Doctor G 3 のメディカル・ポプリ

地域医療とプライマリケア、総合診療などに関係したネット上のニュースを記録。医学教育、研修、卒後キャリア、一般診療の話題、政策、そしてたまたまG3が関心を持ったものまで。ときどき海外のニュースも。

7月22日 

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170718-OYTET50028/
ニュース・解説 医学部「地域枠」地元限定に…医師偏在解消狙う、厚労省方針
2017年7月17日 読売新聞

 地域で働く医師を育成する大学医学部の地域枠について、厚生労働省は、原則として大学がある地元出身者に対象を限定するよう、都道府県に求める方針を決めた。卒業後も、そのまま地域に定着する傾向が強い地元出身者をより多く確保してもらい、医師が都市部に偏り、地方で不足する地域偏在の解消につなげる狙い。

 今月末にも、奨学金を出す都道府県に通知し、大学と連携して2018年度から実施するよう求める。

 地域枠は、以前から一部の大学で独自に設けられていたが、国は08年度から医学部の定員増によって拡充に乗り出した。16年度の募集人員は計1617人に上り、医学部定員の約6分の1を占める。現在は、地域枠の半数が地元出身者枠となっている。

 厚労省が、初期臨床研修を修了予定の全国の研修医に行った調査では、出身地にある大学に進学した場合、そのまま同じ都道府県で勤務すると答えた人が78%を占めた。このため、地元出身者に絞った方が地域への定着率が高まると厚労省は判断した。

  <地域枠>  地域の医師確保を目的に設けられた大学医学部の選抜枠。卒業後の9年前後の期間、大学がある都道府県内の医療機関で働くことなどを条件に奨学金の返済を免除するケースが多い。文部科学省によると、2016年度は9割にあたる71大学で導入している。



http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=359451&comment_sub_id=0&category_id=256
医学部地域枠、地元出身に限定 厚労省が要請方針
2017/7/23 中国新聞

 医師の地域偏在解消に向け、厚生労働省が、大学医学部に設けている現行の「地域枠」について、対象を地元出身者に限定するよう、 財源負担などで制度を運用する各都道府県に要請する方針を固めたことが22日、分かった。原則として出身県の医学部に通い、卒業後も一定期間、周辺地域の 医療機関で働く人であれば、奨学金の返済免除などの支援を行う。地元出身者は地域への定着率が高いとの調査結果もあり、医師不足に悩む地域への対応として 注目される。
 厚労省は今月末に都道府県に通知し、2018年度には地元出身者に限定した運用をスタートさせたい意向。担当者は「地域枠制度の効果をより一層高めることになる」と期待する。
 地域枠は、医学部卒業後に周辺地域で勤務することを条件に奨学金を出すなどの制度。現行制度では地元出身者以外も対象に含まれており、卒業生の中には条件を守らず大都市圏での勤務を選ぶ人もいるなど問題点が指摘されている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/546730
社会保障審議会
医学部地域枠は「地元出身者に限定」、例外も
医療部会、第7次医療計画の関連通知内容を了承

レポート 2017年7月20日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)は7月20日、医学部地域枠を「原則として、地元出身者に限定」とする医師確保対策について、地元に残る方策が講じられる場合には例外もあり得る解釈することで了承した。その他、各都道府県の地域医療支援センターの機能強化を含め、2018年度からの第7次医療計画に盛り込むべき内容を了承した。厚生労働省は、同計画策定に関する通知を、2017年3月に各都道府県に出しており、了承された内容を追加した通知を、7月中に発出する予定(資料は、(資料は、厚労省のホームページ/a>)。

 医師確保対策は、この4月以降、「医療計画の見直し等に関する検討会」や、「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会で議論してきた内容(『医師偏在対策「キャリア形成プログラム」、医療計画に位置付け』、『「地域枠、地元に限定」「医師データベースで異動を追跡」』などを参照)。

 医学部地域枠を「原則として、地元出身者に限定」することについて再考を促したのは、日本医師会副会長の中川俊男氏。「大学所在の都道府県出身者は、臨床研修終了後、その都道府県に定着する割合が高いというエビデンスはある。しかし、他の都道府県の大学に、地域枠の医学生の受け入れを要請しているケースがあり、全てを地元出身者に限定すると、混乱を招く可能性がある」と指摘した。

 厚労省医政局地域医療計画課長の佐々木健氏は、地域医療介護総合確保基金を活用して、医学部地域枠の医学生に奨学金を出しているケースは、国費を使っていることを踏まえ、既に「地元出身者」に限定していると説明。「今回は、さらに自治体が独自に奨学金の財源を確保した地域枠についても、地元出身者に限定するという考え方」と付け加えた。ただし、中川氏が指摘するケースもあることから、卒業後も地元に残る方策がある場合には「地元出身者」に限らないことも認めるとし、「書き方を工夫して周知する」と引き取った。

 7月中に予定している第7次医療計画の通知には、(1)医療従事者の確保、(2)医療・介護の体制整備に係る協議の場の役割の整理、(3)5疾病5事業の見直し、(4)在宅医療の体制構築――についての事項を追加する。

 20日の社保審医療部会では、地域医療構想の現状や病床機能報告制度についても議論。10月実施の2017年度の病床機能報告について、医師数(施設単位)などの報告項目の追加、「入院前・退院先の場所別患者数」の報告対象期間を1カ月から1年にすることなどの見直しを了承した(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』を参照)。

第7次医療計画についての厚労省内での議論は、一区切りが付いた。

 地域医療支援センターの実効性に疑問符
 (1)のうち、医師確保対策については、法改正を必要とせず、「早急に実行可能な医師偏在対策」をまず実施する。都道府県が運営する地域医療支援センターの機能を強化し、医師の地域偏在解消に取り組む「コントロールタワー」の確立などを掲げている(『医師偏在対策「キャリア形成プログラム」、医療計画に位置付け』などを参照)。地域医療支援センターは2016年4月の時点で、47都道府県に設置済み。

 しかし、これらの対策の実効性に疑問を呈したのは、全国知事会(奈良県知事)の荒井正吾氏。「コントロールタワーの確立などと、“お気楽”に書いているが、医育機関と都道府県との関係は、生やさしいものではない。奈良県の場合、県立医科大学のため、一定のコントロールは効くものの、地域医療のことを考えていない医育機関が多い」と指摘。

 全国市長会(埼玉県秩父市長)の久喜邦康氏も、大学と地域医療支援センターは協力関係にない現状があると指摘し、同センターが果たして医師偏在対策として機能するか、不安感を覚えるとした。佐々木課長は、これらの懸念に対し、両者が連携するよう通知で明示していくと説明。

 さらに医師確保対策では、「詳細な医師の配置状況が把握できる新たなデータベース」を作成する予定。日医常任理事の釜萢敏氏は、「データベースは3師調査(医師・歯科医師・薬剤師調査)を基に作成することになるのだろう」と述べた上で、日本専門医機構が策定予定の専門医に関するデータベースなどとの連携予定について質した。

 厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、3師調査を基にしたデータベースについては、「分かりやすいように整理して、都道府県に使ってもらえるよう準備していく」と説明。日本専門医機構のデータベースは、準備中であることから、完成した時点で有機的につながるよう検討していく方針とした。

 「病院に歯科医師」、必要性に疑義も
 (1)の医療従事者の確保では、歯科医師の確保対策も議論になった。厚労省は、入院患者に対して、口腔機能の管理を行うと在院日数の有意な短縮が認められるというエビデンスを基に、病院への歯科医師の配置を進め、医科歯科連携を進める方針。2014年の時点では、医育機関以外に歯科医師がいる病院は3.1%で、医育機関でも9.0%と1割に満たない。

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、この方針を支持。診療報酬での評価も含め、歯科医師の配置を進めるべきとした。

 これに疑義を呈したのが、中川氏。口腔ケアの重要性は認めたものの、歯科医師以外にも、看護師などが担っていることから、「歯科医師がいなければいけない、というのは無理筋」と指摘した。

 厚労省医政局歯科保健課長の田口円裕氏は、「口腔機能の管理は、日常的な口腔ケアではない。歯科医師が口腔内を診断し、治療や歯石除去などを行う専門的な内容。病院に配置されている歯科医師と医師の連携が重要」と説明した。

 永井氏は、厚労省が示したデータは、歯科医師による口腔機能の「管理群」と、「非管理群」の比較であることから、歯科衛生士などによる「管理群」との比較も必要ではないかと指摘。厚労省の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」での議論も進行中であることから、それを踏まえ、今後の対応が決まる見通し。

 都道府県の役割が増してきているが……
 2018年度からの第7次医療計画は、第7期介護保険事業(支援)計画のスタート時期と重なるため、在宅医療の整備などの点で、両計画の整合性も求められる。そのため、都道府県は「医療・介護の体制整備に係る協議の場」の設置が求められている。そのほか、医療計画の一部を成す地域医療構想も、都道府県が主体となり、その達成に向けて協議しなければならない。

 政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏は、「47都道府県の地域医療構想を見たが、その内容に違いがありすぎる。また取り組みの姿勢もまちまち」と指摘。さらに第7次医療計画の策定に向けてさまざまな業務が発生し、その実行に当たっても、各種会議の運営が求められることから、「会議を回すだけで精一杯のところもあるのが実情。フィージビリティー(実現可能性)を考えないと、絵に描いた餅になる」と懸念を呈した。

 荒井氏も、奈良県知事の立場から「都道府県の役割が増してきている」と述べ、第7次医療計画の策定等に当たって役立つデータの提供、ベストプラクティスの提示など、厚労省に対し、必要な支援を求めた。



http://www.medwatch.jp/?p=14892
初期臨床研修をゼロベースで見直し、地方大学病院の医師確保を—医学部長病院長会議
2017年7月21日|医療現場から MedWatch

 2004年の新医師臨床研修制度から、大学病院、とくに小都市の大学病院では初期臨床研修医、後期研修医が確保できず、地域の病院への医師派遣が困難となり、地域の医師偏在を招いている。初期臨床研修をゼロベースで見直すことが、地域医療の確保にとって不可欠である—。

 全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)は20日の定例会見で、このような見解を示しました(関連記事はこちら)。

地方大学の医師不足が、地域医療機関への医師派遣低下、ひいては医師偏在を招く

 全国医学部長病院長会議では、毎年、全大学附属病院を対象に「研修医に関する実態調査」を実施しており、20日の定例会見では地域医療検討委員会の守山正胤委員長(大分大学医学部長)から2016年度の調査結果が報告されました。そこからは、例えば次のような状況が明らかになっています。

【初期臨床研修医の充足率】(初期臨床研修医の定員に対する実数の割合、いずれも1年目の研修医)
▼平均71.3%だが、地域ごとのバラつき(近畿地方の86.2%に対し、東北地方では36.3%)、地域内でのバラつきが依然として大きい

▼中大都市では78.6%だが、小都市では59.5%にとどまる

▼旧帝国大学では83.2%にのぼるが、他の国立大学では61.9%にとどまる

【初期臨床研修修了医の受け入れ率】(自大学出身の医師国家試験合格者に対する、初期臨床研修を終了し、後期研修を自大学で行う医師の割合)

▼中大都市では新研修医制度実施前(2002年)は69.4%であったが、その後、低下。しかし2016年度には94.5%となった

▼小都市では新研修医制度実施前は71.2%であったが、その後、低下し、2016年度でも50.6%にとどまっている

▼旧帝国大学では133.2%に達したが、他の国立大学では64.1%にとどまる

【後期研修医出向率】(自大学で後期研修を受けている医師のうち、地域の病院に出向している者の割合)

▼中大都市では2014年度に16.4%、15年度に26.0%、16年度に28.5%と上昇傾向にあるが、小都市では14年度に17.4%、15年度に20.9%、16年度に15.6%で増加していない

 
 守山委員長は、この中でも【初期臨床研修修了医の受け入れ率】と【後期研修医出向率】に注目し、「地方大学において研修する医師が、新臨床研修医制度施行前の状態に回復しておらず、地域の関連病院への出向・派遣が十分にできていない。これが地域の医師偏在の大きな要因になっている」と分析しました。

 さらに守山委員長は、大分県における大学からへき地医療拠点病院への医師派遣実施を紹介。それによると、地方大学である大分大学からは2016年度に35名の医師が派遣されているものの、自治医大や他の大規模大学からは1桁の医師しか派遣されていません。さらに派遣医師(51名)のほうが、へき地医療拠点病院に就職している医師(29名)よりも多いことも分かりました。守山委員長は「地方大学からの医師派遣が、地域医療を支えていることが分かる」と指摘し、医師偏在の主因が「地方大学の医師(とくに後期研修医)不足にある」ことの証左であると強調しました。

 
こうした状況を踏まえ新井会長は、「明らかに、新臨床研修医制度(初期研修制度)の2004年スタートがトリガー(引き金)となって地域の医師偏在が進んでいる。初期研修制度をゼロベースで見直すことが必要であろう。初期研修の一部を医学部教育に移管し、学部から初期研修、後期研修(専門医研修)をシームレスに実施し、学部時代から『地域で医師を育てる』仕組みとする必要がある」と強く訴えました。

また専門委員長会医学教育委員会の山下英俊委員長(山形大学医学部長)も、「厚生労働省の調査では、研修医の半数程度は『地域医療に貢献する』意思を持っていることが分かっている。ただし、(1)期間を限定する(2)専門医の勉強ができる—という2つの条件がある。裏返せば、2つの条件を満たす仕組みを設ければ、多くの医師が地域医療に従事し、医師偏在が是正されることになる。そこで、『1人の医師が大学と地域の医療機関を循環する』仕組み(例えば大学病院での専門医研修を受け、その後、地域の医療機関に従事し、さらに大学に戻ったり、海外に行き、さらに高度な医療を学ぶ。そこで得た知識・技術を再度、地域医療で提供する、など)を作ることが必要だ。こうした采配はかねてから大学の医局が行ってきたもので、『大学の医局が医師を囲い込んでいる』というのは全くの誤解であり、無益な議論である」と述べています。
 
 なお、20日定例会見では「大学病院の医療事故対策委員会」の中島勧委員(東京大学医学部附属病院医療安全対策センター長)から7月1日に開催された「医療事故の調査などに関するシンポジウム」に関する報告も行われました。
 
 2015年からスタートした医療事故調査制度ですが、中島委員は「医療事故の再発防止」という本来の趣旨を忘れるような動きがあることを懸念。例えば日本医療安全調査機構(日本で唯一の医療事故調査・支援センター)が「医療事故報告の対象となるか否かを判断する」ことは利益相反に陥る可能性があり、判断は「都道府県医師会などの地域の支援団体に任せるべき」と訴えています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。



http://www.huffingtonpost.jp/mareyuki-endo/iwate-medical-field_b_17531930.html
[ 新専門医制度問題 ] 「新」制度が岩手県の地域医療を早くも崩壊させている
遠藤希之  医学教育支援室長、臨床検査センター長(兼務)、東北大学病院臨床教授
投稿日: 2017年07月20日 09時52分 JST 更新: 2017年07月20日 09時52分 JST ハフィントンポスト

岩手県は北海道に次いで第二位の面積を誇る自治体である。しかし可住面積あたりの医師数は都道府県中下から二番目だ。さらに必要医師数の不足度は全国で最も高い。もともとの医師不足に加え、広い面積をカバーするため、『県下にあまねく良質な医療の均霑を』という基本理念のもと20の県立病院群と5箇所の附属医療センターが地域の隅々に設置されているとのことだ。そして全県の7割もの救急搬送を県立病院群が受け入れているという(佐藤耕一郎氏、http://medg.jp/mt/?p=7622)。

筆者は隣県の宮城に住んでおり、また初期研修の3年間を花巻市で過ごした。そのため岩手には友人や大学の同期が多数いる。彼らが岩手県の地域医療の実情、特に後期研修医の動向を送ってくれた。

データをみて驚いた。平成25年度に岩手県立病院全体に在籍していた後期研修医は68人であったが、平成27年度には54人に激減したという。

臨床研修を終えた3年目の医師の動向を入職年ごとに追ったデータがその理由を示している。2010~2013年に入職した臨床研修医150人中、75人は研修を行った地域病院に残っていた(基幹施設になり得る岩手県立中央病院を除く)。一方、2014年度入職、つまり2016年4月に三年目になり、そこから「新制度開始」とアナウンスされていた代(結局延期になった)、そして次の2015年度入職を合わせると、77人中31人しか研修病院に残らなかったのだ。

残りはどこに行ったのか。大部分が「基幹病院」になれそうな大規模病院に移ったのだ。日本専門医機構が「新」専門医制度が始まる、と無責任にアナウンスしたため、臨床研修を終えた医師たちが浮き足立ち、育った地域病院から早くも移りだしたということだ。

実は岩手県内でほぼ全ての基本領域の基幹施設に手上げをした施設は岩手医大病院が唯一である。上述の2014-2015年入職77人中、実に38人が岩手医大病院に吸い上げられたと推測されている(残りは県外施設に移動)。

意外に思われるかもしれないが、「新制度が始まるかもしれない」といういわば狼少年的な問題は瑣末だ。根本的な問題は、機構がこしらえた「循環型研修」、つまり後期専攻医は「基幹施設」のプログラムに必ず属しなければならない、というろくでもない仕組みにある。従来どおり、地方の中小病院に勤務していても専門医を取得できる制度であればこのような事態にはならなかったのだ。

ところで、岩手県立病院群の常勤医師数はかろうじて現状を維持している。

何故か。

定年を迎えた高齢の医師達が、定年を延長し踏ん張っているからだ。その数は27名に上る。内訳は66~68歳の3年間延長医師が14人、69~73歳(!)の任期付常勤医は13人もいる。当然、健康問題を抱えている高齢医師も少なくない。そのため複数の病院では当直医が足りず、院長が当直しなければならない施設すらあらわれた。それも複数だ。

これを「医療崩壊」と言わずなんというのか。「新」制度が始まればこの負のサイクルは間違いなく加速する。

さらに診療科によっては「基幹病院」の「指導医数」の要件を満たすため、指導医まで(!)医大病院に引き上げられているという(友人達はもっとひどい仕打ちを受ける可能性が高いので診療科名は伏せてくれ、と言ってきた)。

大学病院なのに「指導医数」が足りない、とはどういうことなのか、と訝しく思う読者もいるだろう。

しかし例えば、岩手医大病院は「内科教育病院」の要件を二年連続で満たせず、平成28年には教育関連病院に降格させられるはずだったのだ(平成28年、日本内科学会、第48回認定医制度教育病院連絡会議資料、4ページ)。ところが「大学病院として(中略)地域の基幹病院としての特殊性を鑑み(中略)特例として認定する(第118回認定医制度審議会)」として首が繋がった。

内科学会教育病院の要件を満たせない病院のどこが「地域の基幹病院」なのか理解に苦しむところだ。筆者はその他の診療科の実情は知らないが、推して知るべし、であろうとも思う。指導医まで引き剥がされるのもうなずける。

当初機構は、全国一律に「基本、大学病院が基幹施設になるべき」と言い放ち猛反対を受けた。当然である。各地方、自治体の実情は極めて多様であり、大学病院間の実力差も著しい。東京有楽町の一等地、年に千五百万円もかかるオフィス内で考えられた「全国一律の統一基準」などまさに「机上の空論」なのである。

機構の整備基準第二版にはいまなお「基本領域は原則としてプログラム制で研修を行うものとする」とある。「プログラム制」とはすなわち、機構が固執する基幹施設>連携施設の枠組みで行われる、「医師派遣業型研修」とも揶揄され始めた「循環型研修」のことだ。この制度を始める、始まると連呼されたため、岩手県の地域医療はすでに瀕死の状況に追い込まれた。

岩手の現場の医師達は叫んでいる「岩手の医療を殺す気か!」

改めて提案したい。一刻も早く機構の提唱する制度は無期限延期すべきだ。そして地域の医療者、現場の指導医、若手医師も含め、制度設計について議論を尽くさねばならない。

(2017年7月18日「MRIC by 医療カバナンス学会」より転載)



https://mainichi.jp/articles/20170721/ddl/k01/100/329000c
旭川医大
国際医療枠を新設 海外で活動する人材育成 来年度入試 /北海道

毎日新聞2017年7月21日 地方版 北海道

 旭川医大は来年度入試で、面接や小論文などで合否を決めるAO入試に国際医療人養成枠(定員5人)を新設すると発表した。全国から国際医療に関心のある学生を集め、海外で活動する医師の養成を目指す。国公立大では初めての試みという。

 同大によると、海外の医療現場で臨床医として高水準の医療を実践できる語学力と能力▽最先端の研究を国際学会などで報告したり、論文を発表したりできる能力▽世界各地の地域医療の問題に対応できる能力--などの養成を図る。

 海外での医療活動経験が豊富な教員を個別に指導者として配置。入学後に外部の英語試験を義務付け、留学も経験させ米国医師国家試験合格も目指してもらう。外部試験の受験や留学の経費は1人6年間で最大50万円を助成する。

 対象は2016年4月以降に高校などを卒業したか来春卒業見込みの高校生で、調査書の評定平均4・0以上、大学入試センター試験正答率85%以上などが条件。道内の学生を対象にしたAO入試(北海道特別選抜)の定員40人から5人減らし、国際医療人養成枠を確保する。一方、北海道特別選抜についても、文部科学省に認可されれば37人とする見込み。

 全国初の遠隔医療センターを設立するなど遠隔医療の国際的な権威として知られる吉田晃敏学長は「全国から志の高い学生を集め、具体的な目標を持たせることで徹底的に英才教育を図る。地域医療だけでなく国際医療へ貢献していく人材を養成し、旭川を国際医療都市にしたい」と意欲を見せている。【横田信行】



http://www.medwatch.jp/?p=14856
公的病院や地域医療支援病院、改革プラン作成し、今後の機能など明確に—地域医療構想ワーキング(1)
2017年7月19日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 日赤や済生会などの公的病院、国立病院、地域医療支援病院、特定機能病院などは、▼自院が地域で担う役割など▼今後提供する医療機能(4機能ごとの病床の在り方や診療科などの見直し方向)▼今後提供する医療機能に関する具体的な数値目標(診療実績や地域連携、経営関連項目)―などを記載する「公的医療機関等改革プラン」(仮称)を近く策定し、地域医療構想調整会議に報告し、地域医療構想と齟齬があれば改革プランを修正することとする—。

 19日に開催された地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)では、このような方針を了承しました。厚生労働省は近く、改革プラン作成のためのガイドラインをまとめ、公的医療機関などに通知する考えです。

ここがポイント!
1 公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院などが改革プランを作成
2 改革プランには今後の機能や、診療実績に関する数値目標なども記載
3 調整会議の協議と齟齬があれば、改革プランは修正が求められる

公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院などが改革プランを作成

2025年における地域の医療提供体制を描いた地域医療構想(高度急性期・急性期・回復期・慢性期などの病床数などを明示)を実現するために、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で機能分化・連携の促進に向けた議論が進められていますが、厚労省は、まず▼救急・災害医療などの中心的な医療機関▼公的医療機関や国立病院▼地域医療支援病院・特定機能病院—などが担う医療機能を固めることから初めてはどうかとの考え方を示しています。まず地域の中核となる医療機能をどの病院が担うのかを固め、次いで他の医療機関がそれらとどう連携し、機能分担していくことが近道と考えられるためです。

 このうち公立病院については、総務省が2015年度または16年度中に「新公立病院改革ガイドライン」に沿った改革プラン(新公立病院改革プラン)を策定することが求めており、地域医療構想と、各公立病院の役割とを両睨みしながら、機能分化に向けた議論を進めていくことになります(関連記事はこちら)。

この点についてワーキングや、親組織である「医療計画等の見直しに関する検討会」などでは、「公的病院も、地域において重要な役割を果たすことが期待されている。公立病院と同様に、今後の機能などを明確にした改革プランを作成すべきではないか」との指摘が出されていました。例えば、赤十字病院や済生会病院などです。

厚労省はこうした指摘を踏まえ、公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院など(まず機能分化に関する議論を始めることが妥当な医療機関)においても「改革プラン」を作成してもらう方針を固め、ワーキングに提案しました。

改革プランの作成が求められるのは、▼公的医療機関(日本赤十字社、済生会、厚生農業協同組合連合会などが開設する医療機関)▼共済組合、健康保険組合、地域医療機能推進機構(JCHO)が開設する医療機関▼国立病院機構、労働者健康安全機構が開設する医療機関▼地域医療支援病院▼特定機能病院—です。地域医療支援病院や特定機能病院も地域で重要な役割を果たすことが期待されるとともに、機能分化に向けて都道府県知事などが強力な権限行使を行えることから、作成対象に含まれたものです。個別医療機関が地域の状況を十分に踏まえた改革プランを作成することが重要であり、例えば「●●団体で1つの改革プラン」とすることは好ましくありませんし、また後述するように「修正が求められる」可能性があります。
 
なお、これら以外の、例えば社会医療法人の開設する医療機関などには改革プラン作成義務こそありませんが、厚労省は「自主的に今後の方針を検討し、地域の関係者との議論を進めることが望ましい」との考えを示しています。

改革プランには今後の機能や、診療実績に関する数値目標なども記載

改革プランには、▼基本情報(医療機関名や開設主体など)▼現状と課題(構想区域および自院、それぞれの現状と課題)▼今後の方針(自院が今後、地域で担うべき役割など)▼具体的な計画(自院が今後提供する医療機能と、その具体的な数値目標)―を記載することになります。

具体的な計画のうち「自院の今後提供する医療機能」については▼4機能ごとの病床の在り方▼診療科の見直し―など、「具体的な数値目標」については▼病床稼働率、手術室稼働率などの診療実績▼紹介率、逆紹介率など地域連携の状況▼人件費比率などの経営関連項目—などの記載が求められます。
(図 略)
公的病院の改革プランには、地域で今後担うべき機能や、具体的な数値目標などを記載することが求められる
 
このうち経営関連項目について今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)からは「公立病院では経営の厳しさを背景に改革プラン作成が求められ、経営関連の目標値などを記載することになっている。しかし今般の公的病院の改革プランは地域医療構想実現を目指すもので、経営関連の目標値設定は自由記載などとすべきではないか」との指摘がありました。公立病院の改革プランは、そもそもが経営改善のためのプランであり、そこに「地域医療構想の実現」という要素が後から追加された(新改革プラン)という経緯があるためです。
しかし、中川俊男構成員(日本医師会副会長)や伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)らは「公的病院も地域医療構想実現に向けたプレイヤーである。経営状況が厳しいのであれば出処進退を明らかにする必要がある」と述べ、経営関連の目標値設定は「全公的病院に義務付けるべき」との考えを示しました。

また厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、「調整会議では地域医療介護総合確保基金の配分に関する議論も行う。公的病院が基金活用を考える場合には、その経営状況も重要な検討要素となる」と、目標値設定の重要性を説いています。どのように目標値を設定し、それを改革プランに記載するかなどは、今後の厚労省通知(ガイドライン)を待つ必要があります。

調整会議の協議と齟齬があれば、改革プランは修正が求められる

改革プランの策定に当たっては地域の関係者(連携医療機関や住民など)の意見も踏まえて、「構想区域ごとの医療提供体制と整合的」な内容とすることが重要です。改革プランは調整会議に提示することが求められ、仮に調整会議の協議の方向と齟齬が生じた場合には「策定した改革プランを見直す」ことを厚労省医政局地域医療計画課・在宅医療推進室の伯野春彦室長は明らかにしています。
(図 略)
改革プランは、地域医療構想実現を目指すものゆえ、地域関係者の意見を踏まえ、調整会議の協議と齟齬のないものとする必要がある
 
ここで公的病院は、いつまでに改革プランを作成し、調整会議に提示しなければならないのかが気になります。厚労省は、秋の調整会議(10-12月)から「次年度の地域医療介護総合確保基金の活用・配分に関する議論を始める」よう求めており(関連記事はこちらとこちら)、仮に「来年度(2018年度)分の基金活用の前提として、改革プランの策定が求められる」こととなれば、今秋(2017年9月頃)には改革プランを策定しなければなりません。この点について伯野在宅医療推進室長は「各公的病院には、急ぎ改革プランを作成してもらう」と述べるにとどめており、具体的な期限は今後、調整されることになります。
(図 略)
地域医療構想調整会議の進め方(案)、これを2017年度以降、毎年度繰り返し、構想実現を目指すことになる
 
厚労省は、近く改革プラン作成に向けた「ガイドライン」を通知する構えです。



http://www.medwatch.jp/?p=14846
2016年度、自治体病院の6割超が赤字で、経営状況はさらに悪化—全自病
2017年7月18日|医療現場から MedWatch

 自治体病院(地方公営企業法適用病院)における2016年度の決算見込み額を調査したところ、赤字割合は前年度から4.9ポイント増加して62.8%となり、黒字病院は37.2%にとどまる。黒字病院の割合は、2009年の40.1%から2010年度に52.3%に増加したが、その後、2011年度:51.9%→12年度:48.4%→13年度:44.5%→14年度:43.3%→15年度:41.0%→16年度:37.3%と減少を続け、非常に厳しい状況である—。

全国自治体病院協議会(全自病)の邉見公雄会長は、12日の定例記者会見でこのような状況を明らかにしました(全自病のサイトはこちら:「平成28年度 決算見込額調査報告書(平成29年3月31日)」をクリックしてダウンロード可能)。https://www.jmha.or.jp/jmha/statistics/

なお働き方改革について邉見会長は、「一般と同じ時間外労働規制をされれば、産科や救急など、日本の地域医療は崩壊してしまう。地方(田舎)の医療を支えている全自病の考え方を9月に公表する」考えを明らかにしました(関連記事はこちら)。

ここがポイント!
1 黒字割合は年々減少、500床以上の大病院での赤字増目立つ
2 給与費、薬品費、委託費の増加が自治体病院経営を苦しめる
3 地方独法病院、サンプル数少ないが法適用病院より良好な経営状況が伺える

黒字割合は年々減少、500床以上の大病院での赤字増目立つ

今般の2016年度決算見込みは、全国428の自治体病院(地方公営企業法適用病院382、地方独立行政法人病院46)から得られた回答を分析したものです。ここでは、地方公営企業法適用病院(法適用病院)の状況を見てみましょう。

まず法適用病院382のうち、2016年度に黒字となるのは142病院で37.2%、赤字となるのは240病院で62.8%です。赤字病院の割合は前年度に比べて4.9ポイント増加(逆に言えば黒字病院が4.9ポイント減少)。
(図 略)
法適用病院の赤字・黒字割合
 
黒字病院割合の経年変化を見ると、▼2008年:29.1%→▼2009年:40.1%→▼2010年:52.3%→▼2011年:51.9%→▼2012年:48.4%→▼2013年:44.5%→▼2014年:43.3%→▼2015年:41.0%→▼2016年:37.2%—となっており、2010年をピークに減少傾向が続いています。邉見会長は、地域医療の崩壊が指摘されたかつての水準に近づいていることに強い危機感を訴えています。
 
病床規模別に赤字・黒字割合の変化(一般病院)を見ると、300床台・400床台の病院では前年から変化していません(300床台では赤字割合が65.5%、400床台では68.9%)が、その他の規模では赤字割合が前年から増加しています(100床未満では54.7%、100床台では72.2%、200床台では73.0%、500床以上では52.9%)。とくに500床以上の大病院では、赤字割合が前年に比べて13.7ポイントも増加しています。
(図 略)
病床規模別に見た法適用病院の赤字・黒字割合

給与費、薬品費、委託費の増加が自治体病院経営を苦しめる

次に決算の内訳を見てみると、100床当たりの総収益は前年に比べて1.4%増加しているものの、100床当たりの総費用が、これを上回る1.9%増となっているために、経営が悪化してしまったことが分かりました(全体では赤字となっている)。

100床当たり費用の中で、前年度から伸びが大きい項目を拾ってみると、▼職員給与費(前年度から3.5%増)▼薬品費(同2.2%増)▼委託費(同2.7%増)―などが目立ちます。給与費増の背景には「公務員俸給表の見直し(引上げ)」、薬品費増の背景には「超高額薬剤の保険収載」、委託費増の背景には「アウトソーシングの拡大」などがあります。邉見会長は「チーム医療を充実するために、さまざまな医療職を確保する必要がある」と述べ、医療の質向上のために費用がかかる点を訴えました。

 
また収入に目を移し、患者単価(患者1人1日当たり診療収入)を見ると、全体では入院4万8768円(前年度に比べて724円・1.5%増)、外来1万3847円(同423円・3.2%増)となり、前年度から増加しています。患者数の減少(1日平均患者数は入院では前年度から0.4%、外来では2.2%減少)を、単価のアップで補っている格好です。

一般病院の入院単価は5万147円(前年度に比べて1.5%増)となっており、病床規模別に見ると、▼100床未満:2万3838円(同0.7%増)▼100床台:3万2204円(同0.7%増)▼200床台:4万1961円(同1.0%増)▼300床台:4万8333円(同0.7%増)▼400床台:5万1548円(同1.8%増)▼500床以上:6万2985円(同2.1%増)―となっており、大規模病院では患者単価の上げ幅が大きいことが分かります。
(図 略)
法適用病院の患者単価

地方独法病院、サンプル数少ないが法適用病院より良好な経営状況が伺える

なお、サンプル数が少ない地方独立行政法人病院(今回は46病院が回答)ですが、次のように、法適用病院に比べて経営状況が若干良好なことが伺えます。もちろん単純な比較はできませんが、参考にすべき点は少なくないでしょう(関連記事はこちら)。

▼赤字病院の割合は47.8%(法適用病院では62.8%)、黒字病院の割合は52.2%(同37.2%)

▼100床当たりの営業収益は前年度から2.8%増加し、営業費用はこれを上回る伸び(3.0%増)だが、経常損益では黒字となっている(同赤字)

▼1日平均患者数は、入院では前年に比べて1.2%増(同0.4%減)、外来は同じく0.2%減(同2.2%減)

▼病床利用率は全体で81.5%(同75.4%)

▼患者単価(一般病院)は入院6万4044円で、前年度比1.9%増(同5万147円・1.5%増)、外来1万7803円で、前年度比3.5%増(同1万3917円・3.2%増)



https://www.m3.com/news/iryoishin/545864
m3.com全国医学部長・学長アンケート
強制力ある医師偏在対策、医学部長間でも意見分かれる◆Vol.1
「医療人育成には税金」「インセンティブが重要」

スペシャル企画 2017年7月15日 (土)配信高橋直純、水谷悠(m3.com編集部)

 医師偏在対策、新専門医制度、働き方改革――。医療を取り巻く仕組みに大きな変革が求められる中で、常に一定の役割を期待されるのが大学医学部だ。

 m3.com編集部は、2015年、2016年に引き続き今年の4月から5月にかけて、全国82の医学部、医科大学の医学部長、学長を対象に、医学教育の現状を尋ねるアンケートを実施。今回は、医師偏在対策、働き方改革、新専門医制度、医師国家試験、女性医師――などを巡る動向について、率直なご意見を伺った。

 18大学の医学部長もしくは学長から回答をいただいた。その結果を11回に分けて紹介する。

(ご協力いただいた学長、医学部長、大学職員の皆様には、この場を借りて、心より厚くお礼申し上げます)

◆2015、2016年の結果はこちらm3.com全国医学部長・学長アンケート

Q 医師の偏在対策の議論では、保険医の配置・定数の設定、地域医療を義務付けるといった方策も提唱されていますが、何らかの強制力を伴う対策が必要とお考えでしょうか。
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 医師偏在対策に関連して、「強制力を伴う対策」については「必要」が6人、「必要でない」が6人、「どちらとも言えない」が5人と回答が拮抗した。

Q 医師偏在対策についてご意見があればご記入ください

【何らかの強制力を伴う対策が必要】

【岩手医科大・佐藤洋一医学部長】国立公立大学は医療人育成に税金が投入されているのだから、卒業生は成績と資質に応じて地域偏在と診療科偏在を是正するように強制配置されるのは妥当であろう。

【福島県立医科大・錫谷達夫医学部長】絶対に必要。

【金沢医科大・神田享勉学長】地域の診療医師偏在が問題である。例えば眼科や皮膚科の医師ばかりでは地域医療は成り立たない。

【大阪医科大・大槻勝紀学長】本学は現在、兵庫県西部や高知県に地域医療を支援すべく医師派遣を精力的に行っている。その理由は、地域医療への貢献が本学の建学の精神「至誠仁術」に合致しているためである。また、将来、高槻市における2025年問題である高齢化対策に、現在行っている地域医療への医師派遣事業が役立つと考えられているからである。

【広島大・秀道広医学部長】医師の使命感、公共心の涵養が大切だが、国民の医療に対する要請(要求)のレベルが格段に大きくなっていること、家庭を持つ女性医師の数が増えていることのために、独身ないし男性医師への負荷が大きくなっていることはもっと取り上げられるべき。医師が少ない地域や診療科は、医師個人の好みの問題ではなく、そこに赴任を強制されてもそれらの職場では役割を果たし得ない情況にある医師の数が増えている現実がある。

【徳島大・丹黒章医学部長】インセンティブで誘導するしかない。

【何らかの強制力を伴う対策は必要ない】

【山形大・山下英俊医学部長】医師偏在については、地域の医療を担う大学、行政、医師会、病院会が協力し合う体制(山形県の医療を支える山形大学医学部蔵王協議会の例がある)を作ること、その活動のためにはエビデンスとなる情報収集(山形県については山形大学医学部医療政策学講座が継続的に行っている)を行うこと、さらに説得力のある地域の医療計画の策定とその実行(山形県の上記蔵王協議会と県、医療関係者が行っている連携)が不可欠であると考える。

【京都府立医科大・竹中洋学長】本学においては、従来から地域医療を担う大学病院として、人材育成や府北部地域等の医師不足地域への医師派遣を行っているところであり、引き続き地域医療を担う公的な大学病院が基幹施設となり、専攻医の採用や連携施設への医師派遣を行うことが重要である。

【兵庫医科大・野口光一学長】強制的な制度に永続性は無い。若手医師の立場に立った議論も必要である。

【島根大・山口修平医学部長】義務付けることは必要ない。医学教育の中では地域医療教育をシステマティックに行う必要がある。卒後の若い世代に対しては、地域でも十分な教育・研修が受けられ、さらに都市部との人事交流が可能な体制作りをする。大学病院と地域病院とのクロスアポイントメント制度をスタートし、地域で指導医が活躍できる体制を目指している。

【福岡大・朔啓二郎医学部長】医師の偏在化を招かないように配慮することは重要であるが、福岡県の大学は、佐賀や長崎北部・離島へも医師派遣をしており、福岡市・北九州市周辺のみを見て定員上限を設けるべきではない。福岡県内でも医療過疎地帯が多く存在する。福岡県の大学は「地域・救急管理学講座」など、県からの寄付講座を賜り、医師派遣を行っているのも現状である。

【産業医科大・東敏昭学長】強制を考えなくても自然に分布は更正される。また地域社会のあり方自体に変化すべき点がある。ただし、ごく特殊な例については対策が必要。

【どちらとも言えない】

【東北医科薬科大・福田寛医学部長】強制力を伴う対策でないと実効性がないと思うが、法的には難しいだろう。

【富山大・北島勲医学部長】新専門医制度により大学と地域病院の連携が強くなれば、地域医療に貢献できるようになると思います。

【福井大・内木宏延医学部長】全国市長会をはじめ各種団体より、地域医療崩壊あるいはその助長の懸念の根本が、新専門医制度導入にあるとの考えが表明されているが、今日の医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える。その原因は多岐にわたると考えられ、科学的検証も公表されていないため具体的言及は控えるが、新医師臨床研修制度の改革なくして、地域の医師不足が根本的に解決されることはないと考える。(国立大学医学部長会議より、2017年5月17日付で公表された、「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」への反論を参照願いたい)

【選択肢は選ばず】

【大阪市立大・大畑建治医学部長】インセンティブが解決します。

■回答大学・回答者名(北から)
岩手医科大 佐藤洋一医学部長
東北医科薬科大 福田寛医学部長
山形大 山下英俊医学部長
福島県立医科大 錫谷達夫医学部長
東京医科歯科大 北川昌伸医学部長
横浜市大 井上登美夫医学部長
富山大 北島勲医学部長
金沢医科大 神田享勉学長
福井大 内木宏延医学部長
京都府立医科大 竹中洋学長
大阪医科大 大槻勝紀学長
大阪市立大 大畑建治医学部長
兵庫医科大 野口光一学長
島根大 山口修平医学部長
広島大 秀道広医学部長
徳島大 丹黒章医学部長
産業医科大 東敏昭学長
福岡大 朔啓二郎医学部長



https://www.m3.com/news/iryoishin/546177
m3.com全国医学部長・学長アンケート
義務年限果たさない地域枠学生、対策は?◆Vol.2
「大学医局との連携、地元への定着を」「逃散あってもおかしくない」

スペシャル企画 2017年7月21日 (金)配信高橋直純、水谷悠(m3.com編集部)


 医師の地域偏在解消の切り札として拡大が続く医学部の地域枠。2016年度の募集人員は計1617人に上り、医学部定員の約6分の1を占める。都道府県などが指定する地域で、卒業後の一定期間勤務することを義務付けるものだが、奨学金を早期に返済することで義務年限を果たさずに都心部に流出してしまうことがあるとされ、厚生労働省の審議会でも対策が検討されている(『「地域枠」義務違反の病院に罰則を検討、臨床研修部会』を参照)。

Q 2008年度の医学部定員増以降、地域枠で入学する医学生が増えています。卒業後、義務年限を果たさずに、他の都道府県に就職した地域枠養成の医師はいますか。
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 回答のあった18大学の医学部長・学長のうち、6大学で「いる」という回答があった。

Q 義務定年後の定着を見据えて、地元定着のための取り組みがあれば、教えてください。
【岩手医科大・佐藤洋一医学部長】義務年限中に学位取得できるようなインセンティブを用意することで、大学医局との連携を保ち、地元への定着を図っている(社会人大学院)。

【島根大・山口修平医学部長】他の都道府県に就職した医師はいる。義務年限の終了はまだ先であり、現時点では定着の取り組みとしては行っていない。

【富山大・北島勲医学部長】学生時代から地域医療に触れる機会や実習時間、地域イベントやボランティアに参加させる取り組みを増やしている。

【兵庫医科大・野口光一学長】休暇期間での地域でのフィールドワーク等の対策を行っている。

【横浜市大・井上登美夫医学部長】義務年限を果たしていないまま他の都道府県に就職を希望する場合は、残り年分を後ろ倒して定年を果たすように案内しています。定年後の定着については、特に取り組みは行っていません。

【金沢医科大・神田享勉学長】今後は本学で研修する意志のある学生を募集する方針である。※(新)特別推薦入学試験(AO入試) 概要=受験資格は25歳以下の方で、本学を卒業後、金沢医科大学病院または金沢医科大学氷見市民病院(富山県)にて臨床研修(5年間)を行う意志の強固な方が対象となる。

【徳島大・丹黒章医学部長】義務年限は9年と長く、返済金は少ないため、いつ逃散があってもおかしくない。面談を行い、良心に訴えている。

【広島大・秀道広医学部長】地元での働きがいの充実と、子どもの養育や地方での生活の利便性の向上に尽きると思います。

【東北医科薬科大・福田寛医学部長】・まだ卒業生がいない。・卒後の東北地方定着のための取り組み 1.卒後の東北地方定着を担保する仕組みの一つとして、東北地方での勤務義務付き資金枠を100人の定員のうち55人用意している。2.東北6県に19の「地域医療ネットワーク病院」を設定して、2年次から5年次まで継続して同一地域の訪問・実習を行うことにより、地域の文化や医療事情を理解させ愛着を持たせる。



https://www.m3.com/news/iryoishin/547029
真価問われる専門医改革
新専門医制度の2018年度開始に反対、1560人分の署名
『専門医制度の「質」を守る会』、厚労相宛に提出

レポート 2017年7月21日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 有志の医師らで構成する『専門医制度の「質」を守る会』は7月21日、塩崎恭久厚労相宛に、「新専門医制度2018年度からの開始反対の署名」を提出した。署名活動は今年3月9日から開始、医師を中心に1560人分集めた。署名は、厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の遠藤久夫座長にも提出した。

 提出後に厚労省内で記者会見した、同会代表を務める安城更生病院(愛知県安城市)副院長の安藤哲朗氏は、「新専門医制度は医療全体に大きな影響が及ぶ上、医師研修の質が担保されていない。研修プログラム制は、医師の柔軟なキャリア形成を阻害する。さらに基幹型と連携施設の循環型研修は、地域医療を弱体化させ、結局は大学医局の支配強化のみが残る」などと問題視。特に研修の質を重視し、2016年7月に、2017年度からの開始が1年延期された今でもなお、質の担保が保障されていない以上、2018年度からの開始にも反対すると主張した。

 共同代表を務める坂根Mクリニック(茨城県つくば市)院長の坂根みち子氏も、女性医師の立場から「医師の働き方改革をしないまま、新専門医制度を導入すると、出産・育児を諦めるか、キャリアを諦めるか、二者択一になってしまう」と指摘し、出産・育児をしながら、キャリアを重ねることができる制度にする必要性を強調した。

 『専門医制度の「質」を守る会』の呼びかけ人は、安藤氏、坂根氏を含め、計13人。1560人という署名数について、安藤氏は、次のように説明した。「地域医療の現場の医師や研修医のほとんどは、新専門医制度に反対しているものの、大学医局からの有形無形の圧力のために、表立って反対の声が上げられず、あきらめている医師が多数。1560人の多くは医師であり、そのような圧力の中で勇気を振り絞った人達」。

 塩崎厚労相宛の署名は、厚労省医政局医事課長の武井貞治氏に手渡した。安藤氏によると、意見交換はできたが、「新専門医制度はあくまでプロフェッショナルオートノミーに基づくものであり、日本専門医機構と各学会が担当している。厚労省は地域医療に責任を持つ立場なので、(地域医療への影響が懸念される場合には)機構に要請はできるが、あくまで主体は機構」という回答だったという。

 日本専門医機構は7月7日の理事会で、2018年度開始に向け、準備が整ったと判断し、10月から専攻医の募集を開始する予定であることを明らかにしていた(『「専攻医の登録、10月スタート」目指す』を参照)。

 「学会からの長期借入は利益相反」
 記者会見には、呼びかけ人の仙台厚生病院(仙台市青葉区)医学教育支援室長の遠藤希之氏と、卒後3年目の若手、南相馬市立総合病院(福島県南相馬市)の山本佳奈氏も出席。

 遠藤氏が言及したのは、日本専門医機構の財務状況。各基本領域学会から長期借入金があることから、「審査をされる立場から、借り入れているのは、利益相反ではないか」と指摘した上で、2017年3月21日現在の「財産目録」では、約1億4000万円の赤字であることも問題視した。さらに、「任意団体にすぎない日本専門医機構が、日本の医療を決めてはならない」と語気を強めた。

 山本氏は、初期臨床研修から勤務していた南相馬市立総合病院で、産婦人科専門医を目指したものの、福島県立医科大学を基幹病院とした研修プログラムに入らないと難しいことなどから断念した経緯を紹介。「専門医資格の取得を目指しつつ、南相馬で地域医療をやりたいと思う芽を摘む制度はいかがか」とコメントした。



https://www.m3.com/news/iryoishin/546822
研修医の受け入れ「大学間格差が拡大」、医学部長病院長会議
旧帝大、「人口50万人以上」で改善幅が大

レポート 2017年7月21日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

 全国医学部長病院長会議は7月20日、2016年度「全国大学病院研修医に関する実態調査」について報告、「大学間格差はさらに大きくなっている」と訴えた。後期研修医としての受け入れ率(入局率=入局者数/医師国家試験合格者数)は旧帝大で133.2%である一方、その他の国立大学では64.1%に留まっている。都市部にある大学に医師が集まる傾向が進んでいるとし、会見をした大分大学医学部長の守山正胤氏は「地方大学のへき地への医師派遣能力の回復が急務だ」と主張している。

 2016年度の大学病院の初期研修医の充足率(1年目の初期研修医数/初期研修医定員)は全体で71.3%だったが、中大都市圏域(人口50万人以上の都市がある都道府県)では78.6%、小都市圏域(同50万人以下)は59.5%で、大学の所在地による差が見られた。旧帝大では83.2%、その他国立大では61.9%と開きが見られた。

後期研修医、2016年度は大学に回帰傾向
 後期研修医の受け入れ率は中大都市で2016年度は94.5%で、初期臨床研修制度開始以前の2002年度の69.4%から上昇している。反対に、小都市では2002年度の74.2%から50.6%に減少した。ただ、2015年度の中大都市76.6%、小都市41.2%と比べると、それぞれ10-20ポイント改善している。守山氏は「詳しい要因は分析できていないが、新専門制度の影響も考えられる」としている。

 大学の規模別で見ると、旧帝大では133.2%と卒業生以上の医師が後期研修医として入局している一方で、その他国立大では64.1%に留まり、その差は拡大している。自大学出身者の割合は旧帝大で34.0%に対し、その他国立大では63.2%だった。

医師派遣能力、小都市大学で減少
 守山氏をはじめ全国医学部長病院長会議幹部が強調するのは、入局者減少が地域医療に大きな影響を与えているという点。後期研修者出向率(他医療機関への出向医師数/後期研修医数)は中大都市で28.5%(2010年度22.6%)で、わずかに上昇傾向を示しているが、小都市では15.6%(2010年度17.1%)と逆に減少している。

 守山氏は自県の状況として、大分県における「へき地医療拠点病院」への医師派遣実績を紹介。大分市と別府市を除く拠点病院では、内科医は各病院が採用している医師が計29人に対し、大分大からの派遣は計35人であるとし、「大学が人を集めて囲い込むという議論は全くの間違いで、地方の大学は病院と一緒に人材を育成しながら地域の医療を支えているのが実態」と強調している。

 同会議会長の新井一氏(順天堂大学学長)は問題の根本には初期臨床研修制度があるとし、「初期研修のゼロベースの見直しを提言している。その一つとして初期研修の一部を卒前に持ってきて、学部教育の段階で地域において医師の育成をする。へき地に行っても、学位や専門医資格を取得でき、海外に行けることを示していく」と説明。守山氏は「皆が医師を取り合うのではなく、大事に育てるシステムを作らないといけない。大学の医局を使わない手はない。医局が人をつぶす、囲い込むという無益な議論をやめてほしい」と述べた。

全国医学部長病院長会議の「まとめ」

1. 初期研修の充足率は全国的に微増しているものの、地域間や大学間における格差の改善は進んでいない。

2. 大都市部の大学や旧帝国大学での初期研修は、自大学卒業生のみならず、多くの他大学出身者が占めており、研修施設として人気が高い。私立大学は一定数を維持している。

3. その傾向は、後期研修の受け入れ状況において増強され、大学間格差はさらに大きくなっている。この傾向は3-4年前から著明である。

4. 都市部の大学では後期研修医の出向率が上昇しているが、地方大学では回復していない。

5. 後期研修時の診療科の選択(女性医師の診療科選択も含む)において、一定の傾向が見られ、今後、地域間格差や大学間格差のみならず、診療科格差が懸念される。

6. 地方における医師偏在は、地方大学で研修する医師が新臨床研修制度施行前の状態に回復していないことが大きい要因であり、地方大学のへき地への医師派遣能力の回復が急務である。



https://www.m3.com/news/iryoishin/547043
医師の働き方改革とキャリア
病院の責任と「働き方改革」のジレンマ - 片柳憲雄・新潟市民病院院長に聞く◆Vol.1
是正勧告受け「業務」と「研修」の区別徹底

インタビュー 2017年7月23日 (日)配信聞き手・まとめ:水谷悠(m3.com編集部)

 2016年1月に後期研修中の女性医師が過労自殺し、2017年6月に新潟労働基準監督署から長時間労働是正などの勧告を受けた新潟市民病院。新潟市は勧告を受けて6月、「緊急対応宣言」を出し、紹介状なしでの外来受付を取りやめるなどの対応策を打ち出した。3次救急や周産期医療を担う自治体病院としての責任がある一方で、社会問題となっている「働き方改革」を進めなければならない。院長の片柳憲雄氏は「ジレンマがある」と言い、頭を悩ませている(2017年7月20日にインタビュー。計2回の連載。「緊急対応宣言」は新潟市のホームページ)

――医師の時間外労働や当直、日直はどのような方法で管理されていたのでしょうか。
 紙ベースで、自己申告により報告を受けて集計し、診療科の部長で確認、把握していました。それは以前から変りません。今年6月に労基署から是正勧告があり、同月に「労務改善対策室」を正職員2人、臨時職員4人の体制で設置し、過去2年間分に渡って、確認作業を始めたところです。 これまで、それぞれの自己申告を信じておりましたので、まず申告と労働実態に乖離があったのかどうか、医師189人、それ以外も含めて全職員1500人分を調べます。医師では電子カルテのログイン、ログオフの記録などからということになります。膨大な量ですが、医師は10月まで、他の職員も今年度中には、調査を終えたいと思っています。また、タイムカードや勤務管理システムなどの導入の検討も行っています。

 電子カルテは1人ずつログインナンバーがあり、パソコンから離れるときにはログオフをするようにと、以前から口を酸っぱくして言っていました。それでもときどきログオフのし忘れはありましたが、最近は減ってきています。

――これまでの集計では、医師の時間外労働や当直・日直はどのくらいだったのでしょうか。
 全医師の月平均で、時間外労働が2015年度52時間、2016年度50時間、2017年度は4~6月で47時間。当直は2016年度のデータですが、1人当たりで月平均1回、日直は0.3回。研修医に限ると当直2.2回、日直0.7回でした。当直明けの勤務については、ほとんどは休まずに診療し、手術もしている状態です。医師自身が健康でないと、人を診ることはできませんし、間違いがあってはいけませんので、休めるときは休みなさいと言ってはいますが、実際は休めません。

――時間外労働の算定に当たって、どこまでを「労働」とするかという基準はありましたか。
 「業務」と「自己研鑽としての研修」は今までも分けていたのですが、今回のことがあって、徹底しました。「業務」は、当直も含めた診療、診療に関わる検討会、患者の診察後に手術が必要と判断した場合に準備も含めて手術開始までの待ち時間や、患者さんが亡くなったときなどの待機時間、病院から指定された医療安全や感染管理などの研修会、それ以外で上司からの指示があった場合。これを時間外労働として算定します。

 「自己研鑽としての研修」は専門医を取るための学会や研究会の準備、手技のトレーニング、ビデオや参考書、学会誌などでの勉強、文献検索、そういったものを自己の研修として指示しています。そこを分けないと、管理も始まりませんので。これはずっと医局の医師には言ってきましたが、今年4月の医局総会で改めて確認をしました。

 また、これまでは、業務をして勉強をして、また業務をして、と混在していたので、是正勧告を受けてからは、「勉強は業務が終わった後にやる。場所も、時間外労働は患者のいるところ、つまり病棟や手術室でやる。勉強は医局に戻ってやってください」とはっきりと区別できるようにしました。やりづらくはなります。勉強も、どこでもいつでもできたのが、それをされると勤務時間が分からなくなるので、管理するためには、分けてもらわないといけない。

 (時間外労働の)上限規制の議論で罰則付きの規定ということになれば、(法施行までの)2年間プラス5年間の猶予期間はありますが、うちのように急性期の救急医療をやっている病院にとっては、ジレンマがあります。(時間外労働が)月80時間になったから帰るとか、患者に呼ばれたけど行かないとか、そういうことはできません。医師は患者を助けるために医師になったわけですし、そのためには時間外労働などはいとわないものなのですが、今回のことで変えてかなければいけないとは思っています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/547140
地域医療構想、医師会独自データで対応 - 菊岡正和・神奈川県医師会長に聞く◆Vol.1
県医師会活動、「連携機能」と「現場機能」の両面で

インタビュー 2017年7月23日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 今年5、6月、13の都道府県で医師会長選挙が行われ、神奈川、京都、奈良、島根の4府県で会長が交代した。地域医療構想をはじめ、都道府県単位で医療提供体制の再編が進む中、さまざまな対応を迫られるのが、都道府県医師会だ。4府県の新会長に、就任の抱負や地域医療が抱える課題についてお聞きする。

 初回にご登場いただくのは、神奈川県医師会長の菊岡正和氏(2017年7月12日にインタビュー。計2回の連載)。

――まず県医師会活動についての基本的考え方をお聞かせください。

 私は県医師会の役割は、「連携機能」と「現場機能」に大別できると考えています。前者は、中央の情報を郡市医師会へ、一方で郡市医師会の声を中央に届けるという意味です。この連携機能を果たすため、日本医師会をはじめ、さまざまな機関と連携していく方針です。後者は、県医師会として直接取り組む業務であり、私が長年携わってきた医事紛争特別委員会のほか、医療事故調査制度の支援団体としての取り組み、あるいは災害医療への対応体制構築など、多岐にわたります。中でも今直面しているのは、地域医療構想への対応です。

――地域医療構想のほか、地域包括ケアシステムの構築など、高齢社会に向けて都道府県単位での取り組みの重要性が増しています。その中で都道府県医師会の果たす役割は大きいと思います。

 地域包括ケアシステムについては、郡市の医師会が行政とよく話し合って対応していく課題だと考えています。地域にどんな病院、介護老人保健施設や介護特別養護老人ホーム、あるいは在宅医療の担い手があり、それぞれがどのように関わっていくかは、神奈川県医師会の立場で詳細を把握するのは容易ではないからです。

 一方、地域医療構想は、神奈川県医師会と神奈川県がしっかりと話し合って取り組むべき課題です。

 神奈川県の一番の特徴は、今後高齢者人口が増えること。地域医療構想は、入院医療費の抑制が厚生労働省の狙いだと私は考えています。したがって、同構想が念頭に置いているのは、病床が多い地域。しかし、神奈川県や東京都などは今後、高齢者人口が増加し、地域医療構想と医療計画の双方に対応していくことが難しい状況にあります。神奈川県の場合、地域医療構想の「病床の必要量」が一番多く、次が既存病床数で、医療計画の基準病床数が最も少ないという順番です。国の方針通りに「病床の必要量」を満たすためには、基準病床数を特例で増やさざるを得なくなります。

 もっとも、神奈川県は人手不足で、医師や看護師、さらに他の医療従事者も少ない。この状況で病床を増やしても、うまく運営することは難しいでしょう。ではどうするかですが、病床を増やさずに、急性期医療を充実させ、平均在院日数を減らし、かつ病床の稼働率を上げるほか、疾病単位で分析し、どの分野に進出するのか、あるいは撤退するのかなどを各医療機関に検討してもらうなど、現状の病床の有効活用で対応できるよう提案していく方針です。

 こうした方針を進めるためには、データをそろえ、神奈川県と話し合っていくことが重要です。この7月に、神奈川県医師会内に、データの分析などを行う目的で「地域医療構想検討部会」を設置しました。産業医科大学の松田晋哉教授による研修にも、委員を参加させます。

――地域医療構想は、調整会議での話し合いを通じて、医療機関の自主的な取り組みを促すのが趣旨。行政からの情報を待つだけでなく、データを分析し、現場から提案していくということですね。

 そうです。何もデータがない状態で話し合いをしても、関係者が納得しません。例えば、「この地域では循環器の病床が少ない」などのデータを提示すれば、各医療機関が自院の方針を決めやすくなります。その手助けを県医師会が行っていくということです。今後2年くらいで地域医療構想の方向性が決まると思っており、この8月頃に新しいデータが厚労省から出てくると聞いていますので、それを基にすぐにデータ分析を開始します。

 地域医療構想では、一方で在宅医療の話もあります。外来で診ていた患者さんが、在宅医療に移った際に対応したり、かかりつけ医の先生が、年間数人でも看取るような体制を作っていく必要があり、そのための支援の一環として、神奈川県医師会では「在宅医療トレーニングセンター」を運営しています。ここは医師だけでなく、他の職種も含め、在宅における医療的ケアのスキル向上が目的であり、講義室と各種実習室を設けています。評判はよく、多くの方に利用いただいています。

――在宅医療では、1人の医師が24時間365日対応することが難しいため、地域でネットワークを組むことが重要になります。その辺りの支援にも取り組んでおられるのでしょうか。

 その一環と言えるかもしれませんが、今考えている一つは、最近増加している在宅専門診療所と地域で開業されている先生方が、「顔見知りになる場」を作ることです。両者が今後連携していくことが必要であり、「顔が見える関係」にしておけば、何か起きた時でも、対応が可能になります。

――そのほか今後、力を入れていく業務は何でしょうか。

 一つは、災害医療の体制作りです。私は、神奈川県医師会の副会長時代に、災害時の医療対策マニュアルを作成しました。災害が起きた場合には、情報や指揮命令系統を一本化することが必要です。このため、神奈川県医師会がある建物内にさらに一室を借り、県外、県内を問わず、何らかの災害が起きた場合に、すぐに災害対策本部を設置できるように準備を進めています。また神奈川県には今、災害医療コーディネーターが11人いますが、うち2人は医師会から出しています。災害発生時には1人は県に、もう一人は県医師会の災害対策本部に置き、連携が取れる体制にし、群市医師会からの要望を吸い上げ、DMATやJMATなどの派遣を迅速にできるように準備を進めています。

 また私は副会長時代、医事紛争特別委員会を担当していました。本委員会は、日本医師会医師賠償責任保険の免責となる100万円以下が対象で、年間70件くらいの案件が挙がっています。会員の先生方にとっては、最初に事情聴取を受けるだけで、後は本委員会の委員が対応するため、メリットが多い制度です。委員の新陳代謝を図り、委員会の質をさらに高めるための努力をしていきます。

――その他、医療事故調査制度や新専門医制度でも、都道府県単位の取り組みが求められています。

 神奈川県医師会は、医療事故調査制度の支援団体としての届出を行っています。医事紛争特別委員会の委員を中心に構成し、運営しています。また神奈川県内には4つの医学部・医科大学があり、2016年秋からは大学の案件については相互に外部委員を派遣する体制にし、かなり難しい案件にも対応できるようになっています。

 新専門医制度への対応はこれから検討する段階です。大学病院や基幹病院に専攻医が集中すると、過疎地域や中小の病院に行く医師が少なくなる懸念があります。その辺りを検討していくことになるでしょう。

 都道府県単位の取り組みが増えているのは事実ですが、医学部が1大学しかない県と、4つの医学部・医科大学がある神奈川県では、おのずから事情が違います。人口や医療提供体制も異なる中で、神奈川県独自の対応を検討することが必要です。



https://www.m3.com/news/iryoishin/544174
全日病 病院総合医」を養成するわけ - 猪口雄二・全日病会長に聞く◆Vol.2
地域医療に取り組む中小病院に必要

インタビュー 2017年7月16日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――よく「中小病院の経営は厳しい」と言われますが、各地域の実情を踏まえれば、十分に取り組むべきこと、生き残る道があるということですね。

 はい。地域包括ケアシステムの中で、自院がどんな役割を果たすべきかを考えることが必要。全日病としても、中小病院をいかに位置付けていくかが最大の課題です。ただ忘れてはいけないのは、地域包括ケアシステムは、医療機関中心ではなく、利用者中心であるということ。利用者のもとに、医療・看護、介護、保健・予防、住まいが集まるシステムであり、全てがイコールパートナーとして、同じ目線で取り組まなければいけません。


「全日病 病院総合医」を養成するコースは、今年度内に立ち上げる予定だという。
――時代とともに、中小病院が果たす役割が変わっているとも言えます。

 私が運営する寿康会病院(東京都江東区)も以前は、150床の一般病院で、手術も数多く実施していました。しかし、1996年に病院を建て替える際、49床にダウンサイジング、空いた敷地に社会福祉法人を作り、特別養護老人ホームを建てました。ショートステイやデイサービスも併設した複合施設は都内でも初でした。

 それでも最初は、49床でも年間約300件の手術をしていました。私が臨床メーンで仕事をしていた時は、大腿骨頚部骨折の手術を1日3例ほど手がけたこともありました。

 しかし、若い医師にとっては、大学病院での手術に慣れると、うちのような小規模の病院では手術はやりにくくなる。しかも、20年前は、ほぼ全てが開腹手術でしたが、胆石の手術辺りから腹腔鏡による手術に代わっていくなど、医学的にも大きく進歩しました。医師数が多く、患者も多数来院し、手術室の回転率も高く、結果的に新しい技術や機器を導入できるような病院でないと、急性期病院として成り立ちにくくなっていく……。こうした流れを感じて、寿康会病院をダウンサイジングしたのです。

 そして約7年前に、メジャーな手術はやめ、内科的入院、リハビリ目的の入院など、地域包括ケア病床の機能を柱にしました。今は局所麻酔でできる手術のみ続けています。

――高齢化に伴う疾病構造の変化とともに、医療技術の進歩が病院経営に大きく影響している。

 そうです。がんの手術も以前はやっていましたが、助手に入る外科医や麻酔科医を確保して、手術日を決めて実施するなど、体制を組んでいたら、コストばかりがかさんでしまいます。

――がんについては、生物学的製剤など新薬の登場が相次ぎ、レジメンも日進月歩です。

 「がんなどの手術は大病院の役割であり、中小病院の役割は何か」を考えると、地域包括ケアへの取り組み、地域住民を対象とした医療になると考え、いち早く当院は転換を図ったのです。

 地域に密着した医療を展開する際に必要となるのは、一般的な診療には幅広く対応でき、専門的な医療が必要かどうかを見極め、紹介することができる医師です。しかもそれだけでなく、介護保険制度など各種制度も知っていることが必要。総合診療専門医がこれに当たりますが、養成はこれから始まるところなので、総合診療専門医が全国的に行き渡るのは、かなり先の話でしょう。

 一方、これまで各専門分野で活躍してきた医師が、総合的な医療をやろうと考えても学ぶ場がない。いろいろな疾患に対応できるけれども、もう少しきちんと勉強したいと考える医師はたくさんいると思います。そうしたニーズに応えるため、「全日病 病院総合医」を養成するための1年くらいのコースを今、作っているところです。

