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5月26日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/532074?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD170526&dcf_doctor=true&mc.l=225111232&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
真価問われる専門医改革
新整備指針の「4つの対応方針」、厚労省検討会が了承
日本専門医機構、6月2日の理事会で改正予定

2017年5月25日 (木)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は5月25日、「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第2回会議を開催、専門医の取得は義務化しないことを明記するなど、日本専門医機構が提示した「専門医制度新整備指針」の4つの対応方針について了承した(資料は、厚労省のホームページ)。

 同機構は6月2日に開催する理事会で、25日の議論も踏まえ、「専門医制度新整備指針」の改正を行う予定。厚労省は、新専門医制度に関する通知発出と、都道府県への説明会を6月中に行う計画だ。同通知には、新専門医制度に関する最近の動向や都道府県協議会の目的・構成・進め方などを詳細に記載する方針。これらがスケジュール通りに進めば、2018年度からの新専門医制度のスタートがほぼ確定する見通し。

 4つの対応方針は、以下の通り。4月24日の本検討会の第1回会議で出された意見を踏まえ、5月12日の日本専門医機構理事会で議論された内容だ(『「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記へ』を参照)。遠藤座長は、「新整備指針改正案は、理事会で確定するが、前回会議のさまざまな意見が反映されている。今日の意見に特段の配慮をすることを前提に、直近の理事会で整備指針の改定をお願いすることで、合意をする」と諮り、構成員の了承を得た。

◆「専門医制度新整備指針」の改正の主な内容
1.専門医取得は義務付けていないことを整備指針に明記
2.地域医療従事者や女性医師等への配慮したカリキュラム制の設置を整備指針に明記
3.研修の中心は大学病院のみではなく、地域の中核病院等であることを整備指針に明記
4.都道府県協議会に市町村を含め、研修プログラム承認後も、地域医療の確保の動向を日本専門医機構が協議会に情報提供し、協議会が意見を提出した際は、研修プログラムを改善することを整備指針に明記

 25日の検討会では、日本内科学会が新専門医制度の準備状況について、地域医療への配慮と、専攻医のキャリア形成への配慮という2つの視点から説明した(詳細記事は、別途予定)。地域医療への配慮については、(1)基幹施設は、当初よりも基準を緩和した結果、2016年度の段階の523(8割以上が市中病院)から545まで増加、(2)研修施設は、現行制度の1204施設から2.4倍の2937施設に増加、(3)研修施設の分布は、294医療圏から、全344医療圏に増加――などと説明。相馬市長(全国市長会副会長)の立谷秀清氏は、一部再考を求めたものの、「前回の会議で、地域医療を守る立場で発言した意見が、相当盛り込まれている」と述べた。

 また専攻医のキャリアへの配慮の中で、構成員からの評価が高かったのは、「J-OSLER」という、Web上で専攻医の登録、研修実績管理や研修評価などを行うシステム。研修の質の担保につながるほか、出産・育児等で研修を中断して再開した場合でも、研修実績が引き継ぐことができるメリットがある。そのほか、内科専門医では、初期の臨床研修、あるいはサブスペシャルティとの連動研修も可能とするなど、多様な研修プログラムを用意する方針。

 次回の第3回会議では、外科、小児科、整形外科、麻酔科、精神科、産婦人科、救急科の7領域の各学会からヒアリングを行う予定。これらの学会は、過去3年間の専攻医の平均採用実績が350人を以上であり、原則として都道府県ごとに複数の基幹施設を置く基準とすることが求められている(『新専門医制、8月から専攻医の募集開始を予定』を参照)。

 新整備指針、改正内容の実効性を求める

 第1回の本検討会の意見を集約し、厚労省は5月10日に日本専門医機構に対して対応を求める「事務連絡」を出していた。「専門医制度新整備指針」の対応方針は、それを踏まえたものだ。日本専門医機構理事長の吉村博邦氏が説明した(第1回の議論は、『「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記か』を参照)。

 東京大学大学院国際保健政策学教授の渋谷健司氏は、「意見を反映してもらった」と述べた上で、日本内科学会以外の他の学会でも、地域医療等に配慮した制度設計になっているかを確認するため、基幹病院における大学病院と市中病院の割合、研修プログラム制と研修カリキュラム制の割合などのデータについて、次回以降の会議での提出を求めた。

 聖路加国際病院副院長の山内英子氏は、前述の「改正の主な内容」の「2」で、「研修プログラム制が原則だが、相当の合理的理由がある医師等は研修カリキュラム制による専門研修を行うなど、柔軟な対応」とされていることから、「非常にありがたい改正」と評価。その上で、専攻医が、途中で研修プログラム制から研修カリキュラム制への変更を求めても、プログラム責任者等が認めない場合の対応を質した。吉村氏は、「その辺りの手順は、(新整備指針の)運用細則で定める」と回答した。

 対応方針以外にも、「専門医制度新整備指針」について幾つかの意見が出た。日本医療法人協会会長の加納繁照氏は、専門医取得後の更新条件が厳しくなると、市中病院等の勤務医の更新が難しくなる懸念を呈した。吉村氏は、「更新についても、新整備指針では地域医療への配慮を求めている。地域に勤務している医師に、過度な負担が生じないようにする」などと回答。

 関連して山内氏も、専門医の更新と指導医取得のハードルが高いと、市中病院等に専門医・指導医が少なくなり、結果的に専攻医が採用できなくなる懸念もあるとした。参考人として出席した日本専門医機構副理事長の山下英俊氏は、「その通りだ。そのため以前よりも、指導医を取得しやすくした学会がある」と説明、地域の病院において指導医の確保が難しい場合の対応も検討するとした。

 都道府県協議会、活動への懸念も

 都道府県協議会とは、新専門医制度について、「地域医療に配慮した研修体制を形成するための、地域の医療の関係者が協議する場」。2016年1月に厚労省の「事務連絡」で、都道府県に設置を求めていた。47都道府県で設置済みだが、その運営状況がカギとなる。

 都道府県協議会の開催状況や議論の内容を質問したのは、日本医師会副会長の今村聡氏。厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、活動実績について現在照会中であり、「活発な県もあるが、(2017年度開始予定だった)新専門医制度が延期されため、開催を待っているところもある」と答えた。

 山内氏は、既存の地域医療支援センターと、都道府県協議会との関係について質問。武井課長は、「既存の仕組みと連携しながら進めていくのが前提」と回答した。

 全国自治体病院協議会会長の邊見公雄氏も、都道府県協議会が機能しているのは、山形県、山梨県、静岡県、島根県くらいにとどまると指摘。

 山内氏や邊見氏の発言を踏まえ、山下氏は、自身が医学部長を務める山形大学の「蔵王協議会」の例を説明。医師だけでなく、県内の全ての医療関係者が参加し、教育だけでなく、医療や研究などを総合的に協議する場であり、その一環として、新専門医制度を議論しており、総合的な組織での検討が有用であると説明した。

 相馬市長の立谷氏は、自治体の首長ではまだ新専門医制度自体への理解がないとし、「協議会が、どの程度、役割を果たせるのかは疑問」と述べ、協議会の活動をチェックしたり、全国的な議論をする場として、「全国レベルでの組織を作る必要があるのではないか」と提案した。これに対し、今村氏は、「全体を包括するような議論の場はあっていいが、まずは都道府県協議会を機能させることが大切」と述べ、都道府県協議会の実態について検証も、本検討会のミッションであるとした。

 奈良県知事の荒井正吾氏は、欠席したため、文書で、「都道府県協議会に対しては、日本専門医機構経由ではなく、協議会の求めに応じ、地域の基幹施設から直接情報を得る仕組み」など、地域の実情に応じて運営できる仕組みを求めた。



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170526125421
専門医制度担う都道府県協議会、機能強化目指す
厚労省、担当者向けの説明会開催へ

2017年05月26日 14:00 CB news

 厚生労働省は、日本専門医機構が認定する専門研修プログラムの把握・調整を担う「都道府県協議会」に関する説明会を開催することを決めた。都道府県などの担当者を対象に来月中に開催する予定。専門医制度をめぐる最近の動向や協議の進め方などを伝え、協議会の機能・調整力の底上げを図りたい考えだ。【新井哉】

 専門医制度では、各領域(内科、精神科、外科など19領域)の研修プログラムを同機構が承認するが、都道府県、医師会、大学、病院団体などで構成する都道府県協議会と事前に協議することになっている。

 協議会は47都道府県で設置済みだが、関係者からは、自治体によっては十分機能しておらず、大学病院を中心とした研修プログラムが組まれた場合、医師の偏在が進みかねないといった懸念が出ていた。

 厚労省は昨年1月、協議会に関する通知を都道府県に出したが、協議会の枠組みが一部変更される見通しとなったため、協議会の目的、プログラムの把握・調整の進め方などを改めて周知する必要があると判断した。同機構の協力を得て6月中をめどに説明会を開催する方針だ。

 6月以降、各領域の研修プログラムの公開が相次ぎ、協議会を開催する回数が増えることが見込まれている。このため、厚労省は今年度の開催経費として前年度比2倍超の3100万円を補助する予定。



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170526141253
地方にバランスよく若手・女性医師配置を
全自病が厚労省などに要望書

2017年05月26日 15:00 CB news

 全国自治体病院協議会(全自病)と全国自治体病院開設者協議会は26日までに、新専門医制度や精神科医療などに関する要望書を厚生労働省と総務省に提出した。新専門医制度については、地方にバランスよく若手・女性医師が配置されるような仕組みとし、勤務医の地域偏在を是正するよう求めている。【新井哉】

 要望書は、新専門医制度や精神科医療、地域医療構想・医師確保、看護師確保対策など12項目で構成。来年度から始まる新専門医制度については、地方の研修施設への専攻医の応募が少なく、地域医療の確保に支障を来す可能性があることを挙げ、「その対応は喫緊の課題」とした。

 新専門医制度では、こうした問題を解決した上で、若手・女性医師らの地方勤務の促進を図り、「勤務医の地域偏在や診療科偏在が是正されるよう進める」と要望。新専門医制度によって、こうした偏在が助長されないか国が責任を持って検証し、必要な対策を講じるよう求めている。

 地域医療構想については、構想に基づいて病床の機能分化・連携を推進する際は、「機能転換によって自治体病院の経営に影響を及ぼすことのないよう財政支援策を講じる」と要望。精神科医療に関しても「高齢化が進み、認知症対策をはじめ精神科と一般科が協同した地域医療体制の構築が喫緊の課題」とし、病院勤務医の不足と医師の地域偏在を抜本的に改善する必要性を挙げている。



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170526104226
医師の働き方で今年秋にも見解
全自病

2017年05月26日 11:30 CB news

医師の働き方で今年秋にも見解

 全国自治体病院協議会(全自病)の邉見公雄会長は25日に記者会見を開き、医師の働き方に関する全自病としての見解を、早ければ今年秋にもまとめる方針を明らかにした。【敦賀陽平】

 政府が3月にまとめた「働き方改革実行計画」では、残業時間に罰則付きの上限規制を設ける法律の施行から5年間、医師の労働時間を規制の対象外にするとともに、2019年3月をめどに、医師の労働時間の規制の在り方について結論を得ることになっている。

 邉見会長は会見で、主治医が退院まですべての診療に責任を持つ「主治医制」や、正当な理由がなければ診察・治療を拒めない医師法の「応召義務」があることなどから、「医師の労働については(規制が)難しい」と指摘。その上で、「まだ2年間の猶予があるが、秋ぐらいまでに議論を煮詰め、パブリックコメントも頂いた上で、全自病の方針を国に出したい」と語った。

■病床の整備は「地域の実情で」

 また、邉見会長は地域医療構想に沿った地域ごとの病床再編ついて、「田舎では、自治体病院がほとんど救急車を受けているのに、『(自治体病院の)急性期病床を減らせ』『民間病院は税金をもらっていない。死活問題だから、お前たちから減らせ』と言う人が多いが、地域によって違う」と主張し、地域の実情に応じた病床の整備を改めて求めた。



http://www.medwatch.jp/?p=13877
専門医整備指針、女性医師に配慮した柔軟な対応などを6月2日の理事会で明記—厚労省検討会
2017年5月26日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

専門医制度の憲法とされる「専門医制度新整備指針」に、▼専門医取得が義務でない▼プログラム制が原則だが、地域医療従事者や女性医師などに配慮し、カリキュラム制も含めた柔軟な対応を行う▼研修の中心は大学病院のみでなく、地域の中核病院なども含める—ことなどを明記する—。

25日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」で、吉村博邦構成員(日本専門医機構理事長、地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)がこのように報告。検討会の了承が得られたため、6月2日開催予定の日本専門医機構理事会で新整備指針が改訂・修正されます。

ここがポイント!
1 専門医制度新整備指針の見直し方針を検討会が了承、機構で6月に正式改訂
2 研修プログラムをチェックする都道府県協議会、6月に厚労省が運用通知を発出
3 内科学会、J-OSLERシステムで研修実績を把握し「柔軟な対応」を可能に

専門医制度新整備指針の見直し方針を検討会が了承、機構で6月に正式改訂

数多ある専門医の質を担保し、国民に分かりやすい制度とするため、「専門医の研修プログラム認証や、専門医の認定を各学会と日本専門医機構が共同して行う」新専門医制度が来年度(2018年度)から全面スタートする予定です。ただし、質の担保を求めるあまり「研修を行う施設(病院)の要件が厳しすぎれば、地域医療の現場から医師が去ってしまい、医師の地域偏在が進み、地域医療が崩壊してしまう」との指摘を受け、日本専門医機構では昨年(2016年)12月に策定した『専門医制度新整備指針』や、下部規定の中で「地域医療への配慮を行う」旨を示しました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

しかし、全国市長会などは「さらなる配慮が必要」と強く要請。4月24日の前回検討会でも、厳しい指摘が構成員から相次ぎ、日本専門医機構では新整備指針の見直しを検討。5月12日の理事会で次の4点を明記する見直し方向が固まり、25日の検討会にその旨が日本専門医機構の理事長である吉村構成員から報告されました。

(1)「専門医はすべての医師が取得しなければならないものでなく、医師として自律的な取り組みとして位置づけられるものである。国民に信頼される安全・安心な医療提供のための専門研修は適正に施行されるべき」旨を明記

(2)「基本領域の専門医研修はプログラム制が原則だが、▼専門医取得を希望する義務年限を有する医大卒業生▼地域医療従事者▼出産・育児などで休職・離職を選択した女性医師など▼介護・留学など合理的理由のある医師—などでは、カリキュラム制などの柔軟な対応を行う」旨を明記

(3)「全般的、幅広い疾患の症例の豊富な支柱病院を重要な研修拠点とし、大学病院に研修先が偏らないようにする。連携病院で採用した専攻医が希望した場合、長期間連携病院での研修を設定するなど柔軟なプログラムを作成する」旨を明記

(4)「機構の研修プログラム承認に際し、▼都道府県▼市町村▼医師会▼大学▼病院団体—などからなる都道府県協議会と事前に協議し決定する。承認後も、連携施設などの医師配置状況を含めて協議会に情報提供する。協議会の意見を受け、機構は協議会・関係学会と協議・調整し改善する」旨を明記

この見直し方向について、「(2)の柔軟な対応を担保するための仕組みが必要。指導医の要件についても臨床を重視すべき」(山内英子構成員:聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)、「専門医資格の更新についてハードルが高くなりすぎないようにすべき」(加納繁照構成員:日本医療法人協会会長)、「基幹施設の状況について、日本専門医機構などを経由せず、直接、都道府県協議会に情報提供できる迅速な対応を図るべき。協議会では、研修プログラムだけでなく連携施設の医師配置も協議できるようにすべき」(荒井正吾構成員:奈良県知事、林修一郎・奈良県医療政策部長が代理出席)といった注文が付いたものの、大枠で了承されました。日本専門医機構では6月2日に理事会を開き、新整備指針の改訂を決定する予定です。

研修プログラムをチェックする都道府県協議会、6月に厚労省が運用通知を発出

上記のうち(4)の都道府県協議会は、地域の医師偏在が助長されないよう、都道府県単位で▼行政(都道府県・市町村)▼医師会▼病院団体—などの関係者が出席し、専門医研修プログラムについて「これまでに専門医研修を行っていた施設が漏れていないか」などをチェックする組織です。

厚生労働省は昨年(2016年)1月に、都道府県に対して「協議会設置に関する通知」を発出していますが、厚労省医政局医事課の武井貞治課長は、「最新の動向(新整備指針の見直しや、検討会での議論など)を踏まえて、改めて協議会の設置・運営に関する通知を6月に発出する」考えを示しました。

協議会は全都道府県で設置されていますが、専門医制度の全面施行が1年延期されたため開催状況にはバラつきがあるようです。今村聡構成員(日本医師会副会長)は「開催状況などを検討会に報告してほしい」と要望しています。

また山内構成員は、「専門医だけでなく、地域医療全体を包括して議論する協議の場とすべき」と提案。山下英俊参考人(日本専門医機構副理事長、山形大学医学部長)も「山形県では蔵王協議会として、▼大学▼医師会▼行政▼病院▼看護協会―などすべての地域医療関係者が集い、医師教育だけでなく、医療事故防止や研究などを総合的に検討している。多層的な組織で情報交換することが望ましい」と山内構成員に賛同しました。

この点、武井医事課長は、「都道府県協議会について、昨年(2016年)に発出した通知では『地域医療対策協議会などを活用する』よう示している」ことを説明。地域医療対策協議会は、▼行政▼医師会▼大学▼病院▼住民—らが参画し、都道府県内の医療提供体制や医師確保などについて幅広く協議する場であり、厚労省も山内構成員や山下参考人と同じ方向で考えていることが分かります。

なお、住民に最も身近な自治体である市町村の立場で出席した立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)は「都道府県協議会の全国組織を立ち上げる必要がある」と指摘。尾身茂構成員(地域医療機能推進機構理事長)も「全国と各都道府県とで情報をフィードバックしあうメカニズムが必要」と賛同しています。もっとも今村構成員は「まずは各都道府県で協議会を開催してもらうことが重要」と指摘し、全国組織の設置などは中長期的に考えるべき論点かもしれません。

内科学会、J-OSLERシステムで研修実績を把握し「柔軟な対応」を可能に

このように新専門医制度に対しては「地域医療への配慮」が強く求められています。25日の検討会では、内科領域における「配慮」に向けた取り組み状況も報告されています。

内科領域では、「専門医の質の担保」(必要な研修の確保)と「地域医療への配慮」との両立を目指し、次のような対応を行っています。

▼研修プログラムに参加する施設の基準を一部緩和し、基幹施設・連携施設・特別関連施設(一定要件を満たせば指導医が常勤していなくても、研修プログラムに参加できる)のない2次医療圏を解消した

▼研修プログラムの基幹施設は市中病院を中心とし、大学病院が連携施設になるケースもある

▼J-OSLERというWEBシステムを構築し、そこに研修実績などを登録することで研修状況をリアルタイムで把握できるようにした。これにより、一時研修が中断しても、過去の研修実績が研修再開時に引き継がれ、柔軟な対応(実質的なカリキュラム制)を可能としている

▼3年間じっくりと内科の研修を行う「標準研修コース」に加えて、早期のサブスペシャルティ領域研修を行う「サブスペ重点コース」や、余裕を持たせて内科領域とサブスペシャルティ領域の研修を行う「内科・サブスペ混合コース」など、多様な研修コースを準備し、専攻医の実情にあった研修を可能としている

この内科学会に取り組みを検討会構成員は高く称賛。とくに「J-OSLERシステムによって、研修実績・状況をリアルタイムで把握できることで、質を担保しながら柔軟な対応(実質的なカリキュラム制)を可能としている」と渋谷健司構成員(東京大学大学院国際保健政策学教授)は評価し、「日本専門医機構から各学会に対してこういったシステムの構築を呼びかけるべき」と提案しています。

なお立谷構成員から「内科学会の配慮は素晴らしいが、専門医資格取得要件の中に『論文』発表を含めている点に違和感を覚える」と指摘がありましたが、宮崎俊一参考人(日本内科学会副会長)や山下参考人は「データをもとにして1つの症例にじっくりと向き合うことが、優秀な医師養成のプロセスには不可欠である」と説明し理解を求めました。この点、渋谷構成員は「『2編の学術発表または論文発表』とされている。3年に2編程度の学術発表は必要であろう」とコメントし、内科学会の要件を支持しています。

検討会では、次回会合に▼外科▼整形外科▼産婦人科▼小児科▼救急医療▼麻酔科▼精神科—の7学会を招き、同様に「地域医療への配慮」に向けた取り組み状況についてチェックを行う予定です。なお武井医事課長は、今後の検討会論議について「専門医制度は、機構の整備指針→学会による整備基準→研修プログラムという流れで制度を詳細に規定していく。検討会でも同じ流れで議論していく必要があるのではないか」との考えを示しています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/532301
真価問われる専門医改革
内科専門医、基幹施設8割以上は市中病院
厚労省検討会で説明、「J-OSLER」で質担保と柔軟な運用

2017年5月26日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本内科学会は5月25日、厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第2回会議で、「新しい内科専門医制度 制度移行に向けた特徴的なポイント」と題して、地域医療への配慮と専攻医のキャリア形成への配慮という2つの視点から説明した(本検討会の議論は、『新整備指針の「4つの対応方針」、厚労省検討会が了承』を参照。資料は、厚労省のホームページ)。

 地域医療への配慮では、研修プログラム数は545で、基幹病院のうち市中病院が8割以上を占め、研修施設数は現行制度の2.4倍に増え、全344医療圏にわたる。キャリア形成についても、「J-OSLER」(専攻医登録評価システム)の活用で、研修の中断・再開・変更を容易にするほか、研修の質を担保。さらに早期のサブスペシャルティ取得にも配慮し、最短では初期研修修了後4年で、内科専門医とサブスペシャルティの取得が可能だ。

 同学会の説明に対して、相馬市長(全国市長会副会長)の立谷秀清氏は、一部再考を求めたものの、「前回(4月24日の本検討会)の会議で、地域医療を守る立場で発言した意見が、内科専門医制度には相当盛り込まれている」と受け止めた。さらに立谷氏は、早期にサブスペシャルティを取得する希望者を念頭に、内科専門研修では「初期研修の研修実績を大幅に取り入れて工夫」としている点を評価、新専門医制度の議論を機に、初期研修の見直しにも発展させるべきと主張した。

 東京大学大学院国際保健政策学教授の渋谷健司氏は、「J-OSLER」を評価。国際標準の専門医制度構築には、客観的なデータベースによる「見える化」と質の担保が重要である上、研修プログラム制と研修カリキュラム制の双方が可能な柔軟な制度にするためにも、「J-OSLER」などで研修実績の引き継ぎを容易にすることが求められるとし、内科以外の基本領域でも必要なことから、「日本専門医機構こそ、このようなデータベースを構築すべきではないか」と提案した。

 「内科専門医+サブスペシャルティ」、4年で取得可能

 内科専門医制度について説明したのは、認定医制度審議会副会長の宮崎俊一氏と、専門委員(認定医制度担当)の鈴木昌氏。

 地域医療への配慮では、研修施設の拡大が柱。2015年度頃に、新専門医制度に向けて検討していた時点では、研修プログラム数が200~300となる可能性も予見されたが、その後、基幹施設の条件を見直したり、施設基準を緩和した特別連携施設を設けた結果、2016年度の段階では523となり、うち8割以上は市中病院が占める。大学病院が連携施設になり、基幹病院の市中病院を補完する研修プログラムもある。

 さらに研修内容に柔軟性を持たせたり、各施設に手挙げを促した結果、研修プログラム数は545まで増え、研修施設(基幹、連携、特別連携の各施設の合計)は、現行制度の1204施設から、2.4倍の2937施設まで増加、うち200床未満が1723施設(58.7%)を占める。研修施設の分布も、現行の294医療圏から、全344医療圏に増加。

 専攻医のキャリア形成については、(1)専攻医のさまざまなキャリア志向に応じた多様な研修コースを設定、研修の中断・再開・変更が容易になるよう、「J-OSLER」も導入、(2)修了要件の見直しやプログラムの改善をリアルタイムで客観的に検証するため、「J-OSLER」で研修状況等を把握、(3)早期のサブスペシャルティ取得志向に配慮(初期研修の研修実績を大幅に取り入れて工夫)――などの配慮をしている。

 現行制度は、「内科認定医研修1年+サブスペシャルティ研修3年」が基本。新専門医制度では、「内科専門研修3年+サブスペシャルティ研修3年」のほか、サブスペシャルティの早期取得を目指す場合、「内科・サブスペシャルティ混合タイプ」として最短4年の研修プログラムも可能だという。ただし、いずれの場合も、内科研修の修了要件は同じだ。

