FC2ブログ

Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月29日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/617654
シリーズ m3.com全国医学部長・学長アンケート
医師不足に苦慮、定員増見込めない中で種々の対策を模索
医学部長・医科大学長アンケート-Vol.4- ◆ 地域枠【その2】
 
レポート 2018年7月23日 (月)配信大西裕康(m3.com編集部)

Q.今後の医師不足・偏在対策では、大学が都道府県と連携しながら、取り組む重要性が高まっています。現在もしくは今後、貴大学で実施している取り組みがあれば、教えてください。

 回答からは、各大学が附属病院や関連病院を設けている都道府県内の医師不足に苦慮している状況が垣間見えた。各都道府県とのタッグ強化はもとより、大学の立地圏域だけでなく県境を越えて、全国規模で、施策が必要と訴える意見もあった。

[県境を越えた施策、全国規模の対策が必要]
【東京慈恵会医科大学・松藤千弥 学長】 本学の定員は、一般枠が100人、東京都の地域枠が5人、本学独自の地域枠が5人の計110人です。日本全体で見た場合、医師は充足していませんが、将来の医療費を考えたら、これ以上は医学部定員を増やせないと思います。タスクシフティングなどを進める必要があります。
 また仮に医学部定員を今後、減らす場合、一般枠と地域枠を固定的に考えていたら、医学部の運営は非常に難しくなるでしょう。文部科学省がどちらを減らすかを一律に決めるのではなく、各大学が柔軟に対応できる仕組みにしておいた方がいいと思います。
 今は各大学が自らの地域の医師不足への対応で苦慮しています。医師偏在を法的に対応するのは過渡的には必要かもしれませんが、日本全体で根本的な解決策は、教育にあるでしょう。「日本のどこに住んでいる人に対しても、医療を提供するのが医師の役割、責任」という教育、倫理観の醸成が非常に大事だと思います。

【大阪医科大学 大槻勝紀 学長】 本学では2人の地域枠の入学生を受け入れています。本学の「建学の精神」から高知県本山町立国保嶺北中央病院に1人、くぼかわ病院に2人の医師派遣を行い、医師不足・偏在対策に協力しています。また、多職種連携教育の一環として毎年夏休みに本学医学部・看護学部と同一法人の大阪薬科大学学生の一部が地域医療を高知県で学んでいます。

【産業医科大学・東敏昭 学長】 全国に産業医を輩出する目的大学として、手薄な地域への就職を促すため様々な意見交換を行っている。

【匿名希望・国公立大】 地方では若者の職業選択が極めて限定されているために、その地域の最優秀の高校生が最も安定した職である「医師」を目指す傾向が著しく高まっている。そのために、地方によっては各県トップの進学校の成績トップ層の半数が、医学部に入学するという事態となっている。工学系産業の衰退などに加え、地域枠もこの傾向を助長している。各地域の将来を担うべき優秀な若者を医師不足解消の道具に使うことは避けなければならない。地域枠を各大学所在地の出身者に限定しようとする動き(医師需給分科会)があるが反対である。医師不足の付けを当該県の優秀な若者に課すことになれば医療以外の分野の人材が枯渇し、結果的に地方がさらに疲弊することになるであろう。したがって、所在地限定地域枠以外の方法で医師不足を解消すべきと考える。

【匿名希望・国公立大】 地域特別枠入試として、複数の県が特別定員枠を持っている。地域枠の学生は、各県主催のプログラムに参加することを本学の必修単位としており、各県の研修プログラムへの移行をサポートしている。

【匿名希望・国公立大】 他県にある本学の関連病院は所在県との連携のもとで医師不足に対応できているとは言い難く、本学が独自に対応しているのが現状である。例えば、隣県市立病院に連携講座を設置し、同病院の医師が本学に社会人入学できる制度を整え、若手医師が地域医療に従事しながらキャリアップできる仕組みを整備した。
 地方においては、都道府県単位での取組を推進するだけでは医師不足は解消されない可能性が高く、より大きな枠組み(複数大学の連携)での取組が考えられる。
 本学関連病院と、各協議会との連携を強化し、学部生の教育から関連病院の医師に参画してもらう仕組みを整えようとしている。


[各県とのタッグを強固に]
【旭川医科大学・吉田晃敏 学長】 北海道教育委員会と共催で次の取組を実施している。
1.メディカルキャンプセミナーの開催(2008年度~)
2.医進類型指定校・協力校と連携しての高校生メディカル講座(2008年度~)
3.地域医療を支える人づくりプロジェクト事業における医学部生の招聘事業(2011年度~)

【東北大学・五十嵐和彦 医学部長】 宮城県との連携は以前より強固であり、東日本大震災後の医療復興も宮城県との強い連携のもとで行っている。本学の修学資金付き地域枠奨学生は医学科3年次に募集し選抜する。したがって、学生は医師という職業や地域医療のやり甲斐を理解した上で応募できる。その結果、他大学で問題となっている卒後3年以内の地域枠辞退(辞退率全国平均13.2%)は今年度まで皆無である。
また地域枠修学資金返還免除の資格は、猶予期間4年間を設けた上で、卒後4年間の宮城県地域医療への従事としている。4年間のうち2年間は東北大学大学院での研究活動や大学病院勤務も義務履行として認めている。したがって、本制度では、義務を履行しながら新専門医制度への対応も可能である。
すなわち、キャリア形成も踏まえた資金返還免除資格を設定することにより、卒後辞退率0%を達成している。

【山形大学・山下英俊 医学部長】 山形県では、山形大学医学部で創設し、山形県全体の医療界(大学、行政、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、助産師会が参加)が協力して山形県内での医師の育成、診療、研究を行なう蔵王協議会を中心として、若い医師が勉強しつつ地域医療を支える体制をとっている。地域医療構想にも山形大学医学部から蔵王協議会を通して積極的な提言を行っている。

【福井大学・内木宏延 医学部長】 県からの要望を受け、地域枠の増員について検討している。

【広島大学・秀道広 医学部長】 県地域医療支援センターを設置し、大学教授(現在は医学部長)がセンター長に就任し、県関係者と医師確保、地域枠出身医師の配置等の事業に取り組んでいる。

【徳島大学・丹黒章 医学部長】 県との連携(地域枠学生への入学前から定期的な指導など)、四国内他県との連携(寄附講座等)。

【大分大学・守山正胤 医学部長】 本学では、県内の都市部と僻地の格差が大きいので、その地域偏在を改善することを目的として、内科医療人材育成事業を本年度から開始した。本事業は、大学の内科医局に入局した専攻医を地域の僻地医療拠点病院に派遣した際に、当該医局の助教が週に1.5日専攻医派遣病院に出向き、当該病院のための専門診療ならびに内科専門医取得のために必要な教育を行うしくみである。
 これは通常僻地医療拠点病院では専門医が少なく、当該病院に勤務している指導医のみでは十分専攻医の指導が行えない短所を補うことを目的としている。その際、当該病院には派遣する教員(助教)の人件費を大学に寄付してもらうことで専攻医を派遣する大学医局でも教員不足を解消できる(dutyの1.5日以外は大学での通常の研究・診療が可能である)。
 また、当該病院でも附属した専門領域を2名の医師(専攻医と派遣される教員)によりカバーすることができる。そして、何よりも専攻医が地域の僻地医療拠点病院で都市部に見劣りしない指導をマンツーマンで受けることができるようになる。本事業により僻地における医師不足の改善を目指している。現時点では僻地の病院からは好評を得ている。

【匿名希望・国公立大】 県との連携、特に地域医療支援センターを中心とした県内研修病医院連絡会などを定期的に開催して初期研修医のキャリア形成支援と地域枠等学生の義務履行を支援している。また、専門研修における基幹病院としての役割を担う大学病院内に「医師派遣検討委員会」を設置して専門医取得と医師偏在対策に対応している。

【匿名希望・国公立大】 県との連携強化

【匿名希望・国公立大】 地域枠学生ならびに地域枠卒業医師の育成およびキャリア形成支援について県との協議を重ね、県内における医師の地域偏在・診療科偏在の解消に向けた取り組みを進めている。

【匿名希望・国公立大】 開学以来、県と地域枠入試で実績を上げてきている。

【匿名希望・国公立大】 地域枠入試を実施している。


[キーワードは“地域医療”]
【岩手医科大学・佐藤洋一 医学部長】 地域医療実習を充実化し、地域医療の意義とやりがいを体験してもらう機会を増やします。国家試験の知識的には無駄とそしられかねない実習をあえて増やすのは、本学の使命である「厚生済民」を重視するからです。

【富山大学・北島勲 医学部長】 地域医療を担う人材育成のため、医師不足が深刻な市町村の寄付講座を開講し診療および地域研修・地域医療実習を行っている。この寄付講座を増やしていく計画である。

【匿名希望・国公立大】 附属病院に地域医療研究・支援センターを設置し、その地域医療支援部門が県の地域医療支援センターと密接に連携し、医師不足・偏在対策に取り組んでいます。

【匿名希望・国公立大】 卒業後に医学部や関連病院の地域医療に広く貢献できるよう、特色ある地域医療教育を実施している。

【匿名希望・国公立大】 寄附講座を設置する方法が正しいとは思わないが、自治体の財源不足もありそれ以外の方法が見つけられないのが現状である。



https://www.m3.com/news/iryoishin/618198
シリーズ m3.com全国医学部長・学長アンケート
勤務時間の的確な把握が急務
医学部長・医科大学長アンケート-Vol.5- ◆ 働き方改革【その1】
 
レポート 2018年7月25日 (水)配信大西裕康(m3.com編集部)

 全国の医学部長・医科大学長を対象にアンケートを実施し、今年は全国25大学の回答を紹介する当企画。Vol.1~2では今年4月開始の新専門医制度に関して、Vol.3~4では医学部定員枠のうち「地域枠」などに関して回答結果を紹介した。Vol.5~6では、医療界として今年最注目の話題、「働き方改革」に関する考えを紹介する。


Q.医師の働き方改革が、医療界では重要課題になっています。大学勤務の医師の場合、臨床、教育、研究に取り組む必要があり、改革の難しさも指摘されています。貴大学・医学部が取り組んでいる内容や、医師の勤務時間などについて提言がございましたら教えてください。

 今回Vol.5では、大学が「働き方改革」の一環として現在取り組んでいる事項、または取り組みの実施に向けて検討中の事項などに関する回答を紹介する。多かったのは、勤務時間を的確に把握する必要性を指摘する意見だ。ただ、どのような手法で「的確に把握する」のかについては、タイムカードの導入を検討している大学がある一方、「タイムカードは意味がない」との考えを表明し、独自の位置情報システムを組み合わせた手法の検証に取り組む大学もあった。業務分担の見直しやタスクシフティングを進めて勤務負担の軽減を図る考えの大学、適切な報酬などで処遇を改善している大学もあった。

[まずは勤務時間を的確に把握する]
【山形大学・山下英俊 医学部長】 医師の勤務時間の把握は、出退勤を機械により把握する体制を整えた。

【大阪医科大学・大槻勝紀 学長】 出勤・退勤時のICカードによる打刻を実施。勤務実態調査を3月に実施、2回目の調査も実施。

【東京慈恵会医科大学・松藤千弥 学長】 (病院における外来・病棟業務など自身で時間をコントロールできない)「Duty」の時間管理は、タイムカードで管理するなど、形式的にやっても意味がないと思います。本学では、分院も含め、計4つの病院で医師にiPhoneを配布しています。iPhoneと位置情報を把握できるシステムと組み合わせ、医師が病院内で勤務している時間を個別に把握できる手法の導入をトライアルしています(なお、iPhone のGPS機能を使えば安価ですが、病院外の行動も把握することになるので、プライバシーの問題があり、使っていません)。

【匿名希望・国公立大】 タイムカード制の導入も一つの方策かもしれない。


[業務分担、タスクシフティングを進める]
【大阪医科大学・大槻勝紀 学長】 タスク・シフティングの推進に関する部会を立ち上げて検討を行う。

【匿名希望・国公立大】 医師の働き方改革の方策と過重労働の改善策として、医師事務作業補助者による診断書の作成、看護師による採血および静脈注射、医師の当直体制の見直しを行っている。

【匿名希望・国公立大】 取り組んでいる内容:タスク・シフティング

【匿名希望・国公立大】 医師の働き方改革の方策と過重労働の改善策として、医師事務作業補助者による診断書の作成、看護師による採血および静脈注射、医師の当直体制の見直しを行っている。

【匿名希望・国公立大】 取り組み:超過勤務管理と長時間勤務者に対する産業医面談。今後勤務時間の把握のためのタイムカードもしくはそれに類したシステムの導入を検討中。


[適切な手当の支給、処遇改善を実施]
【山形大学・山下英俊 医学部長】  医師がリスクを負って診療に取り組んでいることを正当に評価するためのドクターフィーを全国に先駆けて導入している。

【匿名希望・国公立大】 応召義務の問題もあり、対応に苦慮していますが、医師の勤務状況を的確に把握するように努め、手当を支給するようにしています。

【匿名希望・国公立大】 助教と医員との間に特任助教を設け、経験年数の長い医員を教員として採用し、医師のキャリア形成の推進につなげるとともに、短時間勤務を可能とするなど、柔軟な勤務体系を構築することで医師の処遇改善を図っている。


[研究支援、女性支援、患者の理解…]
【富山大学・北島勲 医学部長】 大学勤務医師が研究に参加できる臨床研究管理センターを開設し、研究支援(各種予算申請、研究倫理等)を行う専任教員を配置している。

【大阪医科大学・大槻勝紀 学長】 女性医師支援センターを立ち上げて女性のライフイベントに際して必要となる制度や施設に関する情報の提供等を行う。 医師の労働時間短縮に向けた取組の一環として、患者さまおよびご家族向けに「1.複数主治医制を導入して参ります。2.入院患者様への病状説明等は、緊急時を除きできるだけ勤務時間内に行います」とのお願いを掲示している。

【産業医科大学・東敏昭 学長】 多項目に及ぶさまざまな改革を試行すべく準備をしている。

【匿名希望・国公立大】 医師の労働時間管理について、労働基準法に基づき適正に管理できるよう継続して検討している。

【匿名希望・私立大学】 検討中です。



https://www.m3.com/news/kisokoza/617959
「最大の課題は医師不足」、千葉・東葛北部圏域における救急医療事情-松戸市立総合医療センター救命救急センター長、村田希吉氏に聞く◆Vol.1
2018年7月25日 (水)配信m3.com地域版

 千葉県・東葛北部保健医療圏(松戸市・野田市・柏市、流山市・我孫子市)における地域災害拠点病院の松戸市立総合医療センターで救命救急センター長を務める村田希吉氏に東葛北部保健医療圏の救急医療について伺った。

(2018年7月19日インタビュー、計3回連載の1回目)

――東葛北部保健医療圏の救急医療の特徴についてお教えください。

 まず、東葛北部保健医療圏の最大の課題は、人口に対する医師数が不足しています。これは、東葛北部の固有の問題ではなく、千葉県全体の問題であり、千葉県の人口に対する医師数は、全国ワースト3位です。特に、東葛北部は東京23区の約半分という面積の広さもあり、医療機関へ搬送されるまでの時間も長くなっています。

 本院の救命救急で働いていて感じているのは、消化管出血が原因で救急搬送されてくる患者さんで手術が必要になる人が少ないと思いました。大規模な疫学調査をしているわけではありませんが、消化管出血の患者さんは病院に運ばれてきたときにはすでに心肺が停止しているケースが他地区に比べても多いのではないかと感じています。

――GIBネットワークがあるとお聞きしました。
 GIBネットワークは、千葉県松戸市、 柏市、 流山市の3市において、2010年3月より運用を始めました。急性吐・下血症例に対し、 内視鏡による止血治療を含む夜間・休日救急当番制度です。

 このネットワークは当該地区で休日・夜間に内視鏡を扱える医師を全部の病院に配置をすることが難しいため、東葛北部3市においては、休日・夜間でも、1カ所は内視鏡を扱える医師を配置するという市民のセイフティネットとして創設されたものです。

 ただ、GIBネットワークはありますが、東葛北部圏域は面積が広く、心肺機能停止後に運ばれてくる消化管出血の患者さんの件数から考えても、対応できていないのが現実でしょうか。これは誰が悪いということではなく、地域の医師不足が、もたらす現実です。医師が足りない影響がこういうところに出ているのではないでしょうか。

――東葛北部保健医療圏の今後の課題はなんでしょうか。
 東葛北部は、医師不足に加え、2025年にむけて、回復期の病床が3000床不足し、2040年に向けて松戸市は後期高齢者が増え続けることが予想されています。また、これに伴って、2030年代前半には救急搬送件数がピークを迎えることも予想されています。この状況をどう乗り切るかは、今のうちに地域全体で話していかなければいけないと思っています。

 当院は3次救急の病院ではありますが、地域連携にも積極的に取り組んでいます。今、地域で解決する力が試されていると思っています。

取材・文・撮影=津村育子

◆村田希吉(むらた・きよし)
東京都出身。弘前大学医学部卒業後、同大学外科勤務。国立病院機構災害医療センター救急科、東京医科歯科大学医学部付属病院救命救急センターを経て、2016年9月より松戸市立総合医療センター 救命救急センター長。



https://www.m3.com/news/iryoishin/619004
シリーズ 社会保障審議会
「医師の働き方、まずは改革が先」、今村日医副会長
医療部会で「医師の働き方改革に関する意見書」説明
 
レポート 2018年7月27日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の社会保障審議会医療部会(部会長;永井良三・自治医科大学学長)で7月27日、参考人として出席した日本医師会副会長の今村聡氏は、「医師の働き方改革に関する意見書」について、「現状の医師の働き方を100%認めて、それに法令を合わせるという意味ではなく、やるべき改革を実施した上で、それに合った法令を、という考え方」と説明した。

 同意見書は、日医が主導した「医師の働き方検討会議」がまとめたもの。7月9日の厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」で発表した(『時間外労働「医師の特別条項」など提言、日医主導会議』を参照)。

 連合総合政策局長の平川則男氏が、意見書の最後に、「働き方改革を法令に合わせるのではなく、法令を働き方に合わせる」との記載について、「安心・安全の医療のために、働き方改革を行うのではないか」などと疑義を呈した。今村氏は、この表現が誤解を招いているとし、冒頭の発言のように説明した (資料は、厚労省のホームページ)。

 意見書についてはそのほか、その実効性を担保する方策や医師の働き方改革を進めるには、国民の理解を得る必要性を指摘する声が挙がった。

 認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、同センターには、「なぜ重篤な患者がいるのになぜ夏休みを取るのか」「夜中に駆け付けてこないのは、主治医としてあり得ない」などの電話相談があると紹介した。夜間や休日での患者説明を避けたり、チーム主治医制を認めることが必要であり、そのためには医療提供側だけではなく、関係者全体で国民への啓発を進める必要性を指摘。さらに今村氏に意見書の今後の取り扱いについても質問した。

 今村氏は、「(厚労省の)医師の働き方改革に関する検討会で、具体的な議論になっていくのだろう」と述べ、検討会の進み具合によっては、医療界として再び検討の場を設けることもあり得るとした。

 医師の働き方改革の関連では、全日本病院協会会長の猪口雄二氏が、救急応需や時間外の対応などが社会医療法人の認定要件になっているほか、診療報酬上でも救急医療の実績が施設基準となる点数もあることから、「医師の働き方改革の議論と整合性が取れるよう、考慮してもらいたい」と求めた。


 地域医療構想、「定量的な基準」は「外れ値」除外のため

 27日の医療部会ではそのほか、地域医療構想の進捗状況、医療放射線の適正管理に関する検討会の検討状況、「骨太の方針2018」「未来投資戦略2018」「規制改革実施計画」、「医療法及び医師法の一部を改正する法律」について報告されたほか、事故報道が昨今相次いだ「画像診断報告書の確認不足」について議論した。

 地域医療構想の進捗状況について、日本病院会会長の相澤孝夫氏は、「地域医療構想に関するワーキンググループ」の6月の取りまとめで、地域医療構想調整会議の議論を活発化するために、「2018年度中に、都道府県医師会などの医療関係者等と協議を経た上で、(定量的な基準を導入することを求める」とある点について、「その目的は何か」と質した。「病床機能報告による(4つの医療機能の)病床数と、2025年の病床の必要量は、もともと基準が違うのだから、両者を合わせる必要はないという議論を何度もしてきた。基準とするのはおかしく、判断の目安などとすべきではないか」(相澤氏)。

 厚労省医政局地域医療計画課は、「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、調整会議で議論を円滑に進めていくために、定量的な基準を活用している事例として、佐賀県と埼玉県の事例を紹介したと説明。「一律に国の方で基準を定める段階ではないが、地域の事情に合った議論を活発化するための材料として、そうしたものを活用することが必要ではないか」(同課)。

 「地域医療構想に関するワーキンググループ」の構成員である日本医師会副会長の中川俊男氏は、「定量的な基準」は、あくまで「外れ値」についての基準であり、「全国で佐賀県や埼玉県のような基準を導入することではないことを確認している」と説明。「外れ値」とは、急性期医療を担う病棟であれば、本来担うべき医療を全く実施していないケースを指す(『「実態のない急性期病棟」にメス、客観的基準で「外れ値」除外』を参照)。

 さらに中川氏は、相澤氏の発言を支持し、「地域医療構想の大前提は、地域で不足している病床機能を補うことにある。病床機能報告の病床数と、2015年の病床の必要量を単純に比較するな、と言い続けているが、いまだに比較されている。全く異なるものを比較してどうするのか」と語気を強め、地域医療構想を担当する地域医療計画課長がこの夏の厚生労働省の人事異動で交代することから、「後任に引き継いでもらいたい」と求めた。

 電子カルテ、「国が統一規格を」

 「未来投資戦略2018」で議論になったのが、医療等のデータの利活用について。猪口氏が、電子カルテの企画が統一されていないことが不便さを生じているとし、国が統一規格を定めるよう求めた。日本医療法人協会会長の加納繁照氏、中川氏、山口氏、国立病院機構理事長の楠岡英雄氏も、医療費の低減という視点も踏まえ、猪口氏の意見を支持。

 永井部会長も、データの利活用は、各種研究やイノベーションにつながってくることから、データの利活用の基板整備に向け、「ぜひ国のプロジェクトとして立ち上げてもらいたい」と求めた。さらに永井部会長は、「画像診断報告書の確認不足」を防ぐ意味でも、「要注意報告」についてはアラートを出すなど、システム的な対応の必要性を指摘した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/618170
シリーズ 中央社会保険医療協議会
中川日医副会長「厚労省の二重、三重の不手際」、消費税補てん率調査にミス
特定機能病院61.7%、精神科病院129.0%、2016年度消費税補てん率でもバラツキ
 
レポート 2018年7月25日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は7月25日の中医協の診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(分科会長:荒井耕・一橋大学大学院商学研究科教授)で、2014年度の「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況」について再調査したところ、病院の補てん率に誤りがあったことを明らかにした。2015年11月公表データでは、病院全体の補てん率は102.36%だったが、新たな調査では82.9%と補てん不足に転じた。DPC病院の調査において、不正確な点があったためだ。病院、診療所、歯科診療所、薬局を含めた全体の補てん率は、102.07%ではなく92.5%で、全体でも補てん不足。

 今回新たに実施した2016年度の調査では、特定機能病院の補てん率は61.7%にとどまり、こども病院71.6%、一般病院85.4%でいずれも100%を下回った一方、精神科病院では129.0%で、病院種別により補てん率に大きなバラツキが見られた。一般診療所の補てん率は111.2%で100%を超えたが、歯科診療所は92.3%、薬局では88.3%であり、共に100%を下回った(資料は、厚労省のホームページ)。


 日本医師会副会長の中川俊男氏は、「厚労省の二重、三重の不手際。猛省を求めたい。事は極めて重大だ」と語気を強め、誤りが生じた原因分析と今後の対応を厚労省に質した。「二重、三重」の意味の第一は、消費増税対応した2014年度診療報酬改定での補てん不足。第二は2014年度調査で誤りがあったこと、第三はもっと早く調査結果が出ていれば、2018年度改定等で対応できたが、補てん不足の状態が4年以上も放置されていることだ。

 これに対し、厚労省保険局医療課保険医療企画調査室長の矢田貝泰之氏は、第一の点については、同様の補てん不足が起きないよう2019年10月の消費増税に向けて対応していくと説明。第二の点は、誤りが生じたのはDPC病院の包括部分の補てんの把握にミスがあったためであり、さらに補てん率が100%に近かったことから、誤りに気付かなかったとした。第三の点については、「なるべく早く提出すべきということだが、作業の過程で修正に時間を要したため、本日になってしまった」と詫びた。

 中川氏はさらに、2015年11月の本分科会における「2014年の消費税率8%への引上げによる医療機関等の控除対象外消費増税(3%)分については、診療報酬改定による対応により、補てん状況にばらつきは見られたものの、マクロでは概ね補てんされていることが確認された」との総括の撤回を求めた。

 矢田貝室長は、全体の補てん率は、102.07%ではなく、92.5%であるのが、「現在の認識」であるとし、「なぜそうしたことが生じたのかという要因分析を行い、どうすれば補てん率のバラツキを補正できるかを検証し、きちんと反省した上に、(2019年10月の消費増税に向けて)準備をしていきたい」と答えた。

 全日本病院協会会長の猪口雄二氏、日本医療法人協会会長代行の伊藤伸一氏からは、そもそも基本診療料に上乗せする形での補てん方法の妥当性、さらには消費税対応を診療報酬で行うことの限界を指摘する意見も出た。

 支払側から、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、病院種別の補てん率のバラツキを問題視。「単なる技術的な見込み違いがあったのか、あるいは補てん方法に本質的な問題があったのか。まずバラツキの要因をしっかりと検証して、2019年10月の消費増税に臨むべき」として、補てん不足の要因となり得る課税経費率と算定回数等がどう見込みと乖離があったのかについて、精査を求めた。

 保険診療は、消費税非課税。医薬品と特定保険医療材料以外の仕入れにかかる消費税は、患者に転嫁できず、医療機関の負担になるため、診療報酬で補てんしている。2014年4月の消費税率5%から8%への引き上げの際、診療報酬改定で通常の改定分に、消費税率を上乗せした改定が実施された(『初診12点・再診3点増で決定、「苦渋の決断」と会長』を参照)。負担分を診療報酬で100%補えば、補てん率は100%となる。

 消費税率は、2019年10月に10%への引き上げが予定されている。2016年度分の調査は、消費増税対応に向けた議論のたたき台の資料作成が目的。厚労省は今後、病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局などの医療機関の種別ごとに補てん率のバラツキの要因分析を進めるとともに、バラツキを是正するための具体的な配点の在り方について検討を進める方針。

 複数月の入院データ抽出に誤り
 消費税の補てん率調査は、収入はNDBデータ等を、支出は医療経済実態調査によるサンプル調査データを用いているほか、消費増税対応をした2014年度改定後、2016年度と2018年度に改定を行っているなど、正確な把握には幾つかの限界がある。

 1989年度の消費税導入時、1997年度の消費税率の3%から5%へのアップ時は、いずれも一部の個別の診療報酬に上乗せする形で、補てんが行われた。これらとは異なり、2014年度改定時は、初再診料や入院基本料などの基本料に上乗せする形で、幅広い補てんがなされた。

 2014年度調査のデータが誤っていたのは、DPC病院の包括部分の補てんの把握に誤りがあったため。NDBデータによる入院日数に、非DPC病院の補てん点数(例えば、7対1入院基本料の場合は25点など)を乗じて推計していた。しかし、NDBデータ抽出の際、複数月にまたがる入院の日数について、重複してデータを抽出していた(例えば、4月末に10日間、5月初めに10日間、それぞれ入院。本来は計20日の入院だが、4月は10日間、5月は20日間、計30日間とカウント)。結果として収入が多くなるケースがあり、補てん率が高くなっていた。

 2016年度調査の結果、一般病院の補てん率は、非DPC病院90.0%、DPC病院80.1%で差がある。

 一般病院の補てん率は、開設者主体別、看護職員基準別でも異なる。補てん率が低いのは、開設者主体別では公立、看護配置基準別では7対1、10対1など。



http://www.medwatch.jp/?p=21649
2014年度消費増税対応改定の検証誤り、「厚生労働行政の根本」が揺らぐ大問題—四病協 
2018年7月25日|医療保険制度 MedWatch

 メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、7月25日の診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(以下、消費税分科会)で、2014年度の消費増税(5%→8%)に対応するための特別の診療報酬プラス改定(以下、消費増税対応改定)の検証結果に誤りがあることが報告されました(関連記事はこちら)。

 同日に開催された、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の総合部会でも、この点が大きな議論となり、「厚生労働行政の根本が揺らぐ大問題であり、『単なるミス』と簡単に考えてほしくない」「2014年度の消費増税対応改定で十分な補填がなされず、それが現在の報酬でも継続している。急性期病院等への補填が必要なのではないか」といった意見が出ています。
7月25日の四病院団体協議会・総合部会後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長(写真中央)、全日本病院協会の猪口雄二会長(写真向かって左)、日本医療法人協会の伊藤伸一会長代行(写真向かって右)
7月25日の四病院団体協議会・総合部会後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長(写真中央)、全日本病院協会の猪口雄二会長(写真向かって左)、日本医療法人協会の伊藤伸一会長代行(写真向かって右)
 
ここがポイント!
1 病院全体では85%、特定機能病院では60%程度の補填にとどまる
2 「消費増税への診療報酬での対応には無理がある」との声が四病協で多数
3 急性期病院では入院基本料と診療単価との差が大きいため、補填不足になったのでは
4 病院に対する「過去の補填不足分」を別途、補填せよとの声もあるが・・・

病院全体では85%、特定機能病院では60%程度の補填にとどまる

 2014年度には、消費税率が5%から8%に引き上げられたため、医療機関の消費税負担増を補填するために、特別の診療報酬プラス改定が行われました(通常の改定とセットで実施)。診療報酬算定項目の不公平などを勘案し、基本料(初診料や再診料、入院基本料、特定入院料)などに消費増税分の「上乗せ」(点数の引き上げ)が行われています(例えば、初診料では12点、再診料・外来診療料では3点、7対1一般病棟入院基本料では25点、10対1一般病棟入院基本料では21点、7対1特定機能病院入院基本料(一般)では33点、10対1特定機能病院入院基本料(一般)では28点、など)。

 この2014年度の消費増税対応改定の効果について、厚生労働省が調査を行ったところ▼マクロ(医療界全体)では概ね補填されている(102.07%)▼病院の種別等で補填状況にバラつきがある―との結果が出ました(2015年11月公表)(関連記事はこちら)。

 しかし、今般、最新の補填状況を調査する中で「2015年11月公表データにおいて、複数月をまたぐ入院では『入院日数が重複してカウント』される、という誤りがある」ことが分かり、厚労省は急きょ、再調査(集計)・分析を実施。その結果、例えば▼病院全体では102.36%(2014年度)の補填とされていたが、実際には85.0%(2016年度)であった▼一般病院では101.25%(2014年度)の補填とされていたが、実際には85.4%(2016年度)に過ぎなかった▼特定機能病院では98.09%(2014年度)の補填とされていたが、実際には61.7%(2016年度)にとどまった—などの状況が明らかになりました(関連記事はこちら)。

