き方で、医師の命を守ることができるのか。

 医師の働き方改革を議論してきた厚生労働省の有識者検討会が報告書をまとめた。

 2024年度から適用される勤務医の残業時間の上限を、いわゆる過労死レベルを踏まえて「年960時間」とする一方で、地域医療を担う特定の医療機関については35年度までの特例として、最大で「年1860時間」とするのを認める。

 労働時間を急激に減らすと、地域医療提供に支障が出る恐れがあるからだという。連続勤務が28時間を超えないようにするといった条件付きだが、「過労死を前提とした働き方」といった批判が出るのは当然だ。

 研修医や専門技術を学ぶ医師も、集中的に技術水準を向上させるため、年1860時間まで認められる。多くの症例を体験することは医師育成に有効とはいえ、若手医師に長時間労働を強いることにならないか。新潟県の女性研修医が16年1月に過労で自殺した事実を、改めて医療界全体で重く受け止める必要がある。

 医師には、診察を断れない「応召義務」がある。患者の命を守るためには長時間労働も仕方ないという考え方が、医療現場に深く根付いているという。

 報告書は医療機関の労務管理の改善や意識改革、医師の労働時間を減らすため、業務の一部を看護師などに移す「タスクシフト」の推進を求めている。出産・育児期の女性など、時間制約のある医師が働きやすい環境の整備も盛り込まれた。

 一連の改革を着実に進めるために、厚労省は実効性のある支援策を打ち出すべきだ。

 私たち市民の側が意識を変えることで、勤務医の負担を減らすこともできる。

 軽症ならば、基幹病院ではなく、まずはかかりつけ医を受診する。受診を迷う場合の専用電話相談を活用する。そんな風潮を社会に根付かせたい。

 もちろん、法外な長時間労働を特例として認めなければ成立しない地域医療の在り方を、抜本的に見直す必要があることは言うまでもない。

 医師は都市部に集中し、地方部には少ない。卒業後の一定期間、地域医療に従事するよう義務付ける医学部の「地域枠」も十分に機能せず、医師偏在の解消に結び付いていない。激務や訴訟リスクなどで外科や産婦人科などが敬遠されて生じる「診療科偏在」も深刻な問題だ。

 国は地域医療の再編を進めている。いかに地域・診療科の医師偏在を是正し、人口構成に即した適切な医療提供体制を確立するのか。勤務医の働き方改革に欠かせない視点である。

=2019/05/06付 西日本新聞朝刊=



https://www.m3.com/news/iryoishin/675403
急激な医療費抑制策は「参院選で与党に厳しい審判」日医会長
所得・資産などでの応能負担を改めて求める
 
レポート 2019年5月9日 (木)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本医師会会長の横倉義武氏は5月8日の定例記者会見で、財務省が財政制度等審議会財政制度分科会で医療費抑制政策を打ち出していることについて「急激な制度変更による医療費抑制政策を取れば、国民の理解を得られず、社会保障制度改革への取り組み次第では7月の参院選で国民から与党が厳しい審判を突きつけられることになりかねない」とけん制した。


 横倉氏は、日本の財政が厳しいことは認識しているとした上で、「流動資産である金融資産を多く保有する方に応分の負担を求めることも必要だと考えている」と述べ、所得や金融資産の多寡に応じた応能負担導入を改めて求めた。これについては4月23日の財政審で財務省が提出した資料でも言及されている。

 従来から反対している外来受診時の定額負担については、「経済的な誘導を行うことは、経済格差が受療行動に影響を与えることにつながるので非常に大きな問題だ」と述べて改めて反対の意向を強調。定額負担を目指す理由として財務省が挙げているかかりつけ医への誘導については、研修制度を推し進めることや国民への教育・啓発によって促すことを主張した。

 紹介状なしで大病院を受診する場合に選定療養費を徴収できる制度については、財務省の資料で「全額病院独⾃の収⼊となるため、外来患者の増加が収⼊の増加につながる構造」という記述があるが、医療経済実態調査において損益差額に反映されることから、「結果として保険財政の負担軽減にもつながっていることになる」と指摘。あまり活用が進んでいないという点は認め、「対象の大病院の要件や負担額について現状を分析した上でさらに検討していくことも必要だ」と述べた。

 地域医療介護総合確保基金では、財務省資料に「地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設整備等に引き続き重点化しつつ、基⾦創設前から存在している事業か否かにかかわらずメリハリのある配分調整を⾏うべき」との記述がある。これについては、「基金創設前から存在している事業は看護師養成への支援など長期的に見て地域に大変重要なものが多く、それらは十分に確保されなければならない。即時的な効果を求めるのではなく、長期的な視野に立つべきだろう」と述べた。