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内科専門研修の到達目標(日本内科学会、2017年5月25日の厚労省「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」提出資料)

 さらに、「研修プログラム制をフレキシブルに運用することによって、研修カリキュラム制と同様の研修を担保することができる」(宮崎氏)との考え方で、研修期間の途中でも、研修の延長を認めるほか、「J-OSLER」の活用で、ライブイベントなどで研修プログラムの中断・再開・変更の場合にも、研修実績を引き継ぐことが可能とした。「J-OSLER」は日本内科学会が独自に開発した、症例や病歴要約の登録、研修技能・技術の登録、指導医やメディカルスタッフの評価などを登録するシステム。

 「学術発表または論文発表」は高いハードルか
 相馬市長の立谷氏が再考を求めたのは、「所定の2編の学術発表または論文発表」が、修了要件になっている点。立谷氏は、「内科専門医は、当初はハードルが高く、優等生以外は排除する理屈に思えたものの、見直しにより、『皆が、がんばって内科専門医を取得してほしい』という制度に変わったと指摘、しかしながら、地域医療に従事する医師に論文執筆を課すのは、「間尺に合わない」としたほか、メディカルスタッフによる専攻医評価に疑義を呈した。そのほか、初期研修の研修実績を取り入れた内科専門研修になっている点は評価したものの、「初期研修が、日本の医療にどれほど大きな役割を果たしたのか。初期研修をもう少し改善すべきであり、そこから議論を始めなければいけない」との問題も提起した。

 論文への質問に、宮崎氏は、「学術発表または論文発表」であり、学術発表は地方会での症例報告でも可能であり、「医師の出発点として、3年間のうち2回程度は発表をした方がいい」と説明。メディカルスタッフによる評価については、「昨今、医療事故あるいは患者接遇などで紛争になることが多い。メディカルスタッフにも、日頃から専攻医の態度などを評価してもらうことが有意義ではないか」と答えた。

 東大の渋谷氏は、専門医制度のベンチマークになり得るとし、「症例報告はいいのではないか」と述べたほか、参考人として出席した日本専門医機構副理事長の山下英俊氏は、「症例報告には、学術的な目的のほか、患者の病態をゆっくりと考える機会を作る意味がある。ハードルを高くするというより、教育、優れた医師を育成するための大事なプロセス」とコメントした。

 専門研修のデータベース、必要との指摘
 「J-OSLER」について、渋谷氏は評価する一方、専門研修の客観的な質の担保のほか、研修プログラム制と研修カリキュラム制を柔軟に運用するためには、内科以外の領域でも同様のシステムが必要だとし、「日本専門医機構こそ、このようなデータベースを構築すべきではないか」と提案した。

 聖路加国際病院副院長の山内英子氏も、研修プログラムを変更する際に、「自分の症例を持って行けることはすばらしい」と評価、さらに外科系領域で使用している「NCD」(National Clinical Database)では、データを用いた研究も可能になったことから、「J-OSLER」のようなシステムは必要としたものの、入力する負担などの軽減は必要だとした。

 日本眼科学会理事長でもある山下氏は、眼科でもNCDの活用を検討したが、症例登録の在り方が異なることなどから難しいと判断した経緯を紹介、データベースの必要性は認めたものの、「各基本領域で統一するのは難しい」と答えた。

 日本医療法人協会会長の加納繁照氏も、「J-OSLER」について質問。費用がかかることから、「これは内科領域だけでなく、他の学会でも使えるのか。各基本領域でJ-OSLERのようなシステムを用意しなければならないのか」と質問した。

 宮崎氏は、初期とメンテナンス費用がかかるため、専攻医から使用料を徴収して運営することを想定していると説明。鈴木氏は、「内科領域への転用は可能かもしれない」と述べたものの、手技などの登録は想定していないと説明。

 そのほか、地域医療機能推進機構(JCHO)理事長の尾身茂氏は、総合診療専門医と連携について質問。「幅の広いジェネラリストを養成するため、研修の段階で何か協力できないのか。ぜひ考えてもらいたい」と求めた。宮崎氏は、総合診療専門医の3年間の研修のうち、1年間は内科研修になっていることから、「総合診療専門医の研修については、内科学会が全面的に協力する。J-OSLERの使用も求めていきたい」と回答した。



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170525202235
専門医取得「義務付けていない」、指針に明記へ
機構が検討会に改訂案提示

2017年05月25日 21:00 CB news

 日本専門医機構の吉村博邦理事長は25日、厚生労働省の医師養成と地域医療に関する検討会の会合で、専門医制度の整備指針の改訂案を示し、「専門医取得は義務付けていないことを整備指針に明記する」と述べた。この改訂案については、来月2日に開催予定の同機構の理事会で正式に決定される見通しだ。【新井哉】

 前回の会合で構成員から、「専門医取得は義務付けではない」などとの意見が出たことを踏まえ、厚労省は今月10日、同機構に対して整備指針の修正を含めた対応を求める事務連絡を出した。

 これを受け、同機構は改訂案をまとめた。それによると、専門医制度について、現在の整備指針では、法的に規制されるべきものではないと位置付けていたが、改訂案では、「専門医はすべての医師が取得しなければならないものではなく、医師として自律的な取り組み」と説明し、義務付けではないことを強調した。

 また、研修の中心となる施設に関しても、検討会で大学病院に偏ることを危惧する意見が出ていたため、改訂案では「地域の中核病院等」も研修の中心に位置付けた。

 その理由について、吉村理事長は「専門医となるのに必要となる全般的、幅広い疾患の症例の豊富な市中病院を重要な研修拠点とし、大学病院に研修先が偏らないようにする必要がある」と説明した。

 このほか、出産や育児などで休職・離職を選択した女性医師に配慮した研修を行うことや、同機構が各領域の研修プログラムを承認する際は、市町村を含めた都道府県協議会と事前に協議することも整備指針に記載する方針だ。



http://www.asahi.com/articles/ASK5V6GNWK5VUBQU014.html
「新専門医こそ地域医療の担い手」大学側が市長会に反論
野中良祐2017年5月26日19時33分 朝日新聞

 2018年度に開始予定の新専門医制度をめぐり、国公私立大学の医学部で構成する全国医学部長病院長会議は26日、地域医療に支障をきたすと懸念する全国市長会に反論する会見を東京都内で開いた。

 市長会は、新制度によって若手医師が中小規模の病院から、研修施設となる大学病院に移り、若手医師が医局生活を強いられるなどと危惧。卒後2年の初期臨床研修を終えた時点で総合診療ができるようにすべきだと主張している。

 これに対し、同会議会長の新井一・順天堂大学長は「過去の封建的な医局に焦点を当てている。地域医療の中心的役割を担う、現在の大学病院の役割を正しく理解していない」と反論。「現行では、2年の卒後研修をしても一人前の医師としてはまったく不十分。(新制度での)専門医こそがまさに地域医療の担い手になる」と語った。



https://www.m3.com/news/iryoishin/532401
真価問われる専門医改革
「大学病院への過度な不信感に基づく誤解」
全国医学部長病院長会議、全国市長会に反論

2017年5月26日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議は5月26日に記者会見を開き、全国市長会の「国民不在の新専門医制度に対する緊急要望」に対する反論を、同25日に塩崎恭久厚労相に提出したことを公表した。

 反論は、卒後2年の臨床研修を修了しても一人前の医師としては不十分であり、卒後3~5年の専門研修の必要性を指摘。その上で、全国市長会の要望は、過去の封建的な「医局」のみに焦点を当てており、「大学病院への過度な不信感に基づく大いなる誤解」であるとし、現在の大学病院は、質の高い安心安全な医療、チーム医療の実践の場であり、地域医療や女性医師支援・キャリア支援にも積極的に行うほか、卒前と卒後のシームレスな医師養成の制度設計にも関わっていると説明。専門医制度と大学病院が、地域医療や我が国の医療・医学の発展において果たす役割は大きいとし、関係者の理解を求めている。

 同会議会長の新井一氏(順天堂大学学長)は、「確かに過去には硬直した医局システムがあったが、今はない。地域医療に貢献しているなど、大学病院の役割を正しく理解していないのではないかと懸念し、やはり反論せざるを得ないと考えた」と、反論に至る経緯を説明した。


 全国市長会の緊急要望は4月14日に塩崎恭久厚労相に提出(『「国民不在の新専門医制度を危惧」、全国市長会』を参照)。その後、厚生労働省の新専門医制度をめぐる議論において緊急要望が影響を及ぼしていたことから、国立大学医学部長会議も5月17日に、反論を公表していた(『「重大な事実誤認、看過できず」、国立大学医学部長会議』を参照)。

 5月26日の記者会見では、反論に関連して、新専門医制度、大学医局の役割や地域医療との関係についての質問が出た。新専門医制度については、前日25日の厚生労働省の検討会で、日本専門医機構の「専門医制度新整備指針」の改正方針が了承された(『新整備指針の「4つの対応方針」、厚労省検討会が了承』を参照)。

 全国医学部長病院長会議の「専門医に関するワーキンググループ」座長の島田眞路氏(山梨大学学長)は、「専門医取得は義務ではない」という新整備指針の改正方針について、「やはり患者を診る臨床医であれば、基本的には19の基本領域のいずれかで、きちんとした研修を受けてもらい、質を保証すべきと考えている」との見解を述べた。

 大学医局の役割に関して、同会議副会長で広報委員会委員長の稲垣暢也氏(京都大学医学部附属病院長)は、「良質な医師の養成が、医局の一番重大な使命だと考えている。地方では、医局人事で地域医療が保たれており、それを否定的に捉えると、逆に地域医療の崩壊につながりかねない」と理解を求めた。

 同会議医学教育委員会委員長の山下英俊氏(山形大学医学部長)は、「医局は、教育のためのシステムであり、山形大学は、医局機能を強化すると明言している」と紹介、医師は生涯にわたって教育・研修をしていく必要があり、それを支えるのが大学医局であるとした。一方で、医師の人事については、各医局独自に行うのではなく、「山形大学蔵王協議会」内に、「地域医療医師適正配置委員会」を設置、医師以外の人も交え、透明性を確保しつつ、適材適所を進めているという。

 さらに大学医局と地域医療との関係について、新井氏は、「大学医局は、医師の質保証と地域医療への配慮を両立させるための重要な機能を果たしている。それが否定されると、いったいどうなるのか」と提起した。「医師養成の基本は、屋根瓦方式であり、これができるのが医局」とし、新専門医制度では、研修プログラム制の採用により、地域医療に配慮しながら研修できる体制になっていると説明した。

 5つの柱で全国市長会に反論
 全国医学部長病院長会議は、全国市長会の6つの緊急要望に対し、5つに分けて反論。特に医師養成に携わる立場から強調したのは、「医師の診療活動開始年齢の遅延と医療コスト増大」と「.若手医師たちに義務的に医局生活を強いる理不尽」という二つの緊急要望への反論だ。

 「医師の診療活動開始年齢の遅延と医療コスト増大」については、「専門医となるためには、しかるべき研修施設で、しかるべき指導医・指導体制のもと、卒後臨床研修後3~5年の勉学、研修は必要最低限」と指摘。「現行制度では2年の卒後臨床研修を修了しても、一人前の医師としては全く不十分で、独り立ちはできない」とし、専門的な知識や技術を持たない医師が増えれば、結果として質と安全性が低い医療が蔓延することになり、「それこそが医療費の無駄遣い。国民の理解が得られるのか。大いに危惧する」と反論した。

 「.若手医師たちに義務的に医局生活を強いる理不尽」については、「過去において硬直した医局システムが存在したのは事実」と認めたものの、批判を真摯に受け止め、自己改革を進めてきたとし、現在の大学病院は、質の高い安心安全な医療、患者中心のチーム医療を実践し、地域医療、女性医師支援・キャリア支援、医学教育の改革や卒前・卒後のシームレスな医師育成の制度設計などにも積極的に関わっていると主張した。

 そのほか、「中・小規模病院が危機に陥る懸念」と「地方創生に逆行する危険と医師偏在の助長」については、「研修プログラム制を原則取ることで、地域の病院にも医師が循環することが担保される」「研修カリキュラム制は、例外的に認めている」とし、医師偏在は2004年度に始まった臨床研修制度にその原因があり、「新専門医制度は改善こそすれ、悪化させるものではない」と反論した。

 「初期研修制度導入時に立ち返りPDCA で考えるべき」に関しては、「まさにPDCAの発想で対応し、同制度の反省のもとに生まれたのが、新専門医制度と言える」と指摘。「専門職自律という国民不在の議論」については、プロフェッショナルオートノミー(専門職自律)は、医師の行動規範であり、「日本専門医機構が、専門職自律を専門医育成の基本的な概念とすることは、極めて自然」との見解を示した。



https://www.m3.com/news/general/532371
伊万里松浦病院の移転で特例適用を 松浦市が県に要望
2017年5月27日 (土) 長崎新聞

 松浦市は25日、誘致を目指す伊万里松浦病院(佐賀県伊万里市)を市に移転するために必要な特例措置の適用など10項目を県に要望した。

 松浦市は、伊万里松浦病院を市内に移転する方向で、病院を運営する独立行政法人地域医療機能推進機構と協議を進める。しかし同市を含む「佐世保県北医療圏」の病床数が基準を上回っているため、同機構は県と国から特例措置の適用を受ける必要がある。

 友広郁洋市長は市内に中核となる公的医療機関がなく、救急患者の7割が市外に搬送されている実情などを挙げ、病院移転の必要性を強調した。

 中村法道知事は「地域の医療ニーズに応えることは大きな課題。特例措置を視野に手続きが進められるよう、まずは地元で合意形成を図ってほしい」と応じた。

 このほか老朽化が進む松浦魚市場の再整備への支援や九州電力玄海原発の再稼働に絡む原子力防災対策の充実を国に働き掛けることなどを求めた。
伊万里松浦
G3作成:松浦市伊万里市の地図/県境をまたぐものの隣接のほぼ同一の生活圏


  1. 2017/05/27(土) 06:20:26|
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5月21日 

http://www.excite.co.jp/News/column_g/20170520/asahi_2017051100039.html
病院難民が首都圏で続出! 中東並みの医師数で日本の医療は崩壊
AERA dot. 2017年5月20日 11時30分 (2017年5月21日 10時52分 更新)

 首都圏の医療システムは急速に崩壊しつつある。近年、相次ぐ病院閉鎖から、その様子をうかがい知ることができる。人口あたりの医師数は中南米以下、優秀な医師は地方に流出し、大学病院や私立病院は倒産、首都圏に病院難民が続出する――。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、迫りくる首都圏の医療崩壊を警告している。

*  *  *
 医師不足による入院診療の閉鎖は、首都圏ではありふれた話になりつつあります。

 2009年7月末には千葉県松戸市の新八柱台病院と五香病院、二つの民間病院が休止しました。二つの病院を併せて入院は124床。閉院時、両病院で合計約90人の患者が入院しており、松戸市立病院など近隣の病院に転院しました。

 11年末には、埼玉県の志木市立市民病院が「小児・小児外科入院診療の看板を下ろし、高齢者向けの訪問看護や在宅診療の充実などに比重を移そうと考えている」と発表し、小児科診療を止める方針を明らかにしました。小児科の常勤医は59~64歳の3人だけですから、継続のしようがありません。

 志木市立市民病院は、地域の中核医療機関でした。突然の話に市民は猛反対し、志木市は12年1月に有識者による志木市立市民病院改革委員会を設置しました。委員会では、短期施策として「大学病院の重点関連病院としての指定を要請する」ことが提言されました。志木市は日大医学部に医師派遣を要請しましたが、「若い医師が卒業後、研修の場とするには機能が十分ではない」(日大広報課)と断られてしまいます。結局、14年3月末で志木市立市民病院は閉院。民間の「TMG宗岡中央病院」として再出発しました。

 志木市によれば、収益源だった整形外科医の退職などにより経営が悪化し、10年度以降の4年間で総額約20億円の公費を投入し、病院の赤字を埋めてきたそうです。歳入約230億円の志木市にとり、大きな負担であったことは間違いありません。

 災害による影響で、医師不足に追い込まれた病院もあります。北茨城市立総合病院(現北茨城市民病院)では、福島第一原発事故の影響を受け、大勢の医師が退職しました。

 北茨城市立総合病院は199床の地域の拠点病院です。震災前は14診療科があり、16人の常勤医がいましたが、11年9月17日付けの東京新聞夕刊によると、3月31日付けで常勤医2人、4月30日付けで2人が退職したそうです。5月に着任予定だった医師も内定を辞退し、常勤医は11人に減りました。16年末時点で、常勤医は15人に回復しましたが、28人いた04年には遠く及びません。

 このような病院崩壊の例は氷山の一角に過ぎません。首都圏は、山手線の内部など一部を除き、どこも似たような状況です。このままでは、東京のベッドタウンに広大な「無医村地区」ができてしまいます。

 なぜ、医師が不足しているのでしょうか。それは、戦後、首都圏の人口が急増したのに対し、十分な医師が確保できていないためです。医師不足を議論する際には、人口あたりの医師数で考えるべきです。一人あたりの医師が診ることができる患者数には限界があるからです。

 首都圏は医師の絶対数は多いものの、住民も多く、住民の人口あたりに直すと、決して多くありません。人口10万人あたりの医師数は首都圏230人に対し、四国は278人、九州北部は287人。実に2割以上の差があります。

 東京都以外の首都圏の医師不足は、極めて深刻です。人口10万人あたりの医師数は東京都323人に対し、埼玉県159人、千葉県189人、神奈川県209人。これは、南米や中東並みの数字です。

 医師など医療資源が足りない地域では、十分な医療を受けられないために新生児死亡率が上がり、寿命も短くなる傾向があります。たとえば、15年度のトルコの新生児死亡率は1000人あたり7.1人、平均寿命は男性72.6歳、女性78.9歳です(日本の新生児死亡率は1000人あたり0.9人、平均寿命は男性80.5歳、女性86.8歳)。

 がんの手術のように、ある程度の時間をかけて準備できる医療は別として、外科や産科、小児科などの救急医療は近所に病院がなければ対応できません。埼玉県や千葉県の住民が、このような病気を発症すれば、なかなか引き受けてくれる病院が見つからないのです。

 ところが、埼玉県や千葉県に在住の方の多くは、地元で医師が不足しているという問題自体を認識していません。地元のメディアの影響力が弱いのも一因です。この地域の住民の多くは全国ネットのテレビをみて、朝日新聞や読売新聞など全国紙を購読しています。各県で地域のニュースも紹介されますが、その絶対量は少なく、地元で起こっていることを十分に伝えることはできていません。

 このため、住民は地元の問題を驚くほど認識していないのです。

 私が勤務した大宮赤十字病院のスタッフの中にさえ、「何かあれば、東京の病院に行くから大丈夫よ」という人がいたくらいです。

 医師不足は、政府や役所任せでは解決しません。メディアも含め、地域の総力を挙げて取り組むべき問題です。その際、メディアは重要な役割を果たすと考えています。

※『病院は東京から破綻する』から抜粋



https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/205734
深刻な首都圏の医師不足 元凶は厚労省と医師会!?
2017年5月20日日刊ゲンダイ

 日本の医療システムは今、根底から崩壊しつつある。原因は、医師の不足。しかも、その崩壊は首都圏から始まっているという。

 上昌広著「病院は東京から破綻する」(朝日新聞出版 1500円)では、医師である著者が、先進国とは思えぬ日本の医療崩壊のありさまについて明らかにしていく。

 地方からは、首都圏の医療体制は充実しているように見えるかもしれない。しかし、医師不足の問題は人口当たりの医師数で考える必要がある。1人の医師が診ることのできる患者数には限界があり、日本の人口分布は首都圏に偏り過ぎているためだ。人口10万人当たりの医師数を見てみると、四国では278人、九州北部では287人などとなっているのに対し、首都圏では230人と大きな差がある。

 さらに、東京都以外の首都圏の医師不足は極めて深刻だ。神奈川県の人口10万人当たりの医師数は209人、千葉県は189人、埼玉県に至っては159人で、これは新生児死亡率が高く寿命も短い、南米や中東並みの数字である。2013年、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75歳の男性が、25の病院から合計36回も受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡するという痛ましい事態が起きた。これも医師不足の弊害であると本書。

 医師不足解消には、医学部の新設や医学部の定員増員を行う必要があるが、これを阻む勢力がある。まずは、医師が増えると医療費も増えると考え、これを何としても避けたい厚労省。そして、医学部の定員増員で将来的なライバルを増やしたくない、日本医師会だ。医学部新設の是非を議論する文科省の検討会では、「数が増えて儲からなくなった歯科医のようになりたくない」と公言してはばからない医師会幹部もいるというから呆れるばかりだ。

 実は、この反対勢力と戦っていたのが厚労大臣時代の舛添前都知事で、10年間で医学部定員を5割増やすことを決定。2009年に与党となった民主党も、これを踏襲していた。しかし自民党政権となった現在、この方針はすっかりうやむやになっている。医療崩壊の実態と原因を、私たちは早急に知る必要がある。



https://www.m3.com/news/iryoishin/526566
医療維新
医師からの業務移譲、夢物語にあらず - 渋谷健司・厚労省ビジョン検討会座長に聞く◆Vol.3
「高付加価値、高生産性」体制の確立が先決

インタビュー 2017年5月20日 (土)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――報告書について、幾つか各論をお聞きします。「ビジョンの方向性」を打ち出し、それぞれについて「具体的アクション」を提示しています。例えば、タスク・シフティング、タスク・シェアリングを掲げ、診療看護師(仮称)の創設も打ち出しています。この辺りの実現可能性をどうお考えでしょうか。

 タスク・シフティング、タスク・シェアリングは、ビジョン検討会でヒアリングした病院をはじめ、日本でも幾つかの病院で既に実践されています。だからあえて、診療看護師(仮称)が可能な医行為の例として、「胸腔穿刺」などを例として挙げたのです。現行法の中でできるのだったら、なぜやろうとしないのでしょうか。中心静脈カテーテル留置も同様です。

 もちろん、タスク・シフティング、タスク・シェアリングは、医師から仕事を奪うゼロサム・ゲームが目的ではありません。本来医師がやるべきことに注力して生産性を上げるため、そして、連携をスムーズに進めることが目的です。ここは強調させていただきたいと思います。


若手医師や女性医師に向け、「医療は、全人生をかけて追求すべきプロフェッショナルな仕事。プロとして道を極めていただきたい」と語る、渋谷健司氏。
――報告書の「具体的アクション」は、実際に既に誰かが実践していることであり、実現可能性があること。

 はい、多くは今すぐにも可能であると思います。歯科医、薬剤師、看護師など、他職種へのタスク・シフティング、あるいはタスク・シェアリングは、国内外で現実に実践している方から聞いた話であり、別に突飛なことを言っているつもりは全くなく、夢物語とは考えていません。医療関係者は真面目な方が多いので、そうした人に勇気を持ってもらいたいというのが一番の思いです。

 確かに、タスク・シフティングなどについて、「以前、議論したけれど、難しかった」という話は何度も聞きました。民主主義社会なので、実際に施策として推進するには、関係者の間で議論し、コンセンサスを得ることは必要だと思います。しかし、ビジョン検討会では、医師への実態調査やヒアリングを通して、できるだけ現場からの声を拾おうとしました。現場の方に聞いてみてください。多くがビジョン検討会の案を支持してくれるのではないでしょうか。

 報告書を公表した後、報道やネットなどでのリアクションをチェックしています。各医療関係団体からのオフィシャルなステートメントは予想された通りです(『「医師養成数増は不要」は一致、各論には異論』などを参照)。ただアクティブな薬剤師さんや看護師さんのツイートを読むと、「よく言ってくれた」「自分たちが考える薬剤師の在り方はこのようなものだ」といった意見があります。限られた意見かもしれませんが、こうした意見さえも組織がバックにあるとなかなか言えない。

 タスク・シフティングやタスク・シェアリングに対しては、医師の間でも根強い抵抗があるのは知っています。しかし、もっとそれぞれの役割分担を明確にして、医師なら医師にしかできない仕事に特化し、専門性を追求し、医師としての生産性と付加価値を上げるべきでしょう。それがプロとしての責務だと思うのです。

――利害関係を離れて調整することが必要。

 先ほども触れたように、「新たなビジョンは、伝統的な政策形成の論理や利害調整を机上で展開するだけでは策定できない」と記載しています。もちろん最後は利害調整が必要になってきますが、そこに行く前にきちんとしたビジョンに基づき将来の方向性を示し、ある程度議論のハードルを上げておく。この報告書は、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」に回答した1万6000人の現場の医師の声に基づき、議論や調整をした上で公表され、多くの人が読んでいるわけです。利害調整の場でも、それからかけ離れた結論は出しにくいと思います。