「消費増税への診療報酬での対応には無理がある」との声が四病協で多数

7月25日の四病協総合部会後に記者会見に臨んだ、消費税分科会の委員でもある全日本病院協会の猪口雄二会長は、「厚労省データへの信頼が揺らぐ。7月25日の消費税分科会には『修正後のデータ』が報告されたが、これも『正しいのか』と心配してしまう」と指摘。また日本精神科病院協会の山崎學会長も、「厚生労働行政の根本が揺らぐ大問題であり、『単なるミス』と簡単に考えてほしくない」と問題視しています。

 さらに猪口全日病会長からは、「2014年度の消費増税対応改定では、医療界全体で補填率が92.5%にとどまり、医療機関の種類で大きなバラつきが出ている。これは消費増税に診療報酬で対応することが『無理である』ことを証明するものだ。また建て替えなどを行った場合には、巨額の控除対象外消費税が発生するが、それには対応がなされないという問題もある。根本的な見直しが必要である」との声が四病協内部で多数出ていることも紹介されました。今後、四病協の内部、さらには日本医師会との合同協議などでどのような「根本的な見直し案」がまとまるのか注目が集まります(関連記事はこちらとこちら)。

 他方、やはり消費税分科会の委員でもある日本医療法人協会の伊藤伸一会長代行は、「実は2015年2月に四病協と日本病院団体協議会との合同調査(303病院が有効回答)を行い、▼病院全体の補填率は84.2%▼大規模病院ほど補填率が低い(200床未満では平均99.2%、200-399床では87.2%、400床以上では70.5%)—などといった結果が出た。その後、厚労省の補填率調査結果で『マクロでは補填されている』と大々的に発表されたが、今にして思えば、我々病院団体の調査結果の方が正確であった」とコメント(関連記事はこちら)。

2014年度の消費税対応診療報酬改定、65.3%の病院では消費増税に対する補填が100%に満たない
病床規模の大きな病院ほど、消費増税に対する診療報酬プラス改定の補填率は低い傾向にある
 
 さらに伊藤医法協会長代行は、データ誤りが2014年度の消費増税改定から4年も経過してから明らかになった点に注目し、「元データなども公開し、誰もが検証できる仕組みとしておく必要がある」と提案。例えば、2015年11月に厚労省が検証データを示した際に誤りが分かれば、2016年度の前回診療報酬改定あるいは2018年度の今回診療報酬改定で一定の対応が図られたのではないかと指摘しています。医療機関の経営データであり、すべてを公開することは困難ですが、検証可能性を確保する何らかの仕掛けは検討に値しそうです。

急性期病院では入院基本料と診療単価との差が大きいため、補填不足になったのでは

 また、猪口全日病会長は、「急性期病院では、入院基本料と診療単価(患者1人1日当たりの請求額)との開きが大きい(手術料や麻酔料など)。一方で、精神科病院や慢性期病院では、入院基本料と診療単価の開きが小さい。この差が『急性期病院の補填不足』『バラつき』の原因ではないか」と分析しています(関連記事はこちらとこちら)。来年(2019年)10月に予定される消費増税(8%→10%)に診療報酬改定で仮に対応するとなれば、「病院を、種類別・入院基本料別などに分類し、それぞれにおいて、消費税負担がどの程度発生しているのか(課税経費率などから)を調べ、細かく、丁寧に上乗せ(点数引き上げ)を行っていく」ことが現実的な対応の1つとなることが、猪口全日病会長の分析からも裏付けられます。

病院に対する「過去の補填不足分」を別途、補填せよとの声もあるが・・・

 ところで、山崎日精協会長と伊藤医法協会長代行は、「厚労省の修正データでは、2016年度には1病院当たり314万5000円の補填不足があることが示された。ここから病院全体(2016年度は8500施設弱)で1年間に260億円程度の補填不足があると試算される。さらに2014年度改定以降、現在まで補填不足が続いているので、病院全体で1000億円程度の補填不足になっている」と指摘。この過去の補填不足分1000億円について「病院側への補填を行うべきではないか」とも要望しています。

もっとも、7月25日の消費税分科会では、厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の矢田貝泰之室長が「診療報酬制度では、『不足していたので後から補填する、逆に多かったので国に戻してもらう』といった仕組みとしていない」ことを確認。また、仮に「過去の補填不足分を医療機関等に別途補填する」ことになれば、理論的には100%を超える補填がなされている一般診療所(111.2%)、精神科病院(129.0%)、療養病棟入院基本料算定病院(107.5%)は、「多く補填された分を国に返還しなければならない」こととなってしまいます。「過去の補填不足分を、別途補填する」仕組みの導入には大きな障壁がありそうです。
 


http://www.medwatch.jp/?p=21610
地域医療構想調整会議、本音で語り合うことは難しい、まずはアドバイザーに期待―地域医療構想ワーキング(2) 
2018年7月23日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 地域医療構想調整会議では、メンバー間で本音を言いあうことが難しく、議論の活性化に向けた方策が求められる。そのために、例えば「地域医療構想アドバイザー」を養成し、議論のファシリテート役を担ってもらったり、都道府県が事前に具体的な論点整理をしておくことなどをまず進めてはどうか―。

 7月20日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった地域医療構想調整会議の議論活性化に向けた方策の検討が続いています。
 
地域医療構想アドバイザー、7月27日までに都道府県から厚労省へ推薦を
医療提供体制の再構築に向けて、地域医療構想の実現が急務とされています。例えば、骨太の方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)では、「個別の病院名・病床数を掲げ、機能転換に向けた具体的対応方針を速やかに策定するため、2017・18年度の2年間程度で集中的な検討を促進する」などの指示が出されています。

地域医療構想の実現に向けては、なんといっても地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で関係者が集い、データを踏まえて率直な議論を行い、納得の上で各医療機関が自主的に機能分化を目指すことが求められます。このためには、「活発かつ率直な議論」が各調整会議で行われることが必要で、ワーキングでは次のような方策によって調整会議の議論活性化を狙ってはどうかといった議論が進められています(関連記事はこちらとこちら)。

(1)都道府県単位の調整会議を設定する
(2)都道府県主催の研修会を設ける
(3)学識者を「地域医療構想アドバイザー」とし、調整会議を支援してもらう

 このうち(1)は、各調整会議(主に2次医療圏単位)の議論の足並みを揃えるために、調整会議の全議長が参画する「都道府県単位」の調整会議を設置するよう努めてほしいといった内容です。

 また(2)は、各都道府県においても、厚労省の研修会・勉強会のような会を主催し、地域の関係者の知識・スキルの向上を狙うものです。

 さらに(3)は、各都道府県において「地元大学医学部の公衆衛生学研究者」などを地域医療構想アドバイザーとして推薦し、厚労省による知識・スキルの水準を高める研修を経た上で、各調整会議の議論を支援することなどを期待するものです。

  
 厚労省は、これらに関連して7月20日のワーキングに、各区域における▼個別医療機関ごとの具体的な対応方針の協議に関する状況(個別医療機関の人員配置や病床機能の状況など)▼基本情報(人口動態、高齢化率、ベッド数、病床利用率、患者の流出入の状況など)▼公立・公的医療機関の状況(再編統合の協議事例も含む)—などを整理した膨大な資料を提示。「2017年における地域の現状」と「2025年における地域の状況予測」を一目で把握し、かつ個別医療機関の状況を詳しく見ることが可能です。

◆厚労省のサイト(以下)から「構想悔いの公立・公的病院等を中心とした機能分化・連携の状況」に関する資料をダウンロードできます。
○その1(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県)
○その2(群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県)、
○その3(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)
○その4(和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県)
○その5(熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)
 
  
また、この日は、調整会議の議論が芳しくない沖縄県から状況報告も行われました。沖縄県では、地域医療構想の策定が昨年(2017年)3月に行われ、その後1年間は、関係者への構想内容の周知期間となり、公立病院・公的病院等に関する議論がまだ始まっていません。

沖縄県では、調整会議での議論について「本音を言いにくい」点があると説明。今後、活発化に向けて、公立・公的等の個別医療機関からヒアリングを行い、医療機関の抱える課題などを事前に確認し、協議の素材とする考えなどを示しました。

この点、「本音を言いにくい」状況は、どの構想区域でも同様と考えられます(患者の紹介逆紹介などを行う中では、連携先病院の将来像に疑問を持っても、言いにくいのが実際でしょう)。一方、例えば佐賀県などでは、非常に活発に調整会議の議論が進んでおり、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「県の担当者が、医療関係者と顔の見える関係を構築するとともに、データ等をもとに詳細に、事前に論点整理を行っている結果ではないか」と分析します。たしかに、「ざっくりとした」データ等を提示された場合、構想会議のメンバーは、どこから議論すればよいのか分からないことになりかねません。上述のデータなども活用した、事前準備が不可欠です。

もっともワーキングの岡留健一郎構成員(日本病院会副会長)は、「本音を言いにくい状況は、各地域でこの先も続く。なんとか良いアイデアを出さなければ、おざなりな会議で終わってしまうとこも少なくない」と危機感を述べ、皆で知恵を出し合っていくことが重要と指摘しています。

 
ここで、調整会議の議論活性化の鍵を握ると考えられているのが、(3)の地域医療構想アドバイザーです。例えば、「言いにくい」ことなども手伝い、議論が停滞した場合、アドバイザーが口火を切ったり、メンバーに話を振ったりするなど、いわば、会議のファシリテーターとして機能することが期待されるのです。

各都道府県では7月27日までに、アドバイザーの推薦書を厚労省に提出することが求められます(多数の調整会議を1人のアドバイザーで担当することは難しく、複数人の推薦が待たれている)。義務ではありませんが、調整会議の活性化に向けて多くのアドバイザーが誕生することが期待されます。この点、中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「都道府県医師会の事務局や、都道府県の保健医療担当部局員もアドバイザーとして推薦すべき。医師に限るべきではない。地域の実情と地域医療構想をきちんと理解している人材が求められる」と指摘し、多様な人材の参画に期待を寄せました。
 



https://www.jiji.com/jc/article?k=2018072601334&g=soc
病院の補助金減額へ=地域枠学生の条件外採用-厚労省 
(2018/07/26-21:56)時事通信

 厚生労働省は26日、地域医療従事などを条件とした「地域枠」で大学医学部に入学した学生を、他の地域の病院が研修医として採用した場合、病院の補助金や研修医の採用枠を減らす方針を決めた。同日の医道審議会の医師臨床研修部会に案を示し、大筋で了承を得た。来春の採用から適用する見通し。
 地域枠は、地域医療に従事する医師の養成を主目的に学生を選抜する。都道府県が奨学金を貸与し、地域内の医療機関に一定期間従事した場合、返還が免除される例が多い。2017年度の医学部入学定員9420人のうち、地域枠は17.8%の1674人を占める。
 しかし、奨学金を返還して地域枠を「離脱」し、地域外の病院で研修医になるケースが見られる。18年度開始の臨床研修では、地域枠の学生805人のうち、9人が地域外で研修している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/618863
シリーズ 医師臨床研修部会
「地域枠離脱者」採用病院に公開ヒアリング、臨床研修部会
「制度を破壊する」「大学、国立病院に驚きを禁じ得ない」
 
レポート 2018年7月27日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

 厚生労働省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(部会長:桐野高明・東京大学名誉教授)は7月26日、2018年度から臨床研修を始める新卒医師で、従事要件があるにもかかわらず、地域枠を離脱した地域枠制度利用者を採用した9病院に公開でヒアリングを行った。構成員からは「制度の根幹を揺るがす」「奨学金を返済すれば良いというものではない」「大学病院や国立病院機構が含まれているのは驚きを禁じ得ない」などと、厳しい指摘が相次いだ(資料は厚労省のホームページ)。

 厚労省では地域枠離脱学生への対応を進めており、2017年度からマッチング参加病院に対して、地域枠学生一覧を送付したり、地域枠かどうかの確認をすることなどを求める通知を発出したりするなどしている。

2018年開始地域枠研修医、1.3%が離脱

 2018年度開始の臨床研修において、地域枠学生の採用結果について調査したところ、都道府県が認識している地域枠制度利用者(以下、利用者と表記)805人だった。そのうち初期研修での従事要件がある利用者は764人。そのうち要件に従って研修しているのは702人(従事要件対象者764人を分母として91.9%、以下同様)、従っていないのが62人(8.1%)だった。地域枠非離脱者は52人(6.8%)で、内訳は国試不合格者41人、卒試不合格者9人、既卒(病気療養中)1人、無期停学1人だった。

 地域枠離脱者は10人(1.3%)で、そのうち1人は2年連続不合格で対象から外れた利用者。問題となったのは、残りの9人だった。厚労省の調査による、離脱に関する事情は以下の通り。

■病院側の採用理由
・本人から地域枠離脱について申告があったため(7人)
・地域枠であることが確認できなかったため(1人)
・制度の誤認識のため(1人) 

■本人の離脱理由(都道府県への申告)
・自己都合(希望する研修、実家、結婚等)(7人)
・健康上の問題(2人)

■地域枠の離脱時期
・採用決定前に離脱(3人)
・採用決定後に離脱(6人)

 9人を採用した病院に対してヒアリングを実施した。各病院の説明は以下の通り。※ヒアリング順

愛媛生協病院(愛媛県)
 定員2人の採用を予定していたが、1人が国試不合格となった。空き枠に対して、2018年3月に当該学生から「研修先が決まっていないので4月から研修させてほしい」と電話があった。大分大学を卒業後、1年間国試浪人をしていた。父方の実家が愛媛県にあり、研修は愛媛で希望していたとのこと。他の愛媛県内の病院を受験していたが、アンマッチだった。大分県の地域枠であったが、本人は「大分県担当者とは早いうちから相談をしていたが、国試を合格しないと話が具体的に進められなかった。合格後に地域枠離脱の了承を得た」と説明した。以上を聞いた上で、3月に採用試験を実施し、採用となった。3月27日に大分県の担当者に直接確認し、地域枠離脱の証明書を発行してもらった。

いわき市立総合磐城共立病院(福島県)
 2017年7月に申し込みがあった。申込書類には修学資金の借入状況を記載する欄を設けており、そこで地域枠かどうかを判断しているが、「借り入れなし」と記載してあった。面接でも地域枠の話がなかった。マッチングでは15人中4位で登録した。その後、厚労省から地域枠一覧を受け取った。福島県以外の地域枠の学生が申し込むことはないと思い込み、県外の学生には確認を行わず気づかなかった。翌年3月に合格の報告があり、採用した。

熊谷総合病院(埼玉県)
 2017年6月に見学があった。8月に書類提出があったが、地域枠の記載がなかった。9月に行った面接で、「栃木県の地域枠離脱を相談している」との申し出があった。採用枠は6人で、当該学生は優秀であり、奨学金を返済しているとのことで、2位で登録した。10月に大学に地域枠離脱の書類を提出したと報告があり、採用した。

昭和大学藤が丘病院(神奈川県)
 産婦人科、小児科キャリアパス支援プログラムは4人が定員だったが、1人が国試不合格で空いていた。2月に当該学生から希望があった。本人から富山大に地域枠の推薦で入学し、富山県の従事要件、返済義務があることを伝えられた。本人から、「富山県内のマッチングが上手くいっていない場合は、他県でも問題ないと説明を受けた」と説明された。大学から都道府県に照会はしなかった。

日野市立病院(東京都)
 採用枠2人。当該学生からの書類では、地域枠であることは確認できなかった。地域枠の学生が応募してくるとは考えていなかった。4人の応募があり、面接で当該学生を含めて2人を採用と判断した。厚労省からの一覧で、地域枠であることを知り、その日に富山県庁に確認した。県庁からは「本人とは面談しており、県として了承済み」との回答だった。本人とも電話をし「家庭の都合で東京に戻ることになった。奨学金は返済済みで、大学、県庁とも話し合いをして了承済み」と説明を受けた。

国立病院機構京都医療センター(京都府)
 2017年8月に面接をしたが、当該学生から地域枠という申し出はなかった。厚労省からの一覧で把握したため、院内で対応を検討した結果、マッチング対象にしないと決定し、本人に通知をした。翌日、本人から「滋賀県の従事要件では4年間の猶予がある」と説明があり、滋賀県に確認したところ「県外で受験することは制限していない」とのことだった。非常に優秀であり、マッチング上位で登録した。その後、12月に近畿厚生局に相談したところ、「文書の形で残すべき」とのアドバイスを受けた。再度、滋賀県に要請したところ、「初期研修は猶予に入っていない」と判明した。その結果、本人と県で話し合いがあり、最終的に修学資金を返還するため「やむを得ない」と判断したと聞き、採用に至った。

近畿大学医学部奈良病院(奈良県)
 近畿大は本院が大阪、分院が奈良県にある。当該学生は8月に面接した。マッチング登録後に地域枠一覧が送られてきて、そこで地域枠であることを初めて知った。大阪府の地域枠であり、本人に「奈良県での研修は困難」と伝え、大阪府にも連絡をした。大阪府から「奈良県で研修するなら全額返納してもらう必要がある」と言われた。本人に県と相談するように伝えた。その後、本人が本院での研修を熱望し、奨学金を返済したので採用した。本人のバックグラウンドだが、当該学生は地域枠に申し込んだ時点では、大阪府で産婦人科医を目指していた。当該学生の父は耳鼻科を開業しており、当該学生の弟、もしくはいとこが継ぐ予定だったが、2人とも医師になる見込みがなくなり、当該学生が耳鼻科を継承しなくてはならなった。耳鼻科の臨床実習を奈良病院で行っており、それで分院を強く希望した。

太田記念病院(群馬県)
 当該学生は群馬県出身、高知の大学に進学した。当初から臨床研修は群馬県を希望した。5年生の夏に、見学に来た。6年生でも2回見学が来た。3回目の見学時に話したところ、「高知県の担当から問題がないと言われている」と説明があった。今回の厚労省からの連絡を受けて、2018年7月に本人にヒアリングをしたところ、「県庁や医学部長、地域医療担当教授の了承を得ている」と説明があった。

神戸掖済会病院(兵庫県)
 当該学生は2次募集の学生。最初のマッチングでフルマッチではなく、2次募集をしたところ、問い合わせがあった。電話をした際に、「地域枠の学生だが、離脱するので受験したい」と説明があった。こちらからは「それが確定しないといけないよ」と伝えた。10月に再び連絡があり、「高知県と話し合いを行い、地域枠を離脱した。在籍する兵庫医大にも相談したところ、良いと言われた」と説明があった。

桐野座長「地域枠が破壊される」

 日本医師会常任理事の羽鳥裕氏は「『お金を返したからいいのでは』という回答が多すぎる。道義的責任を問うべき。(地域枠の) 推薦枠で医学部に入った人もいる。(一般試験なら)合格点に達していない人がいる可能性もある。明らかに不公平である」、順天堂大学学長の新井一氏は「国立病院や大学病院が受けいれるのは驚きを禁じ得ない。原則論としても何らかの介入が必要だと思った」などの厳しい指摘が相次いだ。

 和歌山県立医科大学理事長・学長の岡村吉隆氏は「制度の整備が必要だが、根本的には地域枠学生がルールを守らないことがあり、それを受け入れる病院がある。9つの病院のホームページを見たが、どこも地域医療の重要性を言っている。しかし、それぞれの先生が言っているのは自分の地域のこと。日本全体を考えてほしい。個々の例を見ると確信犯。”犯”と言っていいか分からないが。病院へのヒアリングでは、大変優秀な学生という意見があったが、倫理観から見たら最下位であり、考えてほしい」と病院側の対応を問題視した。座長の桐野氏も「金を返せば良いという風潮が広がると、地域枠が破壊される」との危惧を示した。

 構成員にはその場限りで、個別の理由を記した紙が配られた。岡山県精神科医療センター理事長の中島豊爾氏は「『精神科の診断書がある』とあったが、いい加減な精神科医もいるのでそれだけでは理由にならない」と指摘。公開ヒアリングについては「これも一つの抑止力として働く。9人は微妙な数字。大きく増えていく可能性もあるのでちゃんとした対応が必要」と強調した。

 横浜市立大学附属病院長の相原道子氏は「不謹慎かもしれないが、離脱者1.3%でこんなに少ないのかと思った。地域枠の制度はそれなりにちゃんと動いたのだと思う」と指摘。地域枠の在り方を巡っては、岡本氏は「一般枠の学生にとって、地域は彼らに任せればよいとなると良くない。地域枠の魅力づくりも必要」、社会医療法人財団董仙会理事長の神野正博氏は「一般枠で地域に残る学生にメリットがあるべき」と提案した。

都道府県「法的に阻止できず、道義的責任を」

 9人の離脱者に関連した都道府県からの意見の一部は以下の通り。

・離脱に関しては、県と貸与者とは民法に基づき金銭貸借契約を結んだ関係にすぎず、償還の意思があれば法的に阻止することはできず、認めざるを得ない。一方、地域枠で入学した事実は変わらず、その道義的責任は問われるべき。

・県および大学からの問いかけに対して非常に攻撃的な態度を取り、時には県および大学の発言を隠れて録音するなど、信頼関係が崩壊している状況が続いた。

・推薦入試であったため、出身高校に対して地域枠の趣旨を理解して推薦してほしい旨の文書を送付し、出身高校からは推薦を取り消す処理をしたこと、今後、このようなことがないようにするとの謝罪があった。

地域枠離脱者採用病院にペナルティ

 厚労省は地域枠離脱者対策として以下の3つを論点として提示した。

(1)地域枠で入学している者について、県や大学がその地域枠の従事要件からの離脱に合意していない場合には、地域枠制度の趣旨や地域医療の安定的確保を尊重する観点を鑑み、臨床研修病院等が趣旨に反した採用をすることは望ましくない旨を周知することについて、どう考えるか。

(2)上記取り組みにも関わらず望ましくない者に対して、希望順位登録や二次募集等における採用を行った臨床研修病院については、医師臨床研修部会でのヒアリングを行った上で、必要に応じて補助金の減額、採用人数の減員または指定の取り消しを検討することについて、どう考えるか。

(3)地域枠の従事要件からの離脱が行われていない研修希望者に対して、臨床研修病院が誤って希望順位登録を行うことができないようシステム等改修を行うことについてどう考えるか。

 いずれも了承された。(1)については近く通知を出す。(2)と(3)については、2020年度研修開始の採用において実施していく方針を示した。



https://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20180728-OYO1T50009.html
72医療機関、建物被害…西日本豪雨被災3県
2018年07月28日 読売新聞

 西日本豪雨の被災地の広島、岡山、愛媛の3県で、少なくとも72の医療機関が浸水や土砂崩れによる建物の被害を受けていたことが、各県などへの取材でわかった。補修や再建、高額な医療機器の買い替えが必要なケースも多く、厚生労働省は被災地の自治体に医療機関の被害実態の詳細な調査を指示した。

 読売新聞が3県や各県の医師会などに取材したところ、水や土砂が流入した医療機関(病院、診療所)は、広島県で29施設、岡山県14施設、愛媛県29施設。一部は今も休診中で、復旧のめどが立たないところもある。

 厚労省は、3県からの報告を基に計87医療機関が被災したと発表した。だが、一時的な停電や断水だけで、すぐに診療を再開できた施設を含む一方、入院機能のない診療所は調査の対象外で、「被災の全容はつかめていない」としている。

 岡山県では、川が氾濫した倉敷市真備まび町で、地域の2病院10診療所のうち1病院を除く医療機関が浸水被害を受けた。まび記念病院では約1億円の磁気共鳴画像装置(MRI)や数千万円のコンピューター断層撮影装置(CT)が水没。敷地内に止めた検診車で外来診療や薬の処方などを続けており、村松友義院長は「地域の中核を担うべき医療機関が機能を失い、強く反省している」と唇をかむ。

 同県新見市では診療所が土砂崩れで倒壊。高梁たかはし市と矢掛やかげ町でも各1診療所が浸水した。

 広島県では、三原市の本郷中央病院1階が医療機器とともに水没し、建物の大規模改修が必要。東広島市の県立病院でも電気設備が壊れた。愛媛県では大洲おおず市の20施設が浸水するなどした。



  1. 2018/07/29(日) 06:44:32|
  2. 未分類
  3. | コメント:0

7月15日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/615477
シリーズ 医師の働き方改革
「医師の労働と自己研鑽」、線引きの指針作成へ、全自病
今夏を目途、働き方改革や新専門医制度など4つが「重要課題」
 
2018年7月12日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 全国自治体病院協議会は7月12日に記者会見を開き、この6月に新たに会長に就任した小熊豊氏は、「変革の荒波が強く、自治体病院も苦しい状況に陥っているが、荒波に負けず、一歩一歩進んでいきたい。医療政策自体にはさまざまな課題があるが、しっかりと取り組んでいかなければならない」との抱負を述べた。全自病は、地域医療構想、医師確保・医師偏在解消、医師の働き方改革、消費税制度の改善――の4つの重要課題を中心に取り組んで行く方針。

 医師の働き方改革について、小熊氏は、「国の判断が出るのはまだ先になると思うが、自治体病院としてどう考えて、どのように対処していけばいいかを会員病院に提示できるような形でなるべく早く対応していきたい」と説明。具体的内容については、担当副会長の望月泉氏が説明。「医師の労働時間については、労働と自己研鑽をいかに切り分けるかが課題」と指摘し、その切り分けについて全自病では現在検討を進めており、考え方を整理し、ガイドライン的なものとして公表する予定だという。早ければ8月中にも取りまとめ、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」にも参考資料として提出する予定だ。

 小熊氏は会見で、自治体立病院を取り巻く環境として、「全自病の会員には、大都市の大きな病院と、地方の中小病院があるが、全体では200床以下が約半数。その上、政令指定都市と地方の拠点地域以外にある病院が約8割であり、これらの病院が大変な半面、大都市の自治体病院はその役割、存在意義が問われている」などと述べ、少しでも問題解決につなげていきたいとした。

 続いて副会長の原義人氏が、公明党の「自治体立病院対策推進プロジェクトチーム」について説明。この6月と7月に開催され、全自病として、先の4つの重要課題について考え方や要望などを述べたという。

 望月氏は、日本医師会が主導となり進めた「医師の働き方検討会議」のメンバーでもある(『松本・日医常任理事 、「過労死ライン超えた働き方も」』を参照)。同提言について、「勤務医の環境を良くしたい一方、医療の質を落とさないという、両方のバランスが重要という視点からまとめたもの」と説明し、今の労働基準法が成立したのは1949年(昭和24年)であり、宿日直の定義は実態にそぐわないことから、今の病院事情に合った形で制度改正を行う必要性を指摘。

 さらに医師の労働時間と自己研鑽の切り分けも問題になるとした。「病院の中にいる時間が、全て労働というわけではない。若い医師ほど自己研鑽をしている。その辺りの切り分けをどうするかが課題」と述べ、両者の切り分けの例示なども交え、ガイドライン的なものの作成を進めていると説明した。「これら二つの課題の根底にあるのは、医療の質を落としてはいけないということ。そのためには、良質の医師を育てていかなければならず、こうした視点も重要」(望月氏)。

 新専門医制度「東京一極集中をさらに助長」

 新専門医制度について、原氏は、(1)東京一極集中をさらに助長、(2)診療科によっては既に深刻な影響、(3)期待された総合診療専攻医は184人(全体の2%)――が問題であると指摘した。「総合診療専門医については、スタートが遅れたことが影響しているのかもしれないが、われわれとしてはもう少し今後は増えてくる必要があると考えている」(原氏)。

 これらの課題解決に向けて、前全自病会長の邉見公雄氏が、日本専門機構の理事になっていることから、邉見氏を通じて働きかけていく方針。小熊氏は、「邉見氏は、医師の偏在解消に向け、シーリングの在り方など、直すべきところは直すべきと提言していくという。われわれはそれをサポートしていく」と説明した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/615193
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
松本・日医常任理事 、「過労死ライン超えた働き方も」
日医主導「医師の働き方検討会議」の意見書を説明
 
レポート 2018年7月11日 (水)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本医師会常任理事の松本吉郎氏は7月11日の定例記者会見で、日医主導で開催した「医師の働き方検討会議」がまとめた意見書について説明し、「改革するべきはまず改革することが前提。医師に合った制度自体を検討するという発想だ」と基本的な考え方を述べた。時間外労働の上限設定については、「過労死ラインで設定すると、現時点では対応が難しく、地域医療が崩壊し、命を救える患者も救えない状況になる。過労死ラインを超えたような働き方も認めていただきたい」として、過労死ラインにとらわれない設定を慎重に検討する必要性を訴えた(関連記事は『時間外労働「医師の特別条項」など提言、日医主導会議』を参照)。

 意見書は次の13の項目で構成。まとめとして、「現行法令の枠に拘らない柔軟な議論を」と結んでいる。

  1 医師と医療の特殊性
  2 医師の健康確保対策
  3 医師の自己研鑽
  4 医師の宿日直
  5 院外オンコール待機
  6 長時間労働是正のための仕組み
  7 医師における専門業務型裁量労働制
  8 研修医等について
  9 第三者機関の設置
 10 女性医師支援
 11 地域住民における医療への理解
 12 労働関連法令の幅広い見直し・医事法制との整合性確保
 13 今後の進め方

上限設定には「非常に慎重な議論必要」

 「長時間労働是正のための仕組み」では、医師の時間外労働の上限について、「医師の特別条項」と、さらに「医師の特別条項の『特例』」を設けることを提言。具体的な時間は盛り込んでいないが、「医師の特別条項」は脳・心臓疾患の労災認定基準(いわゆる「過労死ライン」、発症前1カ月に100時間または2~6カ月間平均で月80時間)を基にし、それを超えざるを得ない場合の「医師の特別条項の『特例』」として、精神障害の労災認定基準(発病直前の1カ月に概ね160時間、または3週間で120時間などこれと同程度の時間外労働)や海外の事例を手がかりとして検討することを求めている。

 松本氏は、社会的な長時間労働抑制の潮流について、「確かにこれを求めるのは厳しいと認識している」と述べた上で、「現実的に医療現場の働き方を考えると、(1カ月の時間外労働が)160時間以上の医師も10%程度、200時間を超える医師も数%いる。どういった健康確保策をすれば、そういった働き方ができるのかも焦点だ」 と指摘。一方で、あまり上限を高いところに設定すると、改革が進まなくなることも懸念されるとして、「設定には非常に慎重な議論が必要だ」と述べた。

宿日直「現実に合わせた働き方、賃金を」

 「医師の宿日直」では、いわゆる「寝当直」に当たる「許可を受けた宿日直」(断続的・監視的労働で労働時間の適用除外)、と「通常業務と同じ宿日直」の間に「中間業務」を設けることを提案。全国医師ユニオンが2017年に実施した勤務医労働実態調査で、宿日直の業務内容が「通常よりは少ない」との回答が47.2%あったことから、試案として、「全拘束時間に占める労働時間が○%の場合に、全拘束時間の25%を勤務時間とし、それに相当する賃金を支払う」ことを示している。