 急性期病床の次期診療報酬改定でのさらなる要件厳格化については、2018年度診療報酬改定で入院医療の基本的な診療にかかる評価と診療実績に応じた段階的な評価等を組み合わせた体系に再編統合されたことが、「地域の医療ニーズと資源投入とのバランスを取る上で望ましいものだ」と指摘。その上で、「改定のたびに入院基本料の要件が改変され、その都度医療現場は混乱し、なんとかその対応に慣れたら次の改定になるということを繰り返している。新しい評価体系は2018年度改定で導入されたばかりなので、医療機関は人員の将来像を描いてまさにいま改革を進めているところだ」と述べた。

 地域医療構想推進に関しては、財務省は「⾃主的な取り組みが進まない場合には、保険医療機関の指定等に当たり、⺠間医療機関に対する他の病床機能への転換命令に係る権限等を付与するなど都道府県の権限を⼀層強化すべき」と資料に記載。これについては、「知事の権限強化で強制的に機能分化を進めていくと、現場に混乱を招き、かえって医療提供体制を崩壊させかねない」と指摘。地方、特に公立病院で病床利用率が低調で、医療提供内容が民間医療機関と競合している場合があることも懸念されているとの認識を示し、「まずは確実に 公立病院の在り方について検討して、その地域にふさわしい病床数にしていくことが重要だ」と主張した。

WMA理事会副議長に道永日医常任理事

 4月24日から4月27日にかけてチリのサンティアゴで開催された世界医師会(WMA)理事会については、日医副会長の松原謙二氏が報告した。日医常任理事の道永麻里氏は副議長に選出され、女性としては日医、またアジアで初めてWMA役員となった。理事会では緊急決議としてワクチン忌避への警告を採択。世界各地ではしか流行の報告が増えており、各国医師会に対して予防接種スケジュールの認識を高めること、医師がワクチンを忌避する親の不安を取り除くために特別な注意を払うことを呼びかけた。



https://www.m3.com/news/kisokoza/674905
地域の医師不足を補う静岡県の総合診療医育成プログラムの取り組み―浜松医科大学地域家庭医療学講座井上真智子特任教授に聞く◆Vol.1  
2019年5月8日 (水)配信m3.com地域版

 静岡県は、医師少数区域に位置づけられているが、県内では総合診療医養成のためのプログラムが複数実施され、関係者が地域医療の向上を目指し日々活動している。県中東遠地域の3市1町(磐田市、菊川市、御前崎市、森町)では、2010年より静岡家庭医養成協議会と浜松医科大学の連携による「静岡家庭医養成プログラム」を実施し、家庭医(総合診療医)を育成してきた。2018年からは新専門医制度のもと「浜松医科大学医学部附属病院総合診療専門研修プログラム/静岡家庭医養成プログラム」に引き継がれている。この研修プログラムのリーダーである浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授、井上真智子氏に研修プログラムと地域との関わりについて話を聞いた。(2019年3月28日インタビュー、計2回連載の1回目)

▼第2回はこちら(近日公開)

――「静岡家庭医養成プログラム」が始まった経緯をお教えください。
 家庭医養成プログラムは、2010年に地域医療再生基金を使い、県の2次医療圏である中東遠地域でスタートしました。当初は磐田市、森町、菊川市の2市1町で、2014年からは御前崎市が加わり、現在に至るまで3市1町(磐田市、森町、菊川市、御前崎市)からなる静岡家庭医養成協議会が運営しています。費用も3市1町が負担しています。県は、浜松医科大学に寄附講座である地域家庭医療学講座を開設し、それを担当する私が家庭医養成プログラムの責任者となることで関わっているといえます。2018年からの新専門医制度の研修になっても、静岡家庭医養成協議会が浜松医科大学と連携して、従来とほぼ同じ予算、同じ内容で行われています。

 静岡家庭医養成プログラムは、磐田市立総合病院長(当時)の北村宏先生らとミシガン大学のマイク・フェターズ先生が、中東遠地域で家庭医のプログラムを立ち上げようとしたことが始まりです。マイク・フェターズ先生は、菊川市に高校時代1年間留学されていたため、この地域を第2の故郷と感じ、ご自分の専門でもある家庭医療を育てていきたいと考えたのです。私が浜松医大に来たのは2014年ですが、現在まで少しずつプログラムを整備しながら実施してきています。


――県中東遠地域の特性はどのようなものでしょうか。
 高齢化が進み、森町で65歳以上の方が31.7%、菊川市は25.8%、御前崎市は27.7%を占めます。そしてなにより特徴的なのは医師数です。2014年12月のデータですが、人口10万人あたりの医師数は全国で233、静岡は193というなかで、この中東遠地域は134、菊川市127.9、御前崎市は76.1しかありません。特に御前崎市は人口が約3万3000人ですので、医師が23人くらいしかいないということになります。このような状況の中、静岡家庭医養成協議会が、2011年に菊川市家庭医療センターと森町家庭医療クリニック、2017年には御前崎市家庭医療センターを開設しました。