 現場を離れるわけにはいかないので、働きながら学べるよう、e-learningや土日曜日の集合研修を中心にし、1週間くらいの救急での実地研修などを組み合わせたコースとする予定です。公的な資格制度ではないので、一定程度の研修を終えたら、修了証を授与することを考えています。今秋くらいには取りまとめ、今年度内にはスタートさせたい。

――「全日病 病院総合医」は、新専門医制度で19番目の基本領域に位置付けられる総合診療専門医とバッティングするものではないのですね。

 はい、バッティングはしません。先進各国は、早くから総合的に診る医師の養成に取り組んできていますが、日本はこの辺りが遅れてしまっているのが現実です。総合的に診ることができる医師が増えないと、日本の医師不足は解消しないと考えています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/544175
地域医療構想、悲観的になる必要なし - 猪口雄二・全日病会長に聞く◆Vol.3
「厚労省、今度こそ改革に本気」

インタビュー 2017年7月23日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――そのほか全日病として対応すべき課題は何であるとお考えですか。

 地域医療構想です。全日病の各支部から担当者に集まってもらい、データも持ち寄って会議を開催したいと思っています。

――地域医療構想は、各都道府県で策定を終え、各構想区域で調整会議を開いている段階です。

 私は調整会議で、民間病院が悲観的になってはいけないと考えています。確かに高度急性期医療を行う病院も必要ですが、地域包括ケア病棟などを持ち、地域を支える医療を行う病院も必要です。ただ、それを担うのは、地域に密着した中小病院であり、「公立病院が合併して、病床が余ったから、その一部を地域包括ケア病棟にする」といったことはやめてほしいと、各地域で主張してもらいたいと思っています。公立病院と言っても規模や役割はさまざまですが、少なくとも基幹病院が地域包括ケア病棟を持つのはおかしい。


猪口雄二氏は、昨今の制度改革の原点は、2013年8月の「社会保障制度改革国民会議」報告書にあると見る。
――基幹病院の診療圏が広い一方、地域包括ケア病棟を持つ病院は、診療圏は狭いという違いがあるからですか。

 そうです。また地域医療構想と地域包括ケアシステムは、連動して考えられがちですが、私から見れば違うもの。この辺りについても、関係者の理解を深めていくことが必要と考えています。

――両者の一部は重なると思うのですが。

 将来的には重なるかもれませんが、今の時点では、ほとんど重なっていないと思います。地域医療構想は、複数の区市町村が含まれる構想区域単位の話である一方、地域包括ケアは市区町村単位で進むという違いがまずあります。

 また地域医療が抱える問題は地域によって異なりますが、例えば、東京都の場合、構想区域(2次医療圏)単位で医療は完結していない上に、都心部に大学病院が集中していて、多摩地区には回復期や慢性期の病院が多いなど、23区とそれ以外では事情が違うといった問題がありますが、病院の移し替えはできない。この中でどのように許容しながら医療提供体制を考えていくのが、地域医療構想。

 一方、地域包括ケアシステムの目的は、医療機関だけではなく、医療介護の多職種がかかわり、利用者である高齢者をいかに支えるかにあります。

――地域医療構想は、今後どのように展開していくと見ておられますか。

 そもそも地域医療構想は、これから進む話。「骨太の方針2017」で、「2年間で」と打ち出されましたが、2年で終わるはずはありません(編集部注:2017年6月に閣議決定された「骨太の方針2017」は、「病床の役割分担を進めるためにデータを国から提供し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進する」と明記)。

 病床機能報告制度における4つの医療機能についても、皆がまだしっくりと来ていません。高度急性期や急性期の病床にも、回復期の患者は一定程度、入院しています。一方、うち(寿康会病院、49床)は、一般病床と地域包括ケア病床が半々であり、新規入院患者の半分は急性期の患者が占めますが、回復期として届け出ています。

――地域医療構想に対し、中小病院はどう対応していけばいいのでしょうか。

 それは地域によって異なります。国としては、急性期のベッドを減らして回復期に移行し、急性期の機能を集約したいと考えているはず。これまでも厚労省はさまざまな施策を打ち出してきましたが、今回こそ医療提供体制を本気で変えたいと考えているのだと思います。

 昨今の一連の施策は、「社会保障制度改革国民会議」(2013年8月)の報告書が発端です。確かに機能分化をしていかなければいけないのは事実です。医師の働き方改革も含めて、さらに今後厳しくなる急性期医療にあえて挑戦があってもいい。あるいは逆にうち(寿康会病院)みたいに、地域包括ケア病床を持ち、地域密着型で取り組んでもいい。



https://www.m3.com/news/kisokoza/545560
基礎講座
「なりたい医師像がある」医学生の約半数
医学生4129人が考えるキャリア◆Vol.1

2017年7月16日 (日)配信エムスリーキャリア

 新専門医制度の本格開始、医師のキャリア・働き方の多様化など、医師を取り巻く環境が大きく変わろうとしている今、医学生はどのように自身のキャリアや今後の動向を見ているのだろうか。70大学4129人の医学生を対象に全日本医学生自治会連合(医学連)が実施した「目指す医師・医学者像についての意識調査」の結果を、4回に分けて紹介する(グラフは医学連提供データを基に、エムスリーキャリア編集部にて再編集)。

約半数の医学生に「なりたい医師像がある」
 医学連では2016年12月1日から2017年3月31日にかけて、医学生がどれだけキャリア形成を考える機会を得られているかを解明し、これからの大学教育や新専門医制度の議論にフィードバックしていくことを目的にアンケートを実施。回答数は4129人(70大学)で、男女比は男性58.1%、女性41.9%。学年の割合は以下のようになっています。
(図 略)

 この結果、「目指す医師・医学者像について考える頻度があるかどうか」を聞いた項目では、約8割の医学生が「普段から考える」「たまに考える」と回答。

 考える機会として多かったのは、「大学における実習中」(56.1%)、「学生同士の会話」(43.5%)、「大学における講義」(26.9%)など(複数回答)。大学内での活動がきっかけで将来について考える医学生が多い結果となったほか、「尊敬する医師との出会い」(37.2%)も多くの回答を集めました。

 一方で、「学外の活動」(21.2%)、「大学病院以外での実習」(18.2%)、「地域とのふれあい」(10.4%)など、学外での活動を通じて医師像を考えている医学生の割合は少ない結果となりました。
(図 略)



https://www.m3.com/news/kisokoza/545561
基礎講座
医学生の8割、「大学でキャリアの相談したい」 実態は?
医学生4129人が考えるキャリア◆Vol.2

2017年7月17日 (月)配信エムスリーキャリア

 医師のキャリアや働き方が変容しようとしている今、医学生は将来の医師像をどのように考えているのだろうか。前回に続き、全日本医学生自治会連合(医学連)が70大学4129人に対して行った「目指す医師・医学者像についての意識調査」を基に紹介する(グラフは医学連提供データを基に、エムスリーキャリア編集部にて再編集)。

「目指す医師像考える時間、不十分」4割以上
 「目指す医師像について考える機会は十分か」を聞いた質問の回答は以下の通り。 「十分である」「やや十分である」の合計は56.5%に上った一方、「不十分である」「やや不十分である」との回答も合計4割以上に上り、回答が分かれる結果となりました。

 医師像について考える時間が「十分でない」要因として回答者から上がったのは、「授業が過密で考える余裕がないから」(31.5%)、「ロールモデルがないから」(24.6%)、「学生同士で話題に上らないから」(24.0%)などの回答。こうした結果について医学連では、「機会そのもの、相談相手、参考材料、考える時間的余裕、医師像を考えようとする必要性や主体性など様々な要素が獲得できない場合に起こる声だと考えられる」として、複合的な要素が影響していることを指摘しています。
(図 略)

相談相手は「大学」が最多
 アンケートではこのほか、目指す医師像や将来の働き方について悩みを相談する相手がいるかどうかを質問。およそ8割が「不十分だがいる」「十分にいる」と回答し、相談相手の人数の平均値は3.13人、およそ2割の学生は相談相手がいない(0人)と答えました。
(図 略)

 具体的な相談相手として多く上がったのは「大学」(79.6%)、「家族」(53.5%)、「学外の友人」(31.0%)など。割合の多かった「大学」の内訳(複数回答)は、「同級生」(77.6%)、「先輩」(61.1%)などとなっています。
(図 略)

相談“したい”相手も「大学」がトップ
 また、「目指す医師像や将来の働き方について、誰に相談したいと思いますか」という項目においても、「大学」が75.6%と最多の数値に。前述の「目指す医師像や将来の働き方についての悩みを相談する相手はいますか」という質問への回答と比べると、「教員」(46.0%)の割合が高くなっていることから、医学連では、「将来のことを教員に相談したくても相談できない医学生の存在がうかがえる」としています。



https://www.m3.com/news/kisokoza/546274
「新専門医制度は、自由な人生設計を保障するような内容に」
医学生4129人が考えるキャリア◆Vol.4

2017年7月22日 (土)配信エムスリーキャリア

 2018年度の本格開始を間近に控えた新専門医制度。当事者となる医学生は、どのように動向をとらえているのだろうか。全日本医学生自治会連合(医学連)が70大学4129人に対して行った「目指す医師・医学者像についての意識調査」を基に、医学生のキャリア意識を探る本シリーズ。最終回は、新専門医制度に対する医学生の考えを紹介する(グラフは医学連提供データを基に、エムスリーキャリア編集部にて再編集)。

「新専門医制度に学生の声を」44.8%
 2018年度から本格開始する見通しの新専門医制度。その議論に学生の声を反映させることが「必要だと思う」と答えた医学生の割合は44.8%という結果になっています。

 「どちらでもない」と答えた医学生の回答も4割程度に上った今回のアンケート。ただ、自由記述欄では「意見の反映よりもそれに関する知識がほしい」、「新制度がそもそも二転三転しているような印象でよく分からないから意見の出しようがない」、「学生という立場からでは見えている範囲が狭すぎて有用な意見を発することは難しいと思います」などの意見も。前提として、医学生に対する新専門医制度の説明が十分でなく、意見を発することも難しくなってしまっている現状があると医学連では指摘しています。

「専門医制度は、自由な人生設計を保証するような制度に」
 このほか、新専門医制度において「どのような点に関して、学生のどのような意見を反映してほしいか」を聞いた項目での回答内容をまとめると以下の結果に。幅広いニーズを反映するような意見が寄せられていることから、医学連では「新専門医制度が医学生にとって多様性と選択肢を狭めるものではなく、自由な研修、自由な人生設計を保障するものであって欲しいという想いが読み取れる」としています。

■ワーク・ライフ・バランスを考えつつ専門医を取りたい
・専門医取得にかかる時間が長い。(2年生、女性)
・大学病院に残らないと専門医がとれないと、ライフワークバランスや専門医の偏在等に影響する(3年生、男性)
・結婚・妊娠・出産・育児などのプライベートと医師としてのキャリアパスの両立に関しての意見は反映してほしい(3年生、女性)

■複数の専門を標榜できるようにしてほしい
・低学年に説明の機会を与えるべきである。(複数の学生が回答)
・ダブルボード取得の可否や女性医師のキャリア形成、地域枠学生の働く場所の選択の自由など学生がすごく不安に思っている点はあると思うのでそこを安心できるような制度にしてほしい。(3年生、女性)

■女性医師の働き方について
・専門医を取るためにどのくらいの時間、現場が求められているのか、特に女性医師の場合、専門医取得後、キャリアアップまでの年数、経験症例がどのように変わり、親の介護、子育て、家事などがある中でどう両立していけるのかについて、専門医制度をつくる例が考える具体的な人生設計プランを提示してみてほしい。(5年生、女性)
・結婚・出産などのライフイベントがある人など中途半端な立ち位置になってしまうのではないかという不安があります(6年生、女性)
・専門医を取ることができるのが遅れることに関して女性として働きにくくなることを考慮してほしい(6年生、女性)
・やはり女性である身として、子育ても両立出来るようなしっかりとした制度にしてほしいと思う(3年生、女性)

■研修先によって取得できる科に制限が生まれないこと
・都市部以外の地域で研修を受けても有利不利が生まれないこと。(複数の学生が回答)
・自分にとっては都心の方が圧倒的に有利であり、働き方の自由を謳う現状と逆行する制度に見える。(3年生 女性)
・専門医を取得できる場所の多様化を求めます。(6年生 男性)
・大学での入局以外の選択肢を用意できないか検討するべき。今ある奨学金の制度とかみ合わなさすぎるものが多い(5年生、男性)

■臨床医以外のキャリア形成も認めてほしい
・社会医学などの分野も考慮すべきと思う。臨床偏重である(1年生、男性)
・学位取得はどうなるのか専門医取得との兼ね合いはできるのか?(4年生、女性)
・留学など色んな選択枠が人生で生まれるような制度だとうれしい(4年生、女性)

■「医学教育にキャリア形成考える機会を」
 医学生のキャリア観を明らかにし、大学教育や新専門医制度の議論へのフィードバックを行うことを目的とした今回の意識調査。医学連では考察を以下のようにまとめています(原文引用)。

 「医学教育モデル・コア・カリキュラム 平成28年度改訂版」によると、「多様なニーズに対応できる医師の養成」が教育目標として掲げられています。これは、これから起こる多様な求めや変化に医師が応えてゆくという受動的な側面だけでなく、医師として多様なキャリアパスが形成でき、多様なチャンスがあるということも意味しています。したがって、医学部における医学生のキャリア形成は、社会からのニーズの一つであると解釈することができます。

 しかし、医師像を考える機会については十分に保障されているとは言い難い現状があることが、本アンケート結果から明らかになりました。そしてその要因としては、そもそも大学が機会を設けていないことや、相談相手や参考材料が少ないこと、試験が多忙で時間的・精神的余裕がないこと、医師像を考える必要性を感じられないこと、さらには医師像を考える主体性を身につけられていないことなどが挙げられ、非常に複雑かつ多様であることが分かりました。

 そのような状況に加えて、新専門医制度についても、多くの医学生がまだ十分に理解できていないことがわかりました。その原因としては、まず制度そのものが学生へ十分周知されていないことが挙げられます。またその一方で、将来制度を利用する主体者になるはずの医学生が、新専門医制度についてそもそも知識や関心が薄いことも挙げられます。このことは、最後までプログラムを履行する医師が少なくなる可能性を示唆しています。専門医の取得が「義務」から「推奨」へ変わったなか、このような事態では専門医の細分化が進まなくなる恐れがあり、国民や患者が十分に満足のいく医療を受けられなくなる可能性すらあると言えるでしょう。

 医学生は今の医学教育に一定の満足度は示してはいるものの、十分にキャリア形成を考える機会を得られている学生は多くありません。そのため、各大学で大学側と学生側が協働して学生の声を吸い上げて、医師像を考える機会の提供や、相談できる体制の整備、多様な働き方の提示などにより、学生のキャリア形成への動機付けを推進してゆく必要があります。そして、そのことが医学生のみならず国民・患者さんの利益にもつながってゆくのではないでしょうか。


  1. 2017/07/23(日) 09:35:30|
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7月14日 

http://www.asahi.com/articles/ASK7B42KBK7BUBQU00N.html
常勤医の残業時間、3分の1が上限超す 新潟県立病院
2017年7月10日15時00分 朝日新聞

 新潟県病院局が運営する県立13病院で2016年度、長時間労働を抑えるための労使協定(36(さぶろく)協定)で決めた残業時間の上限(月75時間)を超えた常勤医が、延べ105人いたことがわかった。6日の県議会常任委員会で、県が明らかにした。県は勤務実態の調査を進めており、近く結果を公表する。

 月80時間を超えたのは延べ81人(前年度比23人増)、100時間超も延べ23人(同1人増)いた。県によると、救急患者への対応や手術が長時間に及ぶ場合に勤務時間が長くなる傾向があるという。対象となる常勤医は340人で、所定労働時間は1日あたり7時間45分。

 国は、過労死の判定基準(過労死ライン)を、所定労働時間が1日あたり8時間の場合で、残業時間が月100時間以上か、直前2~6カ月の平均が月80時間以上としている。県は、地域や部門によって、医師不足が生じていることも超過勤務の原因になっているとみている。

 県立病院の看護師は、36協定で残業時間の上限を月30時間と決めている。昨年度、約2300人のうち延べ121人が上限時間を超えていたが、80時間を超えた人はいなかったという。



https://mainichi.jp/articles/20170705/org/00m/010/052000c
医師偏在 改善されない地方の医療環境
2017年7月10日 毎日新聞 / 毎日フォーラム

地域定着へ自治体、大学の取り組み続く
 医療施設の医師は全国に約30万人で、医師数は毎年約4000人増えているが、都市や特定診療科への偏在は収まらず、地方の医師不足は解消されていない。医学部入学定員の地域枠が拡大され、自治体や大学も医師の地域定着に取り組んでいるが、医療関係サイトをみれば、今なお「医療崩壊」などの強烈な言葉を目にする。地域医療体制の確保が依然として大きな課題として残っている。

 医師不足の原因を2004年に始まった「新医師臨床研修制度」と見る専門家は多い。医師免許取得後、2年間の病院研修を必修化したものだ。研修先は病院と希望者をコンピューターで組み合わせる「研修医マッチング」で決められる。研修先を自由に選べるため、医療設備の充実度や症例数の多い都市部の病院を希望する者が多くなる。従って出身大学の医局に残る者が減る。そうなれば大学病院は医師派遣が難しくなり、地域の医療機関が医師不足に陥るという構図だ。

 研修病院の指定基準の強化や募集定員を設けるなど、都市部への集中を抑えようとしてきたが解消には至っていない。08年度からは医学部の入学定員を増やし、10年度以降は、一定期間、地域医療に従事するのを条件に奨学金の返還を免除する「地域枠」を中心に拡大。入学定員は07年度の7625人から17年度は9420人にまで増えた。学部6年、研修2年とすれば、増員した医学部生が現場に出始めたころで、今後、地域偏在は和らぐとの指摘もある。他方、地域医療支援センターが全都道府県に設置され、それぞれに医師不足の解消に取り組んでもいる。 

 厚生労働省によると、人口10万人当たりの医師数は全国平均で244.9人(14年調査)。最多が京都府の326.3人、最少が埼玉県の158.9人で概ね「西高東低」という。千葉、神奈川両県も平均を大きく下回るが「首都圏は通勤・通学など、アクセスがいいので都内で受診する人も多く、医師不足を感じないかもしれない」(厚労省医事課)との見方もある。

 とは言え、全国最少の埼玉県では、(1)人口10万人当たり(2)100平方キロメートル当たり(3)過去10年間の医師数の伸び率--のすべてで県平均以下を「医師不足地域」とし、県内10医療圏のうち四つがこれに当たるため、数々の対策を講じている。4医療圏の拠点病院の休日・夜間外来には開業医を派遣し、当直体制の確保のためには大学病院などの医師を送っている。昨年度だけで8拠点病院に769回派遣し、4747人を診察した。

 また、医師の定着に向け、県内病院での研修を促す目的で「研修資金貸与制度」も設けた。臨床研修医には月額10万円を貸与。研修後、なり手の少ない産科、小児科、救命救急センターの医師として県内病院で一定期間勤めれば返還を免除する。研修医の収入は少ないので生活費支援の色彩が強いが、この9年間で46人が貸与を受けた。

 さいたま市にある地域医療教育センターには一般病院では導入が難しい高額の「成人患者シミュレータ」など多数の最新機器を配備。「どの土地で働くかは医師がどういうキャリアを目指しているかで決まる」(埼玉県医療人材課)との観点から、医療技術習得のサポート体制も敷く。13年度からは高校生対象の病院見学を開始。若手医師との懇談や医療模擬体験、保育器の乳児まで目にし、医師への志を養成する。年3~4回の実施で毎回30人弱が参加。この中から一人でも多く県内で働く医師になってもらいたいと期待する。

 日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は「高校の進路指導から医療に携わる覚悟を教えたり、意欲を高めてもらうための的確な情報を伝えていく必要がある」と述べ、医師の「適性」を早い段階から育むことも、地域に根付く医師を生む一つの方策と見る。医師会も「偏在解消は重要課題」という。

 高知大学でも学生の意欲を高めようとしている。地域枠入学者らのグループ「SEED」を組織し、年2回、卒業後も役立つ先輩後輩のつながりを深める交流会を開いている。SEEDの代表者は県臨床研修連絡協議会の一員でもあり、学生でありながら、病院長や県職員などとの協議の場に参加する。夏休みにはへき地の病院での実習「医療道場」があり、早くも現場に身を置く貴重な体験を得る。指導役の阿波谷敏英教授は「へき地を含む県内の病院勤務が条件のため、地域枠には『自由がない』などのネガティブなイメージがあった。地域枠の学生には地域医療を担っていくという強いプライドを持ってもらいたい」と話す。

 一方、公益社団法人地域医療振興協会はへき地の医療支援や経営難の公立病院の指定管理者として運営再建などに取り組んでいる。副理事長の山田隆司氏は現在、東京都台東区立台東病院の管理者を務めるが、自らもへき地医療に携わってきた。自治医科大学出身で医師のスタートは岐阜県久瀬村(現揖斐川町)の診療所だった。人口約2000人。無論、医師は山田氏ひとり。赴任してすぐに「こんな所にいては使い物にならなくなる」と苦悩した。診るのはありふれた病気で、少々重いものになれば地域の病院を紹介するだけ。こんなことがあった。腰痛を訴える高齢の女性に痛み止め薬や注射を与えても一向に治らない。ある日、家を訪ねると、腰痛の原因が夫の介護とわかった。その後、ヘルパーを頼むなど生活を見直すことで腰痛は治った。医師とは何か。「価値観が変わった」という。結局、診療所に20年勤めた。「同じ地域の同じ人を見続けたので患者を取り巻く状況まで分かってきた。久瀬村での経験が医師としての私の血や肉になっている」と話す。

 山田氏は「医者は病んでいる人の心に共感できるとか、人に関わることが好きというような人が向いている」と言い、医学部が理系のトップだけが集まる場所になってはいけないと思う。医師会の釜萢氏も「もっとリベラルアーツ教育が必要では」と、理系に偏らず、人文・社会科学を含む幅広い一般教養を医学部で学ぶ意義を指摘している。

 現在、専門医の質の向上を目指す新専門医制度の導入が進む。専門性の高い医師の養成は不可欠だが、その前提は地域医療に携わる総合医のすそ野がしっかりと広がっていることだろう。昨年12月に厚労省が実施した医師アンケートで「地方勤務の意思がある」との回答が4割を超えた。今後、この回答を生かせるだろうか。



http://www.nikkei.com/article/DGKKZO1859591007072017TCC000/
地方の医師不足 解消進まず
全国では年4000人増加も 医学部に「地域枠」効果まだ

2017/7/10付日本経済新聞 朝刊

 医師が大都市部に集中し、地方の医師不足が深刻化している。政府などは医学部の定員増や地域勤務を義務づける「地域枠」を導入したが、効果はすぐに出ていない。「このままでは地域医療は崩壊する」。厚生労働省の検討会では医師に地域での勤務を半ば強制的に課す案も浮上した。同省は年内に抜本的な対策をまとめる方針だが、地域勤務の義務化を嫌う医師らの反発も強い。医療の質を維持しながら偏在問題を解決できるのか。議論の行方は不透明だ。

 徳島県南東部に位置する勝浦郡。同郡には病院が一つしかない。その国民健康保険勝浦病院は常勤医4人で60床ある病棟と外来の診療をこなす。最年少医師で50歳前。定年延長して残った65歳の前院長と64歳の小西康備・現院長が月に6~7回も当直に入る。小西院長は「年休もとれない状態。いつ診療できなくなってもおかしくない」と語る。

 徳島県の人口当たり医師数は実は全国で3番目に多い。しかしその多くが徳島市周辺に集中し、少し離れただけで医療体制に不安が募る。人口当たり医師数がそもそも少ない東北地方などはさらに深刻だ。

埼玉・千葉で不足
 東京近県でも千葉県や埼玉県で医師不足が目立つ。産科などの一部診療科が閉鎖されたり、夜間の急患の受け入れを制限するなどの例も珍しくはない。

 日本全体の医師数は毎年4千人ほど増えており、1990年には約21万人だったが、2014年には31万人余りとなった。ただ医師としての経験を積んだり、子供の教育など家族への影響を考えたりして都市部での勤務希望は多く、地方勤務が増えない。

 政府も対策は講じている。07年度には7600人程度だった全国の医学部の定員を徐々に増やし16年度には9300人ほどにした。増えた部分には、自治体が奨学金を出し、学費を免除する代わりに一定期間は各都道府県内での地域勤務を義務付ける「地域枠」も導入した。

 地域枠では6年間の医学部在学中の奨学金を受ければ、通常は1.5倍の期間、9年間の地域勤務が義務づけられる。だがたとえ義務でも、無理な配置をすれば医療の質の向上だけでなく、義務期間を終えた後に県内にとどまってくれることも望めない。

 地域勤務をしながら、目指す専門医などになれるようにキャリア形成を支援することが求められる。徳島県では一定条件の下、自身のキャリア形成のために国内外での留学・研修が必要であれば最大7年間、地域勤務を中断できる柔軟な仕組みまで設けている。

 こうした地域枠の医師を都道府県が責任を持って医師不足地域に配置するため、全国で「地域医療支援センター」の開設も進んでいる。それでも地域枠の医師は第1陣が医学部を出て、臨床研修を終えたばかり。実際に成果が出るのは「まだまだこれから」(徳島県保健福祉部)。地域医療の崩壊のスピードの方が早い恐れもあり、「地域枠だけでは遍在問題は解決できない」との指摘もある。

さらなる対策浮上
 「病院長になるためには医師不足地域での一定期間の勤務を条件とすることも検討」。厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」の分科会は16年6月、こんな偏在対策を盛り込んだ中間まとめを公表。さらに10月には健康保険による診療ができる「保険医」となるためには医師不足地域での勤務を条件とすることも議論した。

 地方勤務が病院での昇格の条件になれば応じる医師も増えるとみられる。患者が原則1~3割負担で受診できるため、日本ではほぼすべての医師が保険医登録しており、医師不足地域での勤務が登録の条件となれば、さらに効果は大きい。

 ところがその後、こうした議論はストップする。今年4月、厚労省内で新たに設置された別の有識者検討会が強制的な手法には否定的な見解を盛り込んだ報告書をまとめたからだ。背景には地方勤務の義務化を嫌う医師たちの意向があるとされる。塩崎恭久厚労相も「上手に条件整備すれば強制は必要ないのでは」と理解を示す。

 「医師の職業的自由は尊重されるべきだ」という地域医療機能推進機構の尾身茂理事長も「日本の医師は公的保険制度の中で活動しており、社会的な責務も負っている。この2つの概念を対立させるのではなく、両者の間の第3の道を探るのが行政と医療界の責任だ」と訴えている。

 第3の道としては、医療界などによる自主的な取り組みを強化し、それがうまく機能しないときには義務的・強制的な仕組みなどを発動することまで包括的に決めることが考えられる。

 地方の医師不足が叫ばれ始めて久しい。医師の地域偏在、診療科の偏在を解消して、地方でも十分な医療を受けられる体制を維持するために国や医療界、そして私たちに残された時間は少ない。

(山口聡)
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https://mainichi.jp/articles/20170715/ddm/012/020/092000c
バイエル薬品
医師名論文、社員下書き 「倫理指針違反も」 外部調査

毎日新聞2017年7月15日 東京朝刊

 大手製薬会社のバイエル薬品(大阪市)の社員が、アンケートに答えた患者のカルテを無断で閲覧していた問題で、同社は14日、アンケートを基にした医師名の論文は社員が大部分を下書きしていたとする外部専門家の調査結果を公表した。医師が中心となるべき研究に社員が当初から深く関与し、研究計画書もなかったとして「国の疫学研究に関する倫理指針に違反する可能性が高い」と認めた。

 問題となったのは、同社が2012年に発売した血栓症の治療薬「イグザレルト」を巡る患者アンケート。同社は宮崎県内の診療所に協力を依頼し、結果をまとめた論文も診療所の医師名で発表された。

 外部専門家によると、宮崎営業所社員3人は、最大で298人分の患者情報を同意を得ずに閲覧し、データを転記・集計した。この行為は「個人情報保護法違反の可能性が高いが、本社の指示があったとは認められない」と結論付けた。

 論文については作成の大部分に社員が関わり、その後の医師講演会などでの発表資料も社員が作っていた。調査した垰(たお)尚義弁護士は「直接の法律違反はないが、社会一般から見て信頼を裏切った。倫理的な非難は免れない」と指摘した。

 ハイケ・プリンツ社長は「結果を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に取り組みたい」と謝罪。役員報酬を3カ月間10%自主返納する考えを示した。【細川貴代】



http://www.qlifepro.com/news/20170711/influence-of-sleeping-pills-in-diabetes-problem-in-nhk-gatten.html
NHK「ガッテン!」での「糖尿病に睡眠薬」問題が患者に与えた影響は?
2017年07月11日 PM04:00 QLifePro

2学会が異議申し立て、厚労省も厳重注意

2月にNHKが放映した「ガッテン!」で睡眠薬のベルソムラの適応外処方を推奨するかのような内容を放映したことに関連し、医療現場では患者が処方変更を申し出たケースがあったほか、その要望に応えてもらえなかった患者で精神状態が不安定になるなどの事例が起きていたことがわかった。東京大学大学院 薬学系研究科 育薬学講座の鈴木陽代氏が、同番組に対する医療従事者へのアンケート調査の結果を第20回日本医薬品情報学会学術集会で発表した。

問題となった番組は、2017年2月22日のNHKの情報番組「ガッテン!」の「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」。同日の放送では熟睡をもたらす脳波としてデルタ波を取り上げ、デルタ波を定量化したデルタパワーが熟睡度を左右するとし、なおかつこの数値が高いと血糖降下作用があると紹介した。そのうえ睡眠薬・ベルソムラ(一般名:スボレキサント)の商品名が入ったパッケージを放映。大阪市立大学の研究としてベルソムラを服用した糖尿病患者では血糖低下効果があり、副作用はほとんどないなどと放送した。血糖降下作用はベルソムラの承認適応ではなく、この放送に対しては日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会がNHKに対して異議を申し立て、厚生労働省もNHKに口頭で厳重注意を行った。NHKは2月27日になり、番組のHP上で行き過ぎた表現で誤解を与えたとして謝罪に至った。

鈴木氏らは同講座が構築した医師向けインターネット医薬品情報提供サイト「医師のための薬の時間」(通称:アイメディス)、インターネットの薬剤師間情報交換・研修システム「薬剤師さん!頑張ろう!」(通称:アイフィス)を通じ、番組放送2週間後の3月7~22日にアンケートを実施。医師37人、薬剤師152人の合計189人が回答を寄せた。

処方希望を断られ、精神状態が不安定になった事例も

番組については実際に視聴して知っていたのが医師では38%、薬剤師では26%、番組は視聴していなかったが後日問題を報じたニュースなどで知っていたのが医師では54%、薬剤師では62%で、最終的に回答した医師の92%、薬剤師の88%がこの問題を認知していた。

番組の影響を受けた患者の行動を経験した医師は24%、薬剤師は37%。回答医師が経験した事例は15件で、内訳は「患者がベルソムラの処方を希望したが、処方はしなかった」が11件、「患者がベルソムラの処方を希望し、処方した」が3件、「ベルソムラに関する問い合わせ」が1件。このうち神経症と糖尿病を合併していた患者の処方希望を断ったケースでは、処方希望を断られたことによる不満で患者の精神状態が不安定になり、抗うつ薬のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の処方を余儀なくされた、との回答が寄せられた。

また、薬剤師が経験した事例は71件で、「ベルソムラに関する問い合わせ」が47件、「ベルソムラの新規処方」が12件、「他の薬剤からベルソムラへ変更」が8件、「医師から薬局への問い合わせ」が2件。具体的な事例では、睡眠障害のない糖尿病患者が番組を見て医師にベルソムラの処方を依頼。実際に処方を受け、薬剤師に血糖降下作用を尋ねたため、睡眠薬に血糖降下作用がないことを説明した。結局、薬剤師からの疑義照会により、ベルソムラの処方は中止となり、糖尿病治療薬を変更して経過観察する方針になったという。

一方、肯定、条件付き肯定、否定の3カテゴリーに分けて設定した選択項目を選んで番組に対する意見を尋ねた(複数回答)ところ、否定意見のみを選択したのは医師の70%、薬剤師の46%、肯定意見のみ選択したのは医師の11%、薬剤師の14%で、圧倒的に否定的意見が多かった。選択項目別で多かったものは、医師では「このような情報(適応外)は提供しない方がよい」が62%、「患者の薬に対する意識に悪影響を及ぼす」が49%、「医師としては迷惑であり、ある種の診療妨害である」が43%だった。薬剤師では「患者の薬に対する意識に悪影響を及ぼす」が61%、「このような情報(適応外)は提供しない方がよい」が59%、「医療従事者に迷惑であり、ある種の診療妨害である」が35%だったが、「患者と薬剤師のコミュニケーションのきっかけになる」というも回答も27%にのぼった。

今回の結果を受けて鈴木氏は、医療現場への影響が大きく対応に苦慮するケースも見られたこと、また全体的に否定的な意見が多かったとして「今後は健康情報番組の在り方について、番組制作関係者、医療関係者、視聴者などで広く議論されるべき」としている。(村上和巳)



https://www.m3.com/news/iryoishin/545364
邉見全自病会長、新専門医制「1年前よりは良い」
「医師の働き方改革」、9月を目途に提案意向

2017年7月12日 (水)配信水谷悠(m3.com編集部)

 全国自治体病院協議会会長の邉見公雄氏は7月12日に記者会見を開き、日本専門医機構が7月7日の理事会で2018年4月からの新専門医制度開始に向けて準備を進めることを決定したことについて、「1年前よりは良くなった、これで駄目だったら、日本の医療は5年も10年も遅れる。100点満点の60~70点くらいでスタートだが、少しずつうまくいくようにしていかないといけない」と述べ、今後も制度の改善のための努力を続けていくべきとの認識を示した(『「専攻医の登録、10月スタート」目指す』を参照)。

 邉見氏は、新専門医制度の課題として、総合診療専門医の専門研修プログラムや指導医の選定を指摘。新制度で指導医がいないことから、「詰めの段階に入ってくると思う。地域で総合診療を頑張っている方々が暫定指導医、特命指導医になれるよう、各地のJA厚生連やJCHO(地域医療機能推進機構)など田舎で頑張っている団体と力を合わせて働きかけていきたい」と述べた。

働き方改革は「地域医療持たない」
 社会問題化している「働き方改革」について、「医師を一般の労働者と一緒にされては、地域医療が持たない。日本の医療文化が変わってしまう。難しい問題だ」と述べて危機感を露わにした(『労基署に「踏み絵」を踏ませる覚悟 - 邉見公雄・全自病会長に聞く◆Vol.1』、『「勤務医は労働者」との決めつけ、乱暴すぎる◆Vol.2』を参照)。

 邉見氏は、働き方改革についての全自病としての提案を、9月を目途にまとめる意向を表明。「今あちこちで病院に労働基準監督署が入っている。入られてから対応するのではなく、先制攻撃をしなければいけない」と述べた。

受動喫煙対策は厚労省案支持
 受動喫煙対策を進める健康増進法改正に関しては、全自病として、原則禁煙とするが一部例外を認める厚生労働省案を支持することを表明。厚労省が、飲食店での例外拡大を求める自民党との対立のため通常国会での提出を断念したことから、「本当は日本医師会の案が一番良いが、それでは進まない。かといって自民党案では緩すぎる。厚労省案が中間くらいだ。世界標準から言えば小さな一歩だが、厚労省案を最初の一歩として、最終的には日医案に向かうようにしたいということで、全自病でまとまった」と説明した。



https://www.m3.com/news/general/545664
社会保障費:1300億円削減へ 18年度、薬価下げなどで圧縮
行政・政治 2017年7月14日 (金)配信毎日新聞社

 政府は、2018年度の社会保障費を1300億円削減する検討に入った。高齢化などに伴う自然増が6300億円に上る見通しで、政府目標の「自然増5000億円」を超える部分を抑制する。政府は、薬価引き下げなどで18年度の診療報酬改定をマイナスとし、削減分の大半を賄う考えだ。

 政府は15年6月に、16~18年度の自然増を計1兆5000億円に抑える「目安」を閣議決定。各年度で5000億円に抑えるため、16年度は診療報酬改定で1700億円削減。17年度は、医療・介護保険制度改革で1400億円を削った。

 政府が18年度の自然増を試算したところ、6300億円で、1300億円の削減が必要になる。一方、18年度予算では既に医療・介護保険制度改革の実施が決まっている。医療費の患者負担に上限を設ける「高額療養費」で一部の人の負担引き上げや、所得の高い40~64歳の人の介護保険料の負担増だ。しかし、捻出できるのは650億円程度にとどまる見込みだ。

 18年度には診療報酬と介護報酬が同時改定される。医療費予算は年間10兆円程度で、診療報酬1%で1000億円程度が削減できる。政府は、診療報酬のうち、薬や医療材料などの価格「薬価」を引き下げる一方、医師の技術料など「本体」の大幅な引き上げは難しいとの考えで、全体としてマイナスとなる見通しだ。介護報酬も大幅な増額は厳しい見込みだ。【阿部亮介】



http://www.medwatch.jp/?p=14732
2018年度からの新専門医制度に備え、10月から専攻医の仮登録—日本専門医機構
2017年7月10日|医療現場から MedWatch

 2018年度から新専門医制度が実施可能になった場合に備え、いわば「専攻医の仮登録」をこの10月から実施する—。

日本専門医機構の吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)は7日、理事会終了後の記者会見でこのような考えを示しました。

10月から専攻医の仮登録を進め、年内には研修先を決定
新専門医制度は、数多ある専門医資格を国民に分かりやすいものとし、かつ質を担保するために、「専門医の研修プログラム認証や、専門医の認定を各学会と日本専門医機構が共同して行う」ことなどを柱としています(関連記事はこちら)。しかし、「質の担保を求めるあまり研修を行う施設(病院)の要件が厳しい。これでは地域医療の現場から指導医・専門医を目指す専攻医がいなくなり、医師の地域偏在が進み、地域医療が崩壊してしまう」との強い指摘があり、塩崎恭久厚生労働大臣は「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」を設置し、地域医療への配慮が十分になされているかをチェックしています(関連記事はこちら)。

これまでに検討会の指摘を踏まえ、日本専門医機構では新整備指針について「専門医資格の取得は義務でない」などの見直しを行うことを決定(関連記事はこちらとこちらとこちら)。さらに、下部規定の「運用細則」について次のような見直しを行う方針を固めました。(2)は、6月12日に開催された検討会で、荒井正吾構成員(奈良県知事)からの厳しい指摘を踏まえたものです(関連記事はこちら)。

(1)カリキュラム制などの柔軟な対応を担保するために、▼基幹施設などは専攻医からの相談窓口を設け、有効な研修を行えるよう配慮する▼専攻医は、相談窓口への相談後も有効な研修が行えないと判断した場合には、機構に相談できる—こととする

(2)都道府県協議会によるチェックを担保するために、▼協議会は、機構に連絡し、研修施設群に対しローテ―ト内容などの情報提供を求めることができる▼基幹施設は、機構に連絡のうえで協議会に情報提供を行い、その旨を機構にも報告する▼機構は、地域医療への配慮や専門研修レベル改善のための必要性に応じて、基本領域学会、研修施設群と共同して協議会の求めに協力する—ものとする

 吉村理事長は、こうした規定の整備によって「規約上は、2018年度から新専門医制度を全面スタートできる準備が整った」と説明した上で、関係者の理解を得るためにさらなる協力をしていく考えを強調しました。

 ところで、仮に年明け1月に、例えば検討会で「2018年度の新専門医制度の全面スタートを認める」旨の見解が示されたとします。ここから研修プログラムの認証や、専攻医の募集を行ったのでは、2018年4月からのスタートは時間的に困難です。

 そこで2018年度(2018年4月)からの全面スタートに備えて、「10月から、研修プログラムへの専攻医の登録(いわば仮登録)を始める」ことになります。

 この前提として、研修プログラムが登録前に公表されていなければいけません。そこで▼7月中に1次審査を完了する▼その後、都道府県協議会のチェックを受け、必要な修正などを行う▼遅くとも9月末までに2次審査を完了する(この時点で認証)—ことになります。ただし、審査終了後に、例えば「実際の研修プログラムが申請内容と異なり、指針などに違反している」ことなどが判明した場合には、機構から研修プログラムの修正を求め、それに応じない場合には「認証の取消」となることもあり得ます。

専門医資格の取得を希望する医師は、希望する研修プログラムを1つ選択し、申請を行います。その後、機構で「1人の医師が複数のプログラムに申請してないか」などをチェックした後、各プログラムにおいて「選考」が行われます。1度の申請・選考で完了することはあり得ず、2次・3次の申請・選考が行われます。「どこで研修プラグラムを確認するのか」「申請はどこ(学会なのか、基幹施設なのか)に行うのか」などは、今後、急ピッチで詰めることになります。機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は「年内には、すべての申請について選考を終え、研修先が決まるようにしたい」との考えも示しました。



https://www.m3.com/news/iryoishin/545622
修学資金枠の東北出身者6人減、東北医科薬科大
教員採用に伴う影響軽微、地域医療ネットワークに期待

2017年7月14日 (金)配信水谷悠(m3.com編集部)

 東北医科薬科大学は7月13日、第9回教育運営協議会を開催した。2017年4月に入学した第2期生100人中、東北地方の出身者は33人と2016年より2人増えたものの、卒業後に東北6県で一定期間勤務する義務のある修学資金枠の55人のうち、東北出身者は14人で、2016年より6人減少し、同大医学部長の福田寛氏は「地域医療に熱意のある学生を獲得できたが、修学資金枠で当該県出身者が少ない。東北出身の受験者を増やす努力をしていきたい」との認識を示した。

 教育運営協議会は、2016年4月の医学部新設に当たって、地域医療への影響などを検証するために設置が求められ、東北6県の大学、行政などの関係者から構成。新設後にも開催が求められ、2016年も7月に第8回協議会を開催した(『東北医科薬科大学、東北出身者は31%』を参照)。

 募集定員100人のうち修学資金枠A方式(修学資金3000万円)は宮城県30人、それ以外の5県が1人ずつ。B方式(修学資金1500万円+各県の修学資金)が20人。

 入学者のうち、A方式の宮城県は東北出身者9人に対し、それ以外が21人。A方式の各県枠は青森県と秋田県が地元出身者だったが、岩手、山形、福島の各県は東北以外の出身者だった。2016年は宮城以外の5県の枠は当該県出身者で占められており、福田氏は「関東出身が非常に多い。東北の各県勢にもう少し頑張ってほしい」と述べた。B方式も、2016年は東北出身者とそれ以外が10人ずつだったのに対し、2017年は東北出身者3人、それ以外17人と東北出身者が大幅に減少した。

 入学試験の実施状況は、志願者2240人(2016年2458人)、受験者2042人(同2278人)、合格者256人(同297人)、実質倍率は8.0倍(同7.7倍)だった。

地域医療ネットワークに期待
 「学部教育の進捗状況」については、東北の19の基幹病院で構成する「地域医療ネットワーク病院」を活用したプログラムを新たに組んだことを報告。今後、2年次から3年次にかけて1泊2日の体験学習を3回、5年次には2週間の臨床実習を1~2回、いずれも同じ病院で固定したメンバーで滞在して行う。東北医科薬科大医学教育推進センター長の大野勲氏は「地域を理解し、愛着を持って卒業し、将来は地域医療に貢献してもらう仕組み」と説明し、教育運営協議会委員長の里見進・東北大学総長は「現在の医療で問題となっているチーム医療や地域医療の面で充実した良い体制を作っていると思う。効果があるのではないか」と評価した。

地域医療に大きな影響なし
 教員採用では、医学部新設に当たって地域医療に影響を及ぼさないことが条件とされており、採用した教員の元の所属先への状況調査を昨年に続き実施。60機関に対する調査(昨年は47機関)で、「状況の変化があった」が4機関(同2機関)、「状況の変化がなかった」が45機関(39機関)、無回答が11機関(6機関)だった。

 福田氏は変化があったとの回答の中には、「変化は想定内で、対応できている」、「補充はしたが、(前任者が)優秀だったために診療機能の面で追いついていない。ただし、通常の異動でも起こり得ること」などの付記があったことを明らかにし、「全体としては現時点では大きな状況の変化はなかったと認識している」と述べた。

 地域医療への支援については、福田氏は「本学は地域医療を支えることが使命で、積極的に支援をしている」と述べ、非常勤医師の派遣先機関が6月30日時点で100機関(2016年同時期は49機関)、延べ人数が283人(同112人)、実人数が120人(同63人)といずれもほぼ倍増していることを報告。「宮城県中心だが、体力が付けば他県にも増やしたい」との意向を述べた。


東北医科薬科大学教育運営協議会
教員18人増、臨床系は不足
 教員の採用状況では、2018年4月までの着任予定者を含めて201人を採用しており、2016年の第8回協議会で報告した183人から18人増となった。ただ、福田氏は、「基礎系はほぼ予定の数を満たした」としたが、臨床系では皮膚科、麻酔科、救急などで十分な数を確保できておらず、「大学病院としてはまだまだ。診療に影響が出ている状況」と説明。地域医療に影響を及ぼさないような配慮をしながら、引き続き、年に15人程度を公募などで追加採用していく方針を示した。

専門医取得のサポートを
 教育体制に関連して、山形大学医学部長の山下英俊氏が、修学資金枠で卒業後も地域に残る場合に、専門医を取得できるよう体制を構築する必要性を指摘。「義務年限が9年、10年とある。地域枠で入学した学生へのサポートは日本専門医機構の整備指針にも盛り込まれており、卒業生が出るのはまだ先だが、準備をした方が良いのでは」と提案した。福田氏は「指摘の通りで、義務年限がある場合の専門医取得はなかなか難しい。各県の事情を勘案しながら設計したい。ぜひ皆様にサポートをお願いしたい」と応じた。

参考:日本専門医機構「専門医制度新整備指針(第二版)」より抜粋
地域枠入学や奨学金供与(給与・貸与)を受けている専攻医に関しては、機構は、地域枠や奨学金供与の義務の発生する各都道府県等及び各基本領域学会に対して、専門医制度を適切に行えるように要請する。



https://www.m3.com/news/general/544634
医師の過酷労働に一石 労基法改正へ影響も 残業代訴訟
2017年7月10日 (月)配信共同通信社

 最高裁が7日の判決で、勤務医の年俸に残業代は含まれないとの判断を示した。通常の賃金と残業代を分ける目的は「時間外労働などの抑制」と明示、労働基準法の労働時間規定を厳密に守ることを求め、医師の過酷な労働実態に一石を投じた。ただ、原告医師の年俸は1700万円。高収入の専門職の一部を残業代支払いの除外とする新制度を盛り込んだ、労基法改正案の行方にも影響を及ぼしそうだ。

 ▽第一歩

 「正確な労働時間の把握が過労防止の第一歩」。1999年、小児科の医師だった夫を過労自殺で亡くした「全国過労死を考える家族の会」東京代表の中原のり子(なかはら・のりこ)さん(61)=東京都=は判決を評価した。

 夫は月に5~8回の泊まり勤務を繰り返し精神的に追い込まれた。遺書には医師の過重労働の実態や、小児科医の医療態勢の悪化について触れていた。「患者の命を預かる医師が過労で倒れるのは本末転倒だ。残業を減らす取り組みを続けてほしい」と話す。

 厚生労働省研究班が昨年12月に実施した医師約10万人を対象にした調査によると、病院や診療所に勤務する20代医師の1週間の勤務時間は男女とも平均50時間以上。30~50代でも、男性では50時間を超えた。

 医師には原則として治療を断れない「応召義務」があり、診療や手術が長引いても途中で勤務を終えることはできない。勤務医には当直勤務や呼び出しもあり、勤務時間以外の負担もある。

 勤務医でつくる「全国医師ユニオン」の植山直人(うえやま・なおと)代表は「勤務医は自身が労働者だという意識が薄く、義務感から長時間労働を受け入れてしまう」と指摘する。

 ▽逆行

 今秋の臨時国会で審議される労基法改正案では、働き方改革を掲げて「月100時間未満」との残業規制を柱にする一方、経済界の求めに応じ、高収入の専門職の一部を残業代支払い対象から除く「高度プロフェッショナル制度」の創設も盛り込んだ。

 新制度の対象となる仕事は年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発業務などで、残業規制の枠組みから外れることになる。医師は対象外だが、年収だけをみると、原告医師の年俸は対象となる年収を大幅に上回っている。

 新制度を「過労死を促進し、働き方改革に逆行する」と反対してきた労働界からは、年収にかかわらず労基法を厳格に適用した今回の判決に歓迎の声が上がる。

 日本労働弁護団の棗一郎(なつめ・いちろう)弁護士は「医師も、新制度の対象になる金融ディーラーなども、専門職は長時間労働になりがちだ」と強調。「人間らしい生活のできる働き方を求める人は増えている。新制度を含んだ労基法改正はするべきではない」と訴えた。



https://www.m3.com/news/general/544630
医師年俸「残業代含まず」 時間外、明確区別を要請 最高裁判決
2017年7月10日 (月)配信共同通信社

 勤務医の年俸に残業代が含まれるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(小貫芳信(おぬき・よしのぶ)裁判長)は7日、「時間外賃金は、通常の賃金と明確に区別できなければならず、含まない」との判断を示した。一、二審は医師の職業上の特性から「年俸に残業代を含む」としていた。

 過去の最高裁判例は、残業代と通常の賃金を分ける必要があるとしており、今回の判決は、医師であっても例外とすることを許さず、厳格適用を求めた格好となった。サービス残業が問題視される勤務医の働き方の議論に影響を与えそうだ。

 訴えていたのは、神奈川県内の私立病院に勤務していた男性医師。一、二審判決によると、2012年4月、病院側と年俸1700万円の雇用契約を結んだ。午後5時半~9時に残業をしても賃金は年俸に含むとする取り決めがあり、男性は手続き上、合意していた。

 一審横浜地裁判決は「生命に関わる医師の業務には、労働時間に応じた賃金支払いはなじまず、高額な年俸に残業代が含まれるとみなしても不合理ではない」と判断。二審東京高裁も支持した。

 しかし、最高裁は「1700万円のうち残業代に当たる部分を判別できず、残業代が支払われたとは言えない」と指摘。高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。東京高裁で未払い分の残業代を計算する。

 医師は、勤務態度などを理由に12年秋に解雇され、解雇無効や未払い賃金の支払いを求めて提訴。解雇については、有効とする二審判決を最高裁も支持した。

 ※医師の長時間労働

 厚生労働省研究班が昨年12月に実施した医師約10万人を対象にした調査では、病院や診療所に勤務する常勤勤務医は、男性の27・7%、女性の17・3%が週60時間以上勤務していると判明。医師法で診療が原則断れない「応召義務」を課されていることや、当直明けも通常通り仕事を続ける慣行、医師不足などが影響しているとみられる。病院などに勤める医師は労働者と認められており、裁量労働制は適用対象外となっている。



https://www.m3.com/news/general/544631
厳格な労務管理促す 勤務医残業代訴訟
2017年7月10日 (月)配信共同通信社

 【解説】勤務医の年俸に残業代が含まれないとした7日の最高裁判決は、通常の賃金と残業代との間に、明確な線引きが必要だとする大原則を重視した。医療現場では、高額な年俸と引き換えにした歯止めのない労働が問題視されており、厳格な労務管理を促したと言えよう。

 医師は、診療を原則拒めない「応召義務」がある一方、仕事のやり方にはある程度の裁量が認められ、相当に高額な報酬も得ているとして、働き方を巡る議論の蚊帳の外に置かれがちだった。

 一、二審は、医師の特性を考慮し「労働者として保護されていないとはいえない」と指摘。一般のサラリーマンらに適用してきた従来の原則に縛られず、高額の年俸に残業代が含まれるという判断を示した。

 だが、年俸制を隠れみのにした医師のサービス残業は珍しくないという。過労は医療ミスにつながりかねず、医師自身だけでなく、国民の命と健康にも関わる。最高裁が一、二審から原則に引き戻したのは是認できる。

 ただ、労務管理をしっかりし、残業代を支払うことが長時間労働の解消に直結するわけでもない。医師不足といった問題もある。判決を踏まえ、医療現場の実態に即した改革が早期に進むよう期待したい。



https://www.m3.com/news/general/544636
労働時間の考え方見直しを 新潟研修医自殺で申し入れ
その他 2017年7月10日 (月)配信共同通信社

 新潟市民病院(新潟市)の研修医木元文(きもと・あや)さん=当時(37)=が昨年1月に自殺したのは長時間労働が原因と労災認定された問題で、遺族の代理人は7日、手技のトレーニングなどは個人の学習だとしても業務に含まれるとして、労働時間の考え方を見直すよう市に申し入れた。

 代理人によると、同様に労働環境改善を求めて6月9日に出した申し入れは、市から同月30日付で回答があったが、説明が不十分だったという。

 今回の申し入れでは、個人のスキルアップの学習や学会準備などについては労働時間に含まないとする病院側の見解に対し、「業務のために必要ならば労働時間だ」と指摘し、病院長ら関係者が意識刷新すべきだとしている。

 市は6月、新潟労働基準監督署から長時間労働の改善を柱とした是正勧告を受けた。


  1. 2017/07/15(土) 10:24:42|
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7月7日 

https://mainichi.jp/articles/20170708/rky/00m/040/006000c
県立北部病院
医師不足で外科外来を制限、夜間救急も一部休止 /沖縄

2017年7月8日 毎日新聞

 【名護】名護市大中の県立北部病院(知念清治院長)が、医師不足のため8月から日中の外科外来の受け付けを、現在の週4日から週3日に制限することが7日、分かった。4人いる外科医のうち1人が7月末で退職するため。また夜間(午後5時~午前8時)の緊急外来は週7日のうち、3日間は休止し、休止の日は北部地区医師会病院(諸喜田林院長)が引き受ける。北部病院の久貝忠男副院長は「医師不足問題の一端が表面化した」と述べた。北部病院では産婦人科の救急の休止も続いており、北部地域では医師不足が深刻化している。

 県立北部病院によると、制限していない日でも、心臓破裂など緊急で大手術が必要になった場合、医師が総掛かりで対応するため外科の外来を休止する。本来であれば地元で診察を受けられた患者が中部や南部の病院に搬送されることも予想される。久貝副院長は「北部の医療は危機的状況にある。内科も4人体制でぎりぎり保っている状況だ」と話す。

 現在、外科の医師は1人月9回の当直勤務がある。3人だと月12回に増えることになり、医師の過重負担から外来の制限に踏み切った。久貝副院長は「当直はほぼ眠れず、そのまま日勤に入ることもある。患者へのリスクを考えるとこれ以上は負担をかけられない。外来、救急を制限せざるを得なかった」と話す。

 北部病院では年間、外科関係だけでも6千件を超える緊急搬送がある。手術は外科だけで年間約400件。その3割が緊急手術だ。

 久貝副院長は「本来なら2倍ぐらいの人員が必要だが、まずは後任医師の確保が急務だ。確保でき次第、制限を解消したい」と話した。

 北部病院は県にも現状を報告しているが、県から具体的な解決策はまだ出ていない。(佐野真慈)(琉球新報)



https://www.m3.com/news/iryoishin/542177
医師の働き方改革とキャリア
労基署に「踏み絵」を踏ませる覚悟 - 邉見公雄・全自病会長に聞く◆Vol.1
「医師の働き方」の実態調査で医療崩壊を防ぐ

インタビュー 2017年7月3日 (月)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

 全国自治体病院協議会は6月22日の常務理事会で、医師の働き方や労務管理などに関する実態調査の実施を決定した。今後、同協議会で「医師の働き方改革」について議論する際の基礎資料とするためだ。政府の今年3月の「働き方改革実行計画」の中で、医師については時間外労働の上限規制の適用除外とし、今後2年間で適用の在り方を検討するよう求められている。

 同協議会会長の邉見公雄氏に、医師の働き方やその議論の前提となる医師の需給について、現状認識、実態調査や検討の方向性についてお聞きした(2017年6月27日にインタビュー。計2回の連載)。

――まず医師の需給の現状認識について、お伺いいたします。

 病院は、都市部か地方かを問わず、とても医師が不足しています。特に厳しいのは、地方の病院。診療所は、大都市を中心に少し過剰感が出ている一方、地方の開業医は高齢化し、在宅医療まで手が回らず、後継者が見付からない現状があります。

「医療の側から、こうしたい、という提案を出したい」と語る邉見公雄氏。

――医学部の入学定員は、2008年度以降の10年間で1795人増えています。今後の医師需給の見通しのほか、医学部定員増や医学部を新設する必要性については、どうお考えですか。

 医学は、進歩し、専門分化もする。さらに女性医師が増加すれば、出産・育児で休職する人も増えてくる。だから、医師の過剰感は全然ありません。3、5年後くらいでも、同じでしょう。(2015年12月から労働者に対して義務化された)ストレスチェック制度で産業医の仕事が増え、自動車の運転免許証更新の際の認知症高齢者の診断も医師の仕事になる。高齢者が増えれば、フレイルなどの予防対策やリハビリテーションのニーズが増え、さらにアジアなどに医療の国際展開もするとなれば、いくらでも医師の需要は増えます。

 ただし、私は医学部の定員増に賛成しますが、医学部新設には反対。医師養成の「バルブ」を開けたり、閉めたりできるようにしておいた方がいいと考えるからです。

 私は以前、医学部定員抑制の議論に加わっていました(編集部注:政府は1997年、医学部定員を7625人まで抑制することを閣議決定。2003~2007年はこの人数で推移)。「ま ほう びょう」、つまり「麻酔、放射線、病理」の医師不足は感じていたものの、それ以外の領域でも、こんなに医師不足になるとは思っていませんでした。

――ではなぜ医師不足が生じたとお考えですか。

 やはり一番は、2004年度の卒後臨床研修の必修化で、「一番弱い地域」を守ってきた医局の力が弱くなったこと。研修自体の中身はいいけれど、マッチングシステムの導入で、研修医が自由に研修先を選べるようになり、計画性のない配置となってしまった。医師の地域偏在を解決するため、各都道府県に地域医療支援センターを作っても機能しないなど、偏在解消対策はうまく行っていません。

――全自病では、医師の働き方や労務管理などに関する実態調査を実施するとのことです。医師不足問題と密接に関連する問題かと思います。

 その通りです。例えば夜間対応が多い救急部門などに、ナースと同じように三交代制を導入したら、今の医師数ではとても足りない。さらに、労働基準監督署は、病院への立入検査を行い、労働時間について是正勧告をしている。「週40時間労働」を完全に守ろうとしたら、今の医師数では無理。こうした事情も鑑みず、労基署は、日本の医療の根幹を揺さぶるようなことをしています。

 「働き方改革」で一番、困っているのは、我々全自病の会員病院。会員病院の約6割が田舎にあります。へき地で医師が少ない病院などに労基署が入ったら、もはや立ち行かなくなってしまいます。最近の全自病の常務理事会は、喫緊の問題以外は、この議論に集中しています。それほど大きな問題であり、関係者の関心は高い。日頃はおとなしい先生も、この問題になると饒舌になる。それは皆、違和感を覚えるからでしょう。医療特有のさまざまな文化があり、医師法上の応招義務がある。そこに労基署の論理を当てはめたら、整合性が取れない上に、医療がそもそも成り立たなくなってしまう。

 医師に時間外労働の上限規制が入ったら、救急車で患者さんが搬送されてきても、「勤務時間外だから、お断りします」といったケースが出てくるかもしれません。(研修医の過労自殺が問題になり、労基署の是正勧告を受けた)新潟市民病院は、外来は紹介状のある患者、救急は3次救急に限るという「緊急対応宣言」を出しました。新潟市は、政令指定都市であり、他に病院があるからいいけれど、うち(邊見氏が名誉院長を務める、赤穂市民病院)がそれをやったら、病院の経営や市の医療は持ちません。

 つまり、全自病が医師の働き方などについて実態調査をするのは、地域医療を守るためであり、机上の空論ではなく、調査を通じて現状を明らかにし、提言を出すのが目的。「我々の提言を守らないと地域医療は崩壊します。それでもいいのですね」などと、厚労省、具体的には労基署に「踏み絵」を踏ませる覚悟です。地域医療が壊れてもいいなら、労基署はいくら来てもいい。でもそれでは、その地域の医療はもちません。

――しかし、「当直明けの翌日も、通常勤務」といった実態は解決する必要があるのでは。

 勤務環境の改善は、もちろん必要。だからこそ医師数の増加、あるいは医師の適正配置、応招義務や主治医制の見直し、夜間受診の抑制や医療の集約化、タスク・シフティングなど、さまざまな問題について、総合的に考えていかなければいけない。その検討や何らかの施策を講じることなく、単に「労基法を守れ」と言われても、それは無理です。

――調査はいつ頃、実施し、結果や提言はいつ頃にまとめる予定でしょうか。

 「2年間の猶予」が医療界にありますが、今のままでは労基署に責められるだけ。立入検査で「こうしなさい」と言われてからでは、議論の範囲が狭められてしまう。具体的な時期は決まっていませんが、医療の側から「こうしたい」という提案を先に出したい。できるだけ多くの意見を聞きたいので、会員病院や医師には、実態調査以外でも、手紙、メールなど、さまざまな方法で意見、あるいは工夫事例などを寄せてほしいとお願いしています。



https://www.m3.com/news/iryoishin/542178
医師の働き方改革とキャリア
「勤務医は労働者」との決めつけ、乱暴すぎる - 邉見公雄・全自病会長に聞く◆Vol.2
勤務実態は複雑、各病院の自主性に任せた対応を

インタビュー 2017年7月6日 (木)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――先生は「医師の働き方改革」の議論の難しさを指摘されています。

 まずどこまでが医師の「労働時間」に当たるのかという問題があります。自分のスキルアップやキャリアアップのために、院内外のカンファレンスや研修会に参加する。研究、論文や学会発表の準備をする。学会で自分が発表する場合はどうか、他の発表を聞く時間も労働に当たるのか。研修医の「研修」はどこまでが労働か、指導医の「指導」、あるいはその準備も労働か。中には、「実家の父が病気になり、早く診療所を継承したいので」という理由で、その準備のために、長時間働く医師もいます。

 「聖職感」が強い医師も多く、「休日」であっても、病院に来て働く医師がたくさんいます。午前2時、3時まで緊急手術しても、次の日も病院に来てしまう。さまざまな「医師の文化」をどう解釈するか。

 主治医制という、日本特有の「医療の文化」もあります。「あの先生は、臨終にも来なかった」となれば、家族はその病院を受診しなくなってしまう。私が中医協(中央社会保険医療協議会)の委員をしていた際、中医協総会で東京に出てこなければならず、私が長年診ていた患者さんの臨終に立ち会えず、後からご自宅に謝りに行ったこともあります。

 応招義務の問題についても、複数主治医制、あるいはグループ制などであれば、病院組織として対応が可能ですが、現実には主治医制がほとんど。例えば、「あの先生に、お産してもらいたかった」となれば、主治医が担当せざるを得ない。

邉見公雄氏は、「医師の勤務実態はこんなに複雑。これを一括して、『労働』としていいのか」と問いかけたいという。

――誰が労働基準法の「労働者」に当たり、「時間外労働」の上限規制の対象になるかという問題もあります。

 開業医は、使用者であり、「労働者」ではありません。一方、病院の場合はどうか。(労基法で定める)「管理監督者」とは誰か。例えば「管理職手当」をもらっていることを基準にすれば、医長以上は皆、「管理監督者」に該当し、労働時間の規定の適用を受けなくなってしまう。

 勤務時間をどう管理するかという問題もあります。例えば、タイムカードで記録した時間か。それとも電子カルテの記録で見るかですが、どちらも中途半端。医師の場合、タイムカードをほとんど押さない。電子カルテを立ち上げていた時間を労働時間と見なす場合、消し忘れたりしたらどうするか。使っていなかったら、スリープする機能がある電子カルテでは、手術している時間は働いていないことになってしまう。

 さらに言えば、医師には「待機」の時間も多い。患者さんの状態が危なそうな時、「家に帰ってもまた呼び出されるかもしれないので、病院に待機しておこう」と自主的に残っていても、その日、容体が悪くならなかったら、その待機時間は労働に当たるのかどうか。

――その辺りを今回の実態調査では明らかにする。

 はい。医師の労働がどこまでか、各病院でどんな運用、管理をしているかを明らかにしたい。調査項目は、ものすごく多くなる見込みです。当直にしても、どんな診療科で、何人で勤務しているか、当直時間をどこまで労働時間としてカウントしているかなどを細かく聞く。実際に労基署の立入検査を受けた経験がある病院も含め、さまざまな人に関与してもらい、調査表の作成を進めています。私も入っているけれど、とても難しい作業です。

――「医師の働き方改革」は、医療提供体制の在り方、患者の受診行動、医師の価値観など、全てに関係する問題。医師によっても、また病院によっても考えが異なり、取りまとめは容易ではないと思います。

 先日、複数の医師で集まる機会がありました。ある病院は「午前2時までは夜勤扱いで労働時間としてカウントし、それ以降は当直扱い」。午前2時以降は、ほとんど患者さんが来ないからです。一方、別の病院は、田舎にあり、夜が早いためか、「午後10時までは夜勤扱い、それ以降は当直扱い」とのこと。そのほか、院長自身が管理当直を担当し、医師は病院の周辺に住んでおり、すぐに駆けつけられるため「当直はおかず、オンコール」という病院もあるなど、病院による違いは大きい。

 調査結果を基に、どのように意見がまとまるかは分かりませんが、「医師の勤務実態はこんなに複雑。これを一括して、『労働』としていいのか」という問いかけをするのが、第一でしょう。

 医療は「文化」。病院によっても、「文化」が違う。それを画一的な労働感で、「勤務医は労働者だ」と決めつけるのは、乱暴すぎる。要は「各病院の自主性に任せたら、どうですか」ということ。「ブラック企業」のように、だまして採用してはいけない。そうではなく各病院が自院の取り組みを公開、それを見て、医師が勤務先を選べるようにすべきでしょう。