松本氏はこの試案の意図として、昨今は「寝当直」よりは働いているが、通常業務よりは業務量が少ないような勤務の場合にも、全拘束時間分の賃金を支払うことを求められているが、「現状はAll or Noneの考え方になっている。現実に合わせた働き方や賃金もあるのでは、という提案だ」と説明した。当直明け勤務の負担軽減や、勤務間インターバルとの関係でどのような扱いをするかについては、今後の検討課題だとした。

 「医師の自己研鑽」では、「まずは『明らかな労働』と『純粋な自己研鑽』を明確化」した上で、これらの両方の側面を持つ活動の取り扱いについて、研鑽を妨げず、また健康にも配慮した制度を検討することを提案。これらの定義については厚生労働省医政局のガイドラインで明確化することを求めている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/614775
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
「緊急的な働き方改革」、実施は大学30.3%、大学以外26.8%
「36協定なし」病院も存在、「危機感を覚える」との指摘も
 
レポート 2018年7月10日 (火)配信橋本佳子(m3.com編集長)、水谷悠(m3.com編集部)

 厚生労働省は、7月9日の医師の働き方改革に関する検討会(座長:岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)の第8回会議で、今年2月にまとめた「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」についての自主的中間フォローアップ調査の結果を公表した。

 「緊急的な取組」について、院内での検討や具体的取り組みを「実施」したのは、大学病院30.3%、大学病院以外では26.8%、「今後実施を予定」は大学病院55.7%、大学病院以外33.7%。合計で大学病院86.0%、大学病院以外60.5%にとどまった。調査では、法定労働時間を超えて労働させる場合などに必要な「36協定」を締結していなかった病院もあるなど、医療現場での労働基準法への対応、労働環境改善の遅れが浮き彫りになった(資料は、厚労省のホームページ)。

 構成員からは、「緊急的な取り組みとして打ち出したにもかかわらず、実施したのが3割や2割で満足しているのはどうか。『予定、検討中』などは、誰でも答えられる。(2月から調査時期までの)4カ月経っても、やってないのでは危機感がないと思う。この先、現状維持的になってしまうリスクがある」(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏)などと問題視する声が上がった。 

 調査は5月28日から6月11日にかけて、厚労省から、医療関係団体(全国医学部長病院長会議、四病院団体協議会、全国自治体病院協議会)を通じて、全国の病院管理者を対象に実施。調査対象は大学病院122件、大学病院以外が1071件。「緊急的な取組」は、以下の6項目(『次回以降「本丸」の上限規制など議論』を参照)。全病院を対象としたフォローアップ調査は、今年10月頃に実施予定。

「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」
(1)労働時間管理の適正化
(2)「36協定」の自己点検
(3)既存の産業保健の仕組みの活用
(4)タスク・シフティング(業務の移管)の推進
(5)女性医師等に対する支援
(6)医療機関の状況に応じた取り組み

 (1)の「労働時間管理の適正化」のうち、「客観的な在院時間管理方法等の導入」は、「従前より実施している」病院(大学病院50件、大学病院以外565件)がある一方、いまだ導入していない病院のうち、「緊急的取組を受け導入」(同7件、同32件)は1割に満たず、「導入を予定または検討中」(同63件、同319件)、「導入の予定なし」(同1件、同102件)が大半で、病院による開きは大きい。

 「36協定等の自主点検」についても、「既に適正に適用しているため、自主点検の必要なしと判断」した病院(大学病院27件、大学病院以外296件)がある一方、それ以外の病院のうち、そもそも「未締結であったために、新たに締結・届出をした」(大学病院6件、大学病院以外22件)病院が存在した。

 タスクシフティング、一定程度進む

 医師の働き方改革では、医師の業務の看護師等へのタスクシフティングなども重要なテーマ。「緊急的な取組」にも盛り込まれており、その実施状況を見ると、10項目のうち、大学病院では最も多いのは「静脈採血」で122件中、116件、次が「静脈採血」で115件。一方、最も少ない「初診時の予診」でも42件。大学病院以外では最も多いのは「静脈採血」で1071件中、976件。最も少ない「診断書等の代行入力」でも497件であるなど、タスクシフティングは一定程度、進んでいる現状が分かった。

 「女性医師等の支援」について、「推進の予定なし」が大学病院3件、大学病院以外21件という結果に対しては、青葉アーバンクリニック総合診療医の三島千明氏が、「まだまだ必要な部分と改めて感じている」と述べ、管理者と現場レベルでそれぞれ何が障壁になっているかについて意見を聞く必要があると指摘した。

 日本医師会常任理事の城守国斗氏は、調査結果を踏まえ、「こういう労働環境で医療が成り立っていることをまず理解いただければと思う」と述べるとともに、「一部、あまり考えてない方々もいるかもしれないが、恐らくは大多数はやりたくてもできない、身動き取れないという状況で、次の一手が打てない、ということもあるだろう」と理解を求めた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/614699
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
大学病院の臨床系教員は「裁量労働制」を
2019年度概算要求見据え、国立大学附属病院長会議が要望公表
 
レポート 2018年7月10日 (火)配信大西裕康(m3.com編集部)

 国立大学附属病院長会議は7月9日の記者会見で、国の2019年度予算概算要求を念頭に置いた要望として、「大学病院の臨床系教員に対する裁量労働制の適用」を含む計6項目を公表した。同会議の常置委員長を務める山本修一氏(千葉大学医学部附属病院病院長)は、「関係者への説明を始めている」と説明した。

 要望事項は下記の6項目。

 (1) 国立大学附属病院の機能維持と事業の継続性確保
 (2) 大学病院関係予算の確保・充実
 (3) 消費税補填不足に対する抜本的な対応
 (4) 地域医療構想の実現に向けた財政支援
 (5) 大学病院の医療安全等の強化に向けた支援の充実
 (6) 大学病院の臨床系教員の働き方改革

 (6)では、臨床系教員への裁量労働制適用のほか、「客観的な勤怠管理の仕組み導入」「職員の健康管理の徹底」「タスク・シフティングの推進にかかる支援」を挙げた。(4)では、大学病院が地域の拠点としての機能を維持・充実させるため、地域医療構想の実現に向けた積極的な取り組みに対する財政的な支援を要望。(5)では、医療安全管理を専門とした医師などを安定的に確保するための仕組みやサポート体制の構築を求めた。

 (1)には2004年度に国の管理から国立大学法人へと移行した際に承継した、債務に関する財政措置や大学病院の借入金償還額に対する財政支援を盛り込んだ。(2)では、減額傾向にある運営費交付金について、「病院機能強化分」として充実を図るよう要請。(3)では2019年10月に消費税率10%への引き上げが予定されていることを取り上げ、「特定機能病院に対する診療報酬による適切な評価」や「非課税還付などの仕組み導入」「消費税補填不足の解決に向けた抜本的な対応」の必要性を指摘した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/614698
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
国立大学病院の借金返済、2020年度に滞る?
「今そこにある危機」、国立大学附属病院長会議が試算公表
 
レポート 2018年7月10日 (火)配信大西裕康(m3.com編集部)

 国立大学附属病院長会議は7月9日の記者会見で、国立大学附属病院の収益構造が悪化し2020年度には借入金の返済が滞る可能性が生じるとの試算結果を公表した。同会議の常置委員長を務める山本修一氏(千葉大学附属病院病院長)は会見で、「冗談では済まない話だ。すぐそこにある危機とわれわれは認識している」と述べた。より具体的なシミュレーション結果などをまとめ次第、文部科学省などの関係省庁や国会議員などに説明する機会を求める考え。

 試算では、全45病院(歯科系2病院、研究所附属の1病院を含む)における借入金の実績に基づき、機能を維持するための借入金見込み額、毎年度の収支差額から投資などに使うことができる資金として「経常利益と減価償却費」(借入金整備分)などを算出し、借入金償還額の見込み額と比較した。その結果、2020年度の借入金見込み額は600億円で、借入償還額である621億円を下回った。2020年度以降も、2028年度までこの逆転現象が続くとの予測だ(図1参照)。

07151_201807151633441b5.jpg
図1(国立大学附属病院長会議提供)

 その最大の原因は増収減益傾向が続いている状況だ。各病院が診療の機能強化などに取り組んだ結果として収入が増えている一方、国の運営費交付金は減り続け、高額薬剤の使用や医療材料の上昇などの診療経費が増加、消費税率8%への引き上げによる負担も増している。同日の会見で公表した資料によると、運営費交付金は2017年度が45病院全体で1216億円と2010年度比で183億円減った。2017年度の診療経費は、2010年度比1751億円増の7221億円にまで膨らんでいる。

 消費税負担については、8%に上がった2014年度からの4年間で累積748億円が補填不足との試算を報告。山本氏は、「現状のまま10%に上がれば、さらに年間100億円超の負担増になる」と説明。「経営が成り立たないことは明確。抜本的な見直しを強く求める」とも述べた。

2017年度は赤字6病院、3病院は2年連続

 同日の会見では、国立大学附属病院の2017年度決算概要も公表。全45病院中、赤字は6病院で、うち3病院は2年連続の赤字だった。全体の収益は1兆3006億円(前年度比422億円増)、人件費、診療経費、教育研究費などを合わせた支出は1兆2710億円(同439億円増)、経常利益は296億円(同18億円減)。

働き方改革で人件費増を懸念

 人件費については、医師の働き方改革に関する結論次第で増加するとの懸念を表明。山本氏は、医師の労働時間に関する規制について、2019年3月までに結論が出ることに触れつつ、「正直、現状は十分に(残業代など)その辺りが手当てできておらず、客観的な勤怠管理ができているとは言えない」と指摘。その上で、「現状の診療内容を維持しつつ、労働時間規制を守るとなると、医師を増やさなければならないなど、人件費の増加要因の方が多くなるのではないかと懸念している」と述べた。

 国立大学附属病院における人件費は、2017年度が4900億円と2010年度比で1095億円増。一方、収益に占める人件費率は2017年度が44.4%と、2010年度比では0.4ポイント減になるなど、ほぼ横ばい状態が続いている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/614502
倉敷市のまび記念病院、患者・職員ら救出完了、西日本豪雨
DMATは81隊が展開、9日午前5時時点
 
レポート 2018年7月9日 (月)配信水谷悠(m3.com編集部)

 西日本豪雨について厚生労働省がまとめた7月9日午前5時時点 の被害状況によると、岡山県倉敷市真備町のまび記念病院が一時は孤立状態にあったが患者は他院へ転送、職員と住民も全員が救出された。その他、長崎、京都、福岡、広島、愛媛の各府県で医療機関に被害が出ている。

 DMATは岡山、広島、兵庫、高知、島根、鳥取、愛媛、香川、徳島、福岡、山口の11県で81隊が活動、または移動中。全日本病院協会によると、全日本病院医療支援班(AMAT)は先遣隊が岡山県に2チーム、愛媛県に1チーム入って情報を収集し、後続隊派遣の必要性を判断する。日本医師会のJMAT(日本医師会災害医療チーム)に対しては、岡山県から9日に派遣要請があり、今後派遣を検討する。

 その他の主な被害状況は次の通り。

◆医療機関
岡山県:倉敷市のまび記念病院で停電、断水、ガス停止、電話不通、床上浸水。患者、職員、避難住民は救出、転院を完了。
京都府:亀岡市の1診療所で床下浸水があるが、診療可能。1病院が冠水のため孤立していたが、道路が開通し解消。
広島県:1病院で水が不足したため1人を転院搬送。1病院で停電があるが自家発電機で対応中。27医療機関で断水があるが、うち15医療機関で貯水槽により対応中。
愛媛県:1病院で停電があったが、1病院は電源車で対応中。1病院で停電があったが復旧、水不足に対し応急給水手配中。2病院で職員不足があり、診療支援のためDMATを派遣。

◆精神科病院など
広島、岡山両県でDPAT(災害派遣精神医療チーム)調整本部設置。
広島県:広島市の1病院で床上浸水、患者を別棟に移動、診療可能。1病院が河川氾濫で周辺道路が浸水したが、孤立状況ではなく、給水等の支援を受けているところ、7日に念のため4人の患者をDPATが別の病院へ搬送協力。病院被害なし。
岡山県:高梁市の1病院で断水、応急給水で対応、9日以降に食糧不足の懸念があったが、他病院から救援物資などを受け、数日は心配なし。医療的な問題なし。



https://www.m3.com/news/iryoishin/615608
「岡山・真備の医療が壊滅状態」、松山・岡山県医師会長
被災者健康支援連絡協議会、「平成30年7月豪雨」受け開催
 
レポート 2018年7月13日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会をはじめ、医療関係の21組織(40団体)で組織する、「被災者健康支援連絡協議会」が7月13日、日本医師会館で開催され、岡山県医師会会長の松山正春氏は、「岡山・真備の医療が壊滅状態であり、いかに復旧して、住民に戻っていただくかが一番の課題」として、全国の関係者に支援を要請した。

 松山氏のほか、広島県医師会会長の平松恵一氏、愛媛県医師会会長の村上博氏が、テレビ会議システムを通じて参加。JMAT(日医災害医療チーム)を日医に要請したのは、今のところ岡山県のみ。ただ豪雨から約1週間が過ぎ、3県からいずれも、避難生活の長期化と暑さに伴う被災者の健康被害を懸念する声が上がり、感染症、DVT(深部静脈血栓症)、不眠への対策や、心のケアなど、多角的かつ継続的な支援の必要性が浮き彫りになった。また医療機関については、建物は使用可能でも、上下水道設備が被害を受け、断水が続き、平松氏と村上氏は、異口同音に「水の供給が最大の優先事項」と訴えた。

 岡山県倉敷市真備町は、「平成30年7月豪雨」で甚大な被害を受けた地域。11の医療機関のうち、精神病院は水の確保に苦慮しているものの診療は可能だが、患者が全員避難した「まび記念病院」と9つの診療所は診療不能の状態だ。真備町の多くの住民も、「12日現在で44カ所、約3600人が避難生活を送っている」(松山氏)ため、11日に日医に対し、JMATの派遣を要請。日医は12日、岡山県医師会による2チーム、他都道府県からのJMAT6チーム、常時8チーム体制で、14日から2週間派遣することを決定した。13日から福岡県医師会のJMATが現地入りし、統括JMATの兵庫県医師会が14日から活動する予定。

 平松氏は、「多くの医療機関は断水による水不足にあるが、懸命の努力により、必要な診療機能は確保している」と説明。広島県医師会によるJMATで今のところ対応しているものの、「避難所生活の長期化に伴い、暑さなどもあり、医療ニーズがどう変化していくか。県内チームで対応できなくなった場合には日医に対応を依頼することもあり得る」と述べた。

 村上氏は、「7月11日の17時時点で、診療所は8施設が断水で診療不能、病院は全て診療可能。おおむね機能回復の過程あるものの、職員の被災に伴う人員不足、上下水道の復旧の遅れがあり、水提供の支援が必要」と状況を説明。JMATについては、愛媛県医師会で対応しており、他都道府県への派遣要請は今のところない見通しだという。

 その他、松山氏は、医療費の窓口負担の対応に苦慮している現状を説明。厚生労働省は7月12日、「平成 30 年7月豪雨」による被災者に係る一部負担金等の取り扱いについて、事務連絡を発出している(資料は、厚労省のホームページ)。

 まび記念病院、患者等329人を救出

 「被災者健康支援連絡協議会」は、2011年の東日本大震災を機に発足。2016年の熊本地震の際にも開催された。今回は「平成30年7月豪雨」を受けての開催で、被災各県の医師会から現状の説明を受けるとともに、厚労省や同協議会の参加団体が現状および支援状況を説明した。

 同協議会の代表を務める日医会長の横倉義武氏は、会議の冒頭、「被災されている方々の生活が1日も早く改善し、より良い生活ができるように関係団体と行政が連携することが必要」とあいさつ。

 松山氏は7月6日からの豪雨の状況を説明。7月7日の午前中に、県内の24の各郡市医師会会長と連絡を取って、被災状況を確認したという。「一部の病院が被害を受けたとは聞いたが、まだ確実ではなく、これほどとは思っていなかった」(松山氏)。その後、まび記念病院が冠水し、孤立しているという情報が入り、透析患者などの搬送のため、DMAT派遣を要請したが、病院にたどり着けず、自衛隊等に救助要請をし、月8日中に搬送を終えた。同じく7月8日に、県医師会内に災害対策本部を設置し、対応に取り組んできたと説明した。

 岡山県医師会としては、JMATを2チーム派遣。「7月12日現在で44カ所、約3600人が避難生活を送っている。確認されていない自主的な避難などもあり、その確認も急がなければならない」(松山氏)。避難所は当初は暑さが問題になっていたが、クーラーの設置が進み、今は避難生活の長期化に伴い、被災者の医療ニーズが変化してきているとした。また避難所にいても、日中は自宅に戻り、後片付けなどを行い、その際に負傷するケースもあるという。医薬品についても最初は「お薬手帳」がなく、服用薬確認に苦労したものの、今は倉敷市保健所に仮設薬局が設置され、災害処方箋調剤に対応している。現在は、冒頭のように「岡山・真備」の医療復旧が課題であるとした。

 倉敷市で病院等を運営、岡山県医師会理事を務めていた日医常任理事の江澤和彦氏は、協議会後の記者会見でまび記念病院と介護老人保健施設「ライフタウンまび」の避難状況を説明した。7月8日の朝の時点で、下記の患者・職員が残っており、住民も病院に避難したため、江澤氏が「病院では、日曜日(8日)で食料と水が尽きてしまい、全員を搬出することがミッションだった」と説明。自衛隊と消防署がボートで患者等を救出しても、ボートから陸路で各病院に搬送する際に手立てがなく、急きょ、各民間病院が持つ救急車なども出動して患者搬送に当たったという。病院の患者は倉敷市内の複数の医療機関に、介護老人保健施設の入所者は、母体の倉敷成人病センターなどにそれぞれ搬送された。7月8日から搬送作業が始まり、「まび記念病院の患者等は8日の午後8時30分頃までに、ライフタウンまびの入所者等は午後3時頃までに全員を救出した」(江澤氏)。

◆まび記念病院からの救出者
・計329人:患者76人、職員25人、避難住民212人、併設のサービス付高齢者住宅入居者等16人

◆「ライフタウンまび」からの救出者
・計75人:入所者54人、職員6人、併設のサービス付高齢者住宅入居者9人、避難住民6人



https://www.m3.com/news/iryoishin/613354
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
「時間外上限300時間」報道の国循、勤務実態は!?-小林順二郎・国立循環器病研究センター病院長に聞く◆Vol.1
労災申請に報道、「2回の波」があった
 
レポート 2018年7月8日 (日)配信水谷悠(m3.com編集部)

 2017年9月に、時間外勤務・休日勤務に関する労使協定(いわゆる「36協定」)で特別な場合の1カ月の時間外勤務の上限を300時間と設定していることが報じられた国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)。批判を浴びたこともあり、同年10月1日付で上限を100時間とする協定を結び直したのだが、では実際に現場の医師の勤務はどのようなものだったのか。院長の小林順二郎氏に聞いた(2018年6月14日にインタビュー。全2回の連載)。

――上限が300時間であれば、時間外勤務がこれに達してしまうことはないと思いますが、100時間とすると超えてしまうこともありうるのではないでしょうか。
 それが、その前後では超えていないのですよ。変化もないです。実はその1年前、2016年7月に看護師がストレス障害で労災申請をしたときに、労働基準監督署がきて、勤務の管理簿と電子カルテのログインの記録にかい離があり、勧告がありました。未払いの賃金は払い、いろいろなことを整理したのです。その前の2年間分の勤務時間を確認して、サービス残業がないかをチェックしなさいということで、一人一人聞き取りをしたのです。対象は全職員、約1700人。

――かい離にはどのような理由があったのでしょうか?
 ログインして放っておいても、自動でログオフされる仕組みになっていなかったのですが、今は15分か30分かで自動的にログオフされるようになっています。当時は医師がログインして放っておいて、ほかの人が操作することもあったのです。

 時間外勤務は、12カ月のうち6カ月は、1カ月当たり45時間以内にしなさいという命令も一緒に出ています。それを受けて超過勤務を見直すと、170時間くらいの人がいました。順番に指導しながら、2017年4月からの平均は11.8時間で、48時間から59時間くらいが一番多いです。今のところ45時間超えは月に2~3人ですね。医師だけの数字ではないですが。それは300時間の報道が出る前からそうです。それは2016年7月に労基署から指導を受けたからですね。

――170時間の方はどのような事情だったのでしょうか。
 これは2016年の7月のことで、医師です。CCUに若い先生がローテーションしますが、救急が終わって、勉強するために残っていた人がそのまま書いているのですよ。それまでは、その分も払っていたのです。逆に言えば、払っていたからサービス残業はありませんでした。一方で、面倒くさいので全然書かない人もいまして、それではおかしいですよね。もう後からは把握できないので、こんなのは駄目ですよと指導して、そういうのはなくなりました。

――そのくらいの時間外勤務で収まるのでしょうか。
 2010年4月に独立行政法人化(2015年4月からは国立研究開発法人)するときに、当直を申請し直さなければいけなかったので(編集部注:労働基準法施行規則第23条「使用者は、宿直または日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によって、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第32条の規定にかかわらず、使用することができる」)、そのときに当直は寝るだけにしなければいけないということで、それではまずいとなって、部署によっては交替性勤務を採用しました。

 あとは、勤務後も院内に残っていた場合、それは翌日までに、業務命令に基づいてやったということで必ず上司にハンコもらいなさいとしました。労基署の指導でも、超過勤務は「これとこれ、こういうものですよ」と但し書きがありまして、それに従ってやりました。それからレジデントや、勉強したい若い人はもちろん、院内にいてもいいけど、仕事をした分は業務命令として、必ず上司の許可を得なさいということですね。

 交替性勤務は、ICUなどで行っています。私の心臓血管外科などは交替制ではないので、オンコールで行っています。緊急で手術が入ったら、オンコールを呼ぶ。電話が来たときには、当直が受けて、ファーストタッチまではやりますが、そのまま手術には入りません。当直の医師がそのまま手術に入るときは、オンコールと当直を交代します。当直がそのままやってしまうと、(診療報酬上の手術料の)加算が取れない。この加算が大きいですよ。休日、時間外、深夜加算で「予定手術前の当直(緊急呼び出し当番を含む)の免除を実施していること(年12日までは実施しなくてもよい)」となって、年12回以上、手術前に当直したら加算を取れないようになったので、それに対応しました。病院全体、全診療科で12回までですからね。うちは、大動脈解離やバイパスがあって、年間1億円近くなるのかな。そこをクリアしないといけないので、前々から対処はしていました。

――診療時間が終わって残って勉強して、その後また何か仕事というケースもあると思いますが、その辺りの管理はどうしていますか。
 手術など記録に残るものであれば、勤務ですよ。自己申告ではありますが、管理者、医長や部長の責任です。管理しなければ、極端に言ったら(時間外勤務が)150時間や200時間になっているのに、身体も休めず学会に行くなんていうのはおかしな話なのでね。

――医師の文化として、働く側も管理者もあまりきちんと考えてなかったのでしょうか。
 そうですね、そういうところがあったのではないかなと思います。そこをきっちりやろうということで、それがもう、(2017年9月に)新聞に載る1年前。早めに労基署が入って、指導を受けていて、300時間が報道されたときには全部片付いていました。後で出ていたら困ったな、逆に良かったなと思います。その2回の波があったのです。



https://www.asahi.com/articles/ASL7B436GL7BUBQU009.html
研修病院指定で医師不足打開? 宮城・登米市の休診問題 
角津栄一2018年7月10日15時00分 朝日新聞 宮城

 医師不足で8月から市立登米診療所の休診を決めた宮城県登米市。現在の3病院4診療所を維持するには、医師確保に加えて、老朽化した施設や医療機器の更新も課題だ。市は病院再編や民間への運営移管なども視野に、事業再建の具体策を模索している。

宮城・登米診療所、8月から休止に 医師確保めどたたず

 「若い医師の受け入れ態勢が整っていなかったことが最大の要因」

 6月市議会の一般質問。診療所の勤務医を確保できなかった原因を問われた市側は、こう答弁した。

 打開策として示したのが、中核病院である登米市民病院を、初期研修医を受け入れる「基幹型臨床研修病院」に指定させること。研修を終えた若手が、勤務先に選んでくれると期待するからだ。

 指定の条件は①年間の新規入院患者3千人以上②基幹型臨床研修病院に協力して研修医を通算2年間以上受け入れ――の2点。昨年度、市民病院の入院患者数は2684人、研修受け入れ実績は14カ月だった。病院事業管理者の大内憲明氏は「来年度中にはクリアできる見通しがある」と述べた。

 ソフト面と同時にハード面の整備も不可欠だ。市医療局によると、医療機器の9割程度が耐用年数を過ぎている。「最新の設備を備えた環境で教育を受けてきた若い医師が、ここで働きたいと思える環境とは言いがたい」と大内氏。

 ただ、病院事業の累積赤字は約150億円を抱え、昨年度決算も約12億円の赤字を見込む。毎年度、一般会計から15億円超を繰り入れているのが現実だ。

 熊谷盛広市長は7月の定例会見で、「今の経営状況では起債も制約を受ける。財源確保について県と相談し、国にも足を運びながら努力したい」と述べた。

「高齢者はタクシー運行を」住民不安も

 登米市は市立登米診療所の休診についての住民説明会も開き、熊谷盛広市長が「医師の配置がかなわず、いったんは休まざるを得ない。何とか再開させたい」と理解を求めた。

 市医療局の千葉勝範次長が①県派遣の診療所長が2年間の期限を迎えたが、後任の配置ができなかった②他病院からの応援診療も医師の心身の疲労が強く、診療自体が成り立たなくなる恐れもあった、などと休診に至った経緯を説明した。

 出席した住民からは「なぜ休診を決める前に意見を聞かなかったのか。医師の確保も協力できたのに」「高齢の患者向けにタクシーの運行を」など、不満や要望が相次いだ。

 6月下旬、診療継続を求める住民の署名約3300人分を市に提出した、登米地区町内会振興協議会の佐々木康明会長は「この地区は交通弱者の高齢者が多い。身近にかかりつけ医がいるからこそ、安心して生活できる」と訴えた。



http://blogos.com/article/311077/
お偉いさんが崩れてる 医師会の理事の発言 若手の先生誰も賛同しない! 
中村ゆきつぐ 2018年07月14日 14:19 BLOGOS

ヤフー記事です。過労死ラインが上限なら「救える患者も救えない」 - 日医、医師の働き方改革に関する意見書を公表。念のため元サイトも。

>松本常任理事は、医師の働き方の実態を踏まえると、「過労死ライン」での上限設定は医療現場が努力しても対応が難しく、医師不足などで地域医療が崩壊する恐れを指摘した。その上で、「命を救える患者さんも救えない状況になる」と訴え、上限を超えることを「特例」として認めるべきだとの認識を示した。意見書では具体的な上限を提言していないが、医師の健康への配慮が必要になる一方で、上限が高過ぎると働き方改革の取り組みが進まなくなることも考えられるため、松本常任理事は、「慎重な議論が必要だ」と述べた。

日本医師会の常任理事というお偉いさんのこの言葉に大きな問題があります。

1 偉い医師でありながら実際厳しい現場で働いている医師の状況がわかっていない
 開業医代表と勤務医との違いはあるのですが、他人を思いやる医師としての能力が?

2 医師も人間であることをわかっていない
 今の地方の医師の現状、仕事がわかっていないのが根本でしょうか。それとも今の利益のため?それとも医師は普通の人間以上に働ける?死亡事故があったことをわかっていない?

3 現状を変える事なく他の若手の医師に患者を助けるために我慢しろという提言しかできていない
 これが自分勝手と思わないことが悲しい。慎重な議論は今までいっぱいやってきたでしょう。で結果は出てるの?