――医師の需給については、あまり踏み込んでいません。

 いえ、医師の需給については、基本的な考え方はきちんと示したつもりです。報告書の中でも、「従来からの医師等の需給・偏在に関する議論は、ともすれば、行政単位等の地理的区分に基づいた外形的な従事者数や施設等をどう配置するかという点に重点が置かれていた」「『医師不足』の定義と判断基準が曖昧若しくは機械的なままでは、真の課題解決にはつながらない」(報告書の12~13ページ)と強調しました。

 そして、「今後必要となる医師数の在り方については、一概に増減の必要性を判断することが困難である」とも書きました。これは、逃げているわけではありませんし、正直なステートメントだと思います。そもそも、医師の必要数を規範的に決めるのは困難です。また、ある一面から見れば医師数の増加が必要でも、別の一面から見れば減らしても大丈夫ということもある。結局、神学論争になります。また時代とともに変わリます。だから、実態調査などのエビデンスを重視して行くべきだと思います。

 ただ言えるのは、医師需給の議論をする前に、ビジョン検討会報告書に盛り込んだ施策を実施し、今あるリソースで、生産性と付加価値を高めることをまずやるべきということです。そして、「長期的な医師需給の在り方を考える上では、本報告書に掲げる具体的方策の達成状況やそれぞれの効果を継続的に検証するとともに、定期的に働き方実態調査を実施した上で需給推計を行うことにより、その都度必要な医師数と養成数のバランスを図っていくことが必要である」(報告書の15ページ)と考えます。

――報告書の最後には「提言の実現に向けて」として、「厚労省内に、ビジョン実行推進本部(仮称)を設置し、5~10年程度の政策工程表を作成した上で、内閣としての政府方針に位置付け、進捗管理を行うよう求める」と記載しています。

 「保健医療2035」の時もそうですが、本部を置き、提案した施策の工程表を作らないと、トップが代わったら、実行が危うくなるからです。「5~10年程度」と書いたのは、希望ではありません。構成員の皆が、「報告書の具体的アクションは、5年、10年あれば、できる」と言っていました。それくらい早いスピードで進む可能性があります。医療のパラダイムが今、大きく変わりつつあるという実感を持っています。

――進まないと、優秀な人材は皆、海外に行ってしまう可能性がある。

 そうした時代が来ることも考えられます。現に、最も優秀な高校生は、東大ではなく海外の大学に直接行く時代ですからね。医療もそうしたグローバルな流れから無縁ではないと思います。だからこそ、専門医制度や日常診療において、国際標準の質を担保し、バリューに基づく医療を提供すべきであると思います。

――最後に、ビジョン検討会が対象とした、若手医師や女性医師へのメッセージをお願いします。
 ともすると、医療はコストセクターで、お金ばかりがかかる、“お荷物的”なイメージがあります。しかし、時代は変わりつつあります。医師をはじめとする医療者は、素晴らしい職業です。医療は、全人生をかけて追求すべきプロフェッショナルな仕事。プロとして道を極めていただきたいと思っています。今後の制度設計に当たっては、そうした現場で頑張る人たちが報われるような仕組みにしていく必要があるでしょう。ビジョン検討会報告書を自分たちの問題として、ぜひ読んでほしいと思います。



https://www.m3.com/news/iryoishin/529509
真価問われる専門医改革
「重大な事実誤認、看過できず」、国立大学医学部長会議
全国市長会による新専門医制度の「緊急要望」に反論

2017年5月17日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 国立大学医学部長会議は5月17日、記者会見を開き、全国市長会の4月12日の「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」に対して、「聞くべき主張もあるものの、我々国立大学医学部が担ってきた地域医療への貢献方策や実績に対する重大な事実誤認がある。看過できない」との反論を、5月17日に同会に提出したことを公表した(全国市長会の要望は、『「国民不在の新専門医制度を危惧」、全国市長会』を参照)。

 常置委員会委員長の内木宏延氏(福井大学医学部長)は、「地域医療を預かっているのは、市町村長だけでなく、我々国立大学もその役割を担っている」と指摘。その上で新専門医制度では、地域医療への配慮も重要だが、「優れた専門医制度を確立することが本来の目的」であり、その観点から議論していく必要性を訴えた。

 「反論」は42の国立大学医学部の総意であるという。内木氏は、この時期に反論に至った経緯として、4月24日に開かれた厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の議論を挙げ、「緊急要望が非常に大きな影響を及ぼしており、正しい方向に議論が進んでいないのではないかと懸念した」と述べ、アカデミアの立場から指摘すべき点をまとめたとした(『「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記か』を参照)。

  2018年度からの新専門医制度の開始について、内木氏は、「運用細則に全面的に賛成しているわけではないが、我々の立場としては賛成。新専門医制度の本来の趣旨は、医師偏在の解消ではなく、医療水準を維持・向上させることにあり、その観点から検討すべき」と答えた。

 常置委員会相談役の嘉山孝正氏(山形大学医学部参与)は、「従来の専門医制度は学会認定であり、専門医認定の基準にはバラツキがあり、中には書類を出し、試験を受ければ合格だった制度もあった。循環型の研修体制で、簡単な症例から難しい症例まで幅広く経験できる研修プログラム制を採用するなど、新専門医制度においては、日本専門医機構と学会が共に手を携えて、専門医の質を担保することが重要」と強調した。

 「反論」では、まず医学の進歩は著しく、医療水準の維持・向上には卒後医師の質保証が不可欠であると指摘。また、国立大学医学部42校のうち、29校は都道府県唯一の医育機関であり、過去数十年にわたって地域医療振興に貢献してきたと説明。その上で、全国市長会の緊急要望で、「新専門医制度が医師偏在を増長する」としている点に対し、「医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える」と指摘、同制度の改革なくして、地域の医師不足の根本的な解決がなされることはないとしている。嘉山氏は、「医師が40年間、臨床に従事すると、専門医研修は3年間にすぎない。その後の専門医がどのように分布するかが医師偏在問題にとって重要」とコメントした。

 さらに全国市長会の緊急要望における「若手医師たちに、義務的に医局生活を強いる理不尽」との指摘の具体的内容についても、下記のように反論している。

◆「若手医師たちに、義務的に医局生活を強いる理不尽」への反論
(1)「医療倫理の教育をはじめ学会が認める論文発表など基幹施設での過剰と思われる履修項目」
 医療倫理は、言うまでもなく医師にとって学習必修の項目。また実際に論文を書くことで、自分の行っている医療を深く論理的に考える力を養い、それが患者治療のレベルを向上させるために役立つ。OECDが世界一のレベルと評価している日本の医療は、日本の医師が「知識だけの医師」ではなく、「知識もあり、考えることもできる医師」であるため。従って、論文執筆は、医師として当然の責務であり、若手医師育成の重要なプロセス。決して過剰な履修項目には当たらない。
 また論文を執筆するのは必ずしも大学医局のみではなく、大学以外の医療施設でも多くの学会発表、論文発表がなされている。いわばこのような学術活動は医師の日常活動であり、決して大学医局生活を強いるものではない。

(2)「初期研修終了後に地域医療に従事している医師達を基幹施設に引き揚げることにより、地域医療にとって重大な支障を来す」
 国立大学医学部は、専門医育成において積極的に循環型教育を行ってきた。全国47都道府県のうち、33県では医育機関(医学部)が1つのみであり、これらの大学は、それぞれの所在地の医療機関にこれまで多くの医師を供給してきた実績がある。
 「今後も、都道府県の協議会などを通じて、医師の派遣、調整などを行っていくので、基幹施設に医師を引き揚げることはない」(内木氏)。

(3)「若手医師達の生活に多くの影響を与えることになる。特に若手女性医氏にとって、結婚・出産・育児の機会を奪い取ることになりかねない」
 国立大学病院の臨床各科では、女性医師のライフイベントなどに最大限配慮し、勤務形態や勤務場所の調整を行う。その上で各自の望むキャリアパスを実現するため、学位や専門医の取得を支援している。大学病院が若手医師を縛り付けるという論理は成り立たない。

(4)「社会的な制約や経済的条件により大学病院などに馴染まず、フリーの立場で地域医療に貢献する医師たちの権利・自由も奪われる」
 医師たるもの、一生の勉強が重要なので、卒業後専門とする領域の勉強をするのは当然。専門医を取得するかどうかは別として勉強する必要がある。勉強するための方法、場所を提供しているのが専門医制度であり、この精神に沿って大学病院は卒後教育を行っている。一方、この仕組みを全ての若手医師に強制することは不可能であり、実際強制はしていない。



http://www.huffingtonpost.jp/mareyuki-endo/faculty-of-medicine_b_16698634.html
「国立大学医学部長会議」はなぜ「全国市長会」への反論をしたのか?
遠藤希之
医学教育支援室長、臨床検査センター長(兼務)、東北大学病院臨床教授
投稿日: 2017年05月20日 16時27分 JST 更新: 2017年05月20日 16時27分 JST ハフィントンポスト

国立大学医学部長会議は5月17日、全国市長会の4月12日の「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」に対して、反論文を同会に提出したことを公表した。

(m3. Com. https://www.m3.com/news/iryoishin/529509)

この報道をみて、強い違和感を覚えたのは筆者だけではあるまい。市長会に「専門医機構」が反論するならわかる。しかし、なぜ、医学部長の集まりが市長会に反論するのか?

この疑問を解くには日本専門医機構の内情からみていくと判りやすいだろう。5月17日付けのJB press 「日本の医学界をいまだに仕切るゾンビ組織」に機構内情の詳しい解説が載っている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50005

この記事によると、機構では発足当初から、以前医師派遣の見返りに裏金を貰っていた経歴のある人物が事務局長を務めており(現在は退職)、現理事長も「地域医療振興協会」という医師派遣を行っている団体の「常勤顧問」だという。つまり医師派遣の見返りとして金銭を受け取る事に抵抗がない人間が機構中枢だった、ということだ。

結果として「基幹施設」が「連携施設」を従え、それらに医師を「循環」させるという仕組みが出来上がった。研修制度といいながら、基幹施設側にすれば使い勝手のいい「医師派遣制度」なのである。そして国公立大病院はほぼ全ての領域の「基幹施設」に手を挙げている。

国立大医学部長会議は、この「新」医師派遣「制度」がのどから手が出るほど欲しい、ゆえに「市長会」に筋違いの反論をしてしまった、と勘ぐられても仕方なかろう。

また、反論もとってつけたような内容が多く、それこそ「事実誤認」も目立つ。紙面の都合上、本論考では一点だけあげる。

「「医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える」と指摘、同制度の改革なくして、地域の医師不足の根本的な解決がなされることはないとしている。」

地域格差に対して過去にもしばしばなされてきた主張だ。しかしこの主張を裏付ける具体的なデータを筆者は寡聞にして知らない。

逆に、昨年12月に森田知宏氏が発表したデータ(http://medg.jp/mt/?p=7248)は、臨床研修制度が始まったのち、むしろ医師数の地域格差は減少傾向にあることを示している。氏は「ジニ係数」と呼ばれる一般には所得格差を表す指標を用いて解析した。所得を市町村人口あたり医師数に置き換えてジニ係数を計算したのだ。その結果、新臨床研修制度が始まった2004年から2014年までに、ジニ係数は0.60から0.56と減少傾向にあったとのことだ。

医学部長会議も、仮にも科学者であるなら論拠となるデータを示すべきである。それがなければ、やはり「事実誤認」と反論されても仕方あるまい。

なお市長会は「新専門医制度が医師偏在を増長する」と述べているだけで、新専門医制度で「医師偏在を解消しろ」とは言っていない。医師数の地域格差に対して新医師臨床研修制度が問題なのであれば、強大な力をもつ医学部長会議としてそちらを先に改善したらどうだろう。

個人的には、今回の市長会への反論で、図らずも医学部長会議は自ら「日本専門医機構」という「医師派遣の利権追求団体」と同じ穴のムジナであることを証明してしまった、と思えてならないのだ。

最後に提案がある。筆者も真に質の高い「新専門医制度」を切望している者だ。この際、全国市長会、医学部長病院長会議、専門医機構、そして現場の医師達を含めた形での公開シンポジウムを開き、議論をつくしてはどうだろう。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50005
日本の医学界をいまだに仕切るゾンビ組織
問題だらけの日本専門医機構に巣食う東大と自治医科大

2017.5.17(水) 上 昌広 JB Press

 4月26日号で『認定料目当てに早くも贅沢三昧、日本専門医機構』という文章を発表し、日本専門医機構(以下、機構)のガバナンスを批判した。

 この中で、機構は収入がないのに、賃料が1坪あたり12万6421円の東京フォーラムに事務所を借り、交通費3699万円、会議費463万円の「無駄遣い」をしていることを紹介した。その後、私のところには様々な情報提供が寄せられた。

 「我々は、間違ったことはしていない。お金の問題は一切ない」と連絡してきた大学教授もいた。「19領域の学会関係者が関わるので、年間に3699万円もの交通費が必要になったのでしょう」という教授もいた。

 もちろん、こんな説明は通用しない。

こっそり退職していた事務局長

 そもそも、19領域の学会関係者の議論に機構が旅費を支給する必要はないし、仮にそうだとしたら、機構は最初から予算に計上すればいい。年初に計上された交通費の予算は1万円なのだから、「使途不明」と言われても仕方ない。

 私のところに寄せられた連絡の多くは、このように中味のないものだったが、例外もあった。知人の専門医機構関係者からは「事務局体制がお粗末で、特に事務局長が、がんでした」と連絡があった。

 この人物のことを調べたらK氏だった。どのような経緯かは分からないが、昨年末に機構を退職していた。

 このK氏は医療ガバナンスの研究者の間では知らない人がいない有名人だ。1994年に自治医大を揺るがした「茎崎病院事件」で「中心的役割を果たしたとされる人物」(『選択』2013年9月号)とされている。

 この事件では自治医大が医師派遣の見返りとして金銭授受を行っていたことが分かっている。併せて同時期に資産運用の失敗や二重帳簿が内部告発によって問題化している。

 金銭の授受については、多くのメディアが報じ、K氏も「15万円を7~8回にわたって受け取ったのは事実」(朝日新聞1994年2月22日)と認めている。

 その後、K氏は、自治医大関連の「地域医学研究基金」へ出向している。

 前出の『選択』2013年9月号では、「このK(筆者変更。本文では実名)を重用したのが高久(筆者注;髙久史麿・日本医学会会長)である。Kはその後も専門医制評価・認定機構や、医療安全全国共同行動の事務局を仕切ると同時に、会長選で高久の集票マシーンとして動いた」と説明されている。

 新専門医制度は医師派遣を通じて、大きな利権を生み出す。その事務局を、かつて医師派遣で金銭的問題の「前科」のある人物が仕切っていた。これは、一般的な社会常識と乖離する。

地域医療振興協会との利益相反も

 問題は、これだけではない。理事長を務める吉村博邦氏の肩書きだ。

 吉村氏は昭和41年に東京大学医学部を卒業した胸部外科医で、北里大学の医学部長を務めた。ただ、現在の主たる肩書きは地域医療振興協会の顧問だ。

 同協会が経営する練馬光が丘病院で、呼吸器外科の外来を担当している。同病院は、2011年に日本大学から運営権を引き継ぐ際に、必要な医師数が揃えられなかったことで社会の批判を浴びた。

 地域医療振興協会は、自治医大の卒業生が中心となって立ち上げた組織だ。事務局は千代田区平河町の都道府県会館の中にある。同じフロアには、自治医科大学も入居している。

 会長を務めるのは髙久氏だ。理事には自治医大と東大卒業生が名を連ねる。

 この組織は経常収入1123億円を上げる巨大グループで、その中核事業は、医師派遣・診療支援事業だ。機構の仕事と見事に重なる。


 機構の理事長である吉村氏が、地域医療振興協会の顧問を務めることは、常識的に考えて利益相反だ。

 このように専門医制度のことを調べると、自治医大・東大関係者の陰がちらつく。髙久氏を頂点としたピラミッドがお手盛りで決めているように見える。有力者が密室ですべてを決める点は、自民党の派閥全盛時代を髣髴させる。

 情報開示が進んだ昨今、こんなやり方は通用しない。

組織は頭から腐る

 前回もご紹介したが、髙久氏は2016年6月18日に公開されたエムスリーのインタビューで「立ち止まっていたら、きりがなく、財政的にももたなくなる」と語っていた。従来のようなごり押しが効かなくなっていることを認めている。

 私は髙久氏のことを尊敬している。本当に実力のある人物だ。戦後の日本の医学界を、現在のレベルにまで押し上げたのは彼の功績だ。

 残念なのは、彼の弟子に人材が育たなかったこと。彼をかつぎ、そのやり方をそのまま踏襲したが、いつの間にか時代に合わなくなった。その時に、どうすればいいか、髙久氏のように柔軟に対応できない。

 新専門医制度は、その象徴だ。

 厚労省と医学会が一致して決めたことが、在野の医師が反発し、それが国民に伝わり、抜本的見直しを余儀なくされつつある。

 どうして、医療界の合意を形成するか。時代に見合った透明でオープンなやり方を確立しなければならない。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201705/CK2017051702000177.html
【栃木】
佐野市民病院の民間譲渡 現指定管理者の青葉会と優先交渉へ

2017年5月17日 東京新聞

 佐野市は市民病院(同市田沼町)の民間譲渡について、現在の指定管理者「医療法人財団青葉会」(東京都)と優先的に交渉することを市議会議員全員協議会で報告した。今後、二〇一八年四月移譲などを含んだ基本協定締結に向けて交渉を進める。
 市民病院は市が直営していたが、深刻な医師不足に陥り、〇八年十月に指定管理者制度を導入、青葉会が運営している。医師確保などで改善は見られたが、経営状態は厳しく、一四年度は約二億六千万円、一五年度は約一億六千万円の赤字で、一六年度は約二億八千万円まで赤字が膨らむ見込みとなっている。
 市は一八年三月末で青葉会の指定管理が期間満了となるのに合わせ、病院の存続を目指して民間に譲渡する方針を固め、市政策審議会に諮問。市民への説明会や有識者会議を重ね、青葉会を優先的な交渉相手に決めた。
 市市民病院管理課の担当者は「まず移譲時期、医療規模の維持、耐震強度が不足している病棟の建て替えの三点を協議したい」と話し、九月の市議会定例会で一定の交渉結果を提示する考えを示した。 (吉岡潤)



http://blogos.com/article/224023/
医師の時間外労働は削減すべきなのか
武矢けいゆう
毒舌系消化器外科医 / 某市民病院で外科医
2017年05月19日 16:24 BLOGOS

働き方改革実現会議での時間外労働に対する法的規制—

こうした変革は、医療界にも大きな波紋を呼んでいる。

実際、複数地域の基幹病院に労基署の立ち入り調査が入った結果、医師の時間外労働削減と未払いの時間外賃金支給、救急車搬送の受け入れ抑制、外来枠の削減といった、著しい診療体制の縮小が行われている。

今後もこうした変化は加速し、全国的に医療体制が縮小の方向に向かう可能性が高い。

これまで厳しい労働条件に耐えてきた勤務医らにとっては朗報かもしれないが、患者にとっては、少なくとも短期的には、多大な不利益となる。

果たして、医師の時間外労働を一律に削減し、診療体制を縮小することは本当に得策なのだろうか。

私は、もっと根本的なところに問題があると考えている。

病院では「能率的な分業体制が成立し得ない」という構造的な問題である。

これは、「白い巨塔」の時代から変わらない、勤務医内での硬直した封建制が原因である。

上記のようなニュースがあると必ず、

「医師は患者の命を預かる仕事、若手医師は無給の時間外労働も、自己研鑽と思って喜んで引き受けるべき」

との反論が起こる。

若かりし頃に先輩に厳しくしごかれ、朝から晩まで薄給で働き、家に帰るのも週に1、2日という厳しい労働に耐えてきたベテラン医師たちは、「体力、気力のない奴は医師をやめてしまえ」と公言して憚らない。

勤務医の間には昔から、「自分が味わった苦労を同じだけ味わって成長しろ」という精神論が蔓延り、若手医師たちは厳しい年功序列制の中で、これまでその泥臭い労働で病院を支えてきたのである。

しかし時代は変わりつつある。医療界も変わらなければ、旧態依然との謗りを免れない。

確かに若手医師の精神を鍛えるのは大事なことである。上下関係をわきまえ、礼節を重んじることのできる医師を養成することも大切だ。

どの職場でも、若手の仕事は必然的に雑務が多くなるが、「下っ端」なのだから当然である。そういった仕事も丁寧にこなすのが若手の役目だ。

若手の仕事は野球部の球拾いと同じだ。球拾い自体で野球の技術が上達することはないが、先輩たちは、球拾いという雑務を黙々と誠実にこなす後輩に、バッターボックスに立つチャンスを与えたいと思うものだ。

私の周囲にも雑用が多すぎると不平ばかり言う若手医師がいるが、そういう姿勢では自らチャンスを捨てているようなものである。

「若手は文句ばかり言わず仕事に励め」

確かにその通りである。

だがその一方で、「自分が体験した辛い苦労を後輩にはさせたくない」と思う先輩が一定数いなければ、組織全体のパフォーマンスは上がらない。

自分が苦労して何かをやり遂げて、歩いてきた道を振り返った時、「こうすればもっと効率的にできたのに」と思うことが必ずある。

先輩とは、後輩が困難を前に立ち尽くした時、それを乗り越える「近道」を知っている唯一の存在だ。

その道のベテランならなおさらそうだ。若手に対して、百戦錬磨の経験から他の誰も提示することのできない最適な解決策を伝えられるはずである。

こうして、同じ業務をより簡単に、より能率的に行うためのノウハウの蓄積によってこそ、組織のパフォーマンスは高まっていくのである。

病院において、目指すべき最大のゴールは「患者の利益」である。そして、病院全体が組織として、患者に最大の利益を提供するにはどうすれば良いかを考えなければならない。

果たして、一律に医師の時間外労働を削ることが、我が国の医療の利益に資するかどうか。もう一度よく考えたいところである。



http://www.nikkei.com/article/DGKKZO16665010Q7A520C1M10400/
がん死亡、私の街は…
2017/5/21付日本経済新聞 朝刊

 自分が住んでいる街と隣の街で病気の死亡率に大きな格差があったとしたら……。日本経済新聞が全国1741市区町村のがんの死亡率を調べたところ、同じ県内なのに2倍を超える格差があることが分かった。医療費を使わずに死亡率が低い地域がある一方、医療費を多く使っているのに死亡率が高い地域もある。どこに問題があるのだろうか。日経電子版ビジュアルデータ「全国市区町村マップ」ではがんのほか、心臓病、脳卒中のデータも掲載した。まず自分が住んでいる市区町村、都道府県の実態を見てみよう。(1面参照)
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(地図の詳細)
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/health-expenditures-map/


 「医療費を多く使えば死亡率は低くなるのでは」。そう思う人がいるかもしれない。だが日本経済新聞が全市区町村の死亡率と1人当たりの医療費の関係を比較したところ、医療費が高くても死亡率が高い自治体もあり、必ずしもそうではないことが分かった。

 「散布図」というグラフで、横軸は死亡率が右にいくほど高くなるようにし、縦軸は1人当たり医療費を上にいくほど高くなるようにして全国平均との関係で比較すると、4つのタイプが浮かび上がる。

 右上は「医療費が高く、死亡率も高い」タイプ。「多くの医療費を使っているのに、死亡率が高い」地域だ。医療機関が多い大都市が目立つ。病気になる人が多く、医療費がかさんでいる可能性もあるが、投じた医療費が死亡率の改善に寄与していないのかもしれない。

 右下は「医療費は低く、死亡率が高い」タイプ。東北など医療過疎とされる地域が多い。医療機関が少なく、必要な医療を受けられていない可能性がある。

 左上は「医療費は高いが、死亡率が低い」タイプ。右上のタイプと同様、大都市が多いが、治療が死亡率の低減に結びついているとも推測できる。

 左下は「医療費が低く、死亡率も低い」という理想的なタイプ。健康長寿とされる長野県などの自治体が多い。同じ死亡率ならば医療費は低い方がいい。他のタイプが費用対効果を見直す参考になりそうだ。



http://www.nikkei.com/article/DGXLZO 166659 10Q7A520C 1EA3000/
医療費の伸び抑制、地域差是正がカギ 市区町村で最大2.2倍
20 17/5/2 1 1:3 1日本経済新聞 電子版