 私は、2001年の省庁再編で厚生省と労働省が一緒になった時、この問題は解決に向かうと思っていました。それ以前は、縦割りで、厚生省は医療を守る立場であっても、労働省は病院に対し、厳しいことを言っていた。しかし、せっかく省が一つになったにもかかわらず、余計にややこしくなってきた。不作為で行政が手を打ってこなかったから、今になって、時間外労働の上限規制の問題が、より複雑な形で顕在化してきたと見ています。 



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170703120118
まさかあの病院が…広がる“聖路加ショック”
識者が考える働き方改革

2017年07月05日 15:00  CB News マネジメント

 聖路加国際病院(東京都中央区)が土曜の外来診療を縮小―。5月の病院側の発表は、医療関係者に衝撃を与えた。労働基準監督署の是正勧告を受けた勤務体制の見直しが理由だが、名門病院の方針転換は、医療界のパラダイムシフトを印象付けた。地方の医師不足や診療報酬の引き下げなど、病院経営を取り巻く環境が厳しさを増す中、医師の働き方改革についてどう考えるべきなのか。2人の識者に聞いた。【聞き手・構成=敦賀陽平】

●特定社会保険労務士・福島通子氏 「勤務医の考え方が二極化」

政府が働き方改革に力を入れ始めてから、労基署が病院に立ち入り調査を行うケースが増えた。これまで他の産業と比べ、それほど件数は多くなかったが、ここ数年の増加が目立つ。医師の過重労働は、最終的に医師不足の問題にたどり着く。少しずつ改善に向かってはいるが、地域や診療科の偏在に加え、高齢化も手伝って、現存の医師数で解決するのは難しいと思われる。

 聖路加国際病院のニュースが、病院関係者に与えたインパクトは大きいと思う。全国有数の大病院で、あれだけ多くの時間外労働が行われている。医師不足が深刻な地方の病院の状況は容易に推察できる。

 今回の件もそうだが、労基署の是正勧告を受けても、外来を縮小したり、診療科の数を減らしたりするなど、思い切った対策を取らない限り、小さな改善だけでは、法律を守って医師を働かせることはできないのが現状だと思う。医師不足が顕著な埼玉県でも、午後の外来診療を休止する病院が出てきた。現時点でできるのは、医師の仕事をサポートする人材を増員・育成することだ。

 私も研究に参加した社会保険労務士総合研究機構の2012年の報告書(医療現場の労務管理に関する研究)でも指摘されているが、例えば、「フィジシャン・アシスタント」(PA)や「ナース・プラクティショナー」(NP)の日本版のような人材を育成すれば、医師の負担を少しは減らすことができるのではないだろうか。
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https://www.minpo.jp/news/detail/2017070443038
小児・産科医、来て 南相馬市が募集延長、働き掛け強化
( 2017/07/04 10:37 カテゴリー:主要 )福島民報

 南相馬市は市内の小児・産科医療の充実に向け、医師の確保に全力を挙げている。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後の医師不足を補おうと助成制度を設けて小児科・産科医を募ったが6月末の締め切りまで応募者はゼロ。現在は市立総合病院以外で民間の小児科の専門医はおらず、産科医は1人のみ。市は3日、募集期間を9月末まで延長するとともに関係機関への働き掛けの強化に乗り出した。

 市によると、震災と原発事故前まで市内には市立総合病院と民間の病院・診療所を合わせて小児科を専門とする医師が5人程度いた。産科医は市立総合病院と民間の病院・診療所を合わせると少なくとも5人はいたという。

 原発事故に伴う避難などで民間の小児科医は不在となり、現在は市立総合病院の1人のみ。人員不足から新生児の入院は相馬市の公立相馬病院に受け入れを頼んでいる状況だ。産科医は市立総合病院に常勤医1人と福島医大から派遣された1人はいるが、民間は同様に1人だけとなった。

 市は医師不足解消に向けて市内で診療所を新たに開設する医師に施設整備費などを上限5000万円で助成する独自の医師公募制度を昨年創設した。だが、昨年の整形外科1件を除き、これまでのところ小児科・産科で制度を活用する医師は現れていない。

 市健康福祉部長として制度導入に携わり、今年春の定年退職後は再任用で市健康づくり課で地域医療対策を担う中里祐一主任主査兼係長(60)を中心に直接、医師に制度利用を呼び掛けたり、福島医大にさらなる医師の派遣を要請したりする日々が続く。中里係長は避難で子どもが減った上、助成金を支給するとはいえ、初期投資への負担を敬遠する医師が多いのではないか-と現状をみている。

 市は今後、助成要件の緩和も視野に入れて開業しやすい環境づくりに力を入れる考えだ。中里係長は「10年、20年先を見据えた医療体制づくりは行政の責務」と語り、受話器に向かった。



http://www.jiji.com/jc/article?k=2017070700969&g=soc
医師の残業代「年俸に含まず」=請求棄却の一、二審破棄-最高裁
(2017/07/07-19:25) 時事通信

 医師が勤務先の病院と結んだ雇用契約をめぐり、年俸1700万円の中に残業代が含まれていたかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は7日、「残業代は含まれていない」と判断した上で、医師の請求を棄却した二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。

 訴えていたのは、神奈川県内の医療法人を解雇された男性外科医。雇用契約に基づき、午後9時以降の「必要不可欠な業務」には残業代が支払われたが、医師は午後9時までの残業分も支払うよう求めていた。
 第2小法廷は、年俸1700万円の中に残業代を含むことで双方が合意していたが、残業代に相当する金額の内訳は不明確だったと指摘。「残業代をあらかじめ賃金に含めて支払う場合には、通常賃金との区別が必要」とした判例に基づき、「残業代が支払われたとは言えない」と結論付けた。
 一審東京地裁は、職務内容や賃金額などから合意は有効だとし、「残業代は含まれていた」と判断。二審東京高裁もこれを支持していた。 
 病院側の代理人弁護士の話 従来の判断枠組みを単純に適用した。現実を無視した形式的判断だ。
 医師側の代理人弁護士の話 医師の労働環境適正化についての議論が進み、過重労働改善の契機になることを期待している。



https://www.m3.com/news/iryoishin/544177
医師の時間外手当で最高裁判決(判決理由要旨など追記)
「年俸に含まれず、未払分支払いを」

レポート 2017年7月7日 (金)配信水谷悠(m3.com編集部)

 神奈川県内の民間病院に勤務していた40歳代の男性医師が、未払いの時間外手当の支払いなどを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は7月7日、時間外手当は年俸1700万円に含まれるとした一審、二審判決を破棄し、審理を東京高等裁判所に差し戻した(『「医師の過重労働改善に一石を」原告側』を参照)。

 小貫裁判長は判決理由で、時間外手当を年俸1700万円に含めるとの合意が医師と病院の間でされていたが、年俸のうち時間外手当に当たる部分が明らかにされていなかったため、基本給と時間外手当を判別することができないと指摘。このため、「病院の医師に対する年俸支払いによって、時間外手当が支払われたと言うことができない」と結論づけ、労働基準法37条などで定められた方法で算定した時間外手当を全て支払ったかどうかなどを審理するために、高裁に差し戻した。

 医師の代理人弁護士の新井隆氏は、差し戻しの理由として基本給と時間外手当が明白に区分されていないことが挙げられていることから、従来の最高裁判例に準拠した判断であるとの認識を示した上で、同様に明白に区分されていない契約形態の医師に影響が及ぶ可能性はあるとしたものの、「もっと医師の働き方全体を判断してほしかった」と述べた。また、もともと懲戒解雇を受けて地位確認を求めた訴訟だったため、その点が二審で退けられ、上告も受理されなかったことへの不服も示した。

 一方、病院側の代理人弁護士の最所義一氏は、「私どもは、医師であることの特殊性などを踏まえた、実態に則した判断を求めていたが、最高裁は全く判断しなかった」と判決への不満を述べた。

判決理由の要旨は以下の通り。
使用者が労働者に対して労基法37条の定める時間外手当を支払ったか否かを判断するためには、時間外手当として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労基法37条などに定められた方法により算定した時間外手当の額を下回らないか否かを検討することになる。
 この検討の前提として、労働契約における基本給などの定めで、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外手当を判別できることが必要である。
原告医師と被告病院の間で、時間外手当を年俸1700万円に含める旨の合意がされていたが、このうち時間外手当に当たる部分は明らかにされていなかった。そのため、この合意によっては、年俸のうち時間外手当として支払われた金額を確定することすらできず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外手当に当たる部分を判別することができない。従って、医師に対する年俸の支払により、時間外手当が支払われたと言うことはできない。
原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中時間外手当及び付加金の請求に関する部分は、破棄を免れない。病院側が、医師に対し、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として労基法37条などに定められた方法により算定した割増賃金を全て支払ったか否か、付加金を命ずることの適否及びその額などについてさらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。
参考:労働基準法から抜粋
 第37条1項 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1カ月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

二審までの経緯
 男性医師と民間病院は、年俸1700万円、週5日勤務で就業時刻は午前8時30分から午後5時30分(昼休憩1時間)、時間外勤務は時間外規定の定めによる、などとする雇用契約を2012年4月1日付けで締結。同院では、時間外規定について、時間外割増賃金(時間外手当)の支払対象となる時間外勤務の時間を「勤務日の午後9時以降、翌日の8時30分までの間、および休日に発生する緊急業務に要した時間とする」と規定。ただし、「通常業務の延長とみなされる時間外勤務は時間外手当の対象とならない」としており、雇用契約による就業時刻を終えた午後5時30分から、午後9時の間に勤務した分の時間外手当が年俸に含まれるか否かが争われていた。

 判例では、時間外手当の一部が年俸に含まれるとの合意には、時間外手当としていくら支払われているかを把握できるよう、賃金のうち基本給部分と時間外手当が明白に区別できる必要がある(明白区分性)とされている。しかし、2015年4月の一審の横浜地裁判決は、「通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外手当に当たる部分とを判別することができないと言わざるを得ない」としながらも、「年俸に時間外手当が含まれることを否定する理由にはならない」として、時間外手当が年俸に含まれるとの合意があったことを認定。この合意は医師としての職務や責任に照らし合理性があり、原告が自らの労働を裁量で律することができ、年俸が1700万円と好待遇である、などとして時間外手当は年俸に含まれると考えるのが相当とした。2015年10月の東京高裁判決も、この判断を支持。

 原告の医師側は、最高裁弁論で「原審は判別できないことを認めていながら、合意自体は有効であると判断している」と批判。こうした区別ができない合意は無効であると主張し、「医師の過重労働改善に一石を投じるべく、医療現場の実態を踏まえた判断を求める」と訴えていた。一方、被告の病院側は、「合意を無効と判断しなければならない事由が存在しないことは明らか」と述べ、一審、二審判決の支持を求めていた。



http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20170707333833.html
「過労死ライン」超えは延べ81人
新潟県立病院医師の時間外労働

【政治・行政】 2017/07/07 10:41 新潟日報

 県病院局が運営する全13の県立病院で2016年度、「過労死ライン」とされる月80時間を超える時間外労働があった常勤医が延べ81人いたことが6日、明らかになった。このうち延べ23人は100時間を超えていた。

 県病院局が県議会で説明した。県立病院の職員の所定労働時間は1日7時間45分。これ以外の時間外労働について労使が結んだ協定(三六協定)では、医師の上限を月75時間と定めている。

 県によると、16年度中に協定違反に当たる長時間労働の月があった常勤医は延べ105人。このうち延べ81人が月80時間を超え、延べ23人は月100時間を超えていた。

 全常勤医340人の1人当たりの時間外労働は、月平均で25時間だった。急患や救急救命、長時間を要する手術に携わる一部の医師を中心に、過労死ラインを超える長時間労働になっているとみられる。

 岡俊幸・県病院局長は「医師が担う業務ごとに長時間労働の内容を分析し、対策を練る必要がある。どのような対策ができるか早急に詰めたい」と述べた。

 県は県立がんセンター新潟病院(新潟市中央区)で、常勤医2人を含む職員4人に三六協定に違反する長時間労働をさせたとして、7月3日に新潟労働基準監督署から是正勧告を受けた。他の12の県立病院でも詳細な実態調査を進めている。



http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20170705333432.html
労基署が県に是正勧告
がんセンター医師ら4人 過労死ライン超え

【社会】 2017/07/05 08:20 新潟日報

 県は4日、県立がんセンター新潟病院(新潟市中央区)の常勤医ら4人に労使協定(三六協定)で定めた以上の時間外労働をさせたとして、新潟労働基準監督署から是正勧告を受けたと発表した。4人はいずれも3月に「過労死ライン」とされる月80時間を超える時間外労働をしていた。

 勧告は3日付。労基署が5~6月に調査し、判明した。同病院の労使が結んだ三六協定は、月の時間外労働時間の上限を75時間と定めている。

 県によると、3月に80時間を超える時間外労働をしていたのは医師2人と事務職員2人。医師はそれぞれ96.4時間、84.4時間、事務職員はそれぞれ92.4時間、81.4時間働いていた。

 是正勧告では「過労死ライン」を超えて時間外労働をしていたことを問題視した。また、病院として長時間労働対策を検討していなかったことや、検査薬品の危険性を医師や技師に対して注意喚起する表示を怠っていたことなどが法令違反と指摘された。

 県は同病院以外の12の県立病院でも同様の違反がないか調べる方針。県病院局総務課は「勧告を真摯(しんし)に受け止め、改善に向けて取り組みたい。今後、状況を把握して原因を分析し、具体的な対策を検討する」としている。

 医師の長時間労働を巡っては、新潟市民病院の医師の過労自殺が労災認定され、同病院が労基署から是正勧告を受けている。



http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20170704333283.html
患者、理解と不安交錯
新潟市民病院 新患制限が本格化

【社会】 2017/07/04 11:14 新潟日報

 紹介状を持たない新規患者の一般外来受け付けを3日から取りやめた新潟市民病院。勤務医の過労自殺の労災認定と、新潟労働基準監督署による是正勧告を受け、医師らの長時間労働解消を目指した措置だが、患者側は一定の理解は示しつつも「地元の医療機関で診てもらえるのか」といった不安も聞かれる。市民病院は過去にも医師や医療秘書を増やす対策を講じたが、救急搬送数の増加などで実効性が上がらなかった経緯もある。勤務医の労働環境改善と救急医療の水準維持を両立させるためには、患者の理解とともに周辺医療機関の協力が鍵を握る。

 この日市民病院を受診した患者からは「受診制限はやむを得ない」との声も聞かれたものの、複雑な心境を語る人もいた。3年前に初診料を払って通院を続けている五泉市の無職男性(76)は「自宅近くの病院は対応できる科が少なかったり、混んでいたりして困る。市民病院なら1カ所で全て検査してもらえる」と説明する。

 阿賀町から約20年間、通院を続けている無職男性(85)は「医師の過重労働は困るけれど、地元の医療機関に行けと言われても診てもらえるのか」と漏らした。

 新潟市民病院の外来患者(救急を含む)は1日約1100人。そのうち、医師の紹介状なしで初診料(医科5400円、歯科3240円)を払って一般外来を受診する患者が数人程度いたという。同病院の担当者は「ここを減らすことで、医師を含む職員全体の労働時間削減を図りたい」と狙いを説明する。

 また、市民病院に救急搬送される患者のうち、入院することなく帰宅する患者は約3割に上る。新潟市は先月上旬、「新潟市民病院緊急対応宣言」を発表。軽度の症状であれば休日や夜間の受診を控えるなど救急医療の適正利用への協力を市民に呼び掛けるとともに、市内の病院関係者と協議し、市民病院の負担軽減に向けた方策の検討を始めた。

 市医師会の藤田一隆会長は、「市民病院の厳しい状況は前々から聞いていた。周囲の病院には負担が増えるのを承知で(協力を)お願いするしかない」と理解を示す。

 新潟市では約30年前から、市内の各病院が交代で救急患者の受け入れ当番を担う「病院群輪番制」を導入。しかし、関係者によると、当番病院の空き状況や疾患の種類によっては、程度が軽くても市民病院を頼るケースがあるという。

 市内で救急医療を担う病院の関係者は「開業医を頼りなく思い、市民病院を信奉する市民もいる」と指摘。市民病院の負担軽減策に実効性を持たせるためには、患者側の理解が欠かせないとする。



http://iwj.co.jp/wj/open/archives/387698
スクープ! 国際医療福祉大学医学部に新疑惑! 認可前から国家戦略特区会議に同大学経営者が参加! 石破氏、舛添氏らも同席~民進国対委員会と岩手医科大学・小川彰理事長会合後のブリーフィング
2017.7.4 記事公開日:2017.7.4 Independent Web Journal
取材地:東京都 (取材:阿部洋地、文:城石エマ、谷口直哉、記事構成:岩上安身)

※7月5日、テキストを追加しました。

 都議選での歴史的な敗退によって、安倍政権に対する国民の信任の崩壊が誰の目にも明らかになる中、森友学園、加計学園問題に続く、第3の学園問題が浮上してきた。千葉県成田市の国家戦略特区に設立された、国際医療福祉大学医学部の疑惑である。

 2017年7月4日、民進党の「加計学園疑惑調査チーム会合」は岩手医科大学の小川彰理事長との会合を実施。会合は記者には非公開だったものの、終了後、座長を務める桜井充議員から、ブリーフィングが行われた。そこで桜井議員は、今年4月に成田の国家戦略特区に新設された、「国際医療福祉大学」の医学部をめぐり、裏で政治的なやりとりが行われていたことを裏づける証拠が出てきていることを明らかにした。

 なお、本稿の会員限定ページには、IWJが入手した国際医療福祉大学をめぐる一連の資料を全公開した。ぜひ、この機会にIWJ会員にご登録いただき、資料全文をご覧いただきたい。

記事目次

 設置事業者の公募開始前から国際医療福祉大学理事長らが国家戦略特区会議に参加していた!石破茂内閣府特命担当大臣、舛添要一都知事(当時)、小泉一成成田市長も同席
 「一般の医学部とは次元の異なる医学部に」――内閣府・文科省・厚労省の取り決めの頭越しに国際医療福祉大学が千葉県と「地域医療への貢献」を取り決めていた!?
 国際医療福祉大学 医学部新設の目的は「医師不足解消」?それとも「国際人材育成」? 国家戦略特区指定のための「二枚舌」!?
 医療業界からは当初から「国家戦略特区による医学部新設」に反対の声! 焦点は将来的な「供給過剰」問題
 民進党国体委員会が公開した資料を全文掲載!

■ハイライト(全編動画の尺は12分になります)

※会合はマスコミ非公開で行われ、頭撮りと会合後のブリーフィングでは、民進党・桜井充議員が発言しています。

議題 国家戦略特別区域制度に基づく国際医療福祉大学について
講師 小川彰氏(岩手医科大学理事長)
日時 2017年7月4日(火) 16:00~
場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
設置事業者の公募開始前から国際医療福祉大学理事長らが国家戦略特区会議に参加していた!石破茂内閣府特命担当大臣、舛添要一都知事(当時)、小泉一成成田市長も同席

 出てきた証拠とは、2014年10月1日に行われた「東京圏国家戦略特区会議第1回」の議事次第で、そこには、国家戦略特区担当の石破茂内閣府特命担当大臣(当時)と、舛添要一都知事(当時)、小泉一成(こいずみ かずなり)成田市長、阿曽沼元博・瀬田クリニックグループ代表(元厚労省研究員)らとともに、国際医療福祉大学の高木邦格理事長(代理:矢崎義雄総長)が出席者として明記されている。設置事業者の公募が始まる2015年11月12日よりも、前の話だ。

第1回東京国家戦略特別区域会議出席者名簿

 *石破  茂 内閣府匿名担当大臣(国家戦略特別区域)
 *舛添 要一 東京都知事
 *黒岩 祐治 神奈川県知事
 *小泉 一成 成田市長
  木村 惠司 三菱地所株式会社 代表取締役会長
  竹内  勤 慶応義塾大学病院 院長
  阿曽沼元博 医療法人社団滉志開瀬田クリニックグループ代表
 *高木 邦格 学校方針国際医療福祉大学 理事長(代理:矢崎 義雄 総長)

▲「東京圏国家戦略特区会議第1回」の議事次第。すでに国際医療福祉大学理事長の名が記載されている(以下マーキングはIWJによる)。

 桜井議員は次のように述べた。

 「この時点(2014年10月1日)から、成田市で国家戦略特区を使って国際医療福祉大学が医学部を新設できるようにしていきましょう、ということが始まっています。ですから、成田が指定されて大学が組んでやっているんですから加計の時とまったく同じ様な構造なんだろうと、そう思います」

 つまり、今治での獣医学部新設が「加計ありき」で進められたように、成田では「国際医療福祉大学ありき」だった、とみられるのである。

 その後、2014年12月17日に成田で行われた「成田市分科会第1回」議事次第によると、藤原豊・内閣府地域活性化推進室次長(当時)と、小泉成田市長らとともに、矢崎総長ら4人の国際医療福祉大学の重役が参加している。

(表 略)

▲「成田市分科会第1回」議事次第。ここにも国際医療福祉大学関係者の名が確認できる。

 なお現在、成田市のホームページ上では、国際医療福祉大学や国家戦略特区に関連するページが削除されてしまっている。なぜなのだろうか?

「一般の医学部とは次元の異なる医学部に」――内閣府・文科省・厚労省の取り決めの頭越しに国際医療福祉大学が千葉県と「地域医療への貢献」を取り決めていた!?
 さらに、公募以前の2015年7月31日に行われた内閣府、文科省、厚労省の3省会合では、「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針(案)」がまとめられ、そこでは「国家戦略特区の趣旨を踏まえ、一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部とは次元の異なる、上記の目的に沿った際立った特徴を有する医学部とすること」が決定された。

(表 略)

▲国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針(案)【PDF】

 一般の臨床医を養成するのを目的としないとは、どういうことか。日本の医師免許という、国家資格の取得にこだわらない、という意味にしか読み取れない。留学生を招き、外国人教員が英語で授業し、あげく日本の医師の資格にはこだわらずに、世界各地へ「無資格」のまま旅立ってゆく――。

 本当に、設立趣旨の意味がまったくわからない。医師免許を持たない者を医学部で養成してどうするのか?しかも留学生や外国人教員にウエートを置き、英語で教育を行うことを、何のために日本国民の税金でやらなくてはいけないのか。明らかなことは、千葉県の成田市という地元に根づいて地域医療を担う、日本の医師免許をもった医師の養成は目指していないらしい、ということである。

 ところがここでも、別の文書を見ると、まったく矛盾したことが話しあわれていたことがわかる。2017年3月27日付けで、千葉県と国際医療福祉大学が、「(国際医療福祉大学が新設する)医学部において地域医療に関する教育を行うものとする」と取り交わした協定書である。

(…会員ページにつづく)



http://blogos.com/article/233004/
赤字22億円「東京女子医大」の危機的状況
PRESIDENT Online2017年07月06日 09:15  BLOGOS

都内の名門私立病院が、次々と経営難に陥っている。東京都新宿区にある「東京女子医科大学病院」は、医療事故を境に、2年間で19万人も外来患者が減った。その結果、3年連続の赤字に陥り、医師への給与も満足に払えない状況となっている。だが、これは女子医大だけの問題ではない。背景には医療制度の構造的な問題がある――。

■ 賞与は「本給部分の1.6カ月」

東京の医療が崩壊するのは、もはや時間の問題のようだ。前回、聖路加国際病院の苦境を紹介したが、(http://president.jp/articles/-/21994)最近になって、『週刊現代』(7月8日号)が「赤字22億円このままでは名門東京女子医大(以下、女子医大)が潰れる」という記事を掲載した。私もコメントした。

この記事を読んだ友人(女子医大OB)から「以前から聞いていましたが、ここまでひどい状況になっているとは驚きです」とメールが来た。医療関係者の間で話題となっているようだ。この記事は、女子医大の吉岡俊正理事長が、6月7日に教職員へ送った文書から始まっている。

「平成28年度の収支差額は22億円の赤字で3年連続の赤字となりました」
「3年連続の赤字により、現在の本学には現預金の余裕は全くありません」
「これ以上、医療収入が減少しますと、法人存続にかかわる危機的な事態になります」

こうした理由から上半期の賞与は「本給部分の1.6カ月」(前年度は2.35カ月+扶養手当2カ月)だという。

職員宛の文書で、吉岡理事長は「大変厳しい決定ですが、本学の現状を踏まえた判断です」「現状に対する職員の意識を高め、改善・改革のための具体的な行動が必要です。患者さんが戻り、医療収入増加に貢献する、あるいは経費削減により収支改善に貢献することがないか、各職員一人一人が当事者意識を持ち、真摯に考え、行動をしてください」と呼びかけている。

■ 2歳児に麻酔薬を大量投与

女子医大の転落のきっかけは、2014年2月、2歳の男児が麻酔薬「プロポフォール」を大量投与されて亡くなった医療事故がきっかけだ。

事故を受けて、厚生労働省は特定機能病院の承認を取り消した。事故の前、女子医大の収入に占める補助金の割合は9.3%だった。15年度の決算では4.1%にまで減っている。患者も減った。過去2年間で外来患者は約19万人、入院患者は約7万3000人減った。

だが、女子医大の幹部の危機意識は希薄で、派閥抗争に明け暮れた。吉岡俊正理事長一派は、この事故の責任を問うとして衣笠宏・学長、高桑雄一・医学部長(いずれも当時)を解任し、法廷闘争を仕掛けた。

前出の女子医大OBは「患者を紹介しようとしても、理事長派と学長派の対立が医局の内部部にまでおよんでいるのか、手術をしてもらえませんでした。これじゃ患者も減ります」と嘆く。

女子医大の「身から出たさび」という見方も可能だが、事態はそれほど単純ではない。なぜなら、昨今の医療費の抑制政策が続く限り、都内の総合病院が破綻するのは避けられないからだ。女子医大は、医療政策の被害者という側面もある。背景を解説しよう。

高齢化が進むわが国では、医療費の抑制は喫緊の課題だ。政府はさまざまな政策を打ち出している。

患者は増えるのに、医療費の総額が抑制されれば、医療機関の利幅は薄くなる。この政策が続けば、やがて破綻するところがでてくる。

■ 女子医大は例外ではない

意外かもしれないが、もっとも「被害」を受けやすいのは首都圏の病院だ。それは、我が国の医療費は厚労省が全国一律に決めているからだ。田舎で治療をうけても、東京の銀座で治療を受けても、医療費は同じなのだ。もちろん、土地代や人件費などのコストは違う。医療費を下げ続ければ、真っ先に破綻するのは、首都圏の病院だ。

私の知る限り、この問題を初めて取り上げたのは、情報誌『選択』の2015年9月号だ。<私大医学部で「経営危機」が続々 破綻寸前の「首都圏医療」>という記事を読めば、女子医大が例外でないことがわかる。

もちろん、この記事でも女子医大は取り上げられている。だが、それ以上に経営状態が危険とされたのは日本医科大学付属病院(以下、日本医大)だ。

■ 日本医大の経営危機の深刻さ

日本医大は、1876年(明治9年)に越後長岡藩医であった長谷川泰が設立した済生学舎を前身とする、日本最古の私立医大だ。慶應大、慈恵医大とともに戦前に設立された3つの医学部の一つである。現在も東京を代表する医療機関で、都立墨東病院などと並び、脳卒中や交通事故など一刻を争う救急患者を治療する三次医療機関の中心を担っている。

日本医大が公開している財務諸表によれば、2014年度の売上高利益率はマイナス19.4%で、158億円の赤字。総資本を自己資本で割った財務レバレッジは349%と大幅な借金超過で、流動比率(流動資産と流動負債の比)は70%だ。

流動比率は、負債の短期的な返済能力を見る指標のひとつだ。税理士の上田和朗氏は「企業の経営状態を判断する際のもっとも重要な指標の一つ」と言う。流動比率は、流動資産が流動負債より多いか否かを示し、通常は120%以上あるのが望ましいとされている。日本医大の経営危機がいかに深刻かご理解いただけるだろう。

日本医大は経営再建に懸命だ。2016年度の財務諸表によれば、医療収入は747.7億円で対前年比2.4%%(17.6億円)の増だった。支出は賞与や時間外勤務を減らし、予算対比で12.5億円も減らした。この結果、決算は黒字となった。

ただ、それでも固定比率は292%もあり、有利子負債は629億円だ。前出の上田氏は「人件費を削り、医療収入を増やしている。経営は改善されつつあるものの、借り入れ体質は変わらない」という。日本医大の苦戦は続きそうだ。

なぜ、最近になって、首都圏の一流病院が経営難に陥ったのだろう。

きっかけは2014年の消費税増税だ。病院は医薬品などを仕入れる際、病院は消費税を負担するが、患者には請求できない。このため消費税が「損税」となってしまうのだ。

■ 開業医が優遇され、病院が割を食う

これは、自動車など輸出企業の置かれた状況とは対照的だ。輸出品は海外での販売時に課税されるため、消費税が免除されている。多くの企業は仕入れなどで消費税を負担しているため、その差額を政府から還付される。2015年8月24日の朝日新聞に掲載された<病院経営「8%」ショック>の記事の中で、税理士で元静岡大学教授の湖東京至氏は、大手自動車メーカー5社が14年度に受け取った還付金の総額を約6000億円と推計している。

もちろん、厚労省も損税問題を認識している。損税を補填するため、2014年に診療報酬を全体で1.36%引き上げた。しかしながら、これでは不十分だ。特定の診療行為の値段を上げるだけで、損税問題を解決できるはずがない。必ず不公平が生じる。一般論だが、日本医師会の中核を占める開業医が優遇され、病院が割を食う。

19年10月には消費税が10%に上がる。財務省は診療報酬の減額を目指している。今後、診療報酬が大幅に増額されるとは考えにくい。生き残るには、必死にコストをカットするしかない。

病院経営での最大のコストとは何だろうか。それは人件費だ。多くの病院でコストの50-60%を人件費が占める。その中でも、特に問題となるのは看護師の人件費だ。看護師は、病院スタッフでもっとも多い職種であり、一般的に高給取りだからだ。

■ 都内看護師の平均年収は約523万円

『看護師になる2016』(朝日新聞出版)によれば、都内の総合病院に勤務する25歳の看護師の給与は、額面で37.1万、ボーナスは約100万円だ。年収にすると約550万円となる。ちなみに日本人の給与所得者の平均年収は420万円(平成27年分民間給与実態統計調査結果)だ。

看護師の給与には大きな国内格差がある。「都道府県・看護師税込推定給与総額(円)」という図をご覧いただくと、関東から近畿地方にかけて高く、東北地方や九州・四国・中国地方が安いことがわかる。

日本看護協会によると、東京都の看護師の平均年収は523万円。全国平均の473万円より1割ほど高い。病院の利益率は通常数%程度だ。看護師のコストがこれだけ違うと勝負にならない。このデータは2008年のもので少し古いが、この傾向は現在も変わらないだろう。

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図上:日本看護協会調査研究報告No.80 2008を元に、近藤優実氏が作成。/図下:平成19年度全国物価統計調査報告、08年日本看護協会調査研究報告、平成24年衛生行政報告例を用いて、近藤優実氏(東京医療保健大)が作成。

なぜ首都圏の看護師の人件費が高いのだろうか。それは首都圏で看護師が不足しているからだ。「都道府県別物価補正後の看護師月給と看護師数」という図では、人口当たりの看護師数と看護師の給与の関係を示している。なお看護師の給与は都道府県の物価で補正している。

病院経営は工場経営に似ている。首都圏のように人件費の高いところは不利だ。最近、九州や東北地方の病院が首都圏に進出しているが、これは地方病院のほうが財務力に余裕があるためだ。

では、首都圏の病院は、どのようにしてコストを切り詰めているのだろうか。実は、もっとも切り詰めているのが医師の人件費だ。東京には大勢の医師がいる。特に大学の場合、教授や准教授になりたい医師は掃いて捨てるほどいる。供給が多ければ、価格は下がる。ここにも経済原理が働く。

■ 准教授の手取りは30万円代

東京大学医学部の後輩の40代の医師で、現在、都内の大学病院の准教授を務める人物は「手取りは30万円代です」とこぼす。彼の妻は専業主婦で、2人の子供がいる。家賃、食費、教育費を稼がねばならない。

彼は生活のために、アルバイトにあけくれている。毎週1日は都内のクリニックで外来をこなし、週末は当直を務める。これで月額50万円程度を稼いでいる。

こんなことをしていると、肝心の診療がおろそかになる。最終的に、そのツケは患者が払うことになる。前出の医師は、「昼間、病棟には研修医しかいません。スタッフは外来、手術、そしてアルバイトに行かないといけないからです」と言う。これでは、入院患者の治療は二の次になる。

その結果が、2014年2月に女子医大で起こった医療事故だ。頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳の男児が、3日後に急性循環不全で亡くなった。その後の調査で、人工呼吸中の男児が暴れないように、小児への使用が禁止されている麻酔薬プロポフォールを用いたことが判明した。成人用量の2.7倍も投与されていたそうだ。女子医大が依頼した第三者委員会は「投与中止後すぐに人工透析をしていれば、男児の命は助かった可能性があった」と指摘している。

■ 組織改革では医療事故はなくならない

さらに、女子医大では、小児に対するプロポフォールの過量投与が常態化していたことも明らかになった。14歳未満の55人に対し、合計63回投与されていた。今回の医療事故は氷山の一角だったのだ。

女子医大は、医療安全体制を見直し、2015年2月6日には「平成26年2月に発生いたしました医療事故の件」という声明を発表した。この中で、「法人組織での『医療安全管理部門』の設置」や「病院長直属の外部委員により構成する病院運営諮問委員会の新設」などの15項目の提言を行っている。だが、事態を重くみた厚労省は、女子医大の特定機能病院の承認を取り消した。

私は、このような組織改革や厳罰では、医療事故はなくならないと思っている。むしろ、ますます医療安全体制は損なわれるだろう。承認の取り消しは、女子医大の経営を悪化させるだけだ。

実は女子医大では2002年にも特定機能病院の承認を取り消されている。2001年3月、12歳の患者が人工心肺装置の操作ミスで死亡するという医療事故を起こしたからだ。この事故は、操作を担当した医師が逮捕されるという刑事事件にもなった。女子医大は、今回と同様に安全管理体制の改善に努め、遺族の理解も得られたため、2007年8月に再承認を受けている。ところが、この時に議論された安全対策は、その後、有効に機能しなかった。

私は当たり前だと思う。女子医大に限らず、首都圏の私大病院において、医療安全対策の最大の課題は「アルバイトの合間に診療する無責任体制」だからだ。ところが、これは女子医大の経営を考えれば、やむを得ない。医師の給与を下げるかわりに、アルバイトを許可しなければ、やっていけない。

■ 東京の高度医療を担う私大病院の危機

女子医大は名門病院だ。普通に診療していれば、スタッフ医師が今回のような過量投与を見落とすはずがない。「患者の安全性よりアルバイト」という医師の都合が優先されたため、急変時の対応が後手に回ったのだろう。この問題は、組織論や職業倫理だけでは改善しない構造的な問題だ。解決するには医局員の立場にたった実効性のある対策が必要だ。

東京の医療の中核を担っているのは、私立の大学病院だ。東京都に本部を置く医学部は13あるが、このうち11は私立医大だ。

こんなに私大病院が多い地域は東京だけだ。東京の次に私大病院が多いのは神奈川県と大阪府だが、いずれも3つだ。東京の高度医療は、私大病院が担っていると言っても過言ではない。だが、私大病院は、経営が悪化すれば「倒産」するしかない。女子医大や日本医大は、その瀬戸際にある。

このまま無策を決め込めば、いくつかの東京の医大は必ず破綻に追い込まれる。経営者の責任追及だけでなく、患者保護の視点から建設的な議論が必要だ。

(医療ガバナンス研究所 理事長 上 昌広 写真=時事通信フォト)



http://univ-journal.jp/14693/
2018年実施の医師国家試験に4つの変更点 厚生労働省が公表
大学ジャーナルオンライン編集部

 厚生労働省は、2017年7月3日、2018年に実施予定の「第112回医師国家試験」において、出題数をこれまでの合計500題から100題減らし400題に、また、試験日程を3日間から2日間へ変更することなど、4つの変更点を公表した。

 第112回医師国家試験は、2018年2月10日と11日に実施予定で、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、“医師として具有すべき知識及び技能”を試験する。
変更点は4つあり、1つ目は、出題数。これまで200問出題されていた必修問題以外の一般問題を100題減じ、合計500題→400題へ変更。減らす問題の内容は、医学部生が5~6年時の臨床実習前に必ず受ける共用試験と重複する「医学各論」「医学総論」だという。

 2つ目は、試験日数で、出題数の見直しに伴い3日間から2日間へ変更となる。
3つ目は、配点。必修問題以外の臨床実地問題の配点は、これまで1問3点だったものを1問1点採点にする。
4つ目は、合格基準。必修問題以外の一般問題と臨床実地問題は、これまで各々で合格基準を設定していたものを、一般問題と臨床実地問題の得点の合計について合格基準を設定する。

 厚生労働省の医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会は、2014年6月から医師国家試験の評価と改善について議論を行ってきた。2015年3月30日に提出した報告書では、『今後の卒前教育や医療を取り巻く状況を踏まえ、具体的な方向性としては、単に知識を問う問題ではなく、例えば、症候から優先順位を考慮しつつ鑑別診断や治療方針の選択を進めていくという臨床医の思考過程に沿った、臨床的な応用力を問う問題を出題するため、出題傾向として「臨床実地問題」に、より重点をおくこととする』と説明している。

参考:【厚生労働省】
第112回医師国家試験における変更点について
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/oshirase/112ishi_henkouten.html
医師国家試験の施行について
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/ishi/



http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB07H5S_X00C17A7L72000/
戸田中央医科、返済不要の奨学金PR 医師の卵確保
2017/7/8 7:01日本経済新聞 電子版

 首都圏を中心に28病院を運営する戸田中央医科グループ(TMG、埼玉県戸田市)は、医師の確保策を強化する。新人医師の確保策として、7月から同グループへの就職で返済不要とする、大学医学部の奨学金制度を高校などに直接PR。「医師の卵」を囲い込む。埼玉県は人口10万人あたりの医師数が全国最低で、人材確保とともに地域医療の維持にも寄与したい考えだ。

 TMGでは今月20日まで、2018年4月の医学部入学をめざす高校生らを対象に必要な費用を貸す奨学金制度の奨学生を募集している。大学入学の支度金として100万円、授業料として毎月20万円(最大6年間・計1440万円)を貸与する制度で「サラリーマン家庭でも私立医学部に入学できる奨学金」とうたう。

 医学部を卒業して初期臨床研修を受けた後、医師としてTMGの病院で9年以上勤務すれば返済を免除する。地域医療の担い手を確保する狙いで10年度に創設したが、ホームページでしか告知しておらず、奨学生もほぼ年2~3人にとどまっていた。

 奨学金を利用した初の卒業生2人が4月にTMGへの就職を果たしたことを機に、採用活動の見直しに着手した。今月からは採用担当者が高校を訪問し、奨学金や就職について直接説明する。訪問は通年行い、公立の進学校を中心に18年度以降卒業予定の学生にも利用を促す。

 このほか、医学部への進学者の多い首都圏の高校や大手予備校を対象に、制度を周知するダイレクトメールを約300通送った。制度の利用希望者が多い場合には高校在学時の成績などを基準に選考、毎年5人程度の奨学生確保を目指す。

 医学生の就職は大学病院の多い都内に集中しがちで、地域医療の担い手が確保しにくい状況が続いている。TMGの担当者は「先手を打たなければ採用環境はさらに厳しくなる」と語る。

 現役医師の確保策では、16年4月にグループ全体の医師の採用を専門的に担う「医師招聘(しょうへい)部」を設置。医師と病院をマッチングする紹介会社に同グループの病院を知ってもらう見学会を開くなど、優秀な人材確保に向けた売り込みも加速させている。

 埼玉県は人口10万人あたりの医師数が全国で最も少なく、高齢化の進展に伴い医師不足が深刻化すると懸念されている。地元就職を条件とした返済不要の奨学金制度は県も10年度に創設しており、危機感は共通している。TMGは「各地で地域密着型の医療を提供しているグループならではの強みを生かし、地元での医師の就職を後押ししたい」としている。



http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20170704/CK2017070402000003.html
13病院連携し新研修システム 医師確保で県検討
2017年7月4日 中日新聞 滋賀

 県議会六月定例会議は三日、再開し、六人が一般質問した。県内での医師確保策について、藤本武司健康医療福祉部長は、県内十三の臨床研修病院が連携した研修システムの構築へ向け、検討を始めたことを明らかにした。佐藤議員の質問に答えた。

 県医療政策課によると、新たな研修システムは、専門性を高める三年程度の後期臨床研修を想定。各病院の指導医による会議を設置し、六月から議論を進めている。各病院ごとに強みのある診療科があるため、研修期間内に研修医が、各病院を行き来して研修することなどを検討している。

 国家試験に合格した医師に義務付けられている二年間の初期臨床研修では、県内の研修病院で約百二十人の定員枠があり、近年は百人前後の採用が続いている。初期研修を終えた医師が県内で後期研修を続ける「県内定着率」は、過去十年の平均で七割弱という。

 同課の担当者は「臨床研修で県内病院を選んでもらうことが、医師確保の一歩になる」と話している。

 (角雄記)



http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20170707/2744299
若手医師の学ぶ場開設 自治医大と4病院連携 栃木
7月7日 朝刊 下野新聞

 「自治医大しもつが地域臨床教育センター」の開所式が6日、栃木市大平町川連の「とちぎメディカルセンターしもつが」で行われた。同大の若手医師らが地域医療の現場で学ぶ拠点となる。

 同大は昨年7月、メディカルセンターしもつがなど県内4病院とセンター設置を締結した。研修医や学生を各病院へ派遣し、生活習慣病など慢性疾患の対応を学ぶ。主に高度急性期医療を担う同大の教育を補完する。

 同病院側も医師が指導医として研修医の教育に当たることで、医師のスキルアップや病院の活性化を図る。在学中に地域医療を経験させることで、卒業後などにはより地域で就職しやすいシステムを構築し、将来的な医師確保につなげる狙いがある。



http://blogos.com/article/233262/
あの女子医大でも赤字 ていうか補助金なければ病院経営なんて赤字のビジネスモデル
中村ゆきつぐ2017年07月07日 11:23 BLOGOS

週刊現代記事です。(赤字22億円!名門・東京女子医大が「危機的状況」に陥っていた 職員向け「決算報告書」をスクープ入手)そしてあの上先生が解説されています。(赤字22億円「東京女子医大」の危機的状況 2年間で19万人も患者が減った)

私は
1 補助金がなければ基本赤字の診療報酬
2 病院経営を素人がやるとかえって逆効果

この2点で思っていることを書きます。

1 みなさんご存じないでしょうが、今の保険医療制度では救急含め重症患者を診れば診るほど病院は赤字になります。ではなぜ救急などが成り立っているのか。それはある一定条件を保つと救急指定病院の宣言をすることで自治体から補助金がもらえるからです。お金で救急医療を維持する方法、でも今のやり方は正直機能していません(1)、(2)。昔(2013年!)書いた3次救急の受け入れ不能問題もこんなことが原因でした。そして医師の少ない埼玉は特に問題です。(それこそ補助金だけもらって患者を診ていない病院もあるとのことです。)

救急の補助金と同様に、大学病院には高度な医療を行うということで特定機能病院という補助金がつきます。高度な医療はお金がかかります。そう補助金なしでは特定機能病院はなかなか利益が出にくいビジネス形態なんです。だからこれがなくなった女子医大病院は正直経営的に火の車なのです。(それこそ今は群馬大も大変です。)

2 経営を良くするため、病院は儲かりやすい保険点数が高い医療を多く実施したり、ある条件をクリアすれば補助金が付く医療に重点を置くことが多くなっています。(手術、外来化学療法など)まあそれもある程度は仕方がないことで医療者がなんとかうまくできる経営努力です。

でもそれ以外の人事だとか経営の効率だとかは経営のプロではない医療者はそれほど上手じゃありません。まして扱う人事が医師や看護師という特殊な人材。会社経営のプロは医療者の特性をあまり知りません。

待遇が気に入らなければ今の医療者の雇用市場ではさっさと辞めていきます。そこに女子医大という名門という看板は通用しません。この記事の人事含めた経営方針は本当医療者に反感をかったのでしょう。そして人がいなくなればその病院は廃れるのみです。それを事務方がわからないと悪循環は続きます。だから以前聖路加は頑張っていると書いたのです。

まとめ
医療を良くするために何をしなければいけないのか。

患者の命を守るためには病院が赤字にならないようにすることは必要条件です。そう真面目に正しい医療を行えばしっかり病院が儲かるように点数を変える必要があります。医療費の消費税も取るようにすべきです。(今医療の材料費には消費税がかかり、患者さんの医療費には消費税がありません。だから病院はどんどん赤字に)

だって病院が儲からないと新たに人なんて雇えません。医師だってバイトに行かなきゃ東京でまともに暮らせません。そう考えると赤字の病院に働き方改革なんてできるわけがありませんし、結果安全な医療はできません。

ただ今東京ではすでに患者の奪い合いが始まってきているとのこと。私が一番恐れているのは病院が潰れないために下手すると無意味な医療が横行する可能性です。あの生活保護患者を食い物にした病院のように。

公共の福祉と割り切ることも一つの考えです。だって補助金の投入はすでに行われているのですからもっと効率的にやればいいのです。まあ行政の介入(税金の投入)がなければ今後病院の倒産はどんどん広がっていくと思われます。

と言いながら今回の女子医の経営者が従業員に出した手紙は半分脅しの可能性もあるんですけどね。

1: http://www.nikkeibp.co.jp/aging/article/innovator/20120711/01/01.html
2: http://www.nikkeibp.co.jp/aging/article/innovator/20120718/01/01.html
3: http://blog.livedoor.jp/dannapapa/archives/3735682.html



https://mainichi.jp/articles/20170708/ddm/008/040/076000c
新専門医
来春導入へ 基準統一、診療の質向上狙う

毎日新聞2017年7月8日 東京朝刊

 医療の質の向上を目的にした新専門医制度について、制度を運営する日本専門医機構は7日、来年4月からスタートさせることを決めた。今年4月から開始の予定だったが、医師の偏在につながるなどと反発にあい、先送りされていた。

 当初の制度案では研修を実施する基幹病院が都市部の大学病院に集中していたため、地域医療が崩壊するとの反論が日本医師会や病院団体から上がり、延期につながった。対策として機構は、東京都、神奈川県、愛知県など5都府県で受け入れる各診療科の医師数は、過去5年の採用実績の平均値を原則超えないように定員を設定する運用細則を定めた。

 現在の専門医制度は、外科や皮膚科などの各診療科ごとに100種類以上あり、各学会がそれぞれ認定するため質のばらつきが大きい。機構が統一した基準で認定することで質の向上を図る。同日記者会見した機構の松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は新制度について「国民にとって信頼できる専門領域の医者であることを医学界が保証するということだ」と述べた。【野田武】



http://www.medwatch.jp/?p=14566
新専門医研修プログラム、都道府県協議会で地域医療を確保する内容となっているか確認―厚労省
2017年7月3日|医療計画・地域医療構想 MedWatch

 新たな専門医制度によって、地域における医師の偏在が生じることなく専門医の質を高める体制が構築されるよう、▼都道府県▼市町村▼医師会▼大学▼病院団体▼基幹施設—などによる協議の場「都道府県協議会」で、専門医の研修プログラムに関して「従来、専門医を養成していた医療機関が、専攻医受け入れを希望する場合に連携施設となっているか」などを確認し、必要な調整を行ってほしい—。

 厚生労働省は6月27日に、通知「専門研修プログラムの認定に向けた各都道府県の役割等について」を発出し、都道府県の担当者にこのような要請を行いました。

協議会の調整内容や活動実績を厚労省に報告するよう要請

 新たな専門医制度の2018年度全面スタートに向けた検討が各所で続けられています。専門医の認定と、研修プログラムの認証を学会と日本専門医機構が共同して行い、「専門医の質を担保し、国民に分かりやすい」専門医制度とすることが狙いですが、例えば研修を行う施設の基準が厳しく、「地域で医師の偏在が進んでしまうのではないか」などの懸念もあります。

 そこで厚労省は「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」を設置し、「専門医の質の担保」と「地域医療の確保」とを両立する方策について議論を行っています。その中では、都道府県ごとに地域の関係者が集い、地域の医師偏在が助長されないかなどをチェックし、必要があれば改善を行っていく仕組み(都道府県協議会)をより強固なものとすべきとの指摘が出されています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。

厚労省はこの指摘を重く受けとめ、都道府県協議会の役割などを今般の通知で改めて明確にしたものです。通知の骨子は次の4点に集約できます。単に都道府県協議会を設置するだけでなく、具体的な活動(研修プログラムの確認や必要な調整)を求め、その実績報告を求めることで、実効性を確保することを狙っています。

(1) ▼都道府県▼市町村▼医師会▼大学▼病院団体▼基幹施設―などによる「都道府県協議会」において、研修プログラムに関する情報を共有し、確認、検討などを行う
(2) 都道府県協議会において研修プログラムの確認、検討などを行った後、地域医療確保の観点から改善が必要な事項を日本専門医機構へ提出し、日本専門医機構と連携して改善事項などについて調整する
(3) 都道府県で調整に努めたにもかかわらず状況が改善しないような場合には、適宜、厚労省に報告する
(4) 調整終了後、プログラム認定前に、管内のプログラムについての調整結果を都道府県協議会で確認した旨、都道府県協議会の活動実績を厚労省へ報告する

具体的には、「研修プログラム」における基幹施設・連携施設の▽施設名▽指導医数▽研修実績▽専攻医募集数―などの情報から、例えば次のような点を確認するよう求めています。

▼都市部(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)の各基本領域学会(ただし外科、産婦人科、病理、臨床検査を除く)の専攻医総数が、「原則として過去5年の専攻医採用実績の平均値を超えない」ような募集定員数となっているか【都市部へ専攻医が集中するような犬種プログラムになっていないか】

▼従来の学会認定制度において専門医を養成していた医療機関が、専攻医の受入れを希望する場合は、連携施設となっているか【地域における偏在を招くようなことになっていないか】

▼内科、小児科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、麻酔科、救急科については、都道府県ごとに複数の基幹施設が置かれているか【大学医学部に専攻医や指導医が集中するような研修プログラムになっていないか】

▼特別な症例を経験するために必要になるなどの事情がなければ、原則として基幹施設での研修は6か月以上となっているか、また連携施設での研修は1か所につき3か月未満となっていないか【地域で必要な医師確保ができるような内容になっているか】

▼研修プログラムに記載されている経験目標に、▽病診・病病連携▽地域包括ケア▽在宅医療▽都市部以外などでの医療経験―が含まれているか【地域医療に配慮した研修プログラムの内容になっているか】

都道府県協議会では、都市部に専攻医が集中するような研修プログラムになっていないか、従来の研修施設が漏れていないか、などをチェックする(図表 略)
都道府県協議会では、研修プログラムが地域医療に配慮した内容となっているか、連携施設でも研修期間が極端に短くなっていないかなどをチェックする(図表 略)

 
 ところで6月12日の検討会では、荒井正吾構成員(奈良県知事)から「認定前には分からなかった問題点が、認定し、プログラムが稼働してから明らかになることもある」といった指摘も出されました(関連記事はこちら)。そこで厚労省は、「プログラム認定後、新たな専門医の仕組みの運用に当たって都道府県協議会が協議すべき事項」についても、別途、都道府県に宛てて通知する考えを示しています。
 


https://www.m3.com/news/iryoishin/542928
始動する“医療事故調”
“事故調”対応、「5項目とも可」の大学は47%
全国医学部長病院長会議シンポ、支援体制に差

レポート 2017年7月2日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 全国医学部長病院長会議の「大学病院の医療事故対策委員会」が、医療事故調査に関する全国80大学の支援体制を調査した結果、2017年3月時点で、「相談」「解剖」「Ai(死亡時画像診断)」「専門家派遣」「報告書チェック」の5項目について、「全て対応可」の大学は、38大学(47%)で、半数に満たないことが明らかになった。「Ai以外は対応可」23大学(29%)、「未定・不可あり」19大学(24%)。同委員会と東京都医療事故調査等支援団体連絡協議会が、都内で7月1日に開催したシンポジウムで、同委員会のアドバイザーを務める福岡大学病院医療安全管理部の中村伸理子氏が、調査結果を報告した(シンポジウムの内容は、『医療事故調査、“喧嘩”の道具に使うな!』を参照)。

 2015年10月からスタートした医療事故調査制度は、各医療機関での院内調査を基本とするため、自院で対応が難しい場合、各地域の支援団体などに協力を仰ぐことになる。特に、解剖やAiなどの体制や、各専門領域の医師を有する大学の支援は重要だが、大学によって対応に差があることが分かる。38大学のうち、「システム整備も完了」は16大学、「システム整備は未了」が22大学。

 調査では、事故調査を自院が実施した一部の大学に対し、支援を受ける立場としての状況も聞いている。「専門家派遣」「調査委員会の委員長派遣」「報告書作成支援」などを受けていたが、一部に「不要だが、提供あり」との回答もあった。事故調査の際、「外部委員」を入れることは制度上義務ではなく、シンポジウムではこの点をめぐる議論が展開された。

 調査は全国80大学を対象に実施、2016年3月と2017年3月時点での状況を聞いた。回答率は100%(一部、欠損値を含む)。今回発表したのは、速報値で今後、詳細な結果をまとめる予定。

 「500床以上」の病院への支援、44%

 医療事故調査制度では、複数ある支援団体が連携できるよう、都道府県ごとに「支援団体連絡協議会」を設置することが望ましいとされている。医師会が中心となっているが、2016年4月と2017年4月の比較では、都道府県医師会と各大学の連携が着実に進んでいた。2017年3月の時点では、80大学中、「支援手順等が決まり、支援提供」47大学、「支援手順等が決まった」25大学で、合計72大学。一方で、「支援手順が決まりつつある」7大学、「連絡協議会等を行った」1大学。

 2015年10月から2017年3月までの「のべ支援依頼数」は189例。多い大学では21例の相談を受けた一方、少ない大学では1例。支援依頼元を病床規模別に見ると、「500床以上」44%、「200~499床」39%で、合計83%を占める(137例の分析)。大規模病院でも、医療事故調査に当たっては支援を必要としていた。

 支援対応の内訳は、「専門家派遣」133例(うち3例は、依頼があったが、対応に至らず)と「報告書助言」57例(同1例)が大半を占める(164例の分析)。相談32例(同1例)、解剖27例(同8例)、Aiは13例と少ない。

 「自由意見では、医療事故の定義への疑問、事故調査報告書が裁判に利用されてしまうのではないか、非懲罰性が担保されているかといった不安、『医療事故』という言葉が、遺族に過失を連想させてしまうので、名称変更が必要ではないか、といった意見が上がった」(中村氏)



https://www.m3.com/news/iryoishin/544396
真価問われる専門医改革
「専攻医の登録、10月スタート」目指す
「2018年4月開始に向け、日本専門医機構の準備は整った」

レポート 2017年7月7日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本専門医機構は7月7日の理事会で、2018年4月からの新専門医制度開始に向けて、準備を進めることを決定した。今年10月から専攻医の登録を開始できるよう、研修プログラムの1次審査を7月中に終え、9月末までには2次審査を終了することを目指す。できれば今年内を目途に専攻医の研修先が決まるよう、準備を進める方針だ。もっとも、1次審査後に行う都道府県協議会による研修プログラムの精査など、開始に向けたハードルはまだ幾つかあり、2次審査を終えるまでは、正式に開始するとは言えない状況にある。

 理事会後に会見した日本専門医機構理事長の吉村博邦氏は、「規約的には、機構として来年4月のスタートに向けた準備が整った。今後、各方面の理解が得られるよう努力していきたい」と説明した。「専門医制度新整備指針(第二版)」は6月の理事会で了承済み。同指針の運用細則の改訂、総合診療専門医の整備基準とモデル専門研修プログラムも7日の理事会で了承され、新専門医制度に必要な規約は整ったことになる。

 日本専門医機構副理事長の松原謙二氏は、「理事会での議論の結果、来年度から始めるのがふさわしいという意見が多数だった。できれば、10月から一斉に専攻医の登録を始めたい。都道府県協議会での精査が必要なので、10月から専攻医の登録を始めないと、2次、3次募集ができなくなる」と説明。同副理事長の山下英俊氏も、「今年内を目途に決まるようにするには、10月くらいから専攻医の登録を始めないと厳しい」とコメント。

 ただし、新専門医制度については地域医療への影響を懸念する声がある現状を踏まえ、研修プログラム等に問題が生じれば、適宜修正を求めるとともに、研修プログラムをいったん認定しても、「十分な研修プログラムではないとされた場合には、取り消すことも視野に入れて、今後準備を進める」(松原副理事長)。また厚生労働省ともよく相談しながら進めることを、松原副理事長は強調した。

 2018年度の新専門医制度開始に向けたハードルは幾つかある。第一は、厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(『「基幹施設は大学のみ」残る課題、7学会にヒアリング』などを参照)。6月の同検討会の第3回会議の意見を踏まえ、運用細則を改訂したが、7~8月に開催予定の第4回会議でも、新専門医制度について議論する見通し。

 第二は、都道府県協議会での検討。各基幹病院の研修プログラムは、地域医療への影響の有無を検証するため、その所在地の各都道府県協議会で精査する。47都道府県で今夏、協議会が開催されるが、東京都など多数の研修プログラムの精査を行う地域では相当な作業量になる。

 さらに2次審査が通った各基本領域の研修プログラムを、専攻医が閲覧できるようにするための体制、専攻医の登録方法などの準備も必要になる。

 専攻医の登録は、18の基本領域については各学会が担当する。総合診療専門医については、日本専門医機構が担う。また同機構は、一人の医師が、複数の基本領域に登録していないかなどをチェックする。基幹病院等では、登録を踏まえ、専攻医の選考を行う。その結果、募集定員を上回ったり、あるいは下回ったりする場合には、登録の調整が必要になる。それでもなお、研修先が決まらないなどの専攻医のために、2次、3次募集を実施することになる見通し。専攻医の登録管理などを行うシステムを構築済みの学会もあるが、19の基本領域、かつ47都道府県で調整等を行うシステムの構築はこれからだ。

 山下副理事長は、「専門研修をしたいが、研修ができないという事態にはならない」と説明するものの、基本領域や研修施設の希望が100%かなうとは限らないとした。地域医療に配慮し、各研修プログラムに募集定員が設定されるからだ。ただ、このような専攻医の調整は、新専門医制度の開始に伴って新たに始まるわけではなく、従来から各基本領域では実施していたという。

 7日の理事会で了承された運用細則の主な改訂は2点。

 一つは、柔軟な研修への対応。新専門医制度は、研修プログラム制だが、出産・育児で中断する場合などは、研修カリキュラム制でも可能。ただし、それでもなお、柔軟な対応が難しい場合が考えられるため、(1)基幹施設等は、専攻医からの相談窓口を設け、有効な研修が行えるように配慮する、(2)専攻医は、相談窓口への相談後も、有効な研修が行えないと判断した場合には、日本専門医機構に相談できる――といった体制を整える。

 もう一つは、都道府県協議会への情報提供の在り方。(1)協議会は、基幹施設に対し、情報提供を求めることができる、(2)基幹施設は、日本専門医機構に連絡をした上で、協議会に情報を提供し、その際、遅滞なく機構にも協議会に提供した情報を報告する、(3)機構は、基本領域学会、基幹施設と協同して協議会の求めに協力する――という体制を構築する。



https://www.m3.com/news/iryoishin/543774
中央社会保険医療協議会
「医療政策が権力構造におもねる懸念」中川日医副会長
中医協委員退任あいさつ、委員と厚労省に要望とエール

レポート 2017年7月5日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、7月5日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、退任のあいさつを述べ、昨今の政治情勢を踏まえ、「日本の医療政策がその時々の権力構造におもねる形で決まっていきはしないか」と危うさを提起し、中医協委員には、丁寧で開かれた合意形成のプロセスを守ることを要望するとともに、事務局を担当する厚生労働省職員には、「医療を守る最後の砦」とエールを送った。

 中川氏は5日の総会で、同副会長の松原謙二氏とともに、中医協委員を退任した(『中川・松原日医副会長、中医協委員交代』を参照)。


  中川氏が退任のあいさつで言及したのは、2018年度診療報酬と介護報酬の同時改定や薬価制度改革の具体的内容ではなく、中医協の議論の進め方。中川氏はこれまでも、2016年12月の「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」の4大臣合意をはじめ、“外野”からの中医協への介入をけん制してきた(『「薬価制度の抜本改革、メーカーの成長戦略か」と疑念』などを参照)。

 「最近では直接の所管でない、政府の他の部門から診療報酬の細部に踏み込んだ提案が常態化し、私的諮問機関からの提案もあるが、非公開で議論の過程が見えないこともある」などと指摘し、中医協委員に丁寧な合意形成のプロセスを求めた。同時に厚労省職員には、「いろいろな立場、いろいろな部門から厳しい指摘がある」との理解を示し、「医療を守る最後の砦」としての役割を果たすようエールを送り、中川氏自身も「これからは、今まで以上にやさしく支えていく」と述べ、委員や傍聴者らの笑いを誘い、あいさつを終えた。

 中医協の任期は、1期2年、計3期まで。中川氏は、1期(2007年10月2日から2009年10月1日)、2期(2013年10月30日から2015年10月29日)、3期(2015年10月30日~2017年7月5日)。松原氏は、1期(2004年6月1日から2005年9月11日)、2期(2005年9月28日~2006年4月17日)、3期(2015年10月30日~2017年7月5日)。後任は、日医副会長の今村聡氏と、日医常任理事の松本吉郎氏。

【中川俊男・日本医師会副会長:中医協委員退任のあいさつ(全文)】

 本日で、中医協委員を退任させていただくに当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

 中医協は厚生労働省の中でも、最も重要な審議会の一つです。中医協は国民の命と健康を守る最終的な意思決定機関だと思っています。

 私は2013年10月に4年ぶりに中医協に復帰し、そのことを改めて認識しました。そして私心を捨て、弛むことなく、しかし力まず議論に臨む姿勢を貫いてきました。

 また私は、支払側委員の皆さん、厚生労働省の事務局とのやり取りを、できるだけ分かりやすく国民に発信するように努めてきました。中医協の議論を報道していただいたメディアの皆さん、この場を借りてお礼を申し上げます。

 最後に二つだけ申し上げたいと思います。

 一つは、各側委員へのお願いです。日本の医療政策は、中医協をはじめ厚生労働省の審議会で、丁寧に合意形成のプロセスを踏んで策定されています。このことが、国民皆保険としての日本の公的医療保険制度の国際的な評価につながっているのだと思います。

 しかし、最近では直接の所管ではない政府の他の部門から診療報酬の細部に踏み込んだ提案が常態化しています。私的諮問機関からの提案もありますが、非公開で議論の過程が見えないこともあります。

 このままでは日本の医療政策が、その時々の権力構造におもねる形で決まっていきはしないか、そういう危うさを感じます。各側委員には一致して、中医協の丁寧で開かれた合意形成プロセスを守り通していただきたいと心から願っています。

 もう一つは、厚生労働省の事務局、官僚の皆さんへのエールです。あなた方はわが国の医療を守る「最後の砦」です。いろいろな立場、いろいろな部門から厳しい指摘があるでしょう。巨大な力にくじけそうになることもあるでしょう。

 しかし、国民は皆さんを心から頼りにしたい、いや、頼りにしていると思います。日本の国民皆保険を守るのはあなた方です。そのために、私はこれからも支援を惜しみません。これからは、今まで以上にやさしく支えていきます。

 皆さん、本当に長い間、お世話になりました。本当にあり がとうございました。



https://www.m3.com/news/iryoishin/543879
中央社会保険医療協議会
DPC、「3群制」は維持、名称変更で賛否分かれる
DPC評価分科会が中間報告、調整係数は2018年度廃止

レポート 2017年7月5日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会(小委員長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は7月5日、診療報酬調査専門組織DPC評価分科会から、2018年度診療報酬改定に向けた、基礎係数(医療機関群)、機能評価係数II 、調整係数の検討に関する中間報告を受けた(文末を参照。資料は、厚生労働省のホームページ)。

 意見の相違が見られたのは、DPCの医療機関群の名称。基礎係数(医療機関群)については、I~IIIの3群制の維持はほぼ合意が得られたが、名称に関しては変更を求める意見と現状維持で意見が対立した。

 診療実績に基づく機能評価係数IIは、制度導入時は6項目だったが、2014年度と2016年度の改定で、後発医薬品係数と重症度係数が追加された(『DPC見直し決定、診療実態をより評価した体系へ』などを参照)。制度が複雑化、また本来の趣旨とは異なるなどの指摘があり、6項目を軸とし、追加2項目は再整理する。2018年度改定でDPC移行に伴う激変緩和措置として導入されている暫定調整係数の廃止には異論は出なかったが、廃止後に新たな激変緩和措置を検討する。

 5日の意見を踏まえ、DPC評価分科会は引き続き、2018年度改定に向けて検討を進める。

 名称変更を検討する理由について、DPC評価分科会・分科会長の小山信彌氏(東邦大学医学部特任教授)は、「医療機関と患者の双方にとって分かりにくいため」と説明。

 しかし、日本医師会副会長の中川俊男氏は、対象病院が多いIII群を「標準群」などとすると、「II群はIII群より上という認識になりかねない」との懸念を呈し、「全国で地域医療構想を進める中で、中小病院と大病院で名称に格差を付けるのは問題。医療提供体制を支えているのは、むしろ中小病院。無理に名称を変えないでほしい」と述べた。

 一方で、日本病院会常任理事の万代恭嗣氏、I~III群という表現は分かりにくい上に、「II群の方が、III群よりいいというイメージがある。序列ではない名称を考えてもらいたい」と求めた。また万代氏は、例えば、一般的で同じ疾患で受診した場合、I~III群では、医療費が異なるのは、患者にとっては分かりにくいことから、「(医療費が高いI群では)それだけの医療が提供されているのか、ということも含めて、検討が必要」とも指摘した。

 5日の基本問題小委には、2015年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告(案)も報告された。同調査は、包括制のDPC導入による影響を評価するのが目的。質評価の指標となる「退院時の転帰」が「治癒・軽快」や再入院率などの経年変化は見られなかった。

 議論になったのが、平均在院日数。健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、DPC導入の目的は、医療の効率化・標準化であることから、平均在院日数の短縮が見られていないことを問題視した。

 これに対し、小山氏は、調査は2011年度以降の経時変化を見たものであり、2003年度のDPC導入当初、I群に該当する大学病院本院の平均在院日数は30日近かったが、導入以降は短縮、今はほぼプラトーの状態にあると説明。I群の平均在院日数は、2011年度は14.57日、2015年度は13.36日だ。「今の制度では、これ以上、短くするのは難しいと思う」と述べ、短縮するなら例えば米国のように病院の周辺にホテルを作り、退院後の受け皿とするなど、DPCにとどまらない総合的な検討が必要になるとした。

 中川氏も、「平均在院日数の短縮はもう限界。5年間で1日短くすることは大変なこと。政策誘導的に、短い方が収入は上がるということで、平均在院日数を短くしているのであって、決して喜んで短くしているわけではない」と小山氏の考えを支持した。

 「機能評価係数II」、6項目が基本
 DPCの包括評価部分の点数は、「診断群分類別点数」×「医療機関別係数」で決まる。「医療機関別係数」は、(1)I群からIII群の医療機関群別の「基礎係数」、(2)各医療機関の機能に応じて変わる「機能評価係数I」(人員など医療機関の構造を評価する係数)と「機能評価係数II」(医療機関の実績などを評価する係数)、(3)「暫定調整係数」(前年度の実績を保証するための係数)――で決まる。この「暫定調整係数」は、段階的に「機能評価係数II」への置き換えが進められ、2018年度には廃止する方針。

 中間報告における対応方針(案)は下記の通り。

 小山氏は、「1-(3)」を検討事項に上げた理由について、「データ的には、II群の要件を満たしていても、III群の点数を算定した方が、点数が高い場合がある」と説明。基礎係数はII群の方が高いものの、機能評価係数IIの算定のハードルがIII群の方が低いために、こうしたケースが起き得るという。

 万代氏は、「機能評価係数Ⅱの再整理」について、「6つの係数について、基本的評価軸として位置付ける」方針を支持し、「この軸がぶれないようにしてもらいたい」と求めた。

【2018年度診療報酬改定に向けた DPC 制度(DPC/PDPS)に係るこれまでの検討状況 中間報告の対応方針(案)】

1.基礎係数(医療機関群)
(1) 医療機関群の設定方法
・現行の医療機関群の設定方法については、一定の合理性があると考えられるため、現行の3つの医療機関群を維持する。
・Ⅲ群については、現行の医療機関群の設定方法とは別に、個々の医療機関単位で評価されるべき機能について、機能評価係数Ⅱの検討の中で、適切な評価が可能かを検討する。

(2) 医療機関群の名称
・現行のⅢ群がDPC/PDPS の基本であり、Ⅰ群、Ⅱ群は、それらと異なる機能を有する医療機関であることが、より明確に表現されるような名称・順序とする。
・具体的な医療機関群の名称については、それぞれの群について適切な理解に資するような名称について引き続き検討する。

(3) 各医療機関における医療機関群の決定
・機能評価係数Ⅱの議論等も踏まえながら、複数の医療機関群の要件を満たす病院については、診療報酬改定の前年までにその意向を示し、現行のⅢ群を選択することができるような仕組みについて、引き続き検討する。
・仮に自ら選択できるような仕組みにするとしても、実際に、医療機関が、医療機関別係数を計算する前に、短期間で適切に選択できる方法となるよう考慮する。

2.機能評価係数Ⅱ
(1) 機能評価係数Ⅱの再整理
・導入時の6つの係数については、これまでの評価実績を踏まえ、各係数導入時の基本的な考え方を維持しつつ、必要に応じた評価手法の見直し等を行うことを前提として、機能評価係数Ⅱの基本的評価軸として位置付ける。
・導入後に追加された2つの係数については、それぞれの係数の目的や趣旨を踏まえて再整理する。

(2) 機能評価係数Ⅱの重み付け
・現行のⅠ群・Ⅱ群については、医療機関群ごとに、求められる機能や評価の現状を踏まえ、各項目への配分についての重み付けの是非について引き続き検討する。
・多様な機能や特性を有する病院が含まれているⅢ群については、重み付けは行わないこととする。

3.調整係数
(1) 調整係数の置き換え
・調整係数は、2018年度に、機能評価係数Ⅱへの置き換えを完了する。
・重症度係数については、設定の目的や趣旨を踏まえ、激変緩和措置の見直しと併せて、機能評価係数Ⅱとは別の手法による対応を検討する。

(2) 激変緩和措置の取扱い
・診療報酬改定により医療機関別係数が大きく変動すると見込まれる病院について、これまでと同じ激変緩和措置の継続では、同様な対応を反復する可能性があることから、その要因に応じた新たな対応を検討する。



http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20170706/CK2017070602000032.html
県立3病院の赤字拡大、6億円超す 16年度
2017年7月6日 中日新聞 滋賀

 県立病院の二〇一六年度の決算速報で、純損益は六億三千六百万円の赤字となり、赤字幅が前年度から三億五千五百万円拡大したことが分かった。五日の県議会委員会で、県病院事業庁が報告した。

 決算は成人病センター(守山市)、小児保健医療センター(同)、精神医療センター(草津市)の三病院の合計。速報では、病院ごとの決算の内訳を明らかにしていない。

 県病院事業庁によると、成人病センターの新病棟のオープンに伴って医師や看護師らの人件費が増加したことや、入院患者の減少などが要因。病床数は、前年度比で十七床増えた一方、一日当たりの入院患者数は二・二人減の五六六・二人だった。

 県病院事業庁は、一七年度は一日当たりの入院患者数を三十人増やす目標を掲げ、収支改善を図ると説明。井上勘治次長は「紹介患者を増やす方策など、患者の獲得努力を進めたい」と述べた。

 (角雄記)



https://www.m3.com/news/general/544445
訴訟:医師年俸「残業代含まず」 基本給と区別求める 最高裁
事故・訴訟 2017年7月9日 (日)配信毎日新聞社

 残業代込みの医師の定額年俸が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は7日、「残業代と基本給を区別できない場合は残業代が支払われたとは言えない」として無効と判断し、2審・東京高裁判決の残業代に関する部分を破棄し、未払い分を計算させるために審理を同高裁に差し戻した。【伊藤直孝】

 1、2審は原告の医師の年俸が1700万円と高額な点などから「基本給と区別できないが、残業代も含まれる」としていたが、最高裁は医師のような高い報酬を得ている専門職でも例外は認められず、残業代を分けるべきだと示した。「働き方改革」を巡る議論にも影響を与えそうだ。

 1、2審判決によると、原告は神奈川県内の私立病院に勤務していた40代の男性医師。残業代支給対象が午後9時以降と休日に限定されていたため「未払いの残業代がある」として提訴。1審・横浜地裁は「医師は労働時間規制を超えた活動が求められ、時間でなく内容が重視される」と指摘、2審も支持した。

 これに対して最高裁は、労働基準法が残業代に関して使用者に原則25%以上の給与割り増しを義務付けている点を「時間外労働を抑制する目的がある」と指摘。給与の定額払いは違法ではないが、割り増しが行われたかどうか判断するために基本給と残業代を区別できることが必要だと結論付けた。裁判官4人全員一致の意見。

 病院側の弁護士は「医師の勤務や労働実態を踏まえていない形式的判断だ」とコメントし、医師側の弁護士は「判決が医師の過重労働改善の契機になれば」としている。

………………………………………………………………………………………………………

 ■解説

 ◇労基法の原則に戻す

 最高裁は従来の複数の判例で、給与の中で基本給と残業代を明確に区別することが必要だと示してきた。それにもかかわらず残業代を巡る労使紛争が絶えないのは、使用者側が「この職種は例外だ」と主張して争うためだ。

 今回の裁判でも、病院側は「医師は労働と研究の時間を区別することが不可能」と主張。労基法の労働時間規制を適用することは不合理だと訴えていた。

 水町勇一郎東大教授(労働法)は「1、2審は『高い報酬を支払えば残業代の区別は必要ない』としたが、最高裁は労基法の原則に戻して判断した。勤務医は実際には裁量がない人が多く、労基法の保護が必要。妥当な判断だ」と見る。

 最高裁判決は、残業代の区別が不明確な給与の支払いは、ほぼ例外なく認められないとの立場を鮮明にし、労基法の原則を順守するよう改めて使用者に求めた。

 今後、報酬の多寡に関わらず、労使の残業代を巡る訴訟に影響を与えていくとみられる。【伊藤直孝】

  1. 2017/07/09(日) 20:39:48|
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Google Newsでみる医師不足 2017年6月30日 

Google Newsでみる医師不足 2017年6月30日
Google (日本語) での検索件数 _ _ _ キーワード 医師不足 過去一か月のニュース 7,000
Google (English) での検索件数 _ _ _ Key word: Doctor shortage, past month 14,300
First 5 in Google in English 

Opinion: Medical schools can solve Canada's rural doctor shortage
Vancouver Sun‎ - June 25, 2017 (カナダ ブリティッシュコロンビア州)

These shortages take a toll on Canadians' health. Patients with no regular doctor are less likely to get annual exams or other preventive care. Many are forced to use walk-in clinics staffed with doctors who don’t know them or their medical history. And the evidence shows that there’s a strong correlation between a population with access to effective primary care providers and positive health outcomes.