――2018年から静岡家庭医養成プログラムは、新専門医制度による総合診療専門研修プログラムに移行しましたが、変更点とプログラムの特徴をお聞かせください。
 大きな変更点はありません。日本専門医機構のプログラムになる前は日本プライマリ・ケア連合学会のバージョン2のプログラムに準拠しており、現在2年目の専攻医(2019年3月時点)は、まだこのバージョン2のプログラムで研修しています。現状は、以前のプログラムと新制度のプログラムが並行して進んでいます。

 現在2年目の専攻医が入ってきた年(2017年)に、それまでの日本プライマリ・ケア連合学会のバージョン1のプログラム(3年間)をバージョン2に変更し、4年間の研修プログラムにしました。今、研修を受けている人たちには、このバージョン2に準拠したプログラムで研修をしている専攻医と2018年からの日本専門医機構のプログラムで研修をしている専攻医の両方いますが、どちらも4年間の研修期間で、ほぼ同じ内容です。

 研修プログラムの特徴は、小児、女性、緩和ケア、在宅を重視していることです。研修では産婦人科研修と整形外科や緩和ケアの研修を必修で入れています。また、小児科研修もミニマムは3カ月といわれていますが、ここでは4カ月間にしています。研修施設は全部で20あります。クリニックで総合診療研修、総合病院で整形外科、外科、小児科、緩和ケアなどの研修、その他の病院・診療所で選択研修を担当しています。

 たとえば、産婦人科研修は菊川市立総合病院で、家庭医であり、かつ産婦人科医である医師が指導を行なっています。普通は産婦人科の研修は産婦人科医しかいないのですが、この研修では家庭医の目線で女性医療を学べるようになっています。浜松医科大学には、静岡家庭医協議会の寄附講座「産婦人科家庭医療学」も開設しています。近年、地方の産婦人科医療は、お産を扱わなくなったり、産婦人科を閉めてしまったりと大変問題になっています。菊川市立総合病院もかなりきびしい状況ですが、この研修プログラムと連携しながら、家庭医、専攻医が学ぶ場として保たれ、産婦人科医療が維持できています。そうでないとお産もやめざる終えないくらい産婦人科医不足となっています。この地域では、医療を維持することと教育がリンクしているのです。

 他にプログラムの特徴として、研修期間中、少なくとも1つ研究を実施することが挙げられます。この研究については、ミシガン大学の先生方にもかなりサポートを受けています。今までの専攻医には、プログラムの研修期間中に、2週間、ミシガン大学での研修を実施してきました。希望者のみの海外研修ですが、ほぼ全員参加でした。現地の滞在費や指導を受けるための費用などは静岡家庭医養成協議会が負担しています。受皿となる自治体(磐田市、菊川市、御前崎市、森町)が、若い医師に来てもらうための援助は惜しまないということです。研究や書籍、文献を揃えるなど勉強のサポート体制も充実しているので、若い医師がこの地域の研修プログラムを受けに来る、そして結果的にそのことによって地域の医療に貢献できているという仕組みになっています。

 また、研修生は森町か菊川市、あるいは御前崎市のクリニックのいずれかに職員として雇用され、他の施設を研修で回ることになっていますが、家庭医としてのアイデンティティを確立するために、1年目は、週に半日、2年目になると、週1日は、自分の所属するクリニックに戻り、指導医のもとで在宅患者や外来患者を診ます。これは、他の科の研修をしていても、なんのためにしているのだろうとアイデンティティクライシスに陥らないように、家庭医になるためにそれを学んでいるというアイデンティティを持てるように行っています。あと月に2回、グランドラウンドという形で家庭医の専攻医・指導医が全員集まって、振り返りや症例の勉強会をします。家庭医とは何かということから、家庭医として自分が成長していくための振り返り、省察までを非常に大事にしていて、これは日本プライマリ・ケア連合学会でも非常に重視してきた取り組みでもあります。

◆井上 真智子(いのうえ・まちこ)氏
1997年京都大学医学部卒業後、大阪大学医学部附属病院産婦人科、北海道家庭医療学センター、北足立生協診療所に勤務。2009年東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。2016年ハーバード大学医学部Beth Israel Deaconess Medical Center 日野原フェロー。2014年から浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授(現職)、公衆衛生学修士、博士(医学)、日本プライマリ・ケア連合学会理事・家庭医療専門医・指導医。

【取材・文・撮影=宇山公子】



https://373news.com/_news/?storyid=105347
身近な診療所大幅減 人口減、医師の一極集中も 鹿児島県  
(2019/05/10 22:20) 南日本新聞