結論として現状を変えるつもりはないという本当常任理事として非常に程度の低い提言です。

医師としてわかる部分はあります。学会準備、医学の勉強、自分の社会的研鑽、病院敷地に残って行う全ての行動を労働と捉えることは間違いだという要素はあると思います。であるからこそ、当直だとか実際の勤務時間外の労働をしっかり定義しそこへの絶対的制限をかけることを提言すればいいのに、今の若手、大病院の医師たちに今のままで我慢しろというのは反発しか生みません。

もちろん記事の内容以外にもきっと話されているとは思います。今回のこの報道に対し医師会のさらなる説明を期待します。

なんか日大とか東京医大とか本当にお偉い人が崩れてます。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201807/CK2018071102000184.html
【群馬】 県北部で医師の負担大 適正配置向け地域医療会議 
2018年7月11日 東京新聞  群馬

 医師不足や地域の医師偏在化が指摘される中、県と群馬大学、県医師会など関係団体が医師の適正配置などを協議する「ぐんま地域医療会議」が九日夜、県庁であった。県の実態調査で、吾妻地域など県北部で常勤医の人数が少なく一人当たりの負担が大きいことや、地域によって勤務医の高齢化や特定の専門診療科の医師不在などの課題が明らかになった。今後、群大が新設する医師や医療機関の相談窓口「ぐんま医療人ネットワーク」などと連携し、医師偏在の解消や人材確保を目指す。 (石井宏昌)

 地域医療会議は三月に発足し、県医師会の須藤英仁会長が議長、群大病院の田村遵一病院長らが副議長。今回が本年度の第一回で、県が群大に委託して県内百三十病院を対象に行った医師勤務実態等調査(昨年四月一日現在、回答百二十六病院)の結果を示した。

 それによると、一般的な入院医療を提供できる二次保健医療圏別で、県内十地域のうち、前橋地域は常勤医が七百七十九人で突出して多く、専門診療科の常勤医も満遍なく分布しているが、吾妻地域は常勤医が五十三人と県内最少で、耳鼻咽喉科、脳神経外科、精神科の常勤医は不在。利根沼田地域も常勤医八十五人と吾妻に次いで少なく、耳鼻咽喉科、泌尿器科、精神科の常勤医が不在だった。他地域でも耳鼻咽喉科や眼科の不在、小児科の受け入れ困難などがあった。

 入院担当常勤医一人当たりの病床数では、県平均九・六床に対し、吾妻地域は一九・三床で、最少の前橋地域七・四床の二・六倍になった。東毛地域でも桐生地域一二・二床、太田・館林地域一一・八床と県平均を上回った。

 県や群大によると、以前は群大医学部が中心になって地域の病院へ医師を派遣するケースが多かったが、近年では大学病院だけで担うのは難しくなっているという。こうした医師不足や偏在などの課題解消のため、群大は学内の地域医療研究・教育センター内に「ぐんま医療人ネットワーク」を設置し、県内で就業を考えている医師や、医師を求める医療機関の相談に対応する。群大病院の田村病院長は「県内で就業するにしても医師によってさまざまな希望がある。単に就職のあっせんではなく、群大医学部と連携することで、医師の意向を踏まえて厚みのある支援ができると思う」と話した。



http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20180711000044
災害拠点病院に医師6割出勤できず 豪雨で京都の交通遮断 
2018年07月11日 11時20分 京都新聞

 西日本豪雨では降り始め翌日の6日に、京都府亀岡市以北と京都市を結ぶ交通網がすべて遮断され、地域災害拠点病院に指定されている京都中部総合医療センター(南丹市)の医師の約6割が出勤できない事態となった。京都市在住の医師が多いためで、5診療科が休診を余儀なくされた。被災者は搬送されなかったが、今後の災害対応に不安を残す形となった。住民らは「地元に住んでほしい」と要望するが、同センターは「医師確保に悪影響が出る」と慎重で、地域の医師不足の課題も浮き彫りとなった。

 5日夜から6日にかけ、JR山陰線、京都縦貫自動車道、国道9号老ノ坂峠が不通となり、京都市-亀岡市間の行き来ができなくなった。このため、同センターの常勤医74人中44人が出勤できず、残りの医師で救急や外来患者に対応した。麻酔医も不在で、予定していた手術は見送られた。

 同センターは亀岡市、南丹市、京丹波町が共同設置し、3市町の「南丹医療圏」では唯一の災害拠点病院。幸い南丹医療圏で甚大な被害はなかったが、3カ月ごとに通院している南丹市の松本史郎さん(71)は「地元に住む医師を増やすなどの対応をしてほしいという願いもある」と話す。

 同センターには災害マニュアルがあるが、これだけ多くの医師が通勤できない事態は想定していなかった。このため、マニュアルの見直しに着手し、大雨が予想される場合は病院近くの医師宿舎などでの宿泊を検討している。

 ただ、地元在住の医師を増やすのは難しいという。川野一男事務局長は「『京都、大阪から通勤圏』という点が、医師集めに有利に働いている。地元居住を強制すれば、医師に来てもらえず、地域医療に影響が出る」と頭を抱える。

 また、亀岡市立病院も常勤医15人のうち、2人しか出勤できなかった。非常勤1人を加えた計3人で対応したが、外来診療は中止。救急体制もとれず、2件の受け入れを断った。

 府医療課は「地域の開業医が災害拠点病院へ駆けつけるなど、地元医師会との連携を検討したい」とする。



https://www.hokkaido-np.co.jp/article/208104
京極診療所 無床化検討 町、8月にも結論 常勤医不足、赤字続き 
07/12 05:00 北海道新聞

 【京極】町は、町国保診療所「ひまわりクリニックきょうごく」(19床)について、来年4月からの無床化を検討している。常勤医の1人体制が続き入院患者の管理が難しくなっていることと財政難が主な理由で、8月中にも結論を出したい考え。正式決定されれば町内唯一の診療所で入院ができなくなる。

 同診療所は町国保病院(43床)が2012年に縮小して開業。一時は医師4人体制だったが独立などで退職が相次ぎ、昨年12月からは前沢政次所長が1人で入院患者に対応している。町は随時医師を募集しているが、1年以上応募がない。

 町によると病床稼働率はここ数年35%前後と低迷しており、毎年実質1億~1億5千万円の赤字を町の一般会計で負担している。無床化した場合の赤字額は現在より数千万円減る見込みという。

 こうした状況から町は来年度から診療所を無床化した上で指定管理とし、外部の事業者に新たな常勤医探しを委託することを検討。診療所と町議会、住民でつくる「ひまわりクリニックサポーターの会」には既に検討内容を伝えた。



http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20180714000119
唯一の常勤医退任、診療所ピンチ 京都の山間地、後任探し難航 
【 2018年07月14日 22時10分 】京都新聞

 京都府南丹市美山町の美山診療所で1人しかいない常勤医が退任することになり、後任探しが難航している。山間地の医療を守る拠点だけに、存続への危機感を募らせた住民や行政が医師の確保に努力しているが、見通しは立っていない。

 昨年11月に開かれた診療所の理事会で、約15年にわたり常勤医を勤めてきた尾嵜博所長(74)が7月限りで退任する意向を示した。体力の衰えなどで「75歳の誕生日を区切りに」と考えたという。

 美山診療所は、町内にあった民間診療所の閉鎖を受け、旧美山町と医療法人財団・美山健康会が公設民営方式で1999年に建設した。内科や外科、心療内科などがあり、入院用ベッドも備える。

 町内にはほかに週1~3回診察する医療機関が2施設あるが、美山診療所は夜間を含め週6日診ており、町民の半数に当たる約2千人が年1回以上受診している。「高齢化が進む美山町になくてはならない医療機関。住民の命を守る砦(とりで)」。住民でつくる美山まちづくり委員会の大野光博委員長は強調する。

 住民たちは2月に医師確保対策委員会を結成し、診療所とともに市や府などに支援を求めた。町内5地区(振興会)で説明会を開いたり、地元出身の医師に協力を求めたりしたが成果は出ていない。

 確保が難しい背景には、医師の地域偏在がある。10万人当たりの医師数は府全体で314人と全国2位だが、南丹市を含む南丹医療圏では177人で全国平均(240人)を下回る。府医療課は「若い医師は技術を学ぶため、都市部の病院を希望する傾向がある。山間部では家族の生活面なども考慮しなければならない」と話す。

 常勤医の多忙さ、施設運営の難しさも課題だ。尾嵜所長は週6日の診療日のうち、夜間を含めて5日間を担うなど負担は大きい。経営面では昨年度約1700万円の赤字となった。人口減で利用者は年々減少し、今後も見通しは明るくない。

 原龍治事務長は「常勤医を招くには、負担軽減や業務に見合った報酬の再検討に加え、住民に提供できる医療内容の検討も必要」と指摘する。

 市は6月の定例市議会で、医師確保への支援費として、千万円の補正予算を計上した。しかし、市議からは恒常的な支援を求める声が相次いだ。西村良平市長は「診療所の灯を消さないのが最大の目標」として支援に前向きな姿勢を示したが、民営の性格を踏まえ「市民全体の理解を得られる方策を考える」と答えるにとどめた。

 大野委員長は「民営の施設だが、住民も懸命に努力する」と気を引き締め、原事務長も「厳しい状況を乗り越え、地域医療の先進地にする思いで取り組む」と意気込む。

 後任が決まらないため、尾嵜所長は退任を予定していた今月以降も勤務を継続する意向だが、医師の確保は住民が安心して暮らすため、早急に解決すべき課題に変わりはない。



http://www.medwatch.jp/?p=21407
医師の労働時間上限、過労死ライン等参考に「一般労働者と異なる特別条項」等設けよ―医師働き方改革検討会(1) 
2018年7月10日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 医師は労働者であるとともに、「患者の生命を守る」責務を負い、またその働き方は極めて複雑・多様である。このため一律の上限規制を設定することは難しく、▼医師の労働時間上限に関する特別条項を設け、過労死ライン等を参考に労働時間上限を設定する▼「特別条項」を超えた労働をしなければならない時期等もあり、「特別条項の特例」を設け、第三者機関で特例の対象としてよいかの承認を得る―といった仕組みを検討する必要がある。

 こういった提言・意見書が、7月9日に開催された「医師の働き方改革に関する検討会」に医療界の統一見解として提出されました(検討会に関する厚労省のサイトはこちらとこちら(参考、日医委員会の答申))。

意見書では、このほかにも「自己研鑽の在り方」「宿日直の在り方」「研修医等の在り方」などについて基本的な考え方を示すとともに、今後、具体的な検討を行うべきと提言しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

ここがポイント!

1 医療界の総意として、「医師の働き方改革」に関する意見・提言
2 医師の労働時間、過労死ライン等踏まえた特別条項と、さらなる特例を
3 医師の働き方改革には、「国民の理解・協力」が不可欠
4 労働者サイドからは意見書への疑問や、応召義務の根本的な見直しを求める声も


医療界の総意として、「医師の働き方改革」に関する意見・提言

 安倍晋三内閣が進める「働き方改革」の一環として、医師にも「罰則付きの時間外労働の上限規制」を導入(改正労働基準法)することになりました。ただし、医師には応召義務(医師法第19条)が課されるなどの特殊性があることから、▼規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る▼法改正から5年後を目途に規制を適用する—こととされています。

 このため、厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)を設置し、医師の労働時間上限に関する「特例」の設定などに向けた議論を行っており、そこでは、今村聡構成員・日本医師会副会長から「医療界で、新たな労働時間制度(例えば、医療版の裁量労働制のような仕組みが考えられないか)を提案する」考えが示されていました(関連記事はこちら)。

 今般、今村構成員や岡留健一郎構成員(日本病院会副会長)、馬場武彦構成員(日本医療法人協会副会長)、山本修一構成員(全国医学部長病院長会議「大学病院の医療に関する委員会」委員長、千葉大学病院長)といった医療界の重鎮に、赤星昂己構成員(東京女子医科大学東医療センター救急医)ら現場の医師も加わり、医療界の統一提案と言える「医師の働き方改革に関する意見書」(以下、意見書)が取りまとめられ、検討会に報告されたものです。いわば、今後の検討会論議のたたき台の1つと言えるでしょう。

医師の労働時間、過労死ライン等踏まえた特別条項と、さらなる特例を

 意見書ではまず、▼医師には「学ぶこと」そのものが職業の中に組み込まれている▼医療は個別性・複雑性が高く、治療方針やリスクなどについて、個々の患者・家族に「説明と同意」を行うことが求められる▼医師は、その働き方が厳しくなろうとも、「地域医療の質と量」を維持しなければならない責務を負っている▼「地域医療の継続」と「医師の健康への配慮」とのバランスをとることが求められている―などといった点をまず確認。

 また「学ぶこと」に関連して、医師には日々自己研鑽を行うことが求められていますが、その内容はカルテ作成や地域連携業務など「労働」に該当するもの、学会参加など「純粋な自己研鑽」に該当するもの、さらに論文作成や文献検索など「労働と自己研鑽の二面性を持つ」ものが存在し、この「二面性を持つ業務」をどう取り扱うのか(研鑽を妨げることはできないが、医師の健康にも配慮しなければならない)という重要な課題があることを指摘。

 こうした、一般労働者と異なる「医療、医師の特殊性」に鑑みて、医師の労働を、例えば次のように考えてはどうかと提言しています。検討会の議論の行方によっては、「医師の労働法制」に関する更なる法改正なども行われることになるでしょう。

【労働時間上限の考え方】
 一般労働者では「時間外労働を原則として月45時間・年360時間までとし、特別に月100時間・年720時間までなどの例外を認める」こととされているが、医師について、その特殊性に鑑み、次のような仕組みを設ける
(1)脳・心臓疾患の労災認定基準(過労死ライン、「発症前1か月間の時間外・休日労働が概ね100時間超」「発症前2-6か月間の月平均時間外・休日労働が概ね80時間超」など)を基にした、医師の労働時間上限に関する「特別条項」を設ける(厚労省令)
(2)(1)の「特別条項」を超えざるを得ない場合には、精神障害の労災認定基準(「発病直前2か月間連続して月当たり概ね120時間以上の時間外労働」「発病直前3か月間連続して月当たり概ね100時間以上の時間外労働」など)を手掛かりに、「特別条項の特例」を設け、そうした労働を認めてよいか否かを、都道府県の医療勤務環境改善支援センターや地域医療支援センターを中心とした第三者機関で判断し、承認を得ることとする

07153_20180715163347902.jpg

医師の労働時間に関する「特別条項」および「特別条項の特例」のイメージ(その1)

07154_201807151634003d5.jpg

医師の労働時間に関する「特別条項」および「特別条項の特例」のイメージ(その2)

07155.jpg

医師の適正労働等を担保するために、第三者機関を設置し、そこが監視・支援を行うべきとの提言

【宿日直の在り方】
 現在の宿日直許可基準(1949年の厚生省通知)では、宿日直業務を「病室の定時、検脈、検温」としているが、医師の業務実態に合わず、次のように内容を見直す
▼「許可を受けた宿日直」(断続的・監視的労働で労働時間の適用除外)と「通常業務と同じ宿日直」との間に、「中間業務」を設ける
▼中間業務については、(1)拘束時間のX%(例えば25%)が労働である「中間業務1」は、X%(同25%)を勤務時間とし、相応の賃金を支払う(2)拘束時間のY%(例えば50%)が労働である「中間業務2」は、Y%(同50%)を勤務時間として、相応の賃金を支払う―といった基準、賃金ガイドラインなどを定める
▼各医療機関・診療科が「労働時間等設定改善委員会」(衛生委員会を活用)で中間業務に関する取り決めを行い、労働基準監督署に届け出る
▼都道府県の第三者委員会(上述)で個別医療機関の実態を確認し、適切な運用を担保する(アドバイスを行うなど)

07156.jpg

医師の宿日直と一口に行っても、大きく分けて「通常業務と同程度の業務を行う」ケース、「通常業務はほとんど行わない」ケース、「通常業務を少なく実施する」ケースの3パターンがある
 
【専門業務型裁量労働制の在り方】
 現在、大学病院において▼教授▼准教授▼講師―が専門業務型裁量労働制の対象であるが、「2023年以降、世界標準の教育レベルを公的に認証された医学部卒業者でなければ米国で医療に従事できなくなる」ことを踏まえて、「助教」についても対象に加える
【研修医等の在り方】
 上述の「医師の特別条項の特例」の枠組みの中で、別途、制度を定める

 さらに意見書では、医師の「長時間労働」を是正するための仕組みづくりが、医師の健康確保のために重要であると強調し、例えば「休日、勤務時間インターバル」「連続勤務時間規定」を導入することも提案しています。例えば、医療機関の実情に応じて、A医療機関では「連続勤務の基準時間をa時間と定め、これをb時間超えた勤務を行った場合には、勤務明けから次の勤務に入るまでのインターバルとしてc時間を確保する」といった規定を設け、これを遵守していく仕組みです。
 
医師の働き方改革には、「国民の理解・協力」が不可欠

こうした仕組みを作ることそのものは、議論に時間などは要しますが、それほど難しくはありません。難しいのは、これを適切に運用していくことです。例えば、医師の時間外労働上限を●時間と決めたとしても、患者の家族が「勤め先を抜けられない。インフォームドコンセントの時間は夜9時以降にしてほしい」と要望したり、一部の住民が「平日の日中は外来が込み合っている。夜間の救急外来を利用しよう」などと不適切な行動を続ければ、医師の負担は一向に減りません。責任感の強い医師ほど、患者・家族から、いわば「サービス残業」を強いられることになってしまいます。医師の負担軽減、ひいては地域医療の確保に向けて、我々国民全員が「適切な受診」等を心がける必要があります。

このため意見書では、「各地域の医療事情、医師の勤務実態、医療機関への適切なかかり方について、地域準の理解と協力を得ることが必要。そのための啓発活動に積極的に取り組む必要がある」と指摘。例えば「学校保健や産業保健の活用」(高等学校等で、我が国の医療の現状、それを踏まえた適正受診の在り方などを教育する)などに期待を寄せています。もっとも、国民サイドが過度に反応し、「医療を必要とする人が受診を控える」ことになっては本末転倒であり、保険者か国民へ適切に働きかけることも提案しています。

さらに、こうした制度改革には「財源が必要となる」点にも言及。診療報酬や地域医療介護総合確保基金などでの対応を検討するよう要請しています。

今後、これらの諸課題についてより具体的な検討を行い、可能なものは前倒しで進める(医師に関する働き方改革の施行は2024年4月施行)こと、施行後5年程度で状況を踏まえた見直しを検討すること、なども求めています。

労働者サイドからは意見書への疑問や、応召義務の根本的な見直しを求める声も

この意見書については、7月9日の検討会では具体的な議論は行われませんでしたが、いくつかのコメント・感想が寄せられています。

今般の意見書作成に深く携わった岡留構成員は「医師、医療の特殊性」について、改めて強調。医師の特殊性に十分配慮した労働法制となければ、医師のプロフェッショナリズムを阻害し、「ひいては患者に悪影響が出る」と強く指摘しました。

一方、労働者の立場で参加している村上陽子構成員(日本労働組合総連合会総合労働局長)は、宿日直の在り方などは検討に値するとしたものの、「意見書の方向性には疑問を感じる」と述べました。

また「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の座長も務めた渋谷健司構成員(東京大学大学院国際保健政策学教授)は、「医師の健康確保と、地域医療確保は『どちらをとるか』というトレードオフの関係にはない生産性を高めることで、両立可能な部分もある。また、時間外労働については、割増賃金を適切に支払うよう厳しく指導すれば減っていくのではないか」とコメントするとともに、「必ずしも医療の必要性がない人のアクセスをどう制限するかが重要である。意識改革では変わらない」と述べ、応召義務の見直しの必要性を強調しています。

なお、「国民の理解が重要な鍵となる」点には多くの構成員が賛同していますが、「国がイニシアチブをとって周知していく必要がある」(馬場構成員)、「国民の意識改革には時間がかかる。現在、医療現場への労働に関する指導等が行われているが、本末転倒な対応となりがちである。長期の改善計画と、それに向けた支援などが必要」(福島通子構成員・塩原公認会計士事務所特定社会保険労務士)、「子供の授業参観などには親は会社を休んで出席するので、医療に関しても『診療時間内の説明』などは可能なはずである。有給休暇などをしっかり使えるような意識改革が必要である」(戎初代構成員・東京ベイ・浦安市川医療センター集中ケア認定看護師)といった指摘がなされています。

今後の論議に備えた「ジャブ」の応酬が始まっています。
 


  1. 2018/07/15(日) 10:59:39|
  2. 未分類
  3. | コメント:0

7月8日 

http://www.saga-s.co.jp/articles/-/239918
好生館、救急医不足で急患受け入れ一部制限
休日前夜間5症例で

7/5 9:00 佐賀新聞

 佐賀県医療センター好生館は、救急医不足のため、4月から救急患者の受け入れを一部制限している。専門医のいる循環器や脳血管、外傷の患者は24時間態勢で受け入れているが、心肺停止や急性薬物中毒など5症例に関して一部平日の夜間で受け入れが難しい。兒玉謙次館長は「一日でも早く通常の救急医療体制に戻すため、救急医を緊急募集している」と話している。

 救急医不在の時間帯は金・土曜日と祝日前日の各夜間(午後5時15分~午前8時半)。いずれも日中の救急医の勤務体制維持のため。心肺停止や急性薬物中毒のほか、「重症多発外傷」「環境障害(熱中症・低体温症)」「溺水」の患者受け入れが難しい。

 好生館によると、常勤の救急医は4年前には10人ほど勤務していたが、今年3月末で6人にまで減少。うち1人は子育て中の女性医師で、夜間勤務は実質、5人で担っている。兒玉館長は「全国的に医師が不足している。救急医となると県内の他の病院でも補充がままならない」と厳しい状況を説明。夜間の救急医は外科、内科から1人ずつ配置している状態で、医師の疲弊が目立つようになった。

 また医師や看護師らへの時間外手当て未払い問題により、全面的な勤務体制の見直しも迫られた。救急医の場合、休日を確保するため、(休日)前日の勤務体制を時間内だけに制限せざるを得なくなったという。

 患者受け入れの一部制限について兒玉館長は「4月スタートまでに佐賀大医学部附属病院と話し合い、(制限時の患者受け入れについて)理解してもらった」と話した。また県に説明しており、現在のところ目立った混乱はないという。ただ、4月以降、好生館への月当たりの搬送数は前年比2割減となった。

 兒玉院長は「できるだけ早期に救急医を少なくとも10人にそろえたい」と述べ、近隣の大学医学部を中心に募集をかけているという。



https://www.m3.com/news/iryoishin/610090
シリーズ 大学医学部「地域枠」の今
大学の大半は「地域枠」の存続希望 - 小林誠一郎・AJMC委員会委員長に聞く◆Vol.2
実効性を高めるカギは「卒前・卒後の支援体制の強化」

インタビュー 2018年7月7日 (土)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――奨学金を支給する地域枠の卒業生の「辞退率」は、地域枠制度発足以前の都道府県医師養成奨学金の卒業生よりも低いという結果です。


 卒後年数が経過するにしたがい、「辞退率」が増加する可能性もあり、義務年限を終えた時点でないと、最終的な結果は言えませんが、「辞退率」は都道府県医師養成奨学金の卒業生と比べて改善傾向にあると言えます。その理由として、主に二つが考えられます。一つは、地域医療に関する教育や啓発活動などの卒前の支援体制の拡充、もう一つは卒後のキャリア形成などに対する支援です。これらは地域枠を今後、より実効性のあるものにする施策とも言えます。

 本研究の3カ年の調査からも、各大学が地域枠の学生を対象とした交流会やセミナーの開催、キャリアパスの提示、相談窓口の設置、特別教育プログラムの提供、メンター制度などの卒前の支援体制を充実させていることが示されました。その大きな原動力となっているのは、各大学に設置されている地域医療学講座などです。同講座は、地域枠の学生と密接な関係を持ち、地域枠の学生のさまざまな支援に取り組んでいます。各大学、特に地方の大学は地域枠に期待するところが大きいので、「一人の脱落者も出したくはない」と本当に熱心に取り組まれています。

 また、奨学金支給枠の義務履行年限は9年程度のケースが多いのですが、この時期は専門医取得や学位取得など、医師として重要なキャリアを形成する時期に相当します。義務履行とキャリア形成をいかにすり合わせるかが重要であり、地域医療支援センターなどの役割がカギとなります。以前は都道府県医師養成奨学金の卒業生の配置は、都道府県が主体となって決めていたのが各地域の実情ではなかったかと思います。2008年度以降の地域枠の設置に伴い、地域医療支援センターなどが、地元の自治体、大学、医師会、病院なども交えて、医師の需要と供給のバランスに加えて、卒後のキャリア形成も十分に加味して、地域枠の卒業生の研修場所配置を検討調整するようになっています。その成果が、「辞退率」の低下に表われていると思います。

――2020年度からの初期臨床研修の見直しでは、「地域枠等の一部のマッチングを分けて実施」する方針です(『2020年度からの初期研修の見直し案を了承、7科必修化へ』を参照)。

 今はマッチングに参加する際に、地域枠であるか否かを記載する欄があります。地域枠の卒業生を受け入れる側が、その点を考慮するか否かにもよりますが、地域枠の実効性を高めるための外形的なアシストにはなるでしょう。また、マッチングは全国規模で実施するものであり、「地域枠の学生を先に行う」という例外を作ることに反対意見がないわけでもありませんが、初期臨床研修のカリキュラムは病院により大きな差はないので、さほど問題にならないと思います。

 問題になるのは、専門研修です。キャリア形成と義務履行をいかに調整していくかが重要です。最近は地域枠の卒業生については、専門医取得の便宜を図ったり、義務履行期間中に猶予期間を設けるなど、制度的にもかなり柔軟に対応するようになっていると思います。

――厚生労働省では2022年度以降の医学部定員について、減らす方向で議論を進めています(『医師需給の「第3次中間取りまとめ」、了承』を参照)。今回の調査で「地域枠を減らしたい」という意見はあったのでしょうか。先生は今後どうあるべきだとお考えですか。

 地域枠を導入している68大学のうち、「奨学金支給編入学枠」がある6校中、2校は「廃止したい」と回答しました。それ以外は、「奨学金支給枠」がある64校のうち50校は「このまま存続させたい」と回答するなど、定員の問題はあるにせよ、継続を希望する意向が大半です。私の個人的な見解ですが、2008年度の地域枠入学生でもまだ卒後4年目のため、「効果を感じつつある」ところまでは行っていないかもしれませんが、「このまま地域枠を続ければ、地域の医師不足が解消してくる」という実感を持てるようになったのでは、と思っています。
070801.jpg
(出典:地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告)

 また今後の「地域枠」の扱いですが、「地域枠は残し、その代わりに一般枠を減らす」、あるいは「地域枠を全て廃止し、一般枠は維持する」という両方の意見があり得るでしょう。前者の場合、アドミッション・ポリシーに基づく各大学の独自教育、研究、高度医療の提供という部分ミッションが損なわれていくるのでは、との懸念があります。一方、後者の場合、医師不足への影響が心配されます。各都道府県の実情によりますが、医師不足の程度に応じて「地域枠」をある程度残しておく必要があると考えています。

 つまり、2022年度以降、どのくらいの「地域枠」が必要かは、大変難解な課題ですが、診療科の問題も含め「必要医師数」をいかに定義するかで決まるでしょう。義務履行の終了後、どのくらいの医師がその地域に残るのかも加味しながら、「必要医師数」を基に、各都道府県の医師需給を推計し、「地域枠」の在り方を検討していくことが求められます。われわれ大学の立場としても、義務年限を終えた後の地域定着を見るためにも、今後10年、15年は今回のような調査を継続して、その結果、浮かび上がった問題点を抽出して、対応していくことが必要だと考えています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/613007
シリーズ Dr.木川の「川越救急クリニックから見えた医療の現実」
医師が過剰になるって本当?救急現場からの疑問
調査「全国的に見て、医師不足とは?」

オピニオン 2018年7月3日 (火)配信木川英(川越救急クリニック副院長)

 前回のコラム(『救急クリニックからみた川越、そして埼玉の医療』を参照)、読んでくださってありがとうございます。ご意見もたくさんいただき、刺激になります。そんな中で、何件か質問もございましたので、まずはお答えしたいと思います。

『コンビニ受診の件』
 回答してくだった先生もいらっしゃいますので、少し補足いたしますと、10年前くらいから3次医療機関(埼玉医大総合医療センター)に、1次患者が殺到して、高度救命救急センターとしての本来の業務が難しく なりました。規模を縮小せざるを得なくなり、病院全体として疲弊したことが救急クリニック設立した経緯です。

 救急クリニックがあろうがなかろうが、コンビニ受診は患者側の要因ですので、医療関係者や医療機関が何を言っても、結局どこかにしわ寄せが来ます。それならば、その「隙間」を突いて診療していくというのが、当院の目指すところです。当院は、午後4時から10時までを外来診療時間にしておりますので、時間外算定はもちろんしていません。

 ちなみに、隣の川越QQ接骨院は、以前当院に勤務していた柔道整復師が開業した接骨院です。巷にあふれる適当なマッサージ屋さんではなく、昔ながらの伝統の職人芸であります骨接ぎをしており、院長共々、彼を信用して整形外科的な患者さんをお願いしています。

『当院の信念について』
 他の先生が診療をやっていない時間に営業しており、毎日夜勤みたいなものですが、いい意味で楽しくやっています。やりたくないことをやっているわけではないので、そこが大事かな、と思っております。拘束時間は長いかも知れませんが、全ての時間で診療している訳でもありませんし、こうして記事を書く時間もありますし、オリンピックやサッカーワールドカップも観れます(笑)。

 医師の数だけ、考えがあるのも承知しておりますし、当院の理念を押し付けようなんておこがましいことは全く考えておりません。当院は当院でできることを粛々としているだけです。

 給料のことにコメントして下さった先生方もいらっしゃいますが、そもそも儲かっていませんので、そんなに払えないというのが実情です(涙)。それこそ、お金ではなく、高尚な信念がある先生方のご応募をお待ちしております。

 医師会に入れないのは、医師会の偉い方々の反対に遭っているようですが、政治的なことは分かりません。医師会に属さなくても、独自にやっていますので、あまり困っていません。まあ、彼らからすると目の上のたん瘤状態かも知れませんが。

『私自身のこと』
 青森県に医師が余っている訳ではありませんが、私の専門であります救急の分野に関しましては、八戸市立市民病院の偉大なる今明秀院長のご尽力で相当整備されました。その教え子として、何かできることを模索している途中で、川越救急クリニックの上原院長と出会いました。私を必要としてくれたこと、救急クリニック開業という奇抜な発想、革命を起こそうとする行動力に共感して、今があります。

 そこで、ようやく今回のテーマなのですが(苦笑)、先日、以下の記事がありました。

 
医学部定員、「2022年度以降、減員に向けた議論が必要」-第3次中間取りまとめ案を了承、「週60時間勤務に制限」が前提
記事の概要:性年齢階級別の詳細なデータを用いて仕事量を算出することで、医師の労働時間として3つのケースを仮定し、需給推計を算出している。週60時間を超す医師の勤務時間を、週60時間以内に制限する場合、医学部定員が2018年度の9419人のまま推移すれば、2028年頃には約35万人で医師需給が均衡し、2040年には医師供給が約3.5万人過剰となる。

 この問題が議論される時にいつも疑問に思っているのですが、医師の人数自体が増えることが問題になるのだろうか、ということです。いまだかつて、医師が増えて問題になったことはあるのでしょうか、という疑問です。現状でこんなにも「医師不足」が叫ばれているのに…。供給が過剰になってから議論すれば良いのではと個人的には思ってしまいます。

そこで、読者の皆様に何点かお聞きしたことがあります。

1.医師の数不足もそうですが、実力や技術不足、やる気不足という観点を踏まえて「医師不足」の実感や情報はございますでしょうか。結局、仕事ができる人間が全てを請け負ってしまい、過重労働になっている気がします。

2.診療科目的にはいかがでしょうか。人員過剰な科目はあるのでしょうか。少なくとも、救急医が余っている事案は聞いたことがありません。病院数が多すぎるのが問題なのでしょうか。集約をするといいのでしょうか。

3.時間帯での医師不足みたいな情報はございますか。この時間は医師不足だ、みたいな。昼間はある程度充足しているが、夕方以降になると圧倒的にどの科目も足りなくて困っているなど。

4.医師の偏在が問題だという指摘もありますが、実際はいかがでしょうか。現状では、偏在どころか、あふれている地域があるのかどうかも不透明です。臨床研修制度が始まってからこういう議論が出てきたという意見も見たりしますが、これも実際はどうなのでしょうか。


http://www.mutusinpou.co.jp/news/2018/07/51816.html
県内自治体病院の常勤医減少
2018/7/7 土曜日 陸奥日報

 県内22自治体病院の常勤医数(5月1日現在)は前年同期より20人減の504人となり、2年連続で減少したことが6日、県自治体病院開設者協議会のまとめで分かった。病院側が施設運営上必要と考える常勤医740人に対する充足率は68・1%で前年同期比2・4ポイントの減。県内の医師不足がより深刻化した。



https://www.toonippo.co.jp/articles/-/51960
青森県内22自治体病院、常勤医が前年度比20人減
2018年7月7日 東奥日報

 青森県内22自治体病院の常勤医数(5月1日現在)は504人(研修医113人含む)で、前年度より20人減ったことが6日、県国民健康保険団体連合会(県国保連)のまとめで分かった。常勤医の減少は2年連続で、市部を中心に計9病院で減った。全体の充足率は前年度を2.4ポイント下回る68.1%だった。
070802.jpg



https://style.nikkei.com/article/DGXKZO32415730Z20C18A6TCC000?channel=DF130120166089
新設医学部、時代に寄り添う 海外実習・奨学金手厚く
2018/7/2付 日本経済新聞 朝刊