Doctor shortage could be aided by tuition, book help
Kennebec Journal & Morning Sentinel‎ - 2017/06/29 (米国 メイン州)

I'd like to propose a simple solution to the lack of physicians in Maine, and elsewhere, as well as a remedy for the enormous debt doctors have leaving medical school. Additionally, this solution would provide doctors to under-served areas of the country.
The solution? We should pay for tuition and books. It would cost about $1.25 billion per year. This includes 25,000 potential doctors, and around $50,000 in tuition and book costs per year, both more than expected.


South Africa's cancer doctor shortage: 'There is a real crisis'
CNN‎ - 2017/06/13 (南アフリカ)

Now, with the number of public health doctors dwindling in Durban and other South African cities, some patients without the means to visit a private doctor may suffer. "This has led to freezing, abolishing, unfunding of posts, which led to a dire shortage of doctors from 2014," he said. "These austerity measures by the provincial government have pushed doctors away to the private sector leaving poor patients alone."



Has a doctor shortage come to Central Texas? Experts say the area has a different problem
Community Impact Newspaper‎ - 2017/06/26 (米国テキサス州)

Health care advocates have for years worried about a shortage of doctors serving rural and low-income Texas communities. But in Austin and the surrounding areas, which have one of the highest doctor-to-patient ratios in the state, there is a different challenge, according to Dr. Jonathan MacClements, assistant dean of graduate medical education at The University of Texas Dell Medical School.



Health Beat: Why We All Need To Help Solve The Doctor Shortage
Honolulu Civil Beat‎ - 2017/06/21 (米国ハワイ州)

Even if you are lucky enough to already have a primary doctor, that doesn't mean you aren't affected by the provider shortage. With increased paperwork, the high costs of running an office and our cost of living here in the islands, some providers are closing their practices, transitioning into just seeing patients in the hospital or just moving away.



(他に10位以内のニュースは、米国・ウィスコンシン州、カナダ・ニューブランズウィック州、マニトバ州、ノバスコチア州、英国スコットランド、からも)


  1. 2017/07/01(土) 11:14:38|
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6月30日 

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/irohira/201706/551831.html?myselect=20170630
コラム: 色平哲郎の「医のふるさと」
「普通の町」の病院が陥った深刻な医師不足

2017/6/30 色平 哲郎(佐久総合病院)

 最近、深刻な医師不足に陥った病院に週一度、当直勤務の「助っ人」として通うようになった。長野県の長和(ながわ)町と上田市が設立した依田窪(よだくぼ)医療福祉事務組合が運営する国保依田窪病院(140床)が、その病院だ。とくに山間へき地や離島に立地しているわけではなく、上田市に隣接する「普通の町」の病院で医師が足りなくなっている現実にショックを受けている。

 依田窪病院にうかがった初日、病院長に、こう言われた。「内科救急患者は、医師の裁量でお断りをしてください。救急対応について相談される場合は、循環器は○○医師、その他内科は○○医師にご相談ください。外科治療を要する急性腹症の患者は、膵胆管系以外は佐久医療センター、膵胆管系につきましては、長野・松本方面の医療機関にご相談をお願いします」。

 これまで「どんな患者でも診る」ように教えられ、実践してきた身には衝撃的だった。救急患者を受け入れても対応できる態勢が整っておらず、近隣に回せる総合病院がないから、最初から断わる。下手に受け入れて「手遅れ」になるようなことがあってはならない、というわけだ。

 救急隊員は、救急患者発生の連絡を受けた時点で、長和町や上田市の外の医療機関へ患者を搬送することを考えている。地域内で少なくとも一次、二次救急をカバーできる体制がいかに重要か、改めて感じている。

県に医師派遣を要請してきたもの…

 依田窪病院は、昨年3月時点では常勤内科医が6人いた。外来、入院、検査を常勤医が担当し、昨年度は休日・夜間の内科の緊急入院も173人受け入れた。しかし、長野県からの医師派遣の終了や定年退職などで今年3月には3人に減少。4、5月に短期で勤務していた医師も退職し、常勤内科医が2人となった。これではとても「休日・夜間の内科の緊急入院」に対応できず、前述のような対応をするしかないのだ。

 病院の運営者は、これまで医師不足を見越して県に医師派遣を要請してきたが、ここ2年、新たな派遣はないという。現在、信州大学付属病院(松本市)、諏訪中央病院(茅野市)からも非常勤医師が派遣されて緊急事態に対処している。

 それにしても、毎年8000人以上も医師が誕生しているというのに、どうしてこのような医師不足が生じるのだろうか。繰り返すが、地方の「普通の町」で、医療崩壊につながりかねない危機的状況が発生している。

 充実した研修環境を求める若手医師は、地方の小規模な病院を敬遠する。医師が少ない病院は勤務環境が厳しいに違いないと考え、さらに足が遠のく。これでいいはずはない。

 医師の偏在を解消すべく、さまざまな施策が講じられてきたが、一向に改善していない。特に足りないのは「どんな患者でも診る」一般内科医(なんでもないか)だ。

 専門医の資格云々の前にやるべきことは山積している。



https://mainichi.jp/articles/20170629/ddl/k23/040/196000c
あま市民病院
指定管理者制度導入へ 医師不足、経営苦しく /愛知

会員限定有料記事 毎日新聞2017年6月29日 毎日新聞 地方版 愛知県

 十分な医師を確保できず苦しい運営を続けているあま市民病院(あま市甚目寺畦田)は、管理運営を民間の法人に任せる指定管理者制度の導入を決め、このほど募集を始めた。医師不足に悩む同様の自治体病院も多く、今後が注目されている。

 あま市民病院は旧海部郡の自治体でつくる公立尾陽病院が前身。旧病棟は耐震性に問題があり、合併してあま市が発足したのを機に、一昨年11月、現在地に市民病院として移転新築された。診療科は11科(外来は8科)で、ベッド数は180床となっている。

 設備は最新に変わったが、常勤医師は現在11人で、充足数は「半分程度」(同病院)という。そのためベッド数も4分の3の135床しか稼働していない。2004年度に臨床研修医制度が変わり、医師が患者や症例の多い特定の病院に集中することになり、多くの病院で医師不足が深刻化している。あま市民病院も、この問題に直撃された格好だ。

 医師不足は病院経営にも影響している。医師や稼働ベッドが少ないので、患者も減っている。昨年度は市から同病院費用の3割強にあたる約13億円が支出された。同病院経営改革室は「高齢化社会でもあり、身近に医療機関があるのは市民生活を守る上で欠かせない」として病院自体は存続させ、運営を医師を集められる民間法人に任せることにした。

 県地域医療支援室によると、07年に国保東栄病院(東栄町)が指定管理者制度を導入し、名古屋市の公立病院でも導入が進んでいるが、他に例はないという。

 あま市では、選定委員会で応募のあった法人を審査し、12月議会で優先候補を報告する方針。【長倉正知】



http://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/news/20170626-OYTNT50280.html
唯一の総合医 閉院…住田町
医師不足 県、定年の勤務医に熱視線

2017年06月25日 読売新聞 岩手

 住田町で今月末、町唯一の個人総合診療医院が閉院する。地域医療を長年支えてきた開業医が、高齢化や後継者不足でやめるケースが相次いでいる。地方の公的な医療機関の役割が増す中、県は定年後の勤務医を活用する「シニアドクター制度」を導入して医師不足を解消しようとしている。(柿沼衣里、徳山喜翔)

 「いざ閉めるとなると、やっぱり寂しいね」。住田町上有住地区の桜井医院で、医師の桜井末男さん(92)は段ボール箱に片づけられたカルテの束を見つめた。

 桜井医院は江戸時代初期に陸前高田市気仙町で開業し、360年ほど前に住田町に移った。内科や外科のほか、皮膚科や産婦人科も診察し、地域医療を支えてきた。7代目の桜井さんは学校医や産業医、特別養護老人ホームの嘱託医も担い、1日に300人を診たこともあった。しかし、人口減少などで患者が減る一方で人件費がかさみ、「赤字経営が10年ほど続いていた」。医師の長男は盛岡市の岩手医大に勤めているが、「生計が立てられなければ後継ぎもない」という。

 町では昨年も80歳代の医師が個人医院を閉じた。来月以降、町内の歯科医院を除く医療機関は常勤医3人の県立大船渡病院付属住田地域診療センターのみになる。患者は今後、同センターや遠野市の病院に通うことになり、桜井さんは320人分の紹介状を書いた。近くの紺野幸子さん(80)は車の運転免許がなく、遠野市の病院までバスで50分ほどかかる。「頼りにしていたので残念」と閉院を惜しんだ。

 町は「新たな開業医を招きたいが、交通の便が悪い土地に呼ぶのは難しい。周辺自治体と連携して医療環境を確保したい」と話す。

 県医師会によると、県内では今年6月までの3年間で医療機関が48か所減った。厚生労働省が2014年に行った調査では、本県の10万人あたりの医師数は204・2人で全国40位だ。

 医師確保のため、県は高い技術と意欲を持つシニアドクターに注目する。15年度に始まったシニアドクター制度は、主に定年後の県内外の医師を最大5年間、県立病院の正規職員待遇で採用する。年収は概算で約1690万円。以前から県立病院の勤務医には定年(65歳)延長制度があるが、3年間に限られている。医師を確保すると同時に、勤務医の働く意欲を向上させる狙いもある。

 初年度は目標の10人を確保し、今年4月までに最高齢の75歳を含む計16人を採用した。東日本大震災応援で沿岸部の仮設診療所に赴任した医師が、再建された県立病院で勤務を続けているケースもあるという。

 県医師支援推進室は「医師不足は深刻で、こうすれば増えるという特効薬はない。ただ、定年後も働く意欲のあるシニアドクターは増えており、医師不足解消策の一つとして機能させたい」としている。



https://www.m3.com/news/general/542524
群馬循環器病院が倒産、負債総額約14億円
2017年7月1日 (土)配信東京商工リサーチ

 医療法人群馬循環器病院(高崎市中尾町、設立1997年、平井立志理事長)は6月29日、前橋地裁高崎支部に民事再生法の適用を申請し、同日に保全命令を受けた。申請代理人は猿谷直樹弁護士(石原・関・猿谷法律事務所)、監督委員は室賀康志弁護士(室賀法律事務所)が選任された。負債総額は約14億円。債権者数は約230人。

 1985年11月、都内において長年の業歴を有す医科大学の系列として群馬県高崎市において個人開業し、1997年3月に法人化を果たした医療法人。それ以降、診療科を拡げ、外部から有能な人材を常勤医に迎え入れて診療サービスの充実に努め、ピーク時の1996年12月期には売上高22億円を計上していた。

 しかしながら、医療設備に相当額の投資を実施してきた中、これに見合った業績を確保できず、損益は低迷推移を辿っていた。また、2002年12月には患者との訴訟に敗訴して多額の支払命令を受けたほか、近年は医師や看護師の減少により売上減少に歯止めがかからず、赤字決算が散見される状態だった。2014年12月期で売上高は10億円を割り込み、当期損失1億334万円を計上して債務超過に転落。翌2015年12月期では売上高8億9712万円、当期損失3億1021万円を計上し、さらに厳しい決算だった。

 こうした中、2015年には過大な診療報酬を請求したとされ診療報酬返還を求められた。過大請求については故意では無く見解の違いとし、返済を進めていたが、これにより支出が増え、合わせて業績も低迷する中で資金繰りがひっ迫。その後も厳しい経営状況に改善が見られず、ついに行き詰まり、今回の措置を採った。なお、病院は通常通り事業を継続しており、今後は医療法人の経営支援再生を主体に手掛けているコンサルタント業者のキャピタルメディカ(東京都港区)から資金や人材面での支援を受け、再建を目指す。



http://www.jomo-news.co.jp/ns/9214987518914084/news.html
高崎の群馬循環器病院が破綻 負債14億 診療は継続
更新日時:2017年6月30日(金) AM 06:00 上毛新聞

 群馬循環器病院(高崎市中尾町)を運営する医療法人「群馬循環器病院」(平井立志理事長)は29日、前橋地裁高崎支部に民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けた。代理人弁護士によると、負債総額は約14億円。病院は通常通り診療を続け、医師や看護師ら従業員約60人の雇用も維持する。

 今後は、医療コンサルタント会社のキャピタルメディカ(東京都)から資金や人材面での支援を受け、再建を目指す。



http://www.medwatch.jp/?p=14539
「今厳しい病院は3年以内に消える」、経営分析システム勉強会で大道日病副会長
2017年6月29日|GHCをウォッチ MedWatch

 「日本病院会」は6月29日、「JHAstis」(Japan Hospital Association Strategy Tactics Information System=日本病院会戦略情報システム)の勉強会を開催しました(JHAstisの紹介ページはこちら)。同ツールの経営改善事例が紹介されたほか、「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(GHC)のコンサルタントによるツール活用方法、メディ・ウォッチ編集部による2018年度診療・介護報酬改定の解説が行われました。

 勉強会の冒頭であいさつした日本病院会の大道道大副会長は、18年度以降、病院が提供する医療の生産性の見える化が進むとした上で、「今後、(生産性の)パフォーマンスの悪い病院はすぐに分かるようになる」と指摘。次期診療・介護報酬改定が厳しい内容になるなどと予測されることから、「今、病院経営は一番いい時期。今が厳しいという病院は、間違いなく3年以内に消えてしまうだろう」と見通しました。

ここがポイント! [非表示]
1 医療等ID制度で現場の実態が明らかに
2 算定対象者2人「漏らさない」だけで回収可能
3 今後、最重要は他病院との比較
4 小林病院と平病院が事例紹介

医療等ID制度で現場の実態が明らかに

 18年度は、▼国民健康保険の財政都道府県単位化 ▼新たな医療計画の実施 ▼診療・介護報酬の同時改定― などが控えています。厚生労働省は、このことを「惑星直列」と呼んでおり、団塊世代が後期高齢者になって医療費が膨張する「2025年問題」に向けた大きなターニングポイントになる年度であると考えています(関連記事『2018年の国保都道府県化や診療報酬改定など「惑星直列」に向け、2017年が重要―厚労省・鈴木保険局長』)。財務省も5月に固めた建議でプラス改定をけん制しており、病院にとってはかなり厳しい改定になる可能性がささやかれています(関連記事『2018年度同時改定、「国民の負担増を考慮せよ」とプラス改定論議を牽制—財政審』)。

 また、マイナンバー制度と並行して進む「医療等ID制度」が導入された後の医療の現場を予見し、大道副会長は「疾患ごとに医療従事者が何人投入されたのか、どのような医療を提供したのか、すべてが明らかになる時代がくる」と指摘。その上で、「今から18年4月までに何をしてきたかで病院の将来が決まる。今後、毎月算定できる加算を逃しているような病院はもたない」と警鐘を鳴らしました。

算定対象者2人「漏らさない」だけで回収可能

 JHAstisは日本病院会が16年度・17年度の重点施策に掲げる「病院の経営支援」を具現化したサービスで、出来高病院に特化した自病院の経営状況を見える化するためのシステムです(紹介ページはこちら)。

 JHAstisに参加すると、(1)主要経営指標の分析や加算取得など経営指南書を毎月配信する「月次レポート」(2)他院とのベンチマーク分析など有益な分析情報を提供する「定期レポート」(3)回復期病棟ならではの切り口でデータ分析する「回復期レポート」(4)同時改定の重要論点と自病院の影響に絞って徹底解説する「臨時レポート」―の4つのレポートを受け取れるとともに、分析を担当するGHCの専門コンサルタントによる講演や、JHAstis参加で経営改善した事例などを学べる「無料勉強会」に参加できます。

 JHAstisは月額4万円で参加することが可能です。月額4万円を各種加算に換算して考えると、退院困難な患者について算定できる「退院支援加算1(一般病棟等)」(退院時1回。600点)であればわずか7回の算定増にすぎません。また認知症ケアチームによるケア計画策定などを評価する「認知症ケア加算1」(14日まで1日につき150点、15日以降1日につき30点)であれば、27回(14日までで換算)に該当します。つまり、両加算の算定対象者を2人「漏らさない」だけで、JHAstis参加費用は回収可能なのです(関連記事『日病の経営分析レポートJHAstis、300床規模の病院で年200万円の増収実績』)。

今後、最重要は他病院との比較

 JHAstisの活用方法について講演したGHCコンサルタントでアソシエイトマネジャーの澤田優香は、客観的なデータを活用した経営改善に向けた取り組みの基本姿勢について、「経営データの自病院における実際の値、目標とする値の視点は欠かせない。もう一つの欠かせない視点は他病院平均(中央値)の値であり、これからの経営改善はこの3つの視点は不可欠」と指摘。経営学の父であるドラッカーの言葉を引用して「外の変化を知らなければ、時代に置きざりにされる」としました。

 18年度診療・介護報酬改定の解説をしたメディ・ウォッチ編集主幹の鳥海和輝は、プラス改定を期待することが難しい状況に加えて、地域医療構想や国保の財政都道府県単位化など地域ごとに医療費抑制が進みつつある流れを解説した上で、「今後、国が着目するのは自病院がどれだけ改善したかではない。見ているのは、他病院と比較してどうかということ」と、今後の経営改善で重要なことは「他病院との比較」と繰り返しました。

小林病院と平病院が事例紹介

 今回、ユーザー事例を紹介したのは神奈川県小田原市の「小林病院」(163床:一般56床=うち地域包括ケア6床、回復期リハビリテーション47床、療養60床)と岡山県和気町の「平病院」(90床:一般32床=うち地域包括ケア11床、療養30床、結核28床)。講演した小林病院の市川信英医事課長、平病院の高取敬修事務部長は、JHAstisによって救急医療管理加算の算定状況や、他病院との比較データで確認できるため、ベンチマーク分析によって大きな収益増になったことなどを、自病院の事例を交えて解説しました(講演内容の詳細については追ってお伝えします)。

 JHAstisにご興味がある方は、日本病院会のJHAstis紹介ページをご確認ください(JHAstisの紹介ページはこちら)。

解説を担当したコンサルタント
澤田 優香(さわだ・ゆうか) 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのアソシエイトマネジャー。看護師、保健師。
聖路加看護大学卒業後、集中治療室の勤務を経て、入社。看護必要度分析、看護業務量調査、DPC別診療科検討、病床戦略分析、マーケット分析などを得意とする。自由分析ソフトを用いた分析では、社内で右に出るものはいない。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のアナリスト育成や看護関連プロジェクト(看護必要度勉強会や「看護必要度分析」開発など)でも精力的に活動する(東京医科大学病院の事例紹介はこちら)。



http://www.nikkei.com/article/DGXMZO1801448023062017I00000/
医師の地域格差2倍 最多は京都府、高知県は中心部に8割集中
不作為の果てに(3)

2017/6/28 2:00日本経済新聞 電子版

 どこで開業し、どの診療科を置くか--。日本では開業場所や診療科は原則として医師に委ねられている。医療にも市場メカニズムがはたらき、医師は人口の多い地域に偏りがちな傾向がある。厚生労働省によると、人口10万人あたりの医師数は京都府(308人)が最も多く、最も少なかった埼玉県(153人)の2倍だった。高知県では中心部に医師の約8割が集中している。

都道府県別の人口10万人あたり医師数
1   京都   307.9
2   東京   304.5
3   徳島   303.3
4   高知   293.0
5   福岡   292.9
6   鳥取   289.5
7   岡山   287.8
8   長崎   287.7
9   和歌山  277.4
10   熊本   275.3
11   石川   270.6
12   香川   268.3
13   佐賀   266.1
14   島根   265.1
15   大阪   261.8
16   大分   260.8
17   愛媛   254.3
18   広島   252.2
19   鹿児島  247.8
20   山口   244.8
21   沖縄   241.5
22   福井   240.0
23   富山   234.9
     全国    233.6
24   宮崎   233.2
25   兵庫   232.1
26   北海道  230.2
27   奈良   225.7
28   山梨   222.4
29   宮城   221.2
30   群馬   218.9
31   長野   216.8
32   秋田   216.3
33   山形   215.0
34   栃木   212.8
35   滋賀   211.7
36   三重   207.3
37   岐阜   202.9
38   愛知   202.1
39   神奈川  201.7
40   静岡   193.9
41   青森   193.3
42   岩手   192.0
43   福島   188.8
44   新潟   188.2
45   千葉   182.9
46   茨城   169.6
47   埼玉   152.8
(注)単位は人。2014年末時点、厚生労働省まとめ

 かつては各大学が地域ごとに関係の深い病院に医師を派遣する「医局人事」が偏在を緩和してきた。2004年に「新医師臨床研修制度」が導入されると、研修内容や施設が充実した都市部の病院を選択するケースが増え、医師の地域偏在に拍車をかけた。

 厚生労働省がまとめた14年末時点の人口10万人あたりの都道府県別医師数は全国平均で234人だ。京都府が308人で最も多く、2番目が東京都で305人だった。

 最も少ないのは埼玉県で153人にとどまる。東京に隣接するベッドタウンで都内の病院にかかる人が多いためとみられる。続いて茨城県が170人、千葉県が183人だ。都道府県別の医師数は最大で2倍の差がある。

 同じ都道府県内でも医師の偏りのある地域もある。高知県は10万人あたりの医師数が全国4番目に多いにもかかわらず、高知市のある中央に約8割の医師が集中する。周辺部は全国平均を下回る「医療過疎地域」だ。

 診療科ごとの偏りも目立つ。全体として医師数は増えていても、個別の診療科で見ると外科や産婦人科はほとんど増えていない。

 こうした課題の解決に向け、大学医学部は医師確保のため「地域枠」を設けている。定員の一部を割り当て、修学資金などを支給する代わりに一定期間、その地域のへき地で勤務を義務付けるケースが多い。日本医師会も全国で画一的に医師の配属を決めるような規制よりも、地域枠の方が有効との考えだ。

 ただ、医師の中では偏在の解消には規制が必要と考える人も少なくない。「医師の官舎も市議会に怒られるぐらい立派なものを建てたり、冠婚葬祭、卒業式、大学へもしょっちゅう行く。それでも田舎に医師は来ない」。全国自治体病院協議会の辺見公雄会長は4月の厚労省の会議で、こう窮状を訴えた。開業の規制や診療科ごとに医師数を規制した方が、医療の地域格差が是正されると主張している。(奥田宏二)



https://www.m3.com/news/iryoishin/541127
日医代議員会
医師偏在対策は「医師の意思尊重」、今村副会長
第140回日医代議員会、国の強制的手法に先手打つ必要

2017年6月26日 (月)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の今村聡氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、医師の偏在対策について、「医師の自発的な意思を尊重し、強制的な仕組みを排除しながら、解消に向けて努力していく」と表明した一方、「若い医師に完全な自由度を保証するか、それとも例えば、へき地医療や救急などで経験を積んでもらうようにするかは、医療を受ける国民・患者の視点に立って考える必要もある」と述べ、さまざまな観点から検討する必要性を指摘した。

 今後の医師偏在対策については、地方勤務の意思がある医師が、医師不足地域で安心して診療できる仕組み作りが大切であるとし、地域医療支援センターの医師派遣機能の強化など、合意が得られやすい対策は早急に決定するよう行政に求めていくとした。同時に、今村副会長は、「医師自らが偏在解消策を打たなければ、国による強制的な手段と大胆な規制改革が行われかねない」と述べ、危機感を持って臨んでいくとした。

 今村副会長が、言及した「強制的な手段」とは、2016年6月の経済財政諮問会議の「骨太の方針2016」の素案で、「規制的な手法も含めた地域偏在・診療科偏在対策を検討」が盛り込まれていたことを指す。日医の主張によって「実効性のある地域偏在・診療科偏在対策を検討」に変更させたという。「大胆な規制改革」とは、2017年4月の厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の報告書で、医師の配置にいわゆる規制的な手法を用いることには否定的であるものの、その前提として、「看護師等へのタスク・シフティング」などが提言されたこと(『医学部定員増に歯止め、「偏在対策、成果を出すラスト・チャンス」』を参照)。

 「若手医師に選択の自由を!」と題して、日医の医師偏在対策についての見解を代表質問で質したのは、京都府代議員の松井道宣氏。松井氏は、若手医師の能力と意欲を十分に引き出すためには、地域医療に配慮しながらも、「選択の自由」があることが大切とした。質問の背景として、政府の「骨太の方針 2016」では、「規制的手法」も含めて、医師の地域・診療科偏在対策を検討するとされていること、また2015年12月の日医と全国医学部長病院長会議との合同の緊急提言でも、「病院・診療所の管理者要件に、医師不足地域での一定期間の勤務経験を加える」を盛り込んでいることなどを挙げた。

 一方で、松井氏は、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の報告については、規制的な手法をけん制し、「個々の医療従事者が現場で輝き、意欲と能力を発揮し続けられるか」と提起している点を評価した。

 「規制」ではなく、「選択の自由」を

 今村副会長は、合同緊急提言について、「当時、新たな医学部を開設するという、重大な局面が訪れたことに対し、危機感を持って提言した」と説明。その上で、日医の「医師の団体の在り方検討会」の2017年3月の報告書で、「医師が自由に診療科や診療場所を選べることは尊重されるべきであるが、公的医療保険制度においては、医師は職責の重さを認識した上で、自主的・自律的に何らかの適切な仕組みを作り、医師の偏在の解消を実現していくことが必要」とし、その仕組み作りのために「行政から独立した、医師全員が加盟する団体が必要」と提言したことを紹介した。

 松井氏は質問の中で、「医師会が残さなければならないものは、『規制』ではなく、地域医療に配慮しながらも『選択の自由』がある」とも述べた。今村副会長は、検討会報告書は、医師会によるプロフェッショナルオートノミーで進めるべきという提言であり、松井氏の意見とは、表裏一体であると言えるとした。

 さらに今村副会長は、合同緊急提言には、医師のキャリア形成や生活に関する十分な支援策も盛り込んでいるとし、これらは厚労省「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会の「中間取りまとめ」に反映されたと説明(『偏在対策「強力」に、「医師の働き方ビジョン」も策定』を参照)。医師の偏在対策としては、地域枠・地元枠の拡充、地域医療支援センターの医師派遣機能の強化などを挙げた(『医師偏在対策、カギは「地域医療構想の医師版」、中川副会長』を参照)。政府が進める「働き方改革」は、病院勤務医にとっては健康に働く施策が重要となるものの、医師のキャリア形成も関係する問題であり、日医しても取り組んでいくとし、答弁を結んだ。



https://www.m3.com/news/iryoishin/542533
地域医療構想
医師偏在対策「キャリア形成プログラム」、医療計画に位置付け
看護師の特定研修も、厚労省、今夏に追加通知

レポート 2017年6月30日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」(座長:遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)は6月30日の第10回会議で、第7次医療計画の策定に関する厚労省の追加通知に盛り込む内容を了承した。

 第7次医療計画は、2018年度からの開始に向け、各都道府県で現在策定が進んでいる。今年3月末に厚労省は策定に関する通知を出したが、同通知では「空白」だった「医療従事者の確保」のほか、「一般病床や療養病床から生じる新たなサービス必要量」、「在宅医療の体制構築」などについて追加通知する。7月に開催される社会保障審議会医療部会に諮った後、今夏に通知発出予定。

 医療従事者の確保のうち、医師については、出身大学への地元定着を図り、地域偏在の解消を目指す。都道府県が主体となり策定する「キャリア形成プログラム」に、医学部地域枠の入学生は原則として地元出身者に限定したり、プログラム策定に当たっては大学(医学部、附属病院)と連携するなど、「医療従事者の需給に関する検討会」の第10回医師需給分科会で了承した内容を盛り込む(『「地域枠、地元に限定」「医師データベースで異動を追跡」』を参照)。かかりつけ薬剤師の確保や看護師の特定研修の充実に向けた取り組みも医療計画に位置付ける。

 第7次医療計画では、2025年の医療提供体制構築に向け、地域医療構想に基づき病床再編が進む中、その受け皿となる介護施設や在宅医療の必要量をいかに見込むかも課題となる。一般病床の転換等に伴う新たなサービス必要量については、3月の第10回会議では異論が出ていたが、厚労省は改めて資料を提示、外来医療として見込むことで了承(『一般病棟の退院患者「外来対応が基本」』を参照)。2017年度末で設置期限を迎える介護療養病床については、各病院に「転換意向調査」を実施するなどして、介護施設や在宅医療等の必要量を推計する。「在宅医療の体制構築」では、退院支援、急変時の対応、看取りなどについて具体的数値目標を設定する。

 慶応義塾大学名誉教授の田中滋氏は、在宅医療等の必要量の推計について、「医療提供体制と地域包括ケアは車の両輪。地域包括ケアを進めた場合、在宅への移行が進み、介護施設等へのニーズが減るかもしれない」と指摘し、各種推計は、現状の地域包括ケアを前提としているのかなどと質問。厚労省医政局地域医療計画課は、「現行の制度を前提としている。第7次医療計画の中間年(2020年度)、あるいは最終年(2023年度)で、進捗を見極めて見直すことが必要」と回答した。


厚生労働省は、社会保障審議会医療部会に諮り、第7次医療計画に関する追加通知を発出予定。

【第7次医療計画に盛り込む追加事項の抜粋】

1.介護施設・在宅医療等の新たなサービス必要量の受け皿の考え方
 2025年に向けて、高齢化の進展、地域医療構想による病床の機能分化・連携により、在宅医療の需要の増大が見込まれるため、第7次医療計画でいかに見込むかが課題。医療計画には下記の(1)~(4)を盛り込む。

(1)一般病床から生じる新たなサービス必要量
 地域医療構想では、一般病床のうち医療資源投入量が少ない「C3基準未満」の患者数については、慢性期・在宅医療等の医療需要として推計する。2014年患者調査によると、一般病床から退院する患者(全年齢)の80.7%は退院後、「自宅かつ通院」となる。65歳以上に限っても75.8%であり、「一般病床から生じる新たなサービス必要量」は外来医療により対応するものとして見込む。

(2)療養病床から生じる新たなサービス必要量の受け皿の考え方
①療養病床から介護医療院等へ転換する見込み量
 介護療養病床等は2018年3月末で廃止(移行期間は6年)されるに伴い、新設される介護医療院等への転換する見込み量を把握する必要がある。医療療養病床と介護療養病床を持つ病院に対し、都道府県と市町村の連携の下、「転換意向調査」を実施、把握した数とする。
 介護療養病床は、第7次医療計画の中間年の2020年度時点では「転換意向調査」により把握した数、移行期間が終わる2023年度時点では、介護療養病床の全数に相当する数を下限として、転換見込み量を設定。

②介護施設・在宅医療への按分の考え方
 患者調査では、医療療養病床から退院する患者の退院先は、「在宅医療」対「介護施設」=1対3。また「国保データベース(KDB)システム」で、療養病床から退院した高齢者(65歳以上、医療区分1)の介護サービス利用状況を把握することができ、例えば、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム等は5割強であることなどが分かっている。そのほか、病床機能報告制度の「入院前の場所、退院先の場所別の患者の状況」もあるが、既存の調査や報告制度の結果は、一長一短であり、どのようなデータを用いるかは、各地域で協議して判断。

(3)目標の中間見直し
 第7次医療計画は、2018年度からの6年。その中間年、および第7期介護保険事業(支援)計画の終期は、いずれも2020年度末。原則2次医療圏単位で設置する「医療・介護の体制整備に係る協議の場」で実績を評価した上で、次の整備目標に反映することが基本。2018~2020年度の介護施設や在宅医療の取り組みが不十分な場合、2021~2023年度の計画で、整備必要量の上乗せを行う。

(4)各計画の終了時点における新たなサービス必要量の推計方法
 始点を第7次医療計画がスタートする2018年、終点を2025年度末と設定して、2025年の新たなサービス必要量の推計値を、8年間で等比按分する(例えば、2020年度末時点でのサービス必要量=2025年のサービス必要量×3/8)。

2.在宅医療の体制構築
 第7次医療計画では、将来の在宅医療の需要に対応するサービスごとの整備目標を設定する。具体例は下記。
・退院支援:退院支援ルールを設定している2次医療圏数
・急変時の対応:在宅療養後方支援病院数、在宅療養支援病院数
・看取り:在宅看取りを実施している診療所数、病院数
・訪問看護:24時間体制を取っている訪問看護ステーション数、機能強化型訪問看護ステーション数
・訪問歯科診療:訪問歯科診療を実施している歯科診療所数、在宅療養支援歯科診療所数
・訪問薬剤管理指導:訪問薬剤指導を実施している事業所数

3.医療従事者の確保
(1)医師
 キャリア形成プログラムの改善(医学部地域枠の入学生は原則として地元出身者に限定、地域医療支援センターがによるプログラム作成に当たっては、大学と十分に連携するなど)、詳細な医師の配置状況が把握できるデータベースの活用、地域医療支援センターの機能強化(へき地医療支援機構の統合も視野に一体的な医師確保を実施、医療勤務環境改善支援センターと連携、若手医師のアプローチ強化、派遣調整に当たって医師の勤務負担軽減に配慮など)などを実施。

(2)歯科医師
 「歯科医師の歯質向上等に関する検討会」で議論中だが、「口腔と全身との関係について広く指摘されている観点を踏まえ、医科歯科連携をさらに推進するために病院に歯科医師を配置していくことが望ましい」との旨を記載する方向で検討する。

(3)薬剤師
 「薬剤師の資質向上のために、『患者のための薬局ビジョン』を踏まえ、最新の医療および医薬品等に関する専門的情報の習得を基礎としつつ、患者・住民とのコミュニケーション能力の向上に資する研修、および医療機関等との連携強化につながる多職種と共同で実施する研修等が行われるよう、研修状況を把握し、関係者間の調整を行う」旨を明記し、かかりつけ薬剤師の確保に向けた取り組みを推進。

(4)看護職員
・「看護職員の確保に向けて、地域の実情を踏まえつつ、看護師等の離職届出を活用した復職支援や、医療機関の勤務環境改善による離職防止などの取り組みを推進していくことが必要である」旨を明記し、看護職員の確保に向けた取り組みを推進。
・「地域の実情を踏まえ、看護師が特定行為研修を地域で受講できるよう、指定研修機関および実習を行う協力施設の確保等の研修対壊死の整備に向けた計画」を明記し、都道府県における特定行為研修を修了した看護師の確保に向けた取り組みを推進。

4.その他
 地域医療構想については「地域医療構想に関するワーキンググループ」(『「新規開設・増床」、許可前に調整会議で確認』を参照)の議論、「5疾病5事業」については「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」の議論を、それぞれ踏まえた内容を盛り込む。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540789
日医代議員会
医師偏在対策、カギは「地域医療構想の医師版」、中川副会長
第140回日医代議員会、「喫緊の課題は医師の偏在解消」

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、医師不足問題について、絶対数は近く充足する見込みであり、「喫緊の課題は、医師の偏在解消」と指摘。2015年12月の全国医学部長病院長会議との合同の緊急提言を精査・進化させ、地域医療支援センターの強化、医学部の地域枠や地元出身枠の拡充のほか、「地域医療構想の医師版」の作成という3点に取り組む必要性を指摘した。

 「地域医療構想の医師版」とは、医師の必要数を地域ごと、診療科ごとに将来推計し、医師需給の「見える化」を図ること。中川副会長は、「新たに医師になる世代に、自らのキャリアを検討、判断するツールを提供できると考えている」と述べ、「行政から強制的に配置されるのではなく、医師自らが選択することを最後まで守っていきたい」と強調した。

 「喫緊の課題は、医師の偏在解消」との現状認識は、厚生労働省の関係審議会の見解ともおおむね一致しているほか、この6月に政府が閣議決定した「骨太の方針 2017」でも、「医師養成数のさらなる増加ではなく、2008年度以降臨時増員してきた医学部定員について、医師需給の見通しを踏まえて精査を行う」としていると説明(『「医学部定員増、精査を」、骨太2017素案』を参照)。

 代表質問で、医師需給や偏在について、「日医主導による意見集約」を求めたのは、埼玉県代議員の金井忠男氏。金井氏は、現状の問題点として、病院勤務医が、過酷な労働環境に耐えられず、開業の道を選ぶことなどを挙げ、勤務医不足の解消が、喫緊の課題であると指摘。しかし、病院と診療所では意見の相違がある上、四病院団体協議会では医師養成強化を続けるべきと主張していることから、「日医のリーダーシップのもと、医師不足解消のための意見を統一すべき」と日医の見解と質した。

 医師増の要望、「病院経営者の危機感も」
 中川副会長はまず、「日医は、大勢として医師の絶対数は充足していくと考えている」と説明。その理由を以下のように説明し、この現状認識について日医がリーダーシップを取り、四病協や全国医学部長病院長会議と共有していくと表明。

 日医は、病院の医師不足の実態について、2008年と2015年に病院に対してアンケートを実施。この間、病院医師数は年平均約2%増えたものの、アンケートの結果、病院の必要医師数は、いずれの時点でもその時点で在籍する医師数の約1.1倍で減少傾向は見られなかった。必要医師数が1倍を超えているのは、「医療の高度化や、病院間の競争が激しくなっており、より多くの医師を確保して、生き残りを図りたいという病院経営者としての危機感もあるためかと思われる」(中川副会長)。

 また今後の高齢化の進展に伴い、医療需要が増加するという見方もあるものの、日医調査では、現在の100床当たり医師数は、急性期機能のみの病院と比較して、回復期機能のみの病院では約半分、慢性期機能のみの病院では約3割にとどまるという。高齢化で回復期、慢性期の医療需要が増えれば、全体の必要医師数はやや抑制される可能性があるほか、医療安全を最優先に位置付けつつ、今以上に多職種の連携も進むと見通した。

 「もちろん、ワークライフバランスの実現を目指した働き方改革を踏まえると、現状の病院勤務医は過重労働で、勤務医の負担軽減は引き続き重要な課題。一方で、これからは2008年度以降の医学部定員増による医師が大挙して医療現場に加わってくる」(中川副会長)

 「かかりつけ医の負担軽減も大事」
 以上のような現状認識を踏まえ、地域および診療科の医師偏在対策として、以下の3点に取り組んでいく必要性を指摘した。

(1)全国の地域医療支援センターの実効性を向上させる。2015年12月の緊急合同提言で、一歩進んで、各大学への「医師キャリア支援センター」の設置を提言したが、まずはその土台となる地域医療支援センターの機能の強化が必要。同センターの機能や運用は全国でさまざまであるため、日医が情報収集、意見交換を行い、好事例を速やかに全国展開できるよう支援。

(2)医学部の地域枠あるいは地元出身枠の拡充。地域に生まれ、地域に愛着を持つ医師の地元定着率が高いことは、厚労省の審議会などでも報告されている。

(3)医師需給の「見える化」を進める。例えば、地域医療構想では将来の患者数から病床の必要量を構想区域ごとに計算し、将来の見通しを示している。同じように将来の医療需要、つまり患者数に対する医師の必要数を、地域ごと、診療科ごとに推計すれば、新たに医師になる世代に自らのキャリア設計を検討、判断するツールを提供できると考えている。

 さらに中川副会長は、「過去10年間に病院の医師が3万1000人増加したのに対し、診療所開設者の増加は約1200人の増加にとどまっている」と説明。都市部では、医療モールなどの展開もあって、診療所が多い地域もあるものの、地方では医師自身の高齢化もあり、地域包括ケアシステムの構築に向けて、かかりつけ医の確保が課題となっているとした。「医師の不足、偏在の問題については、病院勤務医の負担軽減を念頭に置きつつ、同時にかかりつけ医の負担軽減も大事にしていきたいと考えている」。



http://www.medwatch.jp/?p=14553
医学部地域枠の地元出身者への限定や、特定看護師確保策などを医療計画に記載—医療計画見直し検討会(2)
2017年6月30日|医療計画・地域医療構想 Med Watch

 2018年度からの新たな医療計画(第7次医療計画)においては、地域における医師偏在の解消に向けて「大学医学部の地域枠入学生は、原則として地元出身者に限定する」「地域医療支援センターがキャリア形成プログラムを策定する際には、大学医学部などと十分連携する」ことなどを明確にする。また看護師特定行為研修の実施体制を充実する方策なども記載する—。

30日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」では、こういった点も了承されました(関連記事はこちら)。近く開かれる社会保障審議会・医療部会の了承を経て、医療計画作成に関する通知が改めて発出されます。

6月30日に開催された、「第11回 医療計画の見直し等に関する検討会」(図 略)

ここがポイント!  
1 医師の地域偏在是正に向けて、都道府県に「当面の対策」を求める
2 脳卒中や心血管疾患、急性期から回復期・維持期までの一貫した医療提供体制を構築

医師の地域偏在是正に向けて、都道府県に「当面の対策」を求める

2018年度から新たな医療計画(第7次医療計画)がスタートするため、厚生労働省は今年(2017年)3月31日付で、都道府県に宛てて通知「医療計画について」(厚労省医政局長通知)および「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(同局地域医療計画課長通知)を発出しています(関連記事はこちら、通知へのリンクも関連記事にあります)。

しかし医療従事者の確保に関しては、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等 の働き方ビジョン検討会」や「医療従事者の需給に関する検討会」の議論を待ち、別途、考え方を示すこととなっていました。

今般、検討会において「当面の対策」(早急に実行可能な医師偏在対策)が固められたことを受け、医療従事者の確保に関する記述を充実することにしたものです。

医師確保については、「地域の医師偏在」を是正するために、地域医療支援センター(都道府県に設置)の作成するキャリア形成プログラムにおいて ▼大学との十分な連携を図る ▼地域枠入学生は地元出身者に限定し、当該都道府県での臨床研修を原則とする ▼勤務地や診療科を限定する—ことなどを促すことにしています。また来年度(2018年度)予算において ▼代診医師の派遣 ▼遠隔診療—に関する補助の拡大も目指すことになります(詳細はこちら)。

なお、より抜本的な偏在対策については、医師需給分科会(医療従事者の需給に関する検討会の下部組織)において今秋から議論が行われます(詳細はこちら)。

 
また看護職員の確保については、地域の実情を踏まえつつ ▼看護師などの離職届出を活用した復職支援 ▼医療機関の勤務環境改善による離職防止—などを進めることを医療計画に記載することになります。

さらに、「特定行為に係る看護師の研修制度」を推進するために、「指定研修機関・実習を行う協力施設の確保など、研修体制の整備に向けた計画」も医療計画の中に明記することになります。2014年から、一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で手順書に基づいて38の診療所の補助(特定行為)を実施することが可能になりましたが、特定行為研修を行う指定研修機関は25都道府県に40機関しか設置されていません(2017年3月末時点)。医療計画への研修体制整備計画を記載することで、「全都道府県における指定研修機関の設置」や「より身近な実習施設の設置」が期待されます(詳細はこちら)。

特定行為研修を行う施設(指定研修施設)の整備に関する計画を医療計画に記載する際のイメージ(その1)(図 略)

特定行為研修を行う施設(指定研修施設)の整備に関する計画を医療計画に記載する際のイメージ(その2)(図 略)
 
 また、病院において歯科医師を確保することが医科歯科連携推進に向けて極めて効果的なことから、厚労省内に設置されている「歯科医師の資質向上等に関する検討会」の議論を踏まえ、例えば「病院における歯科医師配置」などを医療計画に記載することなどを検討していきます。

脳卒中や心血管疾患、急性期から回復期・維持期までの一貫した医療提供体制を構築

 医療計画では、地域の適切な医療機能を確保するために、5疾病(▼がん ▼脳卒中 ▼心血管疾患 ▼糖尿病 ▼精神疾患)・5事業(▼救急医療 ▼災害時医療 ▼へき地医療 ▼周産期医療 ▼小児救急医療を含む小児医療)、および在宅医療について、患者動向・医療の現状を把握し、「必要な医療機能」や「各医療機能を担う医療機関などの名称」「数値目標と必要な施策」などを記載することも求められます。

30日の検討会では、▼脳卒中 ▼心血管疾患 ▼精神疾患 ▼周産期医療体制—の整備計画のベースとなる厚労省検討会の状況が報告されました。

このうち脳卒中・心血管疾患については、急性期だけでなく「回復期から維持期まで一貫した診療提供体制の構築が必要」との考え方が打ち出されました。今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「画期的である。素晴らしい考え方である」と称賛しています。

脳卒中においては、▼急性期医療機関で急性期治療(t-PA治療など)と急性期リハビリを実施する ▼回復期医療機関で回復期リハビリと亜急性期治療(再発予防、基礎疾患・危険因子の管理、合併症への対応など)を行う ▼維持期医療機関では、かかりつけ医による維持期治療(再発予防、基礎疾患・危険因子の管理など)を、老人保健施設や通所リハビリ事業所などで維持期リハビリを提供する—という機能分担を行うとともに、各医療機関で患者情報を共有し、面による疾病管理を行う構図が描かれています。

脳卒中にかかる診療提供体制のイメージ(図 略)

 
また急性期医療においては、施設間ネットワークを構築し、24時間専門的な診療提供体制の確保が求められますが、医療資源が乏しい地域では、遠隔診療なども活用した「平均的な救急搬送圏の『外』との連携」体制構築も求められます。

脳卒中にかかる急性期医療提供体制のイメージ(図 略)

 
なお、より多くの施設でt-PA治療などを行うべきか(均てん化)という点については、「適切性・安全性を担保しながら進める必要がある」と慎重な姿勢を崩していません。
 
一方、心血管疾患については、入院医療において▼急性期治療・リハビリ ▼亜急性期治療(基礎疾患・危険因子の管理、合併症への対応など) ▼回復期リハビリ(患者教育、食事・服薬指導、運動療法など)―を機能分化・連携の上で提供するとともに、外来医療において ▼回復期リハビリ(再発予防に向けた生活指導、危険因子の是正、運動療法など) ▼維持期治療 ▼維持期リハビリ(定期外来受診による基礎疾患・危険因子の管理、生活習慣の改善など)―を行う体制を提示しました。ここでも各施設の連携が重視されます。

心血管疾患にかかる診療提供体制のイメージ(図 略)

心血管疾患にかかる急性期医療提供体制のイメージ(図 略)
  
厚労省は、医療計画へのこうした内容の記載を求めることについて、社会保障審議会・医療部会の了承を待って、近く関連通知の再発出を行います(今夏予定)。

   

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO1830002029062017EE8000/
医師、自らの改革に消極的 自由開業「制限不要」4割
2017/6/30 1:34日本経済新聞 電子版

 日本経済新聞社などが医師1030人に対して行ったアンケート調査では「このままでは国民皆保険の維持は不可能」と危機感を抱く医師が半数を占めた。だが医師が自由に開業することの制限などに対しては「必要なし」とする回答が4割に上り、自らの改革には消極的だった。医師の地域や診療科の偏在解消は医師数の増加ではない対応を求める声が多かった。

 医学部を卒業して医師免許を取得すれば、医師はどこでも開業し、法律で定められた診療科であれば自由に標榜できる。こうした「自由開業」「自由標榜」のため都市部や一部の診療科に医師が集中して過剰な医療を提供するなど医療費の高騰の一因にもなっている。

 今回の調査でも多くの医師がこうした偏在を大きな問題と受け止めていた。だが自由開業や自由標榜の見直しの必要性についても聞いたところ、「必要なし」が42%で、「必要がある」(29%)を上回った。「選択の自由がある」という意見が目立った。

 政府は偏在を解消する目的で医学部の定員増や医学部新設で医師数を増やしてきた。今回の調査では偏在の直接的な背景について67%が「医師数の不足ではない」と回答。「都市部に開業医が多すぎる」などと指摘し、単なる医師数の増加は偏在の解消にならないと考えていた。

 対策としては、医学部で一定期間の地域での勤務を義務付ける代わりに奨学金を出す「地域枠」の政策を都道府県などが拡大している。約16万8千人の会員のうち半数が開業医の日本医師会の横倉義武会長は地域枠によって「地域間の偏在はここ10年間で相当解消するだろう」と話す。

 ところが勤務医が8割を占めた今回の調査では地域枠が偏在対策になっているかを聞いたところ「そうは思わない」が51%で「そう思う」は26%にとどまり、医療現場の実感と温度差があった。

 対策にならない理由として、福岡県の開業医男性(49)は「(医師)免許自体を地域限定にしない限り、医師は都会に集まる」と指摘する。

 今回の調査で「地方勤務の意思があるか」と尋ねたところ、49%が「意思がある」と回答した。ただ首都圏や愛知、大阪、福岡などで働いている人だと「意思あり」の回答は20~30%台だった。

 「意思がない」と回答した人の理由では「家族の理解(子どもの教育など)」が46%とトップ。年代別にみると、40代では67%が理由に挙げた。

 現役の医師でもあるメドピアの石見陽社長は「地方だと医師が少なくて多忙だったり、カバーする範囲が多岐にわたったりして、特に若い医師は勉強会などにも出やすい都市部を選ぶ傾向がある」と話している。


https://www.m3.com/news/iryoishin/542097
真価問われる専門医改革
新専門医制、「7月7日の理事会で準備が整う」
松原副理事長、日本専門医機構が社員総会開催

レポート 2017年6月29日 (木)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本専門医機構は6月29日、2017年度の第1回社員総会を開催、2017年度の事業報告や決算報告を説明したほか、「専門医制度新整備指針」と運用細則改訂案を報告した。

 総会後、同機構副理事長の松原謙二氏(日医副会長)は、「私たちがやっている方向については、総会で了承された」と述べ、「7月7日の次回理事会で、運用細則改訂案の了承が得られれば、準備は完全に整うことになる。各学会の準備もできている」と説明。2018年度からの新専門医制度開始の判断については、「厚生労働省と話し合いを進めている」と述べ、最終的には塩崎恭久厚労相の了解が得られるか否かにかかっているとの見通しを示した。

 「専門医制度新整備指針」は、既に6月2日の理事会で了承済み(『新整備指針は4点改訂、総合診療専門医の基準も了承』を参照)。

 運用細則改訂案は、厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」で修正が求められ、残された課題は、研修プログラムの精査などを行う場である「都道府県協議会」への情報提供のあり方。6月12日の同検討会では、奈良県知事の荒井正吾氏が、実効性を高めるために、「研修施設が、協議会に協力し、直接必要な情報提供や協議を行うことを明確にする必要がある」と提案(『「基幹施設は大学のみ」残る課題、7学会にヒアリング』を参照)。運用細則改訂案は、「直接」ではなく、日本専門医機構を通して情報提供等を行う仕組みを想定していた。

 この意見の趣旨を反映し、運用細則が改訂される見通し。「必要な情報が求められて出すのは当然。ただし、日本専門医機構にも情報が来ないと、何が起きているかが分からなくなるので、報告してもらうことになる」(松原副理事長)。



https://www.m3.com/news/iryoishin/541025
日医代議員会
新専門医制「2018年度開始に向け全力を傾注」、羽鳥常任理事
第140回日医代議員会、都道府県協議会への関与要請

レポート 2017年6月26日 (月)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会常任理事の羽鳥裕氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、「新たな専門医の仕組みについては、専攻医の不安を取り除くためにも、2018年度の開始に向け、全力を傾注していく」と語り、日医は日本専門医機構や厚生労働省と“キャッチボール”しながら、新専門医制度をより良い仕組みにしていく方針であり、都道府県医師会に対しても、都道府県協議会において主導的な立場で関与するよう要請した。

 都道府県協議会は、各関係者が集まり、新専門医制度の地域医療への影響を検証するために、個々の研修プログラムの専攻医の応募や採用予定の状況を把握し、協議する場。厚労省は各都道府県に対し、都道府県協議会の設置と活用などについて、改めて近く通知を発出し、その徹底のため、各都道府県の担当者への説明会を開催する予定だという。

 さらに日本専門医機構の理事でもある羽鳥常任理事は、「仮に、新たな専門医の仕組みについて、医師偏在などの地域医療への影響が明らかになった場合には、都道府県協議会での議論を踏まえ、日本専門医機構においても、次年度の対応、見直しなどを行っていく」と説明した。

 新専門医制度について、「医師の地域偏在を助長する可能性が高い」として、日医の見解を個人質問したのは、新潟県代議員の小池哲雄氏。同制度については、2016年12月に「専門医制度新整備指針」が示され、この6月には改訂された。小池氏は、「大学病院以外の病院も基幹施設になれる基準とする」などの変更がなされたものの、「机上で決められたようにしか思えない」と指摘した。

 医師の偏在、「日医も同様の危機感」

 羽鳥常任理事は、小池氏の質問に対し、(1)大学病院以外の病院も基幹施設になれる基準とする、(2)常勤の専門研修指導医がいない施設でも、医療の質を落とさなければ、研修施設群に加わることができる、(3)各専門研修プログラムを承認する際、都道府県協議会都の事前協議が前提、(4)専門医の取得は義務ではない――という点については、6月の日本専門医機構の理事会で、「専門研修新整備指針」と運用細則の改訂が承認されたと説明(『新整備指針は4点改訂、総合診療専門医の基準も了承』を参照)。

 「しかし、新整備指針に盛り込むだけでなく、各基本領域の学会が、専門研修プログラム整備基準やモデル専門研修プログラムにも同様の記載をし、運用の際には実効性を担保することが重要。日医としても、日本専門医機構における精査に積極的に協力していく」(羽鳥常任理事)

 さらに厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」では、原則として都道府県ごとに複数の基幹施設を置くことが求められる、8つの基本領域の学会の対応状況についてヒアリングを行ったことを紹介した(『内科専門医、基幹施設8割以上は市中病院』、『「基幹施設は大学のみ」残る課題、7学会にヒアリング』を参照)。羽鳥常任理事は、「その結果、基幹施設が1カ所しかない県があったとしても、学会が基幹施設を複数にすべく調整を進めていること、出産・育児・介護等による研修中断者の柔軟な研修を可能としていること、専攻医の勤務先医療機関や研修状況の把握管理のためのシステムの設置あるいは準備していることなどが明らかとなった」と述べ、「制度的にも医師の偏在を助長することがないよう、対応を整えている」と理解を求めた。

 羽鳥常任理事は、医師の地域偏在について、「日医も同様の危機感を持っている」と述べ、入学時、臨床研修時、専門研修時など、多角的に対応する必要があると指摘。厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」で、日医としても具体的な対策が実践できるよう、引き続き主張していく方針を掲げた。

 以上の答弁に対し、小池氏は、2004年度の臨床研修必修化に伴い、医師の地域偏在が進んだと指摘、「何らかの問題があった時には、1年(次年度)と言わず、早急に対応してほしい」と要望。羽鳥常任理事は、新専門医制度で同様のことが起きないよう、努力しているとし、「もし不都合が出てきたら、直ちに見直すことは、日本専門医機構の理事全員が承知している」と答えた。



https://medical-tribune.co.jp/rensai/2017/0630509244/
専門医試験は専門性を担保しているか
神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授 岩田健太郎
2017年06月30日 07:00 Medical Tribune

研究の背景:米国では専門医資格の維持でもめている

 僕は日本と米国の両方で内科、感染症の専門医資格を持っている。米国の場合は専門医資格の維持、更新条件が厳しく、またルールがコロコロ変わるので油断できない。

 日本と違い、米国では専門医制度が各専門領域の学会から独立しており、例えば内科系ならAmerican Board of Internal Medicine (ABIM)がこれを統括している。米国の内科学会(American College of Physicians; ACP)や医師会(American Medical Association; AMA)あるいは感染症医の専門家団体(Infectious Diseases Society of America; IDSA)は、専門医制度とは直接関係を持たない。利益相反を避け、専門医資格の独立性を担保するためだ。

 一方、日本では専門医資格が学会の"ご褒美"になっている(ところがある)。分野によって専門医取得のハードルの高さには差があるが、多くの学会は「学術集会に参加し、あるいは発表し」「学会に○年間所属し」「学会が出版する学術誌に論文を掲載する」といった、学会への貢献が専門医資格取得の条件にカウントされる。学会に貢献したご褒美としての専門医資格、という側面があるのだ。このような利益相反も、せめて専門医資格が医師の臨床能力を担保しているのであれば、まだよいのだが、果たして。

 とはいえ、米国の状況も万々歳とはいえない。近年批判されているのが、ABIMの"行き過ぎ"である。すなわち、ABIMは各専門医の専門医資格維持、更新のためにMaintenance of Certification (MOC)という課題をこなすことを義務化したのだが、これが面倒くさすぎて現場の大反感を買ったのだ。

 Teirstein PS. Boarded to Death -- Why Maintenance of Certification Is Bad for Doctors and Patients. New Engl J of Med 2015 Jan 8; 372(2): 106-108.