 日本経済新聞社の調査で、市区町村ごとに 1人当たりの医療費に大きな格差があることが分かった。人口 1万人以上では最大2.2倍あった。医療がより必要になる高齢者の増加に加え、医療技術の進歩や医療サービスの充実で医療費は増え続けている。伸びを抑制するため「まず 1人当たり医療費の地域差を半減すべきだ」との指摘も出ている。

 人口 1万人以上でみると、北海道や熊本県で 1人当たりの医療費が60万円を超える自治体がある一方、群馬県や千葉県などで30万円前後にとどまる自治体があった。

  1人当たりの医療費を押し上げているのは高齢化の影響がある。今回の調査では75歳以上の人口の割合が高いほど、全年代の 1人当たりの医療費が高い傾向があることが分かった。

 一方で今回の調査では75歳以上の人口の割合が 15.6%の長野県佐久市は医療費、死亡率ともに全国平均を下回っていたが、 1 1.5%の札幌市はいずれも全国平均を上回るなど、高齢化だけではない格差も判明した。

 食事や運動といった生活習慣の改善などによる「 1次予防」のほか、がん検診などによる早期発見・早期治療の「2次予防」の取り組みが影響している可能性がある。

 厚生労働省によると、地域によって入院期間の長さや受診回数、薬剤の使用量は大きな違いがあることが分かっている。

 政府の経済財政諮問会議も医療費の伸びを抑制するため、こうした地域差を問題視。民間議員は「入院、外来を含め地域差の半減を推進すべきだ」として、自治体の取り組みを検証する仕組みなどを求めている。(社会部次長 前村聡)



http://www.nikkei.com/article/DGKKZO 16670880R20C 17A5MM8000/
砂上の安心網がん死亡、同じ県内で格差
本社調査 医療費の効果、検証必要

20 17/5/2 1付日本経済新聞 朝刊

  1人当たりの医療費が高いのに、全国平均と比べてがん死亡数が多い市区町村が全体の3割に上ることが20日、日本経済新聞社の調査で分かった。がん死亡の割合を比較したところ、同じ都道府県内でも市区町村間で大きな格差があった。約40兆円の国民医療費は膨らみ続けており、社会保障の持続可能性を高めるため費用と効果を検証し、地域の特性に合わせた対策が必要になる。(砂上の安心網特集面、関連記事総合3面に)

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 日本経済新聞社は年齢調整をした死亡率(死亡数の対全国平均比率=総合2面きょうのことば)と、 1人当たり医療費のデータを入手し、全国 174 1市区町村を初めて分析した。死亡率は全国平均( 100)に対し、死亡数がどのくらい多いか少ないかを示す。 1 10なら 1割高く、80なら2割低いことになる。

 がんは日本人の死因のトップで2人に 1人がかかるとされている。抗がん剤など高額の治療も増え、国の医療費に大きな影響を与えている。

 調査結果から浮かび上がるのは、医療費を多く使っている自治体が必ずしもがんの死亡率を抑えられていない現実だ。男性のがんで医療費と死亡率の関係を調べたところ、いずれも全国平均を上回る自治体は520に上り、全体の29.9%を占めた。札幌市や高知市、大阪市といった医療機関が充実している都市部の自治体が目立った。

 医療行為の価格(診療報酬)は全国で同じだ。 1人当たり医療費が高くなる理由は、同じ疾患でも入院期間が長かったり、受診する回数や検査などが多かったりすることが挙げられる。食生活や運動など生活習慣の違いで地域の患者数が多いことも影響する。

 東京都を分析すると、奥多摩町は男性のがんの死亡率が全国平均を上回っている。特に胃、肝がんの死亡率が高い。医療費は高齢化の影響だけでなく、予防や治療などの対策に課題もあり、全国平均を上回っている。

 対照的に医療費と死亡率がともに全国平均を下回る自治体は428で、全体の24.6%だった。長野県佐久市など健康長寿で知られる自治体が目立った。

 東京都でも杉並区はがんの死亡率が全国平均より2割以上低く、医療費も全国平均を下回っている。区の担当者は「区独自にがん対策の5カ年計画を策定し、予防を中心に対策を強化している」と説明、さらに死亡率を下げる取り組みを推し進めている。

 今回の調査では、このように同じ県内でも市区町村別で医療費と死亡率に大きな格差があることが判明。人口 1万人以上の自治体で比較したところ、死亡率の県内格差は男性は北海道が 1.78倍、女性は鹿児島県が2.30倍で最も大きかった。

 医療費の総額は現在約4 1兆円で、毎年数千億~ 1兆円程度増え続けている。高齢化と医療技術の進歩で医療費の伸びには拍車がかかる見通しで、少子化で支え手が減るなか、効果の検証を通じた抑制策が不可欠になっている。

 政府は7月にも今後6年間のがん対策の基本方針を決定する予定で、都道府県は年度内にがん対策の基本計画を作る必要がある。 10年前の計画で掲げた死亡率などの目標達成は難しい状況だ。

 これまで都道府県の計画は市区町村別の対策まで踏み込んでいないケースが多い。医療費を有効に使うためにも、こうしたデータから死亡率の高い原因を分析し、きめ細かい対策を講じる必要がある。



 日本経済新聞社は日経電子版にビジュアルデータ「全市区町村マップ」を掲載した。住んでいる市区町村を選択すれば、死亡率や医療費の現状を知ることができる。

 調査の概要 市区町村別のがんの死亡率は厚生労働省が算出している「標準化死亡比」を使って都道府県ごとに格差を算出した。年齢構成の違いは調整されているが、人口が少ないと誤差が大きいため人口 1万人以上の市区町村で比較した。
 市区町村別の 1人当たり医療費は、75歳以上の後期高齢者医療制度を運営する各都道府県の広域連合から独自に入手。厚労省が公表している75歳未満が加入する市町村国保のデータと、国勢調査の人口から20 14年度分を推計した。



http://www.medwatch.jp/?p= 13769
収入の大きな病院はさらに収入が増加する傾向、病院の競争が激化―厚労省
20 17/05/ 18 MedWatch

20 15年度における医科病院の 1施設当たり医療費の平均は26億円で、(前年度に比べて7800万円・3. 1%増加)、バラつきがさらに大きくなっている―。

こうした状況が、厚生労働省が 19日に公表した20 15年度版の「施設単位でみる医療費等の分布の状況~医科病院、医科診療所、歯科診療所、保険薬局~」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

病院収入のばらつきは年々拡大、収入の大きな病院では、より収入が増加

厚生労働省では、毎月の「医療費の動向」(MEDIAS)の中で医療機関 1施設当たりの医療費データなどを明らかにしています。もっとも、医療機関の規模や状況はさまざまなので、医療機関の規模( 1施設当たりの医療費階級別)別でも医療費の状況を分析しています(前年度の状況はこちら、前々年度の状況はこちら)。

医科病院について見てみると、20 15年度の 1施設当たり医療費は平均で26億円ちょうど。20 1 1年度からの変化を見ると、平均医療費は増加傾向にあり( 1 1年度:23億4900万円→ 12年度:24億 1600万円→ 13年度:24億6400万円→ 14年度:25億2200万円→ 15年度:26億円)、かつ、バラつき(標準偏差)も大きくなっています( 1 1年度:37億3900万円→ 12年度:39億900万円→ 13年度:40億600万円→ 14年度:40億9800万円→ 15年度:42億8 100万円)。

 
後述するように、 1施設当たり医療費は「病院収入」に読み替えることができ、このバラつきが大きくなっていることから、「地域における競争が激化している」ものと伺えます(収入の大きな病院はより大きく、収入の小さな病院はより小さく)。平均在院日数の短縮が進む中で病床稼働率を維持するためには、新規患者をこれまで以上に獲得することが必要となります。このため「より広域での新規患者獲得」を目指すことになりますが、この状況は競合となる病院も同じなので、競争が激化することになるのです。自院の状況を確認することはもちろん、「競合となる他院の状況」「全国における自院の状況」「地域での立ち位置」(今後果たすべき機能)「地域の患者動向」などを総合的に把握して、病床削減や統合・再編すらも視野に入れた経営戦略を練る必要があります(関連記事はこちら)。
また 1施設当たりの医療費階級別に「 1施設当たり医療費の伸び率」を見ると、医療費の少ない病院では医療費の伸び率に大きな幅があり、逆に、医療費の多い病院では、伸び率の幅が小さいこと、また医療費の多い病院のほうが医療費の伸び率が高くなることも分かりました。


「 1施設当たりの医療費」は、いわば「病院収入」と考えることができます。したがって、「収入の少ない病院群では、増収病院と減収病院のばらつきが大きく、収入が大きくなるにつれて増収病院と減収病院の格差が収斂していく」、「収入の少ない病院では、収入源となる病院もあるが、収入の多い病院では安定して収入が増加している」ことが伺えます。入院と入院外に分けると、入院外においてこの傾向がより強いようです。これが、前述の「収入のバラつき拡大」につながっていると考えられ、早急な経営戦略の策定・見直しが必要と言えるでしょう。

 
なお、機能別に病院の「 1日当たり医療費」を見ると、▼特定機能病院で高く、かつバラつきが小さい(施設数が少ないことも関係するが)▼DPC対象病院とそれ以外とでは、DPC病院で高い—ことなども明確になっています。



http://www.medwatch.jp/?p= 13756
地域医療へ配慮し、国民に分かりやすい専門医制度を目指す—日本専門医機構がQ&A
20 17/05/ 18 MedWatch

従前、各学会が独自に運用していた専門医制度を、国民に分かりやすく標準化するために新専門医制度が創設された。地域医療確保へのさまざまな配慮を行うと同時に、柔軟な仕組みを導入している—。

日本専門医機構は 17日、新専門医制度の詳細をかみ砕いて解説する「概説とQ&A」(平成29年5月 12日版)を公開しました(機構のサイトはこちら)。

新専門医制度の概要や養成方法などを分かりやすく解説


新専門医制度の来年度(20 18年度)からの全面スタートに向けて日本専門医機構では、熱のこもった議論が続けられています。その中で「一部に、新専門医制度や機構に対する誤解がある」ことが分かり、国民や専攻医を含めた関係者に向けて、分かりやすいQ&Aを作成し、順次改訂していくこととしたものです(関連記事はこちら)。

今回公表されたのは初版(平成29年5月 12日版)では、▼専門医制度とは何か、なぜ必要か▼従来の専門医制度と新制度との違いと、その理由▼日本専門医機構とは何か▼専門医の養成方法▼専門医の更新方法▼専攻医を受け入れる施設の対応—などについて解説しています。

例えば、専門医制度とは何かについて、神の手を持つスーパードクターではなく(もちろんこういった医師も必要)、「それぞれの専門領域で、その領域の専門研修を受け、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」であることを明確化。

従来は、各学会が独自に専門医を養成・認定していましたが、国民に分かりやすくするために「専門医制度の標準化」が必要とされたこと、新制度では学会と日本専門医機構が連携して、専門医の養成・認定を行うことを明確化。

養成方法については、▼基本領域ではプログラム制を原則とする▼サブスペシャルティ領域ではプログラム制・カリキュラム制のいずれでもよい—点にも言及。プログラム制とは「定められた年限と研修施設で、必要な症例数などを経験し、専門医資格を取得する仕組み」、カリキュラム制とは「年限や研修施設を定めず、必要な症例数などを経験し、専門医を取得する仕組み」です。カリキュラム制は、「地域医療に従事しながら、自身の状況にあわせて、5年、 10年と時間をかけて専門医資格を取得する」ことが可能ですが、日本専門医機構では「若いうちに集中的に標準的な知識・技術を学ぶことが重要」との考えから、基本領域についてはプログラム制を基本に据えています(関連記事はこちら)。

ただし、厚生労働省に設置された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」において全国市長会副会長の立谷秀清構成員(相馬市長)らから、カリキュラム制の設置を求める指摘も出ており、今後の議論によっては「基本領域においても必ずカリキュラム制を設置すること」という見直しが行われる可能性もゼロではありません。そうした場合、Q&Aも改訂されることになるでしょう(関連記事はこちらとこちら)。

また研修施設については、次の3つに分類されることを説明しています。

▼基幹施設:それぞれの領域のほとんどの到達目標を経験できる施設(要件は各領域学会が「専門医制度新整備指針」に基づいて定める)

▼連携施設:少なくとも到達目標のある項目について、特に研修することが可能な施設(常勤の指導医勤務が必要)

▼関連施設:専門医研修の継続的な指導体制が整っており適切な研修が行えると判断される施設(常勤の指導医が勤務していなくてもよい)

このうち基幹施設の要件が厳しく「大学病院しか基幹施設になれないのではないか」との指摘が出たことを受け、「専攻医の採用実績が年間350名以上の領域(当面、内科、外科、小児科、整形外科、麻酔科、精神科、産婦人科、救急科)については、原則として、大学病院以外でも基幹施設になれる基準とする」ことを説明しています。もっとも、医師の少ない地域で基幹施設が複数できれば、専攻医も症例も分散してしまうため、日本専門医機構と学会、さらに都道府県協議会(専門医研修に関する協議を行う、都道府県、医師会、大学、病院団体などからなる組織)とで調整を続ける」ことも明確にされています(関連記事はこちらとこちら)。

さらに地域医療への配慮(医師偏在を助長しないように)として、▼東京▼神奈川▼愛知▼大阪▼福岡―の大都市では、「過去5年間の都市部の専門医採用実績の平均値を超えない」ことを原則とする(医師数の減少している外科と産婦人科、採用実績の少ない病理、臨床検査は除く)ことも示しました。


  1. 2017/05/21(日) 20:40:19|
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5月18日 

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201705/551217.html
特別対談◎渋谷健司氏×神田裕二氏
労働環境の改善が医師偏在を解消する

2017/5/18 日経メディカル

 短時間労働や時差勤務の導入といった勤務体系の見直しや、医師の業務を他職種に移管する「タスクシフティング」の推進など、医療従事者の働き方について多岐にわたる提言を厚生労働大臣に行った「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」。その座長を務めた渋谷健司氏と、厚労省で医療政策の司令塔を務める医政局長の神田裕二氏に、医師の働き方改革のあるべき姿を話し合ってもらった。(司会は日本経済新聞・庄子 育子)

──今回、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が設置された経緯を改めて伺えますか。


神田 裕二氏
1982年東京大学法学部卒、同年旧厚生省入省。国民健康保険課長、保険局総務課長、医薬食品局長などを経て、2015年から医政局長。(写真:陶山 勉)

神田 2015年末に立ち上がった「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会では、医師偏在対策が最大のテーマとなり、医学部定員の扱いを今後どうするかを決める必要もあって、限られた時間ではありましたが医師の需給推計を実施しました。そこには医療提供体制の将来像を示す「地域医療構想」を前提とした医師の配置や、今よりゆとりを持った医師の働き方を一応は織り込んだのですが、昨年6月の中間取りまとめで、医師の働き方の実態把握が不十分だという指摘を受けました。

 そこで医師の働き方の実態を把握するため新たな全国調査を行うことに加え、外来医療の将来像や女性の働き方の変化など「新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン」を策定して、それを基に医師需給を推計し直すよう宿題を出されたということです。

──ビジョン検討会の設置に当たっては、医師需給分科会などでの議論をいったんストップさせたことに加え、議論が非公開となったことが各方面から批判を浴びましたね。

渋谷 非公開というと聞こえが悪いですが、ビジョン検討会の構成員の人たちには、所属する団体への配慮などから言えないことも遠慮なく話してもらえるように、誰がどの発言をしたかについて表に出さないルールにしただけです。これは国際的にはよく用いられるルールです。また、検討会での議論内容や資料は全てオープンにしています。医療関係者やメディアから議論の中身が見えないという批判があったことは承知していますが、新しい発想で自由闊達な議論ができたことは、4月にまとめた報告書でご判断いただけると思います。

偏在解消に強制措置は不要?

──その報告書の中身について伺います。やはり医師の偏在対策がポイントになると思いますが、医師需給分科会の中間報告では従来の対策の限界から一定の規制の必要性が示されているのに対し、ビジョン検討会の報告書は逆に規制的手段を否定する内容になっています。どうしてでしょう。


渋谷 健司氏
1991年東京大学医学部卒。帝京大学講師、世界保健機関コーディネーターなどを経て、2008年から東京大大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授。一般社団法人JIGH理事長も務める。

渋谷 今回の議論ではファクトを重視しようということで、医師の働き方に関する10万人規模の実態調査を実施しました。これは厚労省としても初めての試みで、非常に画期的だったと思います。そこで結果として上がってきたのは、やはり医師の過重労働が構造化しているということだったのですが、一方では条件さえ合えば、地方に長く勤務してもいいという若い医師が多いことも明らかになりました。その割合は若い医師ほど高く、20歳代では60%が「地方で勤務する意思がある」と回答していました。

 ということは、地方に行ってもいいと考える医師が実際にはなぜ行かないのかを明らかにする必要があるわけです。実態調査でそれを見ると、専門性を追求したい20歳代では、地方に行くと専門医が取れないのではないかという危惧がやはり大きい。これが30~40歳代になると、子どもの教育環境が整っているかに変わります。そして全ての年代に共通するのが、過酷な労働環境や希望する内容の仕事ができないことへの不安です。

 そうした部分のサポートを十分せずに規制的な手段を講じても、持続可能な解決策にはならないでしょう。医療界に特有の構造的・制度的な問題や非近代的なマネジメントを解消することが先決ではないか、というのが今回の考え方です。

──社会保障審議会の医療部会では、医師不足地域での一定期間の勤務を病院管理者の要件にすることなどが検討されていましたが。

神田 確かにそういう議論はありましたが、職業選択の自由や営業の自由の規制につながる話なので、法制的な面でクリアすべき論点がまだ残されています。ただ、実態調査で明らかになったように、若い医師が地方に勤務する意思を持っているにもかかわらず、専門医が取れないことや労働環境への不安、やりたい仕事ができないことなどがネックになっているとしたら、それを実現できるように徹底的に支援してみる価値もあるのではないか。今回の報告書の取りまとめを受けて、そう思っているところです。

働き方ビジョン検討会の報告書に盛り込まれた主な項目
(*クリックすると拡大表示します)
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医師の業務担う新職種創設も

──医師の業務を他職種に移管する「タスクシフティング」や、業務の共同化である「タスクシェアリング」の推進も、報告書のポイントの1つかと思います。それに絡めて、簡単な診断や処方、外科手術の助手、術後管理などを担う「フィジシャンアシスタント(PA)」の創設を提言していますね。

渋谷 今回の報告書を通してのキーワードは、高生産性と高付加価値です。生産性の向上という観点では、医師が本来の業務に従事できる環境を整えることが重要ですが、それを実現する手段としてPAを強調したということはあります。

 一方で、看護師の業務を拡大していくという方向性も考えられます。特定行為研修制度の範囲を大きく広げて診療看護師のような資格を設けるなど、PAに限らず医師の業務をシフト、シェアできる人材の育成が大事だということを訴えたわけです。

──生産性や付加価値の向上という点から、報告書ではテクノロジーの積極的活用・推進にも触れています。

渋谷 これからの医師の働き方、看護師の働き方を語る上でテクノロジーの活用は絶対に欠かせないので、報告書の後半にかなり詳しく書き込みました。特に遠隔診療は、医師の偏在対策にも資する可能性が高く、積極的に推進していく必要があると考えています。またAI(人工知能)は、ここ数年で実現に向けて大きく動くのではないかと思っています。実際、総務省の「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」の議論を受けて、厚労省もいろいろなことを進めていると聞いていますから。

神田 医師にとって、へき地勤務のネックの1つは孤立する不安だと聞いていますので、自分の専門でない患者も遠隔診療でしっかりバックアップしてもらえることは非常に大事だと思います。AIについては、画像診断や見守りなどの分野で省力化が図れるので、本当に人間でなければできない仕事に医師に注力してもらうためにも、どんどん進めるべきだと考えています。

──そこに診療報酬は付きますか。

神田 診療報酬は保険局の所管になりますが、中央社会保険医療協議会では2018年度改定のテーマとして、遠隔医療やAIなど新たな技術への対応が挙がっています。診療報酬も、そういうテクノロジーの進歩を踏まえたものにだんだん変わっていくんだろうと思っています。

5~10年で提言内容の実現を

──最後に、ビジョン検討会の報告書の内容を実際の政策にどう反映させていくべきかについて、ご意見をお聞かせください。

渋谷 報告書の最後の「提言の実現に向けて」という項にも書いたのですが、ここで提言した内容は、5年から10年程度で順次実現されることを期待しています。また、すぐできることについては今走っている審議会や検討会で、報告書の内容を踏まえ具体的に進めていただきたいですね。特に医師需給や専門医の議論に関しては、できるだけ報告書の内容を踏まえてやっていただきたい。ビジョン検討会では短期間に15回もの会合を持ち、議論を積み重ねてきました。それを無駄にすることなく、ぜひ実現してほしいと思っています。

神田 行政としては、報告書の内容を踏まえ、既にある検討会や審議会では鋭意検討を進めていきたいと考えています。また今回、ビジョン検討会では医師の働き方のビジョンを示したわけですが、時を同じくして政府が3月末に取りまとめた「働き方改革実行計画」では、今後2年間で医師の特性に応じた労働時間規制の在り方や労働時間短縮の方策などを検討していくとしていますので、医療界も参加した検討の場が設けられる予定です。そこでも今回の提言内容の多くが検討されることになると思います。

渋谷 今回の報告書は、医師をはじめとする現場で働く医療従事者に読んでほしいと考えています。実は医師には柔軟で多様な働き方があって、これからは国も含めて医療界全体がそれをサポートする方向に向かっていくということを理解してほしい。現場の医療従事者が疲弊せずに、モチベーションを持ってキャリアを形成していける働き方を後押ししていく──。ビジョン検討会の報告書全体を貫くこの考え方を、ぜひ分かっていただきたいと思います。(4月9日収録)



http://www.asahi.com/articles/ASK5K5GB8K5KULBJ00S.html
新専門医制度「医局生活は強いられない」 医学部長会議
野中良祐2017年5月18日00時35分 朝日新聞

 2018年度に開始予定の新専門医制度をめぐり、国立大学医学部長会議は17日、東京都内で記者会見を開き、地域医療への影響を懸念して見直しを求めている全国市長会に対し、「重大な事実誤認がある」として反論した。

 全国市長会はこれまで、新専門医制度によって研修施設となる大学病院や大病院の所在地以外の医師不足が助長されたり、若手医師が論文発表のために医局生活を強いられたりするなどと指摘。4月、制度を進めることに反対する要望書を塩崎恭久・厚生労働相に提出した。

 これに対し、同会議を代表して会見した内木(ないき)宏延・福井大学医学部長は「医学は急速に進歩しており、医師は常に新しい医療を学ぶ必要がある」と述べ、新専門医制度による医師の質の保証や均質化が大学の責務だと説明。「論文発表のような学術活動は医師の日常活動で、医局生活を強いるものではない」と話した。

 また、全国市長会が指摘する医師の偏在の原因については、「2004年に始まった臨床研修制度にあると考えている。大学は所在県の医療機関で、ベストな医師配置を目指して努力している」と語った。(野中良祐)



http://www.medwatch.jp/?p=13692
地域包括ケア病棟、「病院の規模」や「7対1の有無」などと関連させた議論に—中医協総会(1)
5月17日 MEDWATCH

 7対1入院基本料を算定している病院と、そうでない病院とで、地域包括ケア病棟への入棟患者の状況を比較すると、7対1のない病院では「他院からの転院患者」が9割以上となっている病院が多く、地域における医療連携が進んでいると考えられる—。

 17日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、このように読める資料が厚生労働省から提示されました。7対1のない病院は中小規模病院に多いことから、こうした点を踏まえ診療側委員は「中小規模の病院で地域包括ケア病棟を設置することが望ましく、点数を有利に設定すべき」旨の見解も示しています。


ここがポイント!