 2016年、17年に2つの大学が相次いで新たに医学部を開設した。国は長年、医学部の新設を認めてこなかったが、11年の東日本大震災からの復興をめざし東北医科薬科大の新設を認めた。国際医療福祉大は国際的に活躍できる人材を育成する使命を負う。特色的な2つの医学部は日本の未来を変える起爆剤になるのか――。

 「自然と積極的に英語を話せるようになった」。17年に国際医療福祉大の医学部1期生として入学した長谷川聖さん(32)は英語は苦手だったというが、同大学は1年生の後期から2年生までほぼ全ての授業が英語。6年次は4週間以上の海外での臨床実習が義務付けられ、約30の国・地域の提携施設で経験を積む。

 「グローバルで活躍する医療人材」の育成をめざす同大学は英語での授業だけでなく、医学部の定員140人のうち、毎年20人を留学生枠として受け入れている。

 その一人、ベトナム出身で1期生のダン・タン・フイさん(21)はホーチミン市医科薬科大からの特待生として来日した。「語学に戸惑いもあった」というが、「日本の高度な技術を学び、患者に寄り添える医師になりたい」と意気込む。

■詰め込み避ける

 新設大学だからこそ、医療の学び方も大幅に変えた。国内の医学部の多くはまず一般教養を学び、次に基礎医学、そして患者に接する臨床実習の順で学ぶ。一方、同大学では最初から基礎医学と臨床の統合型講義で早期から臨床の視点を取り入れている。

 「今までのカリキュラムだと、ただテストのために知識を詰め込みがちだった」という吉田素文医学科長。「実際の患者の症状と、自分が学ぶ知識の関連性が最初から分かれば、学生は当事者意識をもって学べる」と狙いを話す。


国際医療福祉大ではシミュレーションセンターを活用した授業を行っている
 医学部の拠点となる成田キャンパス(千葉県成田市)には約5300平方メートルのシミュレーションセンターがあり、診察室や手術室、病室などを再現。大学内でシミュレーションを繰り返し、医療現場での臨床実習もスムーズに取り組める。

 同大学の医学教育統括センター長、赤津晴子教授は「21世紀型の医療教育を行う点も特徴」と強調。「医療現場では、チームでの連携がますます重要になる。現場に出る前に失敗を繰り返して学び、優秀なチームプレーヤーとして巣立ってほしい」と期待を寄せる。

 仙台駅から電車で約15分の仙台市宮城野区に真新しい建物が現れた。東北医科薬科大の3年生以上が過ごす福室キャンパスだ。16年に入学した1期生は3年生として眼下には穏やかな七北田川が広がる教室で医療を学んでいる。

■手厚い奨学金

 11年3月11日、東日本大震災で東北地方は大きな被害を受けた。廃業に追い込まれる医師もおり、東北地方の医師不足は拍車がかかる中、医学部新設の機運が高まり、政府は復興へ向けた特例として東北医薬大の医学部新設を承認した。

 そのため同大学は医師免許取得後も東北地方で働いてもらう取り組みを取り入れている。

 その一つが手厚い奨学金制度だ。1学年の定員100人のうち半数を超える55人を対象とし、6年間で3千万円程度を免除する。自己負担額は約400万円となり、国立大とほぼ同水準となるが、医師免許取得後、8~10年間は東北地方で勤務することが条件だ。

 私立大の医学部だと学費は高額だが、「幼い頃からへき地で働く医師に憧れていた」という3年生の中谷拓郎さん(22)が「奨学金制度が手厚く、金銭面の不安を取り除いてくれた」と同大学への入学動機を語る。

 このほか同大学は「地域医療ネットワーク」を構築。同ネットワークに属する東北地方の病院の協力を得て、入学初期から滞在型の実習などを行う。医学部生の6年間を通して同じ病院を訪問し、関連施設などでも実習を重ね、学生時代から地域医療に身近に接し、理解を深めてもらう。

070803.jpg

 災害医療の教育にも力を入れる。例えば1年次には被災地を訪れて震災後の現状を実際に感じる機会を設けた。3年生の島田佳林さん(22)は「初めて被災地を見て、ショックを受けたと同時に、現状を何とかしなければという問題意識を抱いた」と振り返る。

 同大学の福田寛医学部長は「東北の医療現場の問題点は震災が起きた7年前から変わっていない。復興に向けて人々が安心して暮らせるためには医師が不可欠。東北に定着する医師を育てていきたい」と地域の未来を支える医師の卵の育成に力を入れる。

◇  ◇  ◇

■揺れ続ける国の施策 人手不足や偏在顕著に

 医師数を増やすか、減らすか。政府の医師養成方針は戦後から今に至るまで模索が続く。40年近く凍結してきた医学部新設を相次いで認めた背景には、医師の高齢化による人手不足や都市部に医師が集中する偏在化の課題がある。

 高度経済成長期には、国民皆保険制度や年金増額で医療機関の利用者が増えた。73年には各都道府県に1つ以上の医学部を設けるよう促す「1県1医大構想」を閣議決定し、全国各地で新学部を次々と新設し、定員を大幅に増やした。

 「将来的に医師が過剰になる」との日本医師会などの声を受け、国が削減策へとかじを切ったのは82年。2003年には文部科学省が医学部の新設を禁止する告示を出した。

 2000年代に入り、医療現場から医師不足や地域医療の崩壊が指摘され、08年度から医学部の定員を増やす政策に転じた。ただ今回のような医学部新設について、文部科学省の担当者は「あくまで特例であり、凍結状態は変わらない」という。

(鬼頭めぐみ、松浦奈美)



https://www.sankei.com/economy/news/180702/prl1807020431-n1.html
7割の医師が「医師の働き方改革」は必要と回答。一方、8割の医師が“期待していない”
2018.7.2 16:52産経新聞

 株式会社エムステージ
「医師の働き方改革」への医師の本音を調査

 医師人材総合サービスを手掛け、「Dr.転職なび」「Dr.アルなび」を運営する株式会社エムステージ(東京都品川区、代表取締役社長:杉田 雄二)は、会員医師を対象に「医師の働き方改革」に関するアンケート調査を実施しました。

 ■ポイント

 医師の働き方改革は「非常に必要」「必要ではある」と回答した医師は72%。
一方、医師の働き方改革による労働環境への良い影響を「それほど期待していない」「全く期待していない」「内容を知らないので分からない」と回答した医師は79%。
現状の働き方には課題があるという認識がありながらも、現在検討中の「医師の働き方改革」には期待できないという考えが浮き彫りとなった。
残業については、「残業せずに帰宅したい」という否定的な意見が81%に及んだ。
政府が検討中の医師の残業上限規制への意見は、「特に困ることはない」が61%、「十分な診療ができなくなる」と回答した医師が39%であった。

 ■調査の背景
働き方改革関連法案に含まれる時間外労働の上限規制について、医師は「応召義務」などの特殊性から5年の適応猶予がもたれました。現在「医師の働き方改革に関する検討会」にて、規制の具体的な在り方や労働時間の短縮策を検討しています。そこで、株式会社エムステージでは「Dr.なび」の会員医師に対して、「医師の働き方改革」への意見と労働環境の現状についてアンケート調査を実施しました。

 ■調査結果
<1>「医師の働き方改革に関する検討会」自体を知らない医師が3割。
Q.厚生労働省が行っている「医師の働き方改革に関する検討会」をご存じですか?
[画像1: https://prtimes.jp/i/19504/24/resize/d19504-24-655049-0.jpg ]

 <2>医師の働き方改革は必要だと考える医師は7割超。一方で、医師の働き方改革に期待している医師は2割のみ。現状の働き方には課題があるという認識がありながらも、現在検討中の「医師の働き方改革」には期待できないという考えが浮き彫りに。
Q.「医師の働き方改革」は、日本の医療現場に必要だと思いますか?
[画像2: https://prtimes.jp/i/19504/24/resize/d19504-24-895669-1.jpg ]

 Q. 「医師の働き方改革」によって、現在のご勤務先の労働環境に良い影響があることを期待していますか?
[画像3: https://prtimes.jp/i/19504/24/resize/d19504-24-853582-2.jpg ]

 Q.上記問いの期待できるまたは期待できない点とその理由について、具体的にご記入ください。※自由記入
■「とても期待している」「まあ期待している」の回答者
・1人常勤のため、電話や夜間のコンサルもすでに減って来ている。以前のような理不尽な連絡も減った。

 ■「それほど期待していない」「全く期待していない」の回答者
・他職種のようにしっかり勤務時間を拘束する(他病院でも働けないなど)と、総医師数が不足すると思われる。
・休暇を取った際、業務を代理する医師数が増えるとも思われないので。
・患者さんの病状はコントロール出来ない。現場に立つ限り、仕事が忙しいとか、きついとか言える職業では無いと思います。
・病院、科ごとに異なるわけでお役所がつくった一律な基準を当てはめるのは困難。
・時間外労働が正当に評価されない可能性を懸念している。

 <3>8割を超える医師が、残業せずに帰宅したいと希望している。しかし、患者の状況などで難しい現実がある。
Q. 残業についてのご自身の考え方で、最も近いものはどれですか?
[画像4: https://prtimes.jp/i/19504/24/resize/d19504-24-503210-3.jpg ]

 <4>時間外労働の上限規制には賛否が分かれる。十分な診療ができず、医療ニーズを満たせなくなると考える医師も4分の1いる。
Q.5年後をめどに、医師の残業上限規制が適用される予定ですが、その際に困ると想定されることはありますか?
[画像5: https://prtimes.jp/i/19504/24/resize/d19504-24-514783-4.jpg ]

 ■株式会社エムステージの「Dr.転職なび」「Dr.アルなび」について

 「Dr.転職なび」:https://tenshoku.doctor-navi.jp/
 「Dr.アルなび」:https://arbeit.doctor-navi.jp/

 株式会社エムステージが運営する医師向け転職求人サイト、アルバイト求人サイト。会員医師数22,000人(2018年6月現在)。多様な働き方を推進し、医師の不足・過重労働などの課題解決を目指しています。日本全国の専任担当者が「医師が本当に欲しい情報」にこだわり、詳細な求人情報を収集。質の高い情報を提供することで、医師の求職を支援します。「Dr.アルなび」では、マイページ内で応募から勤務まで完結する独自システムを提供し、年間2万件のマッチングが成立しています。

 ■調査概要
「医師の働き方改革」に関するアンケート
集計期間:2018年5月23日(水)~2018年6月19日(火)
有効回答数:101名
調査対象:「Dr.なび」会員医師
調査方法:インターネット調査(会員医師へのメールマガジンにより回答フォームを送信)

 ※引用・転載時のお願い
本調査結果の引用・転載時には、「株式会社エムステージ」若しくは「Dr.なび」と弊社クレジットを明記ください。

 ■会社概要
商号 : 株式会社エムステージ
代表者 : 代表取締役 杉田 雄二
事業内容:
医師人材総合サービス事業(厚生労働大臣許可13-ュ-010928)
医療機関の経営支援事業
企業向け産業医サポート事業
企業向けヘルスケアマーケティング事業
メディア運営
設立 : 2003年5月9日
資本金 : 6,250万円
所在地 : 〒141ー6005 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower5階
URL : https://www.mstage-corp.jp/



https://mainichi.jp/articles/20180704/ddm/016/040/029000c
病床再編目指す 「削減前提」反発強く 対応決めた医療機関1%未満
毎日新聞2018年7月4日 東京朝刊

 病院ごとの役割を明確化し、全体で病床数を減らす「地域医療構想」がなかなか進まない。政府は、医療費などの社会保障費が膨らみ、医療従事者の人手不足も懸念される2025年を医療の効率化で乗り切ろうとするが、「削減ありき」のため地域の反発も大きい。【酒井雅浩】

25年の必要数推計
 「公立病院ですら地域の実情や政治に左右され、病床の再編は容易でない。将来の推計で余るからといって、民間病院に病床数削減の要請なんてできるのか」。ある自治体の担当者はため息をつく。

 地域医療構想は、都道府県が高齢化率や患者の傾向を踏まえ、25年の医療需要や病床数を推計、その上で、複数の市町村からなる2次医療圏ごとに16年度中に策定した。だが、構想に基づいた病床数の削減など対応が決まっている医療機関は17年度末現在、全国1万4000カ所のうち117カ所で、1%にも満たない。



https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14438/


地域医療への貢献 医師に評価された製薬会社は?求められるのは「連携支援」
2018/07/02 Answers News

地域医療に貢献していると思う製薬企業は?インテージグループでヘルスケア領域の市場調査を手がけるアンテリオが全国の医師1万6000人を対象にこんな調査を行いました。トップとなったのは武田薬品工業で、上位10社中8社が日本企業という結果に。製薬企業に期待する取り組みとしては、多くの医師が「地域連携支援」を挙げました。

地域貢献 評価トップは武田薬品 上位10社中8社が内資系
「地域の情報提供」「施設越えた勉強会」に期待
地域にフォーカス 企業側も体制整備

地域貢献 評価トップは武田薬品 上位10社中8社が内資系
アンテリオは6月27日、全国の医師に「地域医療に貢献していると思う製薬企業」を尋ねたWebアンケートの結果を発表しました。調査は今年2月に行われ、27診療科の医師1万6012人(病院勤務医1万2264人、開業医3748人)が回答しました。

調査の結果、最も多くの医師が地域医療に貢献していると思うと答えたのは武田薬品工業。2位は第一三共、3位は大塚製薬でした。上位10社のうち8社を内資系企業が占め、外資系からはファイザー(5位)とMSD(9位)がランクインしました。

アンテリオは「国内での長い活動、生活習慣病や認知症といった国の重点疾患に対する医薬品開発、市民に向けた啓発活動など、実際の医療現場での具体的な取り組みが総合的に評価された結果ではないか」と分析しています。

医師が評価する「地域医療に貢献している製薬会社」ランキング表。
  1位:武田薬品工業。
  2位:第一三共。
  3位:大塚製薬。
  4位:アステラス製薬。
  5位:ファイザー。
  6位:エーザイ。
  7位:田辺三菱製薬。
  8位:小野薬品工業。
  9位:MSD。
  10位:塩野義製薬。

広がる自治体との連携協定
トップとなった武田薬品は今年4月、国内の営業体制を再編し、全国13支店の下にある営業所を細分化して88から154に倍増。MRに医療経営士の資格取得を促しているほか、今年に入ってからは、地域包括ケアシステムの推進に向けて北海道旭川市、広島市、滋賀県と相次いで連携協定を結びました。

2位の第一三共や6位のエーザイも、認知症患者を支えるまちづくりに向けて自治体と連携協定を締結。3位の大塚製薬も今年3月時点で45都道府県と生活習慣病予防などを目指した連携協定を結んでいます。

「地域の情報提供」「施設越えた勉強会」に期待
同じアンケートで「地域医療について製薬企業に期待すること」(複数回答)を尋ねたところ、最も多くの医師が挙げたのが「医療従事者に向けた勉強会の実施」(39.4%)。次いで「地域における他施設の動向に関する情報提供」(34.8%)が多く、「医師会や他施設とタイアップした研究会の実施」(34.5%)、「地域における患者の特徴に関する情報提供」(30.2%)と続きました。地域の動向に関する情報提供や、医療従事者間の連携を促す取り組みに対するニーズが高いことがうかがえます。

大学病院・大学病院以外の病院・医院が回答した、「地域医療に関して製薬会社に期待すること(複数回答)」の棒グラフ。全体の1位:39.4パーセント、医療従事者に向けた勉強会の実施。2位:34.8パーセント、地域における他施設の動向に関する情報提供。3位:34.5パーセント、医師会や他施設とタイアップした研究会の実施。4位:30.2パーセント、地域における患者の特徴に関する情報提供。5位:25.4パーセント、疾患領域における幅広い情報共有。
070804.jpg

ただ、施設形態ごとに細かく見ていくと、それぞれ違ったニーズを持っていることが分かります。

それぞれ特徴的なところを挙げてみると、大学病院では「地域における患者の特徴に関する情報提供」を、大学病院以外の病院では「地域における他施設の動向に関する情報提供」を、診療所では「疾患領域における幅広い情報提供」を求める傾向にあります。病床の機能分化で施設の役割の見直しが急務となっている病院では他施設の動向に関心が高く、かかりつけ医機能を中心的に担う診療所では幅広い疾患に関する情報を求めていることがうかがえます。

地域にフォーカス 企業側も体制整備
国は団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、住み慣れた地域で医療・介護・予防・住居・生活支援などのサービスを包括的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。2016年度には、これを実現するために必要となる病床数などを盛り込んだ「地域医療構想」を都道府県が策定。今後、構想をもとに全国各地で地域医療提供体制の再編が進むことになります。

製薬企業側でもこれに対応するため、組織体制の整備が進んでいます。

エーザイは16年4月、営業の最前線を担う「地域統括部」をそれまでの35から70に倍増させ、上位組織として8つの「地域連携推進本部」を設置。中外製薬も17年4月、それまで11支店だった体制を、都道府県単位の活動を基本とする36支店に細分化し、武田薬品も18年4月に営業所を倍増する組織再編を行いました。営業部門とは別に、地域連携をサポートする組織を立ち上げる企業も少なくありません。

地域医療をめぐる環境が大きく変化し、地域の実情にあったきめ細やかな対応が求められる中、製薬企業も新たな価値の提案を模索しています。



http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20180701000058
地域包括ケア、「垣根」どう克服 京都で全国大会、事例報告
【 2018年07月01日 17時30分 】京都新聞

 高齢者が住み慣れた地域で療養生活を送ってもらう「地域包括ケア」推進へ、医療や介護、福祉の多職種連携を考えようと、医師と歯科医師、薬剤師でつくる「全国在宅医療医歯薬連合会」が5月下旬、京都市左京区の国立京都国際会館で全国大会を開いた。介護職や栄養士らも参加した大会では、京滋の医師が、全国有数の医療密集地と医療機関が一つしかない過疎地という対照的な事例を紹介しながら、在宅医療の現状や地域包括ケアの事例を紹介した。

■医療密集地では

 京都市は人口10万人あたりの医師数が政令指定都市トップ(2016年厚生労働省調査)で、下京西部医師会の下京区、南区エリアは15病院、126診療所が集まる。藤田祝子副会長は、医療密集地ならではの二つの「垣根」を課題に挙げ、取り組みを紹介した。

 医療間の垣根としては、大規模病院を核に在宅支援部門も持つ医療機関は地域包括ケアがグループ内で完結してしまうため、グループ外の開業医らにはケアの中身が見えず、「患者を診る上で不安がある」と問題提起した。その上で、病院の総合内科と地域の開業医がつながる場として、2カ月ごとの勉強会を4年間続けているとした。複数の医療機関を受診する患者の病歴や採血データ、内服薬の情報をインターネット上で共有する仕組みを導入したことも紹介した。

 医療と介護、福祉の垣根については、各分野の関係者が介護保険制度の開始前から交流を重ね、「顔の見える関係づくり」を目指してきた。ただ、患者の退院後の支援を検討する会議に医師の出席が少ないなど、「まだ垣根は低くない」と指摘。「医師が『聞きに来てくれたら』という姿勢ではなく、もっと現場に行くべき」と訴え、多職種連携に医師からの歩み寄りが必要とした。

■高齢化進む村

 南山城村の高齢化率は45%、高齢者に占める要介護認定者は22%と、ともに全国平均を大きく上回る。村内唯一の医療機関となる診療所を運営する相楽医師会の竹澤健理事は、「過疎地はサービスが行き渡りにくいと思われがちだが、『顔の見える関係』を大切に患者中心の地域包括ケアを実践している」と強調した。

 週4日、地区の集会所を使った出張診察と、歩いて行けない人には自宅を訪問して診療する。2週間で一巡し、出張診察は50人、訪問診療は70人を診る。介護事業所はわずか3カ所だが「医療・介護スタッフが少人数な分、連携はしっかりしている。いち早く状態を把握する上で目を配り合う住民間のつながりも生きる」とした。

 診療では「死」について話すよう心掛けているとして、「死の話をタブーにすべきではない」と訴えた。相楽医師会の調査では、どこで死にたいかや延命治療を望むかどうかについて、在宅療養患者の大半が明確な考えを持つにもかかわらず、家族と話し合った人は少なかったという。「家族と共有しないと希望通りにはなりにくい。医師として患者が口に出しやすい雰囲気づくりも大事」とした。

■先進地の取り組み

 地域包括ケアの先進地として、東近江市など2市2町の東近江医療圏で活動するNPO法人「三方よし研究会」の小串輝男代表理事が事例発表した。「医師一人に頼る医療は終わった。医療・介護をはじめとした多職種が共同し、患者に切れ目なく寄り添うことが大切」と呼び掛けた。

 月1回、症例について車座での意見交換を2007年から行っている。参加する職種は医師や看護師、歯科医師、保健師、薬剤師、理学療法士、ケアマネジャーら多岐にわたる。ここで築いた関係が、例えばリハビリ計画をつくり終えて患者の退院を待つといった好循環につながっていると説明した。

 「地域全体を一つの医療機関」ととらえているという。病状に応じて介護やかかりつけ医などが役割分担することで、患者を病院だけに集中させず、医療体制を守ることにもなる。小串氏は「年をとっても認知症やがんになっても、地域で安心して住み続けられることを目指して地域包括ケアを進めれば、それがまちづくりにもなる」とした。



http://www.medwatch.jp/?p=21290
地域医療構想の実現に向け、都道府県単位の調整会議を設置せよ―厚労省
2018年7月2日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 各都道府県において「都道府県単位の地域医療構想調整会議」を設置し、学識者を「地域医療構想アドバイザー」として推薦してほしい―。

 厚生労働省は6月22日に通知「地域医療構想調整会議の活性化に向けた方策について」を、6月26日に事務連絡「『地域医療構想アドバイザー』の推薦について」を発出し、都道府県にこういった点を要請しました。

調整会議メンバーに助言を行う地域医療構想アドバイザーの推薦を
 いわゆる団塊の世代が2025年にはすべて後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが飛躍的に増加していきます。この増大するニーズに的確に応え、効果的・効率的な医療・介護サービスを提供できる体制を再構築するために、例えば「地域医療構想の実現」が求められています。骨太方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)では、「個別の病院名・病床数を明らかにし、機能転換に向けた具体的対応方針を速やかに策定するため、2017・18年度の2年間程度で集中的な検討を促進する」旨が指示されました(関連記事はこちら)。

 病院・病床の機能転換は「調整会議の議論などを踏まえて、医療機関が自主的に進める」ことが基本です。このため調整会議の議論を活性化することが、早急に求められ、厚労省の「地域医療構想ワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、(1)都道府県単位の調整会議を設定する(2)都道府県主催の研修会を設ける(3)学識者を「地域医療構想アドバイザー」とし、調整会議を支援してもらう―といった方針が固められました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。

厚労省は、この方針を具体化し通知・事務連絡を行ったものです。

まず(1)の「都道府県単位の調整会議」は、▼各構想区域の調整会議の運用(協議事項や年間スケジュールなど)▼各構想区域の調整会議の進捗状況(具体的対応方針の合意状況、再編統合論議の状況など)▼各構想区域の調整会議が抱える課題解決(参考事例の共有など)▼病床機能報告等から得られるデータ分析(定量的基準など)▼構想区域を超えた広域での調整が必要な事項(高度急性期の提供体制など)—に関する事項を協議するために設置されます(関連記事はこちらとこちら)。

いわば「都道府県内の各調整会議が足並みを揃える」ための会議と言えるでしょう。したがって「各構想区域の調整会議の議長」が全員参加することが必要で、ほかに「診療に関する学識経験者の団体、その他の医療関係者」「医療保険者」などが参加することになります。もっとも、要職につく方々ばかりであり、日程調整等が難しくなることから、「既存の会議体などを活用し効率的に運用する」ことが可能です。
 
また(2)の「都道府県研修会」は、調整会議のメンバー等が地域医療構想の進め方について認識を共有するために行うものです。厚労省は定期的に都道府県の担当者や都道府県医師会・病院団体の関係者向けの研修会を開催しており、そこではワーキング等の議論の状況に関する情報提供、先進的事例の共有、グループワークなどが行われます(関連記事はこちら)。こうした研修を都道府県が、地域の関係者(調整会議のメンバーなど)向けに実施することになりますが、厚労省に講師派遣を求めることも可能です。
 
さらに(3)は、調整会議に参加し、助言等を行う「地域医療構想アドバイザー」を厚労省で養成するものです。都道府県から▼医療計画・地域医療構想を理解している▼医療政策・病院経営に関する知見を有する▼各種統計や病床機能報告などに基づいたアセスメントを行える▼都道府県医師会等の関係者と連携がとれる▼都道府県内に活動拠点を持つ―人材の推薦を受け、厚労省でアドバイザーとして選出し、研修の実施・データ提供などを行います。地域医療構想ワーキングでは、例えば「地元大学医学部の公衆衛生学研究者」などがアドバイザー候補としてあげられました(関連記事はこちら)。

各都道府県はアドバイザー候補者を7月27日までに、厚労省に宛てて推薦することになります(アドバイザーの任期は原則1年間)。
 
このほか厚労省は、今年度末(2018年3月31日)までに「すべての医療機関」について調整会議で協議を開始することを要請。まだ協議を開始していない医療機関については、2017年度の病床機能報告データ(6年後および2025年における各病棟の機能)を調整会議で共有し、協議を始めるよう指示していいます。
 


http://www.medwatch.jp/?p=21350
二次医療圏に固執せず、生活実態に即した圏域で医療・介護提供体制を再構築すべき―総務省
2018年7月5日|医療・介護行政全般 MedWatch

 自治体間の連携を深め、▼救急医療提供体制▼病院間連携▼在宅医療・介護連携―などを調整し、住民の生活実態に即した医療・介護提供体制を構築すべきである。また増大する「東京都の慢性期医療・介護ニーズ」に対応するため、近隣県を含めた「東京圏域」で医療・介護提供体制を考えなければいけない―。

 総務省の「自治体戦略2040構想研究会」が7月3日に、このような提言を盛り込んだ第2次報告をまとめました(総務省のサイトはこちらとこちら(概要版))。

総務省研究会の提言と地域医療構想、どう調整していくべきか
 我が国では高齢化と同時に「少子化」が進み、急速な人口減少社会に入っています。そうした中では、多くの自治体では「存続(消滅の危機)」「行政サービスの継続」「医療・介護提供体制の再構築」などさまざまな課題に直面しており、「自治体戦略2040構想研究会」(以下、研究会)は、「危機を乗り越えるための新たな施策」と「その施策を実現するための自治体行政の在り方」について議論してきました。

 今年(2018年)4月には第1次報告がまとめられ、例えば▼個々の自治体がすべての行政機能を持つのではなく、圏域単位あるいは圏域を超えて連携して都市機能を維持し、住民の生活を保障する▼都道府県と市町村の「二層化」を柔軟にする▼東京都では、医療・介護ニーズが急増するが、千葉・埼玉などを含め「東京圏域」でサービス提供体制を構築する―などの提言が行われました(総務省のサイトはこちら)。

今般の第2次報告では、こうした提言内容についてさらに議論を深めています。医療・介護に関連の深い事項をみると、次のような提言・提案がなされています。

(1)現在、都道府県の設定する「二次医療圏」内において地域医療が一定程度、完結できることとされているが、連携中核都市(相当の規模と中核性を備える「圏域の中心都市」が近隣の市町村と連携するもの)で▼救急医療▼圏域内の病院間連携▼在宅医療・介護連携―などを調整することで、住民の生活実態に即した医療・介護提供体制を構築できる

(2)東京都では、今後、急速に高齢化が進行する(団塊の世代が後期高齢者となりはじめる)ため、▼入院・介護需要の増加▼外来需要の減少―が生じるが、慢性期病床や介護施設等は23区の外(多摩地区や埼玉県、千葉県など)に依存している。東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で連携して、長期にわたる医療・介護提供体制を構築・運営していく必要がある

 まず(1)の「医療提供体制を考える圏域」については、現在は、上述のとおり二次医療圏がベースになっており、この中で「病床過剰となり医療費が過度に膨張しないように基準病床数を定める」「5疾病5事業および在宅医療提供を担う医療機関等を指定する」「地域医療構想を実現する」ことになっています。

 しかし、例えば5疾病5事業については、急性心筋梗塞など一刻を争う医療分野については「二次医療圏」単位で考える必要がありますが、がんなど比較的、時間に猶予のある医療分野では「より広域」(複数の二次医療圏単位など)で考えるべきとされています。

 さらに、例えば関東地方では「埼玉県や神奈川県の居住者が東京都の勤め先に通勤する」といった生活実態に合わせた医療提供体制を構築することも重要です。

今般の検討会の提言は、こうした点を踏まえた、現在の「医療計画」の在り方に一石を投じるものと言えそうです。
070805.jpg

連携中核都市の概要
070806.jpg

場合によっては県境を超えた、住民の生活実態に即した医療・介護提供圏域を考える必要がある
 
また(2)の東京都については、高齢化が急速に進む一方で、「地価が高いために、単価の低い慢性期病床や介護施設などの整備が難しい」という状況があります。今後も、この状況は変わらず、「増大する慢性期医療・介護ニーズにどう対応するか」が極めて深刻な課題であり、研究会は「より広域に、東京都単独ではなく、近隣県を交えた『東京圏域』で医療・介護提供体制を考えていくことが必要」と訴えているのです。
 
これらは、現在進められている「地域医療構想の実現」にも関係するテーマです。地域医療構想は、主に二次医療圏をベースとした地域医療構想調整区域ごとに、病院等の病床を高度急性期・急性期・回復期・慢性期に機能分化してくもので、研究会の「より広域な圏域で医療・介護提供体制の在り方を考えるべき」との今般の提言とは、若干方向が異なるようにも思われます。今後、医療・介護提供体制の再構築(地域医療構想の実現もこの一環)を考える上で、どのように議論していくのか(例えば、自治体の首長選挙では「公立病院の整備」などが公約に掲げられるケースも多く、自治体間で「急性期医療は●●地区の病院に集約して機能強化を図る」などの調整が極めて難しく、より広域での議論・調整はさらに難しさを増す)、大きな注目を集めそうです。


http://news.livedoor.com/article/detail/14965162/
なぜ東京の「名門病院」が赤字に陥るのか
2018年7月5日 9時15分 プレジデントオンライン

■経営危機が表面化し、「突然死」する病院
姿を消す病院が増えつつあることをご存じだろうか?