 「身近なお医者さん」として、地域医療を支えてきた診療所数が、鹿児島県内で大幅に減少している。病床が19床以下の有床診療所数をみると、2004年の491に比べて16年は約3割減の345(厚生労働省調べ)。人口減に伴う経営悪化が影を落としており、経営者は「後継者を探したいが、現状を考えれば難しい」と訴える。
 厚労省によると、2016年の大崎町、曽於市、志布志市からなる曽於医療圏の人口10万人あたり医師数は97人。最多の鹿児島市を中心とした鹿児島医療圏は378人で、曽於医療圏の約4倍だ。鹿児島医療圏は04年と比べても19%増えており、医師の一極集中化が進んでいることがうかがえる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/675737
総合医は「患者全体をマネジメントする医師」井上・全日病常任理事
総合医「一期生」は56人、2年目は7月から開始
 
レポート 2019年5月12日 (日)配信水谷悠(m3.com編集部)

 高齢化が進む中で、複数の疾患を持つ患者に対して臓器別の専門領域だけでない医療が必要な場面はますます増える。そうしたニーズに対応するため全日本病院協会2018年度から始めた「総合医育成事業」は2年目を迎えた。


 担当する常任理事の井上健一郎氏は「幅広くやっていける医師がぜひとも必要で、またチーム医療をやっていかなければならないため介護も含めてリーダーとしての育成が必要だ」と意義を語った。今年度のプログラムは7月13日スタートで、6月頃まで受講者を募集する(『全日病「総合医」の養成スタート』、全日病ホームページを参照)。

 井上氏は、地域包括ケアシステムに関わる医師として、総合医の役割を強調し、「(日本専門医機構の)総合診療専門医もそういうことでやっていると思うが、家庭医だけでなく病院の中で活躍できる総合診療医が必要だというのが私達の考えだ。われわれ経営側の考えもそうだし、病院で働いている医師にも、そのように思っている方がいるのも確かだ」と話す。また、患者の側から観ても、「一人の患者がたくさんの病気を持っており、一つ一つの病気は専門医が診るが、患者全体をマネジメントする医師が必要だ」と総合医の意義を説明する。

 プログラムは(1)自院における総合診療実践、(2)スクーリング、(3)総合診療eラーニング――から成り、スクーリングは「医療運営コース」「診療実践コース」「ノンテクニカルスキルコース」で構成する。対象の医師はおおむね経験6年以上で診療科や年齢を問わない。2018年7月に受講を開始した「1期生」は計56人。男性49人、女性7人という内訳で、年齢層は20代から70代まで、役職も理事長から第一線の医師までとさまざまだ。スクーリングは月に1度、土日曜日に開催し、「診療実践コース」では臨床推論、T&A(トリアージアンドアクション)、生活習慣指導、地域包括ケア実践などの総論と診療科ごとの各論、「ノンテクニカルスキルコース」ではコーチングや人材育成、リーダーシップ・チームビルディングなど医療に限らず組織人としてのスキルも学ぶ。

 プログラムの特徴として、井上氏は「座学を減らし、グループワークを行う。なるべく実践的にやりたい」と考えていることを挙げる。ケアマネジャーらの模擬会議を行い、受講者が模擬患者の立場になって参加してケアプランをつくるなど、実践的な講座となっている。「総合診療をべったりやっている病院に勤めて1年間研修を受ければできることかもしれないが、今の仕事を辞めてなかなかそこへ行けない。であれば、なるべく実践的なことをスクーリングでできないかということで、試行錯誤をしている」という。

 一般の会社では管理職になるにあたって、会議の方法や部下の教育、チームの作り方などの研修がある場合もあるが、医師の世界にはあまりそういうものがない。井上氏は「最初から、若いうちから医師がリーダーではあるが、そのようなトレーニングはしていない。それでうまくいかないことも多々あると思う」と指摘。「ノンテクニカルスキルコース」ではそうした面のトレーニングを行う。このコースでは筑波大学のチームが指導し、医師が中心のため「医療のことを分かった上でやっていただいており、なじみやすい」という。

 「1期生」は九州、関東からの受講者が多く、他の地域は少ない。井上氏は「月に1回東京に出てくる負担が理由の一つと見ている。プログラムを共同運営している日本プライマリ・ケア連合学会も事業の一つとしてやっていく意向を持っており、ニーズに応じて地方での開催も考えられるという。各地からの参加者とのつながりができることもメリットとして挙げた。



https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61502?site=nli
医師の需給バランス-医師の偏在は是正されるか?  
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 篠原 拓也
ニッセイ基礎研究所  2019-05-10


■要旨

日本では、少子高齢化が進行するなかで、医療・介護の提供について、新たな枠組みが整備されつつある。ただし現状では、医師について診療科と地域の2つの面で、需給バランスに課題がある。この課題について、厚生労働省は分科会を通じて検討を進めてきた。今般、その検討結果が、第4次中間取りまとめとして公表された。