 ABIMも反論する。確かにMOCは面倒くさいかもしれない。しかし、プロとは面倒くさいものなのだ。プロの実力を担保するには、努力し続けなければならない。つべこべ言わんと努力せんかい、とまでは言っていないが、専門医資格維持のためには質の担保は欠かせないのだ、という主張は曲げない。そして、それは正しい。

 Baron RJ, Braddock CHI. Knowing What We Don't Know -- Improving Maintenance of Certification. New Engl J of Med 2016 Dec 29; 375(26): 2516-2517.

研究のポイント:試験問題における症状の出題頻度を実臨床と比較

 今回紹介する研究は、数あるMOCの中でも内科MOC試験(IM-MOC examination)という、内科専門医資格維持のために定期的に行う試験の評価である。特に、一般内科医(general internal medicine)のプラクティスと噛み合っている(concordant)かどうかが、本研究の主眼である。外来そして入院診療のカルテデータを用い、そこで一般内科医が実際に見る病状(condition)の頻度と、試験問題の出題頻度が一致しているかどうかが検証された。

 Gray B, Vandergrift J, Lipner RS, Green MM. Comparison of Content on the American Board of Internal Medicine Maintenance of Certification Examination With Conditions Seen in Practice by General Internists. JAMA 2017 Jun 13; 317(22): 2317-2324.

 まず、国立外来ケアサーベイ(National Ambulatory Medical Care Survey; NAMCS)の2010〜13年のカルテデータを用い、一般内科医が遭遇したはずの医学的な状況を調べた。専門外来のデータは除外しており、あくまで一般内科外来のデータである。1万3,832回の外来受診の主病名がカウントされた。

 次に、入院患者について国立病院退院サーベイ(Naitonal Hospital Discharge Survey; NHDS)のデータを抽出した。入手可能な最新のデータ、2010年のものを用いている。18歳以上の患者が対象だ。10万8,472回の入院データがカウントされた。

 対するIM-MOC試験問題は2010〜13年のものを用いた。診療頻度と出題頻度を比較し、0.5標準偏差(0.5SD)以内に入っていれば(外来0.74%, 入院0.51%)、"噛み合っている"と判断した。その結果、69.0%(95%CI 67.5~70.6%)の質問が、プラクティスと合致していた。逆に、30.97%(同29.43~32.51%)の質問は"噛み合っていない"ことが分かった。

 特に、外来受診数や入院数に比べて問題数の頻度が高かったのは肝疾患、血液悪性疾患、カルシウム系代謝疾患、間質性肺疾患、心弁膜疾患、心外膜疾患などである。例えば、肝疾患の出題頻度は2%強であったが、外来で見る頻度はわずかに0.28%, 入院患者では0.64%にすぎなかった。

私の考察と考え方:日本の専門医試験は第三者的吟味に耐えうるか

 既に述べたように、米国の専門医制度は問題ありありで批判も多い。しかし、その批判が妥当であるかどうかを学術的に検証しようという態度。ここが素晴らしいと思う。

 専門医試験は、専門医の臨床能力に対する質を担保しなければ意味がない。しかし、しばしば試験は"試験に出しやすい" "出題者の学問的興味" " ひっかけ問題にしやすい" " 重箱の隅突き"になりがちである。しかし、試験はあくまでも現場での診療に関連しており(relevant)、その問題は臨床能力を反映させるものでなければならない(valid)。ABIMのIM-MOC試験はそこそこ実際のプラクティスを反映しており、しかしある程度は的外れであることが判明した。これを受けてABIMは、さらに実際のプラクティスを反映するよう、試験を改善することであろう。

 翻って日本の試験問題は、専門医制度は、このような第三者的な批判吟味に耐えうるものであろうか。実際のプラクティスと合致しているであろうか。他山の石として考えてみるべきだろうし、同様の検証は行うべきだろう。日本の専門医試験は、各領域のサブスペシャリストが"自分目線"で問題をつくっており、"一般内科医のプラクティス"という視線を欠いているように僕には思える。この点、ぜひ検証してみるべきだと考える。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540332?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD170630&dcf_doctor=true&mc.l=231946583&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e
医療維新
「総合医の養成」は地域病院の使命 - 花輪峰夫・秩父病院院長に聞く◆Vol.2
行きすぎた専門医志向に危機感

レポート 2017年6月30日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

――今年4月の日本外科学会定期学術集会では、特別企画「今こそ地域医療を考える」の中で、「研修医の視点に学ぶ格差解消への模索と地域医療の役割」と題してお話しをされていました。

 私自身にも言えることですが、近年医師個人の対応能力は大幅に縮小していると言わざるを得ません。特に若い医師達は、極端な専門医志向と教育の結果、その傾向が著しいと思います。あるとき、当院に来ていた研修医が「目からウロコでした」と言ったのですが、何かと思ったら「アッペって開腹するんですね。こんなに直ぐ終わるのですか」。

 私の方が目玉が落ちそうになりました。今や鏡視下手術が全盛ですが、10分やそこらで終わる小児のアッペやヘルニアを、挿管全身麻酔下、腹腔鏡下で行うことには納得がいきません。私は自分の孫にはそうした手術をやりたいとは絶対に思いません。

 もちろん、鏡視下手術は素晴らしい手術です。ラパコレについては、当院では1987年にフランスで行われた5年後の1992年には導入し、今や胆嚢切除の8割以上を行っています。ただ、若い医師への教育的観点からみれば「何でも鏡視下手術」はいかがなものでしょうか。開腹も、手縫いも、糸結びもできない外科医ができるとすれば恐ろしいことです。

――医師養成の在り方についてはどのようなお考えでしょうか。
 今の初期臨床研修制度はどちらかと言えば賛成です。直ぐに役立たたないかもしれませんが、たとえそうであっても、医師の人生は長いので、2年ぐらいいいじゃないかと思います。ローテーションには外科が必須であってほしいとはお思いますが。

 現在は専門医志向が行き過ぎています。実際の地域医療の現場では、各科の専門医がそろっているわけではなく、特に夜間救急では1人で何でも診なくてはならず、ほとんどが自分にとって専門外です。どんな医師でも、ある程度はオールマイティに対応でき、最低限トリアージができなくてはならないはずです。

 大学病院では「訴訟が怖いから専門外の患者は診るな」と教育しているらしいですが、これは患者を断る正統な理由にはならない。それが通ると地域医療は崩壊し、医師の権威は地に落ちてしまいます。

――どのような医師養成の在り方が望ましいのでしょうか。
 今求められているのは「総合医」の養成でしょう。それは新しい総合診療専門医とは違います。総合医には背骨が必要で、何かの専門医を取った上で、幅を広げていくべきです。進路に迷っている若手には、総合診療専門医ではなく、まず外科か内科の専門医を取ることを勧めています。

 人を癒やすという意味において、また若い医師の教育や自己研鑽の場として、地域の臨床医療は、大学病院などに劣っているとは思っていません。もちろんどちらが良いと競うべきものではなく、お互いが補完し合うべきでしょう。

 私は総合医を「器が大きく、懐が深く、成熟度の高い医師」と定義したいです。それは3年程度ではできないです。だからこそ、「総合医の養成」は地域病院の使命だと考えています。

――病院にとって研修医を受け入れる意義はどのようなものでしょうか。
 当院は臨床研修の協力施設として、埼玉医科大学病院、同国際医療センター、同総合医療センター、日本医科大学付属病院、同千葉北総病院、同武蔵小杉病院の研修医を受け入れています。2005年度からこれまでに既に100人以上の先生方が当院で学んでおります。

 研修医を受け入れるのは負担にもなりますが、総じて若い人がいるというのは好ましいと思っています。戦力としてだけでなく、何より病院に活気がもたらされます。毎年、3月は大学からの研修がなく、受け入れが減りますが、院内も何となく活力が消えた感じとなります。

 さらに言うと、夜間救急に応援に来てくれる先生の多くは、うちで研修をしたOBです。うちのスタッフでも、私もそうですが、副院長、診療部長、外科部長も地元の熊谷高校出身です。地元で育った人、縁を感じてくれた人は愛着心も生まれます。病院を知ってもらえるというのも、大きなメリットです。

 2015年度には当院で学んだ研修医やOBらが集う「秩父花仁塾」という私塾を作りました。塾では困った症例をともに検討したり、相談を受け付けたりするほか、レジャーや懇親会も行っています。何人が「当院で教わった」という自覚があるか分かりませんが、「一緒に学んだ」ことは確かです。何かしらをつかんでくれていると嬉しいです。



https://www.m3.com/news/iryoishin/541378
臨床研修制度の見直し
臨床研修、必須29症候、25疾病を提案
福井座長「求める能力定めてからローテーションを議論」

2017年6月27日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 厚生労働省の第14回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ(座長:福井次矢・聖路加国際病院長)が6月26日、臨床研修で必須とする症候や疾病について議論した(資料は、厚労省のホームページ)。必須経験を現状の52症候、88疾病から、29症候、25疾病に厳選するとした研究班案が説明され、今後約10カ月をかけて議論していく。

 2020年度からの導入を目指して議論が進んでおり、前回までで到達目標が定まり、3月に開かれた医道審議会医師分科会医師臨床研修部会で承認された。(『医学教育と臨床研修、シームレス化進む』を参照)。今後は到達目標を踏まえて、「方略」と「評価」について議論を進めていく。26日は厚労科研費「医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究」(研究代表:福井氏)が作成した案について、構成員が意見を出し合った。

 「実務研修の方略」(案)では、研修期間を2年以上として、そのうち8カ月以上は基幹型臨床研修病院で行うことを定め、1年以上は同病院で行うことが望ましいと提案。現状では、52症候、88疾病となっている経験症例を、「必須なものだけに絞り込みたい」(福井氏)として下記、29症候、25疾病に絞る考えを示した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/541378
臨床研修制度の見直し
臨床研修、必須29症候、25疾病を提案
福井座長「求める能力定めてからローテーションを議論」

2017年6月27日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 厚生労働省の第14回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ(座長:福井次矢・聖路加国際病院長)が6月26日、臨床研修で必須とする症候や疾病について議論した(資料は、厚労省のホームページ)。必須経験を現状の52症候、88疾病から、29症候、25疾病に厳選するとした研究班案が説明され、今後約10カ月をかけて議論していく。

 2020年度からの導入を目指して議論が進んでおり、前回までで到達目標が定まり、3月に開かれた医道審議会医師分科会医師臨床研修部会で承認された。(『医学教育と臨床研修、シームレス化進む』を参照)。今後は到達目標を踏まえて、「方略」と「評価」について議論を進めていく。26日は厚労科研費「医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究」(研究代表:福井氏)が作成した案について、構成員が意見を出し合った。

 「実務研修の方略」(案)では、研修期間を2年以上として、そのうち8カ月以上は基幹型臨床研修病院で行うことを定め、1年以上は同病院で行うことが望ましいと提案。現状では、52症候、88疾病となっている経験症例を、「必須なものだけに絞り込みたい」(福井氏)として下記、29症候、25疾病に絞る考えを示した。

【経験症候】
下記の症候を呈する患者について、病歴、身体所見、簡単な検査所見に基づく臨床推論と、病態を考慮した初期対応を行う。
ショック、体重減少・るい痩、発疹、黄疸、発熱、もの忘れ、頭痛、めまい、意識障害・失神、けいれん発作、視力障害、胸痛、心停止、呼吸困難、吐血・喀血、下血・血便、嘔気・嘔吐、腹痛、便通異常(下痢・便秘)、熱傷・外傷、腰・背部痛、関節痛、運動麻痺・筋力低下、排尿障害(尿失禁・排尿困難)、興奮・せん妄、抑うつ、妊娠・出産、成長・発達の障害、終末期の症候(29症候)

【経験疾病】
下記の疾病を有する患者の診療に当たる。
脳梗塞・脳出血、脳動脈瘤・くも膜下出血、認知症、心筋梗塞、心不全、大動脈瘤、高血圧、肺癌、肺炎、急性上気道炎、気管支喘息、COPD、胃癌、消化性潰瘍、胆石症、大腸癌、腎盂腎炎、尿路結石、腎不全、高エネルギー外傷・骨折・捻挫、糖尿病、脂質異常症、気分障害、統合失調症、依存症(ニコチン・アルコール・薬物等)(25疾病)

 議論の難航が予想される「ローテーションする分野・診療科」については、研究班で煮詰まっていないとして次回以降に提示する。福井氏は「背景にある考え方は、『こういうことを身に付けてほしいから、こういう診療科をローテーションする』という論理構成にしたい。最初に診療科を決めるようとすると議論が発散してしまう。2004年度の必修化の前にさんざん経験している」と説明した。

 評価については、各分野・診療科のローテーション終了後に指導医、上級医、医師以外の医療職が、研修評価表を用いて評価し、研修管理委員会で保管、少なくとも年に2回、フィードバックを行うこととする。

 研修評価表は「A. 医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)に関する観察記録・コメント」と「B. 資質・能力に関する観察記録・試験 」の2つを提案。

 Aでは「社会的使命と公衆衛生への寄与」「利他的な態度」「人間性の尊重」「自らを高める姿勢」について、「安心/称賛」「観察機会なし/NA」「心配/要注意」の3段階で評価する。

 Bでは「医学・医療における倫理性」「医学知識と問題対応能力」など9項目について、「A. 医師として完成されたレベル」「B. 臨床研修の終了時点で期待されるレベル」「C. 改善の余地があるレベル」「D. 大きく改善する余地があるレベル」の4段階で評価することを求める。

 日本医師会常任理事の羽鳥裕氏は「外科、産婦人科、小児科の必修に復帰してほしい」、美郷町地域包括医療局総院長の金丸吉昌氏は「小児、高齢者の領域を経験疾病として入れるようにしてほしい」とそれぞれ指摘。岡山県精神科医療センター理事長の中島豊爾氏は「いろいろな患者を見ておくのは医師として必須なこと。合わせる気がない人ともコミュニケーションを取る技術が要請されており、(精神科)急性期病棟の経験が必要と断言しておく」と述べた。

 評価を巡っては、東京慈恵会医科大学内科准教授の古谷伸之氏は、自大学では看護師による評価を取りやめたと紹介。「全ての施設で同じように360度ができるわけではない。看護師と医師では見えている点も当然違う。同じ研修評価表で良いのかを検討していく必要がある」と指摘。聖マリアンナ医科大学医学部医学教育文化部門教授の伊野美幸氏は「多職種からの評価は必要であり、教育やアセスメントの仕方を教えていく必要がある」とした。中島氏は評価項目の「医師として完成されたレベル」という表現について、「『完成』ではなく『十分なレベル』ではどうか』と提案した。

 福井氏は寄せられた意見に対して「10カ月かけてブラッシュアップしていきたい」と応えた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/542509
医療維新
「回復期不足」本当か、把握必要
日病協の原澤議長が記者会見で見解

レポート 2017年6月30日 (金)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本病院団体協議会議長の原澤茂氏は6月27日の記者会見で、地域医療構想の病床機能報告制度で、「回復期機能が足りない」との解釈が広まっていることについて、「回復期が足りないというデータがどこの地域でも出てくるが、回復期として使われているが回復期として報告していない病床があることは、日病協として理解している。回復期の病床が本当に足りないのかどうかは、十分に検証する必要がある」と述べ、毎年の病床機能報告で実態を正確に把握していく必要があるとの考えを示した。

 「回復期機能が不足」との解釈については、厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の構成員でもある日本医師会副会長の中川俊男氏が、回復期に入ってもそのまま急性期病床で入院を続けているケースが多く、「回復期機能の病床が不足している、というのは誤解」との見解をたびたび表明している(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』、『「急性期指標、地域医療を混乱に陥れる」、中川副会長』を参照)。原澤氏は、中川氏の発言についても、「全くその通り。実際、急性期として報告している病床でも、回復期の患者が入院しているのは当たり前のこと」と賛意を示した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/542373
日医代議員会
地域包括ケア病棟、「中小病院評価を」
第140回日医代議員会、石川常任理事

2017年6月30日 (金)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本医師会常任理事の石川広己氏は6月25日の第140回定期代議員会で、地域包括ケア病棟・入院医療管理料の運用に関して、「経営母体自体を問うものではない。民間にせよ公立にせよ、地域に密着し、地域包括ケアを支える中小病院を、地域の実情も踏まえつつ、今後もしっかりと評価するべきだ」と述べ、日医として中央社会保険医療協議会で主張していく考えを示した。実態がより表現できるよう、「在宅復帰率」ではなく、「病床機能連携率」に変更することも提案した。

 北海道代議員の小熊豊氏の個人質問への答弁。小熊氏は地域包括ケア病棟(床)の届出が2017年4月末現在で1894病院、5万9989床と推計され、急性期病棟からの転換が進んでいるとの地域包括ケア病棟協会のデータを紹介し、地域包括ケアシステムの活性化に貢献する一方で、各医療機関の病床利用や医療機能の構築、経営上の観点からも重要視されていると指摘。病院の経営母体にかかわらず、地域包括ケア病棟の活用が在宅医療や地域包括ケアの推進に不可欠だとして、日医の見解を質した。

 石川常任理事は、中医協の調査で200床未満の中小病院からの届出が64%、200床以上の大病院からが36%となっており、急性期の大病院が空床対策で地域包括ケア病棟を設置する動きや、公的医療機関が組織的に参入して、民間中小病院と競合しているケースもあると指摘(『地域包括ケア病棟、「大病院の届出、本来の趣旨にあらず」』を参照)。「急性期の大病院が、経営のために地域包括ケア病棟の届出を行うのは好ましくないと考えている。中医協で分析を依頼しており、本来の趣旨に沿った運用がされているか、しっかりと検証する」と述べた。

 また、中医協の調査では、地域包括ケア病棟で極めて高い在宅復帰率であるとの結果が出ており、地域医療連携が進んでいることが示されたと指摘。一方で、連携できる医療機関、施設がない地域もあるとして、「今後の課題として、このような地域で孤軍奮闘している中小病院への対応も必要と考えている」と述べた。在宅復帰率という言葉が医療現場の実態を表しておらず、日医としては「病床機能連携率」などという表現に修正すべきと主張していることにも言及した(中医協の調査結果は、厚生労働省のホームページ)。

 中小病院への対応を強調した石川常任理事に対し、小熊氏は、自身の所属先が498床の大病院で、地域包括ケア病棟を1棟届け出ていることを紹介した上で、医療資源の豊富な都市部を除けば、急性期、回復期、慢性期をいずれもカバーしなくてはならない場合もあると主張。「入院患者90%以上が、本人も家族も満足して帰られている。他にないためだ。回復期(リハビリテーション病棟)が。そういう地域もあるのだということを、考えてほしい」と強調した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/542021
医療維新
四病協の「働き方検討委」、議論スタート
委員長は岡留日病副会長、「まずは現状認識から」

レポート 2017年6月29日 (木)配信水谷悠(m3.com編集部)

 四病院団体協議会は6月28日、「病院医師の働き方検討委員会」の第1回会合を都内で開き、医師の働き方改革についての議論を開始した。委員長として日本病院会副会長の岡留健一郎氏を選任。岡留氏は、今後の議論の進め方として、「現状を認識することが最初。データがないと、主張にも迫力がない」と説明し、時間外労働や宿日直の現状などについての実態調査を行い、 国の議論の場に提示する方針。調査は、7月から8月にかけて各団体の加盟病院から合計20から30程度の施設を抽出して実施、今年内をめどに結果をまとめる考えを示した。

 検討委員会の委員は以下の通り。

日本病院会:岡留健一郎副会長、中井修常任理事、安藤亮一・武蔵野赤十字病院副院長
全日本病院協会:猪口雄二会長、神野正博副会長、大澤秀一・平成立石病院院長
日本精神科病院協会:長瀬輝諠副会長、岡本呉賦常務理事、佐久間啓・看護・コメディカル委員会委員
日本医療法人協会:伊藤伸一会長代行、馬場武彦副会長、竹内丙午・菅間記念病院副院長
 安藤、大澤、竹内の各氏は各団体の役員ではなく、現場に比較的近い立場での視点から意見を提供することが期待される。岡留氏は「3人は今も宿直に入っているか、最近まで入っていた医師たち。管理者の立場からでは一方向しか見えないが、現場にいた人なら現状がよく分かる」と話した。

 次回会合は7月28日を予定。調査の素案をこの日までに各団体でまとめ、最終的な調査票を取りまとめる方針だ。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540967
日医代議員会
「医療体制維持と医師自身の健康両立を」
第140回日医代議員会、働き方改革で横倉会長

レポート 2017年6月26日 (月)配信水谷悠(m3.com編集部)

 日本医師会の横倉義武会長は6月25日の第140回日医定例代議員会で、医師の働き方改革で目指すべき方向性として、「医師自らがその議論をリードし、質の高い医療提供体制の維持と、医師自身の健康確保が両立するような制度の確立が重要だ」と述べ、6月21日に第1回会議を開催した日医の「医師の働き方検討委員会」での議論を基に、国への提言を行っていく考えを示した。

 医師の働き方改革については、富山県代議員の馬瀬大助氏が代表質問で、30歳代の勤務医の時間外労働が月80時間を超えるとの報道を紹介し、「このような就労環境が果たして人間として許される範囲なのか、また医療安全の視点からも危険と隣り合わせではないか。早急に意見集約を行い、日医の見解を表明するべき」と指摘した。

 これに対し横倉会長は、2016年1月に過労で自殺した新潟県内の女性研修医に言及し、「過度の時間外勤務は国民、患者にとっても医師にとっても決して良い結果を招くものではない。こうした事態が繰り返されることのないよう、医師の就労環境改善に向けて今後も会を挙げて取り組んでいく」と述べた。

勤務医会員増加策を

 馬瀬氏は、日医の組織強化策についても質問。日医や多くの都道府県医師会で、勤務医会員の数が開業医会員を上回っているにもかかわらず、勤務医全体のうちで日医会員は半数にも満たないとし、「組織強化は、勤務医の多くを会員とすることにかかっている」と指摘。さらに、勤務医会員の代表としての理事や、女性医師会員代表としての理事の選出手続きを導入することを求めた。

 横倉会長は、理事の選出は代議員会の専権事項で各ブロックでの調整により行われてきたため、日医執行部によるものではないとする一方で、「勤務医委員会の代表、男女共同参画委員会の代表を理事として迎えるというのは重要な提言と認識している。各ブロックの代表の方々に検討を強くお願いしたい」と述べ、各ブロックでの協議を促した。

 組織強化策に関連しては、宮城県代議員の佐藤和宏氏が個人質問で研修医の加入促進策について取り上げた。同氏によると、宮城県医師育成機構による合同研修会で、日医の医師賠償責任保険制度(医賠責)が民間保険などと比べて優れていることを説明して医師会入会を勧めているものの、多くが加入に至っていない。また、研修医等の郡市医師会の入会金が減免になっていなかったり、申込書が開業医と同じ形式になっていたりするなど、研修医加入促進策が十分ではない。同氏はこうした事例を引き合いに出し、研修医加入促進策を質した。

研修医の医賠責保険料引き下げ

 これに対し、日医の市川朝洋常任理事は、2015年度に導入した会費無料化や、研修医、若手医師への入会案内冊子の新規発行等に取り組んだ結果、研修医会員の数が2016年度に約1000人増加したと紹介。その上で、「医師会は三層構造のため、組織率を上げていくために、都道府県医師会、郡市区等医師会の協力が不可欠。医師会相互の綿密な連携を推進して、さらなる医師会組織の強化に努める」と述べた。

 2016年6月の臨時代議員会で要望が出た医賠責の保険料引き下げに関しては、今回の代議員会で、初期研修医 の保険料を年額3万3000円から1万5000円に引き下げることが決まった。市川氏は、引き下げが可能となった要因について、医療安全に対する会員の取り組みによって、医賠責の収支が安定してきたためと説明。日医が医学生向けに発行している情報誌『DOCTOR-ASE(ドクタラーゼ)』の次号に引き下げに関する情報を掲載するほか、研修医向けのチラシやホームページなども活用して加入促進に努めていく方針を示した。



https://www.m3.com/news/iryoishin/541140
医師の働き方改革とキャリア
日病「医師の働き方改革」、1年後目途に方向性
医師の勤務実態“見える化”、データを基に議論

レポート 2017年6月26日 (月)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本病院会会長の相澤孝夫氏は、6月26日の定例記者会見で、「医師の働き方改革」について日病独自に検討を進め、1年後を目途に方向性を打ち出すことを明らかにした。医師の勤務実態を明らかにするためにタイムスタディを実施、データに基づく議論を進める重要性を強調した。「医師の働き方改革」に関しては、四病院団体協議会や日本医師会などでも検討の場を設けており、調査結果などの情報を共有するとともに、広く一般にも結果を公開して、医師の働き方の実態を認識してもらう重要性を強調した。

 相澤会長は、会見の中で、「医師の働き方」の議論を進める際のデータの重要性を強調した。「調査を実施し、医師の働き方を“見える化”する。医師の働き方改革は、炯々に判断すると、日本の医療が崩壊、あるいは病院経営が成り立たなくなってしまう。非常に重要な問題であり、データに基づき、物を言っていくことが必要」。

 「医師の働き方」の“見える化”については、日医もその必要性を強調している(『医師偏在対策、カギは「地域医療構造の医師版」、中川副会長』を参照。政府は、時間外労働の上限規制の医師への適用について、2年以内に結論を得る方針。さまざまな検討の場が立ち上がる中で、医療関係団体が相互に連携を取りながら、どんな議論が展開されるか、今後が注目される。

 日病の検討の場は、既存の委員会で行うか、新たに委員会を発足させるかは未定。四病協の検討会の委員となる日病の3人の委員を軸に、議論が進む見通し。

 日病常任理事の関心高く

 6月24日の日病常任理事会は、さまざまな議題を予定していたものの、「医師の働き方改革」の議論に終始したという。

 相澤会長は、「病院経営者は、勤務医がやりがいを持って、健康で、いきいきと働く環境を作り、医療の質向上につなげたいと願っている」と前置きしつつ、外来診療時間など各種制約がある中で裁量労働制は適用できず、医師の業務の特殊性を鑑みつつ、「医師の働き方改革」を進めるには難しさがあるとした。

 24日の常任理事会で出た意見として、相澤会長は、(1)医師の勤務実態のタイムスタディ実施による、“見える化”の必要性、(2)日本の医療文化の特殊性(主治医制を基本としているため、グループ制導入が容易ではないなど)、(3)公的医療保険による制約(時間外受診の費用等を自由に設定できないため、医師の時間外手当の財源確保が難しいなど)、(4)医師不足、(5)グループ制導入など、組織で医療を提供していくためのマネジメント不足――などを紹介。

 特に、(1)の医師の勤務実態の“見える化”について、相澤氏は次のように語った。「医師の仕事内容を仕分けし、タイムスタディを実施し、データに基づき、議論をしていくことが必要。応招義務と言っても、どんな時に問題になり、どう対応すべきかという点なども明らかにしたい。医師の仕事についての一般の方の理解と納得を得るためにも、データの整備が求められる」。



http://www.medwatch.jp/?p=14450
働き方改革に向け、1年かけて独自に「勤務医の働き方」などのデータ収集—日病・相澤会長
2017年6月27日|医療現場から MedWatch

医師も「罰則付きの時間外労働の上限設定」の対象となるが、医療の特殊性を踏まえて2年間かけて適用方法などを検討することになった。この議論に向けて、1年ほどかけて、日本病院会独自で、(1)医師の働き方についてのタイムスタディ(2)グループ診療制の課題や実現可能性(3)医師不足の状況—などを調査し、見える化を行っていく—。

日本病院会の相澤孝夫会長は、26日の定例記者会見でこのような方針を明らかにしました。こうしたデータを厚生労働省や四病院団体協議会、日本医師会などが参画するであろう協議の場に提示し、「エビデンス・データに基づく議論」をしていく考えを強調しています(関連記事はこちらとこちら)。

「データに基づいた議論の必要性」を相澤会長は強調

罰則付き時間外労働の上限規制は、次のようなものです(関連記事はこちら)。

▼時間外労働の限度を「1か月当たり45時間、かつ1年当たり360時間」(時間外労働の限度の原則)とし、違反した場合には、特例の場合を除いて罰則を課す

▼労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする。かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける

▼上限について、▽2か月・3か月・4か月・5か月・6か月の平均で、いずれも80時間以内▽単月では100時間未満―を満たさなければならないとし、原則を上回る特例の適用は年6回を上限とする

病院の勤務医も、例外とはならずこうした上限規制の対象となることが明確になっています。しかし、医師には【応召義務】などの特殊性を踏まえた対応が必要なことから、▼改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用する▼医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る—こととされています。

相澤会長は、「今後1年間で、ある程度の方向性をつけていかなければならないと思う。日病としての対応方針をきちんと決めていかなければならない」と強調し、日病独自に(1)勤務医の仕事内容の仕分けや、タイムスタディ(2)グループ診療制(3)病院の経営状況(4)医師の不足状況—などについて調査検討していく考えを明らかにしました。

まず(1)では、救急医療に限らず、医師には応召義務がありますが、「どのような場合に、どういった業務が医師に求められ、実際にどのように対応しているのか」が必ずしも明らかになっていません。今般の調査では、こうした点を「見える」化することが狙いです。相澤会長は「一般の方にも、医師の労働内容について納得してもらえるようなデータ、情報の整備をしたい」と述べています。

また(2)では、主治医制が一般国民にも受け入れられている我が国において、グループ制を導入する場合の課題、あるいは導入が成功している事例などを調査分析する考えです。相澤会長は、「我が国では、医師が患者との関係性を大切にし、信頼と絆を重視して医療を提供してきた。しかし、例えば家族の都合で夜間に説明をしなければならないというとき、信頼関係を構築できていない主治医以外の医師が説明することも難しく、主治医自身がすべて対応している。こういうケースも含めて実態がどうなっているのかを明らかにする必要がある」旨を説明しました。

さらに(3)は、超過勤務をする医師に残業代や特別手当を支払わなければならないとされたとき(実際にそうした事例が少なくない)、病院にとっても極めて大きな経済的負担が課されます。こうした点についても、具体的にどれだけの人件費増となるのかなど、医師の仕事内容を分析した上でシミュレーションしていくことになります。

また(4)は、例えば脳血管治療が必要な患者が発生した場合に、地方であれば専門医はわずかしかおらず、少ない専門医が一手に引き受けている状況があるでしょう。このような専門医の配置状況なども、医師の働き方に大きく関係するため、実態を詳しく調べる必要があります。

 
こうした点について相澤会長は、「データに基づいた議論」の必要性を強調し、まず日病独自に調査を行う考えを示しています。その際、「どういう医療を提供しているのか、特に救急医療をどう提供しているかで、大きな差が出るのではないだろうか。病院による体制の違いなどが、どのくらい超過勤務に影響するのか、なども見えてくると思う」と相澤会長は見通します。

罰則付きの時間外労働上限規制を初めとする働き方改革は、病院経営の根本を揺るがしかねない大きな問題です。改革によって病院経営が立ち行かなくなれば、地域の医療提供体制に穴があき、住民が不利益を被る可能性もでてきます。日病の調査結果はもちろん、その後、「医師への適用」についてどのような議論が行われるのか、医療関係者のみならず、一般国民も注目する必要があります。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540807
日医代議員会
「急性期指標、地域医療を混乱に陥れる」、中川副会長
第140回日医代議員会、「議論の俎上に載せるのを阻止」

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、地域医療構想の「急性期指標」について、「この指標が独り歩きすれば、地域医療が混乱に陥るのは明白」と強く問題視した。その理由として、急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれているほか、地域医療構想は病棟単位だが、「急性期指標」は病院単位であり、結果としてケア・ミックスの病院では指標が低く出ることなどを挙げ、「病院全体のイメージを左右。いわば情報操作に当たる」と指摘した。


 「急性期指標」は、地域医療構想の「急性期機能」を定量的に示す研究の一つとして、5月10日の厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で公表された(『「急性期指標」、「見える化」の第一歩だが、注意必要』を参照)。同会議の構成員でもある中川副会長は、「ワーキンググループで唐突に公表されたのは、大いに問題。以降、議論の俎上に載せることを阻止している」と説明した。

 「急性期指標」について代表質問したのは、北海道代議員の藤原秀俊氏。そもそも地域医療構想は2025年に向けて調整会議で協議を行い、自主的に医療機能を検討していくのが目的であると指摘した上で、(1)「急性期指標」は、病院がその立ち位置を理解するのが目的であれば、都道府県ではなく、まず医師会、各医療機関に先に公表すべき、(2)不完全で問題が多いデータを今後どう扱うべきか――と日医の見解を質した。

 「病院全体のイメージを左右、いわば情報操作」

 中川副会長は、「急性期指標」には、主に以下の4点の問題があると指摘。

(1)急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれている。
(2)急性期の項目を点数化して積み上げ、これを病床数で割り算しているが、分母となる病床数には、療養病床も含めている。
(3)(1)や(2)の結果、民間病院に多いケア・ミックスの病院では、実態より低い急性期スコアが計算され、あたかも急性期機能が劣っているように見える。
(4)地域医療構想では病院の機能分化を病棟単位で進めているが、この急性期指標は病院単位。病院全体のイメージを左右しかねず、いわば情報操作に当たる。

 次に、「急性期指標」が取り上げられ、公表された経緯についての日医見解を説明した。

 まず地域医療構想は、「不足している病床機能を充足する仕組み」で、2025 年度の「病床の必要量」を見据え、各医療機関の自主的な取り組みや医療機関相互の協議を通じて、病床機能を収れんさせていくことが目的であると改めて理解を促した。地域医療構想調整会議では、各医療機関の実情に関する丁寧で慎重な議論が求められるとした。

 調整会議での検討に役立つように、「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、病床機能報告制度の見直しなども進めていると説明。特に「回復期機能」が「不足」と解釈される点について、次のように述べた。「多くの構想区域で病床機能報告制度の数と病床の必要量を比較し、回復期の病床が不足しているという計算結果が出ている。しかし、回復期の患者数は、医療資源投入量から計算された治療経過の病期における通過点の患者数にすぎない。現実には急性期から引き続き同じ病棟に入院しているケースが多く、回復期の患者が締め出されているわけではない。したがって、報告制度の数が、将来の病床の必要量に不足しているために、新たに回復期病棟を作らなければならないという発想は、慎重でなければならない」。

「唐突な公表、大いに問題」

 中川副会長は、「急性期指標が、一つの研究にすぎないとは言え、唐突に厚生労働省の検討会で公表されたことには、大いに問題」と語気を強めた。

 「急性期指標」は、厚生労働科学研究費補助金を受けた、奈良県立医科大学医学教授の今村知明氏らによる研究成果。一部の都道府県では、同指標を用いた分析が進んでいる(『「新規開設・増床」、許可前に調整会議で確認』を参照)。

 「そもそも急性期指標は、こんな不完全な状況で、公表すべきものではなかった。さらに、急性期指標に限らず、都道府県行政だけに情報を提供するのは大きな問題。都道府県において医師会と行政は、地域医療を守る車の両輪」。中川副会長はこう指摘し、今年5月の厚労省主催の都道府県行政職員向けの地域医療計画の講習会にも、日医の要請で都道府県医師会の関係者の出席が実現したとし、「地域医療構想の達成には、行政と医師会との協力関係が極めて大事」と強調した。

 中川副会長は、「今回の急性期指標は、厚労省が財政当局の圧力に押され混乱、迷走した表れなのかもしれない」との見方を示しつつ、「日医は、地域医療計画や地域医療構想について、厚労省と二人三脚の心意気で進めてきたが、さらにしっかり掌握する。都道府県において医師会と行政がそうであるように、日医は厚労省を叱咤激励しながら地域医療を守り続ける」と答弁を結んだ。


  1. 2017/07/01(土) 11:13:09|
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6月25日 

https://www.m3.com/news/iryoishin/540428
真価問われる専門医改革
米の専門医制、「質」重視、研修医数もコントロール
米マサチューセッツ総合病院の島田氏、評価機構で講演◆Vol.1

レポート 2017年6月23日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院の循環器内科指導医の島田悠一氏は6月21日、日本医療機能評価機構の第8回医療政策勉強会で「米国における専門医制度と医師の働き方」をテーマに講演した。

 米国の専門医制度は、初期研修(レジデンシー)と専門研修(フェローシップ)の2階建て。全国・州・病院、それぞれのレベルで、診療科ごとに受け入れ研修医数を決定、マッチングによる選抜を実施しているのが特徴。その数は、研修医1人当たりの経験症例数と指導医数から決定する。さらに、メディカルスクール卒業後に開始する初期研修では、「Teaching Round」という症例ベースの教育を毎朝1~1.5時間かけて実施したり、指導医や同僚だけでなく患者も含めた360度評価を実施するなど、島田氏は「質」を重視した専門医制度の現状を紹介した。

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循環器系を専門とする場合の米国の専門医制度(提供:島田氏)

 専門医資格の更新に当たっては、10年に一度の試験に合格することが必要。米国の医師が専門医資格の取得・更新に努めるのは、保険請求できる額が専門医の方が高いなど、インセンティブがあるためだという。

 医師の働き方については、初期研修をめぐる動きを中心に紹介。医療事故に端を発して、勤務時間や受け持ち患者数の制限が年々厳しくなり、1年目の研修医は週80時間が上限、連続勤務は16時間までなどのルールが設けられた。しかし、これらの時間制限がある場合、シフト制を組まざるを得ず、結果として診療の継続性が保てないなどの問題が指摘され、この3月に「振り子の揺り戻し」で連続勤務を24時間まで認める方針が決定した。日米ともに、医師の働き方は重要かつ解決が難しい課題となっていることが伺えた(『米国の研修医、勤務時間制限を一部緩和』を参照)。

 
 島田氏は、現在34歳。2007年、東京大学医学部医学科卒業。2008年から米国に留学後、内科と循環器内科専門医の資格を取得。2015年から、マサチューセッツ総合病院で循環器内科指導医として勤務する。ジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院修士課程を修了し、公衆衛生学修士(MPH)を持つ。

 講演の骨子は、以下の通り。

◆米国の専門医制度(初期研修、後期研修)の基本
・医学部(メディカルスクール4年)卒業後、初期研修(3~5年)、専門研修(1~3年)を行う。初期研修は、日本の基本領域の専門医研修に相当(2017年6月現在、28領域)。
・ACGME (Accreditation Council for Graduate Medical Education) が研修プログラムの認定などを、ABMS(American Board of Medical Specialties)が専門医試験などを、それぞれ実施。ACGMEは病院からの研修プログラムの認定料、ABMSは医師からの専門医資格認定料などで運営。
・医師は、学会に加入しなくても、専門医の取得は可能。

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ACGME、ABMS、学会、病院、医師の関係(提供:島田氏)

・各病院の診療科別の研修医受け入れ数は、研修医一人当たりの経験症例数(外科であれば手術症例など)と指導医数で決まる。したがって、全国・州・病院レベルで、診療科別の研修医の受け入れ人数に上限がある。年1回、マッチングを実施。「こうした要素を加味することで、診療科や地域による偏在が起きないようにしている」(島田氏)。医師にとっては希望する病院や診療科を選ぶのが、専門医になるための第一歩。

・研修は、基本は同一病院で実施。不足する症例がある場合には、他の病院で研修。
・「内科・小児科コンバインドプログラム」があり、合計4年程度で内科専門医と小児科専門医の両方の研修が可能なプログラムもある。

・「日本のように、症例レポートの提出などはない。研修医の質の担保を、各病院に委ねていることなるので、さまざまな工夫をしている」(島田氏)。
 その一つが、「Teaching Round」。毎朝1時間から1時間半かけて行う。1チーム、1年目の研修医2人、2、3年目の研修医1人、指導医1人という体制で、(1)夜勤帯に入院を受け入れた患者3~5人のうち1人について、控え室で研修医がプレゼンテーション、(2)ベッドサイドで振り返りを実施、(3)控え室に戻り、指導医が当該疾患の鑑別診断や治療法などについて30分くらいレクチャー、(4)15~30分くらい最近の医学トピックスについて話し合う――といった流れになる。他にも多くの教育的カンファレンスがある。
・研修医の質は、評価でも担保。毎月および年次の区切りに評価を実施、一定の基準に満たない場合には、進級できない。360度評価で、指導医、コメディカル、患者など、さまざまな立場からの評価を受ける。

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米国の初期研修1年次の1週間のスケジュール例(提供:島田氏)

・研修プログラムを修了すると、専門医の受験資格を得る。専門医試験に合格すれば、専門医を取得。例えば、内科専門医の場合、それで修了するか、専門研修に進むかという選択肢がある。専門研修でも、病院、州、全国レベルで研修枠が決まる。

・専門研修は、例えば、循環器内科の場合、1カ月ごとに、「心臓リハビリ、循環器病棟、CCU、心臓カテーテール、循環器病棟……」などとローテーション。週5~8時間程度の講義もある。3年目以降は自分が専門としたい分野を重点的に研修。 ・循環器内科の場合、指導医のバックアップの下、4日に1回程度、午後5時から翌朝8時まで当直。その間は、他のフェローの担当患者も担当するため、当直がないフェローは完全にオフになる。「米国の医師の働き方は、オンとオフがはっきりしている」(島田氏)。

◆米国の専門医の更新
・10年に一度、専門医資格更新に合格することが必要。3つくらいの専門医を持っていると、3年に1回程度という頻度で専門医試験を受けることになる。
・専門医維持のために、5年で100単位、10年で200単位などの取得が必要。学会出席、論文の査読、オンラインの講義など、さまざまな単位取得のやり方がある。「臨床医にとって負担は大きいが、最新の知見などを学ぶ機会になる」(島田氏)。

・米国の医師が、専門医取得・更新に努めるのは、インセンティブがあるため。「内科専門医では、循環器内科のフィーは請求できない。循環器専門医の資格を持たない医師が、心臓カテーテル検査を行い、訴訟になれば、必ず負ける。また専門医を持っている診療科しか標榜はできない」(島田氏)。

◆ACGMEの役割
・研修カリキュラムの整備、研修プログラムの認定、質の確保のための訪問査察、匿名アンケート調査などを行う。
・質の確保のための病院への訪問査察は、年に1回、抜き打ちで実施。アポイントなく病院を訪問して、研修医に研修の実際をインタビューする。ACGMEは大きな権限を持ち、研修の基準に違反したら警告、改善しなければ罰金、研修医の募集停止、最悪の場合には研修プログラム認定の取消、という段階的な罰則を講じる。
 「病院は、研修医を受け入れる教育病院であることがPRとなるため、研修自体は経済的には多少マイナスになっても、研修を継続する」(島田氏)。

◆ABMSの役割
・研修プログラム履修要項の作成、専門医試験の問題作成などは各学会が行い、それを基にABMSが試験を実施、専門医認定証の発行などを行う。学会はその対価を受け取る。
・教育関係に従事する医師のキャリアの一つとして、ABMSに出向することもある。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540429
真価問われる専門医改革
米国の研修医、勤務時間制限を一部緩和
米マサチューセッツ総合病院の島田氏、「振り子の揺り戻し」◆Vol.2

レポート 2017年6月23日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医療機能評価機構の第8回医療政策勉強会で6月21日に講演した、米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院の循環器内科指導医の島田悠一氏は、米国の専門医に限らず、「医師の働き方」についても講演し、「振り子の揺り戻しが起きている」現状を紹介した(専門医制度の概要は、『米国の研修医、勤務時間制限を一部緩和を参照)。

 米国では初期研修について、勤務時間に制限があり、1年次の研修医の場合、連続勤務は16時間が上限だったが、2017年3月に2、3年次と同様に、「24時間勤務」を可能とする方針が打ち出された(7月から実施)。16時間の上限では、自分の診断や治療の結果が正しいかなどを、記録ではなく自ら経験できる機会を逸するなど、診療の継続性が保てないことが問題になっていたからだ。勤務時間の上限緩和に先立ち、ランダム化比較試験を実施、「勤務時間制限を緩めても、診療の質には影響しない」という結果は、2016年のNEJMに掲載された(NEJM.2016 Feb;374(8):713-727)。

 「研修医の勤務時間については、米国も試行錯誤している。長すぎると過労になる一方、短すぎると十分な研修ができない。どこかにスイートスポットがあるのだろう」(島田氏)。

 なお、指導医には、勤務時間の制限はなく、病院との契約時、外来、入院患者の担当目標数を決めるのが一般的だ。また研修医の勤務時間の制限に伴い、指導医クラスにしわ寄せが行ったという経緯もあり、それは今でもあるという。島田氏は、研修医か指導医かを問わず、医師の勤務時間短縮には、「医師でなくてもできる仕事は、医師以外に移譲するのが、解決策ではないか」と見る。

 
 900床規模、内科研修医は120人

 米国で、研修医の長時間勤務が問題になったのは、1984年のニューヨークの病院で発生した「リビ-・ジオン事件」がきっかけ。救急外来を受診した患者が医療事故で死亡、患者家族が病院や担当医らを提訴。担当した研修医は36時間連続勤務だった。「1986年のニューヨーク州高位裁判所の判決は、研修医の過重労働が悪影響を与えていると判断した、画期的な内容だった」(島田氏)。

 その後、各州で順次研修医の勤務時間の短縮が進み、2003年にACGMEが「週80時間労働規制」を導入。「20年の時を経て、ようやく全米に広がった」(島田氏)。

 今年3月の見直し前のルールは、(1)週当たりの勤務時間は80時間以内、(2)初期研修の2、3年次の研修医の連続勤務は、「24時間+3時間の引き継ぎ」、(3)初期研修の1年次の連続勤務は、16時間まで、(4)勤務と勤務の間は、8時間以上空ける――という内容。外来と入院ともに受け持ち患者数に制限があった。

 下図は、研修医の働き方の例。「非当番日」は、朝6時から午後5時まで、「当番日」の場合は、朝6時から午後8時までの勤務。例えば、4人で1チームを組み、「非当番日」は、午後5時の時点で勤務が終わるが、「当番日」は、他の3人の研修医の受け持ち患者も担当する。午後8時になると、夜勤チームに引き継ぐ。

 このようなシスト体制を組むことができるのは、例えば900床の病院で、内科研修医だけで120人もいるなど、医師数に余裕があるためだ(1年次から3年次までの合計)。

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米国の初期研修1年次の勤務形態の例(提供:島田氏)

 シフト制、「主治医としての責任感に育ちにくい」

 シフト制は、勤務時間の短縮になるものの、問題も生じている。それが「診療の継続性」だ。例えば、日中に自分が処方した薬が、夜間に現れると想定されても、午後5時には勤務が終わるため、結果を追いにくい。「『この患者のことは、自分が一番よく知っている』『患者の責任は自分が持つ』という覚悟を、医師になりたての頃に育てることが重要。シフト制では、主治医としての責任感が育ちにくい」(島田氏)。

 「診療の継続性」の問題は、多くの病院で生じており、全米の外科医4330人を対象に、ACGMEの勤務上限遵守群と緩和した群に分けたランダム化比較試験が実施された。その結果は、NEJMに掲載された。プライマリエンドポイントを、患者の死亡もしくは重篤な合併症発症として見たところ、非劣性だった。それを踏まえ、1年次でも「24時間連続勤務」が可能になった。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540789
日医代議員会
医師偏在対策、カギは「地域医療構造の医師版」、中川副会長
第140回日医代議員会、「喫緊の課題は医師の偏在解消」

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、医師不足問題について、絶対数は近く充足する見込みであり、「喫緊の課題は、医師の偏在解消」と指摘。2015年12月の全国医学部長病院長会議との合同の緊急提言を精査・進化させ、地域医療支援センターの強化、医学部の地域枠や地元出身枠の拡充のほか、「地域医療構想の医師版」の作成という3点に取り組む必要性を指摘した。

 「地域医療構想の医師版」とは、医師の必要数を地域ごと、診療科ごとに将来推計し、医師需給の「見える化」を図ること。中川副会長は、「新たに医師になる世代に、自らのキャリアを検討、判断するツールを提供できると考えている」と述べ、「行政から強制的に配置されるのではなく、医師自らが選択することを最後まで守っていきたい」と強調した。

 「喫緊の課題は、医師の偏在解消」との現状認識は、厚生労働省の関係審議会の見解ともおおむね一致しているほか、この6月に政府が閣議決定した「骨太の方針 2017」でも、「医師養成数のさらなる増加ではなく、2008年度以降臨時増員してきた医学部定員について、医師需給の見通しを踏まえて精査を行う」としていると説明(『「医学部定員増、精査を」、骨太2017素案』を参照)。

 代表質問で、医師需給や偏在について、「日医主導による意見集約」を求めたのは、埼玉県代議員の金井忠男氏。金井氏は、現状の問題点として、病院勤務医が、過酷な労働環境に耐えられず、開業の道を選ぶことなどを挙げ、勤務医不足の解消が、喫緊の課題であると指摘。しかし、病院と診療所では意見の相違がある上、四病院団体協議会では医師養成強化を続けるべきと主張していることから、「日医のリーダーシップのもと、医師不足解消のための意見を統一すべき」と日医の見解と質した。

 医師増の要望、「病院経営者の危機感も」

 中川副会長はまず、「日医は、大勢として医師の絶対数は充足していくと考えている」と説明。その理由を以下のように説明し、この現状認識について日医がリーダーシップを取り、四病協や全国医学部長病院長会議と共有していくと表明。

 日医は、病院の医師不足の実態について、2008年と2015年に病院に対してアンケートを実施。この間、病院医師数は年平均約2%増えたものの、アンケートの結果、病院の必要医師数は、いずれの時点でもその時点で在籍する医師数の約1.1倍で減少傾向は見られなかった。必要医師数が1倍を超えているのは、「医療の高度化や、病院間の競争が激しくなっており、より多くの医師を確保して、生き残りを図りたいという病院経営者としての危機感もあるためかと思われる」(中川副会長)。

 また今後の高齢化の進展に伴い、医療需要が増加するという見方もあるものの、日医調査では、現在の100床当たり医師数は、急性期機能のみの病院と比較して、回復期機能のみの病院では約半分、慢性期機能のみの病院では約3割にとどまるという。高齢化で回復期、慢性期の医療需要が増えれば、全体の必要医師数はやや抑制される可能性があるほか、医療安全を最優先に位置付けつつ、今以上に多職種の連携も進むと見通した。

 「もちろん、ライフワークバランスの実現を目指した働き方改革を踏まえると、現状の病院勤務医は過重労働で、勤務医の負担軽減は引き続き重要な課題。一方で、これからは2008年度以降の医学部定員増による医師が大挙して医療現場に加わってくる」(中川副会長)

 「かかりつけ医の負担軽減も大事」

 以上のような現状認識を踏まえ、地域および診療科の医師偏在対策として、以下の3点に取り組んでいく必要性を指摘した。

(1)全国の地域医療支援センターの実効性を向上させる。2015年12月の緊急合同提言で、一歩進んで、各大学への「医師キャリア支援センター」の設置を提言したが、まずはその土台となる地域医療支援センターの機能の強化が必要。同センターの機能や運用は全国でさまざまであるため、日医が情報収集、意見交換を行い、好事例を速やかに全国展開できるよう支援。

(2)医学部の地域枠あるいは地元出身枠の拡充。地域に生まれ、地域に愛着を持つ医師の地元定着率が高いことは、厚労省の審議会などでも報告されている。

(3)医師需給の「見える化」を進める。例えば、地域医療構想では将来の患者数から病床の必要量を構想区域ごとに計算し、将来の見通しを示している。同じように将来の医療需要、つまり患者数に対する医師の必要数を、地域ごと、診療科ごとに推計すれば、新たに医師になる世代に自らのキャリア設計を検討、判断するツールを提供できると考えている。

 さらに中川副会長は、「過去10年間に病院の医師が3万1000人増加したのに対し、診療所開設者の増加は約1200人の増加にとどまっている」と説明。都市部では、医療モールなどの展開もあって、診療所が多い地域もあるものの、地方では医師自身の高齢化もあり、地域包括ケアシステムの構築に向けて、かかりつけ医の確保が課題となっているとした。「医師の不足、偏在の問題については、病院勤務医の負担軽減を念頭に置きつつ、同時にかかりつけ医の負担軽減も大事にしていきたいと考えている」。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540329
地域医療の現場
夢見た地域完結の医療、「今は無力感と脱力感」 - 花輪峰夫・秩父病院院長に聞く◆Vol.1
「断らない救急、いつまでも強いるわけにはいかない」

レポート 2017年6月23日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

 少子高齢化、人口減少が進み、日本全国で都市部も地方もそれぞれが変化が求められている。医療提供体制では団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて、行政主導で改革の枠組み作りが進んでいる。一方で、政策的な思惑とは別に、各地で脈々と息づく地域医療の歴史がある。

 m3.com編集部では、地域医療の現場を取材する新企画をスタートさせる。現場の知見や取り組み、医療者の思いなどを紹介していく。第1弾は埼玉県秩父市にある医療法人花仁会「秩父病院」(1887(明治20年)設立、一般病床52床(10対1入院基本料)、13診療科、常勤医8人)の花輪峰夫院長に、秩父の救急医療や医師養成の在り方について話を聞いた(2017年5月24日インタビュー、全2回)。

――2017年4月1日に書かれた花輪先生のブログ記事「救急医療に対する今後の当院の方針」について、どのような背景、思いがあったかをお聞きしたと思います。
「救急医療に対する今後の当院の方針」
 地域医療計画の中で、当院の方針は大きな進路変更はしないこととしました。ただ、夜間と休日の救急診療については、来年度(平成30年度)より段階的に縮小させて頂きたいと考えています。
―中略―
 今、私は秩父地域の救急医療の現状を冷静に判断し、自分の考えをリセットしようと思っています。仮に当院が二次救急を完全に辞退したとしても、より広域的な救急医療体制が確立している今、大きな混乱は起こらないでしょう。
 得意分野に集中し、守備範囲外はより迅速に、より広域的に紹介・搬送する。これが患者にとって最も益のあることと思うのです。救急医療で大事なことは無理な地域完結でなく、適格なトリアージであると思うことにしました。地域完結を夢見てきましたが、今は無力感と脱力感、諦めの境地の中で、これが45年間、秩父の救急医療に関わって来て到達した、現時点での私の正直な気持ちです。

花輪峰夫氏 秩父地域は日本でも先駆けて、開業医の小さな病院の先生たちが有志で、夜間輪番制を作りました。当院も1887(明治20)年の開設当初から、普通の診療として当たり前のように救急医療を行っていました。1965年に救急告示医療機関となり、1976年にできた二次救急夜間輪番システムにも最初から参加し、半世紀以上にわたり救急医療に携わってきました。

 輪番システムには当初、7病院が参加していましたが、現在は3病院になっています。やはり救急体制を維持するのは困難ということでしょう。当院は水曜日と、ローテーションで回ってくる土日曜日を担当しています。当番日は外科系の先生が1人と勉強のため研修医が1人が当直に当たります。また、22時までは小児救急として医師会の先生に手伝っていただいています。

――何人の医師で担当しているのでしょうか。

 大変なのは人員の確保です。水曜日は、常勤の外科医4人と埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)、総合医療センター(埼玉県川越市)の救急の先生に来てもらって、回しています。水曜日以外の院内当直もあり、現場の職員の負担は大きいです。

 患者数はバラツキも大きいですが、平均して一晩に20-30人、そのうち入院に至るのは2人程度です。多くは緊急性の低い患者ですが、重症者で多いのは脳卒中と心臓病と大血管系の疾患です。しかし、当院も含め、秩父で脳卒中や心筋梗塞等は対処できないので、救急車で1時間弱の国際医療センター等にお願いすることになります。その手配も医師がやりますし、搬送時に患者について行くこともあります。当直医がついて行く場合には、代わりの医師が出てこなくてはなりません。

 採算面を考えればうちのような小規模な病院にとって、大変な負担であることも事実です。脳卒中や心筋梗塞が対処できるのであれば、救急でもペイできるかもしれませんが、重症患者の大半は転送先を探すことになります。

――秩父地域の救急医療はどのように変わってきたのでしょうか。
 私の考え方もあって、うちのスタッフたちには「医者なんだからなんでも診ろ。絶対に断るな」と言っていますが、大変です。それをいつまでも強いるわけにはいきません。私自身も、水曜日はいつでも出られるように自宅で待機しています。今年の12月で70歳になりますが、果たして次の世代に引き継いでいけるか。

 そういう大変さもスタッフが多い昼間はカバーできますが、夜間の重症患者に対応すると、地域から医師も救急隊もいなくなってしまう。6年前に現在の土地に移転しましたが、理由の半分は病院併設のヘリポートを作るためでした。昼間であれば、7分で国際医療センターに行けます。

――「無力感と脱力感、諦めの境地」というのはどのようなお考えからでしょうか。
 私が秩父の医療に初めて関わった1973年ころは救命救急センターもなく、地域の医療機関や医師同士が助け合いながら、地域で完結すべく懸命に努力していましたし、最近までそのように頑張ってきたつもりでいます。

 地域完結型医療を45年間目指してきて、今も諦めたわけではないですが、医療の進歩や個々の守備範囲の縮小などにより、医療全般にわたり、地域内での対処可能な症例は少なくなっている。つまり秩父地域の医療は中央の進歩に対し、遅れを取っていると言わざるを得ません。

 一方で、医療連携の取り組みも進み、最近では後方病院もずいぶん引き受けてくれるようになりました。秩父地域では年間380件ほど対応できずに管外搬送しています。そのうち50件程度は当院です。ある時、消防の人に聞いたら、それとは別に、年間計600件以上は、救急隊の判断で、管内の医療機関を通らず管外に連れて行っているそうです。

 無力感というといじけたみたいですが、救急救命士が気管挿管ができるようになったり、広域的なシステムができ上がったり、システム面の改善も進んでいます。何も、今までのように自分たちで完結させようとせずに、広い目で考えればより良い医療を患者さんに提供できるようになってきています。

――「段階的に縮小」というのはどのようなことでしょうか。
 具体的なことを決めているわけではなく、ぽんっと空けてしまうわけにはいかないので、今から準備してもらうためにブログで書きました。今年の秋頃には、来年度の輪番の予定が決まります。それまでに医局会を開いて相談しますが、「我々が頑張ります」と言ってきたら、現在のままかもしれません。いずれにしても救急告示病院としての最小限の使命は果たして行ければとは思っています。

――どのような救急医療が望ましいとお考えでしょうか。
 医療は社会保障であり、救急医療はその最たるものです。自治体病院がより多くの責務を負って行くべきと考えます。このことに税金が使われても、市民の誰しもが納得するでしょう。現状のような一般会計からの繰り入れも当然と思われます。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540261
地域医療構想
「新規開設・増床」、許可前に調整会議で確認
地域医療構想WG、「過剰な病床機能への転換」も制限

レポート 2017年6月23日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)は、6月22日の第6回会議で、地域医療構想調整会議の議論の進め方について議論、病院の新規開設や増床等の計画が判明した場合は、開設等の許可を待たずに、調整会議への参加を求め、計画の詳細を確認する方針を了承した(資料は、厚労省のホームページ)。

 医療法上の基準病床数を下回る2次医療圏であれば、開設等は可能。ただし、例えば、2025年において急性期機能が不足していない地域で、急性期機能の開設等を希望する場合、調整会議で確認、それを基に都道府県の医療審議会において、開設等の許可に当たって何らかの条件を付与するか否かなどを検討する。地域で担う機能が大幅に変更する場合も同様に、調整会議での説明を求める。

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、「調整会議では、各構想区域内で、長年医療を提供してきた医療機関同士が相談して協議している。アンダーベッド(病床不足地域)の場合に開設を求めてきた場合、調整会議と医療審議会で、『ノー』という結論はあり得るか」と質問。厚労省医政局地域医療計画課長の佐々木健氏は、「議論の内容によるが、それによって再考することはあり得る」と述べ、今後、実際に該当事例が生じた場合には、厚労省としても相談に応じていくとした。

 さらに「過剰な病床機能に転換しようとする計画」があった場合の調整会議での取り扱いも明確化。例えば、下図の場合、「X年度」と「X+1年度」の病床機能報告の医療機能を変更すれば、法的には「過剰な病床機能への転換」には当たらない。しかし、地域医療構想の実現には支障が生じかねないことから、調整会議へ参加し、説明を求める。

 
 「慢性期機能」、議論は3パターン
 22日のワーキンググループでは、調整会議における「慢性期機能」を担う病床に関する議論の進め方も整理。2016年度の病床機能報告制度によると、2025年の「病床の必要量」との比較で、3パターンに分類できる。特に問題となるのが、「ウ」。介護療養病床は2017年度末が設置期限だが、6年の経過措置がある。介護療養病床を除いてもなお、「慢性期機能」が「病床の必要量」を上回る場合、厚労省は、介護療養病棟と医療療養病床に続き、「一般病床(13対1、15対1入院基本料など)等の役割についても確認」という議論の進め方を提案。これに対し、全日本病院協会副会長の織田正道氏からは、「13対1、15対1」への言及について、削減への「圧力」とも受け取れるとの指摘が出た。

 なお、特に「慢性期機能」では、6月単月の実績報告では、入退院の実態が把握できないため、2017年度の病床機能報告制度からは、4つの医療機能とも、年間の入退院の報告を求める。

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(2017年6月22日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)

 「地域医療構想は、天気予報」
 調整会議の具体例として、岩手、静岡、佐賀の3県の取り組みも報告された。

 「地域医療構想は、天気予報」とユニークな表現で説明したのが、佐賀県。予報する側の行政は精度を高め、分かりやすく伝える一方、予報を基に行動を判断するのは、各医療機関であるためだ。2015年度に地域医療構想の策定を終えた同県は、地域医療構想の構想期間を3期に区分。フェーズ1が2016~2017年、フェーズ2が2018~2020年、フェーズ3が2021~2024年だ。フェーズ1では、県全体で2回、各構想区域で2回、それぞれ調整会議を開催。地域医療支援病院である伊万里有田共立病院が、「急性期機能」の一部を転換し、ケア・ミックス化を検討したが、調整会議で再考を求めるなど、他県の調整会議の多くが「情報共有」にとどまる中、一歩踏み込んだ調整を実施している。

(2017年6月22日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)(略)

 岩手、静岡の両県も、さまざまなデータを分析し、関係者の共通理解を図っている現状を紹介。多くは厚労省が提示したガイドラインに準拠したものだが、静岡県は、在宅医療や地域包括ケアの担い手の現状把握のため、独自に「診療所医師」の年齢構成なども分析した。

 もっとも、岩手県や佐賀県では「急性期指標」を用いた分析も行っていたため、中川氏は苦言を呈した。「急性期指標」とは、4つの医療機能のうち、「急性期機能」の役割を定量化して示すために、検討されている指標。しかし、病床機能報告制度が病棟単位である一方、「急性期指標」は病院単位であるなど、いまだ研究途上で、同指標を現時点で使うには問題があるとされている(『「急性期指標」、「見える化」の第一歩だが、注意必要』を参照)。中川氏はこれらの問題点を挙げた上で、「急性期指標を使わないよう、(都道府県に)通知してもらいたい。せっかく全国各地で、(地域医療構想の実現に向けて)自主的に収れんしていくシステムができたのだから、これを壊すことはやめてもらいたい」と語気を強めた。

 これに対し、佐々木課長は、「急性期指標」については病棟単位にする研究も進められていると説明、その上で調整会議は、一つのデータではなく、多面的なデータを基に、議論していく場であるとして、理解を求めた。それでも中川氏は、「多面的なデータの一つとしても、使わないでほしい。(問題点を修正し)バージョンアップして初めて使えるものになる」と釘を刺した。さらに中川氏は、いまだ「回復期機能が非常に不足している」との誤解も正すことを努めるよう、厚労省に要求(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』を参照)。

 地域医療構想は、47都道府県で2016年度内に策定を終えた。2017年度以降は、都道府県別、構想区域別の地域医療構想調整会議で、いかに関係者が話し合い、同構想を実現するかが課題になっている。本ワーキンググループでは、5月以降、6月22日までに計3回の会議で、2017年度の病床機能報告制度や調整会議の在り方について議論した。近く開催予定の親会「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告する予定。

 さらに厚労省は近く、調整会議の進捗状況を把握するため、都道府県への調査を実施する。(1)調整会議の開催状況(構想区域毎)、(2)データ共有の状況等(構想区域毎)、(3)具体的な機能分化・連携に向けた取り組み(5疾病5事業および在宅医療等の中心的な医療機関が担う役割、新公立病院改革プラン、特定機能病院の役割など)、(4)調整会議での協議が調わない場合の対応、(5)地域住民・市区町村・医療機関等への普及啓発の状況――だ。結果は次回以降の本ワーキンググループに報告する予定。




https://www.m3.com/news/iryoishin/539307
地域医療構想「大学病院は別枠で」
医学部長病院長会議、大学病院の位置づけ明確化を要望

レポート 2017年6月20日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 全国医学部長病院長会議は6月19日、東京都内で記者会見を開き、「地域医療構想における大学病院本院の位置づけに関する提言」を5月26日に厚生労働省に提出、6月2日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で報告したことを説明した(『地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」』を参照)。同会議が実施した調査では、今年度から具体的な病院名を出して病床数などを検討する地域医療構想の調整に当たって、「大学病院は一般病院と別枠でお願いしたい」などとする医学部長、病院長の意見が明らかになったと報告した。

提言の内容は以下の4点。

1.大学病院本院の地域医療構想を明確にすること。

2.大学病院本院が「地域医療構想」における構想区域を超えた、より広範囲の地域の住民を対象として、専門性の高い医療を提供していることから、その実情を踏まえ、地域医療構想調整会議において、その担うべき役割について十分に議論すること。

3.大学病院本院が所在している構想地域及びその周辺の地域医療計画においては、それを配慮して地域の病床構想を検討すること。

4.大学病院本院からの病床機能報告については、地域の他施設の病床と単純に合算するような対応は行わず、その特殊性を十分勘案した上で、集計するように配慮すること。

 同会議が2017年4月にまとめた「大学病院の地域医療構想及び地域包括ケアへの取組に関する調査」(中間報告)の一部も説明した。地域における地域医療構想の策定過程に対する大学および大学病院の構成員の参画状況では、(1)都道府県レベルでの「医療審議会等」には、「なし」が19大学、(2)都道府県レベルの「作業部会等」には、「なし」が26大学、(3)地域医療構想調整会議には、「なし」が15大学だった。大都市部にある大学ほど「なし」が多かった。調査をまとめた経営実態・労働環境WG座長の海野信也氏(北里大学病院長)は、「『ない』ことは良し悪しの問題ではないが、都心部で大学が関与できていないのが見えてきた」と解説した。

 調査で、自由記述で尋ねた「地域医療構想策定過程の問題点」として各大学から挙がってきた意見のうち、「大学の不安が表れている」(山本修一・千葉大学医学部附属病院長)として、配付資料で強調していた記述は以下の通り。

・高度急性期を担う大学病院としての立ち位置が不明確。

・大学附属病院や大規模一般病院が近隣に集中しており、行政による機能分化の采配がある程度必要と思料する。

・大学病院の位置づけは総論では理解されていると思われるが、病床数など具体的な話となると、さまざまな問題が生じる可能性がある。

・大学病院のような教育、研究機関については、厚労省で示している病床機能の分け方で分類し、病床配分できるものではない。

・大学病院は県内の全ての医療圏、並びに県外からも患者を引き受けており、医療圏ごとの病床数という考え方が適応されない。

・特定機能病院および教育病院としての大学病院の立場が考慮されるかどうかは不明なまま。

・大学病院を含め、関係施設・関連団体の意見が十分反映されているか、やや疑問。

・当院の患者は全体の54%が2次医療圏外から来院しており、2次医療圏ごとの策定には疑問。
・現行の2次医療圏を原則としているため、現実の患者の流れと一致していない。

・大学病院は一般病院と別枠でお願いしたい。



https://www.m3.com/news/iryoishin/539306
42国立大学病院、消費税補填不足額、3年間で514億円
「状況はいよいよ深刻」、国立大学附属病院長会議が推計

レポート 2017年6月20日 (火)配信高橋直純(m3.com編集部)

 国立大学附属病院長会議は6月19日、東京都内で記者会見を開き、2016年度国立大学附属病院決算報告(見込み)を公表、消費税補填不足が3年間で514億円に達し、厳しい経営状況が続いているとし、「状況はいよいよ深刻化している」と訴えた。

 国立大学附属病院(42大学45病院)の2016年度決算概要(見込み)では、収入全体は1兆1691億円で、2015年度より224億円増加。内訳は病院収入が1兆511億円で、同364億円増。運営費交付金は1050億円で同71億円の減少だった。

 支出全体は1兆1552億円で、内訳は人件費が4374億円で2015年度比126億円増。看護職員の増加や人事院勧告を受けてのベースアップの影響で増加した。医療費は4495億円、その他(物件費等)1843億円、借入金償還費840億円だった。

 収支全体では2015年度比37億円増の139億円の黒字となったが、同会議常置委員会委員長の山本修一氏(千葉大学医学部附属病院長)は、「投資を抑制するなどして、どうにか黒字に持ってきているが、それでも(黒字幅は)1%程度。厳しい経営状況には変わりはない」と訴える。

 投資額は近年で最も多かった2013年度の658億円から314億円に減少。減価償却費とのギャップも約400億円に拡大しており、「年々、老朽化が進行している。必要な設備投資ができないと高度医療の提供という使命が果たせない恐れが出てくる」と危機感を募らせた。

 2014年度の消費増税に伴い、さらに深刻化している控除対象外消費税の問題では、2014年度からの3年間で514億円の補填不足が生じていると説明。「状況はいよいよ深刻化している。経営努力でどうにかなる数字ではないことを改めて強く訴えていきたい」と主張した。

 6月15、16日に開催した国立大学附属病院長会議総会では、初めての試みとして「ガバナンス体制」「地域医療構想」「医師の労務管理」の3つのテーマでグループディスカッションを行ったと報告。「例年は『会議らしい』会議だったが、今回は活発な議論を交わして、方向性が見えてきた」と報告した。



http://www.medwatch.jp/?p=14315
若者の人生変える恐怖の請求額―日米病院、ここが変だよ(1)
2017年6月19日|医療現場から MedWatch

 日本と米国の病院は、制度や組織、そこで働く医療従事者たちの考え方も大きく異なります。そのため、双方にそれぞれが学ぶべき点がある一方、理解できない点もあります。そんな日本と米国の病院における「ここが変だよ」というポイントについて、日米の医療や制度について研究するとある米国の医師が、日米双方の視点から解説します。初回は、若者だったら人生が変わってしまうほどの高額請求をされることもある、米国の医療費についてです。

ここがポイント!
1 入院1日で110万円の支払い
2 会計窓口なし、いくらかかるかも分からない

入院1日で110万円の支払い

 筆者が日米の医療や制度を比較し、最も興味を持っているのは「バラつき」です。中でも、「日米における術後アウトカムのバラつき」に関する研究(図表1)は、米国では医療費のバラつきが大きいが、日本は術後死亡率や術後合併症などの医療の質におけるバラつきが大きいことが分かり、衝撃を受けました。米国の医療費は、具体的にどういった問題を抱えているのでしょうか。

(図表1)日米における術後アウトカムのバラつき(略)
 米国は国民皆保険制度や高額療養費制度がある日本と異なり、無保険者もいれば、高額な医療に対する支払い額の上限もありません。例えば、無保険者が急な腹痛で病院に6時間ほど滞在し、画像検査と診察、薬の処方を受けて帰宅したとします。それだけで、いくらの支払いになると思いますか。処置内容や病院にもよりますが、筆者が入手した請求書には120万円と明記されています(写真1)。ある日本人が米国で盲腸となり緊急手術をした際は、2日の入院で280万円を請求されたといいます。

(写真1)ある無保険者が受け取った請求書(略)

 それでは、保険に入っている人ならどうか。入手した請求書を見ると、虫垂切除の手術を受けて在院日数1日で総額550万円。このうち、保険会社の支払いは440万円なので、患者の個人負担は110万円となります。請求額の内訳を見ると、入院した病室は1日50万円、術後2時間休憩したリカバリールームの部屋代が75万円と、かなり高額な内容になっています(写真2)。米国は請求に応じない患者も多いため、病院によっては料金を限界まで引き上げて請求してくるケースも少なくありません。

(写真2)虫垂切除術をしたある保険加入者が受け取った請求書の内訳(略)

 日本では高額療養費制度があるため、保険の範囲内であれば、どんなに高額な医療を受けても、患者の自己負担分は月額8万円程度を超えることはありません。これに対して、米国ではたった1日の入院でも100万円を超える請求があるのは決して珍しいことではありません。つまり、米国ではたまたま軽い病気で入院してしまうと、保険加入者であっても突如100万円規模の支払いを抱えることになります。支払い能力が低い20歳くらいの若者であれば、人生を変えてしまう事態にもなりかねないのです。

会計窓口なし、いくらかかるかも分からない


 上限のない支払いに加えて患者たちを不安にさせるのは、料金がその場で分からず、必ず後から請求されるということです。

(写真3)日本の病院に当然ある会計の窓口は米国の病院には存在しない(略)

 日本の病院では、どのような処置や手術でどれくらいの費用がかかるのかを事前にある程度は予測できますし、会計の窓口などで詳しい説明を受けることもできます。しかし、米国の病院では、基本的に日本の病院のような会計窓口がそもそもありません。「どれくらいの費用がかかるのか」「あの治療や薬は本当に必要なのか」などと病院で患者が思っても、その場の医療従事者の誰もがそれについて明確な答えを持っておらず、後日電話で問い合わせても、誰も答えてくれません。ただ、いくらになるか分からない請求書を待つことしかできないのです。

 医療費においては、やはり米国と日本を比較すると大きな違いが見られます。特に、上記のような米国の状況を知れば知るほど、上限額が定められ、国民皆保険制度ですべての国民が同じ価格で医療を受けられるというメリットは、かなり大きいと言えるでしょう。



http://www.medwatch.jp/?p=14318
良くも悪くもあくまで「ビジネス」―日米病院、ここが変だよ(2)
2017年6月20日|医療現場から MedWatch

 米国医師である筆者が日本と米国の病院における「ここが変だよ」を考える連載。2回目は、良くも悪くも一営利企業の「ビジネス」と割りきって展開される米国の病院について、日本の病院と比較しながら具体的な事例を見ていきます。

ここがポイント!
1 なぜ病院の食堂でジャンクフード?
2 ビジネス視点で誕生した「さまよう皮膚科医」

なぜ病院の食堂でジャンクフード?