帝国データバンクの調査によれば、2017年、病院や診療所など、医療機関の倒産件数は25件だった。00年以降の累計が586件で、年平均にすると約32件。特別大きな数字には見えないが、倒産のデータが病院経営難の実態をすべて反映しているわけではない。それ以外にも、医療機関の休廃業、解散、身売りが激増している。

少し古い統計になるが、14年に休廃業・解散した医療機関は347件で、集計を始めた07年以降で最多の数字を記録した。

医療機関の中でも病院は経営が悪化しても、手遅れになるまで破綻の兆候が表れない組織である。外来や入院で日銭が稼げ、高い診療報酬を得ていた古きよき時代の莫大な蓄えがあるため、赤字が続いても資産の切り売りでしばらくは食いつなげるからだ。だが、赤字病院の延命にも限界がある。経営危機が急に表面化し、「突然死」する病院が相次ぐのも、時間の問題だろう。

■聖路加国際病院のような名門病院でも本業は赤字
数ある倒産予備軍の病院の中で、経営破綻の可能性が高いのが東京の総合病院だ。たとえば聖路加国際病院のような名門病院でも、本業は赤字で、不動産収入で何とか利益を出している。最近では、100年以上の歴史がある三井記念病院が債務超過に転落したことが明らかになった。三井グループをバックにした名門病院でもそうした経営状態なのだから、ほかは推して知るべしだろう。

この状況を不思議に思う人もいるかもしれない。人口の高齢化とともにニーズが高まる医療は、数少ない成長市場である。さらに首都圏という巨大市場に恵まれ、患者が集まりそうな東京の大病院は、いかにも儲かりそうだからだ。しかしそうした要因が利益に必ずしも結びつかない理由は、病院の収支構造の特殊性にある。

病院の主たる収入源は診療報酬である。ところが、公定価格である診療報酬は全国一律で、大都会だろうが地方の僻地だろうが、同じ治療内容であれば同じ金額だ。

病院は工場経営に似た側面がある。地方は人件費や土地代の固定費が安くあがって、利益を出しやすい一方、首都圏の病院は高コスト体質で不利になる。こうした背景もあって、最近では東北や九州などの病院グループが、地方の稼ぎを元手に東京に進出する事例も、目立つようになった。

■経営資源の選択と集中ができるのは専門病院に限られる
さらに、国家財政の悪化によって、診療報酬は抑制される傾向にある。小泉政権の構造改革以降、診療報酬の水準は約1割弱も下がった。17年末の予算編成で、診療報酬本体が0.55%引き上げられたが、焼け石に水の感は拭えない。消費税増税も、病院経営に大きな打撃を与える。医薬品などの仕入れに消費税を負担しても、それを患者には請求できないからである。

もっとも東京の病院は患者数が多いから、病床稼働率のアップといった経営改善策も考えられそうである。だがそうした手が打てるのは、経営資源の選択と集中ができる専門病院に限られる。

がん研有明病院、井上眼科病院、伊藤病院(甲状腺疾患)といった東京の専門病院は、マスコミが特集する「いい病院ランキング」にしばしば名前があがり、高収益を実現している。地方では仙台厚生病院が、心臓血管・呼吸器・消化器であれば救急患者は断らず、それ以外はカバーしないという、まさに「選択と集中」の方針で、支持を集めるようになった。総合病院は、小児科や産婦人科、救急といった稼働率が低い不採算部門があっても、簡単には廃止できない。青息吐息だ。

■大学病院は百貨店と同じ末路をたどる
東京の総合病院の中でも、もっとも倒産リスクが大きいのが私立大学病院である。なぜかといえば、経営が傾いて破綻しそうなときに、国公立大学や国公立病院とは違って、税金の注入といった公的支援を期待しにくいからだ。さらにここでも総花的な診療科目が足かせになる。

ほかの総合病院であれば、儲からない診療科を閉鎖するという「外科手術」も可能だが、大学病院は医学の教育機関という性格上、あらゆる診療科目を網羅しなければならない。さまざまな行政上、法制上の規制もあって、たとえ不採算の診療科であっても、簡単に看板を下ろせない。お荷物の診療科を抱えていると、強みのある診療科もつくりにくくなって、専門病院に患者を奪われるようになった。

首都圏の私立大学病院は、専門店との競争に敗れた百貨店と、同じ末路をたどっているのである。結果、診療報酬だけでは経営が立ち行かないため、高い学費で埋め合わせているのが現状だ。現に東京女子医科大学病院や日本医科大学病院は、財務諸表を見る限り、かなり危機的な状況である。

■病院倒産で真っ先に被害を被るのは地域住民
それでは、大学病院の経営を再建する手立てはないのだろうか。私は、大学病院を救済するなら、思いきった規制緩和が必要だと考えている。

大学病院は大学医学部の教育研究に必要な施設として位置づけられているが、大学が病院を手放すという方法もある。米国の医学部のように、医学生の研修はほかの病院と連携して実施すれば、支障はないはずだ。また、アジア圏からドクターや看護師を受け入れるのも有効な手段になるだろう。放射線科医であれば患者に接する機会はほとんどないから、言語の壁もない。日本人と同じ待遇でそれ以上に働いてくれれば、コストは下がる。

大学病院の倒産が現実のものになったとき、真っ先に被害を被るのは地域住民だ。かかりつけの診療所から大学病院を紹介してもらうといった、地域医療連携が途切れてしまうし、大学病院は地域経済の中核にもなっているので、周辺の商工業者に与えるダメージも甚大だ。大学病院には、高度急性期医療を必要としている患者も少なくない。受け皿となる医療機関にスムーズに移れるような取り組みが求められる。政府は、国有化も視野に入れた病院の破綻処理のスキームを、早急に整備すべきである。

ただしこうした議論は、なかなか活発にならないだろう。かつて北海道拓殖銀行が都市銀行として戦後初の破綻をしたとき、その衝撃があってから、ようやく政府は重い腰を上げて制度の整備に動くようになった。近い将来、大きな病院が破綻し、泣いている患者の映像がニュースにでも流れないと、誰も目を覚まさないような気がする。

■「いい病院」はどう選べばいいのか?
とはいえ、国の政策に期待するだけでは、私たちは病院倒産の被害を免れない。自分や家族の生命を安心して預ける病院を、どうやって選べばいいのか。それは病院の財務諸表をチェックすればいい。大学病院は現在、財務諸表を公開するようになっており、会計の知識があるビジネスパーソンであれば、これを活用しない手はない。

財務諸表は、よく「企業経営者の通信簿」といわれるが、それは病院経営者にとっても同じことだ。経営が健全な病院は、医療の質も高いと見て間違いない。利益が上がっていれば、人材や医療設備、医療施設への再投資も可能になる。逆にいえば、病院も「貧すれば鈍する」のである。

赤字続きの病院は、医師や看護師の人件費カットに走り、それが安全性の低下を招く。大学病院からの給与だけで生活できない医師は、アルバイトに精を出し、その結果、病院は「無医村」になる。近年、私立の大学病院で起きている医療事故を見ていると、起こるべくして起こったと感じる。

「医は算術ではない。金儲けを考える医者に、いい医療ができるのか」という反論が出るかもしれない。しかし、赤ひげ先生でも病院経営ができた時代は過去のこと。診療報酬が低水準の中、博愛主義を貫いていれば、病院経営はたちまち行き詰まる。私は経営を持続でき、地域住民に医療を安定的に提供できる病院こそ、真の「いい病院」だと考える。

----------

上 昌広(かみ・まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長・医師
1968年、兵庫県生まれ。93年、東京大学医学部卒。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。
----------

(医療ガバナンス研究所理事長・医師 上 昌広 構成=野澤正毅 撮影=的野弘路)



https://www.m3.com/news/iryoishin/612765
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
医師の時間外労働、「結論早まる可能性」厚労省・鈴木医務技監
第68回日病学会、「病床の集約」など中長期対応の検討も示唆

レポート 2018年7月2日 (月)配信大西裕康(m3.com編集部)

 医師の時間外労働規制の具体的なあり方に関する結論の取りまとめが、想定よりも早まる可能性が出てきた。厚生労働省医務技監の鈴木康裕氏が6月29日、金沢市内で開かれた第68回日本病院学会のシンポジウムで「来年の3月までに法令上の基準は決めなければならないが、それよりもかなり前に結論を出していただくことも含めて検討しなければならない可能性がある」との認識を示した。結論をまとめる時期が早まる理由としては、医師の時間外労働の上限規制を他の職種とは異なる形で特別に設けるために法律改正が必要になった場合、法案に関する与党との調整などに時間を要することを挙げた。

 医師の時間外労働については、政府が2017年3月28日に公表した「働き方改革実行計画」で、「医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る」との方針を記載。厚生労働省が「医師の働き方改革に関する検討会」(2017年8月2日に初会合)を設け、検討を進めてきた(同検討会での議論については『次回以降「本丸」の上限規制など議論』などを参照)。2018年2月27日に「中間的な論点整理」を公表後、議論はいったん中断していたが、同7月9日に会合を開き、議論を再開する。

まずは医師の残業上限を設定か
 鈴木氏は、現時点で「出口はどちらかになる」と想定している結論として、下記の2つを挙げた。

・医師1人1人の業務内容などを把握し、(業務か業務外かなどの)白黒を分けて時間を判断する
・病院はグレーゾーンが多いという前提で、医師の時間外労働時間の上限自体を他職種より増やす

 「個人的に前者(医師1人1人の把握)は現場に負担があると思っている」と実現性が乏しいとの認識を示した。ただ、「全ての科の先生について、残業時間の規制の例外扱いが必要ではない。また、同じ科でも年齢によって働き方が違うし、役職での職能も違う。自分が例外に当てはまるかどうか、それを手上げ方式とし、その人をきちんと管理する必要があるかもしれない」とも述べた。

 医師を対象に他職種を上回る時間外労働の上限を設ける可能性のある状況だが、鈴木氏は、「健康管理の面は譲れない」と説明。「これがないと国会でも審議に耐えられない。一定の時間以上、勤務せざるを得ない医師に対しては、産業医なりの健康管理がきちっと組み込まれていることが必要だ」と強調した。

「病床の集約」「医師が得意業務に専念できる環境整備」必要
 一方、私見と前置きした上で、「(働き方関連法施行から、時間外労働の上限規制の医師への適用が猶予される)5年プラスアルファの期間で、(医師の働き方改革が)全てクリアになるのは難しい」との認識も示した。「短期的な対応として来年3月までに地域医療に影響が出ないようにしたい」と前置きした上で、中長期的な対応として検討する課題に「病床の集約」と「医師が得意とする業務に専念できる環境整備」を挙げた。

 病床の集約については、「人口1000人当たり医師は諸外国と比べても変わらないが、病床100床当たりの医師は少ない。米国比では5分の1程度」と指摘。「これをある程度は改善し、少なくとも欧州水準にしないと、医師の忙しさは変わらない」との見方を示した。鈴木氏が当日のシンポジウムで示したOECDの資料では、病床100床当たり「臨床医師数」は米国が79.7人、フランス50.9人、ドイツ45.2人、イギリス92.0人。

 「医師が得意とする業務に専念できる環境整備」については、脳外科を例に挙げ、「日本は米国に比べて脳外科の医師数が人口当たりで大変多い。1人当たりの手術症例数は(米国が日本の)20倍。医療水準については、日本の方が優れていると思うが、外科医が本当に手術に注力できる環境が整っているからこそ」と述べた。環境整備の具体例としては、「手術をアシストするようなPA(physician assistant)のような職種、記録も口述するとタイプしてくれる人がいるなど」と挙げた。

第68回日病学会シンポジウム「医師の『働き方改革』はどうあるべきか」
・医師の時間外労働、「結論早まる可能性」
・労基署介入「労働時間の短縮のみ、センスがない」
・「“医療は特殊”では思考停止」、「女性支援は男性支援に」



http://univ-journal.jp/21552/
都道府県間の医師の流出入を過去20年にわたり全国推計 医療ガバナンス研究所
大学ジャーナルオンライン編集部 2018年7月6日 

地域医療調査
 特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所は、厚生労働省の公開資料などを用い、都道府県別の医師移動を推計した。その結果、医師勤務地選択には最大313%の都道府県格差があり、各地域の医学部出身者のうち石川県では68%、東京都でも13%の医師が他地域へ流出していることがわかった。

 1961年に10万人(人口10万人あたり約104人)だった日本の医師数は、2016年には32万人(人口10万人あたり約240人)まで増加。しかし医師不足は一部では依然として深刻で、都道府県間の医療資源格差は縮まっていない。
都道府県別に人口10万人あたりの医師数をみると、上位は徳島県(315.9 人)、京都府(314.9 人)、下位は埼玉県(160.1 人)、茨城県(180.4 人)となっている。

 日本では医師はほぼ自由に勤務地を選択できるが、医学部卒業後、医師がどの地域で勤務しているのか、これまで具体的な数字を出したデータはなく、医師の移動については不明なままだった。そこで、研究チームは、1995年から2014年の厚生労働省の公開データ※を分析し、都道府県別の医師養成数と実働医師数の差から見かけ上の医師の移動割合を推計した。

 調査の結果、医師の流出が最も多かったのは、卒後医師の68%が他県へと移動していた石川県。逆に流入が最も多かったのは卒後医師の245%が他県より移動していた千葉県だった。医師の流出は、石川県、島根県、高知県などに多く、流入は大都市近郊、千葉県、埼玉県、静岡県などで多かった。一方で、大都市である東京都は13%の医師が流出、愛知県、大阪府、福岡県では、7.7%~.8%の幅で医師が流入していた。

 医師の流入している都道府県には人口当たりの医学部の入学枠が少なく、流出している都道府県には医学部の入学枠が多い傾向にあることが分かった。これは、医学部入学枠数が多い都道府県にいる医師が、他の地域へと出て行きやすいと考えられる。東京都の場合、医学部が13校あり、人口当たりの医学部入学枠も比較的多いことから流出しているといえる。東京近郊の千葉県では、医師養成数の2倍以上の医師が他の都道府県から流入しているが、それでもなお人口10万人あたりの医師数は非常に少ない(千葉:180.4 人)。

 研究チームは、日本全国でみると医師の都道府県間の移動が医師偏在に与える影響は大きく、今後の医療政策を考える上で重要な視点の一つとなると指摘している。

※使用した公開データは、厚生労働省公開資料を用い、医師・歯科医師・薬剤師調査より都道府県ごとの医師数、各医学部別の医師国家試験合格者数より都道府県ごとの医師養成数を抽出。人口データは、住民基本台帳を元にした人口データを使用。

論文情報:【MedicineA model-based estimation of inter-prefectural migration of physicians within Japan and associated factors: A 20-year retrospective study



  1. 2018/07/08(日) 09:05:15|
  2. 未分類
  3. | コメント:0

7月1日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180626-OYTET50045/
医師不足の刑務所…93人の刑執行停止中、透析受けられないことを理由に
2018年6月27日読売新聞

07011_20180701095423221.jpg

 刑事事件で実刑判決が確定したのに、腎臓病の人工透析が刑務所で受けられないことを理由に、刑の執行が停止されている確定者が5月末現在で93人に上ることが、法務省への取材でわかった。医師不足に加え、機器を備える施設と受刑者の「ミスマッチ」も起きており、刑の執行に不公平感を生じさせかねない異例の刑事手続きが常態化している。

 2008年10月に開設された官民で運営する「島根あさひ社会復帰促進センター」(島根県浜田市)。15台の人工透析設備が設置され、治療が必要な受刑者30人を収容する予定だった。ところが、治療を受けた受刑者は11年の13人をピークに年々低下。16年11月に4人まで落ち込み、同センターは同年末、治療設備を廃止した。

 「誤算」が生じたのは、同センターが受け入れる収容者を「初犯で集団生活に適応できる模範囚」に限定したためだ。定員約2000人の受刑者を収容する同センターの収容棟の大半は個室になっており、テレビやベッドがあるが、窓に鉄格子はない。

 法務省の担当者は「入所条件に合致しつつ、人工透析治療が必要な受刑者が予想より少なく、設備の利用が伸びなかった」と話す。

 同省によると、全国69の刑務所や少年刑務所のうち、人工透析治療の機器があるのは9刑務所、63台。今年1月に全国最多の30台が設置された「東日本成人矯正医療センター」(東京都昭島市)が開所し、治療可能な受刑者数は大幅に増加した。それでも治療を受けている受刑者は5月末時点で全国で81人にとどまる。

 63台の機器は現在、緊急用の予備機を除きすべて稼働しているが、機器を扱える専門医は非常勤が多く、人手不足が続いている。東日本のセンターでは、1台で複数の受刑者が治療できるよう週3回の治療日を月、水、金と、火、木、土曜日の二つに分け、48人が治療を受けるが、小規模な施設では医師不足からこうした取り組みはできていない。

 刑事訴訟法では、実刑判決が確定した者が心神喪失の状態にある時は、執行を停止する。さらに刑の執行によって著しく健康を害する時や生命を保つことのできない恐れがある時も執行を停止できる。同省関係者によると、透析治療以外で執行停止が認められるのは、再審が開始されたり、脳疾患などで重体となって入院が長期化したりした場合など「極めてまれなケース」に限られるという。

 透析治療を理由に執行が停止された場合、自宅などから病院に通い、治療可能な刑務所に空きが出れば順次収容される。その間は刑期に算入されず、警察などの監視下には置かれない。

 同省によると、執行停止中の93人の中に殺人などの凶悪犯はいないが、再犯者は少なくないとみられる。中には執行停止中に再び罪を犯しながら、透析治療を理由に刑の執行が再び停止されている者もいるという。

 同省幹部の一人は「再犯防止や刑の執行の公平性を考えれば重大な問題だが、医師や予算を確保するにも、『なぜ罪を犯した者に予算を割くのか』という意見は根強く、解消のメドは立っていない」と明かした。

           ◇

【人工透析】  機能が低下した腎臓の代わりに機器を使うことで、血液中の老廃物や余分な水分を取り除く治療方法。治療は週に3回、1回あたり数時間を要する。人工透析を受ける患者は年々増え続け、2016年の患者数は全国で約33万人。



http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20180629/CK2018062902000033.html
長良医療の産科医5人移籍 県総合センターへ、連携で充実図る
中日新聞 岐阜 2018年6月29日

 医師不足に悩む県総合医療センター(岐阜市野一色)が、国立病院機構が運営する長良医療センター(同市長良)の産科医八人のうち五人の移籍を受け入れる見通しになったことが、関係者への取材で分かった。同じ地域内で中核的な役割を担う両病院が連携、周産期医療体制の充実を図る。

 産前産後の母子を診療する周産期医療の医師不足は全国的に深刻さを増す。両病院は県と医師の人事権を持つ岐阜大医学部を交え、病院間の役割分担や連携のあり方を議論してきた。

 複数の関係者によると、長良医療センターは二十八日、院内会議で幹部らに方針を伝えた。県総合医療センターも近く、院内で受け入れを公表する。移籍時期は来年一月と三月の二段階を想定しているという。

 長良医療センターは、胎内の子どもを診断、治療する胎児診療で広く知られ、県内外から患者を集めている。産科医八人の大半が移ることになるが、同院幹部は「新たに医師を確保し、産科は維持する」と説明している。

 県総合医療センターは独立行政法人の運営で、リスクの高い妊婦や新生児を診療する総合周産期母子医療センターに県内で唯一指定されている。分娩(ぶんべん)を担う常勤の産婦人科医は六人。同院の関係者は「今の人手ではいっぱいいっぱい。医師が増えることで、若い医師の教育もしやすくなる」と歓迎する。

 同大教授の一人は「医師に余裕ができるようになれば、医師不足が深刻な県内の他地域にも派遣できるようになる」と話している。

◆慢性的な医師不足
 県によると、県内の分娩(ぶんべん)取り扱い施設は二〇一七年が四十六カ所で、一〇年(六十四カ所)に比べ三割減った。一方、産婦人科・産科医師は一六年が百七十三人で、この二十年は微増減を繰り返し、慢性的な医師不足の状況が続いている。

 加えて、県内のある産科医師は「出産年齢の上昇などでリスクの高いお産が増えた」と厳しい環境を明かす。県内の四十歳以上の出生数は一五年に六百七十五件で十年間で二・三倍に。リスクのある妊娠二十八週未満の分娩数は一四~一六年で二・二倍に増えた。

 名古屋市立大病院の産婦人科医師、尾崎康彦教授は、産科医師不足の背景には過酷な労働状況があると指摘。「二十四時間体制でお産に備える必要がある上、医療訴訟が比較的多い。そのイメージから産科医師を志望する若手が減り、悪循環を生んでいる」と話す。同院では当直の翌日は昼で帰るなど、働き方改革に取り組んでいるという。

 県周産期医療協議会の冨田栄一会長は「医師不足に一つの特効薬はなく、地域に応じた連携を今後も県全体で考えていく必要がある。労働環境の改善も、同時に進めていかなければならない」と話している。



https://mainichi.jp/articles/20180627/ddl/k08/040/055000c
県立中央病院
昨年度の時間外労働 3診療科で増加 「医師不足 運用では限界」 /茨城

毎日新聞2018年6月27日 地方版 茨城県

 県立中央病院(笠間市鯉淵)で昨年度、勤務医の時間外労働が過労死ライン(月80時間)を超えた問題で、特に長時間労働が常態化している整形外科など3診療科の年間時間外労働が一昨年度より増加していたことが分かった。同病院では過労死ラインを超えた場合、業務量を減らすなど改善するよう診療科に求めているが、救急対応などは削減が難しく、関係者は「絶対的に医師数が足りない。現場の運用改善だけでは限界がある」と漏らす。【加藤栄】

 毎日新聞が情報公開請求で入手した2016、17年度の時間外労働に関する記録文書を比較して判明した。

 病院全体の勤務医数は1人減って130人に、年間の時間外労働(平均)は3時間増えて453時間だった。

 同病院の約30診療科のうち、17年度に過労死ラインを超える月があった勤務医23人の大半(13人)を占めた整形外科▽産婦人科▽循環器内科▽麻酔科--の4診療科で見ると、合計の勤務医数は37人で増減はなかった。

 一方、年間の時間外労働(平均)を見ると、整形外科700時間(前年度比75時間増)▽産婦人科502時間(同34時間減)▽循環器内科629時間(同44時間増)▽麻酔科502時間(同16時間増)--だった。

 同病院では、勤務医の時間外労働が過労死ラインを超えた場合、院長名の警告文書を各診療科の部長に出し、患者への説明など業務量を削減するよう改善を求めているという。しかし同病院は2次救急指定病院で、交通事故や出産などの、緊急手術が必要な急患も多い。こうした事態を専門とする整形外科や産婦人科などは、交代要員がいない場合、時間外勤務として対応することも多いという。また循環器内科は手術後の急変への警戒に時間を取られるという。

 関係者は「絶対的に医師が不足する中、忙しい診療科の時間外労働を削減するのはさらに難しい」と漏らす。

 大井川和彦知事は昨年8月、医師不足対策などを公約に初当選。今年2月には「県医師不足緊急対策行動宣言」を発表。今年度当初予算では22億7600万円を計上した。

 この問題について、大井川知事は今月19日の定例記者会見で、「医師数が不足している」と認めたうえで、「(患者への説明などの業務を他の職種に任せる)タスク・シフティングや振り替え休日の促進などを組み合わせ、労働時間の削減に向けた取り組みを進めていきたい」と話している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/610089
シリーズ  大学医学部「地域枠」の今
「地域枠の入学生、学力低い」は誤解 - 小林誠一郎・AJMC委員会委員長に聞く◆Vol.1
調査結果公表、国試現役合格率「一般枠」より高く

インタビュー 2018年7月1日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議の「地域における医師養成の在り方に関する調査実施委員会」が、文部科学省の委託研究として実施した「地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告書」がこのほど公表された。
 医師不足対策として2008年度から増加した「地域枠」については、「学力が低いのではないか」「奨学金を返還して、卒後の義務履行を果たさないケースがかなりの数に上るのではないか」などの指摘もある。しかし、地域枠を有する大学医学部・医科大学を対象に実施した調査では、これらの懸念を払拭する結果が示された。同委員会委員長を務める、岩手医科大学副学長の小林誠一郎氏に、調査概要をお聞きした(2018年6月11日にインタビュー。全2回の連載。報告書は全国医学部長病院長会議のホームページ)。

――まずこの研究を実施した経緯をお教えください。

 本研究は、全国医学部長病院長会議が文部科学省から委託を受け、2015年度から3年間の事業としてスタートしました。2008年度から始まった地域枠の入学制度について、実効性はどの程度あるのか、どんな問題点があり、どのように改善につなげればいいかなどを明らかにするのが目的です。3カ年継続して全国の大学医学部を対象に調査を実施してきました。2017年度の対象は77大学(産業医科大学、防衛医科大学校、自治医科大学、新設医学部を除く)で、うち地域枠を有する68大学から得られたデータを集計しました。

 調査内容は大きく2つに分かれます。一つは地域枠学生の卒前・卒後の状況をいくつかの指標で客観的数値として評価するもの(地域枠学生の転帰調査)で、実効性に関する客観的な数値指標としては、学習成果、つまり入学後6年間で卒業した学生の割合である「ストレート卒業率」、「医師国家試験の現役合格率」のほか、奨学金返還などを行い、義務履行から離れる「辞退率」などを調べています。もう一つは、地域枠制度の問題点・改善点や支援体制などに関する調査です。両者の集計結果は、奨学金や義務履行の有無、選抜時期などでグループ分けした制度区分別(下図)、大学の設立別、中大都市群と小都市群別などで比較しています。

調査対象とした地域枠の制度区分
A:奨学金を支給する制度
 A1:別枠で入学選抜を実施し、卒後一定の年数の義務履行を課すもの
 A2:入学後選抜し、卒後一定の年数の義務履行を課すもの
B:奨学金を支給しない制度
 B1:別枠で入学選抜し、卒後、一定の年数の義務履行を課すもの
 B2:別枠で入学選抜をするが、卒後義務履行年数が明示されていないもの

――学習成果の結果はいかがでしょうか。「地域枠の学生は学力が低い」との指摘もありますが。

 2008年度の地域枠の入学者は、ストレートに行けば2013年度卒業。本研究では、2016年度卒業までの4年度分を調べています。年度による変動はありますが、地域枠の入学者の「ストレート卒業率」は、B1の2016年度以外は、全ての制度区分で一般枠を上回っていました。また、国試の現役合格率は、全ての制度区分で、地域枠卒業生の方が、一般枠卒業生よりも高いという結果でした。

07012_201807010954242b2.jpg
(出典:地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告)
07013_201807010954250c1.jpg
(出典:地域枠入学制度と地域医療支援センターの実情に関する調査報告)

 地域枠に対しては、「入試の合格基準が低いので、学力が低い学生が入学してくるのではないか」との指摘もありますが、現時点ではその懸念は払拭されていると思います。入学後の学習成果で見ると、何ら問題はなく、一般枠の学生よりも優れている結果になっています。

――地域枠の合格基準は、一般枠よりも低く設定しているのでしょうか。

 その点については本研究では調べていませんが、各大学の多くの教員は、「入試の成績と在学中の成績は、必ずしもパラレルではない」ことを実感しています。このため本研究では、入学後の学習成果として「ストレート卒業率」などを指標としました。

――「辞退率」はいかがでしょうか。

 奨学金支給枠に関する大学への調査では、2008年度以降の地域枠の卒業生が辞退するのは、医学部6年生が最も多く、次いで卒後1年目であることが明らかになっています。これは、キャリア形成に対する考え方がある程度、はっきりしてくる時期に当たり、「義務履行とキャリア形成が合致しない、自分が希望する専攻と齟齬が生じた」などが理由として考えられます。本研究では、この時期を過ぎた卒後2~4年目の医師の「辞退率」を調べました。

 この辞退率を見ると、地域枠全体では4.6%(入学生1554人中、辞退者72人)、制度区分別では、義務年限の縛りが厳しい奨学金支給枠のA区分で6.1%〔A1が最も高く6.5%(入学生925人中、辞退者60人)、A2は4.2%(入学生168人中、辞退者7人)〕、奨学金を支給しないB1が1.1%(入学生461人中、辞退者5人)でした(B2は義務履行が明確ではないので除外)。B1が低いのは、初期研修あるいは専門研修1、2年目までなどと義務年限が短く、自由度が高いことが一因として考えられます。

 一方、地域枠制度発足以前の都道府県医師養成奨学金を受けた卒業生(2004年度から2013年度の卒業生。2008年度以降に入学した地域枠の卒業生を原則除外)に関する都道府県への調査では、初期臨床研修が終わった卒後3年目くらいに辞退のピークが来ています。これらの卒業生については、最大卒後10年目までの「辞退率」を調査しました。その結果、卒業生全体では18.7%で、卒後4年目時点までに限ると14.6%でした。経過年数が異なるため単純な比較はできませんが、先にお話した現行制度の6.1%に比べかなり高い辞退率となっています。

 奨学金支給枠に関して、両者をマッチさせて奨学金支給枠を比較するために、卒後2~4年目の各時点での「辞退率」も比較しています。大学調査では、2年目まで5.5%、3年目まで7.8%、4年目まで5.0%。これに対し、地域枠制度発足以前の都道府県医師養成奨学金を受けた卒業生では、2年目まで6.5%、3年目まで12.4%、4年目まで15.2%で、大学調査の方が現時点では低いという結果でした。ただし、大学調査での4年目までの辞退率が低いのは、まだ母数が少ないことによる可能性があると思われます。



https://www.m3.com/news/iryoishin/612492
「医師と個別に契約書」「専門医も総合的なマインドを」
第68回日病学会、特別シンポジウムで医療団体トップが議論

レポート 2018年6月30日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 金沢市で開催された第68回日本病院学会で6月28日、「今後の医療・介護の行方~地域・包括医療・ケアを中心に~」をテーマに、特別シンポジウムが開かれ、医療関係団体のトップら4人が登壇。地域医療・介護の提供体制そのものよりも議論になったのは、その担い手である医師の働き方や求められる医師像だ。

 働き方改革関連法案が今通常国会で成立、医師の働き方改革は急務。地域包括ケアシステムの構築に当たっては、その担い手、また専門分化した医療を補うため総合診療的なマインドを持つ医師が求められている。昨今の医療情勢を反映した議論になった。

 特別シンポジウムに登壇したのは、日本医師会会長の横倉義武氏、日本病院会会長の相澤孝夫氏、全日本病院協会会長の猪口雄二氏、地域包括ケア病棟協会会長の仲井培雄氏。司会は、全国自治体病院協議会の前会長で、赤穗市民病院名誉院長の邉見公雄氏が務めた。

 相澤氏は、自身が理事長を務める社会医療法人財団慈泉会の相澤病院(長野県松本市)では、医師一人一人と業務内容と給与を記載した契約書を交わしていることを紹介した。「『先生には、これだけの仕事をやってもらいます。だから給与はこの額です』と提示している。こうしたことをやらないと、多分もたない」と相澤氏は説明。医師によって得意分野、可能な業務内容や業務量は異なる。ワーク・ライフ・バランスについての考え方も違う。個々の医師に対して、あらかじめ業務内容や業務量を規定し、それに応じた給与を規定することにより、皆が納得感を持って仕事ができる体制を構築するという発想だ。「排除するのではなく、皆を巻き込んで、うまく人材を活用することが必要」(相澤氏)。