1  7対1を持たない中小病院では、地域包括ケア病棟を地域医療連携に活用
2  回復期リハ病棟、患者の状態や意向を踏まえた「効果」を評価指標とすべきとの声も
3  病床機能報告での機能選択と、診療報酬とはリンクさせていない

7対1を持たない中小病院では、地域包括ケア病棟を地域医療連携に活用

 17日の中医協総会では、2018年度診療報酬改定に向けて▼地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料含む、以下同じ)▼回復期リハビリテーション病棟入院料―を議題にしました。入院医療については4回の議論を行っており、「入院についての論議第1ラウンド」が終了した格好です(関連記事はこちら(入院医療3)とこちら(入院医療2)とこちら(入院医療1))。

 地域包括ケア病棟は、2014年度診療報酬改定で(1)急性期からの受け入れ(2)在宅・生活復帰支援(3)緊急時の受け入れ―の3機能を持つ病棟として新設されました。従前の亜急性期病床から発展してきたものです(関連記事はこちら)。

 厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、地域包括ケア病棟の入棟元(どこから入院してきたのか)を分析したところ、「半数弱(44.6%)の病院では9割の患者が『自院の他病棟から』(つまり転棟患者)である」一方、「一部の病院では、転棟患者が1割以下(他病院からの転院が9割以上)である」ことが分かったと報告しました。
 
 これを【7対1病棟のある病院】と【7対1病棟のない病院】とで比較してみると、「転倒患者が1割以下(他病院からの転院が9割以上)の病院は、ほぼ【7対1病棟のない病院】である」ことが明確になっています。


 さらに開設者別に地域包括ケア病棟の届け出状況を見ると、地域包括ケア病棟入院料1では、他(入院料2や入院医療管理料)に比べて、▼国立▼公立▼公的・組合—の割合が高くなっています。また、地域包括ケア病棟入院料1を届け出る病院では、7対1入院基本料と組み合わせている割合も高くなっています。


 ここから、▼大規模な急性期病院(7対1病院)では、主に「自院の急性期後の患者受け入れ」に地域包括ケア病棟を活用する▼中小規模の病院では、「他院からの急性期後患者の受け入れ」にも活用する—という大きな傾向があるようにも見えます。そう考えれば、後者(7対1病棟のない病院)では、より「地域医療連携」を意識していると見ることもできそうです。

 診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、こうしたデータを踏まえて「大病院と中小病院で地域包括ケア病棟の使い方が異なるようで、診療報酬上の評価も変えるべきではないか。中小病院で算定しやすくし、高度急性期機能を持つ病院では制約を設ける必要がある」と主張。また同じく診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)も「地域包括ケアシステムの構築に資する評価を行うべき(つまり他院からの転院患者の受け入れ機能の評価)」と提案しています。今後、「開設者別・規模別」にさらなる分析が行われる予定です。

 もっとも、【7対1病棟のある病院】と【7対1病棟のない病院】とで、地域包括ケア病棟がどれほど異なる医療提供を行っているかをみると、現時点で特段の違いは見えてきません。地域包括ケア病棟の1日当たり請求点数(入院料を除く)を両者で比較すると、いずれにおいても「500-600点」を頂点とする二項分布となっており、大きな違いはなさそうです。「今後、より詳しく医療提供内容を分析する必要がある」と迫井医療課長はコメントしています。

 なお、「機能分化は病棟単位で行われるため、大規模な急性期病院が地域包括ケア病棟を設けても何も問題がないのではないか」との見解もありますが、厚労省保険局医療課の担当者は、「地域医療連携の障壁になる(大病院が患者を抱えてしまう)場面もあり、患者には『急性期治療を終えた後は身近な医療機関に移りたい』との意向も強いという指摘もある」とコメントしています。地方では「中核病院1つが全機能を持たなければならない」ようなケース(その場合には大病院のケアミクスに問題はなさそう)もありますが、少なくとも病院単位での機能分化が可能な都市部では「大規模な急性期病院が地域包括ケア病棟を持ち、院内で機能分化を進める」ことは今後も茨の道が続きそうです。

回復期リハ病棟、患者の状態や意向を踏まえた「効果」を評価指標とすべきとの声も

 回復期リハビリテーション病棟は、2000年度の診療報酬大改定(入院基本料の創設)において設けられたもので、2015年時点で7万5433床が整備されています。

 名称どおり集中的なリハビリを行い、在宅復帰を目指す病棟ですが、「一部の病院では、リハビリの効果を考えず、多くの患者に安直に上限いっぱいのリハビリを提供し、診療報酬を算定している」ことが明らかとなり、2016年度の前回診療報酬改定で「アウトカム評価」が導入されました。回復期リハビリ病棟では疾患別リハビリ料を1人1日「9単位」まで算定できますが、リハビリ効果の低い病棟では「6単位」まで(それ以上は包括)とし、事実上、【リハビリテーション充実加算】の算定を不可能にする仕組みです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。


 この点について支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「『一律にADLがどの程度改善したか』を見るのではなく、『入棟時の状態』や『改善目標』などを勘案してアウトカム評価を行うべきではないか」と提案しました。厚労省保険局医療課の担当者も「入棟時の状況によって、効果が出るまでに投入するコストなどは異なる」と述べており、今後の検討材料になりそうです。もっとも「改善目標を定めリハビリマネジメントを強化する」ことや「機能回復だけでなく、社会参加なども視野に入れたリハビリを推進する」ことなどは、2015年度の介護報酬改定(関連記事はこちら)、2016年度の診療報酬改定(関連記事はこちら)でも強く意識されており、迫井医療課長もその点を詳しく説明する考えです。また、幸野委員は「回復期リハビリテーション病棟入院料の1-3について、メリハリをつけるべき」などとも要望しています。

 なお、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「2016年度改定で導入したアウトカム評価の効果について検証をしていない。その段階での提案は踏み込みすぎである。安易なアウトカム評価の導入・拡大はモラルハザード(軽症患者や効果の出やすい患者を選別するクリームスキミングの発生)を招く可能性がある」と釘を刺しています。

 回復期リハビリ病棟に関してはこのほかに、「早期からの集中的なリハビリ実施」の評価という論点も掲げられており、これまでの改定と見直し方向は同一と言えるでしょう。また注目される「プロセス評価」については、今回は言及されていません。

病床機能報告での機能選択と、診療報酬とはリンクさせていない

 なお中川委員は、地域医療構想・病床機能報告と診療報酬との関係について「特定機能病院では『すべての病棟を高度急性期で報告しよう』との申し合わせがあったと耳にした。その理由は『高度急性期で報告しなければ、特定機能病院入院基本料を算定できなくなる』という思い込みにあるようだ。これはで、病床機能報告が実態を反映していない恐れがある」とコメントし、厚労省の見解を問いました(関連記事はこちら)。

 これに対し迫井医療課長は、「診療報酬は個別に算定要件・施設基準を定めている。中医協では、『各機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)と診療報酬をリンクさせる』という議論は行われていないことを明確にしたい」と答弁。当面は、「○○機能で報告しているので、◆◆点数は算定できない」(上記のほか、高度急性期・急性期と報告しなければ7対1入院基本料算定できない、ということはない)という状況にないことが改めて明確にされました。



https://www.m3.com/news/iryoishin/529889
中央社会保険医療協議会
地域包括ケア病棟、「大病院の届出、本来の趣旨にあらず」
回復期リハ病棟「患者個別のアウトカム評価」求める声も

レポート 2017年5月18日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は5月17日、2018年度診療報酬改定に向けて、「入院医療(その4)」として、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料と回復期リハビリテーション病棟入院料について議論した(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 地域包括ケア病棟は、地域包括ケアシステムを支える役割を持つ。日本医師会副会長の中川俊男氏は、「そもそも病床数が少ない中小病院のための入院料設定のはず。しかし、地域包括ケア病棟入院料1の届出の3割以上は、(病床規模が大きいと想定される)国公立・公的病院であり、本来の趣旨ではない使われ方をしているのではないか」と問題提起し、病床機能別の分析を要望した。全日本病院協会副会長の猪口雄二氏も、「地域包括ケアシステムの構築に資するための報酬設定が必要」と求めた。

 回復期リハビリ病棟入院料で議論になったのは、アウトカム評価の在り方。2016年度診療報酬改定では、ADL(FIM得点)の改善度を見るという、アウトカム評価が施設基準に加わった。健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、このアウトカム評価は病棟全体での評価であることから、「患者目線でのアウトカム評価を施設基準に入れてもらいたい」と要望。これに対して、診療側からは、「2016年度改定の結果を見て、次の改定でどうするかを議論していくべきではないか」(中川氏)など、慎重な検討を求める意見が出た。

 地域包括ケア病棟と回復期リハビリ病棟共通の問題として、「在宅復帰率」という言葉の見直しを求めたのは、中川氏。「要件をクリアしているのは、地域連携がうまくいっている現れだが、言葉が実態を反映していない」と指摘、「地域医療連携率」あるいは「医療連携率」への変更を提案。また、回復期リハビリ病棟でも、地域包括ケア病棟と同様に、「在宅強化型」の介護老人保健施設への入所もその割合に加えるべきと求めた。

 地域医療構想と診療報酬との関係についても、中川氏は発言。地域医療構想では2025年の「病床の必要量」と2015年の病床数を比較した場合、「回復期」が少ないが、「回復期病床が不足しているというのが一般常識になっているが、『回復期の患者が行き場がなく、困っている』との指摘は聞かれない」と中川氏は指摘し、急性期など他の病床にも回復期の患者は入院しているとし、「絶妙なバランスで成り立っている」との見方を示した(『急性期指標」、「見える化」の第一歩だが、注意必要』を参照)。

 さらに、地域医療構想の4つの医療機能と、診療報酬が対応しているとの誤解があることから、例えば、大学病院では、「特定機能病院入院基本料を算定できないと思い込んでいる」(中川氏)ために、全病床を「高度急性期」と報告するケースがあるとも指摘。「急性期か回復期かと迷ったら、急性期と報告した方が無難」あるいは「回復期は、回復期リハビリ病棟入院料を算定していないと報告できない」などの誤解の例も挙げ、「地域医療構想と診療報酬の算定は関係ないことを、明確してもらいたい。そうしないと、診療報酬が地域医療構想に『寄り添う』ことができなくなる」と述べ、厚労省保険局医療課長の迫井正深氏に発言を求めた。

 発言を受け、迫井課長は、「診療報酬は、個別に要件を定めている。この場(中医協)で、病床機能報告制度と診療報酬をリンクさせる議論はしていない。また、病床機能報告制度の在り方には、さまざまな課題があると理解している。(厚労省)医政局と連携し、その懸念が払拭させるように議論していきたい」と答えた。

 地域包括ケア、回復期リハとも着実に増加

 地域包括ケア病棟は、2014年度診療報酬改定で新設された。その役割は、(1)急性期からの受け入れ、(2)在宅・生活復帰支援、(3)在宅療養患者などの緊急時の受け入れ――の3つだ。病棟単位の届出が可能な「地域包括ケア病棟入院料」(1と2)、病室単位(許可病床数200床未満)の届出が可能な「地域包括ケア病棟入院医療管理料」(1と2)がある。在宅復帰率は70%以上が要件。届出病床数は年々着実に増え、2016年10月時点で、5万2492床。

 厚労省は、幾つかの分析データを提示。例えば、届出パターンには幾つかの特徴があり、「地域包括ケア病棟入院料1」は、「7対1入院基本料」とのケア・ミックスが多い。患者の流れは、「7対1病棟あり」の場合、「院内の他病棟からの転棟患者」が90%以上を占める病院が約50%で、前述の3つの役割のうち、(1)の「急性期からの受け入れ」がメーンであることが分かる。一方、「7対1病棟なし」の場合、約42%と相違がある。診療科は、内科、整形外科、外科の順で、受け入れる患者の疾患も、最も多いのは骨折・外傷であり、以下、肺炎、脳梗塞など。

 回復期リハリビテーション病棟入院料は、1~3の3段階がある。在宅復帰率は「入院料1」が70%以上、「入院料2」が60%以上、「入院料3」には規定がない。届出病床数は、2015年7月時点で、7万5433床。

 「患者目線のアウトカム評価を」と支払側

 回復期リハビリ病棟入院料に対し、アウトカム評価を求めた一人が、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員の間宮清氏。患者は病状の先行きが見えない不安を抱えており、個々の患者が納得して医療を受けるためにも、患者を支援するような目標設定、アウトカム評価を求めた。

 幸野氏がこの意見を支持。今は病棟全体の在宅復帰率が指標になっていることから、個々の患者が到達すべき目標を設定して、その達成状況の割合を評価するなど、「患者目線で見た場合のアウトカム評価を施設基準に入れてもらいたい」「患者の身体機能と生活機能が改善した比率が高い病棟に高い点数を付ける制度設計をすべき」などと提案。

 これに対し、日本医師会常任理事の松本純一氏は、クリニカル・パスが普及している現状を踏まえ、「パスでは予想を付けており、これである程度、納得してもらえるのではないか」とコメント。中川氏は、2016年度改定で、回復期リハビリ病棟入院料の施設基準にアウトカム評価を入れたばかりであることから、「その結果を見て、次の改定でどうするかを議論していくべきではないか」と述べ、アウトカム評価を追求すると、治りやすい患者を優先的に入院させるなど、「モラルハザードが起きかねない」と述べ、慎重な検討を求めた。

 各種の分析データ、求める声

 そのほか、今後の検討に向けて、さまざまな追加データを求める声が上がった。

 日本病院会常任理事の万代恭嗣氏は、地域包括ケア病棟入院料については、入院日数と関係付けた詳細な現状、手術の有無別と平均在院日数との関係など、回復期リハビリ病棟入院料については、疾患別の在宅復帰率などを要望。

 幸野氏は、地域包括ケア病棟の患者の多くは、院内の転棟であることから、「急性期病棟の平均在院日数は恐らく減っているのだろう」と述べ、関連データの提出を求めた。


  1. 2017/05/19(金) 05:34:45|
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5月15日

http://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20170514-OYTNT50050.html
危機感 全職員で共有<県立病院機構>
2017年05月15日 読売新聞 奈良県

 ◇経営改善 ようやく本腰

  債務超過の地方独立行政法人・県立病院機構が、収支改善に向けた取り組みに躍起だ。県直営から独立法人へ移行した2014年度から毎年赤字を計上し、累積赤字は51億円を超す。来春には、建て替え工事中の県総合医療センターの新病院が、奈良市七条西町にオープンする予定で、経営改善が急務となっている。

   ■意識改革

 「5月11日 前日稼働率5階北100%、ICU37・5%……」

 同市平松の同センター2階にある医局近くの廊下に、倉庫で眠っていた1台の古いホワイトボードが置かれたのは4月中旬のことだ。1日3回更新される入院者数などの書き込みに、通りかかった医師や看護師は足を止め、最新の数字を確かめる。

 病床の稼働状況を事細かにチェックすることで、病院の経営に対する職員の意識を変えようという試みだ。大峯朝記・事務部長は「職員全員が現状を把握し、危機感を共有することが大事」と、狙いを説明する。

 同センターなどを運営する県立病院機構の経営改善策は、今年に入ってから本格化した。

 これまで各病院に勤務する看護師や薬剤師らに月額4000~5000円支給していた「病院勤務手当」を、4月に廃止。県によると「他県ではあまり見られない手当」だという。

 さらに、勤務する医師の給与に上乗せしていた「初任給調整手当」も減額。多くの医師は、月額約5万7000円カットされた。両手当の廃止や削減で、17年度は8200万円の経費削減につなげる。

 こうした改革を主導する県病院マネジメント課の岡本真昭参事は「今後、医師には業績評価を導入し、県立病院時代から据え置きになっていた給与体系の見直しにも着手したい」と話し、厳しい表情で付け加えた。「そうしないと、本当に病院を維持できなくなってしまう」

   ■赤字の構図

 同機構は同センターのほか、県西和医療センター(三郷町)、県総合リハビリテーションセンター(田原本町)などを運営する。県は独法化の際に16億円を出資。その後も毎年運営費を負担し、昨年度は18億円をつぎ込んだ。

 しかし、支出は想定を上回り、1年目の14年度は29億円、15年度は22億円の赤字を計上。負債額が資産総額を上回る債務超過の額は、15年度末で約35億円に上り、その後も増加に歯止めがかかっていない。

 独法化の狙いは、現場の裁量を広げて経営の効率化を進め、支出を減らすことだった。皮肉なことに、その独法化が赤字を招く結果となった。

 県の直営だった時代は収支不足を県が穴埋めしていたため、各県立病院の決算が赤字になることはなかった。独法化後、県が自動的に穴埋めすることはできなくなり、赤字が顕在化した。だが、それだけではない。

 来春、新病院へ移転する県総合医療センターでは、最大110床増の540床になる。これを見越して医師や看護師を増員した結果、人件費が膨れあがった。

 さらに現在の病院でも、古くなった医療機器の更新やトイレの改修などを行ったため支出が増大。県病院マネジメント課は「収入に見合った支出ではなかった。赤字の原因は小さな支出の積み重ねだ」と分析する。

   ■課題と懸念

 4月からは診療部長を管理職とし、超過勤務手当の削減を図っている。

 医師の中にはこれまで、論文の執筆や学会発表の準備など、診療以外の目的で残業し、手当を受給していたケースもあったという。本来の手当の趣旨とは違うとして改める方針だ。

 しかし、こうした様々な見直しには、優秀な医師や医療スタッフが病院から去り、人手不足に陥るリスクも伴う。

 センターに勤務する医師からは「地域医療のため懸命に頑張っているのに、手取りが一方的に減らされ、内部では不満が募っている。別の病院に移りたいと思っている者もいる」との声も聞かれる。

 県病院マネジメント課は「人件費削減などの大きな改革と、基本を大切にする小さな努力の積み重ねを大切にしたい」と強調。機構の榊寿右理事長は「医師らの理解を得ながら、公的病院として県民を守ることを約束する病院に育てたい」としている。

 ◇<取材後記>安心できる拠点に

 県立病院機構が赤字を計上し、債務超過に陥っていることを報じた昨年12月以降、機構の病院に勤める医師らから手紙やメールで反響が届いた。県民の命と健康を守るという使命を果たすため、身を削って医療に取り組んでいるスタッフが数多くいることを、改めて知った。

 我が家の双子の息子は、県総合医療センターで生まれた。昼夜を問わず献身的に治療にあたり、患者や家族に寄り添う医師や看護師らの姿を間近に見てきた。

 新病院の開院を機に、何としても経営を立て直し、安心して暮らせる奈良を支える拠点になってくれることを願っている。(近藤修史)



http://www.medwatch.jp/?p=13652
公立病院、今後3年程度で事業の広域化や経営統合・再編を加速せよ—経済財政諮問会議
2017年5月15日 MediWatch

 公立病院について、今後3年程度の間に、▼経営体制の見える化や外部人材登用の制度化▼事業の広域化や経営統合・再編の加速化▼新公立病院改革プランの策定促進と、病床再編などと地域医療構想との関係性の明示▼不採算地区以外の病院に対する繰出金への依存減―などを行う必要がある—。

 11日に開催された経済財政諮問会議では、民間議員からこのような提言が行われました。

小規模の公立病院、不採算地区以外では繰出金を減らせ

 公立病院や水道事業などの地方公営企業については、小規模多数の事業体という特徴があり、資金や人材の不足が大きな課題となっており、公営企業繰出金が3兆円規模に膨らんでいます。

 諮問会議の民間議員は、この繰出金が地方財政を圧迫していることから、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を設定した上で、今後3年程度の間に次のような取り組みを加速する必要があると訴えています。

▼経営マネジメント強化の観点から、「経営体制の見える化」や「外部人材の登用」を制度的に促す

▼経営戦略などの策定を促すとともに、構造改革の進捗状況と効果をチェックする

▼事業の広域化や経営統合・再編を加速する。その際、課題となる「事業体間の経営力格差」を乗り越えて再編・統合を進める先進事例の横展開を図る(関連記事はこちら)

▼総務省は策定の遅れている新公立病院改革プランの策定を促し(関連記事はこちら)、病床再編などの地域医療構想との関係性をしっかり明示する

▼不採算地区以外の病院については、繰出金への依存をより減らす


 公立病院と私的病院とで医業収支比率を比較すると、とりわけ小規模の公立病院で医業収支比率が低い実態があると民間議員は指摘。さらに、不採算地区(2014年度では、「150床未満の一般病院で、最寄りの一般病院まで15km以上」または「150床未満で人口集中地区以外に所在」)以外の病院では、「他会計繰入金対医業収益比率」が、公立病院全体に比べて2ポイント近くなっていることなども勘案し、上記のように「繰出金への依存を減らす」よう求めています。

 今後、地域医療構想調整会議が各地で開かれ、病院・病床の機能分化・連携に向けた具体的な議論が進められます。そこでは、まず「公立病院」を含めた公的病院の役割を明確化することが求められており(関連記事はこちら)、再編や統合も視野にいれた改革圧力がさらに強くなってくる可能性があります。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t291/201705/551238.html
特集◎医師こそ働き方改革を《調査》
80時間超残業は若手医師に多く大病院ほど多い

2017/5/16 満武 里奈=日経メディカル

データで見る 医師の長時間労働の実態

 月当たりの時間外労働は平均32.5時間で、80時間を超える医師の割合は若年層、大病院ほど大きい――。2016年度の厚生労働省委託事業である「医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究事業報告書」から、こんな結果が明らかになった。

 この調査は、全国8489病院で2年以上勤務し、当直・夜勤を行っているフルタイムの正職員医師1449人を対象としたものだ(有効回答数1411)。月80時間以上の時間外労働をしている医師の割合を病床規模別に見ると、「400床以上」が10.3%と最も多かった。年代別では、20代が10.6%、30代が8.9%、40代が7.1%と、若年層ほど割合が大きくなっていた(図A)。
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図A 2016年6月の時間外労働時間の内訳(n=1126)
(*クリックすると拡大表示します)

 1カ月当たりの休日日数は、最も多かったのが「4~7日」で44.5%を占めた。宿直1回当たりの拘束時間は平均15.1時間で、宿直時の実労働時間は平均5.5時間。宿直明けの勤務環境は7割が「通常業務で、業務内容の軽減はない」としていた。

 所属先の病院が実際に取り組んでおり、効果が高いと評価できる負担軽減策としては、医師事務作業補助者など「補助職の配置」を挙げた医師が最も多く(49.7%、複数回答)、「電子カルテを活用した業務効率化・省力化」(33.9%)、「年次有給休暇をはじめとする休暇の取得促進」(28.4%)、「チーム医療や多職種連携による負担軽減」(26.4%)が続いた(図B)。

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図B 「働き方・休み方改善」の効果が高いと評価できる取り組み(n=1411、複数回答) 自らの勤務先が実際に取り組んでいる対策について、その効果を尋ねたもの。それぞれの項目につき、効果が高いと回答した医師数を全体の回答数(1411)で除して比率を算出している。
(*クリックすると拡大表示します)

(図A、Bともに「医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組みに対する支援の充実を図ための調査・研究事業報告書」を基に編集部で作成)



http://www.medwatch.jp/?p=13645
専門医取得が義務でないことやカリキュラム制の設置、新整備指針の中で対応—日本専門医機構
2017年5月15日 MediWatch

 厚生労働省に新たに設置された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」で指摘された(1)専門医取得は義務ではないことを明確にする(2)地域医療に配慮したカリキュラム制を設置する(3)研修の中心は大学病院のみでなく、症例の豊富な地域の中核病院などを含む(4)都道府県の協議会を随時開催し、運用状況を報告させる—という点について、専門医制度新整備指針の中で対応する—。

 日本専門医機構(以下、機構)は12日の理事会でこうした方向を確認しました。

ここがポイント!