本稿では、その内容をもとに、日本の医師の配置の現状や見通しについて、みていくこととしたい。

■目次

1――はじめに
2――日本の医師の現状
  1|医師数は、戦後一貫して増加している
  2|複数の診療科を標榜する、小児科医や産婦人科医は減少している
3――医師偏在指標
  1|医師偏在指標により、医療圏ごとの医師偏在度合いが数値化された
  2|2036年度が医師偏在是正の目標年とされた
  3|医師偏在指標の暫定値と、それに基づく医師少数区域と医師多数区域が示された
4――医師確保計画・医師偏在対策
  1|医師多数の都道府県では、他の都道府県からの医師の確保は行わないこととされた
  2|医学部の地域枠・地元出身者枠は別枠方式しか認めないこととされた
  3|外来医療の偏在対策のため、外来医師偏在指標が設定された
  4|診療科ごとに必要医師数が明確化され、産科・小児科については医師偏在指標が
   設けられた
  5|医師が少ない地域での勤務のインセンティブとなる認定制度が設けられた
5――おわりに (私見)


1――はじめに
 日本では、少子高齢化が進行するなかで、医療・介護の提供について、新たな枠組みが整備されつつある。従来の医療施設中心の医療から、自宅や介護施設での生活における医療・介護ケアを充実させる地域包括ケアシステムの構築である。ただし現状では、医師について診療科と地域の2つの面で、需給バランスに課題がある。この課題について、厚生労働省は分科会を通じて検討を進めてきた。今般、その検討結果が、第4次中間取りまとめ(以下、「取りまとめ」)1として公表された。

本稿では、その内容をもとに、日本の医師の配置の現状や見通しについて、みていくこととしたい。

1 「第4次中間取りまとめ」(医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会, 平成31年3月22日)

2――日本の医師の現状
日本の医療では、医師不足が問題とされることが多い。まず、医師の現状について簡単にみていく。

 1|医師数は、戦後一貫して増加している
医師数の推移をみる。臨床の医師は、戦後一貫して増加し、2016年には30.8万人に達した。人口10万人あたり242.7人の医師が医療に従事している。
図表1. 医師数の推移
2000年代には、メディアで医療の崩壊が喧伝され、医師不足の問題が取りあげられることもあった。この時期に、医師が減少したようなイメージが広がったかもしれない。だが実際には、医師は増加している。増加の背景には、大学医学部の定員が安定的に推移し、新卒医師が着実に供給されてきたことが挙げられる。定員は、2010年度に大きく引き上げられた。2018年度には、9,419人となっている。
図表2. 大学医学部定員数の推移

 2|複数の診療科を標榜する、小児科医や産婦人科医は減少している
つぎに、診療科別の医師数の推移をみてみよう。2016年までの20年間で、主たる診療科についてみると、多くの診療科で、医師は増加している。そのなかで、外科は減少、産婦人科はほぼ横這いとなっている。複数回答でみると、これも多くの診療科で増加している。しかし、小児科と産婦人科では、減少している。背景として、乳児や幼児の患者に対する診療の安全性に、医師が懸念を持つようになり、これまで内科兼小児科としていた診療所が、内科のみを標榜するようになる、といった変化があるものとみられる。小児科や産婦人科の医師の充足が、医療体制整備の課題の1つといえる。
図表3-1. 主たる診療科別医師数推移/図表3-2. 複数回答での診療科別医師数推移

3――医師偏在指標
2018年7月に成立・公布された「医療法及び医師法の一部を改正する法律」では、医師数に関する指標を踏まえて確保すべき医師数の算定、医師少数区域の設定、医師確保対策の実施体制の整備などが規定された。これを受けて、具体基準の策定等について医師需給分科会で審議が進められ、2019年3月に取りまとめが公表された。以下、その具体内容を概観していく。

 1|医師偏在指標により、医療圏ごとの医師偏在度合いが数値化された
地域偏在の状況を把握するためには、地域ごとの医師の多寡を、全国ベースで比較する必要がある。そこで、今般、つぎの「医師偏在指標」が設けられた2。

 2 これとあわせて、次章でみるように、産科医師偏在指標と小児科医師偏在指標も設けられた。また、二次医療圏ごとに、外来医師偏在指標も設けられた。

  (1) 医療ニーズ及び人口・人口構成とその変化
一般に、高齢者の割合が高い地域ほど、医療ニーズが増す。そこで、指標の分母の「地域の標準化受療率比」において、地域の性年齢階級別の人口構成を反映することとされている。

  (2) 患者の流出入
大都市の中心地域では、昼間人口と夜間人口が大きく異なる。また、患者が、医療圏を越えて受療することもある。これらに関して、医師数は、夜間人口(患者住所地ベース)をもとに算出されており、昼間に所在する地域での受療行動は考慮できていない。そこで、外来医療については、現実の受療行動に関するデータを参考として、患者の流出入を反映する。入院医療については、地域医療構想における推計方法を参考に、患者住所地をもとに医療需要を算出し、流出入についての実態も情報提供した上で、都道府県間等の調整を行うことで、患者の流出入を反映することが基本とされた。