 横倉氏は、「労働基準法通りにやると、地域医療は崩壊してしまう。『医療、医師は特別』とは言わないが、医療の現状を理解してもらい、どこまで医師の働き方改革ができるかを検討していく必要がある」とコメント。日医主催で、四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議などが参加する「医師の働き方検討会議」の報告書がまとまったことを紹介。「若い人の意見も取り入れた。労働法制の方にも理解いただける内容」(横倉氏)。医師の働き方改革の基本的考えとして、一つは医師と医療の特殊性を洗い出すこと、もう一つは医師の健康を確保するためには何が必要かを考え、各医療機関での実施を徹底することを挙げ、横倉氏は「医師の自己研鑽が労働に当たるかどうか、宿日直の在り方、オンコールの労働性などの議論が今後、必要になってくる」と述べた。

 さらに横倉氏は、「国民の理解を得る必要がある」とも指摘した。「国民皆保険下では、いつでも、どこでも、誰でも受診できる。このアクセスの良さを現状のまま維持することができるか、国民に考えてもらうことが必要」と述べた。

 「総合医」の養成、位置付けが今後の課題

 新専門医制度において、総合診療専門医は19番目の基本領域の専門医として位置付けられた。一方、一定のキャリアを積んだ医師を対象に、日医はかかりつけ医機能研修制度、日本病院会では病院総合医の研修事業、全日本病院協会では「総合医育成事業」をそれぞれ行っている(『病院総合医「便利屋でなくリスペクトされる存在目指す」』などを参照)。邉見氏は、総合診療的なマインドを持つ医師が、地域包括ケアの中心的な担い手となるとした。

 横倉氏は、「総合診療医が、今後、どうなっていくかのかが大きな課題」と提起した。「内科、外科などの基本診療科に所属することが、医師のキャリアアップの中で大きなウエイトを占めている。われわれはかかりつけ医の重要性を主張している。知識や技術の習得に偏ることなく、専門医として活躍する医師に、かかりつけ医のマインド、全人的な医療を行うマインドを持ってもらうことが必要」。横倉氏は「米国のホスピタリストの現状をもう一度、把握しておく必要がある」とも指摘。

 猪口氏は、全日病でもこの7月から、「総合医育成事業」をスタートさせることを紹介。「諸外国を見ると、米国なら家庭医、イギリスならGP(General Practitioner)が診ているが、しかし、日本では相変わらず、縦割りの専門医が診る体制であり、これではいつまで経っても医師不足。横串を刺す医師をいかに増やすかが重要」と述べ、各団体がいろいろいな方法でトライしなら、総合診療的なマインドを持つ医師が増えることで、「日本の医療が変わってくるのではないか」と見通した。猪口氏は、医師需給や偏在対策の検討に当たって、専門医と総合医の比率を考えることも必要だとした。

 「国民皆保険を世界文化遺産にしたかった」

 司会の邉見氏は、「国民皆保険を世界文化遺産にしたかった」と述べ、今後の皆保険の行方についても演者に問いかけた。

 仲井氏は、「ハイクオリティー、ローコスト、フリーアクセス」の全てを維持するのは無理との考えを示した。自身の経験を踏まえ、原則60日以内の入院となっている地域包括ケア病棟について、早期退院の努力をして30日など短期間で退院させた方が、60日の入院よりも収益性が低いなどの問題点を指摘、診療報酬体系に改善の余地があることを示唆した。

 猪口氏は、厚生労働省が今年5月にまとめた「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」で、経済成長の「成長実現ケース」の試算では、「名目経済成長率3%以上」という数値が用いられていることを踏まえ、「GDPが増加し、国が豊かになれば、皆保険を維持できる。医療や介護を一つの産業として、日本を豊かにしていくことが必要」と提起した。

 相澤氏は、「日本の医療には、まだまだムダがたくさんあると思う」と述べ、次のようにコメント。「いい医療とは何か、質の高い医療とは何か、それを担保するために診療報酬があるはずだが、その視点が日本では抜けているのではないか。GDPの3%成長は極めて難しいと思う。1%台になった時でも、体を張ってでも、医療の質を守らなければいけない」。

 横倉氏は、「国民皆保険を維持するためには、医療の質と財源確保の両面から考えていかなければいけない。地域別の診療報酬、医療版マクロ経済スライド制などの議論に当たって、国民の健康を守るために、われわれが努力していることを、国民に、また国民の代表者である議員に理解してもらうことが必要」と述べ、皆保険の「改革」という言葉には副反応が強く出るとし、微調整を繰り返しながら制度を変えていくことが求められるとした。



https://diamond.jp/articles/-/172986
医療の問題は「誰が」悪いのか
医療経済の嘘(3/3)

森田 洋之:医師、南日本ヘルスリサーチラボ代表。
2018.6.28 ダイヤモンドオンライン

病床の削減、医師不足、医療費の高騰など、医療や医療費に関する報道が後を絶たない。
そうしたなかで、かつて財政破綻後の夕張に医師として赴任していた森田医師が、夕張および全国のデータ、さらに医療経済学的知見から見えてきたのは、医療経済の拡大が必ずしも健康と比例しない現実であった。最近、『医療経済の嘘』(ポプラ社)も上梓した森田医師が提唱する医療と経済のあるべき関係とは。最終回では医療経済の問題を解決する方法を提唱します(医師、森田洋之)

医療費はなぜ高いのか

 現在の高齢者は、1週間の抗生剤投与や外科手術でピシャッと治るとは言い難い「慢性疾患」を一つひとつ獲得しながら歳を重ね、長い療養の後にやがて死を迎えます。
その結果、日本の医療費は膨張を続けています。
 いくらなんでもこれでは国の財政がもたない、ということで、今から40年ほど前の1980年代に「医療費亡国論」が唱えられ、そのあたりから、「医療費上昇の要因」として「医師数」や「診療報酬」が問題視されるようになります。
 結果として医師数も診療報酬も、国家政策によって制限されるようになりました。
 国の立場からすると
  「医療費が高騰するので診療報酬を抑える」
 は正論ですが、銀行から多額の借金をして病院を建て、借金を返しながらギリギリの経営をしている民間病院の立場から考えるとそれは容認しかねる話です。
 とはいえ、それでも報酬は抑えられる。では病院はどうしたらよいでしょう?
 診療報酬(≒診療一回に対する収入)が目減りするなら、患者を多く集めて診療回数を稼ぐしかありません。商売の世界でいう、いわゆる「薄利多売」の方法論です。医療業界は、業界全体でその方向に舵を切らざるを得なくなったわけです。
 こんなことが日本中で繰り返されるようになって数十年、知らない間に日本は、
  ・病床数世界一
  ・外来受診数世界2位
  ・CT・MRIも保有台数も世界一
 こうして現在の「国際的に見て異次元レベルの薄利多売の世界」が形成されていった、というのが本当のところなのではないでしょうか。
 海外から見て異次元レベルの医療の量、しかも医師は少ない、そりゃ医師不足にもなるでしょう。では、医師を増やそう→そしたらまた医療の量が増えちゃった。どうしてそうなってしまうのか、その原理を考えると「医療市場の失敗」に行き着くのです。

医療の問題は「誰が」悪いのか

 こう説明すると、
  「命を守る医療なのに、こんないい加減なことでいいのか!」
 とお怒りになられる気持ちもよくわかります。
 「どうしてこんなことになってるんだ! 誰が悪いんだ! どの業界があくどく儲けてるんだ!」
 と犯人探しをしたくなりますよね。
 でも、こうした「社会のモヤモヤした問題」を誰かのせいにした時点で「思考停止」に陥るような気がします。
 悪者を見つけて叩くと気持ちいいですけどね、でもその気持ちは問題の本質から目をそむける結果にもなりかねません。
 たしかに、医療側も広告や宣伝などで必要以上に需要を喚起したり、情報の非対称性をうまく使って医療供給を増やしたり、反省すべき点も多々あります。
 しかし、病院の経営者も雇用している医師や看護師・薬剤師にリハビリのPT(理学療法士)・ОT(作業療法士)、彼らとその家族の生活を背負っていて必死なのです。
 それぞれに事情があるなかで犯人探しをして、誰かを悪者にして溜飲を下げる、などということにもましてもっと大事な、本質的なことがあるように思います。

 そもそも論で言えば、国民が、
 「医療も市場に任せていれば大丈夫」
 と思っていることこそが、つまりあなたが、
 「病院がいっぱいあっても競争に負けたところが淘汰されていく」
 という幻想を抱いていること、また、
 「病院のことや病気のことはよくわからないから先生にお任せしよう」
 という当事者意識の欠如こそが、問題の本質なのかもしれません。
 つまり、「病院が悪い」「◯◯が悪い」と誰かのせいにして終わり、という話ではなく、
 「薬を飲む前に、いまの生活習慣で治すべきところはないか」
 とか、
 「CTやMRIをただただ、ありがたがって、大きな病院に通ったりしてはいないか」
 とか、
 「自分に家族に、本当に必要な医療ってなに」
 とか、国民全員が、当事者意識を持って、ゼロベースで考えてみることが大事なんじゃないかな、と思うのです。
 「自分や家族に本当に必要な医療の量」がわかって、初めて「地域に必要な医療の量」を知ることができる。
 そこから始まらないことには、
 我々はかけがえのない医療資源を使い果たしながら、どこまでも病院ばかりを求めてしまうでしょう。
 もちろん、例えば若い方の大病や怪我など、緊急の処置や専門的な手術が必要な場合などは躊躇なく救急車や総合病院を使うべきです。

 私も20代の頃、盲腸を緊急手術してもらった命をとりとめました。そうした急性期医療の部分は確実に確保されていなければならない(とはいえ、現状のように全国津々浦々にそうした病院が必要なのか、もっと集約化して全ての疾患・全ての救急を受けられる病院が必要なのではないか、という部分は議論の余地があると思います)。
 それは間違いないのですが、実は今の医療現場における患者の多くは高齢の方々で、しかも対象疾患の多くは慢性疾患なのです。
 「うちのお爺ちゃん・お婆ちゃんに必要な医療・介護って何なのだろう?」
 ということを、家族で、みんなで、本気で考えて、それでもやはり専門家の意見が聞きたい、そのときにはぜひお近くのお医者さん(できれば専門医ではなく家庭医)に相談してください。
 本当の家庭医なら、あなたやご家族に、収益重視でなく、文字通りの「過剰でも不足でもない医療」をアドバイスしてくれると思います。

 これからの地域の医師(家庭医・かかりつけ医)の存在意義はそこにこそあるのではないでしょうか(ただ、本当の意味で患者中心の医療を実践してくれる家庭医・かかりつけ医が地域に十分そろっているかと言われれば、現時点ではまだまだそうではないと思いますので、ここは期待を込めての発言でもあります)。
 私は現場の患者さんや地域の方々の声をたくさんお届けしていますが、それは医師として、
 「地域の方々の良き相談相手」
 「わかりにくい医療の世界の翻訳家」
 でありたいと強く願っているからです。

森田 洋之(もりた・ひろゆき) / 医師、南日本ヘルスリサーチラボ代表
1971年横浜生まれ、一橋大学経済学部卒業後、宮崎医科大学医学部入学。宮崎県内で研修を修了し、2009年より北海道夕張市立診療所に勤務。同診療所所長を経て、現在は鹿児島県で研究・執筆・診療を中心に活動している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/612179
シリーズ 医師の働き方改革とキャリア
「真の医師の働き方改革とは何か」、武田厚労省医政局長
第68回日病学会、「医師の特殊性、健康管理、地域医療への影響」を勘案

レポート 2018年6月28日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省医政局長の武田俊彦氏は6月28日、金沢市で開催された第68回日本病院学会で「将来を見据えた医療提供体制の構築に向けて」をテーマに、特別講演した。「医師の働き方をどのように規律すれば、真の『働き方改革』になるのか」と問いかけ、「単に労働時間を短くする」のではなく、医師という職業の特殊性、医師の健康管理、地域医療への影響などを総合的に勘案して、検討していく必要性を強調した。

 「結局、今の働き方をある程度、維持できる、認める形での規制をしなければいけない一方、どのような統計データを取っても、今の医師の働き方は圧倒的に長時間労働であるのも事実。地域医療を守りながら、これから医師を目指す若手のことも念頭に置き、健康確保の方策について、われわれ医政局として医療行政の一環として考えていかなければいけない。また、たくさん働いている医師には、それに応じた賃金が支払われることも必要」(武田氏)

 さらに医師不足問題について、武田氏は「マクロにおいては解消されつつある」と述べ、医師偏在対策を強力に進めていくことが求められるとした。一方で、医学部定員の問題をはじめ、医師需給については、医師の働き方改革が関係してくることから、この7月9日から厚労省の「医師の働き⽅改⾰に関する検討会」を再開、当初の予定通り2019年3月末までには結論を得る方針を説明した。同検討会は、今年2月27日に「中間的な論点整理」を行った後に休会していた。厚労省としても今後、議論のたたき台を出す予定だという。

 武田氏は、「医師の特殊性」としてよく指摘されるものとして、
(1)医師の特性・社会的要請に関するもの(人の生命を扱う公共サービスであるなど)、
(2)医師の供給面に関するもの(医師養成には長時間を要する、業務独占など)、
(3)医師の職業倫理に関するもの(患者を最優先に考えるなど)、
(4)使用者との関係に関するもの(診療方針は、医学的判断によって担当医師・チームが立てるなど)――を挙げた。

 医師以外の専門職として、大学教授、民間組織の研究員、弁護士、新聞記者、本社の企画職(ホワイトカラー)、管理職、ディーラー・アナリストを挙げ、「いずれも何らかの労働時間規制がある。なぜここに医師が入ってこなかったのか。それは医師自身が自分を労働者として認定していなかったという面があるだろう。医師の働き方改革は、取り残された問題であり、今回はしっかりとした議論をすることが必要」(武田氏)。

 その上で、武田氏は、「医師の働き⽅改⾰に関する検討会」のこれまでの議論を踏まえ、「私見」と断り、(1)労働法の観点から、医師の働き方をどのように規律すれば、真の『働き方改革』になるのか、(2)医師が健康に働き続けられる勤務環境とはどのようなものか、(3)その他、必要と考えられる視点――の3点を提示。

 (1)については、外来や手術、自己研鑽、宿日直など、「密度が異なるさまざまな仕事」を手がける医師の勤務の特殊性などを踏まえる必要性を指摘。一方で、自己研鑽は「良質かつ適切な医療を行う」ための大前提であり、「自己研鑽を抑制するような規律の仕方であってはならないのではないか」との見解を示した。

 (2)については、「単に時間を短くすればいい、わけではないのではないか」と問いかけた。「一人一人の医師がやりがいを持ちながら、無理をせず経験、研鑽を積むことができることが重要なのではないか」とする一方、「勤務時間インターバル」(終業から始業までの間隔)の設定、連続労働時間や当直回数の制限、完全休日の設定などにより働きづめにならないこと、メンタルヘルスなどの健康管理の必要性も挙げた。

 (3)については、医療機関の経営の観点、行政の関与の在り方、地域医療の確保などを挙げた。

 武田氏は、医師確保対策、地域医療構想、医師の働き方改革は相互に密接に関係する問題であるとも指摘。地域医療構想について、「もともと必ずやらなければいけないことについて、国として枠組み、財源、ツールを用意した」と説明。「一番良くないのは、何も変わらない、何もしないということ。その結果、経営が悪化し、医師が来なくなり、患者の満足度が低下してしまう」とし、改革を進めれば、経営的、医療機能や医師の確保でもいい影響が出てくるとした。

 「医療費、過去の急速な伸びとは異なる」
 武田氏は講演でまず、政府が5月21日に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」について、「年金についてはそれほど伸びず、医療介護がどうなるかが課題」と説明。「新聞では、社会保障給付費が190兆円になると報道された。経済規模(GDP)が1.4倍になる中での1.6倍(2018年度との比較)。過去の急速な伸びとは、質的に異なる」。

 一方で、武田氏が大きな問題として提示したのは、医療・介護のマンパワーの確保。同じく5月21日に厚労省が公表した2040年のシミュレーションでは、医療・介護のマンパワーの需要が増加することなどを踏まえ、「医療保険における自己負担の在り方などではなく、医療提供体制の方が今後の主要なテーマ」と語った(『「2040年問題」、主眼は給付費増より医療福祉従業者数』を参照)。

 「医師不足はマクロ的には解消されつつある」
 マンパワーのうち、医師については現在、医師の需給、医師の働き方改革、地域・診療科の医師偏在という3つの柱で議論を進めていると説明。

 武田氏は、今通常国会に提出している医療法・医師法改正法案について、「一刻も早くこの法案が成立することを望む」と述べた。同法案は参議院で可決済みで、衆議院での審議待ちの状況。改正内容について(1)医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度の創設、(2)都道府県における医師確保対策の実施体制の整備――の2つについて説明(『「医師少数区域」勤務の認定医師、専門医取得の支援も検討』などを参照)。

 (1)について、武田氏は次のようにコメント。「積極的に、医師の方々に地域に出てもらいたい。ただし、地域に出た医師、またはその医師を派遣した医療機関に対する評価制度がないのが実態。強制的ではなく、まず実際に地方勤務をする医師と、その医師をバックアップする医療機関を評価する仕組みを作る必要がある」。

 (2)については、地域医療対策協議会と地域医療支援センターの役割などを明確化したことが特徴であるとした。地域医療対策協議会の役割は、「地域枠」の卒業生についての医師派遣方針の決定、キャリア形成プログラムの策定などであり、大学医局からの医師派遣との間で整合性を確保するための調整なども必要になってくるとした。

 さらに「日本の医師数は少ないのか多いのか」と武田氏は問いかけ、日本の人口は減り始めている一方、2008年度以降の医学部定員増で医師数は増えていることから、「人口10万人当たりの医師数は、今までの伸びのトレンドから、上方にシフトする。医師不足は、マクロにおいては解消されつつある」との見解を示した。一方で、いまだ医師の偏在は解消されていないことから、「偏在対策は強力に実施していかなければいけない」とし、医療法・医師法改正法案に盛り込まれた一つである、「医師需要の見える化」を、人口構成や患者の流出入の補正をしながら取り組む重要性を強調した。

 「医師不足はマクロ的には解消されつつある」
 武田氏は、医療提供体制のもう一つの課題として、地域医療構想を挙げた。同構想については、4つの医療機能区分について、既存病床と「病床の必要量」を数合わせのように進めるのは「誤解」と説明した(『「全国一律の施策は限界、地域医療構想で対応を」』を参照)。「地域全体でどんな患者がどのくらいいて、各病院でどう分担していくか、という議論が大事」。

 地域医療構想への取り組みには、都道府県によって開きがあることも問題視した。調整会議での議論には、病床機能報告に基づくデータが前提となるが、「報告していない病院があり、その督促ができていない県がある」。新公立病院改革プランについての協議などにも、遅れが見られるとした。さらに地域医療構想の実現に当たっては、調整会議での議論だけでなく、地域医療連携推進法人なども活用しながら進めることを求めたほか、医師確保計画も併せて策定、実施することになると説明。

 そのほか武田氏は講演で、健康寿命の延伸について、高齢者の低栄養対策やポリファーマシー対策などに取り組む重要性も強調した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/611071
シリーズ 日医代議員会
「医師少数区域勤務で所得税優遇を検討」中川日医副会長
第143回日医臨時代議員会、地域・診療科別の医師必要数を提示

レポート 2018年6月24日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月24日の第143回日医臨時代議員会で、医師偏在対策について、「深刻な医師不足の現状を踏まえると、医師配置の強制的な仕組みの導入が必要な時期とも思う」としつつも、できる限り、あるべき医師配置への自主的な収れんを目指したいとの意向を表明した。その実現に向け、「地域ごと、診療科ごとの医療需要とそれに基づく医師の必要数を分かりやすく提示して、地域医療を守っていこうという思いをしっかりと共有していく」との方針を掲げた。

 日医は、医師少数区域で勤務する医師に対する所得税の優遇措置の検討に着手、医師のみならず受験期の子息などのeラーニングなどの利用、育児サポートなどの支援も検討していると説明した。

 鹿児島県代議員の牧角寛郎氏は、医療法・医師法改正法案に、医師偏在対策として盛り込まれている「医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度(認定制度)」について、「運用を慎重にすべき」と指摘した。認定制度は、地域医療支援病院等の病院管理者になるためには、医師少数区域等での勤務を必要とする仕組みだが、牧角氏は「将来、病院管理者など責任ある立場になる意思はないので、医師少数区域へ行く義務はない」と捉えられ、逆に医師偏在を助長するなどの懸念があるとした。一方で、「病院管理者に適任であっても、医師少数区域での勤務経験がないことをもって任に就けないことも問題」と述べた。

 その上で、今求められるのは(1)臨床経験を多く積める地域医療の意義・魅力の発信、(2)現場での労働環境の整備、(3)昨今の若手気質を勘案した医学生・若手医師への倫理教育――であるとした。

 医師偏在対策については、静岡県代議員の徳永宏司氏も質問している(『「医師強制配置ではなく、自主的な判断の仕組みを」中川日医副会長』を参照)。

 「国民に受療行動を変えてもらうことも必要」
 中川副会長は、牧角氏の3つの指摘について、以下のように回答。

 第一の「地域医療の意義、魅力の発信」については、鹿児島県では地域医療介護総合確保基金を活用し、緊急医師確保対策事業として、離島やへき地での研修など、医学生への積極的なアプローチを実施されていると説明。「全国各地でも同様な取り組みが見られるが、成功事例、問題点が共有されておらず、手詰まり感も見られる。全国の事例を分析し、都道府県医師会の取り組みを支援していく」とした。

 第二の「医療現場での労働環境の整備」については、「地域医療の継続性と医師の健康への配慮の両立が不可欠であり、労働時間だけの問題ではない」とし、日医に「医師の働き方検討会議」を設置し、慎重に議論をしていると説明。「例えば、かかりつけ医機能の推進や外来機能の分化を進め、国民に分かりやすい形で示し、受療行動の在り方を考えてもらうことも必要だろう。また、病院と診療所の連携、病院内の医療関係職種との連携など、地域医療連携、多職種連携が重要」などと述べ、都道府県医師会が、地域住民の方への啓発活動をはじめ、地域全体の課題として検討するよう働きかけた。

 第三の「医学生、若手医師の倫理教育」については、日医の綱領で「人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指す」としており、この綱領の理念を医学生、若手医師のみならず、全ての医師と理念を共有し、行動変革につなげられるように努めていくとした。「若い医師たちとはこれまで以上に交流を図り、日医自体も自ら意識改革を図りつつ、時代に即応していく」。

 認定を受けなくても管理者になることは可能
 中川副会長は続いて医師偏在対策として、2015年12月に全国医学部長病院長会議とともにまとめた「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」で、「医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない」との考えから、「医師のキャリア形成支援を行っていくことを前提に、医師不足地域で勤務した経験を管理者要件にする」と提言したと説明。

 今国会に提出された医療法・医師法改正法案で、医師少数区域等での勤務経験を認定する制度が創設された。「認定医師を一部の地域医療支援病院の管理者とすることは、医師少数区域医師不足地域で勤務しようとする医師を支援する一つ」と受け止め、できるだけ早い段階で医師のキャリア形成支援を実現する必要があるとした。

 牧角氏の「地域医療支援病院の病院管理者に適任であっても医師少数区域での勤務経験がないことをもって任に就けなくなる」との懸念に対しては、「地域における医療の提供に影響を与える場合には、認定を受けていなくても管理者になれるという、ただし書きが付いている」と説明。

 さらに日医は、医師少数区域で勤務する医師に対する所得税の優遇措置の検討に着手、その他の支援策を検討しているとした。

 牧角氏は、中川副会長の答弁に対し、「医療法・医師法改正法案には、日医の意見がかなり反映されているとのこと。これをきっかけに偏在が解消していけばと思うが、国や県の権限が強くなる書きぶりがあるので、今後の開業規制につながらないようにしてもらいたい。『地域』という言葉がよく出てくるが、必ず地域の実情を勘案してもらいたい」と求めた。中川副会長「必ず地域の実情を反映するとしている」と答え、理解を求めた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/611070
シリーズ 日医代議員会
「医師強制配置ではなく、自主的な判断の仕組みを」中川日医副会長
第143回日医臨時代議員会、「新専門医制度で偏在助長」は回避

レポート 2018年6月24日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月24日の第143回日医臨時代議員会で、医師偏在問題について「決定打があるわけではない」と前置きし、「強制的な仕組みではなく、医師本人の意思を尊重し、地域医療に貢献したいという気概を持った医師を支え、かつ強力に支援する仕組みを目指す。医師の自主的な判断を促す仕組みを模索することが遠いようで、実は偏在解消の近道」と答弁した。

 さらに、新専門医制度のみで医師偏在を解消することは困難だとしつつ、「少なくとも医師偏在を助長することは絶対に回避しなければならない」と答弁した。

 日医として、かかりつけ医機能を高め、全ての医師が、どの地域でも地域医療や地域包括ケアを担っていけるようにすることが、究極の医師偏在対策となると考えているとし、「医療現場の先生方、これから医師になる若い人たちの思いを大切にしながら、日医は医師偏在解消のために取り組んでいく」との方針を示した。

 医師偏在対策について、代表質問したのは静岡県代議員の徳永宏司氏。静岡県内でも「西高東低」の医師偏在があり、その対策として義務履行のある「静岡県医学修学研修資金」を2007年度から開始したが、必ずしも有効ではないと指摘。今国会に提出されている医療法・医師法改正法案では、「医師需要の見える化」などが盛り込まれており、静岡県でも浜松医科大学に寄附講座を新設し、医療圏・診療科ごとの医師需要数等について調査・分析、医師偏在解消への取り組みを着手したものの、実効性のある対策につながるか疑問であるとし、「自主性を尊重した対策だけでなく、一定の規制を含めた対策」も避けられないのではないか、と提起した。

 医師偏在対策に関しては、鹿児島県代議員の牧角寛郎氏も質問している(『「医師少数区域勤務で所得税優遇を検討」中川日医副会長』を参照)。

 「地域医療構想アドバイザー」、静岡で先駆け

 中川氏は、まず地域枠については厚生労働省が2017年度に実施した臨床研修医修了者に対するアンケートで、地元定着率が高いという結果が示されている一方、地域医療介護総合確保基金を活用した奨学金制度については、現段階ではまだ有効性が確認されていないケースもあるため、地域枠の成果を分析し、次の対策につなげていくとした。

 「医療需要の分析に基づく医師需要の見える化」については、厚生労働省が、地域医療構想や医療計画などの制度を理解し、医療政策に関する知見を有して、データ分析を基にアセスメントを行う「地域医療構想アドバイザー」の設置を計画していると説明(『「地域医療構想アドバイザー」、都道府県単位で設置へ』を参照)。候補は大学関係者などであり、静岡県医師会が浜松医科大学と連携している取り組みを、全国展開してもらいたいと求めた。日医としても、都道府県の分析に役立つよう、厚労省とともに、将来の地域別の医療需要を分析し、それに基づく医師の必要数を推計して、都道府県に示していく方針だという。

 「医師キャリア支援センター」に近付く

 もっとも、「真に有効な医師偏在対策とは何か」との質問には、具体的な手立てがないのが現実であり、「大変苦慮している」と述べた。

 日医は、2015年12月に全国医学部長病院長会議とともにまとめた「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」で、地元の大学に「医師キャリア支援センター」を設置し、医学生および医師のキャリア形成を支援し、医師不足地域で勤務した経験を管理者要件とすることを提言した。

 今通常国会に提出された医療法・医師法改正法案により、「地域医療対策協議会」の役割と機能が強化されることになるが、「医師キャリア支援センター」構想に少し近付いたとした。

 今後は、地域医療対策協議会の協議を経て、都道府県主体で、地域枠の医師の派遣方針を決定するほか、若手医師の希望やライフイベントに配慮したキャリア形成プログラムを策定し、医師が安心して勤務できる体制を整えていくことになる。地域医療対策協議会では、都道府県医師会がその中心であり、都道府県医師会が主導的役割を果たせるよう、日医は支援していく方針。

 新専門医制度でも地対協の役割重要

 新専門医制度については、「偏在対策に資するのか」という疑問もあるが、「専門研修のみで医師偏在を解消することは困難だと認識しているが、少なくとも医師偏在を助長することは絶対に回避しなければならない」と回答した。

 今回の医師法改正案では、(1)日本専門医機構が専門研修に係る計画を立てる際に、あらかじめ厚生労働大臣の意見を聞かなければならない、(2)厚生労働大臣が意見を述べる際には、関係都道府県知事の意見を聞かなければならず、その際に知事は地域医療対策協議会の意見を聞く――となっていることから、地域医療対策協議会における都道府県医師会の役割は極めて重要だと説明した。

 徳永氏と牧角氏への中川副会長の答弁後に、関連質問を受け付け、山口県代議員の加藤智栄氏は、(1)医師偏在解消策としてのインセンティブ付与、(2)専攻医のシーリング(募集定員の設定)だけでなく、外科専攻医が1人しかいない県があることも踏まえ、「下限」の設定――について質問。中川副会長は、医師不足地域・診療科や過剰地域・診療科を示すことがまずは大事であると繰り返し、「下限」の設定は検討課題であるとした。

 兵庫県代議員の橋本寛氏は、医学部定員の「地域枠」について質問。中川副会長は、「近い将来、医師過剰時代が来るのは間違いないので、早急に医学部定員の在り方と地域枠の議論をしていきたい」と答えた。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32173810U8A620C1CR8000/
始業前の時間外労働、7割が請求せず 医労連調査
2018/6/24 18:53 日本経済新聞

 始業前の時間外労働について、医師や看護師などの約7割が残業代を請求していないことが24日までに日本医療労働組合連合会の調査で分かった。職場に請求しにくい雰囲気があり、終業後の残業代も請求できない人が2割に上る。医労連は労働時間の管理などの徹底を求めている。

07014_2018070109543166a.jpg

 調査は2017年9月~18年1月、医労連の職員が加盟する組合員の医師や看護師など1万1189人を対象に聞き取りし、結果を集計した。全体の57%が始業前に時間外労働をしていると答え、3%は1時間以上、業務に従事していた。

 このうち始業前の残業代を全額請求していた人は11%で、73%は請求していなかった。終業後の残業についても20%が「請求していない」と回答した。

 残業代が請求できない理由を尋ねた質問に対し、26%が「請求できない雰囲気が(職場に)ある」と答え、「請求できると思わなかった」(11%)、「上司に請求するなと言われている」(2%)などが続いた。

 医師には正当な理由なく患者の診療を拒めない「応召義務」があり、急患などに対応する必要があるほか、診療に役立てようと自己研さんを積んでいる。看護師も夜間勤務などを伴い、それらを含めると法定労働時間や労使協定上の時間外労働の合計を超えてしまう。

 このため病院側が医師や看護師の勤務時間を不正に調整し、労働基準監督署から是正勧告を受けるケースも各地で起きている。

 勤務医の労働組合「全国医師ユニオン」が17年に大学病院の医師を対象に実施した調査によると、労働時間がタイムカードなどで客観的に管理されていると答えたのはわずか6%だった。

 医労連の担当者は「現場の人手不足などを背景に、病院側が責任を持って医師や看護師の労働時間を管理していない」と指摘。「労組も巻き込み、労働者も働いた分は請求するという姿勢を徹底していくべきだ」と強調する。



https://digital.asahi.com/articles/ASL6W3T6RL6WUBQU005.html?rm=680
外科医は嫌? 新専門医制度の専攻、群馬では1人だけ…
篠原あゆみ2018年6月27日15時00分 朝日新聞

 4月から導入された新専門医制度で群馬県内の外科の専攻医は1人にとどまった。外科医のなり手不足は全国的な傾向で、長時間労働や訴訟リスクなどから敬遠されているという。危機感を抱く県や群馬大学は奨学金制度を設けたり、講習会でやりがいを伝えたりするなど、対策に乗り出している。

新専門医制度の登録約8千人、「都市部の集中なし」

 5月中旬、群大であった手術基本手技講習会に、県内の医学生や研修医約90人、講師の医師ら約60人が集まった。参加者は縫合や切開、シミュレーターを使った腹腔(ふくくう)鏡手術など約20のブースに分かれ、ベテラン医師から技術を教わった。

 これまで年に2回開いてきたが、今回初めて、県内各地の病院にも参加を呼びかけたという。群大医学部付属病院で外科診療センター長を務める調憲教授は「若いうちからトレーニングの機会を増やすことで、外科医に興味を持ってもらい、手技のおもしろさを知ってもらいたい」と話す。

 こうした取り組みの背景に、外科志望者が減っていることへの危機感がある。県医務課などによると、新専門医制度で新たに県内で専攻医になった79人のうち、外科専攻医は1人だけ。3月15日時点のまとめでは、基本診療科のうち最も多かったのは内科で25人、精神科や放射線科、麻酔科、救急科がそれぞれ6、7人だった。

 調教授によると、外科は長時間勤務で、訴訟のリスクも大きく、医学部入学時に外科医を志望していても実習などを通して体力的に不安を感じる学生が多いという。講習会に参加した、群大医学部5年の女子学生(22)も「外科は多忙というイメージ。ワーク・ライフ・バランスを考えると、不安もある」と話す。

 外科医のなり手は全国的にも減っている。厚生労働省の調査によると、2008年に全国の医療施設で働く外科医は1万6865人いたが、16年には1万4423人に。県内では278人から235人と15%ほど減った。

 県は06年から実施している「医師確保修学研修資金貸与制度」に、昨年度から外科も加えた。研修医に対し月額15万円を貸与し、一定期間、県内の指定病院の医師不足の診療科で働けば返済が免除される制度で、ほかには産婦人科や小児科、救急科などが対象だ。

 医師不足の診療科の魅力を伝えるセミナーも開催している。初回の昨年は、現役の外科医が研修医にやりがいなどを伝えた。県医務課の担当者は「県内で手術ができる医療体制を今後も継承していけるかが大きな問題。医師確保に力をいれていく」と話している。(篠原あゆみ)

 <新専門医制度> 2018年度から導入された制度。国家試験に合格後、2年間の初期臨床研修を終えた医師が、内科や外科など19の基本診療科から専門領域を選び、3年程度で複数の病院を回りながら知識や技術を現場で学ぶ。その後、第三者機関の日本専門医機構から専門医の認定を受ける。



http://news.livedoor.com/article/detail/14937246/
「病院が多い県」に住むと「医療費」が2倍になるという驚きの真実 「医療経済」から考える日本の課題
2018年6月29日 12時0分 現代ビジネス【森田 洋之】

2009年から財政破綻後の夕張に赴任していた森田医師は、当時、市民が笑顔で生活していたことに驚いたという。その後、夕張および全国のデータさらに医療経済学的知見から見えてきたのは、医療経済の拡大が必ずしも健康と比例しない現実であったーー。
最新刊『医療経済の嘘』で、医学的・経済学的な見地から医療や地域の問題を鮮やかに描出した森田氏が、病床数と医療費の関係に着目し、日本の「医療経済の歪み」を明らかにする。

高知県の入院医療費は、神奈川県の2倍!