1 検討会の指摘を踏まえ、地域医療へ配慮することを整備指針の中で明確化
2 総合診療専門医、内科・救急・小児・総合診療1・2で2年半の研修を

検討会の指摘を踏まえ、地域医療へ配慮することを整備指針の中で明確化

 新専門医制度については、2018年度からの全面スタートに向け、機構において、制度の憲法とも言われる整備指針や、各基本領域学会が養成プログラムを策定する際の拠り所となる運用細則を固めるなど着々と準備が進められています。そもそも2017年度からのスタート予定でしたが、「地域・診療科における医師偏在を助長する可能性がある」との指摘を受け、1年間立ち止まって問題点の解決に向けた議論を進めているのです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。

 しかし、全国市長会などから「さらなる地域医療への配慮が必要」との要望が出されたことなどを受け、塩崎恭久厚生労働大臣は「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」の設置を決定。4月26日の検討会では、多くの構成員から「さらなる配慮をすべき」との意見が相次ぎました。

 12日の開かれた機構の理事会では、こうした要望や意見を踏まえ、新整備指針の中で次の4点について対応する方向が確認されています。

(1)専門医取得は義務ではないことを明確にする

(2)地域医療に配慮したカリキュラム制を設置する

(3)研修の中心は大学病院のみでなく、症例の豊富な地域の中核病院などを含む

(4)都道府県の協議会を随時開催し、運用状況を報告させる

 すでに運用細則などで規定されている内容ですが、機構の吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)は12日理事会後の記者会見で、「専門医は国民のための仕組みであり、国民にとって分かりやすいものとする必要がある。そこからぶれてはいけない点を理事会で確認した」旨を説明し、整備指針の中でこれらの点を明確にする意義を示しています。ただし、具体的にどのような見直しを行うべきかについて理事会の意見は固まっておらず、6月2日開催予定の次回理事会での意見集約を目指すことになります。

 なお、各学会では運用細則に基づき、研修プログラムの作成に入っています。機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は、「指針見直しを待たずにプログラムなどを作成していただく」旨の考えを示しています。円滑なプログラム作成や専攻医募集につなげることが狙いと思われます。

 ただし、例えば(2)の「カリキュラム制」について、現在の運用細則では「基本領域の1つ目の専門医取得における専門研修では、原則として研修プログラム制による研修とする。しかし(中略)専門医育成の教育レベルが保持されることを条件に専門研修カリキュラム制による専門研修を可能とする」とされています。これが、仮に整備指針で「カリキュラム制を必ず設置しなければならない」などの対応が図られた場合、学会の研修プログラムの中にカリキュラム制が組み込まれていなければ、当該研修プログラムを認証することが困難になるでしょう。こうした点をどう調整していくのか注目されます。

総合診療専門医、内科・救急・小児・総合診療1・2で2年半の研修を

 また12日の理事会では、総合診療専門医の研修プログラムについて、▼1年を内科(内科専門医と同等)▼3か月を救急科▼3か月を小児科▼6か月を総合診療科1(中小病院やクリニックにおける、在宅医療も含めた総合診療)▼6か月を総合診療科2(大規模病院における総合診療)―とすることが了承されました。

 機構の松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は、「初期臨床研修で外科の研修を受けていない場合には、残り6か月(3年の研修期間から上記の期間を除く)において外科の研修を受けることが推奨される」ことや、「1年間は僻地などでの勤務・研修が望ましい」ことなども固められたことを説明しています。


  1. 2017/05/16(火) 06:16:14|
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5月14日 

https://news.biglobe.ne.jp/economy/0510/pre_170510_6334851228.html
名門「聖路加国際病院」が経営危機に陥るわけ
プレジデント社5月10日(水)15時15分

日本屈指の名門病院「聖路加国際病院」が経営危機に陥っている。その背景には医療制度の構造的な問題がある。医療崩壊は防げるのか——。

■「聖路加国際病院」でボーナス遅配

病院は東京から崩壊する——。

東京一極集中、地方の衰退が叫ばれる昨今、このように言われて、俄には信じられない方が多いだろう。東京には多くの病院があり、厚生労働省やマスコミは医師が都会に集まることを問題視する。一体、どうなっているのだろうか。問題は医療システムを一面的にしか見ていないことだ。医療システムは複雑系だ。さまざまな物事が有機的に結びつく。

拙著『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日』(朝日新聞出版)では、この点について、データに基づいて議論し、患者はどう対応すればいいか提言した。今回、拙著のポイントを2回にわけて解説していく。第1回は「名門病院」の経営危機を取り上げたい。


昨年、医療界に衝撃が走った。名門の「聖路加国際病院」(東京都中央区)の夏のボーナスの支払いが遅れ、1割程度カットされたというのだ。月刊誌「選択」の2016年10月号が伝えたもので、同誌のサイトでもみることができる(https://www.sentaku.co.jp/articles/view/16256)。

きっかけは昨年5月頃の労基署の監査。サービス残業の常態化が指摘され、未払いの残業代を支払ったところ、財務状態が悪化したらしい。

聖路加国際病院を経営する聖路加国際大学の財務状況は、一見盤石だ。2015年度の財務報告によると、純利益は130億円。人件費率は45%で、総資産は851億円。自己資本比率は88%で、長期・短期の借入金はそれぞれ2億円、3300万円しかない。

ところが、実態は、この報告とはかなり違う。「選択」の2017年1月号によると、黒字になったのは、聖ルカ・ライフサイエンス研究所を解散し、その資産を病院の経営母体である聖路加国際大学に譲渡したためだという。これを除くと、実質は約8億円の赤字。ボーナスが遅配となったのも納得がいく。

聖路加国際病院は、首都圏(以下、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を指す)きっての名門病院だ。マスコミの病院ランキングでは、常に上位に位置し、同院での治療を望む患者は多い。

あまり知られていないが、聖路加国際病院が赤字になるのは、医療制度が構造的な問題を抱えているからだ。問題点を簡単にご紹介しよう。

高齢化が進むわが国で、医療費の伸びは急速だ。2015年度の国民医療費は41兆5000億円。前年より3.8%増加した。政府は、増大する医療費を抑制するために、2年に1回の診療報酬改定で診療単価や薬価を引き下げている。国民医療費は患者数と一人あたりの治療費を掛け合わせたものだ。高齢化に伴い、患者数が増えるので、診療単価を引き下げるという理屈だ。

この理屈は、一見もっともだ。ただ、このやり方は永久には続けられない。診療単価を下げ続ければ、やがて経営できない医療機関が出てくるからだ。実は、最初に破綻するのは首都圏の病院だ。


我が国の医療費は厚労省が全国一律に決めている。我が国では、田舎で治療をうけても、東京で治療を受けても、医療費は同じなのだ。勿論、土地代や人件費などのコストは全く違う。医療費を下げ続ければ、首都圏の病院から破綻する。

特に弱いのは総合病院だ。専門病院と比較して、小児科や産科のような患者の少ない診療科を揃えなければならない総合病院は、どうしても赤字体質になってしまう。聖路加国際病院は、その典型例だ。もちろん、氷山の一角である。

■首都圏の病院が赤字になるわけ

首都圏の総合病院の代表は大学病院だ。あまり報じられないが、多くの大学病院が赤字経営となっている。例えば、日本医科大学(東京都文京区)が発表した財務諸表によれば、2014年度の売上高利益率はマイナス19.4%で、158億円の赤字だった。約600億円の有利子負債があり、総資本を自己資本で割った財務レバレッジは349%と大幅な借金超過だった。流動比率(流動資産と流動負債の比)は70%だ。

流動比率は、負債の返済能力を見る指標の一つだ。税理士の上田和朗氏は「企業の経営状態を判断する際のもっとも重要な指標」と言う。流動比率は、流動資産が流動負債より多いか否かを示し、通常は120%以上あるのが望ましいとされている。日本医大の経営危機が如何に深刻かご理解いただけるだろう。

経営が悪化しているのは、日本医大だけではない。神奈川県の聖マリアンナ医大(神奈川県川崎市)、北里大学(神奈川県相模原市)なども赤字だ。

首都圏の総合病院は生き残りに懸命だ。そのためには、コストを下げなければならない。弱い立場になるのは若手医師だ。サービス残業が常態化しているところが珍しくない。

また、彼らの給与は安い。都内の大学病院に勤務する30代の外科医は「給与の手取りは20万円くらいです」という。生活するためには、アルバイトに行かねばならない。この医師は「平日は外来とオペ室に医師は出払い、病棟は『無医村』になります」という。首都圏の大学病院で医療事故が続くのも宜なるかなだ。

こうなると、経営者の努力で何とかなるというレベルを超えている。内部留保を使い尽くせば、倒産するしかない。

■必ず起きる「患者激増」と「医師不足

首都圏の病院が経営難に陥る一方で、これから患者は激増する。

図1は、関東地方の75歳以上の人口を2015年と2025年で比較したものだ。医療ガバナンス研究所の研究員である樋口朝霞氏が、国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来人口推計のデータを利用して作成した。


(図1)関東地方の75歳以上人口の2015年と2025年の比較
この図を見ると、関東地方で急速に高齢化が進むことがわかる。特に、首都圏の高齢化は著しい。大部分の地域で、わずか10年間の間に後期高齢者が3割以上も増加する。

患者は増えるのに、彼らが頼る病院は倒産の瀬戸際にある。

首都圏が抱える問題は、病院の経営難だけではない。経営難はあくまで金の問題だ。診療報酬体系の規制緩和などで、対応できる側面もある。深刻なのは、首都圏で医師が不足していることだ。医師の養成には時間がかかる。早急に対応しないと手遅れになる。

読者の多くは「東京には医者が多いので、埼玉県、千葉県、神奈川県で多少不足しても問題ない」とお考えかもしれないが、この考えは間違っている。首都圏では医師の絶対数が足りないからだ。人口10万人あたりの医師数は230人にすぎない。四国は278人、九州北部は287人だ。実に2割以上の差がある。


(図2)人口10万人あたりの地方別医師数 平成24年医師・歯科医師・薬剤師調査より
さらに、首都圏は医師の偏在が著しい。人口10万人あたりの医師数は東京都314人に対し、埼玉県155人、千葉県179人、神奈川県202人だ。東京だけは医師が多いが、他の3県は南米や中東並みの数字だ。

首都圏は広い。全ての患者が東京の病院を受診できるわけではない。

このため、現在でも首都圏では救急車のたらい回しなどが頻発している。2013年3月には、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75才の男性が、県内外の25病院から合計36回、受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡した事件があった。これも氷山の一角だ。

今後、状況は益々悪化する。図3は首都圏の75才人口1000人あたりの60歳以下の医師数の推移だ。情報工学を専門とする井元清哉教授(東大医科研)との共同研究である。


(図3)75才人口1000人あたりの60才以下の医師数
団塊世代が亡くなる2035年ころに一時的に状況は改善するが、その後団塊ジュニア世代が高齢化するため、再び医療ニーズは高まる。多くの県で、2050年の高齢者人口当たりの医師数は、現在の3分の2程度になる。そのころの東京の状況は、現在の千葉県や埼玉県とあまり変わらない。

■「看護師不足」も発生する

首都圏の問題は医師不足だけではない。看護師も不足しているのだ。

医師と違うのは、東京でも不足していることだ。2014年末現在、東京都の人口10万人あたりの就業看護師数は727人で、埼玉県(569人)、千葉県(625人)、神奈川県(672人)、茨城県(674人)、愛知県(724人)についで少ない。

看護師が多いのは高知県で人口10万人あたり1314人。ついで鹿児島県(1216人)、佐賀県(1200人)、長崎県(1182人)と続く。高知県は東京都の実に1.8倍である。


(図4)各県の人口10万人あたりの看護師数(正看護師と准看護師の合計)2014年厚労省衛生行政報告例より
既に弊害が出ている。2007年7月、東京都保健医療公社荏原病院の産科病棟の一つが閉鎖した。原因は看護師の欠員だった。当時、荏原病院の看護体制は定数316人に対し、欠員が58人もあった。これでは、病院機能は維持できない。

最近、厚労省は在宅診療などを強化した地域包括ケアシステムの確立を目指しているが、その際、重要な役割を果たすのは看護師だ。現状では、首都圏で地域包括ケアシステムを立ち上げるなど、机上の空論と言わざるをえない。

首都圏では医師と看護師が不足し、おまけに病院経営のコストも高い。このまま無策を決め込めば、早晩、首都圏の医療は崩壊する。

患者はどうすればいいのだろう。次回、この点を解説したい。

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上 昌広(かみ・まさひろ)
医学博士。1968年兵庫県生まれ。1993年東京大学医学部医学科卒業、1999年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員、東京大学医科学研究所特任教授など歴任。2016年4月より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所を立ち上げ、理事長に就任。医療関係者など約5万人が講読するメールマガジン「MRIC」編集長。
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http://www.nikkei.com/article/DGXLZO16347870T10C17A5CC1000/
過労対策で土曜外来縮小 聖路加病院、6月から
2017/5/13 1:51 日本経済新聞

 聖路加国際病院(東京・中央)は12日、勤務医の長時間労働を抑制するため、土曜日の外来の診療科目を34から14に減らすと発表した。労働基準監督署の立ち入り調査を受け、改善策として打ち出した。救急や一般内科、小児科など主要科目の外来は続ける。6月から実施する。

 長時間勤務が問題となっている医師の労働環境改善への取り組みとして注目されるが、利用者にとっては受診機会の減少につながる恐れもある。

 土曜日の外来診療をやめるのは耳鼻咽喉科や皮膚科など。同病院は「患者の皆さまに不便をおかけするが、やむを得ない措置。理解をお願いしたい」とコメントしている。すでに夜間の救急外来や当直勤務に当たる医師の人数を減らしていたが、抜本的な見直しの一環として土曜日の外来縮小に踏み切った。

 同病院によると、昨年6月に中央労基署(東京)の立ち入り調査を受け、昨年4~6月の勤務医の残業時間が月平均95時間に達していたことが判明。また夜間や休日の勤務について、時間外の割増賃金を支払うよう労基署から指摘を受け、約2年間さかのぼり総額十数億円を支払ったという。〔共同〕



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t291/201705/551216.html
特集◎医師こそ働き方改革を《動き出す労基署》
聖路加病院に労基署、土曜外来を全科廃止へ

2017/5/10 満武 里奈、吉良 伸一郎=日経メディカル

 労働基準監督署による立ち入り調査が行われ、改善策の実施を迫られる医療機関もある。「今の政権になってから、業種を問わず、労基署の立ち入り調査が増えた」と社会保険労務士法人名南経営の服部英治氏は指摘する。労基署がチェックするのは主に長時間労働の実態で、「昔は労基署に医師の仕事は完全に『聖域』という考え方があったが、今はそうではなくなっている」とも言う(元労働基準監督官へのインタビューは別掲記事参照)。

 実際、ここ数年、熊本大学医学部附属病院、沖縄県立北部病院(名護市)など地域の基幹病院に労基署の立ち入り調査が入った事実が報じられている。最近の立ち入り事例の中でもインパクトが大きかったのが聖路加国際病院(東京都中央区、520床)のケースだ。中央労働基準監督署が2016年6月、調査を実施。病院側は医師の時間外労働の削減などを求められ、その影響で診療体制の縮小を余儀なくされた。

救急車搬送の受け入れを抑制
 調査の結果、医師に関して指摘を受けたのは、(1)長時間労働の常態化、(2)夜間・休日勤務に対する賃金の支払いの問題──の2点だった(図1)。(1)については、昨年4~6月の時間外勤務が月平均で約95時間に達していた。

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図1 中央労働基準監督署の指摘事項と聖路加国際病院の対応
(*クリックすると拡大表示します)

 (2)については、これまで宿日直として運用してきた夜間・休日の業務がそうとは認められず、時間外労働として扱う必要があるとされた。

 年間1万1000件もの救急車搬送を受け入れる聖路加国際病院では、救急外来の医師だけでなく病棟の当直医も救急の応援に当たる。本来、宿日直は通常の勤務とは違い、夜間や休日の電話応答や火災予防のための巡視、非常事態発生に備えた待機など、「ほとんど労働を伴わない勤務」と定義されている。聖路加国際病院の勤務実態は、宿日直の定義には当てはまらないと判断された。そのため同病院は、過去に遡り本来支払う必要があった時間外の割増賃金と、実際に支給してきた宿日直手当の差額分を、個々の勤務医に支払うことになった。その総額や遡及期間は明らかにしていないが、過去2年以内について十数億円を支払ったようだ。

 労基署の指摘を受け同病院では、時間外労働を承認制にするなど残業時間のコントロールに乗り出した。また、時間外労働の負担の平準化を図り、60歳に近いベテラン医師にも準夜帯の勤務を担ってもらうことにした。さらに、夜間・休日の応需体制を縮小。今年5月には全科の土曜外来を廃止する。夜間については、これまで救急外来と病棟当直を合わせ1日17~19人の医師で回してきたが、今では12~14人体制に縮小。救急車搬送の受け入れも以前より抑えている。

 夜間の人員配置の縮小に伴い、これまで実施してきた夜間の患者家族への病状説明などを中止したため、患者や家族からクレームが出ているという。理解を求めるため、事情を説明した貼り紙を待合フロアに掲示している状況だ。
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聖路加国際病院院長 福井 次矢氏に聞く

「『自分の時間は患者のもの』は通用しなくなった」

 聖路加国際病院の医師たちはこれまで、朝6時くらいに出てきて夜は7時、8時くらいまでいるのが当たり前という感覚でやってきたが、労働基準監督署に時間外労働が長過ぎると指摘された。私自身、「自分の時間は患者のもの」という感覚で働いてきたが、そういう価値観を変えざるを得ない状況になって、すぐに改善策を講じることにした。

 必要な業務でなければできるだけ居残らないよう、院内の会議で何度もお願いしたことで、それまで95時間だった医師の月平均の残業時間が50時間に減った。これまでより早く帰宅できるケースは増えている。

 ただ、36協定では制度上、時間外労働が月45時間を超えられるのは1年のうち6カ月までとされている。残業を月45時間以内に抑えなければならない月は、その医師はほとんど夜勤に入れず、他の医師にしわ寄せがいくといういびつな形になっている。

 結果的に救急車搬送の受け入れを減らさざるを得なくなったが、そもそも高度急性期や救急医療を担っている病院と、回復期や慢性期の医療を担う病院の医師の労働時間管理のあり方は異なるのではないか。今後設置される新たな検討の場では、病院が担う機能の違いも勘案した、きめ細かな議論が行われることを期待している。(談)



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t291/201705/551193.html
特集◎医師こそ働き方改革を《現状分析》
医師では規制先送りも時間外労働削減が急務に

2017/5/9 満武 里奈=日経メディカル

 現政権が「最大のチャレンジ」と位置付ける働き方改革。時間外労働規制の医師への適用こそ先送りされたが、労働基準監督署による病院への立ち入り調査は増えており、長時間労働の是正は待ったなしだ。医師の働き方改革を巡る動向と、一足早く改革に踏み切った現場の取り組みを紹介する。


全国医師ユニオンの植山直人氏は、「医師の勤務環境改善への気運がようやく高まってきたのは非常に良いことだ」と話す。

 「これまでは過重労働によって医師の命が失われようとも、具体的な対策の議論は全く進まなかった。今回、政府の働き方改革実現会議で医師の長時間労働に焦点が当たり、勤務環境改善に向けた議論の気運がようやく高まったのは非常に良いことだ」─。過労死問題への対応などを目的に2009年に設立された全国医師ユニオンの代表を務める植山直人氏(行田協立診療所所長)はこう語る。

 「働き方改革」は安倍晋三首相が「最大のチャレンジ」と位置付ける政策。2016年9月下旬には、首相自ら議長となり、労働者、産業界の代表と有識者からなる働き方改革実現会議を設置。議論を進める最中には、大手広告会社、電通の新人社員が長時間残業を苦に自殺した事件が報じられ、働き方改革への世間の注目も高まった。

 働き方改革の柱の1つは長時間労働の是正だ。2017年3月28日に同会議が示した「働き方改革実行計画」では、これまで労使間でいわゆる「36(サブロク)協定」(用語解説参照)を結んでいれば青天井で延ばせた時間外労働に、上限を設ける方針を示したのが最大の特徴。上限を月45時間、年360時間とし、違反には罰則を科すことにした。特例として労使が合意した場合でも、月平均60時間(年720時間)以内、単月で100時間未満としなければならないとしている(表1)。政府は秋の臨時国会に関連法案を提出し、早ければ2019年度に施行される見通しだ。

■用語解説
【36協定】  労働基準法第36条に基づく労使協定。法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超える場合や休日に労働させる際には、36協定を結ぶことで、1カ月45時間、1年で360時間を上限に時間外労働をさせることが可能になる。
 さらに、「特別条項付き36協定」を結ぶと、例外的に45時間を超える形で上限時間を設定可能で、年間6カ月間まで適用できる。
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表1 「働き方改革実行計画」に盛り込まれた時間外労働規制の内容
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 ただし、医師については時間外労働規制の対象に含めたものの、「医師法に基づく応招義務などの特殊性を踏まえた対応が必要」との理由から、強制力のある規制の適用は改正法施行日の5年後をめどに先送りするとした。つまり、医師への適用は早くて2024年度ということになる。その上で、実施に向けては医療界の参加の下で検討の場を設け、「2年後をめどに規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策などについて検討し、結論を得る」とした。

地域医療への懸念から先送り

 適用が先送りされた背景には、地域医療への影響を懸念する厚生労働省医政局の関係各方面に対する強い働きかけがあった。

 当初、政府は時間外規制の対象を全業種とする方向で議論を進めていたが、先送りの根拠とされたのが医師法の応招義務だ。医師法第19条は「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定しており、残業の上限規制によりその義務が果たせなくなる恐れがあるという理屈だ。

 また、医療現場では救急など時間外対応をしなければならない局面が多いが、そこに時間外労働の上限が設けられれば人員増は避けられない。しかし、地域によっては勤務医の確保自体が容易ではなく、医師の勤務時間が減ることになれば、診療体制の縮小を余儀なくされるケースが相次ぎ、地域医療が混乱しかねない。こうした理由から、特例的に医師への適用の先送りが決まった。

現場の医師は「速やかな適用を」

 今回の方針決定に対する受け止め方は様々だ。医療現場には、医師が時間外労働規制の対象になったことを歓迎しつつも、強制力を持つ規制の適用が先送りされた点を否定的に捉える声が少なくない。

 今年4月、日経メディカルOnlineの医師会員3437人を対象に実施したアンケートで上限規制の導入と先送りへの賛否を尋ねたところ、「改正法施行の5年後などとせず、速やかな実施を」と回答した医師が最も多く44.1%を占めた。次いで「規制に賛成だが期限を決めることなく慎重に検討してほしい」が14.1%。「医師の時間外労働の規制には反対」は12.7%だった。

 全国医師ユニオンの植山氏は、「医師が規制の対象になったのはよかったが、議論がまとまらず先延ばしになるのではないかという心配もある」と話す。その上で、「今後2年間の検討の際は、医療機関の管理者だけでなく、当事者である勤務医を入れて十分に議論してほしい」と注文を付ける。

 一方、病院経営者側は、もともと医師を時間外労働の規制対象とすることに懸念を表明していた。2017年2月には日本医師会と四病院団体協議会が、翌3月にはがん研究会有明病院(東京都江東区)や河北総合病院(東京都杉並区)など10病院が合同で、働き方改革実現会議の委員などに、地域医療崩壊の恐れがあることなどを理由に慎重な検討を求めていた。

全日本病院協会の西澤寛俊氏は「そもそも医師の時間外労働を規制対象にするのかを含め、十分に議論する必要がある」と指摘する。

 また、上記の10病院は、医師を時間外労働の規制対象から外すことに加え、労働時間を自らの裁量でコントロールできる「専門業務型裁量労働制」(用語解説参照)を医師に適用することも要望していた。だが、裁量労働制の導入は病院団体の総意とはならず、四病院団体協議会が厚労大臣に提出した要望書には盛り込まれなかった。

 全日本病院協会会長の西澤寛俊氏は「取りあえず、規制の施行時期が猶予されたことはよかった。この2年の議論で出す結論が最も重要。そもそも医師の時間外労働を規制対象にするのかを含め、2年間をかけて十分に議論する必要がある」と語る。

■用語解説
【専門業務型裁量労働制】  業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分などを労働者の裁量に委ねる必要性が高い、専門的な業務に適用される制度。労使であらかじめ定めた時間働いたものと見なす。弁護士や公認会計士など19業種が対象とされている。
 とはいえ現場の病院としては、2年間の議論の結論が出るまで様子見を決め込んでいるわけにはいかない。医師の長時間労働是正への圧力は日増しに強まっているからだ。医療機関の働き方改革への取り組みは待ったなしの状況にある。

 長時間労働の病院勤務医が多いことは、各種の調査からも明らかだ。医師が過労死と認定されるケースも発生しており、政官民が一体となって長時間労働の解消を目指す中、医療機関だけが現状を放置することは、もはや許されない状況になっている。

 「今はどの病院も、雇用する医師に対して魅力ある働き方を提示できなければ人材を確保できない状況にある」と指摘するのは、医療機関の人事労務管理に詳しい社会保険労務士法人名南経営の服部英治氏。勤務医確保のためにも、労働環境の整備は避けられないと言う。



https://www.m3.com/news/iryoishin/527419
「今」と「将来」の2段構え、日医「働き方検討委員会」設置
松本常任理事「医師という職業の特性を十分に考慮した仕組みが必要」

レポート 2017年5月10日 (水)配信高橋直純(m3.com編集部)

 日本医師会の松本吉郎常任理事は5月10日の定例記者会見で、会内に「医師の働き方検討委員会」を設置することを報告し、「今できる働き方改革と将来的な改革に分けて考えていきたい」と説明した。時間外労働の上限規制などについては「医師という職業の特性を十分に考慮した仕組みが必要」との見解を示した。

 政府が策定した「働き方改革実行計画」では、労使が合意した場合、特例として時間外労働は年720時間(月平均60時間)を上限とすることなどが盛り込まれているが、医師については5年間の適用猶予が決まっている(『「罰則付き規制で、応招義務果たせぬ懸念」働き方改革大臣』を参照)。今後2年間を目処に医療界主導で議論をすることが求められており、横倉義武会長も「抜本的な議論」の必要を指摘していた(『「医師は労働者か、抜本的議論を」横倉会長』を参照)。