  (3) へき地等の地理的条件
へき地等は医師偏在指標の比較では、きめ細かく対応できない。このため各都道府県が、局所的に医師が少ない場所を「医師少数スポット」3として定め、医師少数区域と同様に取り扱うこととされた。

 3 医師少数スポット等における局所的な医師確保にあたっては、常勤医師派遣という選択だけではなく、複数医師での多様な連携による派遣システムや巡回診療等の体制整備、遠隔医療の活用を検討するなど、実情に応じた柔軟な運用により医療ニーズを充足していくことが適切である、とされている。

  (4) 医師の性別・年齢分布
地域の人口のみならず、医師についても、地域ごとに男女比や年齢分布が異なる。そこで、指標の分子の「標準化医師数」において、性・年齢ごとの平均労働時間による重み付けをして、医師数を標準化することとされた。

  (5) 指標の単位と見直しの間隔
医師偏在指標は、三次医療圏(都道府県)と二次医療圏を単位として、算出することとされた4。見直しの間隔は、医師確保計画と同様に、3年(初年度は4年)ごととされた。

4 外来診療を担う診療所の地域偏在問題については、別途検討を行うこととされた。

 2|2036年度が医師偏在是正の目標年とされた
医師の養成には、相応の時間を要する。都道府県が大学に対して、地域枠や地元出身者枠を設定する仕組みは2022年度から開始される予定であり、その医学生が医師になるのは2028年度。地域枠は義務年限を9年間とすると、その効果が最も大きくなるのは2036年度となる。そこで、第9次医療計画の終了時点(2035年度末)の医師確保状況を目標として、2036年度が医師偏在是正の目標年とされた。

 3|医師偏在指標の暫定値と、それに基づく医師少数区域と医師多数区域が示された
医師偏在指標の下位3分の1を医師少数区域、上位3分の1を医師多数区域と設定することとされた。今回の取りまとめでは、暫定値(精査中)として、都道府県および二次医療圏ごとの医師偏在指標が公表された。このうち、都道府県については、つぎの表のとおり、東京、石川、山口、宮崎を別にすると、東日本で医師少数、西日本で医師多数の傾向となっている。一方、二次医療圏別にみると、一般に都市部で医師多数、農村部で医師少数となる傾向がうかがえる。

4――医師確保計画・医師偏在対策
取りまとめによると、指標をもとに、各地域の医師の充足状況を明らかにした上で、医師確保計画・医師偏在対策がとられることとなった。その内容について、みていこう。

 1|医師多数の都道府県では、他の都道府県からの医師の確保は行わないこととされた
都道府県は、医療計画のなかで医師確保計画を定め定期的に見直すこととされている。計画において、医師少数の都道府県は、医師を増やすことを基本とする。その際、医師多数の都道府県から医師の確保を図ることが望ましいとされている。一方、医師多数の都道府県は、他の都道府県からの医師の確保は行わないこととされている。

 2|医学部の地域枠・地元出身者枠は別枠方式しか認めないこととされた
大学の医学部で医師を養成するにあたり、どのように定員を設置するかが問題となる。具体的には、卒業後地元に定着する確率の高い地元出身者向けの地域枠・地元出身者枠をどのように設けるかである。2008年度から、臨時定員の増員が行われてきた。

臨時定員には、一般枠とは別枠で募集定員を設ける「別枠方式」と、一般枠と共通で選抜して選抜の前後で地域枠学生を募集する「手挙げ方式」がある。手挙げ方式では、地域枠が一般枠に流用され、医師偏在対策の効果が低いとされる。そこで、取りまとめでは、別枠方式しか認めないこととされた。

 3|外来医療の偏在対策のため、外来医師偏在指標が設定された
地域包括ケアシステムを実現するために、地域の外来医療の充実は必要不可欠といえる。しかし、地域によっては、無床診療所が不足するなど医療の偏在がみられる。そこで、診療所医師数について、二次医療圏ごとの「外来医師偏在指標」が設定された5。

この指標の上位3分の1は、外来医師多数区域と設定され、都道府県のホームページに掲載するなど周知することとされた。指標化による情報の可視化を通じて、開業する医師の行動変容につながることが期待されている。

 5 として、計算される。この計算式の分子は、診療所の医師の性別、年齢による労働時間の違いを全医師なみに補正した医師数。分母は、地域の性別、年齢による外来受療率の違いを全国平均に補正した人口10万人あたりの外来受療数に、地域の医療施設(病院と診療所)のうち診療所で外来患者を診る割合(患者数の比)を掛け算したもの。

 4|診療科ごとに必要医師数が明確化され、産科・小児科については医師偏在指標が設けられた
診療科ごとの医師偏在対策も必要とされる。取りまとめでは、診療科ごとに、将来必要な医師数の見通しを推計した。具体的には、18の診療科について、都道府県別に、必要医師数とそれを達成するための年間養成数を算定した。2016年の医師数の維持、2024年、30年、36年の必要医師数について、暫定版の数値が示された。これらの数値は、各都道府県における医師偏在対策や、専門医制度のシーリング6の検討などへの活用が期待されている。