病院の多い県(正確には人口あたりの病床数が多い県)の県民は、健康度や平均寿命は大差ないのにもかかわらず、入院医療費を2倍使うーー。そんなショッキングなデータをご存じでしょうか。

これは、今月発売された拙著『医療経済の嘘』にて掲載したデータの一つなのですが、いま「これは事実なのか?」との問い合わせをいくつも頂いています。

今回は、このデータの信憑性について考えるとともに、その裏に潜む「医療市場の失敗」とその処方箋について考えてみたいと思います。

拙著で紹介したデータはこちらです。

図1 全病床数(人口10万人当たり)と一人当たり入院医療費の関係(図 略)

*図の出典 神奈川県HP:病床数の状況(平成24年度)

人口10万あたりの病床数(横軸)と県民一人あたりの一年の入院医療費(縦軸)を都道府県別にプロットしその相関関係を見たものです。よく勘違いされるのですが、ここで言う一人あたり医療費は、「入院した人、一人あたり」ではなく「県全体の入院医療費を、赤ちゃんから高齢者まで県民全員の人口で割った額」です。つまり本当の意味での「県民一人あたり」です。

グラフのとおり、一人あたり入院医療費が全国一高いのは、病床数が最も多い(人口10万あたり約2400床)高知県で、県民一人あたり約19万円。病床が最も少ない神奈川県民の一人あたり医療費(約9万円)の2倍以上を使っていることがわかります。

いま、このデータについての問い合わせとして、主に以下の2つのパターンを頂いています。

・このデータは県民一人あたりの「入院医療費」だが、より重要なのは「総医療費」である。そちらはどうなのか?

・高齢者の多い県で医療費が多くなるのは必然である。各都道府県で高齢化率は大きく違うのだから、高齢化率の影響を排除する必要があるのではないか?

これらについての私からの回答は「若干相関関係は落ちるが、やはりどちらについても上記の相関関係は成立すると考えられる」と言うところです。

「高齢化率」を考慮しても結果は同じ

まず「総医療費」について。こちらは神奈川県のHPに掲載されているグラフにその答えがあります。

図2 全病床数(人口10万人当たり)と一人当たり医療費の関係(図 略)

*図の出典 神奈川県HP:病床数の状況(平成24年度)

縦軸が「一人あたり入院医療費」から「一人あたり医療費(総医療費)」と変わっていますので、まさにご質問への回答そのものだと思います。相関係数は0.964から0.914へと若干減少していますが、相関関係は依然として強く存在していると言っていいでしょう。

次に「高齢化率の影響」についてですが、こちらは厚生労働省が「年齢調整後の一人あたり医療費」について「市町村国民健康保険(主に高齢者以外が対象)」と「後期高齢者医療制度」でデータを出しています。

ここでは病床数との関連(相関係数)まではデータ化されていないのですが、やはり「年齢調整後の後期高齢者一人あたり医療費」が最も高い高知県(人口あたり病床数も日本一)は一人あたり68.3万円を使っていて、これは最も低い岩手県34.1万円の約2倍です。

市町村国保(主に高齢者以外が対象)でも同様で、最も高い鹿児島県(病床数は日本で2位)は一人あたり18.6万円。これは最も低い愛知県10.6万円に比較して、実に1.76倍となっています。繰り返しますがこれは都市部と地方の高齢化率の影響を排除した「年齢調整後」の数字です。

つまり、「高齢化率」という交絡因子の存在を除外してもなお「病院の多い県の県民は入院医療費を2倍使う」という言説が成立する可能性はかなり高いと言えるでしょう。

もちろん、相関関係は因果関係ではないので、更に多くの交絡因子(個人的には高齢化率以外に有力な交絡因子は思い浮かびませんが)を除外していかなければ真の「因果関係」にはたどり着きません。こちらは専門家による精緻な因果推論の結果を待ちたいところです。

なぜ、県によってこんなに病床数に差があるのか?

因果関係の有無はともかくとして、これらのグラフから読み取れることの一つが、「日本では都道府県によって人口あたり病床数に最大で3倍の差がある」という厳然たる事実です。そもそも、なぜ県によってこんなに病床数に差があるのでしょう?

ラーメン屋さんやパン屋さんの場合、地域で店舗が過剰になれば(供給過剰になれば)、徐々にお店が淘汰されてゆき適正な供給量に落ち着きます。これがいわゆる自由市場における「市場原理」です。

ではなぜ病院・病床の多い県では、病院が淘汰されないのでしょうか。

その背景には、1990年代の「駆け込み増床」など近代医療史的な部分もあるのですがそれは表面的な話。もっと根本的な議論をするならそこは「医療市場の失敗」という概念を避けて通ることはできません。

「医療市場の失敗」については拙著で詳しく解説していますが、簡単に言えばこういうことです。

「医療業界では、*需要・供給の間に情報の非対称性(患者側と医療者側との間の医療知識の格差)が強く存在し、患者側が本当に自分に必要な医療を選択できる状況にない、また、*医療保険によるモラルハザード(実際に受ける医療サービスの対価の大半は医療保険で支払われるのでサービス利用者のコスト意識は希薄になりがち)が存在する。こうした業界では、多くの場合市場原理による適正化にはいたらない」というものです。

確かに、貴重な医療資源である「病院・病床」に最大3倍もの地域差が発生しまっている現状を考えれば、これは市場原理が適正に機能しているとは言いにくい状態かもしれません。では、モラルハザードの経済的要因である国民皆保険制度をやめる?

いえいえ、日本の国民皆保険制度は世界に誇る日本の宝です。国民が平等に、しかも安価に質の高い医療を受ける事ができる国民皆保険制度を放棄するという選択肢は多くの国民から支持されないでしょう。ではどうすればよいのでしょうか?

個人的な見解として、以下の3つの課題が重要なのではないかと思います。

(1)医療政策的課題(国の課題)

まず国(もちろん国民も)は、医療の提供を自由市場に任せても市場の失敗が発生するということをより強く認識すべきでしょう。医療提供は青天井です。

実は冒頭のグラフの横軸・都道府県別病床数で最多が高知県(人口10万あたり約2400床)、最少が神奈川県(人口10万あたり約800床)でしたが、他国を見るとアメリカが人口10万あたり約280床、イギリスが約270床と、日本で最少の神奈川県よりはるかに少ない病床数。事実、日本の病床数は世界一、日本は他国から見れば、たとえ日本一病床が少ない神奈川県の病床数であっても驚異的な病床数だと見られているのかもしれません。

これは、「医療の提供が青天井である」ことに対する間接的な証左と言えるでしょう。もちろんこのことの基礎には、前記「医療市場が失敗する要因」の一つとしての「情報の非対称性」があります。

また、確かに戦後~高度成長時代の人口爆発時代、日本中で医療が不足していた時代においては、民間病院のスピード感を期待して医療の提供を自由市場に開放したことは理にかなったことだったかもしれません。事実、この時代に病院・病床などの医療提供体制は驚くべきスピードで達成されたました。

しかし、これからは人口減少時代です。しかもすでに病床は世界一の規模に達しています。当然、医療は適正な規模に縮小して行くことが求められるわけで、もちろん国もこのことはわかっています。

国も「地域医療計画」によって病床削減などを計画していますが、これがかなり難航しているのはご存知の通り。莫大な借金を抱えて病院を整備した民間病院に「病院をやめなさい」とは言いにくいのが現状です。

(2)医療提供側の課題

医療提供側は、上記のような「医療における情報の非対称性」を解消すべく、患者側に適切な情報提供を行うようこれまで以上に務めるべきでしょう。

ただ、医学知識は高度に専門的で複雑、しかも不確実なもので、一般市民にとっては容易には理解出来ないものかもしれません。

であれば、「最善を尽くしても情報の非対称性は一定程度残る」ことを想定したうえで、それでもそれに便乗して医療提供を増やすようなことのないよう、professional autonomy(専門職としての倫理を前提として自ら姿勢を正し、自らを律していくこと)の精神をもとにしたpeer review(医師・病院相互間での批判的な評価・検証)をしっかり行うことが重要だと思います。

日本の現場では、医師による医師への評価はほとんど行われていません。専門医制度などの高度専門知識レベルでの標準化は実践されていますが、現場の病院や診察室での診療内容(高齢者に対する多剤処方、過度な安全志向での絶飲食指示による廃用症候群、医療法人グループ内の病院・施設での高齢者や障害者を囲い込み診療など)は標準化とはほど遠い状況にあり、むしろそれらについて他医または他院を評価/批判することはタブー視されていると言っていいでしょう。

私も研修医時代、先輩医師から「他医の診療を批判してはいけない(それはいつか自分に還ってくるから)」と教わりましたし、事実、私個人もいままでどんなに「これはひどい」と思われる医師に出会ってもそれを指摘することはできませんでした。また、私自身の診療の質を他医から批判された経験もありません。

もちろん患者側は高度に専門的で複雑な医療の世界に対して正当な評価は出来ないでしょう。そのうえ、唯一の高度専門知識を持つ医師も他医を評価できない……、となると医師はどこからの評価・批判にもさらされない孤高の存在になってしまいかねません。

イギリスでは、医師の年間の処方傾向がネットで他医に公開されているということです。これだけではまだまだですが、業界全体が自らを律するこのような方向に進んでいくことこそが、適切な医療提供体制を構築する上で欠かせない要素だと思います。それこそがprofessional autonomyと言えるのではないでしょうか。

(3)患者側(医療を受ける側)の課題

患者側も意識を変えていくべきです。

特に高齢になったら、昔のような「病院や医師にお任せ」はやめるべき。昔のように、肺炎・結核・胃腸炎のような感染症が死因の上位を占めていた時代であれば、1週間抗生剤の点滴をすればピシャッと治るので「先生におまかせ」でよかったかもしれません。しかし、今の死因の上位は、ガン・心疾患・脳卒中など1週間の点滴でピシャッと治るかといわれればそうでない病気ばかり。

現代の高齢者は「治らない病気を一つ一つ獲得しながら」歳を重ねて行くのです。その治らない病気を一つ一つ全力で治そうと思ってしまうと、「どんどん薬が増えていく」ことになり、最終的には「管だらけで寝たきり」となってしまいます。

人間の死亡率は100%、特に歳をとってから発生する問題の多くは、実は医療で根本的な解決に至る問題ではありません。そういう意味では、実は社会の高齢化が進むに従って「医療費が下がる」ということだって実は有り得る話です。事実私がいた高齢化率日本一の北海道夕張市は今でも高齢化率は上昇していますが、それにもかかわらず高齢者医療費は減少しました。

「自分の健康を自分ごと」として自ら意思決定していく。今後の高齢会社会を元気に生き抜くためには、こうしたことが大事なのではないかと思います。そして、その意思決定の良き道先案内人(コンシェルジュ)として「かかりつけ医」を上手に活用してほしいと思います。

上記3つの課題は、なかなか達成できる課題ではありません。国家行政・医療提供側・患者側の3者みんなが意識を変えて取り組むべき課題でしょう。現在の延長ではなく、ゼロベースで「本当に大事なもの」をみんなで模索していく。そうでなければ、我々は世界一の病床を持ちながら、さらにどこまでも病院・病床を求めてしまうでしょう。

日本が、この容易には抜け出せないであろう「医療市場の失敗」から抜け出すには、まずは我々の「意識」から変えていかなければいけないのではないでしょうか。子どもたちに明るい未来を残すために今最も求められているもの、それは、私達の世代の「意識改革」なのかもしれません。

現役医師が、医学的・経済学的な見地から医療や地域の問題を鮮やかに描き出し、日本の明るい未来への処方箋を提示する希望の書。



https://www.m3.com/news/iryoishin/607515
シリーズ 大学医学部「地域枠」の今
地域医療の担い手養成は「社会の総力戦」 - 長崎大学◆Vol.3
教育予算と安定した組織づくりが不可欠

スペシャル企画 2018年6月28日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

――地域医療教育の充実に当たって、どんな点に苦労されたのでしょうか(地域医療教育の詳細は、『離島医療・保健実習、医学生全員が必修』を参照。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療学分野教授の前田隆浩氏と、長崎大学医学部地域包括ケア教育センター・センター長の永田康浩氏へのインタビュー。文中、敬称略)。

前田 教育に対する予算の確保と安定した組織作りです。地域医療教育を実施するには、当然ながら、地域に出なくてはいけません。医学生たちの交通費、宿泊費のほか、医学生を受け入れる側への謝金なども必要になります。大学の運営費交付金が減額される中で、これらアカデミックではない分野の予算を確保するのは結構大変です。

 また安定した組織作りですが、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に地域医療教育を入れて、推進するのであれば、大学にも正規の講座を置くべきです。私が所属する長崎大学大学院医歯薬総合研究科地域医療学分野のように正規講座を持っている大学はまだ少ないのが現状。期限付きの寄附講座では不安定であり、そこに優秀な指導者を集めるのは難しいでしょう。

 一方で、地域における大学の拠点も必要です。大学ではなく、地域医療実践の場である拠点にドクターが常駐し、地域医療教育や地域医療のサポート、行政との連携に取り組まなければ、大学と地域との本格的な連携に至りません。長崎大学も、五島市に寄附講座を作らなかったら、成功していなかったと思うのです。私は今、大学の教授ですが、五島中央病院内に設けた、本学の「離島・へき地医療学講座」の教授も兼任し、毎週1回は五島での教育に従事しています。

――地域医療介護総合確保基金は、人材育成も対象にはなるはずですが。

永田 卒後の医師養成のための研修等の予算は、その見返りとして医師派遣に結び付くので受け入れられやすいが、卒前教育については適切性が理解されにくいのが現状です。教育の成果を何とか見えやすくするような、われわれの工夫も必要ですが、卒前から卒後にシームレスに育成する必要があるので「教育は、大学の役割」と切り捨てず、地域づくりの一環として支援いただきたい。

――では今後、医学部の「地域枠」はどのように運営していくべきかだとお考えですか。

前田 長崎大学の長崎県出身者を対象とした「地域枠」には、長崎県による修学資金貸与がある「地域枠B」(貸与期間の1.5倍の期間、県が指定する医療機関等に勤務すれば、返還免除)と、貸与がない「地域枠A」(義務年限は卒後3年)があります(その他、佐賀県枠と宮崎県枠あり)。

 「地域枠B」の2018年入試の枠は、15人ですが、3人しか合格しませんでした。合格基準は、「一般枠」と「地域枠」は同じなので、合格基準に達する学生が少なかったということです。「地域枠B」の入学枠の一部を、「地域枠A」に当てはめました。

 全国の医学部の「地域枠」の充足率は88%程度。長崎大学の場合は、90%を超え、全国平均よりも高く、「一般枠」と「地域枠」の学生の入学後の成績や医師国家試験の合格率には差がないものの、入試制度をどうするかが今後の一つの課題でしょう。

――「地域枠」か否かにかかわらず、地域医療に関心を持つ学生が増えれば、長崎県の医療に従事する医師の増加につながるという見方もできます。

永田 はい。最終的なゴールはそこではないでしょうか。質も確保でき、介護や福祉の視点もしっかりと持った教育を積み重ねていくことが必要です。そうすればたとえ特定の専門分野に特化した医師でも、地域における「生活モデル」の視点を持っているか否かで、その医師が担う医療の幅は異なってくるはずです。

前田 前提として考えなければいけないのは、義務年限で従事する「地域」とはどこか、ということ。長崎県に限らないことですが、自治体としては、自治体立病院を運営する立場から、義務年限のある医師は自治体立病院を中心に循環させます。一方で、大学は自らの関連病院への医師派遣が中心です。その結果、どうしても漏れてしまう地域、あるいは医療機関が出てきてしまいかねません。

 自治体や大学の思い、考えも分かります。一方で、仮に「地域枠」がなくなっても、地域医療を守るのがわれわれの使命なので、地域医療教育に力を入れていく必要があります。これらをうまく両立させることが必要です。地域医療の充実に伴う受益者は地域住民。地域医療教育に当たっては、大学、地域の関係者などが“総力戦”で取り組んでいく必要があると考えています。

地域医療実習を経験した医学生の声
●医学部1年生:病院見学実習
・地域病院と大学病院のような大病院が連携して、一人の患者のためにそれぞれの病院の特性を生かして協力していることが分かった。
・退院後、患者が希望する生活に近付けることが地域医療の使命であり、病院と患者だけでなく、ケアマネや家族など周囲の人々を巻き込んで医療は展開されていくと理解できた。

●医学部2年生:高齢者福祉施設見学実習
・今回、私たちは高齢者の方や統合失調症を持っている方と話をさせていただいたが、きちんと話を聞き、その姿勢を出すことで、相手により多く話してもらうことができた。これは、高齢者だけでなく、医師になった時、患者さんなどと関わる時においても大事なことであると思えた。

●医学部3年生:診療所見学実習
・医師の役割の一つは患者の生活を支えることなので、普段の会話の中から生活状況や今後のことについて考えるということを知り、医師の役割は病気を治すという点に集中してしまいがちなので、「生活を支える」という発想は新鮮だった。

●医学部4、5年生:臨床実習(地域包括支援センター、訪問看護ステーション、消防署)
・地域包括ケアは、医療者・専門職でやるものと思っていたが、「民生委員」や「スーパーの店員」までも巻き込んだケアをしていくことを知ることができた。今回の経験を臨床実習に生かしたい。
・今まで「医と社会」で学んできたことを実際の事例を通して考えることで、ケアマネジャー、訪問看護師などがどのような仕事をしてき、どのような時に必要とされるかを学べた。

●医学部5、6年生:高次臨床実習
・在宅医療とは、究極のオーダーメイド医療だと知りました。五感を総動員して患者さんの背景を知り、患者さんの希望に合わせて治療を行っていく。高齢社会において今後求められていく医療の形だと思いました。
・地域医療というと、慢性期疾患のイメージが付きつつありましたが、場合によっては緊急疾患の第一接触医療者として診なければいけないということを改めて知りました。



https://www.m3.com/news/iryoishin/612151
「地域密着型病院の整備がカギ」、相澤日病会長
第68回日病学会、「病棟」より「病院」単位での機能分化・連携を提唱

レポート 2018年6月28日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 第68回日本病院学会が6月28日に金沢市で開催され、日本病院会会長の相澤孝夫氏は、「社会環境の激変と医療制度改革の荒波を受ける病院の未来」をテーマに講演した。

 相澤氏は、人口の高齢化など急激な社会環境の変化とケアニーズの変化が進む中で、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携が重要であるとし、これらを病棟単位ではなく、病院単位で進める必要性を強調した。希少なニーズには拠点ごとに充実した「基幹型病院」(広域型病院)を整備して対応、その周囲に日常的に頻度が高い疾患を診る複数の地域密着型病院(近隣型病院)がある構想を提示。「病院単位」を提唱するのは、入院医療と同様に、在宅医療でも複数の職種がチームで関わることから、「各職種が病棟業務の片手間でできるものではない」という理由からだ。「地域密着型病院をいかに整備していくかが、地域医療構想において極めて大事ではないか」(相澤氏)。

 「人口減は医療の担い手の減少」

 相澤氏はまず講演で、医療を取り巻く急速な変化として、人口構成、それに伴う医療ニーズの変化を挙げた。今後、75歳以上人口が増えていくものの、肺炎や骨折などの疾患も多く、「それほど重症ではなく、中等症や軽症の患者が多い。今後、若い人なみに入院日数が減少してきたら、入院受療率は減少する」と相澤氏は指摘し、医療ニーズの変化に対応した医療提供体制構築の必要性を強調した。「75歳以上の患者は、医療以外の要因で自宅等に帰れないことが多い。社会環境を整えれば、退院でき、さらに入院日数は減少する」(相澤氏)。

 一方で、今後の社会的な変化として、人口減少に伴う働き手の減少があると指摘。2040年には5人に1人が医療・介護に従事するとの政府推計もあることから、「医療提供体制はこれまで通りではだめ。同じ体制では綴られない」と相澤氏は警鐘を鳴らした。

 医療提供体制については現在、地域医療構想を策定し、その実現に向けて各地域で協議が進められている。相澤氏は、「今議論されているのは、病棟機能と病床数の話が中心。『構想』というのは本来、これからしようとする物事について、内容、希望、実現方法を考えて、骨組みをまとめるものであり、数値だけの議論ではうまくいかない」。

 「軽症急性期の扱いをどうするのか」

 さらに相澤氏は、2018年度診療報酬改定にも言及。同改定では「急性期一般入院基本料」と「地域一般入院基本料」など、入院料の体系が再編されたが、「(高齢者に多い)軽症急性期の扱いをどうするのか、どう評価するのか」と手薄な部分があると指摘した。

 地域医療構想や病床機能報告制度の考え方は病棟単位。地域包括ケア病棟も同様だ。これに対し、相澤氏は病院単位で機能分化を進め、「基幹型病院」(広域型病院)と地域密着型病院(近隣型病院)を地域の実情に合わせて整備していく必要性を指摘した。

 入院では医師、薬剤師、看護師、介護福祉士、リハビリスタッフ、管理栄養士、MSWなどさまざまな職種がかかわる。この「入院医療チーム」は、退院後は「在宅医療チーム」に引き継がれる。「病棟業務の片手間にできるものではない」ために、相澤氏は、病棟単位ではなく、病院単位で取り組む必要性を説いた。「地域密着型病院は介護の重症化予防や、地域・町づくり、予防・健診・健康増進などにも取り組む。この地域密着型病院をいかに整備していくかが、地域医療構想において極めて大事ではないか」。

 外来も同様で、広域型病院・専門病院と近隣型病院・診療所という機能分化を進める必要性を指摘。「大病院、中小病院という規模による区分はそろそろ卒業し、病院機能区分で考えていくことが必要」。

 相澤氏はさらに、病院マネジメントの重要性も指摘。病院組織では、「マネジメント力を専門力より軽視する傾向がある」「明らかなヒエラルキーが存在する組織」などと、病院組織と人材の特殊性を挙げ、「革新の時代を生きるために、「自立型(適応性の高い)組織」(組織マネジメント)と、「本物のプロ(個性・人間重視)」(人財マネジメント)が重要だとした。



https://www.m3.com/news/iryoishin/611354
シリーズ 日医代議員会
「医師確保に実効性持たせる第三者機関が必要」松本日医常任理事
第143回日医臨時代議員会、各県の「医療勤務環境支援センター」改組を

レポート 2018年6月25日 (月)配信大西裕康(m3.com編集部)

 日本医師会は、医師の勤務環境改善に向けて地域の医師確保策などの実効性を担保するため、全都道府県が直営か外部への委託で運営している「医療勤務環境改善支援センター」を中心に、医師の主体的運営に任せる第三者機関へ改組するよう厚生労働省に求めていく方針だ。6月24日の第143回日医臨時代議員会で、日医常任理事の松本吉郎氏が明らかにした。今年4月に日医主催で設置した「医師の働き方検討会議」で、具体化を進めている。

 愛知県代議員の大輪芳裕氏が、医師の勤務環境改善のためには社会保険労務士が中心の同センターの充実強化を図るのではなく、医師が自ら運営して医師確保の機能も有し、病院管理者や勤務医へ実効性のある相談支援を担う別組織に改組すべきと訴え、日医の見解を質問したのに答えた。

 松本常任理事は、同センターの取り組みが現時点では医師以外の医療従事者に対する内容がほとんどであるとの認識を改めて示した上で、「同センターには医師確保に関する権限はない」とも述べ、医療機関が医師を確保する仕組みにはなっていないと指摘。

 一方、期待できる効果が現状は看護師確保などによる間接的な効果のみではあっても、同センターの医師に関する取り組みは不可欠との認識も示し、「現行法令がある以上、内容を知って、法令趣旨を踏まえた改善に向けた努力が必要で、労務管理の専門家(として同センターに配置されている社労士など)に相談するのが第一歩」と求めた。「労基署の監督を受けた場合、センターを活用していること自体、努力として評価されるとも考えている」との認識も示し、同センターの活用を進めながら発展的な改組の具体化を考える姿勢を示した。

地域医療支援センターとの連携、予算確保で本領発揮へ

 今国会で成立する見通しの改正医療法で、同センターと地域医療支援センターの連携が義務付けられるほか、今年度の運営予算が昨年度比で2倍以上となっているなど、同センターの本領発揮は今年度以降との見方もにじませた。松本常任理事は、「同センターが勤務環境改善に十分取り組めていないのは、社労士が(地域の)院長と直接話せていないのが原因の一つとして挙がっている」と指摘した上で、当初は確保できた予算が少なく訪問支援ができなかったと説明し、今年度は「約5億円と前年度比2倍以上」と強調。来年度予算の概算要求に向けては、10億円を求めているとも明らかにした。

 社労士に関しては、全国社会保険労務士連合会が、医療に関する一定の知識を求める「医療労務コンサルタント制度」を2014年2月から始め、養成人数が累計5000人を突破している状況に言及。「その中から、センターに配置されている。国の働き方改革が始まる前から、医師の働き方改革について必要性を感じて取り組んでいただいてきた。貢献いただけると期待している」と述べた。



https://resemom.jp/article/2018/06/29/45372.html
医学部出身者の勤務地、地域格差あり…石川は7割が流出
リセマム  教育・受験 大学生   2018.6.29 Fri 12:45

都道府県別の医師流出入の推計(青系:流出、赤系:流入) 医療ガバナンス研究所
07015.jpg
http://mgri.sakura.ne.jp/files/20180602%20Medicine%20-OKADA.pdf

 各地域の医学部出身者のうち、石川県では68%が他県へ流出する一方、千葉県では245%が他県から流入しており、医師の勤務地選択に都道府県格差があることが、医療ガバナンス研究所が2018年6月4日に発表した研究結果より明らかになった。

 都道府県別の医師流出入の推計は、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」などの公開資料をもとに、都道府県別の医師養成数と実働医師数の差を死亡・退職者の推計値で補正したうえで、1995年から2014年の20年にわたる見かけ上の医師の移動割合を推計した。日本では医師はほぼ自由に勤務地を選択することができるが、今まで医学部卒業後、医師がどの地域で勤務しているのか、定量的に具体的な数字を出したデータはなかったという。

 医学部卒業後、医師が他県へ移動する「医師の流出」は、石川県が68%ともっとも多く、島根県、高知県、鳥取県、秋田県が続き、いずれも半数以上が流出していた。

 一方、「医師の流入」は千葉県が245%ともっとも多く、埼玉、静岡、兵庫、広島などが続き、大都市近郊でより人口密度の高い都道府県で流入が多かった。

 大都市では、東京都は13%が流出していたが、愛知県や大阪府、福岡県では、7.7%から22.8%の幅で流入していた。

 調査の結果、医師の流入している都道府県には人口あたりで医学部の入学枠が少なく、流出している都道府県には医学部の入学枠が多い傾向にあることがわかった。また、医師を流出させている都道府県では高齢化が進んでいる傾向にある。

 医療ガバナンス研究所は、「日本全国でみると、医師の都道府県間の移動が医師偏在に与える影響は大きく、今後の医療政策を考えるうえで重要な視点の一つとなる」と考察。「このような客観的なデータに基づき、医師偏在の対策を講じる必要がある」とコメントしている。
《工藤めぐみ》



  1. 2018/07/01(日) 10:04:17|
  2. 未分類
  3. | コメント:0