 筆者がまず、日本の病院を「うらやましい」と思うのは、病院の食堂で出されるメニューです。写真1が米国の病院、写真2が日本の病院のメニューです。一目瞭然かと思いますが、米国の病院のメニューはカロリーやコレステロールが高そうな「ジャンクフード」のようなメニューばかりで、日本の病院は野菜の緑も多く、体に良さそうなメニューが多いです。医師が「塩分や油の多い食べ物は避けましょう」と言っても、病院の食堂が写真1のような状態では説得力がありませんし、いくら病院で特別食などを出しても、患者家族が食堂で写真1のような食べ物を購入し、患者に与えてしまえば、全く意味がありません。

(写真1)米国の病院にある食堂のメニュー一例 (略)
(写真2)日本の病院にある食堂の一般的なメニュー(略)

 食堂で出されるメニューに限らず、こうした信じがたい光景が米国の病院で見られる背景には、米国の病院は、あくまで「ビジネス」という立場にあることが大きいです。米国の病院は、利益を出すためコスト削減への意識が非常に高い傾向にあります。食事のほか医療材料、薬剤など病院で用いるあらゆるものをできるだけ低コストに抑えようとします。結果、写真1のようなメニューになっていると、筆者は考えています。

 こうしたビジネスライクな光景は、医師への報酬などでも見られます。代表的な例は、医師の技術料に対する「ドクターフィー」ですが、最近では医師それぞれに対する患者の満足度に応じてボーナスを決める仕組みがトレンドです。純粋に患者満足度を高めることに異議はないと思いますが、患者へ行った満足度のアンケート結果などを見ると、この仕組みが必ずしも歓迎すべきものではないことが分かります(図表1)。例えば、「受付嬢が笑顔」「待ち時間が短い」など医療の質と全く関係がないことに満足を感じていたり、医療の質においては「薬をたくさんくれた」「他の医師がしない検査をしてくれた」など過剰医療に満足感を得ている可能性も否定できません。つまり、ボーナスというインセンティブが、医療をあるべき方向とは違う方向へ導いてしまう危険性があるということです。

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(図表1)米国の患者満足度に関するアンケート結果の一例

ビジネス視点で誕生した「さまよう皮膚科医」

 ただ、「ビジネス」の感覚が必ずしも好ましくないわけではありません。

 米国最大級の病院グループ企業である「Kaiser Parmanente(カイザーパーマネンテ)」は、保険会社でありながら、独自の病院などの医療施設を所有して運営しています。カイザーの保険に加入している患者は基本的にカイザーの傘下病院で診る仕組みになっており、カイザーグループの保険に加入する患者が増えて医療費がかかればかかるほど、それだけグループの保険会社の支出が増え、グループ全体の利益を圧迫する仕組みになっています。

 従って、いかに入院しないように予防医療のレベルを高めるか、入院しても早期に退院させることはできないかなど、さまざまな工夫がなされています。最近、カイザーを見学して面白かった話として、「Roving Dermatology」があります。これは日本語に訳すと「さまよう皮膚科医」みたいになりますが、カイザーのコスト削減戦略の一つになります。

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(図表2)Roving Dermatology(さまよう皮膚科医)とは

 通常、皮膚の疾患の初診は、一般内科の診察を受けた上で、皮膚科の専門医につなぎます。ただ、皮膚の疾患は専門家が一目見れば、治療方針をすぐに決定できるものがほとんどです。従って、一般内科医の診察というワンクッションを置かず、外来で皮膚科医が文字通り「さまよう」ことで、皮膚科の専門知識が必要な患者がくればその場で診察し、治療方針も決めて、それを一般内科医がオーダーするというところまでします。こうすることで、皮膚科の外来診療の多くが効率化される一方、一度の通院で済むため患者負担も軽減されます。

 「ビジネス」の視点が医療を好ましくない方向へ導く可能性があることは否定できません。しかし、それが医療と経営の質向上に結びつけている事例も多数あります。そういう意味では、トライアンドエラーを繰り返しながら、良くも悪くもビジネス感覚が医療の進化に一役買っているのが、米国の病院の特徴の一つと言えそうです。



http://www.medwatch.jp/?p=14321
本当に必要?糖尿病の「教育入院」―日米病院、ここが変だよ(3)
2017年6月21日|医療現場から MedWatch

 日本と米国の病院における「ここが変だよ」を考える連載。3回目からは日本の病院の「ここが変だよ」を考えます。米国の医師免許を取得した筆者が来日し、まず日本の病院を見て疑問に思ったのは、糖尿病患者に対して行われる「教育入院」です。

ここがポイント!
1 健康管理は自己責任じゃないの?
2 病院は危険な場所との意識変容を

健康管理は自己責任じゃないの?

 教育入院とは、患者やその家族に糖尿病を正しく理解してもらうことを目的としたもので、医師、糖尿病療育指導士、管理栄養士、薬剤師、看護師などが患者の教育に当たり、2泊3日コースから2週間のコースなどに分かれて入院できるシステムです。費用は健康保険が適用され、医療機関や入院期間・検査内容によって異なりますが、一般的には3割負担として1日当り1万円程度かかります。

 まず、筆者は「教育」と「入院」という言葉の組合せと、提供内容が一致していないという印象を受けました。

(写真1)米国では糖尿病の「教育入院」は存在しない※写真はイメージです(略)

 米国でも患者に正しい知識を提供する講座を外来などで提供することはありますが、入院させてまで行うことはありません。米国では、外来の講座に来なかったら、「ただそれだけのこと」というスタンスです。なぜなら、米国では「自分の健康は自分で守る」という意識が高いためです(ただ、全く気にせずピザを食べまくる肥満の方も多いです…)。前回の米国の病院の記事でも指摘しましたが、米国では病気になってしまったら、その先には高額請求が待っているかもしれません。

 提供内容が一致していないと感じるのは、教育入院は治療の一環のシステムである前提の一方、コース別にパッケージ化してある上に、その選択権は患者側にあるためです。さらに、これが糖尿病疾患のためだけのシステムであり、他疾患などにはない特殊なものであるところにも、筆者は疑問を感じます。

 実際に教育入院のプログラムを見てみると、午前中は尿検査だけだったり、半日の間で何のプログラムもない日があったり、土日は何の予定もないのに入院していたりなど、内容が薄いと感じる項目があったり、医療の提供側の都合でプログラムが組まれていると考えざるを得ない内容が散見されます。ベッドという固定費をどう活用するのか、そこからどう収入を生むのかを考えた結果のシステムである可能性もあります。

病院は危険な場所との意識変容を

 筆者は、教育入院というシステムの根底にある問題として、医師や看護師が患者をコントロールしたいという考えと、患者側の「病院は危険な場所」との意識が低いこと挙げられるのではないかと考えています。

 米国では一般的に予定手術で術前入院をすることはありませんが、日本では当然のように術前入院を促し、検査や患者の体調コントロールを入念に行います。患者の管理を徹底することはメリットがある一方でデメリットもあるので、優劣を決することは難しいですが、患者の管理徹底の背景には「医療従事者が患者を信用しておらず、患者をコントロールしたいと考えているのではないか」と考えてしまいます。もちろん、米国の医療従事者の方が患者を信用しているという印象はありませんが、先ほどの指摘の通り「約束を守らなかったらそれまで」というのが米国の病院の考え方で、コントロールしようとも考えていません。

 医療機関の構造上の問題も影響していそうです。例えば、医療機関内における専門職員の人員リソースには限界もあり、患者を入院させることで、限りある専門職員を病院側は効率的に配置することができます。また、そうすることで収入面でもメリットを享受できる可能性があります。収入面へさらに目を向けると、専門職員からの疾患教育点数については外来と入院での差異はありませんが、外来より入院の方が全体の点数が高く設定されています。もっと言うと、専門職員からの疾患教育による報酬要件は、入院より外来の方がより高いハードルになっているという問題もあります。

(写真2)米国では「病院は危険なところ」の意識が根付いている※写真はイメージです(略)

 そして何よりも重要なことは、こうした需要を生み出している患者自身が、入院することのデメリットをしっかりと自覚すべきです。3割負担と言えども入院にかかる費用は高額で、経済的負担は免れません。入院の間一日中、医療従事者から管理されていることの精神的負担もありますし、そもそも入院することでの感染リスクが発生します。米国では、「病院は患者が集まることで感染リスクの高い危険な場所」との認識が広まっています。受診コストも高いため、国民はなるべく病院には行かないよう心がけています。ですから、「教育」を受けるために「入院」するという考え方を、米国人は全く理解することができないのです。



http://www.medwatch.jp/?p=14323
上司や医師へ注意しにくいのはなぜ?―日米病院、ここが変だよ(4)
2017年6月22日|医療現場から MedWatch

 日本と米国の病院における「ここが変だよ」を考える連載の最終回。米国医師である筆者は、日本の病院における手指消毒の不実行に対する違和感を覚えましたが、その根底には上司や医師へ注意しにくいという、日本人特有の文化的な特徴が見え隠れすると指摘します。

ここがポイント!
1 医師の手指消毒が徹底されていない?
2 「confrontation」の必要性

医師の手指消毒が徹底されていない?

 日本の病院を見学すると、米国よりも医療従事者の手指消毒の不実行に目が付きます。

 2016年に発表された論文「Hand Hygiene Adherence Among Health Care Workers at Japanese Hospitals: A Multicenter Observational Study in Japan.」(11年7月から11月に内科、外科、ICU、救急の場で4病院=大学病院1件および研修医がいる総合病院3件を調査)によると、3545人の医療従事者と患者を観察したところ、適切な手指消毒の実施は677人と全体の19%という結果でした(写真1)。サブグループの分析では、医師15%、看護師23%という結果で、医師の方が手指消毒の徹底がされていない可能性を示唆しています。

(写真1)日本の適切な手指消毒の実施率に関する論文(略)

 一方、同様の米国の調査を見てみると、年度や病院・病棟により違いもありますが、適切な手指消毒の実施率は30~60%程度となっています。英国では手指消毒の一大キャンペーン「Clean your hands campaign」が2005年から始まり、2008年にはMRSA発生率が半減、クロストリジウム・ディフィシルが40%に減少するなど効果を上げたことなどから、患者サイドから医療従事者に対する手指消毒の徹底への関心も大きいです。米国でも、患者が医療従事者に「手を洗ってください」と指摘することは珍しくない状況にあります。

 もちろん、日本と欧米の事例を単純比較することはできませんが、上記論文の指摘内容については、日本の病院における適切な手指消毒の実施率が低いとの印象を受けます。医療従事者出身者が多いGHC社内へ筆者がヒアリングすると、やはり適切な手指消毒の実施率が低いとの問題意識を持っているコンサルタントやアナリストは多いことが分かりました。

 ただ、日本の多くの病院では欧米と同様に感染対策部門があります。例えば、米国では担当者より指名された看護師が一週間、非公開で入退室時の両方における手指消毒を院内調査し、その数値結果を感染対策部門が管理しています。また、日本では医療従事者が携帯している消毒剤について全回収、消費量を計量して病棟単位で結果を管理するということもあります。手指消毒と医療の質の関係について報告する論文は多く、消毒剤の消費量が多いほど、感染症の発症率が少ないことが分かっているためです。

 筆者がGHC社内へのヒアリングの中で、「看護師の多くは消毒剤を携帯しているが、医師は看護師ほど携帯していない印象がある」との指摘に着目しました。実際、前述の論文では医師の方が適切な手指消毒の実施率が低い可能性が示されています。これについてGHC社内からは、「若手医師や看護師などの医療従事者が上司や医師に注意しにくい、患者も医師に注意しにくいという心理的障壁があるのではないか」との指摘がありました。

「confrontation」の必要性

 筆者はこの心理的障壁に違和感がある一方、実際に日本と米国の病院の現場を比較すると、うなずけるところもあるとの印象を受けます。

 米国では、医療従事者同士、医師や患者の間で意見を戦わせることは珍しいことではありません。医療従事者同士の「confrontation」(厳しさ、対立、衝突、向き合う)においては、職種間のものもあれば、先輩と後輩、上司と部下の間でも当然のようにあります。患者は医師と対面すると、「この医師は納得のいく医療やサービスを提供してくれるだろうか」と挑戦的な態度を取ることも少なくありません。

 一方、日本では米国ほど医療従事者同士の「confrontation」は少なく、患者も医師に対する信頼の姿勢を絶やさない傾向にあるのではないかと、筆者は感じています。こうした印象に筆者は日本の病院がうらやましいと思う反面、やはり「confrontation」は必要だとも考えています。

(写真2)米国の医師から見ると日本の医師と患者の関係は素晴らしい※写真はイメージです(略)

 例えば、米国に「院長回診」という言葉はありません。そもそも、米国に「院長」という存在はなく、病院のトップは「最高経営責任者(CEO)」で、各部門を「最高執行責任者(COO)」、「最高マーケティング責任者(CMO)」などのMBAホルダーが束ねていることが多いです。病院は一般的な会社と同じ組織体制になっており、経営が悪化すればトップは解任され、各部門や個人が競い合う土壌になっています。こうした競争環境の中では、「confrontation」は不可欠で、「confrontation」があるからこそ、改善や進化していくことも多いのです。

 連載を通じて、日米の文化や制度などさまざまな違いを背景に、同じ病院でも日米では大きな違いがあることを確認してきました。これらの違いに対して、今後も対策を検討する必要があると考えられます。その解決策には、根本解決に繋がるものや、根本解決はできないものの、その答えの一例は提供できるもの、解決が難しいものなどさまざまあると思われます。ただ、日米の差異を検討する中で、解決策の例が米国の例にありそうだったり、日本からも米国の現状の違和感や不便さを解決する方法を提案できそうな例もありました。日米相互にメリットを享受しながら、総合的な医療の質の向上を目指すことができればと、日米の医療を知る筆者は常に考えています。



http://news.ameba.jp/20170625-446/
封印される天下り報道 陰で文科省と大手マスコミが......
2017年06月25日 18時00分
提供:J-CAST会社ウォッチ

加計学園の獣医学部新設をめぐる騒動が続いているが、すでにあちらこちらで指摘されているとおり、民主党の鳩山政権時代に「特区設置を前向きに検討する」と決定されていた案件であり、基本的には何の違法性もない。むしろ問題があるとすれば、内閣の決定を7年間も無視し続けた文部科学省にあり、それこそ、この問題の本質と言っていい。

では、なぜ彼らは7年間もサボり続けたのか――。同じ国家戦略特区でありながら、2015年11月公募開始で17年春にスピード開校した千葉県成田市の国際医療福祉大学をみれば一目瞭然だ。

先輩方が住まう「ヴァルハラ」大学の存在 国際医療福祉大には現在6人の高級官僚が学長、理事といったポストに天下っており、過去には文科省トップの事務次官経験者も天下っていた実績もある。要するに文科省の大のお得意様であり、省益のために全力を尽くして戦った歴代の先輩方の住まうヴァルハラみたいな大学ということだ。

加計学園に天下りをよしとしない気骨があったのか、それとも文科省のほうが四国の獣医学部ポストなんていらないと思ったのかは、筆者には分からない。ただ、国際医療福祉大のポストに匹敵するだけのものが準備されなかったことが、7年間ほったらかされた理由だろう。

だが、国際医療福祉大には、もう一つの「天下り」問題が隠されている。この大学には、判明しただけで以下の大手メディアの出身者が教授ポストに再就職している。

教授  (元・朝日新聞論説委員) 特任教授(前・朝日新聞社社長) 学部長 (元・読売新聞 医療情報部長) 教授  (元・読売新聞 社会保障部長) 教授  (元・日本経済新聞論説委員) 一体、定年近くまで記事を書いていた人間が医療系の大学で何を教えるというのか。一人ならまだしも、有力紙ごとに何人も集める必要があるのか。低賃金・不安定雇用に苦しむポスドクをしり目に自社幹部を教授ポストに送り込む新聞に、紙面で偉そうに貧困問題を論ずる資格はあるのか。というか、前出の面々の中に博士号を実際に取得した人間はどれだけいるのか

。 さらに付け加えるなら、これらは対外的に公表される教授ポストなので、氷山の一角の可能性がある。たとえば事務方の事務局長やら総務部長やらに、この数倍のマスコミOBがいてもおかしくはない。

はっきり言って、筆者は人間の命を直接やり取りする医学部が、複数の天下りポストと引き換えに、80億円にのぼる自治体の補助金付きで開校されている事実のほうが、加計学園の一件よりはるかに問題だと感じている。

しかし、右も左もこれだけ大手マスコミのOBを揃えておけば、そりゃあどこも報道しないはずである。今のところ報じているのは日刊ゲンダイ(天下り官僚が暗躍か 私立医大『特区』認可にデキレース疑惑)くらいのものだ。言うまでもないが、日刊ゲンダイ出身の教授などというものは存在しない

。 わかる!? 産経と毎日が味わう悲哀 思うに、官僚やマスコミへの天下りポストというのは、ヤクザに払うみかじめ料みたいなものなのかもしれない。それを払っていない加計学園を(別の天下り問題発覚で官邸に辞任させられた)前事務次官が復讐目的で吊し上げ、同じくみかじめ料を貰っていない朝日新聞が紙面でどつきまわしているというのが、一連の加計学園報道の実態だろう。

ちなみに、朝日新聞が加計学園問題で政権批判を続けるのは、もちろん安倍政権が嫌いだからというのもあるが、「うちにみかじめ料を払わないとどうなるか」をアピールする狙いもあるのではないか。きっと、これから新設される大学や学部では朝日新聞OBが三顧の礼を持って迎えられることになるはずだ。

さて、筆者の大学時代の法学部の友人にA君という新聞記者志望の男がいた。志望する就職先を聞くと、朝日、日経、読売の3紙だという。3紙ともぜんぜん路線が違うじゃないか、というか産経や毎日は受けないの? と聞くと、ニヤニヤしながらこんなことを言っていた。

「産経と毎日なんかに東大生がいくわけないじゃん」

A君は無事に朝日新聞社に内定し、今でも元気に記者をやっている。

で、何が言いたいかというと、産経新聞とか毎日新聞って、東大卒から見ればそんな程度だということだ。そして、国際医療福祉大学に天下った官僚も、マスコミから再就職したマスコミOBの半分くらいもまた東大卒である。そういう東大OB専用ベルトコンベアみたいなもんを目の前で見せつけられて、産経と毎日は悔しくはないのか!

前出のマスコミOB教授リストには、なぜか産経と毎日の名が見えない。「その手が通じないほど気骨あるジャーナリストだから」と思われたのか、「大して影響力ないから別にいいや」と見下されたのか、筆者にはわからない。

だが、自らの紙面を使って問題を追求することで、自らの手で「気骨」を社会に示すことはできるはずだ。



http://ma-times.jp/51864.html
医療介護施設の医療法人社団誠広会、民事再生法の適用を申請 負債87億円
2017年6月21日 M&A タイムス

岐阜市北西部最大級の医療介護施設運営の医療法人社団誠広会は、6月19日、岐阜地裁に民事再生法の適用を申請し同日、保全命令を受けた。申請代理人は鈴木学弁護士(西村あさひ法律事務所)。監督委員には神谷慎一弁護士(弁護士法人神谷法律事務所)が選任された。

当法人は、1970年10月創業。医療介護分野では岐阜市北西部最大級の規模を誇り、岐阜市内の「平野総合病院」(199床)、「岐阜中央病院」(372床)の運営を主体に、「介護老人保健施設岐阜リハビリテーションホーム」「岐阜中央病院訪問看護ステーション」「岐阜市在宅介護支援センター平野」「岐阜市地域包括支援センター岐北」といった老人介護保健施設の運営のほか、訪問看護や在宅介護なども手がけていた。長年にわたって岐阜市北西部地域における有力医療機関として認知され、地域に根ざした医療および介護サービスを提供、2011年3月期には年収入高約88億5700万円を計上していた。

 しかし、医師不足に加え、地域に医療施設が相次いで進出するなどの影響で業容は低迷。2016年3月期の年収入高は約76億4200万円まで落ち込み、2期連続の最終赤字となった。また、医療機器の導入など設備投資によって借入金への依存度が高まっていたなか、債務超過に陥り今回の措置となった。

なお、地域医療を守るため持続可能な医療介護福祉サービスの提供体制構築を図る意向であり、今後は医療機関の支援を主たる事業とするコンサルティング会社の経営支援や金融機関からの融資を受けることにより財政基盤を確保する計画。事業は通常通り継続しており、誠広会グループの各法人も事業を継続している。

東京商工リサーチ及び帝国データバンクによると負債総額は約87億円。



https://mainichi.jp/articles/20170620/ddq/041/020/009000c
医療法人誠広会
民事再生法申請 岐阜

毎日新聞2017年6月20日 中部朝刊

 岐阜市で病院や介護事業を展開している医療法人社団「誠広会」は19日、岐阜地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約87億円。病院運営は今後も通常通り継続する。

 誠広会は岐阜市で、ともに総合病院の平野総合病院(1970年設立、199床)と岐阜中央病院(83年設立、372床)や、リハビリテーションホームなどを運営している。医師不足のため受け入れ可能な患者が減り、経営が悪化した。今年3月期の決算では約3億円の最終(当期)損失を計上していた。【駒木智一】



https://www.m3.com/news/iryoishin/540806
日医代議員会
成田特区の「医学部」、日医代議員会でも話題に
横倉会長「一貫して反対を続けてきた」と説明

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会会長の横倉義武氏は6月25日、第140回日医定例代議員会後の記者会見で、今年4月に千葉県成田市に新設された国際医療福祉大学の医学部について、「我々は一貫して、国家戦略特区における医学部新設への反対を続けてきた」との見解を述べた(『国際医療福祉大学、医学部一期生140人迎え、入学式』を参照)。

 それでもなお新設に至った経緯について、「一部の医師の団体、特に病院関係の先生方は、『医師が不足しているから、医師は必要』との意見を言っていた。我々が参加できなかった会議の中で、(新設に)賛成意見が述べられていたのは事実。政府には、『医師会は反対しているが、医師を代表している意見とは言えないのでは』との受け止め方をされた。我々が意見も述べる間もなく、最終的に特区での新設が決まった経緯がある」と弁明した。「新設が決まった後は、地元千葉県の医師会としての対応も踏まえながら、日医としても対応を考えていかなければいけない」(横倉会長)。横倉会長が言及した「会議」とは、国家戦略特区の「東京圏」の成田市分科会など(関連記事は、『国際医療福祉大の医学部新設、対応を確認』などを参照)。

 記者会見で、国際医療福祉大学医学部についての質問が出たのは、代議員会で、医師需給や偏在対策についての中川俊男副会長の答弁に関連して、栃木県代議員の小沼一郎氏が、「日医は一貫して、新設医学部に反対してきたが、残念なことに、最近も成田市の国家戦略特区に、医学部が新設された。なぜ阻止できなかったのか」と質問したため。

 中川副会長は、「会長が本来は回答すべきことかもしれない」と断りつつも、次のように回答した。

 「我々は、きちんとした手続きを経て、医学部の新設を協議すると思っていた。その過程において、エビデンスを基に、医師養成数などのいろいろなデータを提示すれば、我々の主張は聞き入れられると思い、活動してきた。(2016年4月に医学部を新設した)東北医科薬科大学の場合は、きちんとした手続きを踏んでおり、一定の評価はしたいと思う。成田の方は、我々は『まさか』と思い、反対してきた。しかし、エビデンスを持ったデータとか、通常の大学設置認可の審査などとは違う、プラスアルファの部分があったのではないか。私としては、非常に残念で忸怩たる思い」

 さらに中川副会長は、「日医と全国医学部長病院長会議との2015年12月の緊急提言は、医学部の新設を阻止するために、必死の思いで作った。これをさらに進化をさせて、有用なものを作り、日医の底力、医師会の底力を示していきたい」と語った。代議員会で、その具体策を答弁している(『医師偏在対策、カギは「地域医療構造の医師版」、中川副会長』を参照)。



https://www.m3.com/news/iryoishin/540807
日医代議員会
「急性期指標、地域医療を混乱に陥れる」、中川副会長
第140回日医代議員会、「議論の俎上に載せるのを阻止」

レポート 2017年6月25日 (日)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、6月25日の第140回日医定例代議員会で、地域医療構想の「急性期指標」について、「この指標が独り歩きすれば、地域医療が混乱に陥るのは明白」と強く問題視した。その理由として、急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれているほか、地域医療構想は病棟単位だが、「急性期指標」は病院単位であり、結果としてケア・ミックスの病院では指標が低く出ることなどを挙げ、「病院全体のイメージを左右。いわば情報操作に当たる」と指摘した。

 「急性期指標」は、地域医療構想の「急性期機能」の定量的に示す研究の一つとして、5月10日の厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で公表された(『「急性期指標」、「見える化」の第一歩だが、注意必要』を参照)。同会議の構成員でもある中川副会長は、「ワーキンググループで唐突に公表されたのは、大いに問題。以降、議論の俎上に載せることを阻止している」と説明した。

 「急性期指標」について代表質問したのは、北海道代議員の藤原秀俊氏。そもそも地域医療構想は2025年に向けて調整会議で協議を行い、自主的に医療機能を検討していくのが目的であると指摘した上で、(1)「急性期指標」は、病院がその立ち位置を理解するのが目的であれば、都道府県ではなく、まず医師会、各医療機関に先に公表すべき、(2)不完全で問題が多いデータを今後どう扱うべきか――と日医の見解を質した。

 「病院全体のイメージを左右、いわば情報操作」

 中川副会長は、「急性期指標」には、主に以下の4点の問題があると指摘。

(1)急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれている。
(2)急性期の項目を点数化して積み上げ、これを病床数で割り算しているが、分母となる病床数には、療養病床も含めている。
(3)(1)や(2)の結果、民間病院に多いケアミックスの病院では、実態より低い急性期スコアが計算され、あたかも急性期機能が劣っているように見える。
(4)地域医療構想では病院の機能分化を病棟単位で進めているが、この急性期指標は病院単位。病院全体のイメージを左右しかねず、いわば情報操作に当たる。

 次に、「急性期指標」が取り上げられ、公表された経緯についての日医見解を説明した。

 まず地域医療構想は、「不足している病床機能を充足する仕組み」で、2025 年度の「病床の必要量」を見据え、各医療機関の自主的な取り組みや医療機関相互の協議を通じて、病床機能を収れんさせていくことが目的であると改めて理解を促した。地域医療構想調整会議では、各医療機関の実情に関する丁寧で慎重な議論が求められるとした。

 調整会議での検討に役立つように、「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、病床機能報告制度の見直しなども進めていると説明。特に「回復期機能」が「不足」と解釈される点について、次のように述べた。「多くの構想区域で病床機能報告制度の数と病床の必要量を比較し、回復期の病床が不足しているという計算結果が出ている。しかし、回復期の患者数は、医療資源投入量から計算された治療経過の病期における通過点の患者数にすぎない。現実には急性期から引き続き同じ病棟に入院しているケースが多く、回復期の患者が締め出されているわけではない。したがって、報告制度の数が、将来の病床の必要量に不足しているために、新たに回復期病棟を作らなければならないという発想は、慎重でなければならない」。

「唐突な公表、大いに問題」
 中川副会長は、「急性期指標が、一つの研究にすぎないとは言え、唐突に厚生労働省の検討会で公表されたことには、大いに問題」と語気を強めた。

 「急性期指標」は、厚生労働科学研究費補助金を受けた、奈良県立医科大学医学教授の今村知明氏らによる研究成果。一部の都道府県では、同指標を用いた分析が進んでいる(『「新規開設・増床」、許可前に調整会議で確認』を参照)。

 「そもそも急性期指標は、こんな不完全な状況で、公表すべきものではなかった。さらに、急性期指標に限らず、都道府県行政だけに情報を提供するのは大きな問題。都道府県において医師会と行政は、地域医療を守る車の両輪」。中川副会長はこう指摘し、今年5月の厚労省主催の都道府県行政職員向けの地域医療計画の講習会にも、日医の要請で都道府県医師会の関係者が実現したとし、「地域医療構想の達成には、行政と医師会との協力関係が極めて大事」と強調した。

 中川副会長は、「今回の急性期指標は、厚労省が財政当局の圧力に押され混乱、迷走した表れなのかもしれない」との見方を示しつつ、「日医は、地域医療計画や地域医療構想について、厚労省と二人三脚の心意気で進めてきたが、さらにしっかり掌握する。都道府県において医師会と行政がそうであるように、日医は厚労省を叱咤激励しながら地域医療を守り続ける」と答弁を結んだ。



http://www.yomiuri.co.jp/chubu/news/20170623-OYTNT50323.html
保健所医師 足りない
2017年06月24日 読売新聞 中部

 保健所などを拠点に住民の健康を守る公衆衛生医師の不足が深刻だ。なり手が少なく、高齢化も進む一方で、愛知県などは「地域医療を支える大切な仕事」とアピールし、人材確保に懸命になっている。

 「地域医療のシステムをつくるダイナミックな仕事。ただ、医学生の選択肢には入りにくいようで」

 愛知県一宮保健所の所長渋谷いづみさん(60)は、そうため息をつく。

 渋谷さんは大学病院で約1年働いた後の1982年、公衆衛生医師として県に採用された。以来、小児医療の拠点整備に携わり、各地の保健所で食中毒・感染症対策や災害医療の体制づくりを進めるなどしてきた。

 現在、力を入れるのは医師やケアマネジャーらとの連携による在宅医療の充実だ。栄養士にも参画してもらおうと研修会を開き、大学を訪問する。「市や医師会、薬剤師会などと一緒にみなさんの健康を守る仕組みを作っていくことにやりがいを感じる」と言う。

 ただ、公衆衛生医師の数は危機的な状況だ。県内では12保健所や県庁の担当部署などに計25人が必要だが、勤務しているのは21人。随時募集しているが、最後の採用は2013年で、その前は10年、さらにその前は05年に遡る。21人の内訳は今年4月現在で40代2人、50代6人、60代13人。5年後には10人が減る見通しという。

 不足は、全国の自治体共通の悩みだ。厚生労働省の昨年10月の調査では、20道県で1人が複数の保健所のトップを務める掛け持ちを余儀なくされ、茨城県では兼務が6か所、北海道や群馬県でも5か所に上った。

 東海地方でも、三重県で尾鷲保健所長の中村公郎さん(60)が熊野保健所長を兼務している。中村さんは「感染症が同時に発生すると大変なことになる」と危機感を募らせる。岐阜県でも保健所の医師8人中5人が60歳以上という。

 なり手不足の背景には、医師と言えば患者を診る臨床医というイメージが強く、公衆衛生医師の業務が広く知られていない現状がある。また、病院の勤務医らと比べ、勤務時間が短いことも多い一方、給与も相対的に低いことが影響しているとみられる。

 事態を重視した厚労省は昨年、各自治体に参考にしてもらおうと、7都府県の人材獲得策をまとめた事例集を作成。公衆衛生の関係団体や学会でつくる専門医協会も今年、研修と試験で健康増進や疾病予防などの能力を持つ専門医を認定する制度をスタートさせて医療関係者に存在をアピールしている。

 愛知県では15年度から、担当幹部が医学部のある県内の4大学を訪問して医師の紹介を依頼。16年度からは名古屋大と名古屋市立大の地域医療の講義に派遣している職員を事務方から各大学OBの公衆衛生医師に変更し、業務内容を説明するよう見直した。公衆衛生医師で県保健医療局長の松本一年さん(60)は「医学生が関心を持つきっかけを作りたい」と話している。

 【公衆衛生医師】全国の保健所や都道府県庁などで働く医師。保健所長は原則、医師とされ、災害時の医療計画をつくり、生活習慣病対策やイベントでの食中毒対策などにも携わる。愛知県の場合、福祉相談センターで児童虐待の対応にあたることも。厚労省の2014年末現在の調査によると、行政機関で働く医師の数は1661人で、医師全体の0・5%。


  1. 2017/06/26(月) 05:35:07|
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6月18日 

https://mainichi.jp/articles/20170618/ddm/016/040/029000c
研修医自殺、疲弊する勤務医 長時間労働が常態化 過労死ライン超6.8%
その他 2017年6月18日 (日) 毎日新聞社

 昨年1月、1人の女性研修医が過労による自殺で命を絶ち、労働基準監督署から今年5月末に労災認定を受けた。そこから見えてきたのは、労使協定を無視した長時間労働の常態化だった。患者の安全のためにも、患者の命を預かる医師の過重労働の是正が求められている。
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 「自己犠牲によって自らの生活や将来を失ったりしてはならない」

 これは4月、厚生労働省の専門家会議がまとめた「医師・看護師等の働き方ビジョン」の一節だ。新潟市民病院の後期研修医だった木元文さん(当時37歳)の過労自殺は、この1年3カ月前に起きていた。

 医師の過重労働は、長い間改善が進んでこなかった。勤務医を対象にした厚労省調査によると、昨年6月の時間外労働時間は約5割が20時間以上で、6・8%は「過労死ライン」の80時間超。当直も多く、7割が宿直明けに通常勤務をしていた。日本外科学会の会員調査(2013年)では、医療事故やその手前の「ヒヤリ・ハット」の原因の81%に「過労・多忙」があった。

 なぜ過重労働は解消できないのか。一つには「正当な理由なく患者を断ってはならない」という医師法上の「応招義務」がある。

 また、東京大医科学研究所の湯地晃一郎特任准教授(血液内科)は「医師は看護師と違い、交代制になっていない。受け持ち患者の容体が急変すると、当直医に加えて主治医も呼ばれる」と指摘する。

 だが、高齢化や医療の高度化が進めば、医師の負担はさらに増す。ビジョンをまとめた渋谷健司・東大教授(国際保健政策学)は「女性医師が増え、働き方を変えなければ医療は回らなくなる。他の医療スタッフと仕事を分担し、医師本来の仕事の生産性を上げるべきだ」と訴える。

 こうした改革に取り組む施設の一つが、仙台厚生病院(仙台市)だ。病床数は約400床と中規模だが、診療科を心臓、呼吸器、消化器の3部門に絞り、病状が改善すれば他病院や開業医に積極的に紹介する。医師事務補助者も約40人配置し、検査結果の入力を委ねた。医師の残業時間は月30時間以内に抑えられたといい、運営法人の目黒泰一郎理事長は「医療界のモデルになれば」と話す。

 同じような動きは各地であり、東京都中央区の聖路加国際病院でも月残業時間が45時間になるよう当直医師の人数を減らし、6月から土曜日の外来診療を一部取りやめた。

 ◇「医師数増やすしかない」

 一方、抜本的解決には「医師数を増やすしかない」との声もある。

 政府は1982年、将来的に医師が過剰になるとの予測から、医師数の抑制方針を閣議決定。00年代に地域医療の崩壊が叫ばれ、地域枠などを設けて医学部定員を増やしたが、今も人口当たりの医師数は経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均より少ない。日本医師会は医師の偏在が問題だとし、増員そのものには消極的だ。

 労働組合「全国医師ユニオン」の植山直人代表は「入力作業などを他の職員に委ねても、医師の負担はあまり減らない。交代制勤務ができるよう医師数を増やすべきだ」と主張。聖路加国際病院の福井次矢院長は「救急や病理は医師不足が深刻で、国は診療科ごとに医師数の調整をしてほしい」と話す。

 政府が3月に公表した働き方改革実行計画は、医師については残業時間の上限規制適用を5年間猶予した。労働時間の短縮だけでは救急医療に支障が出るといった指摘もあり、議論は続きそうだ。【熊谷豪】

 ◇研修医自殺の新潟市民病院 「緊急対応」外来を制限

 木元さんが働いていた新潟市民病院は、医師にとって激務とされる総合病院の中でも過酷さが際立っていた。

 新潟労働基準監督署が認定した木元さんのうつ病発症1カ月前の残業時間は「過労死ライン」の2倍の160時間超。毎日新聞が情報公開請求で得た資料によると、同時期に後期研修医として在籍していた医師の7割以上の20人が、労使協定で定められた月80時間の上限枠を超える残業をしていた。

 病院側も手を打っていなかったわけではない。2009年に労基署から長時間労働の是正勧告を受けた後、医師数を2割増やし、医師の事務を代行する医療秘書も5倍以上に増員した。だが、外来患者も09年度の25万2753人から16年度は26万8703人に増加した。救急外来は過半数が軽症患者で「多くの市民が、うちに来れば何でも診てくれると思っている」(片柳憲雄院長)という状態だった。

 労災認定後の今月6日、市は同病院の「緊急対応宣言」を発表した。紹介状のない一般外来患者の受け入れ停止と、治療済みの患者を近隣病院へ回す対策が柱。篠田昭市長は「過重な負担が病院にかかり、これまで通り患者を受け入れて診察を続けるのは困難だ」と理解を求めた。

 同じく市内で3次救急を担う新潟大医歯学総合病院は、既に同様の対策を進めている。ここでは後期研修医の残業時間に労使協定違反がほとんどなく、過重労働の抑制に一定の効果が出ている。

 ただ市民病院は、地域住民の健康を守ってきた身近な存在だ。近隣病院が断った救急患者を「最後のとりで」として診てきた自負もある。「責任ある立場として患者を受け入れない選択肢はない」と複数の職員が語る。

 木元さんの夫は取材に対し「医師の使命感は分かるが、妻の死は病院による殺人だ」と訴えた。「全国過労死を考える家族の会」東京代表で、自らも医師の夫を過労死で亡くした中原のり子さんは警鐘を鳴らす。「医師の長時間勤務は、犠牲的精神など個人の力で解決できるものではない」【柳沢亮】



https://www.m3.com/news/iryoishin/538787
「地域包括ケアしか選べない」、内閣官房・唐沢氏
第19回日本在宅医学会大会特別講演

2017年6月18日 (日)配信高橋直純(m3.com編集部)

 第19回日本在宅医学会大会が6月17日に名古屋国際会議場で開催され、内閣官房地方創生総括官の唐澤剛氏が「超少子高齢社会に向けて私たちは何をすべきか~地方創生と地域包括ケア~」と題して講演し、今後の死亡者数が増加することに伴い看取りが問題になるが、病床の新たな整備は難しいことから、「我々は地域包括ケアしか選べない」と指摘した。

 メインシンポジウム「地域包括ケア~団塊の世代の高齢化を迎える今後の展望~」では、厚生労働省保険局医療課長の迫井正深氏が「ご当地システムを自分たちで考えて作ってほしい」と呼びかけた。

 唐沢氏は厚労省出身で保険局長を経て、2016年6月に内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官に着任。現在の仕事について、「地方創生と地域包括ケアシステムは半分ぐらい同じこと」と説明した。今日の講演は「私見である」と断った上で、「人口減少をどこかで平らにしたいと思っており、当面は1億人ぐらいにとどまればいいと思うが、そう簡単ではない」と語った。人口減、年齢構成の変化に伴い、最新の国勢調査では、就業人口が前回より400万人減少の6100万人になったとし、「大変動で、こんなに減ったことはない」解説した。

10年後、医療介護が最大の就労者数に

 産業分野も変化しており、最も多い製造業は960万人だが、1985年に比べると240万人減少している。2番目の卸小売業も200万人減の900万人。一方で、3番目の医療・介護・福祉は300万人増の700万人になっていると紹介、「東京圏以外の地方では、増加分の全てが医療・福祉・介護、東京圏でも50%を占める。10年後に1番目になると予想している」として「ここで働いている人を大事にしていかなくてはいけない」と強調した。

 内閣官房で地方創生が始まったのは2014年から。背景には東京圏への人口集中が止まらないという問題意識がある。2016年には11万7868人が転入超過で、そのほとんどが20代以下だった。「現在も転入が増えてしまっているが、我々の目標は転出入ゼロ。東京に来る人の半分は、大学や就職先が東京にあったからというだけ。そういう人には地元に戻っていく応援をしたい」と語った。

 高齢化は今後、都市部で急激に進むと指摘した上で、死亡者数は現在の年間127万人から2040年には167万人に増加するが、「病床を新たに整備することはできない。我々は地域包括ケアしか選ぶことはできない」と強調した。地域包括ケアシステムは、「地域(Community based)」「物語(Narrative based)」「包括(Integrated care)」の3つが重要な概念とし、「制度に人を合わせようとしがちだが、一人一人に寄り添うべき」。

 地域包括ケアシステムでは、縦軸は「医療と介護の連携・一体化」「地域における統合的なチーム医療」、横軸に「生活支援とまちづくり」「地方創生(経済、生活、文化)」があると説明する。医療と介護は自動的につながらないと指摘した上で、急性期病院に勤務する医師や看護師が、退院後の患者の生活を知らないことが問題と強調。「急性期の環境を前提にしていると困る」と述べた。

 縦軸に当たる「地域における総合的なチーム医療・介護」を作るには顔の見える関係が重要とし、医師には「責任ある地位として懐の深さを発揮し、多職種から意見を誘うよう、威張らないお医者さんであってほしい」と注文した。

 今後ますます深刻化する人手不足に対応するためには、(1)医療介護スタッフの総合力の評価、(2)ICT、移動支援機器、ロボットの活用、(3)複数資格取得者の評価――が必要と提案。一例として医療クラークやMSWは地域包括ケアの一員として、さらに活躍できる場があるとし、診療報酬上も評価すべきという考えを示した。

 最後に、20世紀は「同質性と効率化の時代」だったのに対し、21世紀は「多様性と高付加価値の時代」、すなわち「ごちゃまぜ」がキーワードであるとし、「地域包括ケア、地方創生はごちゃまぜであるべき」と提案した。

医療課長、「自分たちで考えて作ってほしい」

 迫井医療課長は、メインシンポジウムで、「地域包括ケアシステムの展開」をスピーチした。地域包括ケアシステムを「『「地域」で「包括ケア」を提供する』、『「地域」が「包括ケア」を提供する』という“掛け言葉”と考えれば分かりやすい」と説明。概念(考え方)であり、各地域の医療・介護関係者に期待される具体的な役割は書いていないとし、「ご当地システムを自分たちで考えて作ってほしいというのが、基本的な一番重要なメッセージ」と強調した。

 そのためには、「医療に“生活視点”をいかに導入するか」が重要と指摘し、「医療は白い壁で町と仕切られており、病院サービスを充実させることに力を入れてきたが、壁の外を知らなかった。それを何とかしていただきたい」と呼びかけた。



https://www.m3.com/news/iryoishin/538385
不採算地区病院への支援拡大を検討、総務省審議会
非常勤医師でも多ければ経営改善

2017年6月16日 (金) 高橋直純(m3.com編集部)

 総務省の「地域医療の確保と公立病院改革の推進に関する調査研究会」(座長:辻琢也・一橋大学副学長)の第5回会合が6月15日に開催され、不採算地区病院への財政措置充実や、医師確保支援の在り方などについて議論した。

 研究会は地方行政を担当する総務省内に設置されており、2016年9月に第1回会合を開催。2016年度に地方自治体が策定した「新公立病院改革プラン」の影響や改革推進策について調査検討を行っている。これまでの4回の議論を基に、事務局を務める自治財政局準公営企業室は論点を4つにまとめた。

論点
1.新たな公立病院の役割に応じた再編・ネットワーク化の取組をさらに促進するには、どのような方策が考えられるか。
2.地域医療の確保に資する公立病院の標準的な需要をどう捉えるか。
3.病院マネジメントの観点から更なる経営改革につながる方策の議論が必要ではないか。
4.地方独立行政法人化が困難な要因を取り除くにはどのような方策が考えられるか。

不採算地区、更なる支援必要か
 同日の検討会では、論点2に関連して、不採算地区病院の支援の在り方が議論された。現在、総務省が不採算地区(病床数150床未満、直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上、又は、国勢調査の「人口集中地区」以外の区域に所在など)と定義する地域にある公立病院には、運営経費や医師確保に要する経費が特別地方交付税で財政措置されている。

 総務省の集計では、2015年の医業収支比率では、不採算地区病院の79.5%に対し、それ以外では90.5%で11ポイントの差がある。職員給与比率では、不採算地区病院65.2%、それ以外53.7%、病床利用率で不採算地区68.1%、それ以外73.4%と、いずれの指標でも不採算地区病院では経営状況が厳しいことが分かっており、近年は病院間の乖離が広がる傾向にあるという。2017年2月の「公立病院の実態調査等」では、6割以上が非常勤医師という病院の割合は、不採算地区病院で46.3%に対し、それ以外では25.6%だった。

 一方で、非常勤医師の給与が常勤医師の1.5倍以上の病院のみを分析すると、不採算地区病院であっても、「医師は充足している」と回答した病院の医業収支比率は85.8%に改善しており(「全体的に不足」病院は同81.5%)、「給与が割高な非常勤医師であっても、確保できれば医業収益の改善に寄与する」と分析している。

 その上で、事務局は「不採算地区病院に対する財政措置を充実する方向で検討してはどうか(その際、非常勤医師の給与負担の重さを考慮すべきか)」「医師確保対策に係る財政措置の拡充が必要か」と提案した。城西大学経営学部マネジメント総合学科教授の伊関友伸氏は「看護師、薬剤師、リハビリスタッフも地方だと雇用ができておらず、調査が必要。研修体制が弱いので勤務してくれないという所もある。総務省では難しいかもしれないが、質の部分も目配りが必要」と指摘。

 北海道奈井江町長の北良治氏は「支援を拡充してほしい。非常勤の派遣医師では派遣医師では入院や在宅医療が十分にカバーできず、収益性低下につながっている」と訴えた。

地方では公務員でないと職員来ず

 論点4について事務局は、「地方独立行政法人化が困難な要因」として、(1)住民説明や組織内の合意形成、利害関係者との調整に多くの時間や労力を要する、(2)自治体が短期間に多額の財政的負担を要する――の2点を指摘し、(1)については自治体自らが解決する必要があるとする一方、(2)については、制度の見直しが必要ではと提起した。

 伊関氏は独法化に当たっては、「職員を全員、分限免職で解雇できるかというとなかなかできない。市役所に戻るなどして、安くつくかと思ったが、案外高くつく」と指摘。また、独法化に当たって総務省は「非公務員型」を原則としているが、埼玉県職員として働いていた自身の経験から「公務員としてのプライドを持って仕事をしている医療職も多い。一定の基準があるが、それを緩めることも必要では」と提案した。島根県病院事業管理者の中川正久氏も、独法化でうまくいっているのは都市部ではと指摘し、「田舎の県では、独法化するという噂だけで、看護師の応募が減った。公務員がステータスになっている」と実例を紹介した。

 事務局が示した独法化した病院の経常収支比率が、2009年の104.3%から2015年には100.1%に悪化しているという資料について、どのような背景があるかという質問が出るも、事務局は「収支低下の理由は分かっておらず、分析したい」と答えた。地方独立行政法人静岡県立病院機構理事長の田中一成氏は、自院の事例として、「独法化して黒字を出さなくてはいけないと、最初は設備投資を抑えていたが、ずっとはそうもいかない。人件費も年々、上がってくる」と紹介した。

 一方で、政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏は「公立病院が抱えている問題は、ガバナンスが分散していること。独法化、指定管理にしたから良くなるわけではないが、今までとおなじようにやれないのも事実。権限が分散していると、他の病院との交渉をやっていかなくてはいけないときに迅速にできるのかと思う」と指摘した。



https://www.m3.com/news/general/538796
厚労省、妊婦禁忌3薬、容認 添付文改訂、要請へ
2017年6月18日 (日) 毎日新聞社

 妊娠中の女性には処方しないとされている医薬品が順次、使えるようになる見通しとなった。妊娠中の一部の禁忌薬について、厚生労働省が初めて処方を公式に認める方針を固めた。薬事・食品衛生審議会での検討を経て、薬の添付文書を改訂するよう製薬会社に通知する。第1弾として免疫抑制剤3品目の添付文書が改訂される見通しで、その後も対象は拡大する予定。

 妊婦は安全性の観点から薬の開発段階で臨床試験(治験)が困難なため、発売当初は動物実験の結果を根拠に禁忌を決めており、各社で差がない。多くの薬が製薬会社の判断で「禁忌」とされ、医師は妊娠を希望する患者に、薬の使用を中止するか、妊娠を避けるよう指導するのが一般的。

 改訂が見込まれる3薬剤は「タクロリムス」「シクロスポリン」「アザチオプリン」。臓器移植後の拒絶反応抑制のために処方されるほか、膠原(こうげん)病の治療薬としても使われる。処方されている15~44歳の女性は推計約3万人。改訂されれば禁忌の項から妊婦が外される。

 3薬剤は妊娠中に使用しても流産や奇形の自然発生率を超えないという研究もあり、日本産科婦人科学会が作成したガイドラインには「妊娠中でも必要があれば使用することが認められる」とされた。しかし、添付文書で禁忌とされ、現場の混乱を招いた。服薬を理由に妊娠を諦めたり中絶したりした患者や、妊娠のため薬をやめて症状が悪化した事例も後を絶たなかった。

 厚労省は2005年10月、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)に「妊娠と薬情報センター」を設け、調査研究や相談事業を続け、3薬剤の安全性を確認。村島温子センター長は「改訂で、難病患者の妊娠・出産の希望に配慮した治療の可能性を広げたい」と話す。免疫抑制剤以外も順次、禁忌薬から外す対象に加える方針。厚労省は「胎児への影響について、正しい情報を伝えていきたい」としている。【中川聡子】

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 ■ことば
 ◇添付文書
 製薬会社が作成し、医薬品につける公的文書。医薬品医療機器法(旧薬事法)で製造販売前と改訂時に届け出が義務づけられている。薬効や使用上の注意事項、用法用量に加え、薬剤を使用すべきでない場合が「禁忌」の項目に記載される。添付文書に従わない処方で医療事故が起きた場合は「特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される」との最高裁判例がある。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017061502000132.html
1年延命の薬 いくら払いますか? 厚労省「費用対効果」で調査
2017年6月15日 朝刊 東京新聞

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 厚生労働省は14日、医薬品の値段(薬価)に「費用対効果」を反映させる制度の導入を前に、一般市民を対象に全国で実施する意識調査の詳細を決めた。一年間延命を可能にする薬への支払額をいくらまで許容できるか面接で聞く。2018年度からの新制度では効果が価格に見合わない薬は値下げの対象。同省は薬価を判断する目安として調査結果を活用する。
 一五年度の医療費は約41兆5千億円。うち二割を占める薬剤費は、がん治療薬オプジーボなど高額新薬の登場で今後も増大が予想される。厚労省は費用対効果の仕組みで薬価を見直し、医療費抑制につなげたい考えだ。
 今夏、全国百カ所で数千人の自宅を訪ねて調査し、秋に結果を公表する予定。同日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)に詳細を示した。
 調査では「完全に健康な状態で一年間生存することを可能とする医薬品や医療機器の費用」について「公的医療保険で支払うべきと考える」金額を一人一人に質問する。
 その結果、金額が高く支払いを許容する人の割合が少ない薬は費用対効果が「悪い」と判断され、値下げの対象となる。
 ただ実際の薬価決定に際しては、希少疾患や代替治療がないなど、倫理的・社会的影響の観点も考慮して判断する。
 この日の中医協では、委員から「患者の窓口負担と公的医療保険からの支払いを、一般市民が区別できるのか」など、調査の難しさを指摘する声も上がった。



  1. 2017/06/19(月) 06:23:29|
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6月16日 

http://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/370207.html
湖西病院、管理者を公募 医師不足、経営改善期待
(2017/6/15 08:20)静岡新聞

 湖西市立湖西病院は15日から、経営管理のトップである病院事業管理者を公募する。同病院は医師不足などで市からの繰り入れ金が年間12億円に膨らんでいて、経営改善を図れる人材を求めている。
 同病院は一般病床196床を有するが、医師不足などで4病棟のうち2病棟が稼働できない状態にある。3月末まで寺田肇院長が病院事業管理者を兼務していたが、管理者を経営に専念させるため、兼務を解消した。
 応募資格は満25歳以上(7月1日現在)で日本国籍を有し、病院の財務・経営管理について優れた識見があることなどが条件。任期は4年間で、影山剛士市長が任命する。
 同病院ホームページから申込書をダウンロードして記入し、7月10日までに同病院に提出する。書類審査を経て、合格者には7月に面接を行う予定。
 問い合わせは同病院管理課<電053(576)1231>へ。



http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201706/20170617_63005.html
<いわき市>地域医療守る条例制定へ
2017年06月17日土曜日 河北新報 福島

 いわき市は、地域医療の維持・充実に向け、基本理念を記した「市地域医療を守り育てる基本条例」を制定する。深刻な勤務医不足を踏まえ、「病状に応じた医療機関での受診」など市民にも適切な行動を呼び掛ける内容。市によると、提出している条例案が開会中の市議会6月定例会で可決されれば、地域医療を守る理念を掲げた東北初の条例となる。
 市の基本施策として、救急医療体制の維持・強化や、医師らの確保・育成などを挙げ、「実施のため、必要な財政上の措置を講じるよう努める」と規定する。
 市民の役割として(1)かかりつけ医を持つ(2)病状に応じ救急車を適正に利用する(3)夜間・休日に安易な受診をしない-ことなどを定めている。
 市によると、市内の病院勤務医不足は東日本大震災後に拍車が掛かり、人口10万当たりの勤務医(2014年12月時点)は88.3人と全国平均(153.4人)を大きく下回る。一方、軽症なのに夜間や休日の救急外来に駆け込む「コンビニ受診」などが増え、医療現場からさらなる対策を求める声が上がっていた。
 清水敏男市長は「限られた医療資源を定着させる意味でも、市民にそれぞれの役割を理解してもらい、地域ぐるみで医療を守る土壌をつくりたい」と説明。市の姿勢を内外に発信することで医師などの人材確保にもつなげたい考えだ。



http://www.medwatch.jp/?p=14326
地域枠医師は地元出身者に限定し、県内での臨床研修を原則とする—医師需給分科会(1)
2017年6月15日 MedWatch 医療計画・地域医療構想

 医師偏在の是正に向けた「早期に実行可能な対策」として、地域医療支援センターの作成するキャリア形成プログラムにおいて▼大学との十分な連携を図る▼地域枠入学生は地元出身者に限定し、当該都道府県での臨床研修を原則とする▼勤務地や診療科を限定する—ことなどを促す。また来年度(2018年度)予算において▼代診医師の派遣▼遠隔診療—に関する補助の拡大を目指す―。

 15日に開催された医師需給分科会(医療従事者の需給に関する検討会の下部組織)で、こういった方向が了承されました。厚生労働省は、近く通知などで都道府県に伝達する考えです。

 また分科会では構成員から「より大きな医師偏在対策」を求める声が相次いで出され、厚労省は、今秋から「抜本的な医師偏在対策」を議論することを説明しました。この点については別途、お伝えします。

ここがポイント!
1 医師偏在是正に向け、「早期に実行可能な対策」を整理
2 地域枠の医師の「地域定着」を目指し、臨床研修先などの限定を
3 地域医療支援センターとへき地医療支援機構、連携・統合を進めよ
4 へき地以外への代替医師派遣や遠隔診療支援への補助を目指す
医師偏在是正に向け、「早期に実行可能な対策」を整理

 地域間・診療科間の医師偏在が大きな問題となっており、例えば新たな専門医制度についても「医師偏在を是正しないよう、地域医療への十分な配慮を行う」ことになっています。しかし、偏在の解消に向けた規制的手段の検討などには時間がかかるため(関連記事はこちら)、そうした議論・検討を行いながら、まず「早期に実行可能な対策」を取ることが必要とし、今般、具体的な4つの対策案を提示しました。

(1) キャリア形成プログラムの改善
(2) へき地における医師確保
(3) 若手医師へのアプローチ
(4) 医師の勤務負担軽減

地域枠の医師の「地域定着」を目指し、臨床研修先などの限定を

まず(1)のキャリア形成プログラム改善を見てみましょう。地域枠の医師には、原則として「一定期間、地域の医療機関で勤務する」ことが求められます。これは医師が不足する地域や診療科を解消するために極めて重要かつ効果的な施策ですが、対象医師には「きちんとしたキャリアを形成できるのか」という不安もあります。そこで都道府県の地域医療支援センターが、主に地域枠の医師が▼2年間の初期臨床研修▼その後の専門研修—において、どの医療機関・診療科に従事するのかの選択肢を提示し、キャリアを積みながら、偏在解消に資する医師就業を目指すプログラム(キャリア形成プログラム)を策定するものです。
 
しかし、各都道府県のプログラムを見ると、▼未策定や大学との連携が不十分な地域がある▼修学資金貸与を地元出身者に限定していないケースが多い▼初期臨床研修を県内に限定していない—といった課題があります。厚労省の調査では「初期臨床研修を行った地域への医師定着率が高い」ことが分かっており、現在のプログラムでは「偏在の解消」効果が減殺されてしまっていると言えそうです。
 
こうした状況から、厚労省は「地域枠医師が増加していく中で、効果的な偏在対策を行うためにはキャリア形成プログラムの改善が必要」と考え、都道府県に対し、次のような点を促すことを提案しました。

▼全都道府県で、大学(医学部・付属病院)と十分連携して、必ずキャリア形成プログラムを策定する

▼地域枠の入学生は地元出身者に限定し、大学所在都道府県で初期臨床研修を受けることを原則とする

▼勤務地や診療科を限定する

▼修学資金貸与事業における就業義務年限を自治医科大学と同程度の年限(9年程度)とする

こうした見直しによって、キャリア形成プログラムの中で「地域枠の医師は地元出身者に限定され、本都道府県に所在する●●病院、◆◆病院、■■病院のいずれかで初期臨床研修を受ける」ことなどが原則になれば、地域に定着する医師が増加すると期待されます。

この提案に対し明確な反論は出ていませんが、鶴田憲一構成員(全国衛生部長会会長)は「静岡県では240名程度の臨床研修医が必要だが、浜松医科大学出身医師は1年間で120名程度しかおらず、他県からの医師を招くために奨学金などを出している。各県の事情なども考慮する必要がある」と要望。この点、今村聡構成員(日本医師会副会長)は、鶴田構成員の要望を「理解できる」と述べた上で、「国が一定のルールを示さなければ、都道府県も動けないであろう。その際、県の事情を汲んでもらえるようにすればよいのではないか」とコメントしました。厚労省医政局地域医療計画課の担当者も「臨床研修医が不足するなどの状況があれば、柔軟な対応を検討する」旨の考えを述べています。