また特に、周産期医療や小児医療では医師が長時間労働に陥りがちなことや、これらの医療を拡充する政策的な側面を踏まえて、産科・小児科について、全体の指標とは別に、「産科医師偏在指標」「小児科医師偏在指標」が設けられた。併せて、指標の暫定値(精査中)も公表された。

 6 2018年4月より始まった新専門医制度では、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県で、原則として、各診療領域において、専攻医募集定員が過去5年間の専攻医採用実績の平均値を超えないように、採用数にシーリングを実施している。ただし、これまでの医師の増減等を踏まえ、外科、産婦人科、病理、臨床検査、総合診療科は除外されている。

 5|医師が少ない地域での勤務のインセンティブとなる認定制度が設けられた
医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度が設けられた。制度の運用にあたり、医師少数区域等での業務内容、勤務期間、認定対象の勤務時期などが議論された。業務内容として、地域の患者への継続的な診療、在宅医療、地域ケア会議への参加などが示された。勤務期間は、1年以上の継続勤務が望ましいが最低限6ヵ月、原則として同一医療機関に週32時間以上7連続して勤務などとされた。勤務時期については、都道府県の医療計画で医師少数区域が定められる2020 年度以降とされた。

なお、認定取得のためのインセンティブについては、将来に向けた検討事項とされた。たとえば、地域医療支援病院等の管理者要件として、認定医師であることを加える。認定医師により質の高いプライマリ・ケアが提供される医療機関には、税制・補助金・融資・診療報酬の評価など、経済面での優遇を行う。などの検討を行う必要があるとされている。

7 育児・介護休業法の規定に基づき短時間勤務を行っている場合は、原則として週30 時間以上とされている。

5――おわりに (私見)
地域包括ケアシステムを構築する上で、医師の需給バランスをとること、特に医師の偏在問題の是正を図ることは、避けては通れない課題といえる。今般設けられた医師偏在指標は、医師の配置の現状を数値で表すことにより、医療関係者のみならず、社会全体にこの問題への関心を高める契機となる可能性がある。この指標をうまく活用して、医師の配置を適正化することが必要となろう。

今回公表された指標は暫定値(精査中)であり、適宜見直されるものとみられる。今後も、引き続き、その動向と、医師偏在是正に向けた取り組みに注目していくこととしたい。



https://www.m3.com/news/iryoishin/675282
シリーズ 女性医師と医学部・キャリア
男性に向いている科=外科、全属性で8割◆Vol.9
性別による診療科の向き不向き「有」が大半
 
医師調査 2019年5月11日 (土)配信岩崎雅子(m3.com編集部)

Q 診療科によって女性に向いている、男性に向いていると感じる科はありますか。
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 性別によって向いている診療科があると感じるかを尋ねると、40歳以下の男女の約9割、41歳以上の男女の約8割が「女性に向いている診療科がある」、「男性に向いている診療科がある」、もしくは「男女双方に、それぞれ向いている診療科がある」と回答し、多くの医師が性別による診療科の向き不向きがあると考えていた。

Q どの診療科が「女性」に向いていると感じますか【複数選択可】。(「女性に向いている診療科がある」
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もしくは「男女双方に、それぞれ向いている診療科がある」の回答者に質問)。
 女性に向いている診療科で選択が多かったのは「産婦人科」や「皮膚科」、「眼科」などで、特に「産婦人科」は全ての属性で6割以上が選択した。

 年代によって違い見られたのは「小児科」で、40歳以下は男女ともに約40%が選択した一方で、41歳以上では同55%が選択するなど、約15ポイントの差が見られた。 また、「麻酔科」や「内科一般」に関しては女性自身の選択率が男性に比べて高く、特に「麻酔科」は40歳以下の女性の55.9%が選択した。


Q どの診療科が「男性」に向いていると感じますか【複数選択可】。(「男性に向いている診療科がある」もしくは「男女双方に、それぞれ向いている診療科がある」の回答者に質問)。
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 男性に向いている診療科で選択が多かったのは「外科」や「整形外科」、「循環器科」、「脳神経外科・神経内科」などで、特に「外科」は全ての属性で7割以上が選択した。

 年代によって違いが見られたのは「循環器科」で、40歳以下女性が54.3%、男性が45.5%選択している一方で、41歳以上は3割後半に留まった。

 男女で回答に違いが見られたのは「整形外科」で、女性は全ての年代で7割以上が選択するなど、男性に比べて多かった。

【調査概要】
・調査期間:2019年1月25日~1月31日
・対象:m3.com医師会員
・回答者数:817人(40歳以下の女性200人、41歳以上の女性201人、40歳以下の男性201人、41歳以上の男性215人)



https://www.m3.com/news/general/675680
公立病院赤字幅が拡大  
2019年5月10日 (金)配信山梨日日新聞

 山梨県がまとめた県内13公立病院の2017年度事業会計決算によると、本業の医業に関わる経常損益の合計は18億8883万2千円の損失で、17年連続の赤字となった。赤字幅は3年ぶりに拡大し、前年度を5億1499万3千円(37・5%)上回った。医療スタッフの処遇改善に伴う人件費の増額が主な要因だった。