 新たに設置される検討会は日医の産業保健委員会から4人、勤務医委員会から4人、社会保障審議会などに参加している委員ら4人の計12人で構成する。6月中に第1回を開催する予定で、任期は2018年6月に予定される定例代議員会までの1年間。

 検討内容について、松本常任理事は「今できる働き方改革と将来的な改革に分けて考えていきたい」と説明。今できることとして、全都道府県に設置している「医療勤務環境改善支援センター」の周知・活性化、日医が作成した「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」の活用、日医内の「勤務医の健康支援に関する検討委員会」が2016年3月に答申した「勤務医の健康支援のための15のアクション」の取組推進、医師偏在を解消するコーディネーター機能を持った中核的人材の育成などを例示した。

 松本常任理事は「今できる改革を行った後、勤務医の健康がある程度確保された後にさらに将来の働き方改革を捉えること、その結果として医療安全と質の高い医療提供体制を確保する両立することが大前提である」と述べ、さらに「医師という職業の特性を十分に考慮した仕組みが必要。時間外労働規制については、応招義務がある医師にどのような方式があるのか。診療科、病院機能、地域、男女、年齢、研修医の差を一律に捉えられるか」という問題もあると指摘した。また、「医師の偏在、医師不足にも関連しているので、その問題も頭に入れながらやっていく」と述べた。

 医師の働き方を巡っては四病院団体協議会も検討委員会を設置することを決めており、松本常任理事は「意見交換していきたい」と話した(『四病協、「働き方検討委員会」を設置』を参照)。



http://www.huffingtonpost.jp/yuuki-shimada/public_hospital_b_16576164.html
新専門医制度は地域医療の要の地方の公立病院にもダメージを与える -脳神経外科
投稿日: 2017年05月12日 17時06分 JST 更新: 2017年05月12日 17時06分 JST ハフィントンポスト

新専門医制度が物議を醸し出している。この制度が施行されれば、多くの学会が、研修期間中に基幹施設に在籍することを義務づけることになる。「大学に労働力を集めるため」と批判する人もいる。

実は、このやり方は、一部の若い医師に重大な決断を迫ることになる。私のような地方公務員の医師も、その中に含まれる。その結果地域医療の発展を阻害する可能性があることがわかった。私の経験をご紹介したい。

私は東京生まれ、東京育ちの医師だ。千葉県で初期研修を終えたあと、被災地で学びたいと考え、2014年に南相馬市立総合病院の脳外科に就職した。当院は、2011年3月11日に東日本大震災で被災した。

福島第一原発から23キロに位置する基幹病院で、震災時には多くの患者を受け入れた。原発事故で、常勤医は一時的に4人まで減ったが、現在は約30人に増え、「被災地の元気な病院」として知られている。

私は、この病院で多くの患者を診療する機会をいただいた。ただ、当院の研修には問題がある。脳卒中の患者は多いが、脳腫瘍の経験が積めないことだ。

そこで、2017年4月から、南相馬市立総合病院と連携する福島県立医大の脳神経外科で研修することとなった。新専門医制度では、福島県立医大が基幹施設、当院が連携施設という位置づけになる。

福島県立医大は齋藤清教授が頭蓋底手術のテクニックを用いて、難易度の高い脳腫瘍摘出を行い、神経膠腫に関しては藤井正純医師が覚醒下手術を行なっており、どちらも全国トップレベルだ。私にとっては理想的な環境で学ぶことができる。

しかし、この研修に関して問題が生じた。南相馬市立総合病院は南相馬の医療を充実させるためには医師の技術の向上が重要と考えており、市職員の身分と給与を保障したまま他施設での研修をさせてくれる。

今までの研修先では何らこの制度に問題はなかったが、脳神経外科の専門医認定に関する内規の中に基幹施設(私の場合は福島県立医大)に半年間在籍しなければならないとあり、一度南相馬市立総合病院を退職して福島県立医科大学の職員にならなければならないという問題だった。

一般的に、大学病院の専攻医は有期契約で週4日勤務の非常勤職員である。給与が安く、大学外での勤務(アルバイト)しなければならない。そのバイトも1日で7万円の高い給与のところもあれば、もっと安い給与のところもあるだろう。

また、有期雇用であるため、病気や妊娠のときに、雇用が継続されるか否かは雇用者の判断に委ねられる。可能であれば南相馬市職員(地方公務員)の身分を保障されたまま研修を行えればと考えるのは人の常であろう。

私の場合は独身であり、身分が保証されないなら研修はしないということにはならないが、これは女性医師や、家族を抱える医師なら非常に悩ましい点ではないだろうか。

私の場合は基幹病院での在籍義務規定が存在する以前の後期研修であるため、福島県立医科大学と南相馬市立総合病院の折衝で、何ら問題なく南相馬市立総合病院(地方公務員)の職員のまま研修をすることが可能となった。

しかしながら、新専門医制度の施行を踏まえ、多くの学会では基幹施設での在籍を義務づけるようになった。在籍が義務づけられるなら、その間は基幹病院の職員に身分が変更され、給与も基幹病院から支給されることになる可能性が高い。身分、給与などの点で、不利益が生じる可能性が出てきたわけである。後期研修制度は当然のことであるが、研修時期は初期研修医制度より年齢が高く、かつ就業期間も長い。

後期研修終了時には多くの医師は30才を超える。社会人として十分に認められる年齢にもかかわらず、研修という名の下で多くの場合、身分や給与の保証は二の次とされてきたのではなかろうか。現時点でも様々な問題点が指摘される新専門制度であるが、研修施設を変更する際の身分や給与についても何ら検討がされていない。

また、この点のために技術の向上のための研修に二の足を踏む医師もいる可能性があり、地域の医療の向上という点でこの制度はマイナスに働く可能性がある。新専門医制度を主導する日本専門医機構には、新専門医制度が始まる前に、現時点でも問題のある在籍義務や病院変更に際しての専攻医の身分についても、是非検討を願いしたい。

(2017年5月12日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kittenuu/201705/551245.html
外科医は増えない、だからどうする?
中山祐次郎(総合南東北病院外科)
2017/5/12  日経メディカル

 先日、第117回日本外科学会定期学術集会に参加してきました。今回の主催は群馬大学。群馬大学といえば、腹腔鏡で肝臓を切除する手術で8人の患者さんが死亡したことでニュースになりました。執刀医は1人の外科医でしたが、その後の調査で、同じ外科医が執刀した開腹による肝切除の手術でも10人の患者が死亡していることが判明。シャレにならないこの事件、すべての医師が一度は報告書(PDF)を読んでおいた方がよいと思います。

 「よく群馬大学の外科が主催できたな」と多くの外科医は思っていたことでしょうが、蓋を開けてみると今回の外科学会は「医療安全」のセッションが極めて多い学会になっていました。

 さて、私はこの学会で外科医不足に関する発表をしてきました(写真)。

外科医って減ってるの、ご存知ですか?

 そもそも、外科医が減っているという事実をご存知でしょうか。厚生労働省の統計データによれば、本邦の医師全体の数はこの10年で約15%増加していますが、外科医の数は0.02%減少しており、相対的には大きく減少し続けているのです。絶対数で言いますと、本邦の医師数は27万0371人→31万1205人と4万834人増えたのですが、外科医数は2万8097人→2万8043人と54人減少しているのです。

 ちなみに小児科と産婦人科も、外科と同様に医師が足りていないと言われる診療科ですが、このデータによれば小児科は少し増えており、産婦人科は横ばいかやや減少といったところです。

 では、外科医減少の一方で、外科医のニーズは増えているのでしょうか。これも厚生労働省の別データで見てみると、1996年に年間3万605件だった消化器・腎・子宮の悪性腫瘍の手術件数は、その後増加の一途をたどり、2014年には年間5万6143件となりました。14年間で、80%ほど増加したわけですね。もちろんこの背景には、日本全体の人口の高齢化があります。高齢化し、悪性腫瘍の好発年齢の人口が増えた結果、悪性腫瘍の手術件数が増えているのでしょう。

 つまり、まとめると、「外科医数は増えるどころか少し減っているが、手術件数は増えている」ということになります。この傾向が続くと、どうなるのでしょうか。

厚生労働省も色んな手を打っていますが…

 もちろんこれは国も実態を把握していて、厚生労働省の医政局(医療政策を所管する部署)の担当者に話を聞いたのですが、外科医数については強い問題意識を持っているようでした。

 厚労省が主導している施策のうち、注目したいのは、最近始まった「当直明けの外科医に執刀させないようにする」というものです。これは、当直明けの外科医が執刀医にならなければ、その分病院に加算がつく(=お金が入る)というもの。すでに導入されていて、外科医が多い病院などでは「当直明けの外科医は執刀医にならない」ルールを取り入れているようです。私の勤める病院でも、幸い外科医のマンパワーはまあまあ十分なのでこのルールを取り入れています。ただこれ、執刀医じゃなければいいんですよね。助手なら可、というのもミソですね。

 まあ、もちろん必要な手術が発生したら加算もクソもなく、外科医はためらわず執刀しますので、若干場当たり的な施策のようにも見えます。が、それでも昔と比べたら大きな進歩です。厚生労働省の得意技、「お金をつけるからこの方法でやってくださいね」といういつもの政策誘導ですね。もちろん根本的な解決にはなっていませんから、やっぱり基本的には外科医数を増やさねばなりません。

正直、外科医数は増える気がしない

 ということで私は、横浜で開かれた外科学会で「減り続ける外科医を増やすために」というタイトルで、10分間も演説をぶってきました。去年、ももクロが年越しライブをやったくらい、やたら大きなホールで。詳細は省略しますが、外科医を増やすためには外科の魅力を上げ、多忙さを減らす必要があるという、何十年も前から当然と思われているようなお話を致しました。

 このプレゼンの後半、私はこんな話をしたのです。

「本当に外科医は増えるのか?」
「今のままでは、増えません」

 私は外科医ですから、主観的には増えないという事実は大変残念ですし困ったことなのですが、その一方でこういう記事を書いていたりすると外科医不足を客観視せねばなりません。すると、私の客観の目は「おいおい何言ってんだ、このままじゃ増えるわけねえだろう」と申すのです。ううむ。

 もちろん今よりはるかに外科医の待遇が良くなり、外科医は全員年収2500万円!となればすぐに外科医不足は解決するでしょう。しかしそれは今の体制では不可能ですし、外科医に手術の技術料がつくという話も、ずっと前から議論されてはいますが進んでいません。公正・公平を重んじる我が国では到底不可能であろうと思います。

 ちなみに、年収をちょっと増やした程度ではこの問題は解決しないようです。お隣の韓国のドクターから聞いた話ですが、韓国ではgeneral surgeon(一般外科医)の数が少なくて忙しすぎるので、国から月10万円近い補助金がgeneral surgeryのレジデント一人一人に支給されています。しかし、それでも外科の不人気に変わりはないそうで、なり手はどんどん減っているらしいです。

外科医は増えない、だったらどうする?

 正直なところ、外科医が増えるという見通しが暗い、という話を致しました。では、どうしましょう。私の頭の中には2つの選択肢があります。

1)さっさと見切りをつけて外科医をやめる
2)現状をなんとかする

 ま、冷静に考えたら1のような気もします。私は近い将来、どこかの病院の外科部長にでもなって、少ない人員で危険な数の手術をやることになるかもしれません。そんなリスク、どう考えたって負うのは馬鹿げています。外科医をやめたって、同じくらい価値と魅力のある職場はたくさんあることも良く知っています。40歳代後半、あるいは50歳代になってプツンと突然メスを置き、開業準備をする外科医の末路も散々見てきました。目も見えなくなり、手も動かなくなりますからねえ。

 しかし私はまだ医者になって10年、外科医になって8年。もうちょっとこの世界の深淵を覗いてみたい気もするのです。まだ外科専門医、消化器外科専門医、技術認定医などの「スタンプラリー」を終えたばかりですから。そこで、2)現状をなんとかする、を何とか考えたいと思います。

 外科学会でも話しましたが、外科医は増えず仕事が増えるのであれば、解決の鍵は「効率化」です。ほら、多忙多忙と言いながらエコーの機械をちんたら取りに行ってる外科医、全国にいますよね? それ、外科医の仕事でしょうか。

 私からの提案は、2つの分業化です。1つは「業務内容の分業化」、もう1つは「時間の分業化」。

 「業務内容の分業化」は、文字通り、外科医の業務を分業化することです。ほら、これまで消化器外科医って、なんでも抱えるのが好きだったですよね。例えば、癌患者さんに関わる消化器外科医はこんな風に。

 術前検査(内視鏡、透視)
 → 手術
 → 病理
 → ICU合宿
 → 化学療法 → 再発 → 化学療法
 → 緩和 → 看取り

 これを全て外科医がやっていました。今でも全てやっている外科医は少なくないでしょう。これを、

 術前検査(内視鏡、透視) =消化器内科医
 → 手術         =外科医
 → 病理         =病理医
 → ICU合宿       =集中治療医
 → 化学療法 → 再発 → 化学療法 =腫瘍内科医
 → 緩和 → 看取り   =緩和ケア医

と分担することも必要なのではないかと思うのです。

 残念ながら、この方が1つひとつのクオリティも遥かに上がるでしょう。予想されるツッコミ、「患者さんはずっと一人の主治医に診てもらいたいんだよ」は、外科の外来にも継続して通院してもらうことで解決することでしょう。

 もう一点の「時間の分業化」について。これも文字通り「時間をきっちり分けて、みんな休みの時は休みましょう」というものです。これは複数主治医制と当番制という2つのキーワードで説明されます。

 複数主治医制は、文字通り、1人の患者さんに複数の主治医としましょう、という案です。外科医同士で方針が異なって喧嘩になる? いえいえ、方針はみんなで決めましょう。一方の外科医がどういう説明をしているかがわからないから、医者が言ってることがちぐはぐになる? 説明した内容は紙やデータで共有できますし、同じ外科でそこまで言ってることが違うのは逆に問題です。科として統一しましょう。

 当番制も、文字通り、当番日を公平に設定し、等しく夜間のコールなどを負担しましょう。

 これらの策をとれば、少しは1人当たりの仕事量負担が減るかもしれません。そうすれば、外科医が増えなくともバーンアウトが減り、なんとか現場は維持できるかもしれませんね。他にもフィジシャン・アシスタントなどの新しい資格創設なども有用かもしれません。

 外科医不足の解決策について、お話を致しました。

 こういうことを言って、最も反発するのは誰でしょう。実は、私の同業者である外科医なのですね。不思議なものですが、「何を余計なことを言ってるんだ」と私はお叱りを受けるでしょう。こういう事象のことを「矢はいつも後ろから飛んでくる」と言います。私は、何度もやられた経験がありますから(笑)、後頭部と背中にだけ鎧を着ています。

 ま、どっちみち、このままではやっぱり外科崩壊への行進なのですから、何か手を打たねばなりませんね。



https://www.m3.com/news/iryoishin/528177
真価問われる専門医改革
「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記へ
日本専門医機構、4点の変更、6月の理事会で決定予定

レポート 2017年5月12日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本専門医機構は5月12日、理事会を開催し、新専門医制度の基本ルールに当たる「専門医制度新整備指針」について、「専門医の資格は、全ての医師が取得しなければならないものではない」などの見直しを行う方針を確認した。4月24日の厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」で出された要望を踏まえた対応だ。従来は、「原則として取得」となっていた。次回6月2日に予定されている同機構理事会での決定を目指す。

 厚労省検討会では、新専門医制度の地域医療への影響などを懸念する声が上がり、(1)専門医の取得は、事実上、義務付けられるものではない、(2)地域医療従事者等に配慮し、研修カリキュラム制を設置する、(3)大学病院だけでなく、症例の豊富な地域の中核病院も研修の中心とする――の3点の要望が挙がった(『「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記か』を参照)。新整備指針の見直しでは、それに加えて、都道府県協議会についても、研修プログラムを認定する際だけでなく、運用状況についても協議する役割を追加する予定。

 理事会後に記者会見した吉村博邦理事長は、「厚労省検討会で挙がっていた要望は、新整備指針あるいは運用細則、補足説明で書いていることだが、まだ理解が進んでいない。分かりやすい表現で新整備指針に記載する。最終的には、次回の理事会でしっかりと決めたい」と説明した。

 12日の理事会では、19番目の基本領域として追加される総合診療専門医の研修プログラム整備基準案もおおむね了承、吉村理事長と副理事長の松原謙二氏に一任した。微修正後に最終決定する。同整備基準案は5月10日に開いた「総合診療専門医に関する委員会」で議論した。「委員会でほぼ合意に至った。細かいところについては、まだ議論が残っているが、調整をしつつ、最終的に決めていきたい。内科専門医に匹敵するが、内科専門医と対立するのではなく、互いが補完し合う総合診療専門医としたい。ダブルボードで両方とも取れるような形になると思う」(松原副理事長)。

 外科専門医のサブスペシャルティの追加も了承した。従来は4領域だったが、新たに乳腺外科と内分泌外科を加え、連動研修を認める(『外科専門医、「研修プログラム制は柔軟に運営」』を参照)。

 そのほか、新専門医制度の「Q&A」についても、2016年7月に発足した日本専門医機構の新執行部と旧執行部との違い、専攻医の処遇の在り方などを記載した内容で了承。近く同機構のホームページなどに掲載する予定だ。

 吉村理事長は今後について、「地域医療への影響については、まだ不安や疑問が残っているので、その払拭には全力を挙げていきたい。2018年4月の新専門医制度の開始に向けて準備を粛々と進めていく」との方針を示した。副理事長の山下英俊氏は、「新専門医制度は、国民のための制度、きちんとした医療を提供するための制度である。この点はぶれてはいけない、ということを理事会で確認した。説明責任を果たすため、次の理事会に向けて準備していく」と述べた。

 「新専門医制度、大都市圏に集中するとは限らず」

 吉村理事長は記者会見で、2017年度の専門医制度において、「暫定プログラム」、つまり新専門医制度用に作成した研修プログラム制と、従来型の研修カリキュラム制で運用している基本領域学会の現状を例に挙げ、「新しい仕組みになったからと言って、大都市圏に専攻医が集中するわけではない」と説明した。

 その一例が、日本整形外科学会。「圧倒的に研修プログラム制を選択した専攻医が多い。きちんとした研修プログラムを作れば、専攻医は地方に行く」(吉村理事長)。2017年度の専攻医572人の内訳は、研修プログラム制希望が557人、研修カリキュラム制希望が15人。2011年度から5年間の平均採用実績(大都市圏269人、大都市圏以外270人)と比較すると、大都市圏は9人増(3.3%増)、大都市圏以外は24人増(8.9%増)だった(『新専門医、「大学の専攻医囲い込み」は誤解 - 丸毛啓史・日本整形外科学会理事長に聞く』を参照)。

 「暫定プログラム」を採用したのは計6基本領域で、整形外科領域以外でも大都市圏集中の傾向は見られなかったという。

 総合診療専門医、「大都市圏に集中しない仕組み」に

 松原副理事長は、総合診療専門医の研修プログラムの基本的考え方について、(1)学術的に立派な制度を作る、(2)内科で1年間研修、J-OSLER(専攻医登録評価システム)を使い、内科的な履歴を残す、(3)小児科と救急はそれぞれ3カ月間研修、(4)外科は、初期臨床研修で選択しなかった場合には、研修することが望ましい、(5)へき地等で1年間以上研修することが望ましい、(6)大都市圏に専攻医が集中しないような仕組みを検討する――などと説明。「十分に地域医療に貢献できる専門医制度としての総合診療専門医が成立する予定」(松原副理事長)。

 研修期間は3年で、(2)と(3)で計1年6カ月、「総合診療I」と「総合診療II」がそれぞれ6カ月。残る6カ月が選択であり、「他科のこと、あるいは自分がより勉強したいところを勉強できる仕組み」(松原副理事長)。

 (5)の「へき地等で1年間以上」は、3年間のどの期間でもいいとされる見通しだが、松原副理事長は、「研修プログラム上、どうするかはもう少し議論が必要。個人的には、一番行ってもらいたいのは、最後の3年目。ある程度研修をし、対応できるようになり、中小病院と診療所で在宅医療をやるような時に、へき地等でやってもらえれば」と語った。



https://www.m3.com/news/iryoishin/526564
新たなビジョン、利害調整では生まれず - 渋谷健司・厚労省ビジョン検討会座長に聞く◆Vol.1
「異常事態」と形容された検討会座長の真意

インタビュー 2017年5月8日 (月)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 ここ数カ月、厚生労働省内の審議会・検討会の中で、高い注目を集めていたのが、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(『医学部定員増に歯止め、「偏在対策、成果を出すラスト・チャンス」』を参照)。その発足の経緯や「非公開」の議論のプロセス、ひいてはこの4月にまとめられた報告書に至るまで、医療界内で賛否が分かれている。
 塩崎恭久厚労相の肝いりの「保健医療2035」策定懇談会(2015年6月に報告書)に続き、座長を務めた渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授に、議論の過程や報告書の基本的考え方などをお聞きした(2017年4月27日にインタビュー。計3回の連載)。

――ビジョン検討会は、「医師需給分科会」をはじめ、厚労省の他の関係審議会・検討会の議論を事実上、ストップした形で2016年10月にスタートした経緯があります。この経緯には多くの批判がありますが、どう受け止められていますか。そもそも座長を引き受けられたお考えも含め、お聞かせください。

 まずプロセス的には、既存の関係審議会・検討会関係者には、ビジョン検討会の報告書が出るまでの間、大変ご迷惑をおかけしたと思います。

「ビジョン検討会報告書は、若手医師と女性医師に、夢を与えるためにまとめた」と語る、渋谷健司氏。

 医師の需給は、時代とともに変遷する上、さまざまなファクターが関係します。「医師需給分科会」の2016年6月の「中間とりまとめ」で、今後の必要な医師・看護師数を検討する際の前提として、「我が国が目指す医療の在り方」と、それを踏まえた医師等の働き方の検討が必要とされました。つまり、今後の働き方に関するビジョンがないままに、現状を追認し、医師の需給を外挿するやり方では問題があるとされたわけです。この考え方は正しいと思います。

 つまり「今までやってきたことを、そのままやっていればいい」という時代は終わった。特に医療提供体制、医師の需給や他職種との連携の在り方は、難しい問題ですが、時代とともに変わっていく必要があると思うのです。その際に、さまざまなイシュー(課題)を洗い出して議論し、どんな方向に進むべきかを皆で考えるべきなのです。不確実で先が見えない時代だからこそ、こういう方向に皆で進んで行こうという、その羅針盤が必要になります。ビジョン検討会はその議論の場だと受け止めました。

 実は今回、座長を打診された時には、最初は引き受けるつもりはありませんでした。けれども、今の医療提供体制においては、特に現場の疲弊感がひどく、医師のバーンアウトは切実な問題。僕の医学部時代の同級生にもそうした人が多い。若い医師たちを見ても大変な思いをしています。

 その上、僕は「保健医療2035」の座長を務め、2015年6月の報告書で、今後の医療の方向性を打ち出した。この報告書では、20年後の医療は描きつつ、「今、何をやるべきか」にも言及しています。

――「保健医療2035」を実現するため、また次につなげるために座長を引き受けた。

 医療提供体制をめぐる議論は、必ず「炎上」します。どうやっても関係者全員を満足させることはできません。でも誰かが皆を納得させる方向性を示さなければなりません。また医療提供体制については、サプライサイドだけではなく、需要側の問題やテクノロジーの発展など、さまざまなファクターが関係してきます。むしろこうした要素を見ることで、医療全体の見方も変わるのではないか、という思いもありました。つまり、「働き方」を入り口にして、今取り組むべきことを議論できる場であれば、僕の役割はあると思い、座長を引き受けました。

――構成員は、渋谷先生が人選されたのでしょうか。

 僕が決めたわけではありません。「団体代表は入れず、なるべく広い分野から、比較的若手をメインに」という希望は申し上げましたが、それ以外は言っていません。第1回会議で初めてお会いする方がほとんどでした。

――ビジョン検討会の進め方については、「非公開」への批判もありました。

 確かにメディアなどにオープンにした公開の場で議論していないという意味では「非公開」ですが、全くの密室での非公開会議ではなく、国際的にもよく用いられる「チャタムハウスルール」で議論しただけです。この点は混同しないでいただきたい。構成員は個人の立場で参加、発言してもらっていますが、皆何らかの組織には所属しています。構成員の立場を守りつつ、自由闊達に議論してもらう手法が、「チャタムハウスルール」。