厚労省は、今後、全国的な医師の分布状況などを詳細に把握するために▼氏名▼医籍登録番号▼主たる従事先▼従たる従事先▼就業形態▼専門医資格—などのデータベースを構築する予定です。厚労省はこのデータベースを、例えば「キャリア形成プログラムごとの県内定着率などを比較し、プログラムの改善し、医師定着率向上を図る」などといった用途にも活用したい考えです。
 
なお、厚労省の調査では、地域医療支援センターからの医師派遣は「公立病院に偏っている」ことが明らかになっています。そこでキャリア形成プログラムでは「特段の理由なく、特定の開設主体に派遣先が偏らない」よう留意することも求められます。もっとも、公立病院への偏りが、「へき地医療などを担い、医師不足が深刻な病院が公立病院である」からなのか、それとも「単に県立病院の職員を確保するためだけに派遣をしている」からなのか、今後、実態調査が行われる予定です。

地域医療支援センターとへき地医療支援機構、連携・統合を進めよ

(2)の対策は、「地域医療支援センター」と「へき地医療支援機構」との連携・統合を促す内容です。

両組織ともに都道府県が設置しますが、地域によっては十分な連携が取れておらず、別個の方針で医師を派遣するという非効率があると指摘されます。しかし青森県では両組織を統合し、効率的かつ効果的な医師派遣が実現できているといいます。
 
厚労省は、▼両組織の統合も視野に、一体的な医師確保(へき地を含めたキャリア形成プログラムの策定など)を行う▼統合が直ちには行えない場合でも、キャリア形成プログラム策定や派遣調整に当たって、両組織が十分な連携を図る—よう求めていきます。
この点についても鶴田構成員は「1県1大学であれば統合も可能であろうが、複数の大学医学部がある場合には困難である」と指摘し、柔軟な対応の余地を残すよう要望しています。

へき地以外への代替医師派遣や遠隔診療支援への補助を目指す

 また(4)の負担軽減は、▼代替医師の派遣▼遠隔での診療支援―に対する補助の対象拡大を目指すものです。

代替医師の派遣においては「へき地医療拠点病院からへき地診療所へ代替医師を派遣する場合」、遠隔での診療支援においても「へき地医療拠点病院がへき地診療所を支援するための機器導入など」を行う場合に限り、支援(補助金)が行われます。したがって、大学医学部が、へき地でない地域の医療機関に対して遠隔での診療支援を行う場合には、機器導入や運営維持経費は、すべて「自分たちで賄う」ことになります。
 
厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、来年度(2018年度)予算に向けて、この経費の対象拡大(へき地以外での代替医師派遣、同時に複数の医師の派遣、他病院への代替医師派遣依頼、へき地以外での遠隔診療支援など)を目指す考えを示しています。

さらに、医師不足地域の病院勤務医の勤務環境を改善するために、地域医療支援センターと医療勤務環境改善支援センターの連携も促していくことになります(派遣前に医療勤務環境改善支援センターが勤務環境確認し、助言を行うなど)(関連記事はこちら)。

なお(3)は、若手医師の地方勤務を促すためにSNSなどを活用した広報を行うことなどを推進していくものです。

構成員からは、「こうした対策では抜本的に医師偏在を解消できないが、当面の方策としては了承する」との意見が出されています。厚労省は、2018年度からの第7次医療計画を作成するための指針を出していますが、そこでは医師確保に関する部分、いわば空欄になっています(関連記事はこちらとこちら)。今般の了承を踏まえ、厚労省は「早期に実行可能な医師確保策」として、上記(1)から(4)の内容を都道府県に通知などによって伝達する考えです。もっとも(3)の広報などは、来年度(2018年度)を待たずに実行できることから、都道府県による積極的な取り組みに期待が集まります。



http://www.medwatch.jp/?p=14349
医師の地域偏在解消に向けた抜本対策、法律改正も視野に年内に取りまとめ—医師需給分科会(2)
2017年6月16日 MedWatch |医療計画・地域医療構想

 医師偏在の解消に向けた抜本的な対策を考える上では、まず「ニーズ」をきちんと把握し、その上で医師の要請数や配置を考えていく必要がある—。

 15日に開催された医師需給分科会(医療従事者の需給に関する検討会の下部組織)では、構成員からこういった意見が相次ぎました(関連記事はこちら)。今秋から「抜本的な対策」の議論が分科会で始まりますが、どのようにニーズ把握などを行うかが重要な論点となりそうです。分科会では、法律改正も視野に入れて年内(2017年内)に意見をとりまとめます。

医療のニーズを把握した上で、医師の供給数を算出するロジックは維持

分科会では、昨年(2016年)春に中間まとめを行い、地域医療構想などを踏まえて将来における医師の需要量と供給数について「2024年頃に約30万人で需給が均衡し、2040年には医師が3.4万人過剰となる」(中位推計)といった試算を行いました(関連記事はこちらとこちら)。
 
推計のロジックは、次のようなものです。

【入院医療】
(1)一般病床・療養病床の医師需要について、医師・歯科医師・薬剤師調査で得られた「医療施設(病院・診療所)の従事者数」から推計する
(2)(1)の結果を、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4機能に按分する。按分方法としては、「4機能における平均的な医療資源投入量に基づく方法」や「現状の病床機能報告制度などを活用する方法」など、いくつかの仮定を置いて、『複数の推計値』を示す
 
【外来医療】
▽無床診療所で外来医療を提供している部分の医師需要を推計する(病院・有床診療所については、入院医療の医師需要に包含して推計している)
▽「性・年齢階級別の推計人口」と「性・年齢階級別の外来受療率」に基づき、さらに受療の動向(患者調査や社会医療診療行為別調査を活用)を踏まえて、医師需要を推計する
▽在宅医療については、外来需要とは分離して、「将来、慢性期から在宅に移行する」部分を含めて医師需要を推計する
 
しかし、その後に「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下、ビジョン検討会)が設置され、その報告書(ICTやAIの発展、地域包括ケアの推進など、医療を取り巻く環境の変化を踏まえた『医療従事者の新しい働き方』『今後求められる医療従事者像』などが固められている)を踏まえて、医師などの需給を推計しなおすことになっています(関連記事はこちらとこちら)。
この点について権丈善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)は、「中間まとめのロジックと同様に、まずニーズを推計し、それを踏まえて医師の養成数や配置を検討する」必要があると指摘。福井次矢構成員(聖路加国際大学学長)も同旨の見解を述べました。厚労省医政局地域医療計画課の担当者も「同じ考えである」ことを明確にしましたが、「病院の外来需要について、どのように把握すべきかが十分に検討できていない。厚労省でさらに検討する」と述べるにとどめています。前述のとおり、中間まとめの推計では「病院の外来需要は、入院医療需要と一体的に推計する」という考え方に立っていますが、新たな推計でどう考えるのか、今後の検討結果に注目が集まります。

また厚労省医政局の神田裕二局長も、「ビジョン検討会の報告書でも、権丈委員らの指摘と同様の指摘が行われており、『ニーズに応じた適正配置』という議論の根本は崩れていない」と強調しました。

ただし、鶴田憲一構成員(全国衛生部長会会長)は、「医療においては供給がニーズを作り出してしまう」面があることを考慮すべき、と注意を促しています。

なお、今後の医師偏在解消に向けた抜本改革のベースとなるのは、上記で指摘されている「ニーズ」はもちろん、中間まとめで掲げられた14項目の対策案(厚労省のサイトはこちら(中間とりまとめ))であることを厚労省医政局医事課の武井貞治課長は明確にした上で、年内に分科会の意見をまとめ、必要があれば来年(2018年)に医療法改正案などを国会に提出する考えを示しています。

(1)医学部(地域枠の在り方など)
(2)臨床研修(募集定員配分などに対する都道府県の権限強化など)
(3)専門医(都道府県による調整権限の明確化など)
(4)医療計画による医師確保対策の強化(将来的な自由開業・自由標榜の見直しを含めた検討など)
(5)医師の勤務状況等のデータベース化
(6)地域医療支援センターの機能強化
(7)都道府県が国・関係機関などに協力を求める仕組みの構築
(8)管理者の要件(特定地域・診療科で一定期間診療に従事することを、臨床研修病院、地域医療支援病院、診療所などの管理者要件とすることを検討)
(9)フリーランス医師への対応
(10)医療事業の継続に関する税制(地域の医療機関の事業の承継に関し、中小企業と同様な優遇税制について検討)
(11)女性医師の支援(病院における柔軟な勤務形態の採用など)
(12)ICTなどの技術革新に対応した医療提供の推進
(13)チーム医療の推進
(14)サービス受益者に係る対策(かかりつけ医の情報提供など)



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170616114414
専門医育成の重要研修拠点に「市中病院」明記
機構が整備指針の修正版公表

2017年06月16日 11:59  CBNews

 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は15日、「専門医制度新整備指針」の修正版をホームページで公表した。専門医取得を義務付けていないことを指針に明記したほか、幅広い疾患の症例が豊富な「市中病院」を重要な研修拠点と位置付け、「大学病院に研修先が偏らないようにする必要がある」とした。【新井哉】

 今回の修正は、厚生労働省の医師養成と地域医療に関する検討会の会合で、「専門医取得は義務付けではない」といった意見が出たことなどを踏まえたもので、考え方を明確化したり、分かりやすい表現に改めたりした。

 例えば、「専門医の領域について」の項目では、「専門医はすべての医師が取得しなければならないものではなく、医師として自律的な取組として位置付けられるものである」といった文言を新たに加えた。

 また、「研修施設群の原則」の項目でも、大学病院に研修先が偏らないようにするため、「市中病院」を重要な研修拠点とする必要性を挙げ、「地域の中核病院等が基幹施設となれる基準を設定する」と追記した。

 このほか、地域医療従事者、出産や育児で休職・離職した女性医師などが専門医になれるように、「専門医育成の教育レベルが保持されることを条件に柔軟な研修カリキュラム制による専門研修を行う」などと明記した。



http://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/news/20170616-OYTNT50092.html
東北医科薬科大が新病院
9月 守病院事業譲受に合意

2017年06月16日 読売新聞 宮城


 昨年医学部を新設した東北医科薬科大(仙台市青葉区)は15日、名取市の医療法人社団・健守会が運営する同市増田の「守病院」(病床数62床)の事業譲受について、健守会と正式合意したと発表した。「東北医科薬科大学名取守病院」(仮称)として、9月1日に開院する計画。譲渡額は非公表。

 守病院は1956年にオープン。診療科は内科、呼吸器内科、循環器内科の3科で、2015年度の外来患者は1日平均65・6人、入院患者は同46・1人。建物は地上3階。所属する医師や看護師など94人の雇用は継続する予定という。

 同大の付属病院は、本院の東北医科薬科大学病院(仙台市宮城野区、466床)と、東北医科薬科大学若林病院(同市若林区、199床)とあわせて3病院体制、計727床となる。

 同大担当者は「今回の譲受で運営基盤がより強固になる。地域医療の拠点としていきたい」としている。



http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/health/health/1-0411091.html
出産年1千件、札幌・天使病院が予約中止 複数医師が退職意向
06/16 08:57 北海道新聞

 札幌市東区の天使病院(藤井ひとみ院長、260床)が新規の分娩(ぶんべん)予約を中止したことが15日、分かった。複数の産婦人科医が退職する意思を表明しているためで、同病院は産婦人科の診療体制を大幅に縮小せざるを得ないと判断した。

 同病院は全道に30施設、札幌市内に6施設ある、未熟児が生まれた際の治療や処置を行う地域周産期母子医療センターの一つ。52床の産科で、年に約千件の出産を扱っているほか、道央で最大規模の新生児集中治療室(NICU)と新生児治療回復室(GCU)計26床を備える。緊急の帝王切開手術など危険性の高い分娩にも対応しており、同病院の受け入れ制限は、道央の産婦人科医療体制に影響を与えそうだ。

 関係者によると、研修医4人を除く産婦人科医6人のうち、4人が数カ月以内の退職を表明している。4人のうち3人は、北大医学部産婦人科を母体とし、所属する医師を地域に派遣している一般社団法人「ウインド」に所属、または所属していた医師。

 ウインドなどによると、天使病院の経営側が道内の別の病院で働くウインド所属の医師に対し、天使病院への移籍を持ち掛けたとされる。ウインドは天使病院側に抗議し、病院側は謝罪したという。

 ただ、離職を表明している医師の1人は「経営側と信頼関係が築けない中で、リスクが伴う周産期医療は続けられない」と話している。

 天使病院は「詳細についてお答えできない」と話している。既に分娩予約をしている妊婦に対しても他施設の紹介を始めているという。



https://www.m3.com/news/iryoishin/537734
中央社会保険医療協議会
地域包括ケア病棟、「急性期の受け皿」が7割
2016年度入院医療等調査、「その他」の利用少数

レポート 2017年6月14日 (水)配信水谷悠(m3.com編集部)

 6月14日に開かれた中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会(小委員長:田辺国昭東京大学大学院法学政治学研究科教授)で報告された「2016年度入院医療等の調査」の調査結果(速報)のうち、「地域包括ケア病棟入院料の包括範囲の見直しの影響について」では、地域包括ケア病棟・病室の利用に係る趣旨は「自院の急性期病棟からの受け皿として利用している」が55.4%で最も多く、「他院の急性期病棟からの受け皿として利用している」の15.8%と併せて約7割が急性期病棟からの受け皿としての利用だった。

 一方で、地域包括ケア病棟等の役割の一つである「在宅医療の後方支援として急変時などの受け皿として利用」が5.4%、「介護保険施設等からの急変時の受け皿として利用している」は0.9%にそれぞれとどまるなど、その他の利用は少数だった(資料は、厚生労働省のホームページ)。

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(2017年6月14日「中医協診療報酬基本問題小委員会」資料)

 2016年度診療報酬改定では、地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料を含む)の包括範囲から、手術、麻酔に係る費用が除外されたほか、重症度、医療・看護必要度や在宅復帰率の施設基準が変更された。これらの影響を検証するため、地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア入院医療管理料の届出を行っている医療機関を対象に調査を実施した。

 改定前後の他病棟からの届出変更状況を尋ねると、2016年11月1日の時点で地域包括ケア病棟を届け出ていた医療機関についての当該病棟の2016年度改定前の状況は、同じく地域包括ケア病棟だった66.4%を除くと、7対1入院基本料が25.7%と最も多く、10対1入院基本料が15.0%で続いた。

 地域包括ケア病棟等を届け出ている理由については、「より地域のニーズに合った医療を提供できるため」が28.8%で最多。「収益を上げやすいため」と採算を考慮しての届出が次いで多く、18.0%だった。

 重症度、医療・看護必要度の該当患者割合別の分布では、施設基準である10%を大きく上回る医療機関が多い。回答した119施設のうち、基準以下は1施設のみで、20%以上25%未満が32施設で最多。15%以上20%未満が31施設、25%以上30%未満が20施設で続き、平均は22.5%だった。

 在宅復帰率も、回答した184施設のうち、施設基準の70%を下回る医療機関は5施設にとどまり、90%以上95%未満が57施設で最多となり、平均は87.2%だった。

 地域包括ケア病棟入院中に手術を実施した患者は、3.5%。2014年度に行った前回調査の0.7%からは増加したものの、入棟前に手術を行った患者は16.2%から21.3%に増えており、増加幅も入院中の手術の方が多かった。

 調査は2016年11月~12月に郵送で行い、調査対象施設の区分ごとの回収結果の概要は次の通り。いずれの対象にも施設調査票、病棟票、入院患者票、補助票、対等患者票を配布した。

A:7対1・10対1一般病棟入院基本料等の届出医療機関―対象施設数1829、施設調査票回収数650(回収率35.5%)
B:地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、13対1・15対1一般病棟入院基本料等の届出医療機関―対象施設数1501、施設調査票回収数488(回収率32.5%)
C:療養病棟入院基本料―対象施設数1801、施設調査票512(回収率28.4%)
D:障害者施設等入院基本料等―対象施設数800、施設調査票(回収率35.3%)
E:有床診療所入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料―対象施設数800、施設調査票270(33.8%)



https://www.m3.com/news/iryoishin/537656
中央社会保険医療協議会
7対1入院基本料、98.0%は「変更せず」
2016年度入院医療等調査、重症度等28.8%、在宅復帰率92.5%

レポート 2017年6月14日 (水)配信水谷悠(m3.com編集部)

 「2016年度入院医療等の調査」の調査結果(速報)が6月14日に開かれた中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会(小委員長:田辺国昭東京大学大学院法学政治学研究科教授)で報告され、「一般病棟入院基本料・特定集中治療室管理料における『重症度、医療・看護必要度』等の施設基準の見直しについて」の結果では、2016年度診療報酬改定前に一般病棟で7対1入院基本料を届け出ていた施設のうち、同年11月1日時点で同様に7対1入院基本料を届けていた施設は98.0%に上った。

 2016年度改定では、重症度、医療・看護必要度と在宅復帰率の基準が厳しくなり、7対1入院基本料から他の入院料にどの程度変更するかが注目されたが、実際には同基本料のまま運営している病院が大半を占める。重症度、医療・看護必要度の該当患者基準は25%以上だが、2016年8~10月の平均は28.8%で前年同期比で9.6ポイント増、在宅復帰率は80%以上の基準に対し、平均92.5%だった(資料は、厚生労働省のホームページ)。
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(2017年6月14日「中医協診療報酬基本問題小委員会」資料)

 2006年に7対1入院基本料が創設されて以降、届け出病床数は増加し、2014年以降はほぼ横ばいとなっている。2016年度診療報酬改定では、以下のような見直しが行われ、この影響の検証を目的に調査を行った。

・重症度、医療・看護必要度の見直し
(1)手術(2)救命等に係る内科的治療(3)救急搬送(4)認知症・せん妄の症状―等についての評価を拡充
・7対1入院基本料の基準の見直し
「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者の割合を15%から25%に見直す。在宅復帰率の基準を75%から80%に見直す。
・重症患者を受け入れている「10対1」病棟に対し、「重症度、医療・看護必要度」に該当する患者の受け入れに対する評価の充実
・7対1入院基本料から10対1入院基本料に変更する際に限り、2016年4月1日から2年間、7対1病棟と10対1病棟を病棟郡単位で有することを可能とする。

 調査で7対1入院基本料を届け出ている理由を尋ねたところ、「一般病棟(7対1)相当の看護配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)ため」が49.4%で最も多かったが、「施設基準を満たしており、特に転換する必要性を認めないため」も23.0%と約4分の1を占めた。「一般病棟(7対1)の方が、他の病棟と比較して収益が上げやすいため」と採算性を挙げた施設も6.4%あった。

 一方で、7対1入院基本料から転換した理由については、「重症度、医療・介護必要度の基準を満たさないため」が32.7%で最も多く、2016年度改定が影響したことがうかがえる。。「他の入院料と一般病棟(7対1)を組み合わせることで、より患者の状態に即した医療を提供できるため」が25.0%、「一般病棟(7対1)から他病棟へ転換することで、より地域のニーズに合った医療を提供できるため」が21.2%で続いた。

 入院料別の重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の平均を2015年度の前回調査と比べると、7対1入院基本料では19.2%から28.8%に9.6ポイント、10対1入院基本料では14.4%から19.1%に4.7ポイント、それぞれ上昇した。7対1入院基本料の重症度、医療・看護必要度該当患者割合別の医療機関の分布では、基準の25%を少し超える25%以上30%未満の医療機関が、回答した255施設のうち171施設と多くを占め、30%以上35%未満が60施設で続いた。

 一般病棟(7対1)の在宅復帰率については、2016年度改定後の基準である80%に満たないのは、回答した271施設のうち1施設のみで、90%以上の医療機関が202施設と大半を占めた。

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(2017年6月14日「中医協診療報酬基本問題小委員会」資料)
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(2017年6月14日「中医協診療報酬基本問題小委員会」資料)

 調査は2016年11月~12月に郵送で行い、調査対象施設の区分ごとの回収結果の概要は次の通り。いずれの対象にも施設調査票、病棟票、入院患者票、補助票、対等患者票を配布した。

A:7対1・10対1一般病棟入院基本料等の届出医療機関―対象施設数1829、施設調査票回収数650(回収率35.5%)
B:地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、13対1・15対1一般病棟入院基本料等の届出医療機関―対象施設数1501、施設調査票回収数488(回収率32.5%)
C:療養病棟入院基本料―対象施設数1801、施設調査票512(回収率28.4%)
D:障害者施設等入院基本料等―対象施設数800、施設調査票(回収率35.3%)
E:有床診療所入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料―対象施設数800、施設調査票270(33.8%)



https://www.m3.com/news/iryoishin/537951
中央社会保険医療協議会
20対1療養病棟の理由、「医療需要あり」42.9%
2016年度入院医療等調査、基準満たせず「25対1」も

レポート 2017年6月15日 (木)配信水谷悠(m3.com編集部)

 療養病棟入院基本料を届け出ている理由は、医療需要があるため――。6月14日に開かれた中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会(小委員長:田辺国昭東京大学大学院法学政治学研究科教授)で報告された「2016年度入院医療等の調査」の調査結果(速報)のうち「療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響について」で、療養病棟入院基本料1(20対1)を届け出ている理由は、「療養病棟(20対1)相当の看護配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)ため」との回答が42.9%で最多だった。

 療養病棟入院基本料2(25対1)を届け出ている理由も、最多は「療養病棟(20対1)の施設基準を満たす医療区分2・3の該当患者割合まで患者を集めるのが困難であるため」の26.3%だったものの、「療養病棟(25対1)相当の看護配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)ため」が25.3%で続き、医療需要があることが主要な理由となっていた(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 2016年度診療報酬改定では、慢性期入院医療に関して次のような評価の見直しが行われ、その影響を検証するために調査を実施した。

(1)療養病棟入院基本料2の施設基準における医療区分2・3の患者割合に関する要件の追加
(2)医療区分の評価方法の見直し
(3)療養病棟における在宅復帰機能の評価に関する施設基準の見直し
(4)障害者施設等入院基本料等における脳卒中患者の評価の見直し

 療養病棟入院基本料2(25対1)では「入院患者のうち医療区分2か3の患者が5割以上」の要件が追加されたが、病棟で医療区分2か3の患者が占める割合の分布を見ると、5割を超えているのは回答した89施設のうち7割弱の61施設。療養病棟入院基本料1(20対1)では医療区分2か3の患者の割合の基準は8割以上だが、回答した219施設のうち199施設が基準を満たしていた。療養病棟入院基本料1(20対1)全体での医療区分2・3入院患者は「2」が54.7%、「3」が35.5%で、合わせて約9割。療養病棟入院基本料2(25対1)では「2」が38.6%、「3」が22.7%で、合わせて約6割だった。

 療養病棟の患者の流れを見ると、他院の7対1と10対1の入院基本料の病床からの患者が41.0%で最も多く、自院の7対1、10対1の入院基本料病床からが12.5%、自宅からが11.0%で続いた。退棟先は、死亡退院が40.1%で最多だった。

 調査は2016年11月~12月に郵送で行い、調査対象施設の区分ごとの回収結果の概要は次の通り。いずれの対象にも施設調査票、病棟票、入院患者票、補助票、対等患者票を配布した。

A:7対1・10対1一般病棟入院基本料等の届出医療機関―対象施設数1829、施設調査票回収数650(回収率35.5%)
B:地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、13対1・15対1一般病棟入院基本料等の届出医療機関―対象施設数1501、施設調査票回収数488(回収率32.5%)
C:療養病棟入院基本料―対象施設数1801、施設調査票512(回収率28.4%)
D:障害者施設等入院基本料等―対象施設数800、施設調査票(回収率35.3%)
E:有床診療所入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料―対象施設数800、施設調査票270(33.8%)



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t221/201706/551698.html
シリーズ◎どうなる新専門医制度
都道府県協議会の位置付けを奈良県知事が強く批判
厚生労働省「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」

2017/6/14 石垣恒一=日経メディカル

 厚生労働省は6月12日、「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(座長:国立社会保障・人口問題研究所所長・遠藤久夫氏)の第3回会議を開き、基本領域7学会の新専門医制度への取り組みについてのヒアリングなどを行った。検討会構成員からは基幹施設の大学偏重の傾向などが質されたが、各学会の地域医療への配慮には概ね好意的な評価が示された。しかし、会議の終盤で奈良県知事の荒井正吾氏が、日本専門医機構が想定する都道府県協議会の位置付けについて、「全く受け入れられない。都道府県知事会を代表して出席している立場として、このままなら新制度をつぶすことも検討する」と強く批判する一幕もあった。

 荒井氏が強い不満を表明したのは、機構が資料として提出した専門医制度整備指針運用細則の改訂内容に対して。都道府県協議会についての改訂は以下のように記載していた。

専門医制度整備指針運用細則の改訂の主な内容について

(1と2は略)
3.都道府県協議会について
【改訂の方向性】
●地域の実情に応じた協議を協議会で実施するためには、連携施設への医師配置に関して、迅速にきめ細かく情報提供いただく必要があり、基幹施設等は協議会の求めに協力する。

<改訂案の要点>
●協議会は、機構に連絡し、研修施設群に対し、ローテート内容等の情報の提供を求めることができ、研修施設群は機構の了解の上、協議会に情報を提供することができる。地域医療への配慮や専門研修レベルを改善するための必要性に応じて、機構は基本領域学会、研修施設群と協同して協議会の求めに協力することができる。

 この日の会議で荒井氏は「地域医療の確保等に関する意見」として確認事項を提出。都道府県協議会の実効性を高めるため、「研修施設が都道府県協議会に協力し、直接に必要な情報提供や協議を行うことを明確にする必要がある」と主張していた。機構の改訂細則では研修施設の協力は任意で、しかも機構を介する必要があると解釈できることで、冒頭の強い不満を露わにしたと見られる。

 「新制度を事前にいくら検討しても、限界がある。若い医師たちがどのような扱いを受けているかなど、大事なのは事後の検証で、その場が都道府県協議会になる」。荒井氏は都道府県協議会の重要性をこう語り、その活動の実効性の確保を強く求めた。

 機構理事長の吉村博邦氏は「ご指摘を受け止める」と回答。機構理事会などで速やかな検討がなされると見られる。

 都道府県協議会については、自治体によって体制や取り組みの内容に差があることが昨年から指摘されている。厚労省は各都道府県の協議会について調査を行うとともに、次回の検討会では取り組みの好事例についてヒアリングする方針を示した。新専門医制度のリスタートにおいて、都道府県協議会の体制整備がにわかに課題として浮上してきた。



https://mainichi.jp/articles/20170613/ddl/k21/010/114000c
医師の地域偏在解消へ 修学資金制度見直し 県方針 /岐阜
毎日新聞2017年6月13日 地方版 岐阜

 県は12日、医師の地域偏在解消に向け、県内勤務を条件に岐阜大医学部に設けている「地域枠」医学生向けの修学資金制度を見直す方針を県医療審議会で示した。県内の医師不足地域への勤務をより評価した制度を今後検討するという。

 勤務先が岐阜圏域に集中する傾向が見られる修学金貸与医師に、医師不足地域での勤務を促すのが狙い。修学資金制度を利用した医師が2026年には300人近く県内で勤務することが予定されている。

 地域枠に連動した医学生の修学資金制度は6年間で計約1070万円を貸与。県内で2年間の初期臨床研修後、9年間勤務すれば返還が免除される。県はへき地や岐阜圏域以外の医師不足診療科での勤務により、業務従事期間を短縮する措置も今年度から始めた。

 一方、県が設定する地域単位で複数の市町村にまたがる県内五つの二次医療圏のうち、国の見直し検討の要件に合致する飛騨圏域について、県は広大な面積や基幹病院へのアクセスなどを踏まえ、周辺との統合を考えない方針を示した。今年度策定する次期県保健医療計画では現行通りとする。【岡正勝】



http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03227_02
第8回日本PC連合学会学術大会開催
週刊医学界新聞 第3227号 2017年06月12日

 第8回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(大会長=きたじま田岡病院/徳島大・板東浩氏)が5月13~14日,「総合診療が拓く未来――地域に新たな架け橋を」をテーマにサンポートホール高松,他(高松市)にて開催された。本紙では,医学部地域枠および総合診療専門医に関するシンポジウムの模様を紹介する。

地域枠入学制度と総合診療

 医学部入学定員は2009年度から順次,地域枠を主体とした増員が図られるようになった。定員に占める地域枠の割合は,16年度に17.5%(1617人)に達している。地域枠入学者が専攻医として後期専門研修に進むのに際して,地域への定着を図るためには総合診療専門医の育成が鍵となるだろう。シンポジウム「地域枠と総合診療」(座長=長崎大大学院・前田隆浩氏,高知大・阿波谷敏英氏)では,行政,大学専攻医,それぞれの立場から地域枠入学制度と総合診療について考察した。

 最初に登壇した角芽美氏(島根県立中央病院)は島根県の隠岐島出身。地元の高校を卒業後,地域枠で島根大医学部に進学した。初期臨床研修の経験から「出身地域での医療に従事するには総合的に診るスキルが必要」と痛感し,後期研修は総合診療専門研修を選択したという。へき地で医師がキャリアを形成する上では,「基幹病院との連携や代診医を利用しやすい環境づくりが重要」と指摘した。

 松本正俊氏(広島大)は,地域枠入学制度のアウトカムについて分析した。全国地域医療教育協議会・全国医学部長病院長会議の調査によれば,地域枠入学者の医師国試合格率およびストレート卒業率は,一般医学生よりも高い。また,大学病院を基幹とする総合診療専門研修プログラムの多くが地域枠入学者の受け入れを想定していることに言及。「地域枠入学→総合診療専門医取得→地元の地域医療に貢献」というシステムの構築が重要であるとの見解を示した。

 県と連携した地域枠入学者育成の取り組みについては,岡山雅信氏(神戸大大学院)が報告。取り組みの基本として,医学生・初期研修医に対する地域医療マインドの醸成のほか,専門研修以降の医師を育成・支援する仕組みも必要であると強調した。兵庫県では神戸大とも連携して,義務年限終了後のキャリアを支援する担当部署を今年度から設置。「契約期間(義務年限)終了後も安心して働ける職場の提供」を最重要課題に掲げた。

 行政の立場からは吉川裕貴氏(厚労省)が登壇。「遠隔地・地方での医療従事者確保のためのWHOガイドライン」(2010年)では,地方出身学生の受け入れが「エビデンスレベル中等度,強い推奨」とされていることを紹介。また,総合性の高い科の医師はへき地勤務率が3割程度高い[PMID:19463042]といった本邦の研究を紹介し,総合診療専門医への期待を述べた。

 討論では,地域枠出身者のキャリア選択を中心に議論が進んだ。総合診療専門医が地域医療に貢献することは明らかである一方,地方で不足する産科医や外科医のニーズも高いことから,地域枠入学者の進路選択をどこまで規定するかは難しい課題であるといった意見が出された。

総合診療専門医をめぐる議論は収束へ

 新専門医制度の延期が2016年7月に正式決定した後,制度の抜本的見直しを求める声が高まるなか,外科研修を必修化する案が出るなど総合診療専門医をめぐる議論も迷走した。シンポジウム「一体どうなっているの? 総合診療専門医制度」(企画責任者=北海道家庭医療学センター・草場鉄周氏)において,専門医制度担当副理事長の草場氏が現状を説明。草場氏は「議論は収束に向かいつつある」との見方を示し,2016年時点からの主な変更点(予定)を次のとおり提示した。

・「6つのコアコンピテンシー」を「7つの資質・能力」に変更
・内科研修は「6か月」から「12か月」に延長(総合内科研修を推奨)
・外科研修は初期研修で選択しなかった場合に推奨
・小児科・救急科研修は研修基幹施設がへき地に所在する場合はカリキュラム制が可能に
・総合診療専門研修Iの小児や後期高齢者の数値要件は撤廃
・総合診療専門研修と必修研修の最大6か月の読み替えが認められ,その場合に6か月の選択研修が可能
・へき地などで1年以上研修することを推奨

 内科研修の延長に伴うプログラムの再整備は課題となるが,ある程度の柔軟性は担保されたものとみられる。今後は,19領域同時に整備基準が正式承認され,プログラムの公募が開始される見通しだ。

 シンポジウムではこのほか,現行の学会認定専門医制度に携わる委員らが,現状と新専門医制度移行後の展望を解説。草場氏は,学会がこれまで培ってきたノウハウを生かしながら,日本専門医機構と連携して総合診療専門医の育成に尽力する意欲を示した。



http://www.medwatch.jp/?p=14354
特定機能病院の院長は「選考会議」で選出、医療機関ホームページでの虚偽表示など禁止―改正医療法
2017年6月16日 MedWatch |医療・介護行政全般

 特定機能病院の管理者(病院長)の選任に当たっては、選考会議などを設置し、そこでの審査を経て「適切な能力・経験を有する者」を選ばなければならない。医療機関のホームページも広告規制の対象とし、虚偽広告や比較広告をした場合に罰則の対象とする。「持分なし」医療法人への移行に向けた、厚生労働大臣の移行計画認定期限を2020年9月まで延長する—。

こうした内容の改正医療法が14日に公布されました。厚生労働省医政局長は同日に、その旨を周知する通知「『医療法等の一部を改正する法律』の公布について」を発出しました(厚労省のサイトはこちら)。各改正項目によって施行期日が異なりますので、ご留意ください。

ここがポイント!
1 医療機関ホームページも広告、ただし患者のための表示可能事項を明示
2 特定機能病院の院長、選考会議などで選出することが必要
3 持分なし医療法人への移行を促進
4 法令違反の程度に応じて、都道府県知事が段階的・柔軟に対応
医療機関ホームページも広告、ただし患者のための表示可能事項を明示

 今般の医療法改正の内容は、社会保障審議会・医療部会での議論をベースとしており、メディウォッチでも、その内容は順次お伝えしてきました(関連記事はこちらとこちら)。改正内容を、ポイントを絞って改めて振り返ってみましょう。

 まず、医療機関のホームページの位置づけについて、これまで「広告規制」の対象外とされてきましたが、この方針を転換し「広告である」としました。併せて、虚偽広告や比較広告を禁止し、ホームページ内容の適正化を図る考えです。「公布から1年以内」に施行されるので、早急なホームページ内容の点検を行う必要があります。

 具体的には、広告の定義を「医業・歯科医業・病院・診療所に関して『文書その他いかなる方法によるを問わず』、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」とし、▼虚偽の広告▼比較広告(他の病院・診療所と比べて優良である旨の項目)▼誇大広告▼公序良俗に反する広告—を行うことを禁止しました。施行期日は政令で定められますが、遅くとも「来年(2018年)6月13日まで」にスタートします。

ただし、医療機関ホームページには、患者・地域住民にとって有用な情報が少なくないため、▼医師・歯科医師である旨▼診療科名―などの広告可能事項以外についても広告できます。改正法では「広告がされても医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める」としており、具体的な表示可能内容は今後、明らかにされます。

あわせて、助産師・助産所に関しても同様の規定が設けられます。

特定機能病院の院長、選考会議などで選出することが必要

 特定機能病院のガバナンス強化も、改正法の重要事項です。一部の特定機能病院で医療事故が相次いだことを受け、厚労省は一昨年からガバナンス強化に向けた方策(医療安全に関する外部監査委員会の設置などを指定要件に加えるなど)を取っており、今般の改正内容もその流れを汲むものです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。特定機能病院のガバナンス強化は、「公布から1年以内」に施行されます。

 例えば、特定機能病院の承認要件に、「医療の高度の安全を確保する能力を有する」ことを追加するほか、病院長の選任方法について「開設者(例えば学長など)が、選考のための合議体(選考会議など、厚生労働省令で含めるべき構成員を規定)で審査を行い、その結果を踏まえて『特定機能病院の管理・運営に関する業務遂行に必要な能力・経験を有する者』を選ばなければならない」との規定が設けられました。教授会による互選などは認められなくなります。

 また、特定機能病院の開設者に対して、▼病院長の管理・運営権限を明らかにする▼医療安全確保に関する監査委員会を設置する▼病院長の業務執行が法令に適合することなどを確保する体制を整備する—ことを義務付けたほか、病院長に対して、▼医療の高度の安全を確保する▼管理・運営上重要な事項(厚生労働省令で規定)は勤務する医師・歯科医師・薬剤師・看護師などで構成される合議体の決議に基づく—よう指示しています。

持分なし医療法人への移行を促進

 また、医療法人の非営利性担保に向けて「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への転換が推進されていますが、推進方策の1つである「持分なし法人への移行に関する厚生労働大臣の認定期限」を2020年9月30日まで延長することが決まりました(関連記事はこちら)。

認定を受けた場合、持分なし法人への移行期間(最大3年)において▼出資者の相続に係る相続税を猶予・免除する▼出資者間のみなし贈与税を猶予・免除する―という税制上の特例措置を受けられます

さらに今般の改正では、認定要件に「法人運営に関し、社員、理事、監事、使用人その他の法人関係者に対し 特別の利益を与えないこと」などが追加されます(詳細は厚生労働省令で規定)。この規定は今年(2017年)10月から施行されます(期限の延長は、もちろん6月14日から適用)。

法令違反の程度に応じて、都道府県知事が段階的・柔軟に対応

 また従前の医療法では、医療法人に対しては法令違反などへの段階的な、柔軟な対応(立入検査、改善措置命令、業務停止命令、役員解任勧告、認定取り消し)を可能としていますが、それ以外の、例えば自治体病院や社会福祉法人などの規定は硬直的(いきなり閉鎖命令など)なものでした。

 そこで今般の改正では、医療法人以外の医療機関に対しても、法令違反の程度などに応じて段階的、柔軟な対応がとれるような見直しが行われました。具体的には、次のような段階を設けています。この規定は「公布から1年以内」に施行されます。

▼都道府県知事など(知事のほか、保健所設置市長、特別区長)は、病院などの業務が法令などに違反している『疑い』、またはその運営が著しく適正を欠く『疑い』があると認めるときは、当該病院などの開設者の事務所などに立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査することができる【立入検査】

▼都道府県知事などは、病院などの業務が法令などに違反し、またはその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該病院などの開設者に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべきことを命ずることができる【改善命令】

▼病院などの開設者が【改善命令】に従わないときは、都道府県知事などは当該開設者に対し、期間を定めて、その開設する病院等の業務の全部または一部の停止を命ずることができる【業務停止命令】
 
 このほか、次のような見直しも行われます。
▼病院などが検体検査業務を行う場合には、一定の基準(厚生労働省令で定める)への適合を義務付け(この基準を満たせば、検体検査業務を受託可能)【基準に関しては、厚労省が検討会を設置し、そこでの議論を経る必要があるため、「公布から1年半以内」に施行】

▼出張のみの業務に従事する助産師に、妊婦などの異常に対応する病院・診療所を定めることの義務付け【今年(2017年)10月から施行】

▼検体検査の詳細は厚生労働省令に移譲(柔軟に新たな検査を追加できるようにする)【公布から1年半以内に施行】―などの改正内容が盛り込まれています。

 

http://www.medwatch.jp/?p=14226
専門医機構、地域医療への配慮について「必ず」都道府県協議会の求めに応じよ—厚労省検討会
2017年6月13日 MedWatch |医療計画・地域医療構想

 新たな専門医制度によって地域・診療科の医師偏在が助長されないよう、専門医機構は、研修施設群の状況などを「必ず」都道府県協議会に情報提供し、かつ都道府県協議会で「是正の必要がある」などとの求めがあった場合には「必ず」協力するべきである—。

 12日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」(以下、検討会)では、荒井正吾構成員(奈良県知事)からこうした強い要請が出され、日本専門医機構の理事長である吉村博邦構成員(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)は関連規定の修正を約束しています。

 厚生労働省医政局医事課の武井貞治課長は、「検討会では、機構や学会が地域医療へどう配慮しているかをフォローしていくことになる。今般指摘された規定修正の状況や、都道府県協議会の状況などを見ながら、次回の検討会開催を考えたい」とメディ・ウォッチにコメントしています。

ここがポイント!
1 都道府県側は「都道府県協議会の関与」を明確にするよう機構に強く要望
2 救急や産科婦人科など7学会からヒアリング、地域医療への配慮がうかがえる
都道府県側は「都道府県協議会の関与」を明確にするよう機構に強く要望

 専門医資格(学会)が乱立し、国民にとって分かりにくい制度になっているとの指摘を受け、「専門医の質を担保し、国民に分かりやすい」新たな専門医制度が来年度(2018年度)から全面スタートする予定です。専門医の認定や研修プログラムの認証を、日本専門医機構と各学会が共同して行うことが、新制度の大きな柱となっています。

日本専門医機構では、新専門医制度の憲法とも呼ばれる「整備指針」を昨年(2016年)12月に策定するなどの準備を進めてきました(関連記事はこちらとこちら)。しかし、全国市長会などから「地域医療への、さらなる配慮が必要」との強い要請を受け、塩崎恭久厚生労働大臣は本検討会を設置して「地域医療への十分な配慮がなされているか」のフォローアップを行うことにしたのです。これまでの検討会では、多くの構成員から「プログラム制(年限と研修施設を決め、その中で研修を行う仕組み)では、女性医師などが専門医資格を取得しにくくなる」などの指摘が相次ぎ(関連記事はこちらとこちら)、日本専門医機構では6月2日の理事会で、次のように新整備指針の見直すことを決定。12日に検討会で、その旨が吉村構成員から報告されました(修正内容はこれまでにもメディ・ウォッチでお伝えしているとおりです)(関連記事はこちら)。

▼「専門医はすべての医師が取得しなければならないものでなく、医師として自律的な取り組みとして位置づけられるものである。国民に信頼される安全・安心な医療提供のための専門研修は適正に施行されるべき」旨を明記

▼「基本領域の専門医研修はプログラム制が原則だが、▽専門医取得を希望する義務年限を有する医大卒業生▽地域医療従事者▽出産・育児などで休職・離職を選択した女性医師など▽介護・留学など合理的理由のある医師—などでは、カリキュラム制などの柔軟な対応を行う」旨を明記

▼「全般的、幅広い疾患の症例の豊富な支柱病院を重要な研修拠点とし、大学病院に研修先が偏らないようにする。連携病院で採用した専攻医が希望した場合、長期間連携病院での研修を設定するなど柔軟なプログラムを作成する」旨を明記

▼「機構の研修プログラム承認に際し、▽都道府県▽市町村▽医師会▽大学▽病院団体—などからなる都道府県協議会と事前に協議し決定する。承認後も、連携施設などの医師配置状況を含めて協議会に情報提供する。協議会の意見を受け、機構は協議会・関係学会と協議・調整し改善する」旨を明記

 吉村構成員は、併せて下部規定となる「運用細則」について、次のように見直すことも報告しました。これも「カリキュラム制(年限や研修施設を定めず、必要な症例数などが蓄積された段階で専門医試験の受験資格を得られる仕組み)などの柔軟な対応を設けても、それに則って研修を受けられる仕組みが担保されなければ意味がない」旨の検討会構成員からの指摘を受けたものです。

(1)カリキュラム制などの柔軟な対応を担保するために、▼基幹施設などは専攻医からの相談窓口を設け、有効な研修を行えるよう配慮する▼専攻医は、相談窓口への相談後も有効な研修が行えないと判断した場合には、機構に相談できる—こととする

(2)都道府県協議会によるチェックを担保するために、▼協議会は、機構に連絡し、研修施設群に対しローテ―ト内容などの情報提供を求めることができる▼研修施設群は機構の了解の上、協議会に情報を提供できる▼地域医療への配慮や専門研修レベル改善のための必要性に応じて、機構は基本領域圧潰、研修施設群と共同して、協議会の求めに協力することはできる—こととする

 
しかし、運用細則見直しの(2)「協議会によるチェック」について、都道府県代表の荒井構成員は、「地域の医師偏在などが助長されていないか、都道府県協議会が事後チェックすることが重要である」とし、例えば「機構の『了解の上で』研修施設群が情報提供できる」「機構が協議会の求めに協力することが『できる』」といった表現ぶりについて、「協力しないという判断もできるように読める」ことは遺憾であると指摘。協議会の求めがあれば「必ず」対応するような表現に修正するよう極めて強い調子で要請しました。吉村構成員や、機構の理事でもある今村聡構成員(日本医師会副会長)は、この要請を受け運用細則を再度見直すことを約束しています。

また厚生労働省医政局医事課の担当者も、「厚労省も研修施設群に対し、必要な情報提供や改善をしてもらうよう協力する」考えを明確にしています。厚労省は、近く「協議会をどのように運営するのか、何をチェックすればよいのか」などを整理した通知を発出するとともに、新専門医制度に関する説明会(都道府県担当者向け)を開催し、都道府県協議会によるチェックが有効に機能するよう努める考えです。

救急や産科婦人科など7学会からヒアリング、地域医療への配慮がうかがえる

 12日の検討会では、▼日本救急医学会▼日本外科学会▼日本産科婦人科学会▼日本小児科学会▼日本整形外科学会▼日本精神神経学会▼日本麻酔科学会—の7学会から、各学会の研修プログラムにおいて地域医療にどのような配慮を行っているのかを聴取しました(前回会合では日本内科学会から意見聴取を行った、関連記事はこちら)。

 例えば産科婦人科学会では、▼基幹施設での研修は最長でも2年間(24か月)以内とし、基幹病院による「専攻医の抱え込み」が生じないようにする▼基幹施設の認定基準を必要に応じて緩和し、都道府県に複数の基幹施設を置くことを原則とする▼基幹施設でなく、かつ大都市以外に設置された連携施設において「1か月以上」の研修を必須とする—などの配慮を実施。もともと「統一プロトコル」で専門医研修を行うこととしている山梨県を除く、46都道府県で複数の基幹施設を設置する見通しが立っています(青森県や岩手県など24県で単一の基幹施設しかなかったが、学会が調整)。

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産科婦人科領域では24県で「県内に基幹施設が1病院しかない」状況であったが、もともと統一プロトコルで専門医研修を行うこととしいる山梨県を除き、すべての県で「複数の基幹施設設置」に向けた準備を進めている(山口でも候補病院が見つかっている)

 また整形外科学会でも、▼プログラム制とカリキュラム制とを併用する▼都市部(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)の専攻医定員を過去5年の平均以下とする一方で、地域部の定員には上限を設けないことで、専攻医の都市集中を防ぐ▼大学病院しか基幹病院となっていない県について、市中病院の基幹病院を設置できるよう、施設基準の柔軟な運用を行う—などを実施。28県で「基幹病院が県内に1つ」という状況でしたが、学会の尽力によって佐賀県・岩手県以外は「県内に複数の基幹病院を設置」する見通しが立っていることが報告されました。
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整形外科領域では、28県で「県内に基幹施設が1病院しかない」状況であった
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基幹施設の基準緩和などにより、岩手県・佐賀県を除き、すべての都道府県で複数の基幹施設設置の目途がたっている

 こうした取り組みに対し、「整形外科領域では指導医5名以上という厳しい要件があるが、1県1基幹病院となっている地域には学会から指導医を派遣するなどの対応を考慮してはどうか」(邉見公雄構成員・全国自治体病院協議会会長)などの注文こそついたものの、多くの構成員からは「地域医療への配慮がなされている」と称賛の声があがりました。

また小児科学会では、各都道府県において「募集定員と採用数(実際に採用できた数)との間にギャップがある」といったデータを示し、定員数と採用数とは分けて議論する必要があるとの見解も示しました。現在、都市部への集中を避けるために、領域によっては「定員に上限を設ける」ことになっていますが、より精緻に見ていく必要があるとの見解です。

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日本小児科学会では、専攻医の定員(募集人数)と採用数との間に、そもそものギャップがあることを指摘している

しかし渋谷健司構成員(東京大学大学院国際保健政策学教授)は「大学が地域ニーズを把握せずに定員を設定しないために需給にミスマッチが起きている」と指摘。尾身茂構成員(地域医療機能推進機構理事長)も、「地域にどの程度の医師が必要になるのか、▼人口動態▼疾病構造の変化▼医療提供体制の変化や交通事情—などを踏まえた根本的な議論をする必要があるのではないか。すぐにはできないと思うが、これまでは単に『足りない』という議論しかしてこなかった」との見解を示しています。
【更新履歴】記事中、奈良県の荒井知事のお名前が「新井」となっている個所がございました。お詫びして訂正いたします。記事は訂正済です。

 

https://www.m3.com/news/iryoishin/537263
真価問われる専門医改革
「基幹施設は大学のみ」残る課題、7学会にヒアリング
都道府県協議会の「実効性」向上、奈良県知事が強く要望

レポート 2017年6月13日 (火)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)は6月12日の第3回会議で、基本領域7学会の新専門医制度への対応についてヒアリングを実施した(資料は、厚労省のホームページ)。

 「研修プログラム制と研修カリキュラム制の区別が次第になくなり、必要な症例を経験することが大事という考え方になってきている。地域で活躍する医師にもできるだけ専門医を取得してもらいたい、良医を育てたいという意図がうかがえる」(相馬市長の立谷秀清氏)、「各学会ともフレキシブルに対応し、かなり前向きに改訂してもらった」(東京大学大学院国際保健政策学教授の渋谷健司氏)など、おおむね評価する声が挙がった一方、7基本領域とも、「基幹施設が大学病院1カ所のみ」という都道府県が残っていた。新専門医制度で「大学医局」の力が強まる懸念の声はあり、合理的な理由がある場合を除き、どこまで「複数基幹施設」が実現できるかが今後の課題となる。

 さらに奈良県知事の荒井正吾氏からは、「専門医制度新整備指針」の運用細則改訂案への強い修正意見が出た。「都道府県協議会」の実効性を高めるために、「研修施設が、協議会に協力し、直接必要な情報提供や協議を行うことを明確にする必要がある」と提案。「協議会は、医師の囲い込みを防ぐのが目的。そのためには事後のチェックが必要」(荒井氏)。運用細則改訂案は、「直接」ではなく、日本専門医機構を通して情報提供等を行う仕組みを想定していた。

 日本専門医機構理事長の吉村博邦氏は、「重要な意見であり、十分に検討したい」と回答。厚労省医政局医事課も、都道府県に今後通知を出すなどして、都道府県協議会が十分に機能するよう努めていくとした。その後に厚労省は、各都道府県に対し、協議会の開催状況などについて調査、その結果を本検討会で説明する予定。さらに、第4回の検討会でも、他の参考になるよう、都道府県協議会の好事例などについてヒアリングを行う。

 7学会に対し、共通して出た質問は、Webなどを用いた専攻医の登録や研修実績の管理システムの有無。出産・育児などに伴う研修の中断・再開を容易にしたり、研修の質の評価・向上につながると期待されるからだ。現在は、日本外科学会のNCD(NationaL Clinical Database)など、一部の基本領域学会が独自に運営している。

 立谷氏は、「Web管理システムの基準あるいは全体のシステム構築こそ、日本専門医機構の仕事ではないか」と指摘。聖路加国際病院副院長の山内英子氏も、「専門医の管理、症例登録システムは各学会が作るのではなく、機構が作るべきではないか」と述べたほか、「今は各学会が研修プログラムを作るが、将来的には日本専門医機構が作成するべき」とし、第三者機関として日本専門医機構を設置する意義を問う意見も出た。

 これに対し、日本医師会副会長で、日本専門医機構の監事でもある今村聡氏は、日本専門医機構は、前身の日本専門医制評価・認定機構を引き継いだとはいえ、「全く新しく構築された組織」であるとし、現状では人や財源の問題があるとした。「最終的なゴールとして担当することを目指すとしても、今の段階では日本専門医機構が全てを担うのではなく、まずは学会と機構が連携して進めるのが現実的な手段」「各学会の話を聞くと、かなり配慮している。2018年度に始めないと、若い先生方が心配している」とも述べた。

 今村氏の発言に対し、荒井氏は、「来年度からの実施が、前提になっていると言われると問題」と述べつつ、「ここまで来たため、できるように思えてきた。来年度から開始できるようスケジュールの管理と議論の中身を詰めてもらいたい」と求めた。渋谷氏は、「来年度から始めることは決まっているのか。研修プログラム制と研修カリキュラム制が並行して運営されていることを誰が担保するのか。(それを検証する)PDCAのプロセスはあるのか」と質問。立谷氏からは、そもそも論として、本検討会の役割を問う意見も出た。

 今村氏は、「2018年度からの開始は決定ではなく、日本専門医機構として、2018年度に開始できるように準備を進めているということ。本検討会があったからこそ、さまざまな課題、意見を受けて、各学会が対応し、改善が進んできたと理解している。関係者が納得する形で進められるのであれば、前向きに議論するという捉え方でいいのではないか」と答えた。

 厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、「最終的には、日本専門医機構と各学会に地域医療への配慮をしっかりやってもらうことが、本検討会の目的。今日は、現在調整中だったり、あるいは課題があってもその是正がなされているという説明がされた。最終的には新整備指針の基準に準拠した対応がなされているかを確認する。今後の本検討会の中では、進捗状況を管理して、この検討会で議論していくことが大事」と、本検討会の役割を改めて説明した。

 以上のような懸念や質問が出て、やり取りがあった一方、各学会へのヒアリングでは、柔軟に研修プログラム制を運用するなどして、出産・育児等で研修を中断せざるを得ない専攻医への配慮がなされていることや、2017年度から研修プログラム制を暫定的に採用した学会でも、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)に専攻医が集中しなかったことなどが報告された。

 渋谷氏は、日本産科婦人科学会に対し、専攻医の採用自体を連携施設が行い、「連携施設で2年半、基幹施設で6カ月」といった研修形態が可能かを確認。同学会は採用自体は可能としたものの、大都市部への専攻医集中を防ぐほか、高難度医療も含めて幅広い症例の経験を求めるなどの理由から、「連携施設1施設での研修は24カ月以内」としていると回答。ただ3年間で研修を修了しない場合、1年単位で最大9年まで研修期間を延長できるほか、研修プログラムの変更も認めるなど、専攻医を想定したさまざまな対応をしていると説明した。

第3回会議では、基本領域7学会へのヒアリングを実施、2時間40分の長丁場だった。
 
「複数基幹施設で地域医療崩壊の懸念も」
 日本専門医機構は、「専門医制度新整備指針」の運用細則で、過去5年間の平均採用実績が350人以上の基本領域は、原則として都道府県ごとに複数の基幹施設を置く基準とすることを求めている。該当するのは、8つの基本領域。内科領域を担当する日本内科学会へのヒアリングは、第2回会議で実施(『新整備指針の「4つの対応方針」、厚労省検討会が了承』、『内科専門医、基幹施設8割以上は市中病院』を参照)。

 第3回会議では、残る7つの基本領域について、日本救急医学会、日本外科学会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本整形外科学会、日本精神神経学会、日本麻酔科学会へのヒアリングを実施した。

 「1県、1基幹施設」というケースは、各基本領域とも存在する。1基幹施設の場合、大抵は大学病院本院だ。

 日本小児科学会の場合、2017年度は暫定的に研修プログラム制を導入した。47都道府県中、21県が基幹病院は大学病院1施設のみ。21の大学病院に対して「大学以外で基幹病院となり得る施設を具体的に挙げ、新たな基幹施設を認定する際に配慮すべき点、想定される問題があれば具体的に記載する」ことを求めた調査を実施した。その結果、20大学病院から、「市中病院は、都市部のみしかカバーしていない可能性があり、県内へき地の医療崩壊を招く」との懸念が呈せられた。基幹病院として認定する場合には、へき地等の医療機関との連携を条件とするなどの対応が必要になるという。この点も踏まえ、現在、複数の基幹病院を設置できるよう調整中だ。

 日本整形外科学会は、47都道府県中、28県が1基幹施設。日本医療法人協会会長の加納繁照氏は、「28県あるのは問題。改善していく可能性があると理解していいのか」と質問。NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、指導医5人以上という基幹病院の基準が厳しいのでは、と問いかけた。

 日本整形外科学会は今後、大学病院しか基幹施設がない県では、原則として複数が基幹病院になれるよう整備基準を改訂する予定であり、佐賀県と岩手県以外は設置の見通しが立っていると説明。「指導医5人以上」という基準については、整形外科領域は細分化しており、幅広い研修のためには複数の指導医が必要だとし、理解を求めた。ただし、この基準を満たすのが困難な場合は、個別に対応していくとした。

 日本産科婦人科学会の場合、47都道府県中、24県が1基幹施設。ただし、山梨県では「専門医制度に係る関係者連絡協議会」から、2018年度は産婦人科領域については、1つの研修プログラムで実施する要望が提出されている。それ以外の22県は、新たな病院が基幹施設への「申請準備中」であり、「候補探索中」は山口県のみ。

募集定員の設定、妥当か?
 新専門医制度では、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)には、過去3年間の平均採用実績を募集定員の上限とする方針。

 日本小児科学会の場合、「2015年と2016年」と「2017年」の専攻医の応募者数を比較すると、5都府県では、7.6%減(283.5人から262人に減少)、5都府県以外では、6.3%増(547.0人から542人に増加)であり、研修プログラム制の導入で募集定員を設けたことで、「都市部への集中を増長した事実は恐らくない」とした、日本整形外科学会も同様だ(『新専門医、「大学の専攻医囲い込み」は誤解 - 丸毛啓史・日本整形外科学会理事長に聞く』を参照)。

 日本小児科学会の研修制度で議論になったのが、募集定員の在り方。2017年度の専攻医の募集定員は、全国で1135人。採用実績は542人。神奈川県では計23人の専攻医を採用、その大半が横浜市立大学の小児科に集まっているとし、残る3大学は1人かゼロ。人気がある病院に集まる傾向があるとし、同学会理事長の高橋孝雄氏は、「募集定員を決めても、実際に応募者があるかは分からない。両者は、分けて考えることが必要」と説明した。

 これに対し、渋谷氏は、「地域のニーズを話し合わず、需給のミスマッチが生じるのは当たり前」とし、地域のニーズを踏まえた基幹病院や募集定員設定の必要性を指摘した。山口氏は「実際の必要数よりも多めか、あるいは実際の必要数なのか」と述べ、そもそもどんな考えで募集定員を設定しているかを質問。高橋氏は、特に採用数が1桁の場合など、年度ごとに採用人数の変動が大きいことから、余裕を持って募集定員を設定せざるを得ない現状を説明、理解を求めた。



http://www.asahi.com/articles/ASK6D7TWHK6DUBQU017.html
新専門医制度、都道府県協議会めぐり議論 厚労省検討会
野中良祐
2017年6月13日06時00分 朝日新聞

 2018年度から導入される予定の新専門医制度について議論する厚生労働省の検討会が12日、開かれた。地域医療に配慮した実施体制づくりを進める、都道府県協議会の位置づけを明確にするよう求める意見などが出た。

 検討会では、専門医を認定する第三者機関の日本専門医機構の吉村博邦理事長が、制度の運用指針や細則を地域医療に配慮した内容に改訂する案を説明。案では、機構が都道府県協議会に「情報提供することができる」「協力することができる」といった任意性を含めた表現にした。

 これに対し、検討会のメンバーの一人、荒井正吾・奈良県知事が反発。「実効性を高めるために、情報提供や協議を行うことを明確にする必要がある。改訂案は受け入れがたい」と話した。機構は改訂案を再度、練り直すことにした。

 各都道府県協議会で取り組みに差があることから、厚労省は実態を調査することを明らかにした。6月中に自治体の担当者らを集めた説明会を開く。

 

https://www.m3.com/news/iryoishin/538288
医療従事者の需給に関する検討会
「地域枠、地元に限定」「医師データベースで異動を追跡」
「早期に実現可能な医師偏在対策」は地域医療支援センター強化

レポート 2017年6月16日 (金)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」の第10回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学学長)は6月15日、「早期に実現可能な医師偏在対策」として、医学部地域枠の入学生は原則として地元出身者に限定、卒後は都道府県の地域医療支援センター等が策定する「キャリア形成プログラム」に沿って、大学所在地の都道府県において研修することを求めるなどの方針を了承した(資料は、厚労省のホームページ)。

 地域医療支援センターが派遣調整できる地域枠医師の増加が今後見込まれるため、同センターを強化するのが厚労省の狙い。2008年度以降、医学部定員増に伴い地域枠入学者が今後増え、2024年度には臨床研修を修了した地域枠医師は、厚労省による単純推計で9676人(留年、中途離脱等は考慮せず)。

 主に地域枠医師を対象に「キャリア形成プログラム」を策定、医師のキャリア形成に配慮しながら、医師不足地域に実効的な医師派遣を行うことを目指す。同センターについては、大学と十分に連携するなどして運営体制を強化、類似機能を有する「へき地医療支援機構」や「医療勤務環境改善支援センター」との連携も進める。

 都道府県が医師確保対策に活用できるよう、2017年度予算事業として、厚労省は、「医師の地域的な適正配置のためのデータベース」も構築。医師の出身大学に加え、臨床研修、専門医研修、その後のそれぞれの勤務先など、医師の異動・キャリアパスを経年的に追跡できるようになる見通しだ。

 さらに地方勤務の医師の負担を軽減するため、現在の予算事業ではへき地等に限定される代替医師の派遣や遠隔での診療支援等の対象範囲を、2018年度には拡大できるような予算要求を目指す。

 2018年度からの第7次医療計画の作成指針には、「医療従事者の確保」対策は盛り込まれていない(『医師確保対策は“未定”、医療計画の「作成指針」』を参照)。厚労省は、地域医療支援センター強化などを踏まえた計画を作成するよう、都道府県に対して通知する予定。

 医師需給分科会は、4月に親会の「医療従事者の需給に関する検討会」と合同会議を開いたが、単独の開催は、2016年10月以来、約8カ月ぶり(『医師偏在対策、5月から集中的議論、医療計画に盛り込む』を参照)。「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の報告書待ちの状態だった(『医学部定員増に歯止め、「偏在対策、成果を出すラスト・チャンス」』を参照)。

 2016年6月の中間報告に盛り込んだ14項目の医師偏在対策のうち、「5.医師・診療行為情報のデータベース化」「6.地域医療支援センターの機能強化」を具体化したのが、15日の分科会で提案された内容だ(『偏在対策「強力」に、「医師の働き方ビジョン」も策定』を参照)。

 厚労省は今後のスケジュールとして、今秋以降、「抜本的な医師偏在対策」を検討、今年末を目途に「法案提出を視野に取りまとめ」を行い、2018年から2020年度以降の医学部定員の取り扱いについて判断するため、医師需給推計の結論を得るという案を提示。

 もっとも、医師偏在対策や医師需給対策、医師の働き方について、複数の場で並行して検討されているため、4月の合同会議と同様、15日の会議でも今後の検討の進め方についての質問が相次いだ。厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、働き方ビジョン検討会の報告書は、今後の検討に生かすとした上で、「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」は、新専門医制度について議論した後、卒前と卒後の一貫したシームレスな医師養成の在り方を議論する一方(『「基幹施設は大学のみ」残る課題、7学会にヒアリング』を参照)、医師需給分科会は医師偏在対策を議論すると改めて説明し、理解を求めた。

 医師需給分科会は次回以降、女性医師の立場として聖路加国際病院副院長の山内英子氏、勤務医の対場として国立がん研究センター人材育成センター副センター長の堀之内秀仁氏をそれぞれ加える。

 「キャリア形成プログラム」、未策定7県
 地域医療支援センターは、47都道府県の全てに設置済み。しかし、「キャリア形成プログラム」の未策定が7県、大学と連携していない県があるなど、都道府県によって取り組みは異なり、運営が成功しているとは言い難い。

 日本医師会副会長の今村聡氏は、「確かに今までは機能していなかった」と指摘しつつ、医療法に位置付けられ、税金を投入している以上、なぜ機能していないのか、その検証が必要だとした上で、「国が一定のルールを設ける方針か」と質問した。厚労省医政局地域医療計画課は、地域定着を図るために、上図のような方策の検討を提案したと回答。

 全国医学部長病院長会議会長の新井一氏も、地域医療支援センターの運営実態の検証が必要だとしたほか、大学が日常的に医師の派遣を行っていることから、「大学がコミットしないとうまく行かないのではないか」と提案した。日医常任理事の羽鳥裕氏は、「へき地医療支援機構」や「医療勤務環境改善支援センター」、さらに新専門医制度についての都道府県協議会など、類似機能を有する組織が複数あるため、連携あるいは統合した運営を求めた。

 一方で、全国衛生部長会会長の鶴田憲一氏からは、例えば、「1県1大学」の県と、それ以外の県では医療事情が異なるほか、類似組織も目的、人員体制、予算などがそれぞれ違うことから、画一的な対応の難しさを指摘する意見も上がった。

 「三師調査」活用し、医師データベース構築
 厚労省が構築し、都道府県が活用する「医師の地域的な適正配置のためのデータベース」は、2年に一度実施する「医師・歯科医師・薬剤師調査」の届出情報、医籍情報、専門医に関する情報を用いて構築。医師の異動やキャリアパスの経年的な追跡な可能になる仕組みだ。

 今村氏は、医師のデータベース作成には賛成したが、「適正配置」との名称を問題視。地域枠医師以外の医師情報もデータベースに入るため、行政が全医師を「適正配置」すると受け取られないからだ。自発的に地方勤務が進むよう、魅力ある「キャリア形成プログラム」を作るなどの動きと齟齬が生じかねない。厚労省医政局長の神田裕二氏は、行政が「適正配置」するのではなく、地域医療支援センターは各地域で医療者や住民も交えて議論し、医師の偏在解消に取り組む場であると説明。

 国際医療福祉大学医学部長の北村聖氏は、医学教育ではIR(Institutional Research)、臨床研修ではEPOCなど、さまざまなデータベースを既に用いていることから、将来的にはこれらとの連動も検討すべきと提案。岩手医科大学理事長の小川彰氏は、「医師偏在対策には、フリーランス医師への対応が問題」と指摘。「どんな医師がいかなるキャリアを積み、どんな実力を持て、どこで働いているか」の把握が必要だとした。

 “ソフトツール”か、“ハードツール”か
 もっとも、15日の「医師需給分科会」で強かったのは、「早期に実現可能な医師偏在対策」ではなく、「抜本的な医師偏在対策」をめぐる意見だ。

 聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、「医師の地域偏在と同様に大切なのは、医師の専門性(診療科)の偏在の問題」と述べ、早急な着手を求めた。小川氏は、「医師数は西高東低。地域枠医師の問題だけを議論しても、医師の偏在は解消しない。日本全体の地域偏在と診療科偏在の議論をしないと意味がない」と指摘。

 津田塾大学総合政策学部教授の森田朗氏は、「現時点では、このような形で議論をまとめるのが妥当ではないか」と、地域医療支援センター強化の取り組みを支持しつつ、医師需給分科会の議論を次のように総括した。「インセンティブや情報提供などの、“ソフトツール”ではなく、“ハードツール”でないと問題は解決しないという議論になったところで、(2016年10月以降)医師需給分科会は中断した。しかし、今は地域医療支援センターや地域枠医師の活用など、また“ソフトツール”の議論に戻っているところに、むなしさを感じているのだろう」。



https://www.m3.com/news/iryoishin/538385
不採算地区病院への支援拡大を検討、総務省審議会
非常勤医師でも多ければ経営改善

レポート 2017年6月16日 (金)配信高橋直純(m3.com編集部)

 総務省の「地域医療の確保と公立病院改革の推進に関する調査研究会」(座長:辻琢也・一橋大学副学長)の第5回会合が6月15日に開催され、不採算地区病院への財政措置充実や、医師確保支援の在り方などについて議論した。

 研究会は地方行政を担当する総務省内に設置されており、2016年9月に第1回会合を開催。2016年度に地方自治体が策定した「新公立病院改革プラン」の影響や改革推進策について調査検討を行っている。これまでの4回の議論を基に、事務局を務める自治財政局準公営企業室は論点を4つにまとめた。

論点
1.新たな公立病院の役割に応じた再編・ネットワーク化の取組をさらに促進するには、どのような方策が考えられるか。
2.地域医療の確保に資する公立病院の標準的な需要をどう捉えるか。
3.病院マネジメントの観点から更なる経営改革につながる方策の議論が必要ではないか。
4.地方独立行政法人化が困難な要因を取り除くにはどのような方策が考えられるか。

不採算地区、更なる支援必要か
 同日の検討会では、論点2に関連して、不採算地区病院の支援の在り方が議論された。現在、総務省が不採算地区(病床数150床未満、直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上、又は、国勢調査の「人口集中地区」以外の区域に所在など)と定義する地域にある公立病院には、運営経費や医師確保に要する経費が特別地方交付税で財政措置されている。

 総務省の集計では、2015年の医業収支比率では、不採算地区病院の79.5%に対し、それ以外では90.5%で11ポイントの差がある。職員給与比率では、不採算地区病院65.2%、それ以外53.7%、病床利用率で不採算地区68.1%、それ以外73.4%と、いずれの指標でも不採算地区病院では経営状況が厳しいことが分かっており、近年は病院間の乖離が広がる傾向にあるという。2017年2月の「公立病院の実態調査等」では、6割以上が非常勤医師という病院の割合は、不採算地区病院で46.3%に対し、それ以外では25.6%だった。

 一方で、非常勤医師の給与が常勤医師の1.5倍以上の病院のみを分析すると、不採算地区病院であっても、「医師は充足している」と回答した病院の医業収支比率は85.8%に改善しており(「全体的に不足」病院は同81.5%)、「給与が割高な非常勤医師であっても、確保できれば医業収益の改善に寄与する」と分析している。

 その上で、事務局は「不採算地区病院に対する財政措置を充実する方向で検討してはどうか(その際、非常勤医師の給与負担の重さを考慮すべきか)」「医師確保対策に係る財政措置の拡充が必要か」と提案した。城西大学経営学部マネジメント総合学科教授の伊関友伸氏は「看護師、薬剤師、リハビリスタッフも地方だと雇用ができておらず、調査が必要。研修体制が弱いので勤務してくれないという所もある。総務省では難しいかもしれないが、質の部分も目配りが必要」と指摘。

 北海道奈井江町長の北良治氏は「支援を拡充してほしい。非常勤の派遣医師では派遣医師では入院や在宅医療が十分にカバーできず、収益性低下につながっている」と訴えた。

地方では公務員でないと職員来ず
 論点4について事務局は、「地方独立行政法人化が困難な要因」として、(1)住民説明や組織内の合意形成、利害関係者との調整に多くの時間や労力を要する、(2)自治体が短期間に多額の財政的負担を要する――の2点を指摘し、(1)については自治体自らが解決する必要があるとする一方、(2)については、制度の見直しが必要ではと提起した。

 伊関氏は独法化に当たっては、「職員を全員、分限免職で解雇できるかというとなかなかできない。市役所に戻るなどして、安くつくかと思ったが、案外高くつく」と指摘。また、独法化に当たって総務省は「非公務員型」を原則としているが、埼玉県職員として働いていた自身の経験から「公務員としてのプライドを持って仕事をしている医療職も多い。一定の基準があるが、それを緩めることも必要では」と提案した。島根県病院事業管理者の中川正久氏も、独法化でうまくいっているのは都市部ではと指摘し、「田舎の県では、独法化するという噂だけで、看護師の応募が減った。公務員がステータスになっている」と実例を紹介した。

 事務局が示した独法化した病院の経常収支比率が、2009年の104.3%から2015年には100.1%に悪化しているという資料について、どのような背景があるかという質問が出るも、事務局は「収支低下の理由は分かっておらず、分析したい」と答えた。地方独立行政法人静岡県立病院機構理事長の田中一成氏は、自院の事例として、「独法化して黒字を出さなくてはいけないと、最初は設備投資を抑えていたが、ずっとはそうもいかない。人件費も年々、上がってくる」と紹介した。

 一方で、政策研究大学院大学教授の島崎謙治氏は「公立病院が抱えている問題は、ガバナンスが分散していること。独法化、指定管理にしたから良くなるわけではないが、今までとおなじようにやれないのも事実。権限が分散していると、他の病院との交渉をやっていかなくてはいけないときに迅速にできるのかと思う」と指摘した。



  1. 2017/06/17(土) 09:32:02|
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6月11日 

https://dot.asahi.com/dot/2017060100037.html?page=2
西の医師は東に来ない? 医学部多いのに首都圏で医師不足が続く理由
(更新 2017/6/ 6 07:00) AERA

 東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、改善されない首都圏の医師不足の問題点を指摘している。

*  *  *
 首都圏の医師不足が改善されない理由を説明しましょう。

 東京都に13もの医学部が存在するため(2位は大阪府の5つ)、首都圏には医学部が多いと考えている方が多いでしょう。しかし、首都圏の人口は約3930万人ですが、医学部は19しかありません(地域医療への影響が限定的な防衛医大を除く)。人口207万人に1つです。

 人口約625万人の千葉県には千葉大学、人口約730万人の埼玉県には埼玉医大しか医学部はありません(防衛医大を除く)。神奈川県は人口約911万人で4つです。一方、四国は人口約395万人で4つの医学部があります。人口99万人に一つの割合で医学部が存在することになります。北陸地方は人口約304万人に4つで、人口76万人に一つの医学部があります。人口比でみれば、首都圏の2倍以上です。

 東京以外の首都圏は極度の医師不足にあります。多少、東京で医師を養成しようが、周辺地域が不足しているため、完全な充足は期待できません。

 首都圏の医療現場はどのように対応してきたのでしょうか。私たちの研究室では、慶應義塾大学医学部の学生である岡田直己氏が中心となって、医師の移動状況を調査しました(図)。図の中の数字は、医師の流出入の人数の差を示します。

 首都圏には多数の医師が流入しています。埼玉県は年間平均228人、千葉県は226人、神奈川県は121人もの医師が流入しています。千葉県、埼玉県、神奈川県の医師養成数は、それぞれ年間98人、103人、375人ですから、千葉、埼玉県は養成数の2倍以上、神奈川県は養成数の3分の1の医師が流入してきていることになります。

【図】医師は多い地区から少ない地区へ。東京からは流出する(『病院は東京から破綻する』より)
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 興味深いのは、東京が医師流出都市であることです。東京の年間の医師養成数は1286人ですから、17%の医師が都外に流出していることになります。マスコミが言うように、医師が移動するのは、必ずしも「都会を目指す」からではないようです。

 千葉県や埼玉県へ医師を供給している地域のひとつは、東京都です。そのほかは東北地方と甲信越地方で、いずれも養成した医師の約3分の1が首都圏に流出しています。東京から埼玉県・千葉県への医師の流出を考慮せず、この現象だけを見ると、確かに「医師は都会で働きたがる」ように見えます。

■西の医師は東に来ない

 しかし、おそらくそれは実態ではありません。医師の流出入と人口あたりの医師の養成数は高度に相関します。人口10万人あたりの医師の養成数が1人増えると、医師の流出率は約13%増えます。つまり、日本の医師は、医師養成数の多いところから、少ないところに移動する傾向が強いのです。地方か都会かは、私たちの調べた範囲では、医師の移動にあまり関係がありません。

 一見ありがたいことですが、医師の移動にはある特徴があります。医師の多い西日本から東日本への医師の移動は少ないのです。

 日本の医師の移動は、基本的に九州、関西(四国・中国・近畿)、中部(北陸・東海)、東日本(東北・甲信越・関東)、北海道という地域内でほぼ完結しています。地域をまたいだ医師の移動は無視できるほど少ないのです。

 東日本では医師を求め、東日本内でゼロサムゲームを繰り返すことになります。人口あたりの医師養成数が最も少ない首都圏に、それよりは多い東北地方や甲信越地方から流入することになります。

 最近、状況は、首都圏にとって悪い方に変わりつつあります。東北地方や甲信越地方の医師不足が深刻化したため、「医学部の地域枠の拡充」や「義務年限と引き替えの県からの奨学金の貸与」のような制度が整備されつつあるからです。

 地元の医学部を卒業した医師を抱え込む施策が行われれば、東日本での医師の移動が制限されます。首都圏の医師不足はさらに深刻化してしまうのです。

※『病院は東京から破綻する』から抜粋



https://www.m3.com/news/iryoishin/536754
安倍政権の医療制度改革
「参照価格制、骨太の方針2017から削除」、日医が評価
未来投資会議の「遠隔診療」、経過観察なら可

2017年6月10日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 日本医師会は6月9日、同日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2017」について、素案の段階で盛り込まれていた、いわゆる参照価格制度の記述が最終的に削除されたことを「高く評価する」とし、今後もこうした提言がなされることがないよう、強く求めていくとの見解を公表した。

 同じく9日に閣議決定の「未来投資戦略 2017」で提言された遠隔診療については、「初診は必ず対面診療」としつつ、かかりつけ医がICTを活用して経過観察や指導を行う場合には有効とし、必要な財源の手当てを前提に、診療報酬上の評価を中央社会保険医療協議会で議論すべきとしている。見解は、横倉義武会長名で、来年度の概算要求、予算編成に向けて、適切な財源を求めていくとしている(資料は、日医のホームページ)。

 「骨太の方針2017」の素案では、「先発医薬品価格のうち、後発医薬品価格を超える部分について、保険財政の持続可能性や適切な給付と負担の観点を踏まえ、原則自己負担とする」と記載、いわゆる参照価格制度の検討を求めていた(『「先発薬引き下げや差額自己負担」を削除、骨太2017』を参照)。参照価格制度は、社会保障審議会医療保険部会や中医協などでも議論され、反対意見が多数を占めていた(『先発品と後発品の「差額」徴収、反対が多数』、『「先発品薬価、後発品まで引き下げ」、診療・支払側とも反対』を参照)。日医見解では、「自由民主党厚生労働部会をはじめとする自民党内の良識ある判断等によって最終的に削除」と評価。

 素案では「看護師の行う特定行為の範囲の拡大などタスクシフティング、タスクシェアリングを推進する」とされていたが、「十分な議論を行った上で」が加筆された点については、「医療安全や医療の質の向上の視点に立ち、十分かつ慎重に議論することが必要と考える」としている。

 「骨太の方針2017」の記載はないものの、経済財政諮問会議における議論で、民間議員が「かかりつけ医の普及が課題となっており、総合診療専門医との関係も含め定義を明確にしていく必要がある」との資料を提出したことについては、日医としてフリーアクセスを守りつつ、外来の機能分化・連携の推進を検討するとともに、かかりつけ医機能の評価を高め、普及・定着を図っていくと表明。受動喫煙対策に関しては、署名活動を含め、対策の強化・実施に向けた活動を進めていくとした。

 「未来投資戦略 2017」の遠隔診療については、「対面診療が原則」と釘を刺しつつ、長期処方の例を挙げ、患者が自己判断で中止して容態悪化に気づくのが遅れるケースがあることなどから、「かかりつけ医がICTを活用して経過観察や指導を行う遠隔心労は有効」とした。「電話・テレビ画像等による再診」の評価を参考に、中医協で議論するよう求めている。



https://www.m3.com/news/iryoishin/536411
m3.com意識調査
改正個人情報保護法、詳細把握はごく少数
「研究に支障」、懸念の声も

レポート 2017年6月11日 (日)配信水谷悠(m3.com編集部)

 5月30日、個人情報の取り扱いを厳格化する改正個人情報保護法が全面施行された。日常診療や病医院運営に関わる患者情報の取り扱いは従来通りだが、学会での症例報告や広く情報を集めての研究などの第三者提供には、オプトアウト(明確に拒否しない限り、同意したと見なす)の方法が使えず、患者から明確に同意を取る必要がある。

 所属先での個人情報の取り扱いについてm3.com意識調査で尋ねたところ、改正法の詳細を把握しているのは開業医が2.2%、勤務医が6.2%とごく少数にとどまった。自由回答では「研究に支障が出る」、「良く理解していて解説してくれる人が周囲にいない」など、対応に悩む声が挙がった (関連記事は、『山本隆一・医療情報システム開発センター理事長に聞くVol.1、Vol.2』、情報の取り扱いに関するガイドライン等は厚生労働省のホームページ) 。

Q1: 改正個人情報保護法の内容をご存知ですか?
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 詳細を把握しているのは全職種で少数にとどまり、「改正したことも知らない」が開業医の41.2%を筆頭に、数多く見られた。

Q2: 改正法全面施行に伴い、個人情報の取り扱いに関する勤務先の内規などの改定がありましたか?
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 「既に改定」と「近く改定する予定」を合わせて、開業医が15.7%、勤務医が26.4%にとどまり、対応が必ずしも進んでいない現状がうかがえた。

Q3: ご自身の研究や学会報告など、日常診療や病院運営以外で困難が生じると思いますか?
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 「困難が生じると思う」との回答が開業医で20.2%、勤務医で35.3%と影響を懸念する意見がある一方、「分からない」が開業医で62.7%、勤務医でも44.7%に上った。

Q4 その他、改正法や個人情報保護の取り組みについて、見直した内容、あるいは対応や解釈で悩んでいる点などをご自由にお書きください。【任意】
【情報の慎重な取り扱いが必要】
・治験をする際に、従来以上に細かな配慮が必要で、治験を今後行う際はこれまで以上に手間と心遣いが必要になると感じています。【開業医】

・患者の個人情報に関しては一層厳しい取り扱いとなった。【勤務医】

・職員から誓約書をもらっている。個人情報に係る書類は鍵付きキャビネットにしまうようになった。署名活動の紙を待合室に置くことができなくなった。【開業医】

【研究への影響を懸念】
・医師主導の臨床試験が少なくなる。これで日本発の論文がもっと少なくなる。【勤務医】

・学会準備のデータ管理が大変になった。患者からの同意書が増えて大変。【勤務医】

・多施設共同研究など締め切りがある時などで、担当する患者さんの同意を取るための時間で本来の診療に充てる時間が少なくなる。【勤務医】

・手続きが煩雑化し、学術活動が下火になると思います。【勤務医】

・臨床研究がますますやりにくくなった。やる気がなくなってきた。【勤務医】

【改正法は厳しすぎる】
・情報時代であり個人情報保護は必要かつ重要だが、あまりに神経質になりすぎかも・・・。【開業医】

・個人情報の保護は極めて大切なことと思うが、現実には過剰な保護解釈のために逆に弊害をもたらしているように思う。【開業医】

・行き過ぎた個人情報保護は、業務効率の低下や臨床研究の支障になると思われる。【勤務医】

【対応に苦慮】
・何もしていないが大丈夫だろうか。【開業医】

・改正法の勉強会を、弁護士を呼んで実施したが、個別の判断は微妙で難しい。【勤務医】

・良く理解していて解説してくれる人が周囲にいない。【勤務医】

・どうやって対応したものか、本当に悩んでおります。【勤務医】

・オプトアウトの取り扱いについて若干悩んでいる。【薬剤師】

【調査の概要】
調査期間:2017年6月1日~6日
対象:m3.com会員
回答者数:1252人(開業医228人、勤務医760人、歯科医師5人、看護師21人、薬剤師197人、その他の医療従事者41人)
回答結果画面:改正個人情報保護法への対応は?



https://www.m3.com/news/iryoishin/531339
医療情報の利活用と保護、両立が肝要 - 山本隆一・医療情報システム開発センター理事長に聞く◆Vol.1
日常診療での取り扱いは従来通り

インタビュー 2017年5月25日 (木)配信聞き手・まとめ:水谷悠(m3.com編集部)

 医療情報の取り扱いを厳格化する改正個人情報保護法が5月30日に施行される一方で、医療情報を利活用するための次世代医療基盤法が4月28日に成立した。この二つの法によって、医療や医学研究の現場はどう変わるのか。医療情報システム開発センター理事長の山本隆一氏に聞いた(2017年5月19日にインタビュー。計2回の連載)。

改正個人情報保護法のポイント(5月30日施行)
・医療情報は大部分が「要配慮個人情報」に指定され、下記の取り扱いとなる。
(1)患者の同意を得ずに収集できない。
(2)利用目的の変更が認められない。
(3)オプトアウト(明確に拒否しない限り、同意したと見なすこと)による第三者提供ができない。
・当該患者の医療に必須な利用や、病医院の運用に必要な利用は従来通り可能。
・匿名化する場合や、症例番号などを新たに発番して、番号と患者の対応表を作成して管理する場合、同意なしに情報を取得して研究目的に使うことが、単独施設内や共同研究契約を結んだ複数施設内で研究する場合には可能。

次世代医療基盤法のポイント(来春施行見込み)
・高い情報セキュリティを確保するなど一定の基準を満たし、医療情報などの管理や利活用のための匿名化を行える事業者を、国が「認定匿名加工医療情報作成事業者」として認定。
・医療機関などは、あらかじめ患者本人に通知した上で、オプトアウトで上記の認定事業者に医療情報を提供できる。

※改正個人情報保護法と関連する政令や規則、ガイドラインは、「個人情報保護委員会」のホームページ、次世代医療基盤法は参議院のホームページを参照。

 ――改正個人情報保護法の施行後、医療機関は医療情報をどのように扱えば良いのでしょうか。
 患者情報は「要配慮個人情報」に位置付けられます。要配慮情報というのは、同意を得ずに収集してはいけない、目的の変更が認められない、それから一番大事なのは第三者提供のオプトアウトが使えない。この三つが主な特性ですけども、患者の医療に必須の利用は、今まで通り認められています。紹介状を書くなど第三者提供であっても同様です。日本では患者さんが医療機関を自由に選択できるわけですから、医療機関に来たということは医療を受けることに同意されている。つまり、医療を実施するための情報利用にも同意をされているわけです。介護事業者との連携についても、患者を中心に進めるのは問題ありません。

 また、病医院の運用のための利用も認められる。例えば病棟で男部屋と女部屋の割合をどうするかということを決められないと、病院はやっていけない。そうしたものは医療に必須の利用と認められています。それから、レセプトを出す、感染症の届けを出すといった法律で定められた利用も、もちろんできます。こうした点はこれまでと変わりません。

 ――では、医学研究や教育、新薬開発での利活用など、医療以外の場面ではどうでしょうか。
 患者の医療に直接関係なく、病医院の運用のためでもなく使う第三者利用は同意を得なければなりません。例えば学会などでの症例報告。これは患者の治療や病医院の運用には関係ないので、同意を得なければなりません。個人情報とは生きている人の個人情報ですから、もし患者が亡くなっている場合は個人情報保護法の範囲から外れますが、遺族に関係する問題などがありますので、倫理審査委員会を通して発表を認めていただくなどの第三者的な評価が必要です。

 学術研究は改正個人情報保護法第4章の規定からは外れますが、医学研究に関しては、同法の4章以外の部分と「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」など各種の研究指針の制約を受けます。同指針では、匿名化する場合や、症例番号などを新たに発番して、番号と患者さんの対応表を作成して管理する場合でも、同意なしに情報を取得して研究目的に使うことが、単独施設内や共同研究契約を結んだ複数施設内で研究する場合には可能です。しかし、そうではない複数の施設から情報を集める場合は、集める段階そのものは研究ではないので、法をそのまま解釈すれば、患者さんの同意を得なければならない。

 しかし、ビッグデータを使って、例えば1000万人の患者さんのデータを集めたら、医療機器の開発や薬の開発の他、医療経済的な分析もあり得る。そうした目的が、情報を集める段階で全て決まっているわけではない。また、ある薬で副作用が出ているらしい、調べてみようという場合。そういう問題が起こるから調べることになるわけで、事前に同意を取れるかと言ったら、取れない。その時点で目的が決まっていないわけですから。

 ――そうした事態に対応するのが、次世代医療基盤法ですね。
 患者が特に断らなければ、情報をオプトアウトで集められる。集めた上で、本人に絶対に迷惑がかからない形、プライバシーを侵害しない、個人の権利を侵害しない形で活用する。「そういう利用は困ります」と言われない限りは、「医療情報」を集められるようにするのが、次世代医療基盤法です。ただし、改正個人情報保護法とは、若干考え方が違います。医療情報の場合、遺族や子孫、そういったことに関係する、遺伝する情報を扱わなくてはいけない。

 その場合は、もちろん本人に加えて遺族や子孫にも迷惑がかからないようにしなければなりません。それが個人情報保護法にはない概念です。個人情報とは、あくまでも情報を提供する本人が「第一者」、受け取る人が「第二者」、それ以外は全て第三者ですから、遺族や子供も第三者になります。そういうものをきちんと定義するため、次世代医療基盤法では「個人情報」という概念を使わず、「医療情報」と言っている。ここには、死者の情報も、子孫に影響する情報も含みます。亡くなった人の情報が対象外になってしまうと困りますから。
 ――「匿名加工医療情報作成事業者」はどのような事業者が想定されるのでしょうか。大学などの研究機関が、自らなる必要はあるのでしょうか。
 どのような事業者が想定されるかは、まだよく分かりませんが、(政府による認定が)相当厳しい基準になるとは思います。また、この事業者は研究をできません。匿名加工して提供するのが仕事なので、大学の一部がなってもいいのかもしれませんが、難しいでしょう。それに、ある大学病院の中で、そこに来た患者の病気のことを、自分たちで匿名加工して研究に使うことはできる。個人情報保護法で匿名加工することが認められていますから、この法の枠内でやればいい。次世代医療基盤法はあくまで複数の医療機関から情報を集めて研究に使う場合を想定した法律です。

解説
 5月30日に、改正個人情報保護法が全面施行される。同法によって医療情報の大部分は「要配慮個人情報」と定められ、患者の同意を得ずに収集できず、利用目的の変更が認められず、オプトアウトによる第三者提供も行えなくなる。医療機関で想定される「要配慮個人情報」とは、診療記録や介護関係記録に記載された病歴、診療や調剤の過程での患者の身体状況、病状、治療などについて医療従事者が知り得た診療情報、健康診断の結果および保健指導の内容、障害の事実、犯罪により害を被った事実などだ。

 改正法では、このような本来的に慎重な取り扱いが求められる医療情報の保護が厳格化される一方で、医学の発展のための研究や教育、新薬の開発などでの利活用を難しくするという側面も持つ。これらは患者自身の治療には直接関係しないために、全て第三者提供の扱いとなるからだ。

 その懸念を解消するものとして4月28日、「次世代医療基盤法」が新たに成立した。同法では、オプトアウトによる第三者提供が可能だ。特定の個人を識別できないように医療情報を匿名加工する事業者を政府が「匿名加工医療情報作成事業者」として認定。医療機関から集められた情報をこの事業者が匿名化し、医学研究や教育、新薬開発などの用途に活用できるようにした。



https://www.m3.com/news/iryoishin/531340
医療情報の特殊性を意識した法制を - 山本隆一・医療情報システム開発センター理事長に聞く◆Vol.2
予防接種歴など「医療以外」の情報の扱い課題

インタビュー 2017年5月31日 (水)配信聞き手・まとめ:水谷悠(m3.com編集部)

 ――改正個人情報保護法は5月30日に全面施行されますが、次世代医療基盤法の施行は来春が見込まれます。この1年弱の間に、医療情報を使えないことで困るような事態があり得るのではないでしょうか。
 止まってしまう可能性がなくはないと危惧されるプロジェクトはあります。例えば、ナショナルクリニカルデータベース(NCD)です。外科系のデータを収集していて、日本で行われる手術のほとんどが登録される。これはデータを集めるもともとの理由が、外科医の専門医の申請に使う症例データとしての登録です。民間のNPO法人が運営していますし、匿名化はしていますが、患者の治療や病医院の運用には直接関係がありません。遡及はされないので、今まで集めたデータは大丈夫ですが、改正個人情報保護法では、きちんと患者の同意を取ってくださいということになる可能性があります。

 外科医の技術向上という、広い意味で公益目的ですし、貴重なデータでもあります。次世代医療基盤法が施行される1年先はそういうことを考慮してやれる方向に持って行けると思いますが、それまでの期間はどうしようもないので、ひょっとするとこのようなケースでトラブルが起こる可能性は、ゼロではないと思います。

 ――次世代医療基盤法の施行後はオプトアウトで情報を集めることができますが、そのために情報を利用することを患者に説明する必要はありますね。
 病医院内に掲示しておけばいいというのではなく、患者に対してしっかりやらないといけません。やり方の一つは、初診の際に診察の申込書などを書くと思いますが、そのときにこれを読んでくださいという方法でしょう。それから、「匿名加工医療情報作成事業者」に情報を提供する医療機関は、主務大臣に届出をしなければいけません。審査があるわけではありませんが、届出が必要です。

――新たな二つの法律はできましたが、個人情報保護と医療データの利活用に関して、残る課題はどんなものがあるでしょうか。
 一つは、遺伝する情報を本当に守れるのか、というところがまだ不十分です。これは個人情報保護法の仕組みでは無理です。遺伝する情報を理由に人を差別するということを禁止しなければいけません。例えば米国のGINA(Genetic Information Nondiscrimination Act)の他、ドイツや英国、韓国にもそういう法律がありますが、日本はそういう部分が不十分です。

 また、次世代医療基盤法の仕組みは、今のところ医療情報にしか使えません。定義の部分で、「医療情報」が定義されているので、他の情報では使えません。扱ってはいけないとまでは書いていませんが、基本的には扱えない。そうすると、例えば海外旅行に行った履歴は病気によってはかなり重要なデータですし、予防接種の履歴も重要ですが、病医院できちんと取れるわけではないので、入ってこない可能性もある。それから、介護情報についてはどこにも書いていません。医療と介護の密接な連携は不可欠ですが、書いていない。個々の患者の治療や介護について情報をやりと取りすることはできますが、情報を集めて分析するようなことは十分にできないのです。

 それから、人間、最後は死ぬわけです。いつ亡くなったかというのは、蓄積される情報の中では非常に大きな意味を持ちます。例えば胃がんの人が手術したけども、再発して7年後に亡くなったというときに、亡くなった日までいかなくても年くらいは入っているといいのですが、そういう情報が入ってくる保証はない。そうすると、匿名加工情報の中では生きているように見えるかもしれません。「匿名加工医療情報作成事業者」が持つデータの中に、同じ人の情報が別々に登録されていることも十分あり得ます。次世代医療基盤法は、マイナンバーではなく医療で使う番号制度ができて、医療機関が変わっても1人1人のデータをきちんとつなげることが前提の仕組みなのです。番号制度がいつできるか分からない状態では、不安ですね。

 日本の個人情報保護法は、今回の改正で、少なくとも意図しないことに情報が使われる危険性はだいぶ減ったと思いますが、かなりルールが包括的なため、そのことによって社会的な弊害が起こることへの対応は不十分です。EUのGDPR(General Data Protection Regulation)が来年施行されますが、これには医療情報だけをわざわざ特記してある部分が何十カ所もあります。なぜかというと、やはり医療情報がものすごく特殊な個人情報だからです。犯罪履歴や政治信条、人種などは、記入する場面はそうそうない。大事な情報だけど、あまり使わないわけです。一方で、医療情報はものすごく使う情報です。人間の機微に触れる情報であるにも関わらずものすごく使う情報は、医療情報ぐらいですよ。本来は、そういうことを十分に意識した、個人情報保護法制にすべきだと思います。

 いつまで経ってもそうならないのが日本の特徴ですが、困るのは国民です。医学研究の発展は絶対に大事で、医療情報の公益的活用は止めるわけにはいかない。一方でプライバシーの侵害は絶対に起こしてはいけない。それを両立させることが、改正個人情報保護法と次世代医療基盤法の目的ですが、まだ不十分な恐れがある、ということが現状と考えます。



http://news.livedoor.com/article/detail/13182547/
常識はずれの医師を作らないために 京大が挙げた問題事例の驚愕
2017年6月9日 18時36分 J-CASTニュース

プロフェッショナルな医師になるためには

患者の個人情報をSNSに出してしまう、がんの告知中に居眠りをする、無断で遅刻や欠席を繰り返す――。倫理観や態度に問題のある医師に、万が一診断されることになったら不安で治るものも治らないかもしれない。

こうした医師を世に送り出さないためには、学生のころから「プロフェッショナリズム」を評価・指導することが重要であると考え、京都大学医学部医学科が4年前から「アンプロフェッショナルな学生の評価」という取り組みを行っている。

学生のうちに問題を洗い出し改善する

京都大学医学部医学科医学教育・国際化推進センターのウェブサイト上で公開されている評価の書式によると、「アンプロフェッショナルな学生」とは、

「診療参加型臨床実習において、学生の行動を臨床現場で観察していて、特に医療安全の面から、このままでは将来、患者の診療に関わらせることが出来ないと考えられる学生」
と定義されている。つまり患者の診療にあたっている現場での実習で、医師として明らかに不適切と思われる態度や行動が見られた医学生を指導している医師が報告するというものだ。あくまでも成績とは独立した評価だが、報告があった場合は指導の対象となり、報告が複数の診療科から出された場合は留年もあり得る。

なぜこのような評価を始めたのだろうか。評価法の考案者である同センターの錦織宏准教授にJ-CASTヘルスケアが取材をしたところ、「医療現場で起こる可能性のあるトラブルの原因を、学生のうちに見つけだし改善させる」ことが目的だと答えた。

「(卒業後に経験を積むための研修を受けている)研修医になってしまうと忙しくなってしまい、こうした指導を受ける余裕がありません。学生の段階で評価が必要であると考えました」
医師にプロフェッショナリズムが徹底されていないことで起きるトラブルは医療現場でも常に問題になって、早期の改善が求められているという。では、具体的にはどのような態度がアンプロと見なされるのか。「アンプロフェッショナルな学生の報告例」に上がっている事例を見てみると、

「ナースステーション内でゲームをしていたので看護師が注意をすると『看護師のくせに』と逆ギレした」
「患者に失礼な態度を取り、クレームが来たことを伝えると『あんな患者は来なくていい』と言い出した」
「実習で担当した外国人の患者からクレームが入ると、差別的な発言を患者に聞こえるような大声でした」
「インフルエンザに感染していることを隠して患者に接していた」
など、全12例からいくつか抜粋しただけでも常識はずれの驚きの内容だ。すべてが実際に報告された内容ではなく、多施設での事例などを参考に作成したものだが、類似したようなトラブルが起きているとすれば大変なことだ。

評価に賛否はあるが

錦織准教授は、

「気をつけなければパワハラやアカハラの原因となる危険性もあるため、賛否を含めた意見やフィードバックを踏まえつつ、今後も評価の設計を考えていくつもりです」
ちなみに、現場でアンプロフェッショナルな医師が増えているという実態はあるのだろうか。都内で総合病院に勤務するある医師は、J-CASTヘルスケアの取材に「現場全体がどうかはわからないが、私が把握する限りここ数年で急にコミュニケーションや態度が原因でトラブルを起こす医師が増えたとは思わない」としつつ、こう話した。

「かつては治療に関する技術や知識を有していれば、多少の"欠点"には目をつぶるという風潮もあったかもしれません。診療をしていればいいのではなく、プロとしてどのような姿勢で医療を提供するかがより問われるようになったのではないでしょうか」


  1. 2017/06/12(月) 06:26:21|
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6月4日 

https://dot.asahi.com/dot/2017053100092.html
厚労省発表の「医師不足解消」 現役医師が指摘する重大な見落とし
(更新 2017/6/ 4 07:00) AERA dot

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【図1】75歳以上人口1000人あたりの60歳未満の医師数の推移(『病院は東京から破綻する』より)

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【図2】性別、年齢別の病院勤務医師の労働時間(『病院は東京から破綻する』より)

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【図3】2010年と2035年の医師数の内訳(『病院は東京から破綻する』より)

 首都圏の医療システムは急速に崩壊しつつある。それには、患者だけではなく医師の高齢化も影響している――。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、「老老医療がやってくる」と指摘している。


*  *  *
 迫りくる病院破綻のポイントは、団塊世代の高齢化です。

 団塊世代とは、第二次世界大戦直後の1947年から49年にかけて生まれた人々を指し、この3年間の年間出生数は260万人を超え、合計約806万人もいます。

 団塊世代は高度成長期に製造業などの労働力として、地方から首都圏や関西圏などの大都市圏に移住しました。移住先の都市で生活基盤を築き、永住している人が多いと言われています。首都圏の団塊世代人口は約180万人と推定されています。

 この団塊世代が2012年には65歳、22年には75歳を超え、医療需要が急増するとみられています。これが医師不足にどのような影響を与えるのか、我々の研究結果をご紹介しましょう。

【図1】は首都圏の75歳以上人口1000人あたりの60歳未満の医師数の推移についてシミュレーションしたもので、情報工学を専門とする井元清哉教授(東大医科研)との共同研究です。

 図の通り、首都圏の全ての県で、医師不足は、少なくとも今後35年間は悪化し続けます。団塊世代の多くが亡くなる35年頃に一時的に状況は改善しますが、その後団塊ジュニア世代が高齢化するため、再び医療ニーズは高まります。多くの県で、50年には75歳以上の人口1000人あたりの60歳未満の医師数は、現在の3分の2程度になります。

 その頃の東京の医師不足の状況は、10年当時の千葉県や埼玉県とほぼ同じです。両県では医師不足によって閉院する病院が相次ぎ、急患の受け入れが難しいため、救急車のたらい回しが発生しやすい状況になっています。

 ところが、厚労省は、15年7月に、日本の人口10万人あたりの医師数が10年後には経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を上回るという推計をまとめ、医師不足が解消されるという見通しを発表しました。

 これは、私たちの研究成果とは正反対です。厚労省の推計には重大な見落としがあります。我々の推計では国民と医師の高齢化を想定していますが、厚労省の推計は想定していないのです。国民は高齢化するほど病気に罹りやすくなり、医師は高齢化するほど働けなくなります。人口と医師数を単に比較するだけでは、将来の見通しは立ちません。

■「老老医療」と「過重労働」の限界

 厚労省の発表によれば、20歳代の医師は男女とも週平均で80時間程度働いています。しかし、50歳代の男性は約70時間、女性で60時間に減ります。医師が高齢化すれば、医師を増員しても、その分だけ医師全体の労働時間が増えるわけではありません。

 高度成長期、医学部が40校新設されたことにより、日本の医師数そのものは増加しましたが、その1期生はすでに50代半ばを超え、「当直をこなせるバリバリの勤務医」から引退しようとしつつあります。

「2010年と2035年の医師数の内訳」を見ると、2010年と比べて、35年に増えるのは、もっぱら65歳以上男性医師と60歳未満女性医師であることは一目瞭然です。高齢医師が高齢者を診察する「老老医療」の世界が、日本の日常風景になる日は遠くありません。

 60歳以上の医師に、若手医師と同じような当直や救急患者対応はできません。老眼になれば、細かいところは見えなくなります。反応も鈍くなり、手術のミスも増えるでしょう。体力・持久力が必要な手術や当直業務は、医療安全のためにも、若手医師が行うべきでしょう。高齢医師は豊富な経験を生かして、外来を中心に診察してほしいものです。

 医師の過重労働も、医師不足によりさらに深刻化するだろう問題です。

 医師の平均労働時間は週80時間。20代の若い医師に限れば、週90時間労働はザラにあります。人を助けることを目的にこの道を志したとはいえ、さすがに心身の限界もあるでしょう。しかも、医師の過重労働は、そのまま医療の安全へ直結します。

 医師も人間です。当直の徹夜明けで睡眠不足ならばミスも出やすくなります。頻発する医療事故や医療過誤を受けて、医師の労働環境をせめて欧米の水準に近づけるべきではないかという動きも出始めています。

 欧米の医師の平均労働時間は、週50から60時間。つまり、現在よりも20~30時間も減らさなくてはいけないのです。

 医師が現状すでに過重労働であるという実態を踏まえ、欧米並みの労働時間を基準に、私が井元清哉教授らとシミュレーションしてみると、医師の毎年の養成数を今より55%増やさねばならないという結果になりました。

※『病院は東京から破綻する』から抜粋



https://www.m3.com/news/iryoishin/534673
地域医療構想
地域医療構想「大学の理解不十分」「『回復期不足』も誤解」
2017年度の病床機能報告マニュアル追記、項目も追加

レポート 2017年6月3日 (土)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)は、6月2日の第5回会議で、2017年度の病床機能報告に向けて、診療報酬の入院基本料との組み合わせなど、医療機能選択の際の考え方を「病床機能報告マニュアル」に追記するほか、施設単位の医師数などの「人員配置」、稼動していない病床がある場合の理由など、計5項目を報告内容に追加・見直すことを了承した。

 「病床機能報告マニュアル」への追記は、実際に提供している医療に見合った医療機能の報告を促すのが狙い。特に大学病院本院が、80病院中、54病院が全病床を「高度急性期」と報告したり、「回復期機能」は、回復期リハビリテーション病棟入院料や、地域包括ケア病棟入院料の算定病床に限られると誤解するなどの問題が生じている。

 今後、「医療計画の見直し等に関する検討会」や社会保障審議会医療部会で議論、決定する。「病床機能報告マニュアル」は今夏に公表予定(資料は、厚労省のホームページ)。2017年度の病床機能報告は、今年10月に行う。

 医療機能選択の際の考え方として提示するのは、(1)4つの医療機能のうち、最も多くの入院患者が該当する機能を報告、(2)4つの医療機能と入院基本料との組み合わせを提示し、これらと異なる機能を選択する場合には、地域医療構想調整会議で確認、(3)回復期機能については、リハビリテーションを提供していなくても、「急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療」を提供している場合には回復期機能の選択が可能――など。

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「4つの医療機能のうち、最も多くの入院患者が該当する機能を報告」のイメージ(2017年6月2日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)

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「4つの医療機能と入院基本料との組み合わせ」の考え方(2017年6月2日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)
 日本医師会副会長の中川俊男氏は、大学病院本院の地域医療構想への理解が不十分であると問題視、その典型例として、全病棟を高度急性期と報告している病院が多いことを挙げた。「地域医療構想は、2025年の医療需要を患者数から推計したもの。その推計に対し、医療の提供が足りているのか、あるいは不足しているのかを調整会議で確認し、不足しているのであれば手当てするのが地域医療構想」と、基本的考え方を改めて解説した。

 回復期についても、中川氏は「どの構想区域でも、『回復期が非常に足りない』というのが、医療界の一般常識になりつつあるが、考えを直さなければいけない」と強調。「回復期」とは、例えば手術をした患者でも、病状の経過として通る病期であり、独立した「回復期病棟、病床」が必要なわけではなく、高度急性期あるいは急性期の病床であっても、そこには回復期の患者が入院しているのが当然であるとし、「回復期が少ない、といたずらにあおる必要はない」と理解を求めた。

 さらに、中川氏は、病床機能報告制度と診療報酬との関係について、中央社会保険医療協議会での厚労省の説明を引用しながら、次のようにコメントした。「なぜ医療提供の実態と報告が乖離するのか。それは高度急性期として報告しないと、特定入院料(救命救急入院料など)を算定できないのではないかと心配しているからではないか。また回復期か急性期かを迷った場合にも、急性期関係の点数が算定できなくなると考え、急性期として報告しているのではないか。診療報酬は、報告機能と関係なく算定できる。ぜひ懸念を払拭して報告してもらいたい」(『「診療報酬、地域医療構想に“寄り添う”」、迫井医療課長』、『地域包括ケア病棟、「大病院の届出、本来の趣旨にあらず」』を参照)。

 日本病院会会長の相澤孝夫氏も、本ワーキンググループに参考人として出席した大学病院関係者からは、4つの医療機能を区分した際に用いた「医療資源投入量」(例えば、高度急性期と急性期の区分は、3000点)の意味を誤解している点を指摘した。「医療需要をマクロの視点で計算するために、ある一定の線を引いたのが、医療資源投入量。医療政策を進める上では必要だが、病床機能報告をする際には関係がない。また『高度急性期の患者が何%入院していれば、高度急性期』などと精緻化すると窮屈であり、常識的な範囲で考えてもらいたい」。相澤氏はこう述べ、「地域医療構想は、調整会議で議論し、2025年以降の医療提供体制を構築していくことが大切」と語り、大学病院に対し、調整会議への参加を呼びかけた。

 病床機能報告に追加する5項目は、文末の通り。回復期・慢性期の機能を「見える化」、つまり定量的な指標の導入については、2018年度報告に向けて引き続き検討する。

 高度急性期「90.2% vs.37.6%」

 厚労省は、2016年度病床機能報告を基に、実際提供している機能に見合った医療機能が報告されていないことを示唆する分析結果を提示した。

 高度急性期については、400床以上(特定機能病院に係る承認要件)の病院について分析。総数は535施設で、うち大学病院本院を含む特定機能病院は85施設、その他の病院は440施設。高度急性期と報告したのは、特定機能病院の場合は全病床の90.2%に上るのに対し、その他の病院は37.6%と大きな開きがある。

 85の特定機能病院の報告状況を見ると、「高度急性期+それ以外の機能」と報告した病院は、病床機能報告制度がスタートした2014年度は10病院、2015年度は28病院、2016年度は31病院と年々増えている。しかし、いまだ54病院は全病床を高度急性期と報告しており、2015年度は「高度急性期+それ以外の機能」と報告したものの、2016年度は高度急性期のみに変えた大学病院も二つある。

 さらに、特定機能病院において、同じ診療科同士で「手術件数」と「全身麻酔件数」を比較した場合、高度急性期の方が、急性期の約2倍の標榜科(脳神経外科、循環器内科)もある一方、高度急性期と急性期はほぼ同水準の標榜科(耳鼻科、眼科、整形外科)もあった。これらの結果を踏まえ、厚労省は「地域ごとにどのような役割を担うべきかを十分に議論、確認し、その結果を踏まえつつ、実態に則した報告の必要があるのではないか」と提案。

 急性期と報告された病床についても、(1)13対1、15対1入院基本料の病棟では、主として回復期機能を担う特定入院料(回復期リハビリ病棟など)の病棟と同等の看護職員数になっている、(2)診療科別に比較した場合、7対1入院基本料から15対1入院基本料まで開きがあり、「手術件数」と「全身麻酔件数」との間で一定の関係が見られる――などと分析。厚労省は「急性期と報告している場合であっても、必ずしも急性期機能を担っていない場合も一定程度あり、自主的な報告を原則としつつも、回復期機能等の適切な機能を選択することが必要ではないか」としている。

【病床機能報告制度の見直し】(2017年6月2日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料)
◆「構造設備・人員配置等に関する項目」について、2017年度報告(2017年10月実施)から見直し
1.人員配置」について以下を追加
・医師数、歯科医師数(施設単位のみ。既存の「病院報告」等の内容を転記)
・管理栄養士数(施設単位、病棟単位等の部門別)、診療放射線技師・臨床検査技師(施設単位のみ)

2.「6年が経過した日における病床の機能」に関連し、6年後の「転換先の施設類型」を把握するための項目を追加
・例えば、「介護医療院」「介護老人保健施設」などを想定。

3.「入院前・退院先の場所別の患者数」「退院後に在宅医療を必要とする患者数」について、報告対象期間を現在の1カ月間から1年間に変更
・療養病床では、1カ月間では適切に患者数を把握しにくいため。医療機関の負担を考え、2017年度病床機能報告においては、1カ月間を基本にしつつ、可能な医療機関については1年間の報告を追加、2018年度報告からは1年間の報告を原則。

4.稼動していない病床がある場合はその理由を併せて報告
・地域医療構想調整会議において、病棟の役割分担について具体的な議論を進めることが目的。今は病床数のみが報告項目であり、原則として「病棟単位」で稼動していない場合、その理由の報告を求める。

5.その他
・医療機関の設置主体の選択肢を追加。
・特定機能病院、地域医療支援病院等の承認の有無の選択肢を追加。

◆「医療の内容に関する項目」について、2018年度報告(2018年10月実施)に向けて、2018年度診療報酬改定を踏まえ、抜本的見直しを検討
・回復期・慢性期の機能を見える化する項目の検討など。



http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201706/551500.html
立ちはだかった医師会の“岩盤”
2017/6/5 千田 敏之=編集委員 日経メディカル

 2015年の医療法改正で制度化が決まった地域医療連携推進法人制度がこの4月にスタートした。施行日の4月2日には、全国で4法人が各県知事の認可を受けた。

 地域医療連携推進法人は「医療機関相互の機能の分担および業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢」として創設された。「競争よりも協調を進め、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保」するとしている。それぞれの経営理念、方針に基づき運営されている複数の病院などを一つの方向性に導き、地域においてより良い機能分担や連携、経営効率化を進めるための制度だ。

 4月に認可された4法人の内訳は、学校法人藤田学園・藤田保健衛生大学を中心に22の医療機関、介護施設22が集まった「尾三会」(愛知県)、県立姫路循環器病センターと社会医療法人製鉄記念広畑病院の統合再編に向けて組織された「はりま姫路総合医療センター整備推進機構」(兵庫県)、広島県の内陸部、三次市、庄原市の3病院(まもなく4病院に)で作る「備北メディカルネットワーク」、鹿児島県の奄美大島南部町村地域の3法人(医療法人、国保診療所を有する2町村)で構成される「奄美南部メディカルケアアソシエーション」だ。

  巨大基幹病院を核に中小病院や介護保険施設などが集まり、地域包括ケアシステムの構築も視野に入れるものから、僻地において医師確保や医療機器の効率利用などに主眼に置くもの、県立病院と民間病院の統合をスムーズに進めるための前段階として認可を受けたものまで、制度の活用の仕方は実に様々だ。

ローカルルールで申請断念

 制度スタートと同時に、晴れて県知事の認可を受けた連携推進法人がある一方で、準備を進めてきたものの、様々な理由から申請を断念したり作業を中断しているところもある。

 札幌市の社会医療法人カレスサッポロと学校法人東日本学園・北海道医療大学が取り組む連携推進法人については、準備を進めながら申請を断念している。カレスサッポロ理事長の大城辰美氏は「北海道は3法人以上の連携でないと地域医療構想に寄与することは難しいとの判断だった。連携推進法人の申請のためだけにもう1法人加えるのも困難なので、申請は取りやめた。北海道医療大学との共同事業は今後も進め、強化していく」と話している。「3法人以上」というのは法律にも定められていない明らかなローカルルールだが、カレスサッポロはそれに従った格好だ。

 また、制度の検討段階から注目を集めてきた岡山大学病院を中心とする岡山メディカルセンター構想も、一般社団法人の設立までは行ったものの、参加を想定していた他の大規模病院の賛同が得られず、申請のめどは立っていない。

「見送りでは連携推進法人にこだわる意味なし」

 日経ヘルスケア2016年7月号で紹介した鹿児島市の相良病院とにいむら病院の連携推進法人については、県医師会の反対などにより医療審議会の了承が得られず、継続審議となり、その後、両病院は申請を取り下げている。

 相良病院を経営する社会医療法人博愛会理事長の相良吉昭氏は日経ヘルスケアのインタビューに対し、こう話している。

 「社会医療法人博愛会と、泌尿器科専門のにいむら病院を経営する医療法人真栄会で進めていた地域医療連携推進法人だが、全ての要件を整え、鹿児島県に申請した。しかし今年3月、医療審議会において認定見送りとなったとの連絡を受け、申請を取り下げることにした。地元の医師会への事前の挨拶がなかったなど、医師会への配慮不足が主たる理由と聞いた。我々としては、鹿児島の地域医療を守るための取り組みであり、新しい医療連携の形を示す良い機会と考えていたので、非常に残念だ。全国初の連携推進法人としてアピールする意味もあったので、見送りでは連携推進法人にこだわる意味もなくなったことが、取り下げの理由だ。病床の融通以外、現段階で連携推進法人でないとできないことはない。逆に言えば、医療連携の真のメリットや意義が分かっていれば、連携推進法人になることは簡単だし、連携推進法人という形にこだわる必要はないということだ」

 旧態然とした医師会という“岩盤”が、先進的な病院経営者の新しい試みに立ちはだかったという構図だ。実際、人口減や患者減少を背景に、地域で病床機能の効率化が叫ばれ、地域医療構想の達成が求められる中、同様の“岩盤”が医療改革を阻んでいる地域は少なくない。地域医療構想調整会議が参加者のエゴでまとまらず、地域医療構想の実現に暗雲が垂れ込めている地域もある。しかし、10年、20年先を客観的に見通すことができない病医院経営者に未来はないだろう。

 なお、日経ヘルスケアの最新号(6月号)では、断念事例だけではなく、地域医療連携推進法人制度を上手に活用した先行事例についても詳しくレポートしている。関心のある方はぜひ、読んでいただきたい。
 


https://www.m3.com/news/general/534695
伊万里松浦病院移転問題:新病院87病床を計画 市長、医療機関に協力要請 /長崎
地域 2017年6月4日 (日) 毎日新聞社

 独立行政法人「地域医療機能推進機構」が運営する伊万里松浦病院(佐賀県伊万里市)の移転問題で、松浦市の友広郁洋市長は2日の定例会見で、12診療科・87病床の新病院基本構想を明らかにした。2020年4月の開設予定だが、同市を含む医療圏は基準を上回る過剰病床地域で、県に新設を認めてもらうため、市は同規模の病床削減を市内の医療機関に求める。

 市は昨年秋に地元医師会「松医会」(11医療機関)にアンケートした結果、合計病床数は16年10月現在の334から22年3月には284に減ると予測。離島の市営診療所(38病床)を医療機能を残して介護施設に転換すれば、総計88の病床削減が可能とした。

 調査結果を踏まえ、同機構は87病床の基本構想をまとめ、4月に松医会に説明したが、市によると、11医療機関の賛否は五分五分。「地元調整が進んだ段階」(橋口忠美副市長)で同機構が県に新設を申請する。友広市長は協力を求めて5月12日から医療機関を回っているといい、「地域の中核病院として全力で誘致に取り組む」と述べた。【峰下喜之】

〔長崎版〕



https://www.m3.com/news/iryoishin/534517
安倍政権の医療制度改革
「医学部定員増、精査を」、骨太2017素案
経済財諮問会議「先発品の一部自己負担、年内結論を」

2017年6月3日 (土)配信高橋直純(m3.com編集部)

 経済財政諮問会議は6月2日の会議で、「経済財政運営と改革の基本方針2017(仮称)」素案を議論した。社会保障分野では9項目が立てられ、医学部定員増に対して、「2008年度以降臨時増員してきた医学部定員について、医師需給の見通しを踏まえて精査を行う」ことが盛り込まれた。併せて医師の抜本的な地域偏在・診療科偏在対策を検討することも求めている。

 後発医薬品の利用促進を巡っては、社会保障審議会医療保険部会で反対意見が相次いだ、先発医薬品と後発医薬品の価格差を「原則自己負担」とすることや、先発医薬品の価格を「後発医薬品価格まで価格を引き下げること」について、「本年末までに結論を得る」ことを求めている(社保医療部会の議論は『先発品と後発品の「差額」徴収、反対が多数』を参照)。そのほか医薬品については、2016年12月の「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づき、薬価の毎年改定なども提言した(『薬価制度の抜本改革案、明らかに、4大臣会合へ』を参照)。

 会議後の記者会見で、石原伸晃・内閣府特命担当大臣は「次回の諮問会議で答申を行いたいと考えている」と話した(資料は、内閣府のホームページ)。

「経済財政運営と改革の基本方針2017(仮称)」の医療関連部分の概要
■社会保障

(1)基本的な考え方
(2)地域医療構想の実現、医療計画・介護保険事業計画の整合的な策定等
・病床の役割分担を進めるためデータを国から提供し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進する。
・自主的な取組による病床の機能分化・連携が進まない場合には、都道府県知事がその役割を適切に発揮できるよう、権限の在り方について、速やかに関係審議会において検討を進める。
・地域医療構想における2025年の介護施設、在宅医療等の必要量(30万人程度)を踏まえ、都道府県、市町村が協議し整合的な整備目標・見込み量を立てる上での推計の考え方等を本年夏までに示す。
・かかりつけ医の普及に向けて、病院への外来受診時の定額負担に関し、現行の選定療養による定額負担の対象の見直しを含め、関係審議会等において本年末までに結論を得る。
・国保の財政運営責任を都道府県が担うことになること等を踏まえ、アウトカム指標等による保険者努力支援制度、特別調整交付金等の配分によりインセンティブを強化する。
・2008年度以降臨時増員してきた医学部定員について、医師需給の見通しを踏まえて精査を行う。
・医師等の負担を軽減しつつ医療の質を確保するため、看護師の行う特定行為の範囲の拡大などタスクシフティング、タスクシェアリングを推進するとともに、複数医師によるグループ診療や遠隔診療支援等のへき地等に勤務する医師の柔軟な働き方を支援するなど抜本的な地域偏在・診療科偏在対策を検討する。

(3)医療費適正化
・医療費の地域差の半減に向けて、外来医療費については、医療費適正化基本方針で示されている取組を実施するとともに、できるだけ早く取組を追加できるよう検討する。
・入院医療費については、地域医療構想の実現によりどの程度の縮減が見込まれるかを明らかにする。
・「地域別診療報酬の特例」について、第2期医療費適正化計画の実績評価を踏まえて、必要な場合には活用ができるよう、2017年度中に関係審議会等において検討する。

(4)健康増進・予防の推進等
・必要なデータを収集・分析するためのデータベースについて、2020年度の本格運用開始を目指す。
・インセンティブを強化するとともに、全保険者の特定健診・保健指導の実施率を2017年度実績から公表する。
・健康増進の観点から受動喫煙対策を徹底する。
・アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症に関する実態を踏まえ、民間団体の活動しやすい環境整備を含めた相談・治療体制の整備を推進する。

(5)2018年度診療報酬・介護報酬改定等
・医療機関の地域連携強化に向けたこれまでの診療報酬改定内容を検証する。
・地域医療構想の実現に資するよう病床の機能分化・連携をさらに後押しするため、介護施設や在宅医療等への転換等の対応を進める。
・自立支援に向けた介護サービス事業者に対するインセンティブ付与のためのアウトカム等に応じた介護報酬のメリハリ付け(介護報酬)。
・生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和やそれに応じた報酬の設定及び通所介護などその他の給付の適正化(介護報酬)。

(6)介護保険制度等
・介護医療院について、介護療養病床等からの早期転換を促進するための報酬体系・施設基準を設定する。

(7)薬価制度の抜本改革、患者本位の医薬分業の実現に向けた調剤報酬の見直し、薬剤の適正使用等
・保険適用時の見込みよりも一定規模以上販売額が増加する場合には、市場拡大再算定も参考に速やかに薬価を引き下げる仕組みとする。
・全品を対象に、毎年薬価調査を行い、その結果に基づく薬価改定に当たっては、相応の国民負担の軽減となる仕組みとする。
・新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度について、革新性のある医薬品に対象を絞るなどにより革新的新薬創出を促進しつつ国民負担を軽減する。
・エビデンスに基づく費用対効果評価を反映した薬価体系を構築するため、第三者的視点に立った組織・体制をはじめとするその実施の在り方を検討し、本年中に結論を得る。
・類似薬と比べて画期性、有用性等に乏しい新薬については、革新的新薬と薬価を明確に区別するなど、薬価がより引き下がる仕組みとする。
・長期収載品の薬価をより引き下げることで、医薬品産業について長期収載品に依存するモデルから高い創薬力を持つ産業構造に転換する。
・後発医薬品の価格帯を集約化していくことを検討し、結論を得る。
・調剤報酬については、薬剤の調製などの対物業務に係る評価の適正化を行うとともに、在宅訪問や残薬解消などの対人業務を重視した評価を、薬局の機能分化の在り方を含め検討する。
・医師の指示に基づくリフィル処方の推進を検討する。
・健康サポート薬局の取組を促進する。
・2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とする。
・先発医薬品価格のうち、後発医薬品価格を超える部分について、保険財政の持続可能性や適切な給付と負担の観点を踏まえ、原則自己負担とすることや後発医薬品価格まで価格を引き下げることを含め検討し、本年末までに結論を得る。

(8)人生の最終段階の医療
・住民向けの普及啓発の推進や、関係者の連携、適切に相談できる人材の育成を図るとともに、参考となる先進事例の全国展開を進める。

(9)生活保護制度、生活困窮者自立支援制度の見直し
・頻回受診対策や後発医薬品の使用促進を強化するとともに、データヘルス実施の仕組みを検討する。

 安倍晋三首相は会議で、「今年の骨太方針では、人口減少、少子高齢化の克服と一億総活躍社会の実現に向けて、成長と分配の好循環を加速させるためには、働き方改革や成長戦略の実行に加えて、人材への投資を通じた経済社会の生産性の向上こそが鍵となることを示したい。改革に当たっては、基礎的財政収支を2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため経済再生なくして財政健全化なしとの方針の下、デフレ脱却と経済再生、歳出改革、歳入改革という3つの改革を確実に進めていかなければならない。石原大臣にはこれまでの議論を踏まえて、与党とも議論を進め、スピード感を持って骨太方針として取りまとめるよう御尽力いただきたい」と話した。



https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/57598/Default.aspx
骨太方針・素案 地域医療構想の具現化で病院の診療実績データ公開 18年度改定で病床転換や連携を後押し
公開日時 2017/06/05 03:50 ミクスオンライン

政府の経済財政諮問会議が6月2日に公表した「骨太方針2017・素案」(一部速報・薬価制度編)では、47都道府県が今年3月末までに策定した「地域医療構想」を具現化するため、病床の役割分担や転換を支援する診療実績データを国が都道府県に提供する方針を盛り込んだ。都道府県はこのデータを基に、個別の病院名や転換する病床数を明示し、高齢化のピークを迎える2025年度にむけて医療提供体制を再構築する。各都道府県とも、高度急性期、急性期病床を削減、回復期を増床する計画を打ち出している。骨太方針では、都道府県の権限を強化し、財政面から病床転換を支援するほか、2018年4月実施の診療報酬・介護報酬同時改定において、病床の転換や医療機関の連携を後押しする報酬水準、算定要件を盛り込む方針を示した。

骨太方針における社会保障制度改革の柱は、高齢化に伴う医療費の伸びの適正化だ。ポイントはデータへルスの実現。国が有する診療情報をデータベース化し、地域の政策担当者、医療関係者、施設経営者、保険者などの当事者に共通データを「見える化」することで、医療費の地域格差、施設格差の是正にむけた“医療費適正化”についてオープンで議論する場を整える。保険者に対しては、健康づくりや予防などについて、データへルスを通じて支援する方針も盛り込んだ。都道府県別保険料を含めたインセンティブの強化なども視野に入れている。

◎「保健医療データプラットフォーム」を構築 データを都道府県に提供

具体的な施策では、2025年の高齢化のピークに向け、地域包括ケアシステムの導入を視野に、地域単位で医療提供体制を再整備する。素案では、都道府県の保健ガバナンスを強化する方針を示した。具体的には各都道府県に権限と予算などを移譲するというもの。各都道府県が策定した「地域医療構想」について、地域ごとに設置した「地域医療構想調整会議」で具体的な議論を行う。病床の役割分担を進めるためデータを国から提供し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的に議論するとした。

厚労省は各地域の議論を側面的に支援するため、「保健医療データプラットフォーム」などのビッグデータを提供する。同プラットフォームは、健康、医療、介護の各種ビッグデータを統合するもの。医療分野では、病院の機能分化や構想区域(2次医療圏)内における地域完結型の医療提供体制の議論に応用できる。実診療データ(ビッグデータ)には、レセプトなどの実診療データ以外に、脳卒中患者の治療後の医療・介護サービスの傾向や、抗生物質の処方や重複投与の状況などに関するデータも含まれる見通し。地域の医療ニーズを分析を通じ、医療費の適正化や住民に対する医療サービスの検証、施策立案に役立てるよう促す考え。このため、医療政策やビッグデータに対応できる人材を国が養成し、都道府県に派遣するなどの連携策も盛り込んでいる。

◎選定療養による定額負担の対象については見直し

このほか、かかりつけ医を普及させる観点から、まずは病院・診療所間の機能分化の観点から、医療保険財政の持続可能性の観点等を踏まえつつ、病院への外来受診時の定額負担に関し、現行の選定療養による定額負担の対象の見直しを行う。関係審議会等において具体的な検討を進め、年末までに結論を得るとした。

2018年度診療報酬・介護報酬同時改定については、地域医療構想の実現に資するよう病床の機能分化・連携を更に後押しするため、患者の状態像に即した適切な医療・介護を提供する観点から、報酬水準、算定要件、入院基本料のあり方について検討する。



http://www.niigata-nippo.co.jp/news/local/20170603327635.html
センター病院の指定管理更新せず
上越医師会方針、「役目終えた」

【地域】 2017/06/03 15:00 新潟日報

 上越地域医療センター病院の指定管理者となっている上越医師会が、来年3月末で満了する契約を更新しない方針を固めたことが2日までに分かった。同会はセンター病院の経営は安定しており、医師会としての役目は終わったことを理由に挙げている。

 センター病院は2000年、旧国立高田病院を上越市が国から譲り受けて開院。上越医師会は公共施設の管理運営を自治体直営や公共団体に限定する「管理委託制度」に基づき、同年、市から運営を任された。地方自治法改正で民間事業者の参入が可能となった「指定管理制度」移行後も、市からの要請で5年や3年ごとに契約を更新してきた。

 医師会によると、ことし2月の理事会で、指定管理契約を来年3月までとする方針を決定、市に伝えた。

 新潟日報社の取材に対し、上越医師会の早津正文会長(65)は「赤字の地方自治体病院が多い中、センター病院は経営的に安定し、良い病院になった。医師会として任務は終えたと考えている」と述べた。

 来年4月以降の経営形態について、市地域医療推進室の小林元・室長は「専門家の話を聞きながら、病院の改築に向けた基本構想策定検討委員会の中で話し合いたい」と話している。



http://www.at-s.com/news/article/health/shizuoka/366112.html
島田市民病院 12月末で分娩一時休止 市、産科医派遣要請へ
(2017/6/3 07:06)静岡新聞

 島田市は2日、市民病院(同市野田)の産婦人科常勤医が2018年3月末で退職することになったため、17年12月末で分娩(ぶんべん)を一時休止すると発表した。現時点で新たな常勤医は確保できていないという。
 市によると、18年1月以降の分娩はすでに予約した人だけ対応する。婦人科外来は、現在浜松医科大から派遣されている非常勤医4人により、週2日の診療体制を継続する。
 市によると、退職する常勤医(55)は06年から1人で同病院の分娩を担当しているが、5月下旬に退職の申し出があった。同病院での分娩件数は15年度は193件、16年度は171件。市内ではほかに、分娩を受け入れる診療所が1カ所ある。
 市は同大に常勤医派遣を要請する方針で、染谷市長は「(医師確保に向け)最善の努力をしたい」と説明。周辺の医療機関には、市内の妊婦の受け入れを依頼していくという。
 同病院は、21年春の開院を目指した建て替え計画が進んでいる。



https://www.cbnews.jp/news/entry/20170602212858
在宅患者に対応できる総合診療専門医育成へ
専門医機構が「モデルケース」提示

2017年06月02日 23:00 CB news

 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は2日、総合診療専門医に関する研修の「モデルケース」を示した。3年間の研修期間中、へき地や離島、被災地、医療資源の乏しい地域で1年以上の研修を行うことや、総合診療1と同2に計1年半を充てることを推奨しており、在宅の患者を診療できる専門医の育成を目指す。【新井哉】

 同機構によると、総合診療専門医の研修内容は、内科(1年間)、救急と小児科(いずれも3カ月間)、総合診療1と同2(いずれも6カ月間)。残りの6カ月間を総合診療1と同2に充てることを求めている。

 臨床研修で外科を学ばなかった専攻医を対象にした総合診療専門医の研修プログラムでは、外科の研修期間(6カ月間)を加えた3年半のプログラムも認める見通しだ。

 研修を担当する指導医は、総合内科専門医の資格を持つ内科医などを充てる。また、指導医を確保できず研修ができないような医療資源の乏しい地域に配慮し、へき地や離島などで研修を行う場合は、到達目標などを定めたカリキュラム制でも対応できるようにする。

 2 日に行われた記者会見で、同機構の松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は、「内科医としての素養をきちんと付けて、小児科、救急の指導医を付けて勉強した上で、総合的な診療ができる地域に出て行って、実際に治療を行うという概念に基づくもの」と説明した。

 研修内容・期間などが盛り込まれた総合診療専門医の整備基準については、同日の理事会で了承しており、同機構のホームページで近く公開する予定。


  1. 2017/06/05(月) 06:15:26|
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