 13病院は甲府、富士吉田、都留、山梨(牧丘)、大月、韮崎、北杜(塩川、甲陽)、上野原、甲州(勝沼)、市川三郷、富士川の12市町立病院と、身延、早川両町の組合立の飯富病院。病院が行う介護施設などの事業も決算に含めた。

 県市町村課によると、牧丘、勝沼、富士川を除く10病院で赤字を計上。飯富は入院患者の減少による収益の減少や医師らの処遇改善によって、前年度の黒字から5348万2千円の赤字に転じた。

 赤字額が増えたのは5病院。甲府は5億6483万7千円で前年度から3億3369万3千円増えた。富士吉田は4億3428万1千円(前年度比4億496万6千円増)、大月は1億3773万6千円(同8279万9千円増)、塩川は1億4819万円(同1億828万6千円増)、甲陽は8386万3千円(同1969万3千円増)。

 赤字計上した病院は、大半が医師や看護師など医療スタッフの処遇改善など人件費の増加、電子カルテ導入や医療機器の更新による経費を理由に挙げた。13公立病院の外来患者の延べ人数は97万6978人で、前年度を2万1408人(2・1%)下回った。

 赤字幅が縮小したのは4病院。韮崎は6283万4千円で2億439万7千円(76・5%)の大幅減。ほかは都留(5・1%減)、上野原(3・4%減)、市川三郷(38・4%減)だった。

 病院ベッドの利用状況を示す病床利用率は塩川が93・0%で最も高く、飯富84・1%、富士吉田78・8%、甲府74・0%などと続いた。上野原が47・2%、大月39・6%、市川三郷26・2%で5割を下回った。

 公立病院は16年度までに経営状況の改善に向けた「新公立病院改革プラン」を策定し、取り組みを進めている。同課担当者は「経営状況は依然として厳しい状況だ。プランの成果が表れるよう引き続き改善に取り組んでいく必要がある」としている。



https://www.m3.com/news/general/675404
国立大の論文生産性低い? 財務省の分析に大学反発  
2019年5月9日 (木)配信朝日新聞

 日本の大学は「生産性」が低く、論文1本にかかる費用はドイツの1・8倍――。国立大学の研究成果に応じて交付金の額に差をつけた政府の2019年度予算には、「選択と集中」を掲げて改革を迫る財務省のこうした分析が反映されている。国立大側は「極端な比較だ」と反論したが、国会での議論は深まらないまま、予算は成立した。

 財務省は、ほかの論文に引用された回数が上位1割に入り、その分野で特に影響力がある「トップ10%論文」を分析。昨年10月、予算案を審議する財政制度等審議会の分科会で結果を公表した。

 それによると、大学などの「高等教育部門」の研究開発費は、日本は総額208億ドル(約2・3兆円)。トップ10%論文数は約3千本で、1本当たりの費用は660万ドル(約7・3億円)だった。一方、ドイツは、ほぼ同額の投資で約6千本のトップ10%論文が出ていたという。

 全国86の国立大には、国から毎年約1兆円の運営交付金が支給されている。16年度からは、改革の進み具合に応じて交付金額に差をつける制度が導入された。その枠は18年度の約285億円から、19年度予算では約1千億円に膨らんだ。

 これに対し、国立大学協会は昨年11月、「国立大の生産性はそれほど低くない」と反論する声明を出した。

 大学を国立とそれ以外に分類し、教員が研究にあてている時間の違いなどを考慮した上で研究開発費を推計したところ、国立大は96億ドルで、全大学の46%を占めた。一方、国立大が生むトップ10%論文は2277本で、全大学の76%だった。国立大に限れば1本当たりの費用は420万ドルで、ドイツの「約1・1倍」にとどまるという。

 国立大学協会は、財務省の分析について、「州立大が大半を占めるドイツと、私立大が多い日本を比べている」「極端な差を強調することには疑義を感じる」などと批判。交付金の傾斜配分拡大は、大学の経営基盤を不安定にし、教育や研究を「衰弱化、崩壊」させると訴えた。

 ただ、日本のトップ10%論文の費用が欧米より高い傾向に変わりはない。財務省によると、米国は1本あたり210万ドル、英国は150万ドル。協会の試算でも、日本は米国の2倍、英国の3倍だ。協会は「論文生産性に問題がないとする意図はなく、強い危機感をもって研究力向上に取り組む」としている。(小宮山亮磨)



  1. 2019/05/12(日) 12:37:39|
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