 報告書には、「本検討会で示す新たなビジョンは、先に述べたように複合的な課題の解決を志向するものであり、これまでのように医療提供体制に関する伝統的な政策形成の論理や利害調整を机上で展開するだけでは策定できない」(報告書の6ページ)と記載しています。公開の場では、各々のポジショントークに走りがちになります。それは仕方がないことですが、新しいビジョンは生まれにくくなります。ビジョン検討会では、「誰が何を言ったのか」の「誰が」は伏せていますが、資料は全てオープンにしており、「何を言ったのか」、つまり、どんな議論があったのかが分かるよう論点も公開しています。

――報告書は、2016年度末までにまとめる予定でした。短期間で報告書をまとめる苦労などはありましたか。

 時間がなかったからこそ、あらかじめこちらで決めた、たたき台や論点を提示し、それに沿ってまとめるのではなく、まずゼロベースで課題を洗い出し、仮説を立てていくという、通常の研究やコンサルティングと同じ手法を取りました。このやり方は正直大変で、また構成員はとても戸惑ったと思いますが、最初の数回の会議は、まず課題の洗い出しを徹底的にやりました。そこが曖昧だと、真の解決にはつながらないからです。

 ただし、このプロセスがあったからこそ、いろいろな方面の課題が出され、議論に広がりと深みが出たと思うのです。医師の需給・偏在の問題が発端でしたが、それに留まらず、医師の働き方やキャリア形成、他職種や介護との連携、地域住民や患者のヘルスケア意識などを含めて一体的に見る必要があるという話は、このプロセスから出てきました。

――2016年12月に「中間的な議論の整理」を行いました(『医師偏在、「プライマリ・ケア」と「地域」で解消』を参照)。

 「中間的な議論の整理」は、抽象的だと思われたでしょう。まだ「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」の途中であり、この結果が出てから具体的施策を詳しく書こうと思っていたからです。医師のプロファイリング、つまりどこでどんな医師が働いてどのようなキャリアを積んでいるかとか、地方勤務に当たっては何が障壁になっているかなどは、調査で確認しなければならないと考えていました。もっとも、「中間的な議論の整理」で打ち出した柱は、最終的な報告書でも変わっていません。

――調査票の作成に先生方は関わったのでしょうか。

 ビジョン検討会で、内容は報告してもらい、質問票に対する意見はフィードバックしていました。ただ研究デザインや調査内容は、信頼できる方がいらっしゃる研究班にお任せしていました。厚労省医政局の事務方も短期間で本当によくやってくれたと思います。

――調査結果で、「意外だったこと」あるいは「新たな発見」はありましたか。

 今まで考えていたことが、エビデンスとして出てきたので、意外だったことはないです。もともと僕は、医師の強制配置は最終的な手段であり、できるだけやるべきではないと思っていました。調査結果から、医師の偏在問題は、強制配置をしなくても、勤務環境や子育て環境を整えれば問題解決が可能だと分かった。医療界には古い体質が残り、一般のビジネス界では当たり前のことが、行われていなかったとも言えます。

 20代の医師は、一生懸命に研さんができる場、一人前になるための環境がほしいと考える。30代、40代になると、子育てなどの環境も重視する。それは特別驚くことではありません。調査結果で驚くとしたら、44%のドクターが条件が合えば「地方に行ってもいい」と回答したこと(『医師10万人調査、結果公表!』を参照)。20代では実に60%です。ドクターは本当に真面目な方が多いのです。

 調査結果が出る前は、最終報告書に記載した以上に、さまざまな具体的方策が挙がっていたのですが、調査結果を踏まえ、絞り込みました。

――「44%は地方勤務の意向あり」という中には、現時点で地方に行っている人が含まれているという指摘があります。

 恐らくそういう指摘をされている方は、「意向あり」と回答した医師には、既に地方に勤務している方が多いのではないかと推測していると思います。しかし、地方に勤務していない医師に絞って解析を加えても、ほぼ同様の結果が出ていますので、そうした方も含めて、今後何年、地方に勤務する意向があるかを聞いているわけです。調査票を見ていただければ、この「44%」という数字が間違っていないと考えます。



https://www.m3.com/news/iryoishin/526565
自己犠牲の上に成り立つ医療は終わり - 渋谷健司・厚労省ビジョン検討会座長に聞く◆Vol.2
「自立・自律する医師に夢を与えたい」

インタビュー 2017年5月11日 (木)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――では、報告書の内容についてお聞きします。一番のメッセージおよび全体の根底にある考え方をお教えください。

 「保健医療2035」を公表する際にも言いましたが、報告書は「これが正しい」、あるいは「これを絶対にやるべき」といった、「上から目線」の話ではなく、「こうした方向に進むために、皆で具体案を議論していこう」という提言であることをまずご理解ください。

 次に報告書の基本的な考え方ですが、「自己犠牲の上に成り立つ医療は終わりにしましょう」ということ。これは医療に限らず、日本の組織全体に言えることですが、専門性やキャリアの追求の面でも、また時間的な面でも、個々人の自己犠牲の上に成り立っていることが多い。しかし、人生は自分のもの。特に、医師および医療関係者は、プロフェッショナルな存在であり、自分の人生は自分で決める。矜持と自律を備えた職業人として、世に尽くすことが求められます。


ビジョン検討会報告書には、専門医制度について言及した箇所が複数ある。渋谷健司氏は、「専門医の質を担保しない限り、新専門医制度発足の目的は果たせない」と指摘する。
――大学医局などが、医師などに犠牲を強いてきた一方で、医師の側も自立していなかった面もあるのでしょうか。

 両方があると思います。自立かつ自律をして、社会に貢献する。仕事の質を担保する。それができない、そのための仕組みがないなどの理由から、自己犠牲を強いられているのかもしれません。自己犠牲を強いるのか、あるいは自立・自律ができないのか、どちらが先かは分かりません。しかし、ビジョン検討会で、ヒアリングに来ていただいた若手医師がそうであるように、自立・自律を目指す医師は確実に増えています。そうした医師に夢を与えないと、医療界全体がダメになってしまう。何も特別な才能を持った人に限らず、一定の環境があり、問題意識を持って飛び込めば、自立・自律は可能なのです。

――全員がすぐに自立・自律できるとは限らないものの、ロールモデルがないと進まない。

 はい。また世代的なものも、結構大きいと思うのです。旧来型の組織で教育を受けてきた人に、自分がやったことがないことを教えるように促しても、それは難しいでしょう。

 ビジョン検討会の報告書の主なオーディエンスは、「若手と女性」。報告書の最初に「若手や女性をはじめとして、医療従事者の誰もが将来の展望を持ち、新たな時代に即応した働き方を確保するための指針となることを目指して取りまとめられた」と書いています。議論の過程で、何度も構成員の方に申し上げたのは、「これからの医療を担う若手が希望を持てるように、とにかく現場目線でファクトベースで議論してください、現場目線での施策を出してください」ということ。

――報告書を俯瞰すると、「専門医」に言及したカ所が複数ある点が目を引きます。

 「医師の専門性の追求」が一つの課題だったので、専門医制度の議論は避けては通れません。ただ、今の新専門医制度をめぐる議論に横槍を入れるつもりはなく、強調したかったのは、専門医の「質」の問題です。

――「国際標準の専門医」とされています。どんな専門医像をイメージされ、日本の医療提供体制の中での専門医の位置付けをどのようにお考えなのでしょうか。

 イメージは、「Board Certified」。「スタンプラリー」で取得できる専門医ではなく、第三者が国際標準の質を担保する仕組みです。

 本来、日本専門医機構はそのために誕生したのではないでしょうか。厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(4月24日開催)でも発言しましたが、機構は学会に対して、どのような法的・制度的・財政的な制度を行使し、質を担保するのでしょうか(『「専門医取得、義務ではない」、新整備指針に明記か』を参照)。機構は肥大することなく、質の担保をきちんとやることに注力すれば良いと思います。

 もちろん、「米国式の専門医制度をコピーせよ」と言っているのではありません。ビジョン検討会でも、日米の双方でボードを取得した若手指導医からヒアリングをしましたが、日本でも国際標準の専門医は育成できると確信しました。そのためには、指導医や研修体制の充実が必須です。

 また医療提供体制の中での専門医の位置付けですが、全員が専門医を取得する必要はないでしょう。全員が取得したら、今の医学博士と一緒であり、質が下がるだけです。専門医は専門性を追求する。一方、専門医を取得しなくても、ジェネラリストとして活躍する場は今後多い。

 ビジョン検討会報告書では、専門医制度下での大学医局回帰の可能性に関しても警鐘を鳴らしています。今のままでは、医師偏在も悪化しかねません。医師の偏在に関しては、縦割りの医局人事ではなく、地域のニーズに基づき地域でリソース配分を決めること、前述しましたが、キャリア設計を支援したり、基本的な労働環境や子育て環境を整備するなど、当たり前のことを地道にすることが最も大切であり、医局回帰のローテーション人事は時代に逆行しています。

――諸外国の状況なども踏まえると、どうすれば専門医の質を担保できるとお考えですか。

 それこそが「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」で聞きたかったことです。

 日本専門医機構のガバナンス組織の問題と、専門医認定の在り方の問題があります。また、専門医と医師偏在の問題もあります。今はこれらイシューが異なることが混同されて議論されている気がします。どちらかと言えば組織の話や医師偏在の話が中心で、専門医の認定、ひいては専門医の質をめぐる議論が置き去りになっている懸念があります。例えば、年数や症例数ではなく、コンピテンシーに基づきマイルストーンが設定されているかなど、きちんと議論されているのでしょうか。専門医の質を担保しない限り、新専門医制度発足の目的は果たせません。

――都道府県の役割にも、随所に言及されています。

 結構、議論があったところです。「都道府県にやってもらう」と言っても、必ず「人がいない。どうするのか」といった議論になる。しかし、現在でも県や地元医師会、大学などが集まり、地域の医療の在り方を議論している地域があります。できない都道府県に対して、国から人やお金を送っていたら、いつまで経っても同じことの繰り返しで問題は解決にならない。もっと地域で切磋琢磨し、創意工夫することを後押ししないと、変わらないという思いが僕自身にあります。そんなに現場の知恵・実力を過小評価するな、と。

――医療は地域性が大きいので、地域で問題を解決していかなければいけない。

 その通りです。

――最終的に報告書をまとめる段階になって、かなり何度も推敲をされたとお聞きしています。

 確かに最初の頃のバージョンは、書きぶりが粗く正しく思いが伝わらなかったため、時間をかけて議論し、調整をしました。最終的にまとめた報告書は、表現は少し変えたところはありますが、内容的にはそんなに変わっておらず、「中間的な議論の整理」で打ち出した方向性とも基本的は同じです。いろいろな意見をいただく中で、「確かにもっともだ」という部分は変えましたが、妥協した部分はなく、最後は僕の責任で全て決めました。


  1. 2017/05/14(日) 14:07:05|
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5月2日 

http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14935604924355
神栖2病院の統合構想、医師確保や通院への便宜
まちの整備、並行で

2017年5月1日(月) 茨城新聞

2病院の統合で本院として機能することが決まった神栖済生会病院=神栖市知手中央2病院の統合で本院として機能することが決まった神栖済生会病院=神栖市知手中央
医師不足で経営難が続く神栖市内2病院の統合再編問題で、統合後の本院を神栖済生会(知手中央)とし、分院を鹿島労災(土合本町)の跡地に新設する基本構想が決まった。地域住民からは「統合で医師が集まる病院に」「地元で安心して医療を受けられる環境を早く実現して」と期待の声が上がる。一方で、利用者の交通手段の確保や医師の確保・定着などを狙いに、インフラ整備などまちづくりの促進を求める声も強く、今後は地域医療の再建に向けた歩みを着実に進められるかが注目される。 (鹿嶋支社・関口沙弥加)

■基本構想

2病院の再編統合協議会(会長・小松満前県医師会長)は2018年度をめどに統合を実現させる方針。神栖済生会を増築して救急医療や入院、手術に対応する本院(新病院)とする計画。スタート時は現在の179床を維持し、基本的に2病院の診療科目が引き継がれる。将来的には増築工事などを経て、医師数50〜80人を確保し、350床の二次救急病院を目指す。

現在、両病院の常勤の医師は神栖済生会21人、鹿島労災12人の計33人。新病院は臨床研修医を受け入れる臨床研修指定病院を目指し、医師不足の解消を図る。

一方、鹿島労災は統合時に分院として機能させるため、現在の駐車場に19床以下の有床診療所を建設し、内科のほか外科や整形外科、小児科など外来でニーズの高い科目を設ける予定。現在の鹿島労災の建物は解体し、将来的には診療所に介護福祉施設などの併設も検討する。

両病院と県、市が今夏までに協定を結び、基本計画をまとめる方針。今後は事業費の負担や職員の処遇などの協議が進められる。

■ワースト2位

県内の人口10万人当たりの医師数(14年)は177・7人で、全国平均の244・9人を大きく下回り全国ワースト2位。県内の地域別にみると、神栖市を含む鹿行地域は90・7人で最も少ない。

小松会長は深刻な医師不足について、新医師臨床研修制度を挙げながら「研修医は症例の多い都会の病院などに集中。地方に派遣していた医師の大学への引き上げなどによって、地域の医師不足に拍車がかかった」と説明する。特に、鹿島労災は09年に最大40人だった常勤医師が、13年は10人まで減った。

2病院は医師不足を背景に、15年時点で鹿島労災が300床のうち100床、神栖済生会が179床のうち93床しか稼働できない状況。また、当直の医師が原則1人のため、救急患者を受け入れられないケースも少なくないという。

■住民も一緒に

2病院の統合再編に関して、鹿島労災に通う市民には期待と不安が入り交じる。同市土合南の男性(81)は「身近な病院がなくなるのは不安だが、統合による医師の確保と医療の向上に期待したい」。また、同市波崎の女性(74)は、免許返納後の通院を見通しながら「自宅から遠くなるので、交通弱者のためにもインフラの充実を図ってほしい」と求めた。

小松会長は「この地域の医療を何とかしたいという関係者の思いは一緒。住民が一緒になって地域にとって魅力ある病院を育てていくという気持ちが大事」と強調した。



http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20170429/CK2017042902000024.html
済生会への経営移行、協議開始発表 守山市民病院
2017年4月29日 中日新聞 滋賀

 守山市は二十八日、経営難が続いている市民病院について、社会福祉法人「済生会」へ経営移行するための協議を始めると発表した。新病院の開院は来年四月を目指す。

 指定管理とするか、施設を含めた完全譲渡とするかは今後検討する。現在ある十八診療科目のうち、内科、外科、小児科、整形外科は堅持するが、他科目は済生会滋賀県病院(栗東市)など他病院との兼ね合いを考慮するという。看護師や事務職員などは、非正規も含めて新病院での雇用を確保する。

 市民病院を巡っては、診療報酬の改定や医師不足により、慢性的な赤字経営が続いていた。二〇一六年度の決算見込みでは累積赤字が約十八億円に上り、二十一億円の資本金に迫る状況。十六人いる医師は来年度、三人減る見込みで、さらに厳しい経営状況となる恐れがあった。

 宮本和宏市長は「市直営の病院経営は限界であると判断した。市民にはおわび申し上げる」と謝罪。その上で、「これまで以上に充実した病院として取り組んでもらえると思う」と新病院に期待を示した。

 (鈴木啓紀)



http://www.asahi.com/articles/ASK4Y35FXK4YUBQU001.html
赤字の守山市民病院、済生会への経営移行を協議 滋賀県
八百板一平
2017年4月29日14時00分 朝日新聞

 滋賀県守山市は28日、赤字を抱える守山市民病院(守山市守山4丁目)の経営を全国で病院を運営する「恩賜(おんし)財団済生会」(東京都)に移行する協議を始める、と発表した。病院財政の悪化や、医師の確保が難しいことなどが理由で、来年4月の新病院開設を目指すとしている。

 市民病院は1982年に、私立の病院を引き継いで発足。診療報酬の改定や、医師不足による患者数の減少などから、2016年度の決算見込みで累積赤字が約18億円になるなど、厳しい経営が続いている。

 市役所で記者会見した宮本和宏市長は「最重要課題の医師の確保が思うように進まず、市直営の病院経営は限界だ」と述べた。

 加えて、医師の高齢化や近隣の病院の診療態勢の充実などから、今後も経営の好転が見込めないとし、経営の移行に向けた協議入りを決断した、と説明した。

 新病院は、独立採算制とし、運営形態は今後、済生会側と協議する。内科や外科、小児科などの診療科の堅持▽救急・リハビリ機能の強化▽済生会のネットワークをいかした医師の確保――などを前提として協議を進めることで合意しているという。

 5月に市内で市民向けの説明会を開いて、経緯などを説明する予定。

 宮本市長は「今まで以上に充実した地域医療を提供していただけると考え、経営の移行が最善策だと判断した。市民にもしっかり説明したい」と述べた。



https://www.kochinews.co.jp/article/95780/
高知県の室戸病院が5月から入院休止 医師、薬剤師不足
2017.04.29 08:20 高知新聞

 高知県室戸市の医療法人「長康会」が運営する室戸病院(室戸市元甲、一般病床50床)が、4月末で入院患者の受け入れを休止することが4月28日までに分かった。常勤医師や薬剤師の退職に伴いスタッフの人繰りが付かなくなったためで、5月から外来患者のみを受け付ける。室戸市内で一般病床を持つのは室戸病院だけで、最も近いのは高知県安芸郡田野町の田野病院(一般病床84床)になる。...



https://mainichi.jp/articles/20170501/ddl/k28/010/318000c
川西市
市立病院、公設民営化へ 指定管理者制度で /兵庫

毎日新聞2017年5月1日 地方版 兵庫県

キセラ川西センター予定地(兵庫県川西市)
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 川西市は30日、赤字経営が続く市立川西病院(川西市東畦野5)を閉鎖し、指定管理者制度を導入した公設民営の「市立総合医療センター(仮称)」を2021年度に開業する計画を発表した。今年秋に指定管理者を募集し、来年3月市議会での議決を経て正式決定する予定。【石川勝義】

 川西病院には市が年間約10億円の補助金を出しているが、02年度から毎年赤字が続いており、今年3月末時点の累積負債額は約40億円。うち約26億円が市の貸し付けという。

 このため、指定管理者には医療水準、健全な資産、川西病院の退職者の優先採用に加えて、指定後に社会医療法人化を目指すことを条件にした。

 赤字体質の自治体病院から社会医療法人に代わることで公益性の高い地域医療を存続させることにした形で、市は今後、隣接する猪名川町や大阪府の能勢、豊能両町にも費用負担を求める方針。大塩民生市長は「川西全体の医療や、いかに市民病院を継続するかを考えた結果、指定管理者制度の導入を決めた。いろいろな力を合わせていきたい」と述べた。

 整備事業費は約176億円で財源は市債。償還は地方交付税交付金が4割、指定管理者の負担が5割で、市の実質負担額は1割としている。

 市中心部に本院の「キセラ川西センター」(川西市火打1)を建設し、現在の川西病院がある市北部には分院の「北部急病センター」を整備する。

 キセラ川西センターは26診療科、救命救急や周産期など8専門センターを設け、現在の15診療科から大幅拡充させる。病床数は400床で医師80人、看護職員400人、医療技術職100人程度の規模にする。

 北部急病センターは内科、整形外科、小児科の3診療科。入院病床は置かないが、24時間体制を取る。建設候補地は能勢電鉄山下駅前の民間所有地が最有力だが、土地取得に時間がかかる場合は現在の川西病院を暫定利用する。

〔阪神版〕



https://www.m3.com/news/iryoishin/525619
シリーズ 群馬大学腹腔鏡死亡事故
群大改革「萎縮するも、エネルギーためている段階」、学長特別補佐
桑野教授も日本外科学会で会頭講演、「全員で全例を診る」

レポート 2017年5月2日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 4月28日の第117回日本外科学会定期学術集会の特別企画「医療安全ガバナンスの確立を目指した外科組織のあり方」で、群馬大学学長特別補佐の西山正彦氏(病態腫瘍薬理学教授)が「医療の質・安全性保証のためのガバナンス強化に向けて:群馬大学の試み」と題して改革状況を報告、「スタッフは多くの医療業務の中で萎縮しているが、高くジャンプする前のエネルギーをためている段階」と話した。

 同学術集会の会頭を務めた、群大総合外科学教授の桑野博行氏は、「外科学の臨床と研究から垣間見られたこと―考える外科学の実践―」と題して講演、群大における外科診療科・講座の体制を報告、入院患者や手術症例などは全員参加のカンファレンスで検討するなど、全員で全例を診る」体制を構築していると説明した。今年度は6人が新入局したと報告し、「心を一つとして未来へ向かって進んでいく」と意気込みを語った。

 西山氏は、一連の問題に対応するために学長直下に作られた医療事故調査委員会と病院改革委員会の2つの報告書が、改革の基本にあると説明(『「群大事故が投げかけた10の課題」、名大長尾氏』を参照)。大項目で27、小項目で110に達した改革事項の多くは既に実行に移しているとし、体制面では、(1)医療安全学講座、(2)先端医療開発センター、(3)地域医療研究・教育センター――のなどを新設、病院長選考過程を透明化するなどガバナンスの強化に取り組んできた(『群大、オール群馬での医師派遣の仕組みを検討』を参照)。

 一方で、一朝一夕にできない、すべきでないこととして、報告書で指摘された「風土の改革」があるとし、航空・宇宙や原子力など極度に高い安全性が求められる組織における「高い信頼性をもたらす5つの原則」を紹介。

  1. 安全性を志向する組織内の環境・文化・全職員の心構え
  2.安全を脅かす微小な徴候への感受性
  3.日常業務の偏移(期待レベルからのずれ)への高い感受性―自由な発言と報告の義務
  4.エラーが起こっても大事にならない抵抗性・受難性・弾力性
  5.年齢や序列にとらわれない専門家の重用

 また、優れた組織で生じる「二律背反則」を説明。

  1.安全性を高めると、効率が下がる
  2.規律を強化すると、創意工夫がなくなる
  3.監視を強くすると、志気が下がる
  4.マニュアル化が進むと、自主性がなくなる
  5.フールプルーフは技術低下を招く
  6.責任をキーパーソンに集中すると、集団はバラバラになる
  7.責任を厳重にすると事故隠しが起こる
  8.情報公開すると、過度に保守的となる

 群大の現状について、「残念ながら、今、急速な改革のためにスタッフは多くのdutyを抱え、多くのカンファレンスを抱え、多くの医療業務の中で少しずつ萎縮している」と話した。西山氏は「高くジャンプをする前のエネルギーを蓄えている段階」として、個人個人の意識改革に継続的に取り組んでいきたいとした。

会頭講演「全員で全例を見る」

 桑野氏も会頭講演の中で、群大外科診療科・講座の取り組みを報告した。外科系の組織は旧第1、第2外科と分かれていたが、附属病院では外科診療センターに、大学の講座では総合外科学講座に統合。センターでは毎週木曜日の午前7時から午前10時まで、外科医全員(現在48人)と手術室・病棟看護師、学生も参加するカンファレンスを開催しており、翌週の予定手術全例、入院患者全例の経過報告、死亡退院症例全例を報告する。「全員で全例を見る」と強調した。

 全てのカンファレンスの内容は議事録に残し、診療録に記載するようになっている。インフォームド・コンセントでは、説明同意文書の定型化を進めており、現在まで650種類を作成。説明の場には看護師の同席を求めており(現在は80%程度)、相手の話をさえぎることはなかったかどうかなどを看護師が5段階で評価し、医師にフィードバックする仕組みも整備した。



http://www.nikkei.com/article/DGKKZO1589850028042017L60000/
厚労省、病院統合後押し
2017/4/29付日本経済新聞 地域経済 

 国が高齢化などで膨らむ医療費の抑制を強め、人口減少で今後患者数も減ると見込まれるなか、病院の経営環境は厳しさを増している。こうした病院に経営統合を促し地域医療の効率化にもつなげようと、厚生労働省は4月「地域医療連携推進法人制度」を導入した。

 同制度は病院を運営する医療法人など複数の非営利法人が「地域医療連携推進法人」を設立するもの。競争していた病院同士が役割分担し、医薬品や機器の共同購入、教育研修の共同化、資金融通などにも取り組む。4月に愛知県で設立されるなど各地で検討が進む。

 とちぎメディカルセンター(TMC)による再編は同制度によらないが、中身を先取りしたと言える。もっともTMCの役割分担では急性期から回復期への転換に時間がかかるなど、短期的な経営だけ考えたら「非効率」(関係者)な面もあり、不断の検証が必要だ。

(宇都宮支局 武田敏英)


  1. 2017/05/03(水) 06:45:20|
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